通路の音楽(2000.1.25)

通路の音楽(2000.1.25)


暗い通路に
オートバイが入ってくることがある
この通路を
きわめて普通の人たちが
そのシステムを守って歩いている
しいていえば
その通路は
外の街と同じもの

違うのは
同じ塊のくせに
錐でついた穴のようなものを
人たちは守っていることだけとも思えるけれど
それだって外の街と
幾分か景色が違うだけだと
思い直したりする

僕もたまにオートバイになる
すると
あの異国の知らない楽器の
音とともに
知らない無垢な少女時代が
僕にも染みてくる

それは貧しい布に
日の光を受けていて
たまらなくなって
堪えているけれど
やがて
音楽に乗って
駅を素通りする電車のように
行ってしまう

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(黒い手帳(2000.2.1))次頁(ビンの中の羽(2000.1.18))

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