黒い手帳(2000.2.1)

黒い手帳(2000.2.1)


あるクラブの名前を書いた紙を
はさんでおいた手帳を
ロッカーに置いてきてしまう

隠した花は
いつのまにか潰れていて
紙片には紅い染みだけがついているのだが
せいぜい街にまぎれてしまい
ただ紅い残像だけが
歩くときにあたりに漂っている

暗い引出しの中で花はまず重力で崩れ
紙に張り付くように広がり
そして腐り
におい
乾いて
紙に染みだけが残る

駅から地上に出ると
赤に打たれ
そして赤から離れ
タバコを買うと
桃色の水が路地を流れ
赤は消えて
暗証番号を押す

ぼくは字を書く
黒い手帳の次をめくると
紅く女陰のようにシンメトリな染みが
かがり糸までも紅くして
乾いている

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(僕を旅している街(2000.2.8))次頁(通路の音楽(2000.1.25))

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