砂の旅（1998.3.24）

砂の旅（1998.3.24）


犬の喉の音でふと目覚めると
明け方の街の音が遠くに聞こえる
環状線の車が走る音は
東のほうから小さな響きで
まだビルから出た2本の手の先では
光が点滅しているだろう

犬は眠っていて
猫は起きたのに気づき
しっぽを立てて
あいさつに来る

遠いノイズは冷たい空気を
伝ってくる
無音の時は
一刻もない

だから
砂は
滑り落ち
何回も旅に出る

微かな湿りが
アスファルト上に降る

◆清水鱗造　週刊詩　目次◆前頁（たなびく魚（1998.3.31））◆次頁（一代記（1998.3.17））◆

■Shimirin's HomePage■Urokocity■SiteMap■