待合室(1998.6.2)

待合室(1998.6.2)


こしかけて文庫本を読む
ががんぼが
すりガラスに当たり
見知らぬ街は空白のように思える
しかし星は移動している
屋根に少しずつ星座が隠れている

駅員が吸い殻などを掃いていて
その中に乾いた注射器があるのが
視界の隅に映る

181ページの染みは
僕の唾液かコーヒーの染み

頁岩の羽虫の化石のように
また琥珀のなかのぶよのように
ひとつの駅は
本に閉じ込められる

ががんぼは
駅舎の空間の澱に
飛ぶ姿で凍結される

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(畑に入る(1998.6.10))次頁(雑踏(1998.5.28))

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