UNDERGROUND RESIDENTS
Nonsense Poems in Alice
PREVNEXT
DREAMCHILD
Director : Gavin Millar / Alice : Amelia Shankley
ギャビン・ミラー監督『ドリームチャイルド』/ アリス:アメリア・シャンクリー
 
冒頭シーン。暗く荒れた海原とごつごつした岩の海岸にはモック・タートルとグリフォン、そしてひとりの老女。しくしくと泣いているモック・タートルに何故泣いているのかと聞く老女。理由を教えてやれとグリフォン。とうとうと説明をはじめるモック・タートル。そしてそこにいて話を聞いていたはずの老女は、気がつけば少女アリスだった…。

映画の舞台は1932年、当時アリスのモデルとなった現在80歳のアリス・ハーグリイブス夫人は、ルイス・キャロル生誕100年祭の式典に招かれコロンビア大学で名誉学位 を受けるため、付き添いのルーシーとともに初めてニューヨークへ渡りました。熱烈な歓迎と金に絡んだイベントの数々に戸惑うふたり。ハーグリイブス夫人は、不思議の国の少女「アリス」「アリス」と騒がれるうちに、忘れようとしていたドジソン(キャロル)との想い出が蘇る。死が間近な老女と輝かしいあの頃の少女の想いが交互に語られてゆく…。

少女アリス役は黒髪おかっぱのアメリア・シャンクリー。アリス・リデルの当時の髪型に近い。そしてドジソン先生のどもりを小馬鹿にしたように笑うところも、ドジソン先生のアリスへの淡い恋心を知っていて意地悪をしてしまったり、その反面 とても優しくしてしまうところも、想像しているアリスに最も近いです。子供なら誰でも持っている小悪魔的な魅力を感じます。これじゃ、キャロルも好きになっちゃうよ〜、とか思いつつ、実は私はキャロルとアリスの性的な意味での愛の真偽には興味がないのです。
確かに愛情はあったと思います。いわゆるロリータ・コンプレックスなのかもしれないとも思う、けれど。通俗的な意味でのロリコン=性的倒錯者だとしたらそれとはまた違うんでしょう。少女(少年)に対する深い愛情と美意識と、そして何よりも尊敬があったと思うから。その感じはこの映画ではうまく表現されていると思います。ラストの老女アリスのスピーチにもそれは現れています。

老女アリス役のコーラル・ブラウン、ドジソン役のイアン・ホルム、そして少女アリスのアメリア・シャンクリー。彼ら彼女らの名演を見るだけでも価値アリですが、ジム・ヘンソンのクリーチャーたちの見事さ不気味さも必見です。また、アリスの母親役ジェーン・アッシャーは14歳の時に舞台『アリス・イン・ワンダーランド』でアリスを演じています。映画の内容とは全く関係ないけど、ここにもひとつ成長の記録が…(笑)。ジェーンはビートルズのポール・マッカトニーの元恋人だったり、実兄がピーター&ゴードンのピーター・アッシャーだったりするので、サウンド面でも影響があるかもしれませんねー。いずれ、探ってみようと思います。

少女と老女の間に交錯する夢と現実とおとぎ話。老女の美しくも懐かしい回想なのか、少女があの金色の午後に見た夢の中なのか…。さあ、夢を見ているのはどっち?
2001.02.24 
  DVD VHS
発売元 未発売 東北新社
販売元   松竹 ビデオ事業部
品 番   KS-0112
発売日   1986
FILM 1985年 90分 イギリス
監 督 ギャビン・ミラー
製 作 リック・マッカラム/ケニス・トラッド
製作総指揮 デニス・ポッター/ベリティ・ランバート
脚 本 デニス・ポッター
クリーチャー・
デザイン
ジム・ヘンソン
出 演 アメリア・シャンクリー / コーラル・ブラウン / イアン・ホルム / ピーター・ギャラガー / ジェーン・アッシャー
DREAMCHILD
Photo:国内版VHS
 
 
TOP