僕を旅している街(2000.2.8)

僕を旅している街(2000.2.8)


「毛細血管がヒトミにまで来ていますね
 酸素が足りなかったのでしょう」

小さな旅に出る

「あなたが生成した隠微な花は
 でも張り付いていますよ」

旅は地下鉄の七つ目の駅を降りた
路地だ
変哲もない建物の一角にその家はある

たぶん
僕が街を旅しているのではなく
街が
僕を旅しているように思える
でなければ
境もなく どうして自動販売機と
塀とドアとつながっているのか

廊下には
普通の服を着たOLが歩いているし
競馬がテレビで映し出されてさえいる

こののっぺりした路地と建物が
僕を旅している

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(接合点(2000.2.15))次頁(黒い手帳(2000.2.1))

Shimirin's HomePageUrokocitySiteMap