UNDERGROUND RESIDENTS
Nonsense Poems in Alice
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ALICE IN WONDERLAND
Director : Norman McLeod / Alice : Charlotte Henry
ノーマン・マクロード監督 / アリス:シャーロット・ヘンリー
 
1933年、ゲイリー・クーパーやW.C.フィールズなど当時のスター総出演のパラマウント映画『アリス・イン・ワンダーランド』。最初に断ってしまうと、私が入手したのはブートレグのビデオのためパッケージなどは一切ありませんでした。
約76分の映像ですが、実際はもっと長かったらしい。この映像では見られないフィルム写真が残っていることから、カットされているシーンがあるかもしれないということです。というわけで、ブートですがあまり見る機会もなさそうな映像なので詳しく紹介(ネタバレ)していきます。

ストーリーは『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』のミックス。『不思議〜』に『鏡〜』のエピソードが一部挿入されている映像は少なくないですが、この作品は珍しく導入部が『鏡〜』なのです。大きな暖炉の上の鏡とチェスのある部屋の中で、アリス(シャーロット・ヘンリー)はアームチェアに深々と座って、猫のダイナ(キティではない)と遊んでいます。そう、部屋の感じはジョン・テニエルの描いた『鏡〜』の挿絵を想像してください。窓の外は雪景色。家庭教師が部屋から出ていくと、アリスは暖炉の上に立ち、鏡を通り抜けて…とアリスの冒険が始まります。
鏡の裏側に抜けたアリスは、暖炉の上からフワッと降り立ちます。動き回るチェスの駒たちのエピソードなどがあり、アリスは取っ手が下についているドアから部屋の外に出ます。階段もフワ〜ッ、ススーッと浮かんだまま降りて家の外に。目の前を大急ぎで駆けていく白うさぎ(スキーツ・ギャラガー)の後を追って、アリスはゆっくりと穴の中に落ちていく…。と、ここからストーリーは『不思議〜』に。

地下に辿り着き、大きなドアを開けるとまたドア。さらにドアを開けるとまたまたドア。これは後にハリー・ハリス監督『アリス・イン・ワンダーランド』(1985)でも使われます。Drink meのボトルにはご丁寧にも「not poison」と。安心して飲めますね(笑)。そして、大きくなったり小さくなったりして涙の池のエピソードに入り、ネズミ→ドードー→イモムシに出会います。イモムシのきのこの片側を食べてまた大きくなったアリスは公爵夫人の家を見つけ、そこに入るためにきのこの片側を食べてまた小さくなります。蛙・魚の召使いからきちがいティーパーティと『不思議〜』進行が続き、帽子が飾ってある木の扉を抜けると女王のクローケー・エピソードに突入。どうも本物のフラミンゴを木槌にモルモットを打っている様子(笑)。グリフォンの咆哮によりハートの女王と公爵夫人が怯え逃げ去り、グリフォンとアリスはモック・タートルのところへ。涙ながらに歌っているモック・タートルを残し、グリフォンとアリスは駆け出す。そのうちに走っているアリスの手を握っているのはグリフォンから赤の女王に変わり再びストーリーは『鏡〜』へ。

チェス盤のような土地で小川を飛び越えたアリスは、トゥイードルダムとトゥイードルディに出会います。ダムとディーが踊るとき、木の枝がギーギーキーキーと音を奏でるのだが、これは擬音語のダムとディー(ティードルダムは低音“ギーギー”、ディーは高音“キーキー”を意味する)を現しているのでしょう。彼らが「詩は好きかい?」と紙芝居(?)のなかで「セイウチと大工」を暗唱してくれるのですが、この詩の部分は実写ではなくアニメーションが用いられています。
彼らの決闘→大ガラス→ショールを飛ばされた白の女王→羊、ときて、羊の店で買い求めた卵がだんだん大きくなりハンプティ・ダンプティ(W.C.フィールズ)に。ハンプティが塀からドガシャーンと落ち、白の王様の「Nobodyが見える目」話になり、白の騎士(ゲイリー・クーパー)登場して発明品の話。このあたり、他ではあまり映像化されていないようなエピソードを見ることができて満足です。
女王アリスのパーティでは、いままでの登場人物が一堂に会し徐々に狂乱していきます。狂暴になった赤の女王に首を絞められ揺さぶられたアリス、気がつくと女王はダイナなのでした…。

約76分にふたつの物語が詰め込まれているため、それぞれ省略されているエピソードもあるわけですが、そんなことはあまり気にならないほどよく作りこまれています。背景や登場人物もテニエルの挿絵に近づけてあり、なによりキャラクターのほどよい不気味さがいい。役者の顔なんかほとんど出ない気ぐるみ状態というのも、人形アニメーションを観ているようで楽しいです。
当時、W.C.フィールズのハンプティが人気をかっさらったらしいですが、そりゃそうだろうと思います。強烈なキャラクターと、女王アリスのパーティでの片目に黒い眼帯という、いかにも「オレ様は悪です」っぷりな“狂暴さ”が、単純明快で受けたんじゃないかなー。
アリス役のシャーロット・ヘンリーは、お嬢さんって感じのとても美しく可憐な少女。個人的にはもう少し小憎たらしさが欲しかったけれど、役には合っていたと思います。
全体のイメージは『鏡〜』の要素が強く出ているように感じました。始まりと終わりがそうだったからということもあるし、アリスがヘアバンド(リボン)をしている(『不思議〜』でのアリスはヘアバンドはしていない)ってこともあるかもしれないです。

この作品はもちろんモノクロ映像ですが、カラーでは味わえない想像力が働きワクワクします。CGなんか使わなくっても、“不思議”は目の前で起きるからステキなんです。
2001.04.14 
  DVD VHS(輸入版)
発売元 未発売 廃盤
FILM 1933年 76分 アメリカ
監 督 Norman McLeod
脚 本 Joseph L. Mankiewicz, William Cameron Menzies
音 楽 Dimiti Tiomkin
出 演 Charlotte Henry / W. C. Fields / Gary Cooper / Skeets Gallagher / Alison Skipworth / Edna May Oliver / E.E.Horton / Billy Barty / Roscoe Karns / Jack Oakie / May Robson / Richard Arlen / Cary Grant / Ned Sparks
ALICE IN WONDERLAND
※ビデオパッケージではありません
 
 
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