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Review: Cie Feria Musica, Le Vertige Du Papillon
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2007/01/21
Cie Feria Musica
Le Vertige Du Papillon
『蝶のめまい』
クラブチッタ, 川崎
2007/01/20, 14:00-15:30
Choreography and directing: Fatou Traoré
Artistic director: Philippe de Coen
Music director: François Garny
Stage design and creation: Philippe de Coen, Bruno Renson et Serge Simon
Lighting design: Philippe Baste
Circus artists: Arnaud Bernard (stage director), Gaël Bernier (acrobat, Chinese pole), Anke Bucher (flyer on swinging aerial silk, acrobat) Linde Hartman (carrier on aerial cradle), Serge Lazar (acrobat), Anna Nilsson (flyer on aerial cradle), Kiluangi Runge (acrobat, Chinese pole), Niels Seidel (juggler, acrobat).
Musicians: François Gerny (bass, double bass, guitar), Manuel Hermia (Indian flutes, saxophones), Benoît Louis (keyboards), Michel Seba (percussion).

Cie Feria Musica は1995年に設立された ベルギー・ブリュッセル (Brussels, Belgium) を拠点とする contemporary circus のカンパニー。 初来日公演の演目 Le Vertige Du Papillon の 演出・振付を手掛ける Fatou Traoré は、 Rosas で踊っていたこともある、 現在はダンスカンパニー F.T.1x2x3 を主宰する ベルギーの女性振付家だ。

一番印象に残ったのは、やはり大技の空中芸のパフォーマンスだ。 二つ折のティッシュを使ったパフォーマンス (swinging aerial silk) は、 静かな空中ダンスに始まり、大きくティッシュを揺らしてダイナミックに飛び、 ぐっと舞台に引き込まれた。 最後の人にぶら下がっての空中アクロバット (aerial cradle) のデュオも、 フィナーレに相応しい華やかさと余韻が感じられた。 オープニングのティッシュに包まれた女性パフォーマーが蛹とすれば、 最後の duo のスイングは蝶の羽ばたき、ということで、 明示的ではなかったものの、蝶のライフサイクルをテーマとしているようであった。 派手なものではなかったが Chinese pole や trampoline を使った動きも面白かったし、 空中芸をはじめフロアを離れての美しい動きがとても楽しめた舞台だった。

空中芸のような大技の繋ぎに、 道化的な登場人物による狂言回し的パフォーマンスではなく、 dance (といっても acrobat や martial arts 系の動きだが) を持ってくるあたりが、contemporary dance 出身の演出家らしいと感じた。 (強いて言えば男性 acrobat の Lazar が道化的な登場人物を担っていたとは思うが。) ただ、空中での動きが良いだけに、フロアでのパフォーマンスが鈍く感じられ、 それほど巧くいっていなかったかもしれない。 むしろ、contemporary dance っぽい演出で良いと思ったのは、 例えば、空中のティッシュでのアクロバットに合わせて、 フロアでのアクロバットをシンクロさせるような所。 こういう空間使いというか動きによる立体感作りを もっと見せて欲しかったようにも思った。 ちなみに、Traoré という名前は西アフリカ系だが、 特に西アフリカを感じさせる演出は無かった。

ゆったりとしたパフォーマンスで笑いを取る所は多くなかったが、 そんな中では、double bass と percussion を伴奏に使った 2人による juggling のシーンは、演奏と動きの絡みも良かったし、 ほっと一息つけるようなシーンだったように思う。 こういうシーンを大技の繋ぎにもっと使うと circus らしくなったようにも思うが、 それはこの作品が狙うところではないだろか。

ちなみに、音楽は生演奏で、 ベルギーの ethno jazz rock trio Slang (Carbon 7 レーベルからリリースがある) の Garny, Hermia, Seba に、 カンパニー創設者でもある Benoît Louis を keyboards に加えた編成。 演奏するのは jazz といっても、オリエンタルな旋法も使う mode jazz (Coltrane 的な) 〜 初期 fusion あたりがベースだろうか。 単に舞台隅で伴奏に徹するのではなく、 パフォーマンスに軽く絡むような動きをするときもあったし、 特に、bass/guitar の Garny と flute/sax の Hermia は、 パフォーマンスに合わせて舞台上を移動して演奏していた。 音楽が目立って良かったという感じでも無かったが、 B.G.M.という感じではなく、 音楽とパフォーマンスが一体になっているよう感じられたのは良かった。

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