正午に下る坂(1999.4.20)

正午に下る坂(1999.4.20)


腕時計は
汗でぬるぬるする
木の階段を上ると
青い深い靄が
空の底のほうに
化学実験のように
ちぎれていく
上りながら
かすかに少年の独唱が
耳に響いている
頂きに
暈をかぶっている自分が見えてくる

正午に
下る坂
針はただ一本の矢印になり
文字盤は花びらの付け根のように
白く見える

正午に未明に向かい下る坂
まひる
野の生理に下る坂
少年の声は小さくなり
青は濃く
昼の星がいくつか見えている

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(麦科(1999.4.27))次頁(においのない歌(1999.4.13))

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