UNDERGROUND RESIDENTS
Nonsense Poems in Alice
PREVNEXT
ALICE IN WONDERLAND
Director : Jiri Srnec / Alice : Marcela Skrbkova
イジー・スルネッツ監督『ふしぎの国のアリス』(プラハ・ブラックライト・シアター) /
アリス:マルツェラ・スクルプコヴァー
 
光と闇の中を、バレエ、マイム、音で演じるプラハ・ブラックライト・シアターによる舞台『ふしぎの国のアリス』。1995年、彼らが初来日したときの演目がアリスでした。

プラハ・ブラックライト・シアターは、1961年チェコスロヴァキアのプラハでイジー・スルネッツによって設立されました。ブラックライトを使うおもしろさえに加え、音楽・ダンス・マイムなどの演劇的要素も強く、他のブラックライトを使う劇団の中で最も高い評価を得ている、んだそうです。
確かにブラックライトの効果もバッチリで、舞台上のすべての物・人は夢のように浮かんでは消え、消えては現れる…暗闇の中、輝かしく幻想的な世界が繰り広げられています。音楽も美しく、登場人物の華麗な舞はお見事。ただ残念に思ったのは、あらかじめ録音されているのかセリフが口パク。マイムだから? それならいっそのことセリフはなくていいかも…。とはいえ、わたしは彼らの生の舞台も、その他のブラックライト使いの劇団も観ていないので、もしかすると口パク効果なるものがあるのかもしれません。

ストーリーは、アリスが不思議の国に迷い込み奇妙な住人達に出逢い、背が伸びたり縮んだりおかしな現象に驚いたり。お茶会などのいくつかの有名なシーンもあるが順番はバラバラ。『不思議の国のアリス』をメインに『鏡の国のアリス』を取り入れた、スルネッツ・オリジナル・ストーリーに仕上がっています。
原作との大きな違いは、アリスと白うさぎの関係、そして赤い鳥の存在。ここでの白うさぎは好意的で常にアリスを助ける。アリスをじゃけんにし、女王にへいこらしている原作の白うさぎとはまったく対照的。赤い鳥は舞台上では重要な役割を持っているようですが、原作には登場しまぜん。鞭をふるって大暴れのこのふたり(二羽?)の赤い鳥、最後に首をちょん切っちゃうあたり、ハートの女王の役どころでしょうか? 顔はブラザーズ・クエイの作品に登場する人形っぽくてけっこう怖いです。しかし、何故鳥なのかは謎。
首をホントにちょん切ってしまうといえば、ヤン・シュヴァンクマイエルの『アリス』もそうですが、スルネッツの『ふしぎの国のアリス』もチェコっぽい不気味さを持っているなぁ。ハンプティ・ダンプティだと思っていたたまごからは虫が湧くし。
テニエルの挿絵を背景に、カギやスプーン、ボールなどの小道具が光を帯びて宙を舞う。闇・光・闇…視覚の不思議。暗い劇場の中では一層美しさが増すんだろうな。

真っ白な衣装にバレエ・シューズを履いた可憐なアリスは、マルツェラ・クラトヒヴィーロヴァー=スクルプコヴァー。彼女についての情報がいまのところ皆無です。サイト見てもチェコ語だからわからないし…。ナレーション(というか日本語吹き替え?)は岸田今日子さま。一層不気味に仕上げてくれました(笑)。

最後に余談を。ネットで実際に観劇した人の感想を読んでいたら、「あまり引き込まれなかったのは自分が童心を忘れてしまったからなのだろうか?」とか「もっと見えてくるものがあったのかもしれないが、あまりに自分が疲れすぎてて」など、盛り上がれなかったのは劇のせいではなく自分のせい、と考えてる人が多くって。そんな風に思わなくてもいいのに。
ビデオでも十分に楽しませてくれたけれど、ぜひ劇場を訪れて実際に体験してみたいと思います。CGとは違ったおもしろさが不思議の国へ連れていってくれるでしょう。いつかチェコに行きたいなぁ。
2002.02.11 
DVD VHS
発売元 未発売 ビクター エンタテインメント
品 番   VIVC-4
発売日   1995.06
FILM 1995年 70分 プラハ
芸術監督・
演  出
イジー・スルネッツ
音 楽 イジー・コプチーク
衣 装 ボフミル・ジェムリチカ
出 演 マルツェラ・クラトヒヴィーロヴァー=スクルプコヴァー / マレク・フェイト / カテジナ・レイマノヴァー / ヤン・マルチネツ
ALICE IN WONDERLAND
Photo:国内版VHS
 
TOP