マック(1997.11.25)

マック(1997.11.25)


「お腹痛いわけがわかったわ」
「え、どうして」
「マックでのバイトのせい」
はははは
と女子高生は笑う
「血液調べたら脂の変わった成分があったの」
「薬、きついのになっちゃった」
ははははは
「おとといチキンナゲット
いっぱい食べたからね」
はははは

僕は茶髪を見下ろしている
右前方には少女メイクしている女の子
僕は前に少し傾き集中して考えていることがある
集中して言葉を頭で反芻している
耳には彼女らの声が
もうひとつの空間を作っている
そうだ
僕はある文章の一節を繰り返し繰り返し
集中して思い出している
女の子の声が耳に入るのは
でも
苦痛ではない
頭に何度も同じ文章を書いては
消す

「はははは」
僕はほとんど自動人形のように駅に降りる
雑踏のなかへ

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(いちごと毒虫(1997.12.2))次頁(鯛焼き(1997.11.18))

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