UNDERGROUND RESIDENTS
Nonsense Poems in Alice
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ALICE TROUGH THE LOOKING GLASS
Director : Harry Harris / Alice : Natalie Gregory
ハリー・ハリス監督『鏡の国のアリス』/ アリス:ナタリー・グレゴリー
 
ハリー・ハリス監督のTV映画『アリス・スルー・ザ・ルッキング・グラス』は二部構成で、『アリス・イン・ワンダーランド』の後編にあたります。作品の全体の流れは前編で紹介しているので、まずはそちらを参照してくださーい。

自分の家にやっと帰ることができたと喜んだのも束の間、アリス(ナタリー・グレゴリー)のいる場所は鏡の裏側の世界でした。失望したアリスは一冊の本を手にとります。「ジャバウォッキー」という名の本(鏡の国の文字が逆さまになっていない!!)を読んだアリスの目の前に怪物が現れ……。チェス盤のような土地を持つすべてが逆の鏡の国で、奇妙な住人たちに出逢いながらアリスは元の世界に戻るためにクイーンを目指します。

前編同様、こちらもほぼ原作に沿って物語は展開します。が、やはり「大人になる」ということが大前提で、後編ではさらにテーマが具体的となってきます。恐怖心を克服することが大人としての証だという。その恐怖の象徴として、アリスの心が自ら作り上げた怪物ジャバウォッキーが登場するのです。
ジャバウォッキーはアリスの進む先にたびたび出現します。ハンプティ・ダンプティ(ジョナサン・ウィンタース)との会話の途中にも現れ、こともあろうに、ハンプティを塀から突き落としてしまう! 原作では「ジャバウォッキー」を解読してくれる言葉の支配者ハンプティ。言語の化け物ジャバウォッキーに負けるということは、自ら支配する言語に打ち負かされたということ!? だとすると大問題ですが、ここでのジャバウォッキーは言語怪獣ではなく恐怖心怪獣としての役割だからと思えば、まあいいかー。

後編のキャストも大物揃いです。そして、歌もスバラシイ。白の女王(キャロル・チャニング)のしゃがれた歌声の迫力あること! 赤の女王(アン・ジリアン)との息もピッタリで聴き惚れます。トゥイードルダム(スティーヴ・ローレンス)とトゥイードルディー(イディー・ゴーメ)の歌から始まる「セイウチと大工」が聴けるのもうれしい。ちなみに、ディーとダムはバド・タウンゼンド監督『エッチの国のアリス』(1976年)と同じく男女のカップルです。音楽スタッフであるスティーヴ・アレンが汽車の乗客である白い紙の服を着た紳士を演じていたり、ラストの女王アリスのパーティには不思議の国の住人たちも登場するなどの遊び心も楽しい。
そして、前後編と主役アリスを演じたナタリー・グレゴリー。子どもらしいふくよかな顔立ちは笑顔が魅力的で、二重あごさえも可愛く見えてきます。なんだかブロンドの頭髪が重たく見えますが、これは鬘のようです。なんで、鬘?

この作品は前後編ともにオススメですが、残念ながら日本版ビデオは出ていません。日本でも以前、坂本真綾の吹き替え版がTVで放映されたことがあります(つい最近では関東で2001年12月に放映)が、TVを見逃した人は輸入版で見るか、またいつか放映される日を待つしかなさそうです。これだけ人気スターが登場し『不思議〜』『鏡〜』の両方が楽しめる作品なのに、当時日本版が出なかったのは不思議。同じく海外TV映画のニック・ウィリング監督『不思議の国のアリス』(1999年)は日本版が出ているのになー。
豪華キャストや成長物語的要素だとか、映像面では劣るものの相似点がいくつかあるけれど、個人的にはハリー・ハリス監督作の方が好き。海外ではかなりメジャーな作品だろうから、これが気軽に観てもらえないというのはかなり残念なことだと思うのです…。
2002.04.10 
  DVD VHS (輸入版)
発売元 日本未発売 WAENER HOME VIDEO
品 番   35790
FILM 1985年 93分 アメリカ
監 督 Harry Harris
製 作 Irwin Allen
脚 本 Paul Zindel
音 楽 Steve Allen / Morton Stevens
出 演 Natalie Gregory / Carol Channing / Ann Jillian / Jack Waeden / Jonathan Winters / Lloyd Bridges / Steve Lawrence / Eydie Gorme / Harvey Korman / Sheila Allen / Red Buttons
ALICE TROUGH THE LOOKING GLASS
Photo:輸入版VHS
 
 
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