一代記(1998.3.17)

一代記(1998.3.17)


鶏の首の柄の

春は闌けて相変わらずの渦だ
窓から白いものが覗く夜
あれは
テレビの残像で
辛夷の木が平屋の前に
2両電車と埃を思い出させる
煙草のなか
長いキセルを叩く女
の一代記が
僕のなかにある
寺の石畳が
続き
女として物乞いをしている
血は灰色に
瓔珞や
襤褸が
傷の溝に流れる夜

の首の
柄の杖

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(砂の旅(1998.3.24))次頁(女もののパジャマ(1998.3.10))

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