路地が夜になっていく(2000.10.3)

路地が夜になっていく(2000.10.3)


トカゲのレントゲン写真のある本が
気になっていて古本屋に行くたびに
その洋書の写真のページをひろげてみる
夕刻にはすでに店は閉まっていて
入口にはワゴン車が止まっている
いつまでもその本は売れないのに
片付ける様子もない

坂を下り信号でたばこを吸う
電車には帰りの人々が
つり革につかまり
こちらの道路を見ている

西には三日月があって
ときどき雲でくしゃくしゃになる

この路地には骨はない
緑ふかい草と
フェンスに絡んだ蔓と実と
抑えきれない火照りの残滓

アート紙に印刷された
トカゲの骨

駐車場にボンネットをきらめかせて
車がはいっていく

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(夢の陶器(2000.10.10))次頁(百日紅(2000.9.26))

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