花の襲撃(1998.2.10)

花の襲撃(1998.2.10)


桜草はガラスの中で屈折している
桜草自体が野に立っているのを
あきらかに幾重にもガラスを通した像として
目に入ってくる
ガラスの破片の
ひとつひとつに
ほんのり赤い桜草が
透き通って浮いている
この窓の桜草の
そのもう一面向こうの窓の桜草の
ガラス切りの
きーっという滑る音が
柔らかい毛の生えた
茎をたどり
右こめかみに28度の角度で
枝が伸び
右15センチほどの
ところに
花叢が浮いて
刺のように目に来る

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(雲を見上げる人(1998.2.17))次頁(黄色いナンバープレート(1998.2.3))

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