夜11時に書く日記(1997.10.21)

夜11時に書く日記(1997.10.21)


薄曇りの日
片目のつぶれた猫が
伸びをしている

夕方には雨が降りだした
でも彼は恵比寿までチャリで行くことにしている

夜のカラスも鳴き
煤けた闇に
コツコツとハイヒールの音が響く

今日は蕪の煮物を食べた
べったら漬けも

犬もあくびをする

そして
妻は眠っている
風呂では湯気がやがて滴になり
お茶は冷え
3日経った回覧板は
通販のカタログの上に放ってある

遠くのビルの先端で
二つのライトが
ゆっくり点滅し
今日の絵の具は
最後の色を
流す

窓ガラスをぬけてぼくが浮遊を始めるまえ

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(並木(1997.10.28))次頁(涼子ちゃんはマルボロを吸う(1997.10.14))

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