UNDERGROUND RESIDENTS
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DRUG QUEEN ALICE - ACID SOUND and ALICE
 カセットテープ・スーパースター
 マッド・サンプラー、ランディ・グライフ(Randy Greif)の『アリス・イン・ワンダーランド』。これ、スバラシイ。アヴァン・ギャルド、ノイズ、サイケデリック、ダブ…となにに括られるものかと無意識に考えてみたりしたけど、こういうサウンドを前に無意味なことでした。ジャンルなんて意味ないよなぁと思うのは、こういう音楽を聴いちゃったときだ。こんなこと書いてても伝わらないと思うのでメジャーなところで例えてみれば、山塚EYE関連(UFO OR DIE、ハナタラシ、初期のBOREDOMSなど)のサウンドからポップさを取り除き、暗〜く幻想的にした感じ、というのでどうだろう? わたしがよく聴く音楽の中ではかなり近いと思った。聴いてる音楽が偏っているので個人的すぎる意見かも。すみません。ただ、ノイズって言っちゃうと違くて、もっと遊び心があるというか。カセットテープで遊んでる感じ。いまはコンピュータかもしれないけど。
 ということで、リスペクトの意を込めて、彼をカセットテープ・スーパースター!!!!!!!! と勝手に呼ぶ。
 RANDY GREIF『ALICE IN WONDERLAND』
 SOLEILMOON RECORDINGS SOL55 CD U.S.A.
『ALICE IN WONDERLAND』
 ランディ・グライフは、1970年中期頃から、話し言葉(音声)のカットアップとミュージック・コンクレート(具体音楽:外界に存在する音、自然の音や生活していくうえで出る音とかをテープに録音し編集・構築する音楽)による“サウンド・シアター”なる聴覚の芸術をつくり続けている。1983年にはSWINGING AXE PRODUCTIONS (SAP)を設立し、自分の志向にあったものをリリース。最初の数年はカセットのみだったそうだ。バイオグラフィーにMerzbowの名前があったけど、これって秋田昌美氏のだよね。さすが。
 そういった音づくりの中、5年をかけた大きなプロジェクトがあった。それが『アリス・イン・ワンダーランド』なのだ。
 このアルバムは、1991年〜1993年の間にStaalplaatレーベルからナンバーつきの限定シリーズとしてリリースされた。2000年に、イラストやデザインも一新したリマスター盤を5CDボックス・セット(画像左)として再発。現在も、SOLEILMOON RECORDINGSのサイトで購入できる。CD一枚一枚に、ランダムに選ばれたトレーディング・カードが入っている。しかし、いったい誰とトレードすればいいのだ?  ちなみに、このトレーディング・カードも10枚1セットで販売中…。
 各CD、10〜14曲収録されていて、全部通して聴いたらほぼ6時間になる。これを6時間ぶっとおしで聴いたら幻覚だって見えてくるだろう。ドラッグいらず。サウンドはめちゃめちゃかっこよくて、本当に、聴いてるだけで映像が見えてくるからスゴイ。
DISK1
【DISK 1】  
01. The Rabbit Hole 07. Every Golden Scale
02. Down 08. Gently Smiling Jaws
03. Curiouser And Curiouser 09. Growing Small
04. She Looked Down At Her Feet 10. A Pool Of Tears
05. Who Am I, Then ? 11. A Queer Looking Party
06. How Doth The Little Corcodile? 12. Silence All Round
DISK2
【DISK 2】  
01. A Caucus Race 08. A Shower Of Pebbles (revisited)
02. Prizes! Prizes! 09. Who Are You?
03. Only A Thimble 10. You Are Old Father Williams
04. Hand It Over Here 11. Three Inches High
05. In The Distance 12. Serpent
06. Ferrets Are Ferrets 13. The Fish Footman
07. A Shower of Pebbles 14. Ballad Of The Frog Footman
DISK3
【DISK 3】  
01. Sneezing And Howling 06. A Grin Without A Cat
02. Speak Roughly To Your Little Boy 07. I Sleep When I Breathe
03. Handsome Pig 08. Tea Tray In The Sky
04. I'm Mad, You're Mad 09. Treacle
05. Dog 10. The Cool Fountains
DISK4
【DISK 4】  
01. This Grand Procession 07. Shall I Try The Experiment?
02. You Shan't Be Beheaded 08. The More There Is Of Mine, The Less There Is Of Yours
03. What A Pity 09. What Fun!
04. A Very Difficult Game, Indeed 10. Mock Turtle
05. A Furious Passion 11. Laughing And Grief
06. The King's Argument  
DISK5
【DISK 5】  
01. Sobs Choked His Voice 08. The Accident Of The Goldfish
02. The Whiting 09. A Mile High
03. The Voice of The Slagger 10. An Atom Of Meaning
04. Beautiful Soup 11. Off With Her Head!
05. Twelve Creatures 12. One Hundred Fifty Invisible Horses
06. Nervous Or Not 13. The Dream Of Wonderland
07. Witness  
 上に並べた5枚のジャケット。ここから想像する音にかわいらしい要素があるはずもなく、ジャケット同様、ダークでアートな音の群がサイケな「アリス」の世界を構築している。歪んで、刻んで、ループ! ループ! ループ!
 このCDは5枚通してすべて、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』がコンセプト。キャロルの原作のテキストを歌詞として使用している。歌というよりはナレーションであったり会話というものがメインで、声は、アリスあり、その他の登場人物ありとさまざま。その会話のバックでうにうにしたサウンド、ノイズ、電子音がうごめく。話し言葉は解体され再構築される。セリフはひとつのリズムとなって、ループしまくる。ダークでデリケートな悪夢。
 それぞれのアルバムを曲名でたどると、グライフ・サウンドの特徴のひとつであるカットアップ手法に似て、物語の構造自体も細かく切り刻まれている。まぁ、全60曲もあるわけだし。
 おおまかにわけると、こんなふう。
DISK 1 ウサギ穴に落ちてから涙の池あたりまで、全12曲。
DISK 2 コーカス・レースから魚と蛙の召使い登場まで、全14曲。
DISK 3 公爵夫人家からチェシャー猫との出会い、キチガイお茶会まで、全10曲。
DISK 4 ハートの女王の庭でのクローケー・ゲームからグリフォンとにせ海亀登場まで、全11曲。
DISK 5 にせ海亀の嘆きからラストまで、全13曲。
 と、トータル60曲でほぼひとつの物語になっている。前項で紹介したアリス・スルー・ザ・ルッキング・グラス『アリス・スルー・ザ・ルッキング・グラス』ほど明解ではないが、聴けば、あぁ「アリス」の世界だなとわかる。本人だったか誰だったかが、これはキャロル原作『不思議の国のアリス』のサイコ・ヴァージョンだと言っていたそうだが、ハートの女王の「Off with her Head!!!!!!!」のループでこっちまで気が狂いそう。いや、チェシャ猫の言うとおり、不思議の国に迷い込んだわたしはすでにキチガイってことなのか。

 アリスが好きで音響系が好きなら、言うことナシのアルバム。買いでしょう。
SWINGING AXE PRODUCTIONS RANDY GREIF Discography & Biography
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