TFJ's Sidewalk Cafe >

談話室 / Conversation Room

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[3898] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Mar 1 22:54:40 2021

先週末土曜は午後に与野本町へ。この公演を見てきました。

彩の国さいたま芸術劇場 小ホール
2021/02/27, 15:00-16:30.

りゅーとぴあ (新潟市民芸術文化会館) のレジデントカンパニーの Noism の新作ダブルビルが 本拠地に続き関東で公演されたので、観てきました。 新型コロナウイルス感染症流行直前、約1年前の『森 優貴/金森 穣 Double Bill』 [鑑賞メモ] に続いて、同じ2人の振付です。

Noism1 / 森 優貴
『Das Zimmer』
演出振付: 森 優貴.
音楽: Sergei Rachmaninov, Frédéric Chopin.
衣裳: 鷲尾 華子.
出演: Noism1: 井本 星那, 林田 海里, Charlie Leung, Kai Tomioka, 鳥羽 絢美, Stephen Quildan, 西澤 真耶, 三好 彩音, 中尾 洸太, 杉野 可林 (準メンバー).
初演: 2021年1月22日 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 スタジオB.

舞台上の道具は木製の近代椅子のみ、20世紀前半頃を思わせる洋装の彩度の低いセピア色の衣装に、 ロマンチックに盛り上がるピアノ曲を多用した音楽で、 ダンスというより物語の断片を大振りのマイムで演じるかのような場面が展開していきます。 その物語はロマンチックの男女関係を思わせるものもありますし、苦悩や離別を想起させるようなものもありますし、 椅子に腰掛けて静かに見つめている場合もあります。 そんな場面の断片を、空間的に並置していくだけでなく、暗転で細かく場面を切って繋いでいきます。 ピアノ伴奏でセピア色の衣装のそんな無言の動きを観ていると、 ピアノ伴奏付きの1920s頃モノクロサイレント期のメロドラマ映画の断片コラージュを観ているよう。 人の動きで構成展開していくというより、活人画的にも感じる時もありましたが、 舞台上のレトロな雰囲気もあってむしろそれが合ってたようにも感じました。 森 優貴 の振付作品を観たのはこれで3作目ですが、この作品が最も好みです。

Noism0 / 金森 穣
『残影の庭〜Traces Garden』
演出振付: 金森 穣.
音楽: 武満 徹 『秋庭歌一具』より (第4曲「秋歌」以外の5曲, 第1曲「参音聲」, 第2曲「吹渡」, 第3曲「塩梅」, 第5曲「吹渡二段」, 第6曲「退出曲聲」; 怜楽舎による演奏録音源)
衣裳: 堂本 教子.
木工美術: 近藤 正樹.
出演: Noism0: 金森 穣, 井関 佐和子, 山田 勇気.
初演: 2021年1月10日 ロームシアター京都 (『シリーズ 舞台芸術としての伝統芸能 Vol. 4 雅楽)
小空間・録音版初演: 2021年1月22日 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 スタジオB.

ロームシアター京都開館5周年の委嘱作品として、雅楽の楽団 怜楽舎 との共演を前提に作られた新作です。 雅楽との共演、といっても、古典的な太平楽とかではなく、 雅楽アンサンブルのための現代曲 武満 徹 『秋庭歌一具』 (1973/1979) が用いられています。 蝋燭が建てられた衝立に囲まれた舞台に、衣装も薄絹の羽織こそ和風ですが、 日本的な意匠をことさら強調せずにミニマリスティック。 摺足気味の上下の動きを抑えた足捌きや、能狂言を思わせる足を踏み鳴らすような動きに少々日本的な所作を感じる程度。 床に投影されたシルエットに重なるようん 井関 が踊る場面での、井関とシルエットの関係は、 『クロノスカイロス1』や『Fratres II』 [鑑賞メモ] も想起され、 『残影の庭』というタイトルにも映像と身体との関係への問題意識を感じさせるもの。 雅楽を用いつつも、和の意匠をキッチュに用いることなく、 むしろそれまでの創作で感じられるような問題意識と通底するミニマリステックなスタイルで纏めていた舞台でした。

新型コロナウイルス感染症流行で多くのカンパニーが公演できなくなり映像のストリーミングなどを行なっていますが、 Noism も映像舞踊と謳った作品をストリーミングで公開しています。これについても併せて。

演出振付: 金森 穣.
音楽: Maurice Ravel Boléro
編集: 遠藤 龍.
振付・出演: 井関 佐和子, 池ヶ谷 奏, Geoffroy Poplawski, 井本 星那, 林田 海里, Charlie Leung, Kai Tomioka, Stephen Quildan, Tyrone Robinson, 鳥羽 絢美, 西澤 真耶, 三好 彩音.
収録場所: S.H.S (Sweet Home Store) TOYANO
公開: 2020年10月9日
URL: https://filmuy.com/noism/video/465622376

2020年の半ば、新型コロナウイルス感染拡大で厳しい外出禁止令となった欧米を中心に、 ミュージシャンやダンサーによる自宅からウェブ会議システムを使ってのセッションがよく行われ、 その映像がSNSなどで流通することも多かったのですが、その映像スタイルを踏まえた作品です。 流石に日本の狭い個人宅での収録は難しいということで、 地元のヴィンテージ物も扱う家具店の協力を得てその店舗を収録場所に使い、 自宅風に見せた空間での各ダンサーのダンスを、ウェブ会議風のマルチウィンドウ画面に編集しています。 そしてラスト近く舞台上での集合パフォーマンスにつながり、再びバラバラの画面で皆が臥せて終わります。 音楽に Bolero が使われており、音楽の各パートに対応してダンサーが踊るのですが、 次第にパートが増えて盛り上がっていくという曲の展開もそんな演出にうってつけでした。 自宅ではないので生活感溢れている程ではないけれども日常に近い空間で、普段着に近く感じる服装もあり、 外出自粛での室内での一人での煩悶、舞台上に集合しての踊りへの希求、形式も含めユーモアを感じさせるダンスと映像で、 Noism の舞台作品と一味違う共感と親しみを感じるものでした。 新型コロナウイルス感染拡大による公演機会喪失を受けて始まった Instagram Live を使った金森 穣と井関 佐和子のトークにしてもそうですが、 新型コロナウイルス感染拡大の状況を受けての活動を通して、 Noism の意外な親しみやすい面を見ることが多くなったようにも思います。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3897] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 28 22:27:05 2021

21日日曜夜にNHK BSプレミアムシアターで放送されたこの舞台映像がNHKオンデマンドで視聴可能になったので、23日祝日の晩に早速観ました。

Ballet de l'Opéra national de Paris / Crystal Pite
Palais Garnier, l'Opéra national de Paris
2019/11/20,22, 84min.
Créé par Crystal Pite.
Musique originale: Owen Belton; Musique additionnelles: Frédéric Chopin Préludes, Teddy Geiger Body And Soul.
Texte: Crystal Pite; Voix: Marina Hands; Scénographie: Jay Gower Taylor; Costumes: Nancy Bryant; Lumières: Tom Visser; Assistants de la choréographe: Eric Beauchesne, Jermaine Spivey.
Avec: Léonore Baulac (danseuse étoile), Ludmila Pagliero (danseuse étoile), Hugo Marchand (danseur étoile), Marion Barbeau, Héloïse Bourdon, Hannah O'Neill, Muriel Zusperreguy (premières danseuses), François Alu, Alessio Carbone, Marc Moreau (premièrs danseurs), et le Corps de Ballet de l'Opera national de Paris.
Première: 26 octobre 2019.
Film réalisé par Tommy Pascal.
NHK ondemand URL: https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2021112282SA000/index.html

2019年に Royal Opera House in Cinema で観た Flight PatternNederlands Dans Theater 来日公演で観た The Statements を手掛けた カナダの振付家 Crystal Pite が Ballet de l'Opera national de Paris で制作した2019年作が、 NHKオンデマンドでストリーミングされたので、Crystal Pite への興味もあって観ました。

3幕構成で、第1, 2幕は 第1, 2幕は、倒れた人とその脇で狼狽もしくは悲嘆する人の組を鍵に、 争ったり混乱したりする群衆の動きのイメージを重ねる展開で 絡み合った群集での動きは Flight Pattern [鑑賞メモ] も思わせます。 テキストを静かに読み上げる声を電子的に変容させていく音使いは The Statement [鑑賞メモ] のよう。 ここまでは今まで観た Pite の作品との共通点も感じられるものだったのですが、 第3部がいきなり昆虫ディスコという様変わりで面食らい、腑に落ちない後味でした。

第1幕は舞台装置なしでダウンの照明のみのミニマリスティックな演出。 衣装は最初黒コートでしたが、次第に上半身が白い下着だけに。 倒れた人とその脇で狼狽もしくは悲嘆する人の組が3回示されるのですが、 冒頭はの場面では横たわる男と脇で落ち着かない様子の男という組で、横たわっていた男が起き上がり手を伸ばすが深刻な雰囲気ではありません。 中盤では横たわる女とそれを静かに起こす男という組が出てきますが、寝ていた女性を起こすような親密な雰囲気。 第1幕最後の場面は、横たわる男と脇で取り乱す女、男は死んでいるよう。 そんな変奏が面白く感じられました。 その間の群舞は、争ったり混乱したりする動きの群舞ですが、 特に混乱の場面では戦場や暴動・革命を描いた古典絵画を活人画化したようにも感じられました。

第2部は衣装は第1部の上半身白下着の状態のまま、照明に変化があり、 舞台後方にスタンドで照明を並べて後方からの光の中で踊る場面が多くなります。 動きも同じようなモチーフが多用されましたが、 音楽が Chopin のピアノ曲 «24 Préludes, op.28» となり、 (男女だけでなく男2人の場合もありますが) 2人で組んで踊る場面が多くなり、 音楽もあって雰囲気はグッとロマンチックに感じられました。

第3部はうって変わって、金張りのバックに、音楽もディスコ風 (1970sのものではなく2000年代の音楽ですが) で、 ポップミュージックのステージダンスを思わせるダンスも。 衣装も頭部まで覆う黒光りするボディスーツ姿にトンガリ頭に手に長い爪様のものを付けており、 まるで蟻の群れが踊るように見えます。 そんな中、上半身がクケリのような長毛で顔まで覆われた男性ダンサーがソロで登場します。 このソロのダンサーと群舞する昆虫との関係は、そもそも第1, 2幕との関係は、と考えているうちに 第3幕が終わってしまいました。 第1, 2幕で描いた人間社会での摩擦や混乱は、昆虫社会にもある普遍ということなのかもしれないですが、 そうだとしても少々唐突で飛躍がありすぎるように感じられました。

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[3896] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Feb 23 22:18:48 2021

23日が祝休日ということを前日まですっかり忘れていたりしたのですが、 運動不足解消の散策ついでに、この展覧会を観てきました。

国立新美術館 企画展示室2E
2021/01/30-2021/03/07 (火休;2/23開,2/24休). 10:00-18:00.
大田黒 衣美, 利部 志穂, 笹川 治子, 髙木 大地, 新里 明士, 春木 麻衣子, 山本 篤; 竹村 京・鬼頭 健吾, 袴田 京太郎.

アニュアルで開催されている文化庁芸術家在外研修の成果報告展を、今年も観てきました 日本博スペシャル展で去年が充実していたということがあると思いますが [去年の鑑賞メモ]、 今年は自分の関心とすれ違ったか、去年のようには楽しめませんでした。 コロナ禍で取材しての作品が制作しづらいということもあるのか、内向的に感じられる展覧会でもありました。

そんな中で印象に残ったのは、本来なら失敗である割れがある磁器に光を当てて造形的な面白さを浮かび上がらせた 新里 明士 『光器』 シリーズ (2020)。 チューインガムで作ったオブジェを猫の上に載せて撮った写真を、チューインガムを拡大したようなオブジェは、 その題材からポップでキッチュにもなりうるところを抽象的な写真と彫刻によるフォーマルな展示にしていた 大田黒 衣美 の展示もそのギャップが面白く感じられました。 またそれとは対称的という点で、抽象的な空間構成を一見雑然としたオブジェでやるような 利部 志穂 のインスタレーションにも面白さを感じました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

国立新美術館では、こちらも毎年恒例 『令和2年度 第44回 東京五美術大学 連合卒業・修了制作展』も開催中。 せっかくなので、ざっと通して観てみました。 コロナ禍の影響を直接感じさせる作品はほとんど目につかなかったような。 この約1年間、コロナ禍で大学へいけなかったり取材や制作費も含め制作の制約も大きかったのではないかと思うのですが、 雰囲気の変わらなさにむしろホッとしたり。

[3895] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 21 22:43:20 2021

まだまだ年度末繁忙期&緊急事態宣言下ですが、 気分転換&運動不足解消のためこの週末は土曜の午後に恵比寿へ。 この展覧会を観てきました。

Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions 2021
東京都写真美術館, 日仏会館 ほか
2020/02/05-02/21 (月休), 10:00-20:00 (2/21 10:00-18:00)

東京都写真美術館とその界隈で開催されているアニュアルの映像芸術展です。 去年は新型コロナウイルス感染拡大による大型イベント自粛が始まる直前でギリギリ通常開催でしたが [去年の鑑賞メモ]、 緊急事態宣言下での開催となってしまった今年は、事前予約制で観賞時間2時間という制限付きでした。 この一年間の新型コロナウイルスの世界的なパンデミックで、 大掛かりな作品が制作し辛かったり、海外作家が招聘できなかったりしたこともあるのか、 制限時間内で鑑賞できるよう配慮したのか、 全体として小粒で、新作よりコレクションの歴史的な作品が目立っていたように感じました。

そんな中で印象に残ったのは、 シシヤマザキ (ShiShi Yamazaki) の一連の短編アニメーション [YouTube] でしょうか。 ロトスコープ技法ならではの動きの妙というより、 水彩のような滲みムラやクレヨンのようなテクスチャを使ったドローイングによる 明るくも彩度を抑えた色面からなる柔らかい人物像や風景が、 テンポよく動くところが気に入りました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3894] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 14 23:26:13 2021

年度末繁忙期だったり緊急事態宣言だったりで身動き取れてないのですが、 この週末はふと思い立って、日曜午前に代々木というか新宿駅から南西へ。 この人形劇を観てきました。

プーク人形劇場
2021/02/14, 10:30-12:00.
『りんごかもしれない』
原作・美術デザイン: ヨシタケシンスケ
脚色: 西本 勝毅; 演出: 柴崎 喜彦.
美術造形: 坂上 浩士; 音楽: 庄子 智一; 照明: 芦辺 靖; 音響効果: 川名 武; 振付: 上田 亮; アニメーション制作: 株式会社エクラアニマル.
出演: 小原 美紗 (少年, りんご人, りんご星人), 山越 美和 (俳優A, りんご少年, 赤ちゃん怪じゅう, りんご人, りんご星人), 川尻 麻美夏 (俳優B, りんご, 赤ちゃんロボット, りんご人, りんご星人).
初演: 2020/03/14, プーク人形劇場.
『わにがまちにやってきた』
原作: K・チュコフスキー [Корней Чуковский]; 訳: 内田 莉莎子.
脚色: 安尾 芳明; 演出: 栗原 弘昌; 美術デザイン: 宮本 忠夫; 人形構造: 斉藤 英一; 音楽: 宮﨑 尚志; 編曲: 宮﨑 道; 音響効果: 古川 安志; 照明: 阿部 千賀子.
出演: 柴崎 喜彦 (ワニ, 子犬, 他), 山越 美和 (ワーニャ, 風船売り, アヒルの親子, 他), 原山 幸子 (おばあさん, 煙突掃除夫, 兵隊たち, 他), 川尻 麻美夏 (太った婦人, 警官, 女の子, アヒルの親子, 他), 小原 美紗 (子犬, 大学教授, 隊長, アヒルの親子, 他)
初演: 1985年 (『ワニさん街を行く』として)

絵本作家として知られる ヨシタケシンスケ ですが、2013年の絵本作家デビュー以前は、 「カブリモノ」シリーズ (1992-1997) のような不条理な被り物というかメカ様の立体造形を現代美術の文脈で制作しており、 そのアイデアスケッチが発展して絵本になったという感もありました [鑑賞メモ]。 そんなヨシタケシンスケが1929年設立の現代人形劇の劇団プークが2020年にコラボレーションして新作を作ったということを遅ればせ知り、遅ればせながら観てきました。

絵本デビュー作でもある原作『りんごかもしれない』 (2013) はストーリー展開がある物語絵本ではなく、 むしろリンゴをきっかけに少年が様々な妄想というか連想を繰り広げるような「発想絵本」です。 振付のクレジットがある程、出遣いという以上に人形遣い自身の所作も使った演出で、 そのイメージの連想さながらにリンゴからの連想が変容していく様を舞台化していました。 原作というだけでなく舞台の美術デザインもヨシタケシンスケが手がけているのですが、 絵本以前に立体造形の作家だっただけに、その美術のセンスは人形劇との相性は抜群です。 この作品単発で終わせず、この路線でのヨシタケシンスケの活動に期待します。

『わにがまちにやってきた』は1985年初演 (2009年に新演出しているようですが) のレパートリー演目ということで、 『りんごかもしれない』直後に観たので出遣いでの比較的オーソドックスな演出に感じられましたが、 安定の面白さでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3893] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Feb 1 23:29:21 2021

London International Mime Festival (LIMF) がストリーミングで公開していた 過去にLIMFで上演された作品の中から選ばれた映像の中から、1月29-31日の週末に観た中から印象に残ったものを 先週末観た分の鑑賞メモはこちらです。

Devised and performed by Alex Harvey and Charlotte Mooney; Director: Deb Pope; Music composer: Patrick Larley; Costume designer: Tina Bicat; Lighting designer & Technical Manager: Justin Farndale; Equipment Designer: Alex Harvey and Charlotte Mooney
Premiere: September 2004, Theatre de la Cite Internationale, Paris.
Producer: Alison King (Turtle Key Arts)
Filmed live at Stratford Circus, London on 7th November 2008,
13min.

Ockham's Razor はエアリアルを得意技とするイギリスのサーカス・カンパニーです。 この作品では縦約250cm、幅約70cmの長方形のパイプの枠を吊り下げて、2段のトラペーズのように使い、男女2人組のエアリアルを演技します。 Momento Mori というタイトルは Memento Mori 「死を忘るなかれ」のもじりと思われますが、 ボディスーツの男性 Alex Harvey が骸骨の役で、 赤いワンピースの女性 (Charlotte Mooney) が骸骨=死と向き合っている、というコンセプトでしょうか。 ピアノ曲を伴奏に使い静かな動きも美しい作品です。

Devised and performed by Alex Harvey, Charlotte Mooney, Tina Koch; Director: Ruth Naylor-Smith; Music composer: Derek Nisbet; Costume designer: Tina Bicat; Lighting designer & Technical Manager: Justin Farndale; Equipment Designer: Ockham's Razor
Premiere: January 2007, The London International Mime Festival, The Linbury Studio, Royal Opera House.
Producer: Alison King (Turtle Key Arts)
Filmed live at Stratford Circus, London on 7th November 2008,
22min.

同じく Ockham's Razor による作品です。 パイプを縦3本横7本格子に組み、真ん中の横パイプを両端で格子をワイヤで吊り下げ、 その格子を使って Ockam's Razor のコアのパフォーマーである Alex Harvey, Charlotte Mooney, Tina Koch という男性1人女性2人でエアリアルを演技します。 構成はメロドラマチックな三角関係の物語を感じさせるものです。 最初は格子が水平になるよう四角がワイヤで固定されているのですが、 その格子の上で戯れ合い叩き合い、やがて中盤になると一組の男女が親密な雰囲気となり、 残された女性が嫉妬で四角の固定ワイヤーを外してしまい、格子は二本のワイヤーのみで吊るされた不安定な状態になります。 そして、3人の位置関係で回転してしまうような不安定な格子の上で和解が静かに演じられます。 吊るされた格子の不安定さが人間関係の不安定さのメタファーにもなっているかのうような面白さがあります。 LIMF 2007 での初演の際は、Momento MoriEvery Action [トレイラー] とのトリプルビルでしたので、 Every Action のストリーミングが無かったのが惜しまれます。 Ockam's Razor はLIMFの常連で、 トレイラー動画やスチル写真で以前から気になっていたのですが、やっと2作品を通して観ることができました。

Joseph Nadj, Miguel Barceló
Conception: Josef Nadj, Miquel Barceló
Avec: Josef Nadj, Miquel Barceló
Création sonore: Alain Mahé; Création lumière: Rémi Nicolas; Costume: Fabienne Varoutsikos; Potene: Jean-Noël Peignon.
Création: Eglise des Célestins – Festival d’Avignon, 16 juillet 2006.
filmé par Bruno Delbonnel.
40 min.
URL: https://www.youtube.com/watch?v=OhOhpCxxWok

ハンガリー出身でフランスを拠点に活動するダンサー/振付家 Josef Nadj が、 スペイン・カタルーニャ出身の Miguel Barceló と組んで制作した作品です。 ダンスというより粘土 (クレイ) の床と壁へのライブペインティングならぬライブ粘土造形です。 造形的に面白いというより、フォーマルなスーツ姿でぐちゃぐちゃになりながら粘土と格闘する様子は見応えありました。 しかし、闘牛風のダンスを意味する Paso Dobre がタイトルである意味は掴めませんでした。

2000年に世田谷パブリックシアターで来日公演した Woyzeck [鑑賞メモ] も ストリーミングされていました。 20余年ぶりに見直しましたが、意外と覚えていて、 不条理でシュールな東欧のクレイ/人形アニメーションのような世界を舞台上で人で演じているようという観た印象も大きく変わりませんでした。 あれ以来、様々な Woyzeck / Wozzeck の上演を観てきているので、もっと理解できるかと期待したのですが、 やっぱり、役も Woyzeck, Marie, 中隊長くらいしかわかりませんでしたし、物語もほとんど原形を留めていないように思われました。

Auteurs / Jongleurs: Nicolas Mathis, Denis Fargetton, Julien Clément; Jongleur replaçant de Denis Fargetton: Alexandre Leclerc; Pianiste / Interprète: Aline Piboule
Auteur / Regard extérieur: Simon Carrot; Créayion lumière: Arno Veyrat; Régie générale: François Dareys; Régie: Martin Barré; Identité visuelle: Aude Poirot
Production Collectif Petit Travers
Création en février 2009 à l'Arche de Béthoncourt en pertenariat avec les scènes nationles de Montbéliard et Belfort.
Spectacle filmé le 4 février 2011 à la scène nationale de Mâcon par Systemik Production
52min.

フランスのリヨンを拠点とするジャグリングのカンパニーです。 ピアノ生伴奏で、ジャグラー3人ボールジャグリング。 暗い舞台で黒の衣装で、白のボールのみを使い、他の道具もボールを入れる籠と、 人の姿をトリッキーに増やすため等身大で同じ服装の人形を加える程度。 客席に背を向けている時間が長く、手元もほとんど見えず、無駄な動きも少な炒め、 白いボールが不自然に飛び交う様だけ浮き上がるような面白さがありました。 ミニマリスティックに音楽を可視化するようなジャグリングの演出は好みなのですが、 それだけで1時間は少々長く感じられてしまいました。

Concept et mise en scène: Gabriela Carrizo
Aide à la mise en scène et dramaturgie: Franck Chartier
Création et interprétation: Eurudike De Beul, Maria Carolina Vieira, Marie Gyselbrecht, Brandon Lagaert, Hun-Mok Jung, Yi-Chun Liu, Simon Versnel, Charlotte Clamens
Composition sonore et arrangements: Raphaëlle Latini, Renaud Crols, Glenn Vervliet, Peeping Tom.
Mixage audio: Yannick Willox, Peeping Tom; Conception lumière: Giacomo Gorini, Amber Vandenhoeck; Costumes: Diane Fourdrignier, Kristof Van Hoorde (intern), Peeping Tom; Conception décors: Amber Vandenhoeck, Peeping Tom
Premiére: 29 Septembre 2016, Theater im Pfalzbau, Ludwigshafen.
Spectacle filmé à La Maison de la Dance de Lyon, le 14 septembre 2017 par Fabien Plasson.
77 min.
URL: https://www.youtube.com/watch?v=u89fncqK-mU

度々来日しているベルギーのダンスカンパニー Peeping Tom の Vader-Moeder-Kind 三部作の2作目です。 舞台はセリフからすると美術館ですが、ガラス張りの録音 (放送) ブースや休憩コーナーもあり、 展示されているのもプライベートは作品のようであり、 繰り広げられるパフォーマンスもあって、絵画なども展示されている病院の待合コーナーのよう。 そんな空間で、亡くなった老母、臨月や幼子のいる母などの「母」のイメージが 明確なストーリー無く演じ連ねられていきます。 心臓を描いた絵が血を流したり、引きつり倒れるような踊tたり、と、 日常的な場面が崩壊しては (微妙な裂け目を残して) 戻るというのを繰り返す約1時間半。 三部作1作目 Vader [Father] でも強烈な印象を残した [鑑賞メモ] Maria Carolina Vieira の、軟体的に崩れ落ちるような動きはもちろん、 空中前転して倒れるような動きなども目に止まりました。 Moeder [Mother] は去年3月に世田谷パブリックシアターで公演予定で、 チケットも取っていたのですが、COVID-19で中止になってしまったのでした。やはり生で観たかったです。

2017年に世田谷パブリックシアターで来日公演した三部作1作目 Vader [Father] もストリーミングされていました。 観て数年でそれなりに記憶にも残っているので、今回は観ていません。

Wilton's Music Hall, July 2018.
Eleanor Perry (Queen Victoria), Daniel Hay-Gordon (Miss Havisham)
Costumes: Tim Spooner, working with underskirts by Yolanda Sonnabend. Crown by Sheila Hay; Make-up & wig: Darren Evans
Music: Turangalila Symphony: Developpement de l'amour, by Olivier Messiaen; Bernard Parmegiani, Scott Walker, Walker Brothers, Leonard Cohen, Martita Hunt as Miss Havisham, Fats Waller & Basil Kirchin.
Originally commissioned by DanceWest's Ignition Dance Festival 2017.
33 min.
URL: https://www.youtube.com/watch?v=ahyBHdoeJio

ダンス、マイム、演劇、ドラァグをミックスした作品を作っているというイギリスの2人組です。 男性がコルセットにクリノリンという異性装でしたが、ドラァグクイーンという良い、 この作品ではホラーというかゴスのイメージの方を強く感じました。 表現の文脈が捉えられなかった感もあり、 客席から度々笑いがあがっていましたが、笑いのポイントを掴めそこねてしまいました。

d’après “Les Elfes” des frères Grimm
Avec: Joséphine Biereye, Patrick Sims, Richard Penny
Patrick Sims: Conception, mise en scène, marionnettes, musique; Josephine Biereye: Marionnettes, masques, costumes, accessoires; Richard Penny, Nicolas Hubert: Décor, accessoires et machines et mécanismes; Karine Dumont: Création musique et son; Sophie Barraud: Création lumière et régie générale
Performed at The Pit, Barbican, as part of London International Mime Festival 2019.
54 min.
URL: https://www.youtube.com/watch?v=ZYGEhQIMqcw

主宰の Patrick Sims はアメリカ出身ですが、フランス中部ブルボネ地方というかアリエ (Allier) 県を拠点とするマリオネット・カンパニーです。 グリム兄弟 (Brüder Grimm) の童話『小人の靴屋』Die Wichtelmänner に基づく作品ですが、 丁寧に物語るものでは無く、イメージの源泉という程度でしょうか。 鳩時計のような機械仕掛け、被り物というかマスクをしてのマイムに、 マリオネットを組み合わせてのパフォーマンスでした。 レトロ不気味可愛いセンスはさすがフランスの劇団でしょうか。 客席からも子供の笑い声が聞こえるように子供向けで、 国内の公共劇場がよくやってる夏休みの子供向け公演に向いてそうとも思いましたが、 原作通りのクリスマスに近い夜という設定は夏休み向けではありませんね。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3892] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Jan 27 22:30:28 2021

毎年1月後半から2月頭にかけてロンドンで開催されているコンテンポラリーなマイム/サーカスのフェスティバル London International Mime Festival (LIMF)。 今年はCOVID-19のため公演は行わず、その代わりに1月18-31日の会期で、委嘱の新作短編映像5本 (5 Short Films) と 過去にLIMFで上演された作品の中から選ばれた映像 (Videotheque) を、ストリーミングしています。 全てを観きれないボリュームなのですが、日曜25日に観た中から印象に残ったものを。

Director: Sean Gandini; Choreographer & Co-director: Alexander Whitley.
Music: Gabriel Prokofiev; Lighting Design: Guy Hoare; Costume Design: Lydia Cawson.
Jugglers: Dominik Harant, Kati Ylä-Hokkala, Kim Huynh, Liza van Brakel, Tristan Curty (Guandini Juggling), Wes Peden (guest appearance); Dancers: Yu-Hsien Wu, Tia Hockey, Leon Poulton (Alexander Whitley Dance Company), Erin O’Toole (Guandini Juggling).
Musicians: Camerata Alma Vita, Joel Barford (drums), Joseph Snelgrove (drums).
First performance: 18 January 2019 at La Maison des Arts de Créteil, France.
A LIMF (London International Mime Festival) co-commission. Performed 31 January - 2 February 2019 at Sadler's Wells Theatre as part of LIMF 2019.
62 min.
URL: https://www.youtube.com/watch?v=ToEykdP7O4E

Pina Bausch オマージュの Smashed で知られ [鑑賞メモ]、 オペラやバレエ、ダンスとジャグリングのコラボレーションの最先端を行く Guandini Juggling が、 イギリスの振付家 Alexander Whitley とコラボレーションした2019年の作品です。 Gabriel Prokofiev 作曲で、弦楽 5tet と twin drums に electronica な音を加えた “baroque meets techno” な音楽に合わせて、 光と色とシルエット、そのジャグリングとダンスのリズミカルな動きによる変化で、動く抽象画のように視覚化していくよう。 ダンスの振りもジャグリングの動きに着想したものが多く使われ、よく見ていればダンサーとジャグラーが区別できますが、 明示的な役割分担無くジャグラーとダンサーの動きがシームレスに組み合わされています。 ボール、リング、クラブなどジャグリング道具以外の道具はつかわず、 衣装も含め基本的に白やグレーの中、リングの片面を彩色するなど、色使いもポイントを押さえたもの。 そんなミニマリスティックな演出が、とても好みでした。

公演の動画とは別に、LIMF 2021 のために収録された Gandini Juggling 主宰の Sean Gandini の約1時間のトークも ストリーミングされています。 日本では彼らのバックグラウンドを知る機会がほとんどないので、とても興味深く聞けました。 Pina Bausch オマージュの Smashed の LIMF 2017のための Special Edition では、 Dominique Mercy (ex-Tanztheater Wuppertal Pina Bausch) が関わったのですが、 パリ公演に観にきたという Mercy の出会いの経緯とか、一緒に新たに作った Charles Aznavour の歌を使った場面の話とかしています。 ex-Merce Cunningham Company のダンサーが Gandin に来てジャグリングを覚えたという話や、 Spring に出演した Alexander Whitley Dance Company のダンサーなど、ダンスとジャグリングのスキルを持つ人材も増えてきているとのこと。 Spring に Gandini Juggling のダンサーとして出演クレジットされている Erin O’Toole は、 Gandini Juggling が Royal Ballet とコラボレーションした 4X4: Ephemeral Architectures に出演したバレリーナで、 それ以来、Guandini Juggling のコアな部分になっているとのこと。 彼らのようなダンスとジャグリングの二つのスキルを持つパフォーマーが増えてくると、 ダンスとジャグリングの融合度のより高い作品が作れるようになってくるのだろうと、楽しみです。 ちなみに、Gandini 曰く、ダンサーがジャグリングに近づく方が、 ジャグラーがダンスに近づくより、容易ではないかとのことでした。(2021/02/01追記)

Compagnie 111 / Aurélien Bory
Avec: Olivier Alenda, Pierre Cartonnet
Conception, scénographie et mise en scène: Aurelien Bory
Pilote, Programmmation robot: Tristan Baudoin Composition musicale: Joan Cambon Création lumière: Arno Veyrat
Production: Compagnie 111 – Aurélien Bory
Création 2009.
Enregistrée le 5 fevrier 2010 au Théâtre des Avvesses à Paris.
63 min.
URL: https://www.youtube.com/watch?v=n1_-Wel2E8E

南フランス・オクシタニアの首邑トゥールーズを拠点とする Cie 111 による、 1970年代に自動車組立ラインで使われていた真空吸着ヘッドの産業用5軸ロボットアームを、 舞台上でダンサーとして蘇みがえらせた作品です。 といっても、ロボットアームだけを動かしても動きの面白さには限界があるわけで、 2名のサーカス・アーティストがマイムやアクロバットの動きで絡むことにより、 時にユーモラスで意思を持つものかのように動きを見せていきます。 黒のビニールシートで覆ったり、真空吸着ヘッドで床板を動かしたり、 暗めの舞台の中でカンテラ風の照明を使ったり、逆光を効果的に使ったりと、 視覚的に幻想的と感じる演出も好みでした。 トレイラー動画やスチル写真で以前から気になっていたカンパニーでしたが、 今回やっと、動画とはいえ作品を通して観ることができました。

Live performance with projection onto gauze.
Choreography and Performance: Kristin McGuire.
Projection Design: Davy McGuire.
A short film, commissioned for the 2012 London International Mime Festival.
4 min.
URL: https://www.youtube.com/watch?v=n1_-Wel2E8E

イギリス・ロンドンを拠点に活動する、マルチメディア・アートの2人組ユニットです。 Davy はデヴァイズド・シアター (devised theatre) の、Kristin はダンスのバックグラウンドを持つとのことです。 この短編ビデオ作品は、Kristin の pole dance に Davy の live video projection を重ねたものを、ワンテイクで撮影したもの。 ポールを包むかのように半透明の幕を下げ、幕や床に白い光の網のようなパターンを投影し動かし、 pole dance に合わせてダイナミックに動かしていきます。 合唱曲に合わせて白い光に包まれた感もあるパフォーマンスは幻惑的ながら神々しくさえ感じられました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3891] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 24 16:25:32 2021

新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言中のうえ、冷たい雨の週末。 ということで、外出は地元の住宅街の中にある静かなカフェに気分転換に行く程度。 土曜晩は、こういう時でも無いと観る時間がなかなか作れないので、積観状態だったDVDを観ました。

(Opus Arte, OA1265D, 2018, DVD)
Ballet in two acts; Based on 1984 by George Orwell.
Choreographer / Director: Jonathan Watkins.
Music: Alex Baranowski.
Set and costume designer: Simon Daw; Lighting designer: Chris Davey; Video designer: Andrzej Goulding; Dramaturg: Ruth Little
Tobias Batley (Winston Smith), Martha Leebolt (Julia), Javier Torres (O'Brien), Hironao Takahashi (Mr. Charrington), Giuliano Contadini (Persons), Kevin Poeung (Ampleforth), Ashley Dixon (Martin), Victoria Sibson (Lead Prole), with Artists of Northern Ballet.
Northern Ballet Sinfonia; Conductor: John Fryce-Jones; Leader: Geoffrey Allen.
A Northern Ballet Production. Commissioned by The Space.
Premiere: 5 September 2015, West Yorkshire Playhouse, Leeds.
Recorded live at the Palace Theatre, Manchester, 15 & 17 October 2015.
Directed for screen by Ross MacGibbon.

全体主義的な管理社会を描いたデストピア小説 George Orwell: 1984 『1984年』 (1949) をバレエ作品化したものです。 イングランド北部ウェスト・ヨークシャーのリーズを拠点とする Northern Ballet のプロダクションで、 振付は元 Royal Ballet ダンサーの Jonathan Watkins です。 20世紀を舞台としたディストピア小説を一見馴染みそうも無いバレエでどう表現したのか、という興味もあって観てみました。

原作の3部構成を2幕約90分に、1幕は第2部第2節、郊外パディトンの森の中での初めての逢引まで。 後半は、古物店二階での逢引に始まり、逮捕されて拷問に屈する第3部は約20分でした。 舞台美術は、粗いLEDディスプレイを使って表現されたテレスクリーン、 古物店を表す棚、その二階を表すパイプベッド、逢引の場面での森を表す2本の木など、 ミニマリスティックというほどでは無いものの、象徴的な大道具を効果的に使っていました。 衣装や美術のデザインは、原作の設定である1980年代風ではなく、 原作が書かれた20世紀半ばのミッドセンチュリーモダン、もしくは同時代の旧ソ連圏のモダンデザインを感じさせるものでした。

音楽を手がける Alex Baranowski は The xx & the BBC Philharmonic のオーケストラ編曲程度の予備知識しかありませんが、 ここでは特に electronica / post-rock 的なニュアンスは用いず、 パーカッション使いなど特徴的なものの比較的にオーソドックスに。 女性ダンサーはポワントシューズを履いており動きとしてはバレエ的な要素も多く使われていますが、 象徴的な表現だけで済まさずマイムも使って原作のエピソードを丁寧に拾って表現しており、無言劇の舞台を観るようでした。

1984 といえば 思考を制限する語法であるニュースピークや真理省記録局による歴史改竄などが有名ですが、 セリフを用いないバレエではそういったテーマを扱うのは難しいということもあるでしょうか、そこについてはあまり踏み込んで表現していません。 例えば、ニュースピークを開発に関り Winston より先に消された言語学者 Syme も登場しませんし、 「戦争は平和なり/自由は隷従なり/無知は力なり」のような有名なスローガンもはっきりと使われませんでしたし、 真理省の仕事の内容に踏み込まず様子も無機質なオフィスワークのように描かれていました。 その点もあって、Winston と Julia の関係に焦点の当てられた演出に感じられました。

ディストピア社会の描写は、ビッグ・ブラザーの目元のみを映すテレスクリーン、 そして、カクカクした動きからなる無機質なオフィスワークを表現し、 狂乱しているようで画一的なポーズに収束する〈憎悪〉などを表現する、群舞が効果的に そして、それとコントラストを成す、Julia と Winston の感情を湛えたダンス。 特に、第1幕ラスト、郊外の森のでの逢引の場面でのパ・ド・ドゥはこの舞台のハイライトの一つでしょうか。 第2幕冒頭、古物店二階での逢引の場面で、Julia が化粧をし香水をつける代わりに、 禁欲的なブルーの服から赤い女性用ドレス姿になる (原作では「今後しようとしている」ことといて言うにとどまっている) というのも、 バレエ的な演出で視覚的にも効果的でした。 ディストピアとその中での Julia と Winston の逢引の場面が 動きとしても色彩としてもはっきりとしたコントラストを持って表現されて、 (最後には敗北するとはいえ) 全体主義的な管理社会に対する (絶望的な) 抵抗としての愛情、欲望を描いた作品となっていました。

コントラストといえば、Winston らが属する党員たちの世界をくすんだブルーで、 管理社会の外部となるプロール (労働者階級に相当) たちの世界が茶がかった赤で、視覚的に対比されていました。 また、原作では古物店二階からカーテン越しに見える歌いながら洗濯を干したりしているプロールの大女に相当する役が、 歌の代わりのダンスということでしょうか、“Lead Prole” という役でそれなりにソロを取っていたのも、印象に残りました。

原作との違いといえば、ラストシーン。 原作では釈放された Julia と Winston が公園で再会しお互いが裏切ったことを告白し合うのですが、 この作品ではすれ違い程度に流され、原作では描かれなかった Winston が消されることで終わります。 愛情、欲望の屈服よりも存在を消されることの恐怖の方を強調する演出に感じられました。

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[3890] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 18 21:42:07 2021

先週末日曜は自宅でゆっくり。 ライブでは土曜深夜というか日曜未明の時間帯ということで観るのを諦めていたのですが、 昼ごろアクセスしてみたらまだ観られたので、この舞台作品をストリーミングで観ました。

Staatstheater am Gärtnerplatz, München.
2021/01/16, 19:00-20:30 CET
von Marco Goecke
Nach dem gleichnamigen Film von Federico Fellini; Buch von Federico Fellini und Tullio Pinelli; Musik von Nino Rota; Uraufführung am 2. September 1966 im Teatro alla Scala, Mailand
Musikalische Leitung: Michael Brandstätter; Choreografie: Marco Goecke; Bühne / Kostüme: Michaela Springer; Licht: Udo Haberland; Dramaturgie: Daniel C. Schindler
Ballett des Staatstheaters am Gärtnerplatz: Alexander Hille (Zampanó), Serena Landriel (Gelsomina), Luca Seixas (Matto), et al.
Orchester des Staatstheaters am Gärtnerplatz.
Choreografische Uraufführung am 12. Juli 2018.
Live Stream: 2021/01/16, 19:00-20:30 CET.
URL: https://www.youtube.com/watch?v=qrPvT790FCE

ミュンヘンのバイエルン州立劇場 Staatstheater am Gärtnerplatz の劇場付バレエ団による イタリアの Fellini の映画 La Strada 『道』 (1966) に基づく Marco Goecke 振付のダンス作品です。 Goecke 振付作品は以前に Nederlands Dans Theatre の公演で観たことがありますが [鑑賞メモ]、 フィギュアスケートのプログラムや大道芸のネタとしても参照されることの多い La Strada がどのようなダンス作品となったかという興味もあって観て観ました。

La Strada の音楽を使ったフィギュアスケートのプログラムなどでは 道化風の衣装や動作を使い、少々哀愁ががったユーモアを感じさせるものが多いわけですが、 この舞台では道化的なイメージ、コミカルな動きなど全く無い訳では無いけれども抑えたもの。 細かく刻むような手足の早い動きとはっきりとした止めを多用した動きは神経質さを連想させるところもあり、 Gelsomina や Zampanó の切迫した心理の描写をメインに据えたよう。 草叢を模したようなもの (最後の場面では海の波に変わる) が舞台奥にある程度で、 色彩を抑えた暗めのミニマリスティックな舞台はスタイリッシュでした。 社会最下層の人々としての旅芸人を描いた Neorealismo 色濃い映画だったことを考えると、 シニヨンに髪をまとめ少しダボダボ気味の黒トレンチコートを着た Gelsomina はちょっと雰囲気がハイソ過ぎな気もしましたが、 翻案と考えればこれはこれでなかなか可愛いらしくて良かったように思います。

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[3889] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 17 18:08:44 2021

新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言も出て、 以前から予定していたような美術展、公演でも無いかぎり、 週末に気軽に出かける気分でもないのですが、 近場の映画館で National Theatre Live がかかっていたので、この週末土曜の晩にさくっと観てきました。

Lyttelton Theatre (National Theatre), London, 7 November 2019.
by Simon Woods
Director: Simon Godwin
Set and Costume Designer: Hildegard Bechtler; Lighting Designer: Jackie Shemesh; Music: Michael Bruce; Sound Designer: Christopher Shutt; Movement Director: Shelley Maxwell.
Cast: Lindsay Duncan (Diana Hesketh), Alex Jennings (Robin Hesketh).
First Performance: 22 August 2019, Lyttelton Theatre (National Theatre).
上映: TOHOシネマズ川崎, 2021-01-16 18:15-19:55.

舞台は1988年、サッチャー政権下のイギリス。 保守党 (Tory) 議員の Robin Hesketh が、週末、Cotswolds の家に帰り、 左翼がかった妻 Diana との家のリビング & ダイニングの1室で展開する密室会話劇です。 それらしく作り込んだ舞台美術で、映像や照明などを使った演出も最低限に抑え、 非現実的で象徴的な動きを使った表現などもなく、オーソドックスにリアリズム的な演出と感じましたが、 その辛辣な政治的皮肉混じりの会話から、少々感傷的すらある最後まで、話の流れ、演技とも引き込まれるものがありました。

前半は、というより、最後の20分位まで、政治的な意見の異なる夫婦の辛辣な舌戦で、 時代がサッチャー政権下ということで、その政策に対する英国流に皮肉が効きまくった応酬を、笑いながら堪能できました。 模範的な政治的議論としての演劇を見るようでもあり、その皮肉なユーモアは夫婦漫才のようでもあり。 個人的に、1980年代半ば The Smiths とか Billy Bragg などの政治的を題材を歌にするイギリスのミュージシャンをよく聴いていたおかげで、 Hansard の背景というか前提となっている英国の政治状況にそれなりに馴染みがあったこともあり、 この前半の皮肉だらけのユーモアをとても楽しみました。 直接的にはサッチャーの政策に対するものですが、日本の失われた30年で進行した政治状況にもあてはまるような皮肉が多く、苦笑したりもしました。

その夫婦のやりとりも面白いのですが、口では辛辣に言い争いつつ、 実に自然に阿吽の呼吸で一緒にコーヒーを淹れ、ブラッディマリーを作りと、 長年連れ添った夫婦らしいさを感じさせる演技を交えていきます。 こういうセリフの演技の組み合わせも、 Diana とRobin の関係に、政治的な意見の違いに単純化できない深みを作り出すよう。

サッチャーの政策をめぐる政治的な舌戦から、話は次第に2人の過去の話にシフトしていき、 最後に、Diana がどうして教育の場で同性愛を扱うことを禁ずる地方自治法第28条に強硬に反対する理由 (そして、家事を蔑ろに酒に浸っている理由) が明らかになります。 この物語のエンディングは少々感傷的かなとは思いますが、 この政治家夫婦の会話を通して描かれる政治的な分断を、少々感傷的ではあっても分断させたまま終わらせたくなかったのだろうなあ、と。

戯曲作家、演出家、俳優いずれもそのバックグラウンド等を知らず、そもそも会話劇は演劇の中でも苦手なカテゴリー。 National Theatre Live であれば流石に大外れは無いだろう、と構えず気楽に観に行ったのですが、 足を運んで正解でした。

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[3888] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Jan 13 22:15:49 2021

先の3連休の3日目祝日月曜は、午後に自宅でこのライブストリーミングを観ました。

The National Ballet of Japan: New Year Ballet (2019/2020 Season)
新国立劇場オペラパレス
2020/01/11, 14:00-17:00.
YouTube URL: expired.
指揮: 冨田 実里; 管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団.
[第1部]
Paquita
Choreography: Marius Petipa.
Music: Léon Minkus.
初演: 1846 (chor. Joseph Mazilier), 1881 (chor. Léon Minkus), 2003 (新国立劇場).
美術: 川口 直次; 衣装: 大井 昌子; 照明: 立田 雄士.
出演: 米沢 唯 (Paquita), 渡邊 峻郁 (Lucien d'Hervilly); 池田 理沙子, 柴山 紗帆, 速水 渉悟 (Pas de Trois), 他.
[第2部]
Contact
振付: 木下 嘉人.
Music: Ólafur Arnalds: Happiness Does Not Wait.
出演: 小野 絢子, 木下 嘉人.
『ソワレ・ド・バレエ』 [Soirée de Ballet]
振付: 深川 秀夫.
Music by Alexander Glazunov.
出演: 池田 理沙子, 中家 正博.
『カンパネラ』 [Campanella]
振付: 貝川 鐵夫.
Music by Franz Liszt.
出演: 福岡 雄大, 山中 惇史 (piano).
[第3部]
"Still Life" at the Penguin Café
『ペンギン・カフェ』
Choreography: David Bintley
Music: Simon Jeffes.
Set & Costume Designer: Hayden Griffin. Lighting Designer: John B. Read.
Premiere: 8 March 1988, The Royal Ballet, Royal Opera House, Covent Garden; 2010年10月27日, 新国立劇場.
出演: 広瀬 碧 (The Great Auk [ペンギン]), 米沢 唯 (Utah Longhorn Ram [ユタのオオツノヒツジ]), 福田 圭吾 (Texas Kangaroo Rat [テキサスのカンガルーネズミ]), 五月女 遥 (Humboldt's Hog-nosed Skunk Flea [豚鼻スカンクにつくノミ]), 奥村 康祐 (Southern Cape Zebra [ケープヤマシマウマ]), 本島 美和, 貝川 鐵夫, 岩井 夏凛 (Now Nothing [熱帯雨林の家族]), 福岡 雄大 (Brazilian Woolly Monkey [ブラジルのウーリーモンキー]), 他.

新国立劇場バレエ団の恒例の正月公演、 去年初めて足を運んでみたところとても楽しめたので [鑑賞メモ]、 今年も初日9日のマチネのチケットを押さえ「劇場に初詣」しようと楽しみにしていたのですが、 新型コロナウイルス検査で関係者から陽性反応が出て直前に公演中止に。 しかし、急遽、11日マチネの時間帯に無観客公演のYouTubeライブストリーミングが開催されることとなったので、自宅で観ました。

一番の目当ては、第3部の "Still Life" at the Penguin Café。 Penguin Cafe Orchestra の音楽 (録音では無くオーケストラ編曲したもの) を使っているということもありますが、 Royal Ballet や新国立劇場バレエ団による上演のスチル写真やトレーラー動画を観て、 被り物衣装での音楽にも似合ったユーモラスで可愛らしい踊りに惹かれていました。 しかし、実際に通して観ると、スチルやトレイラーで受ける可愛く楽しい着ぐるみバレエと異なり、 綺麗でお洒落だし、がっつりと踊るものでした。 女性ダンサーはヒールで、衣装も含め、バレエというより、ボールルームダンスや世界各地の伝統的な民俗舞踊のイデオムを強く感じるダンスでした。 ドレスとタキシードで華やかに踊るオープニングからオオツノヒツジの場面にけかては華麗なボールルームダンスでしたし、 ノミの場面ではイングランドの Morris dance、 シマウマの場面ではバックで "Zebra Girls" がヴォーギングのような動き、など。 Penguin Cafe Orchestra の音楽が世界の様々な音楽を混交して室内楽風に仕立てたもので、 様々なスタイルのダンスの混交も、音楽に合っていたでしょうか。

そんな多様な美しさを見せる舞台も、照明が暗くなり雨 (酸性雨) が振り出すと、トーンが一転します。 被り物を取り沈鬱な面持ちで逃げまどうように、そして方舟のようなシェルターに逃れていきます。 しかし、狂言回し的なウェイター役のペンギン (オオウミガラス) だけが残り寂しげな踊りで見送ります。 (踊られた様々なキャラクタが絶滅危惧種である一方、オオウミガラスが19世紀に絶滅した種を反映している。) そんなラストに向けて失われていくものに対する切なさというのも感じられた、期待以上に良い作品でした。

さて、第1部、公演のオープニングは、Petipa 振付のクラシックな Paquita。 貫禄すら感じるプリンシパル2名の踊りはもちろんコール・ド・バレエのレベルの高さも楽しめました。 その後は去年はクラシックな演目からのパ・ド・ドゥ抜粋だったわけですが、 今年はバレエ団のダンサーの振付によるコンテンポラリーな演目2つを含むもので、 プリンシパルダンサーの顔見せ以上の、バレエ団のクリエイティヴな面を見せようという意識を感じました。 特に Contact は Contact は触れ合うことの困難さを Ólafur Arnalds の post-classical な感傷を感じさせるピアノとストリングスによる音楽に合わせて情感豊かに演じるよう。 新型コロナウイルス感染拡大によって人が集まることが制限されているような 現在の状況にもあったテーマのダンスにも感じられました。 元々、3月の 『DANCE to the Future 2020』 [鑑賞メモ] で上演される予定だったもので、 こうして観られてよかったでしょうか。

ライブ・ストリーミングながらとても楽しめただけに、やはり劇場で生で観たかったという残念な気持ちも改めて湧き上がってしまいました。 『DANCE to the Future 2020』もそうですが、コロナ禍が鎮静化した後、観ることができればと思います。

『DANCE to the Future 2020』ではストリーミングが途切れることもあったので、今回もそんなものかろ予想していたのですが、 この『ニューイヤー・バレエ (2020/2021シーズン)』は28,000を超える視聴者数になったにも関わらず安定していましたし、 カメラワークも良くなっていました。 経験を積んで着実に向上しているところも、さすがです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3887] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 11 13:23:03 2021

この3連休の土曜は、新国立劇場パレエ団の『ニューイヤー・バレエ』で「劇場へ初詣」する予定だったのですが、 公演関係者に新型コロナウイルス陽性者が出て公演中止。 指数的な感染拡大で首都圏の医療崩壊が見えてきていますし、外出は近所を散策する程度に控えようかと。 そんな中、日曜の晩にこの有料配信の映像を観ました。

Tomoko Mukaiyama & Reinier van Brummelen
TWO - in transit Hara Museum
2021/01/02 00:00 - 2021/01/11 23:59 (JST), 42min.
コンセプト・映像 [Concept + Film]: 向井山 朋子 [Tomoko Mukaiyama], Reinier van Brummelen.
出演 [Performers]: 向井山 朋子 [Tomoko Mukaiyama], 森山 未來 [Mirai Moriyama].
撮影 [Filming]: Reinier van Brummelen.
技術監督: 遠藤 豊; カメラ: 丹澤 由棋, 三塚 比呂; 照明: 田代 弘明, 篠原 由樹, 原 裕太; サウンドエンジニア: 稲荷森 健, 大林 元, 堤田 祐史; 機材手配: 黒川 貴; Post production assistant: Reinier Zoutendijk.
使用楽器: Shigeru Kawai グランドピアノ SK-5L ほか; 衣装協力: Yohji Yamamoto.
演奏プログラム: Johann Sebastian Bach: Das Wohltemperiertes Klavier Prelude Nr 6 BWV 851 d-moll (1722); Joseph Haydn: Piano Sonata no.38 in F Major Hob.XVI 23 (1773); Louis Andriessen: Memory of Roses (1992); Yannis Kyriakides: La Mode (2017); Maurice Ravel: Piano Concerto in G (1931); Tomoko Mukaiyama: improvisation.
主催: 一般社団法人 マルタス [MULTUS]、向井山朋子ファンデーション [Tomoko Mukaiyama Foundation].
Vimeo URL: https://vimeo.com/ondemand/twointransitharamuseum

2021年1月11日をもって閉館する原美術館ですが [関連する鑑賞メモ]、 それに合わせ、期間限定で原美術館で撮影された音楽演奏とダンスに基づくビデオ作品が有料配信されました。 音楽演奏はダンスとのコラボレーションも多い 向井山 朋子 [鑑賞メモ]、 撮影は SUPER T : A Live と同じ Reinier van Brummelen [鑑賞メモ] です。 ダンスでコラボレーションするのは、俳優としても活動する 森山 未來 です。 予約が取れずに原美術館での最後の展覧会に足を運べなかったので、その代わりにこの映像作品を観ました。

奇を衒ったような編集、効果の類は抑え、自然光の差し込むギャラリーや夜のライティングで美しく浮かび上がる アール・デコの洋館を改装した美術館の空間自体を見せるかのような映像でした。 音楽やダンスもそれ自体を強く主張するというより、 約40分間映像を見入ることを促すよう建物に寄り添い視線を案内するかのように感じました。

色付いた庭木があったものの散っていなかったので撮影は秋でしょうか。 明るい日の差す晴れた昼間から日没後まで様々な時間帯を使って撮影されていました。 演奏に使われたのは、3階のレイノーの部屋とそこに上がる階段、1階の2つのギャラリーとその前の通路、 2階の 宮島 達男 の部屋や須田 悦弘の彫刻が置かれたダクトのあたり、1階と2階を繋ぐ階段など。 屋外は、正門から建物左側にあるギャラリーに面したニワト、 宮島 達男 の部屋の脇の扉から外に出ての屋上が使われていました。 2階のギャラリーや 奈良 美智 の部屋、 パフォーマンスの上演に使われることもあった中庭、中庭に面したカフェやホールは使われませんでした。

美術館としては閉館になるものの、建物が無くなってしまったわけでは無いですが、 オープンしたばかり1980年代の状態をよく残した空間を主に使っていたからでしょうか、 昔を観ているようでもあり、とても懐かしく感じられました。

自分が原美術館へ初めて足を運んだのはまだ中学生だった1982年頃。 当時はまだ中庭に面してカフェは無く、2階の展示室でビデオ上映会などを開催していました。 John Cage 関連のパフォーマンスの映像や Nam June Paik のヴィデオアートなど上映会が当初の目当てでしたが、 それをきっかけに度々足を運ぶ美術館となりました。 最も頻繁に足を運んだのは1990年代後半。 就職して金銭的にも余裕ができたこともあり、メンバーシップ〜賛助会員となって、 当時中庭を使ってメンバーシップ向けに開催されていたラウンドテーブルなどに入り浸っていました。 2000年代に入って次第に足が遠のいてしまいましたが、それでも足を運ばない年はありませんでした。 約40年にわたり通った、それも現代美術をよく観るようになった頃にお世話になった美術館でした。 そんなこともあって、この閉館に合わせての映像作品を観ていて、少々目頭が熱くなるものがありました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3886] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Jan 5 21:49:09 2021

正月3日も美術館へ初詣。午後に竹橋でこの展覧会を観てきました。

Sleeping: Life with Art - Form Goya and Rubens to Shiota Chiharu
東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
2020/11/25-2021/02/23 (月休;1/11開;12/28-1/1,1/12休), 10:00-17:00 (金土 -20:00).

『陰影礼讃』 (2010)、 『No Museum, No Life? — これからの美術館辞典』 (2015) [鑑賞メモ] と5年おきに開催されてきた国立美術館合同展の第3弾です。 国立美術館6館 (東京国立近代美術館, 京都国立近代美術館, 国立西洋美術館, 国立国際美術館, 国立新美術館, 国立映画アーカイブ) のコレクションに基づいた企画ですが、 実際は、コレクションを持たないアートセンターである国立新美術館、 映画関連のコレクションしか無い国立映画アーカイブを除く4館のコレクションから構成されていました。

テーマは「眠り」で、Francis Goya の版画連作 Los caprichos (1797-98) からの版画をガイドとした7章構成。 19世紀以前の絵画や版画の場合は、眠る人が描かれているという比較的正統的な解釈でしたが、 20世紀初頭のシュールレアリズム以降、特に20世紀後半のコンセプチャルな現代美術では テーマもかなり広く捉えられられていました。 正直に言えば若干無理を感じるものもありましたが、テーマを広めにとった展示の方が興味深く、 その中でも写真やビデオの作品の方が面白く感じました。

饒 加恩 (Chia-En Jao) の REM Sleep (2011) は、 台湾で介護職につく外国人女性労働者たちとうたた寝するような姿とその語りを3面のスクリーンに映すインスタレーションですが、 疲労の中でのうたた寝の中でみる夢/悪夢を見るよう。

楢橋 朝子 の半分水没しかけた波打った水面ギリギリのアングルで撮られた写真シリーズは 何回か観たことのある好きな作品ですが [鑑賞メモ]、 Half Awake And Half Asleep In The Water という眠りに関するタイトルを持っていたことに、今更ながら気づかされました。

大辻 清司 が1970年代に撮った机の上の物をユーモラスなタイトルで撮った写真など、 『プロヴォーグ』への大辻からの回答とでもいう感じに捉えていたのだけど [鑑賞メモ]、 シュールレアリズム経由で眠りと関連付けられていて、そういう見方もあったか、と。

驚きとか新鮮さとかそういうものがあったわけでは無いですが、 ちょっとした視点のずらしによる気づきが楽しめた展覧会でした。

所蔵作品展 に Sol LeWitt の Wall Drawing #769 が展示されていました。 作家のインストラクションに作成されるインスタレーション的なドローイングですが、 作曲ベースの音楽を視覚化したようです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3885] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 4 21:25:31 2021

正月2日は美術館へ初詣。ということで、午後に清澄白河というか木場へ。

Eiko Ishioka: Blood, Sweat, and Tears – A Life of Design
東京都現代美術館 企画展示室 企画展示室 1F/地下2F
2020/11/14-2021/02/14 (月休;11/23,1/11開;11/24,12/28-1/1,1/12休), 10:00-18:00.

1960年代に資生堂のアートディレクターとして活動を始め、1970年代はパルコなどの広告を手掛けて、 女性アートディレクターの草分けとして知られ、 1980年にニューヨークに拠点を移して以降は、映画やオペラ、音楽コンサートやサーカスなどの舞台衣装のデザインを多く手掛けてきた 石岡 瑛子 (1938-2012) の回顧展です。

1980年頃までの広告の仕事には、彼女の作風というより日本、そして日本の広告クリエイティヴに感じられた1960s-70sの勢いを見るようでした。 そして、1980年代以降の舞台衣装デザイン等の仕事は、色彩のはっきりした造形的な作風は自分の好みでは無いようにも感じましたが、パワフルでゴージャスな仕事ぶりに圧倒されました。 そして、このような仕事はニューヨークに拠点を移したからこそ可能だったのでしょう。 日本では、バブル崩壊後の長期のデフレ経済低迷で、広告にしても舞台にしても彼女のような作風の才能が活躍できる場は多くなかったような。 そんなことも考えさせられてしまった展覧会でした。

MOT Annual 2020: Invisible Powers
東京都現代美術館 企画展示室 3F.
2020/11/14-2021/02/14 (月休;11/23,1/11開;11/24,12/28-1/1,1/12休), 10:00-18:00.
片岡 純也 [Junya Kataoka] + 岩竹 理恵 [Rie Iwatake], 清水 陽子 [Yoko Shimizu], 中島 佑太 [Yuta Nakajima], Goh Uozumi, 久保 ガエタン [Gaetan Kubo].

東京都現代美術館のアニュアルのグループ展です。 テーマが腑に落ちたという程では無いのですが、興味深い作家の作品を観ることはできました。 片岡 純也 + 岩竹 理恵 は今までもグループ展で度々観る機会がありましたが、 特に何かの機能を果たすことなく動き続ける「無用な機械」を思わせる作品は好みです。

清水 陽子 の生きた植物をそのままメディアにするような作品も、 この手の素材を扱うとエコロジー的なコンセプトなどに走りがちな中で、 もっと即物的なアプローチで、あくまで植物やDNAなどをメディアとして見据えている所に、 メディアアートに近いセンスが感じられました。

企画展は1月2日からやっていたのですが、 『MOTコレクション 第2期 コレクションを巻き戻す』は、 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、12日まで臨時休室になっていました。これは仕方ありません。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3884] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Fri Jan 1 0:52:27 2021

2020年に歴史の塵捨場 (Dustbin Of History)に 鑑賞メモを残した展覧会やダンス演劇等の公演の中から選んだ10選+α。 今年はCOVID-19パンデミックの影響で舞台作品を生で観るのではなくストリーミングや上映、DVDを観ることが多かったのでどうしようかとも思いましたが、 劇場での上演を収録したものについてのみ番外特選扱いとし、それ自体がオリジナルの映像作品に近い作りのものは対象とすることにしました。 おおよそ印象に残っている順に並べていますが、順位には深い意味はありません。 音楽関連 (レコード/ライブ) は別に選んでいます: Records Top Ten 2020

第一位
Kid Koala, The Afiara Quartet, directed by K. K. Barrett: Nufonia Must Fall (パペットショー)
渋谷区文化総合センター大和田さくらホール, 2020/01/18.
[鑑賞メモ]
第二位
François Chaignaud / Nino Laisné: Romances inciertos, un autre Orlando (舞踊音楽劇)
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール, 2020/12/19.
[鑑賞メモ]
第三位
新国立劇場バレエ団 / 森山 開次 (振付) 『竜宮 りゅうぐう ~亀の姫と季の庭~』 (バレエ)
新国立劇場 オペラパレス東京芸術劇場, 2020/07/24.
[鑑賞メモ]
第四位
『生誕100年 石元泰博写真展 伝統と近代』 (写真展)
東京オペラシティ アートギャラリー, 2020/10/10-2020/12/20.
『生誕100年 石元泰博写真展 生命体としての都市』 (写真展)
東京都写真美術館 2F, 2020/09/29-2020/11/23.
[鑑賞メモ]
第五位
Anca Damian: L’extraordinaire voyage de Marona [Marona’s Fantastic Tale] 『マロナの幻想的な物語り』 (映画)
Aparte Film (Romania) / Sacrebleu Productions (France) / Minds Meet (Belgium), 2019.
[鑑賞メモ]
第六位
『DOMANI・明日2020 傷ついた風景の向こうに』 (美術展)
国立新美術館 企画展示室2E, 2020/01/11-2019/02/16.
[鑑賞メモ]
第七位
カンパニーデラシネラ 『ドン・キホーテ』 (ダンス/マイムシアター)
相模女子大学グリーンホール 多目的ホール, 2020/12/12.
[鑑賞メモ]
第八位
中村 蓉 『ジゼル特別30分版』 (ダンス / streaming)
YouTube, 2020/04/25.
[鑑賞メモ]
第九位
Rémi Chayé: Tout en haut du monde 『ロング・ウェイ・ノース』 (映画)
Sacrebleu Productions (France), Maybe Movies (France), 2 Minutes (France), France 3 Cinema (France), Nørium (Denmark), 2015 (日本公開, 2019).
[鑑賞メモ]
第十位
『ヨコハマトリエンナーレ2020 光の破片をつかまえる』 (美術展)
横浜美術館 / プロット48 他, 2020/07/17-2020/10/11.
[鑑賞メモ]
番外特選1
Nederlands Dans Theater / Yoann Bourgeois (choreo.): I wonder where the dreams I don't remember go @ Lucent Danstheater (ダンス / streaming)
インターネット配信, 2020/12/05.
[観賞メモ]
番外特選2
Arthur Pita (dir./choreo.), Natalia Osipova, Jonathan Goddard: The Mother @ Queen Elizabeth Hall (ダンスシアター / DVD)
Opus Arte, 2020.
[観賞メモ]

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[3883] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Fri Jan 1 0:50:39 2021

2020年に入手した最近数年の新録リリースの中から選んだ10枚+α。 展覧会・ダンス演劇等の公演の10選もあります: 2020年公演・展覧会等 Top 10

#1
Strings & Timpani
Voice & Strings & Timpani
(Hubro, HUBROLP3636, 2020, LP)
#2
Charkha
La colère de la boue
(Innacor / Collection Inna+, INNA11815, 2018, CD)
#3
Simin Tander
Unfading
(JazzHaus, JHR187, 2020, CD)
#4
Miklós Lukács Cimbiózis Trió
Music From The Solitude Of Timeless Minutes
(Budapest Music Center, BMC CD 289, 2020, CD)
#5
Kelly Lee Owens
Inner Song
(Smalltown Supersound, STS372, 2020, CD)
#6
Elina Duni / Rob Luft
Lost Ships
(ECM, ECM 2689, 2020, CD)
#7
Aksak Maboul
Figures
(Crammed Discs, CRAM300, 2020, CD)
#8
Hans Lüdemann Trio Ivoire XX
Enchanted Forest
(Intuition, INT 3449 2, 2020, CD)
#9
Brot & Sterne
Tales of Wanderlust
(Traumton, 4681, 2019, CD)
#10
JFDR
New Dreams
(White Sun Recordings, WSR02CD, 2020, CD)
次点
Bertolino / Le Gac
Ubiquité
(L'Usinerie, no cat. no., 2020, CD)

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[3882] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Fri Jan 1 0:48:04 2021

あけましておめでとうございます。

去年一年を振り返って 2020年の レコード Top 10展覧会・公演等 Top 10 を選びました。 2020年はCOVID-19パンデミックでストリーミング等はあったとはいえ音楽ライブや劇場公演も激減、 趣味生活どころか日常生活にすら大きな制約が生じた一年でした。 Top 10 を選べるような趣味生活ができた年とは言い難いのですが、 そうだからこそ、普通の年のように Top 10 を選びたいとも思う一年でもありました。

十選やその順位は別にして、そもそも自分が足を運ばなかったもの、入手しなかったものも含め、 COVID-19パンデミックの中、こんな Top 10 を選べるだけの公演や展覧会を開催し、 CD, レコードをリリースする、といった活動を続けた多くの方々に敬意を表したいと思います。

このサイトが展覧会や公演、音楽活動などのサポートとなるほどのものは無いと思いますが、 こんな時だからこそ、細やかながらでも趣味生活と、このサイトの更新を続けたいものです。

今まで読んでくださっている皆さん、今年もお付き合いいただければと思います。

[3881] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Dec 30 11:40:22 2020

先週末日曜は昼に白金台へ。この展覧会を観てきました。

Garen of life: Eight Contemporary Artists Venture into Nature
東京都庭園美術館
2020/10/17-2021/01/12 (10/28,11/11,25,12/9,23,12/28-1/4休) 10:00-18:00 (11/20,21,27,28,12/4,5 -20:00)
青木 美歌 [Mika Aoki], 淺井 裕介 [Yusuke Asai], 加藤 泉 [Izumi Kato], 小林 正人 [Masato Kobayashi], 康 夏奈 [Kana Kou], 佐々木 愛 [Ai Sasaki], 志村 信裕 [Nobuhiro Shimura], 山口 啓介 [Keisuke Yamaguchi].

現代美術の文脈で活動する美術作家8人のグループ展です。 今までチェックしていた作家は含まれていたわけではなく、 面白い作家に出会えたらラッキー程度の軽い気持ちで臨んだのですが、 会場のマジックもあったかもしれませんが、期待以上に楽しめました。 コンセプチャルに過ぎず、造形的な美しさ、面白さを持つ作品が集められていたのも、 住居をリノベーションした美術館の空間に合っていたでしょうか。

例えば、佐々木 愛 の真っ白な漆喰レリーフの作品は、ホワイトキューブのフラットな照明でなく、 洋館の部屋の窓から入る揺らめくような自然光が、趣のある陰影を作り出していました。

康 夏奈 のクレヨン、パステル画を造形したかのような立体作品も、 青木 美歌の空間に泡立つような透明感あるガラス細工も、 志村 信裕 の控えめに煌めくように投影されるサイトスペシフィック・ビデオインスタレーションも、 その装飾的な空間に馴染んていました。 その一方で、新館のホワイトキューブのギャラリーを暗くして光るガラスを浮かび上がらせる 青木 美歌 の展示も、本館とは良い対比となっていました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

ほとんどの美術館は28日月曜から年末年始の休館。この展覧会が今年の展覧会見納めです。

晩には帰宅して、この舞台をストリーミングで観ました。

Dumb Type: 2020
ロームシアター京都 サウスホール
2020/03/28 収録, 65分.
ダムタイプ: 池田 亮司, 大鹿 展明, 尾﨑 聡, 白木 良, 砂山 典子, 高谷 史郎, 高谷 桜子, 田中 真由美, 泊 博雅, 濱 哲史, 原 摩利彦, 平井 優子, 藤本 隆行, 古舘 健, 薮内 美佐子, アオイ ヤマダ, 山中 透, 吉本 有輝子
配信時間: 2020/12/25 10:00 - 2020/12/27 23:59 (JST)
URL: https://www.youtube.com/watch?v=HJgcUxzALco (expired).

今年の3月28, 29日にロームシアター京都サウスホールでの公演が予定されていたものの COVID-19パンデミックのため中止となってしまった18年ぶりの新作『2020』ですが、 初演が予定されていた3月28日に無観客で収録された映像が期間限定のストリーミングで公開されました。 高谷 史郎 の舞台作品を見る機会はそれなりにあったので [鑑賞メモ] 18年も間が空いた気がしなかったのですが、 ダムタイプとしては2002年の『ヴォヤージュ』 [関連する鑑賞メモ] 以来です。

背景に正方形のスクリーンが3枚、場面に応じて降りてきて使われるだけで、大きな舞台美術は無し。 その一方で、舞台中央の5m四方程度の正方形の奈落があいていて、その周りでパフォーマンスが繰り広げられます。 照明も白色光をベースとして色味の少ないミニマリスティックなビジュアルです。 冒頭の場面での、振り子のように振れる照明が床近い時はまるで鏡面のように穴が光り、それが引き上げられるにつれて黒い穴となっていくという視覚効果も抜群。 冒頭の場面に続いての四角の穴を闇に落としてその周囲でスキャンする円に合わせてのソロダンスや、 ラストの三対幅正方形スクリーンに Dumb Type らしい映像を投影してのその下でのソロダンスなど、 Dumb Type の流石のビジュアルの美しさでした。

中盤、正方形の穴の周囲で5人のダンサーが身振り手振りで討論するような場面や、 2人が横たわり瞬きする様をスクリーンに投影しつつナレーションで会話であるかのように見せる場面などもあり、 スタイリッシュなビジュアルに空虚さを感じることも多いのですが、この作品ではその空虚さ自体が俎上に上がっているように感じました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

これで今年の更新はおしまいでしょうか。

[3880] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Dec 29 22:01:51 2020

先週末土曜は昼過ぎに恵比寿へ。 東京都写真美術館1Fホールと恵比寿ガーデンシネマの両方で 海外のアニメーション映画を上映しているので、ハシゴして2本観てきました。

『ロング・ウェイ・ノース』 Long Way North
2015 / Sacrebleu Productions (France), Maybe Movies (France), 2 Minutes (France), France 3 Cinema (France), Nørium (Denmark) / 80min
Réalisé par Rémi Chayé.
Scénario original: Claire Paoletti, Patricia Valeix. Adaptation et dialogues: Fabrice de Costil.
Création graphique: Rémi Chayé. Premiére assistante réalisatrice: Marie Vieillevie.
Musique: Jonathan Morali.
Avec la voix de Christa Théret (Sasha).

19世紀末ロシア、探検家の祖父を持つ貴族のお嬢様 Sasha が 北極海で消息を経った祖父の乗った船 Davaï 号を探しに向かうという冒険物語を描いた、 フランスの作家によるアニメーション映画です。 舞台はロシアですが、セリフは全てフランス語。 画面中のメモ等は英語やフランス語 (看板などはロシア語混じり) でした。 シルクスクリーン版画の様な枠線の無いフラットな色面からなるシンプルで柔らかい色合いの絵が美しいのですが、 シンプルな造形ながら、北極探検でのスリリングな動きはもちろん、主人公の繊細な心理描写を描く細やかな動きも良いアニメーションでした。

ロシアの貴族の家の少女 Sasha は祖父の思い出に拘り、社交界デビューで祖父を嫌う王子と衝突。 Davaï 号を探しに、家出してサンクトペテルブルグから汽車で北極海に面した港町アルハンゲリスクヘ。 そこで、船乗りに裏切られて一文無しで取り残されるも、酒場の女将 Olga に同情されて住み込みで働き、船が戻るのを待ちます。 そして、ついに Lund 号への乗船が許され、Davaï 号を探す探検航海へ乗り出します。 その後、氷山の崩壊で Lund 号を失い、雪原の中の厳しい旅が続きますが、 ブリザードの中で祖父の遺体と航海日誌に行き当たり、ついに Davaï 号を発見します。 絵も美しいのですが、気が強いだけの世間知らずのお嬢様が、そんな旅を通して逞しく精神的に成長していく様の、さりげなくも丁寧な描写、 例えば、Olga での酒場での成長をセリフを一切使わずに酒場での生活の断片のモンタージュだけで描くような所が、実に良いです。

少女の精神的な成長を丁寧に描くいたアニメーションという点で 『アルプスの少女ハイジ』 (瑞鷹, 1974) やそれに続いた『世界名作劇場』 (日本アニメーション) にも近く、 長編映画ではなくTVシリーズでじっくり観たかったようにも思いました。

『ウルフウォーカー』
2020 / Cartoon Saloon (Ireland), Mélusine (Luxembourg) / 103min
Directed by Tomm Moore and Ross Stewart.
Screenplay by Will Collins
Music by Bruno Coulais in collaboration with Kila, Songs performed by Aurora, Maria Doyle Kennedy, Sofia Coulais.
Featuring the voices of Honor Kneafsey (Robyn Goodfellowe), Eva Whitaker (Mebh Óg MacTíre), Sean Bean (Bill Goodfellowe), Simon McBurney (Oliver Cromwell “The Lord Protector”), Maria Doyle Kennedy (Moll MacTire)

アイルランドのアニメーション・スタジオ Cartoon Saloon の Tomm Moore による “Irish Folklore Trilogy” (日本では「ケルト三部作」と呼ばれる) の、 The Secret of Kells (2009)、 Song of the Sea (2014) に続く第3作で、 イングランドの護国卿 Oliver Cromwellに侵攻された17世紀アイルランドに着想した冒険ファンタジー・アニメーション映画です。 (残念ながら第1, 2作は未見です。) あえて遠近法を排して描かれた木版画とドローイングを組み合わせたような素朴ながら描き込みの多い絵柄の、 動く絵本のようなアニメーションでした。

舞台はイングランドの侵略が進む17世紀アイルランドの街キルケニー。 イングランドから狼狩として雇われやってきたばかりの Bill の娘 Robyn と、 寝ている間は狼となる wolfwalker (夢遊病患者 sleepwalker のもじりか) の少女 Mebh の出会いと交流を通して、 都市と自然、権威主義と自由、プロテスタント的なキリスト教とケルト的な異教、イングランド人とアイルランド人の対立といったものの共存の可能性を問うような物語です。 この対比が、木版画風な直線的な絵とドローイング風の丸っこい絵で描き分けられて視覚化されていたのも良かったです。 絵が美しいだけでなく、自然の中で Robyn と Mebh が自由に走り回る動き、 Robyn や Bill の葛藤の繊細な心理描写などの、アニメーション表現も素晴らしいです。 狼になった時の視覚ではなく嗅覚や聴覚を通しての「見え方」の表現もアニメーションならではでしょか。

この夏に『もののけ姫』 (スタジオジブリ, 1997) を映画館んで観る機会があったのですが、 その時に、この映画の世界は、中世ファンタジーにおける中世ヨーロッパ風のイメージを中世日本風のイメージで置き換え、 そこでのケルトとか北欧とかの古代の異教の要素に対応するものとしてエミシを持ってきているようだと感じていました。 Wolfwalker は、その時に頭で想像したヨーロッパ中世ファンタジー版『もののけ姫』に近く、 現代に続くアイルランド問題への視点も感じられ、 まさにこういう映画が観たかったんだと、観ながら思ってしまいました。

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映画の時間の合間を使って展覧会も。

Seto Masato: Maps of Memory
東京都写真美術館 2F
2020/12/01-2021/01/24 (月休;1/11開,1/12休;12/29-1/1休). 10:00-18:00.

日本人の父とベトナム人の母を持ちタイ生まれというバックグラウンドを持つ、1980年代から活動する写真家の個展です。 台湾西施を撮った “Binran” シリーズをグループ展で観た記憶があるものの、こうしてまとめて観るのは初めてです。 ポートレート写真にしてはぼんやりした表情の女性のアップの白背景の白黒写真のシリーズ “Silent Mode 2020” などは、 同じような構図の写真が多く並べられることにより、タイポロジー的な面白さも感じました。 “Binran” シリーズも似たような点もあるのですが、構図の統一感は緩く、どぎつい色の画面もあって、少々ノイジーに感じられてしまいました。 しかし、人物を撮った写真がメインで、自分は、どうも、人物を撮った写真が苦手かもしれないと思い至ってしまったりもしました。

東京都写真美術館3Fでは 『日本初期写真史 関東編 幕末明治を撮る』 (2020/12/01-2021/01/24)。 東京都写真美術館鉄板の写真黎明期に焦点を当てたコレクション展示です。 新興写真以前、絵画主義の時代だと意識して観ていたのですが、 手彩色された日下部金兵衛《芦ノ湖「箱根」アルバムより》(明治中期頃) などを見ていると、 カラー化鮮明化されたものを観ると、意外とモダンな構図で撮られているように感じられてました。

B1Fでは 『138億光年 宇宙の旅』 (2020/11/21-2021/01/24)。 宇宙観測による画像、映像の展覧会です。 habblesite.org でお馴染みの画像もありましたし、科学的な興味を満たすという観点では書籍などに劣る面もありますが、 大判で高精細の画像、映像による迫力に寄り切られた感もあった展覧会でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3879] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Dec 29 12:05:23 2020

十日前の先々週末の土曜の話になりますが、晩に与野本町へ。 COVID-19パンデミック以降初めて、海外アーティストの公演を観てきました。

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
2020/12/19, 15:00-16:30.
Conception, mise en scène et direction musicale: Nino Laisné; Conception et chorégraphie: François Chaignaud
François Chaignaud (chant et danse), Jean-Baptiste Henry (bandonéon), Daniel Zapico (théorbe et guitare baroque), François Joubert-Caillet (viole de gambe), Pere Olivé (percussions historiques et traditionnelles)
Création lumière et régie générale: Anthony Merlaud; Régie son: Charles-Alexandre Englebert; Habilleuse en tournée: Cara Ben Assayag
Création costumes: Carmen Anaya, Kevin Auger, Séverine Besson, María Ángel Buesa Pueyo, Caroline Dumoutiers, Pedro García, Carmen Granell, Manuel Guzmán, Isabel López, María Martinez, Tania Morillo Fernández, Helena Petit, Elena Santiago
Décor: Chef peintre: Marie Maresca; Peintre: Fanny Gautreau; Retouche images: Remy Moulin, Marie B. Schneider; Construction: Christophe Charamond, Emanuel Coelho
Production déléguée: Vlovajob Pru & Chambre 415
Spectacle créé le 10 septembre 2017 à Saint-Gervais Le Théâtre dans le cadre de La Bâtie-Festival de Genève

フランス出身のダンサー・振付家・歌手の François Chaignaud と美術作家・音楽家 Nino Laisné による舞台作品です。 彼らのバックグラウンドについてよく知っていたわけではありませんが、 歌唱、音楽と舞踊を対等に扱う音楽舞踊劇 (opera-ballet) という興味もあって、足を運ぶことにしました。 確かに、4人の楽器奏者が生演奏する音楽に合わせて歌い踊る Chaignaud も見応えありましたが、 Chaignaud が出ていない幕間での演奏もあり、器楽コンサートとしても楽しめた舞台でした。

ミュージシャンは4名。舞台向かって左手から、theorbé 等の Daniel Zapico (Winter & Winter レーベル専属のアンサンブル Forma Antiqva で知られる) と viole de gambe 等の François Joubert-Caillet という、バロック音楽に特徴的な楽器の演奏者。 さらに右手へ frame drums の Pere Olivé と、tango で使われる bandoneon の Jean-Baptiste Henry の2人を加えたことで、 通常の古楽アンサンブルからアップデートされていました。 16世紀以降の民俗音楽 (flamenco や jota) を含むスペインの音楽に基づいているとのことですが、それに tango の要素を加えています。 バロック音楽や民俗音楽と室内楽的な jazz の融合というのはヨーロッパでは少なく無く、 第2幕と第3幕の幕間での folía では Michel Godard らもよく演奏する Gianluigi Trovesi の “C’era una strega c'era una fata” (この曲は folía に基づいている) を思わせるような展開も聴かせ、そんな音楽を連想もしました。 しかし、jazz ではなく tango というか bandoneon をバロック音楽や民俗音楽を融合してアップデートする音として持ってきていた所が新鮮に感じられました。

彼らの演奏による音楽に最も引き込まれたのも確かですが、歌い踊る Chaignaud も素晴らしかったです。 Virginia Woolf による時と性別を超えて旅する主人公の小説 Orlando (1928) を承けた内容で、 第1幕では男装の少女戦士 (Doncella guerrera) を、第2幕では San Miguel (聖ミカエル) を、 そして第3幕ではアンダルシアのジプシー La Tarara という、両性具有的なキャラクターを Chaignaud を演じ踊り歌います。 音楽同様、ダンスも民俗舞踊 (jota や flamenco) や tango の要素を取り入れたもの。 第1幕こそ普通に踊っている感もありまたが、 ポスターにもなっていた第2幕の San Miguel 姿での高足 (zanco, stilt) を履いてのダンスも、 ballet で言う chaîné (chaines turns) のようにくるくると回り踊ったり、片足を高く蹴り上げたり。 確かに高足で激しく踊るカンパニーもありますが、大道芸などでは多くは回遊芸程度なので、ここまでがっつり踊るとは期待していませんでした。 その後の第2幕後半も、高足を脱いだあとも pointe shoes で踊りましたし、 第3幕では、十数センチはあろうハイヒールで flamenco 様な動きも含め踊りまくりました。 作品コンセプトの両性具有的なイメージというより、そんな高技巧の踊りに目が行ってしまいました。

舞台美術としては、4人の演奏者の背景になるような形で、バロック風の絵画が4枚掲げられていました。 ライティングを変えるだけなく高さを変えたりもしていました。 そこに描かれていたのはおそらく演じられたキャラクターに関連するものだと推測されるのですが、 その寓意を読み取ることが出来ませんでした。

COVID-19パンデミックの影響で今年3月から海外アーティストの来日公演が壊滅状態。 海外アーティストの参加した公演は、2月頭に観た Sue Healey から、実に10ヶ月ぶりでした。 しかし、入国後2週間隔離等の都合で公演が当初の予定から1週間延期され、公演回数も彩の国では1回だけになってしまいました。 11月以降感染者数が増加傾向となり第3波に入ってしまい、どうなることかと思っていました。 無事に公演を観ることができて、感慨もひとしおでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3878] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu Dec 24 23:49:14 2020

先々週末土曜の話の続き。相模大野へ舞台を観た後は、日本橋へ移動。 続いて National Theatre Live を観てきました。

The Jamie Lloyd Company, starring James McAvoy.
Cyrano de Bergerac
The Playhouse Theatre, London, 2019/2020.
by Edmond Rostand, in a new version by Martin Crimp.
Director: Jamie Lloyd.
Set and costume designer: Soutra Gilmour; Lighting designer: Jon Clark; Music and sound design: Ben and Max Ringham.
Cast: James McAvoy (Cyrano de Bergerac), Anita-Joy Uwajeh (Roxane), Eben Figueiredo (Christian), Tom Edden (De Guiche), Nima Taleghani (Lignière), Michele Austin (Leila Ragueneau), etc
First Performance: 27 November 2019, The Playhouse Theatre, London.
上映: TOHOシネマズ, 2020-12-12 18:35-21:25.

Cyrano de Bergerac は粗筋を知る程度、 映画俳優としても知られる主演の James McAvoy の出演映画を観たことも、 演出の Jamie Lloyd についての予備知識も無く、守備範囲外かとも思っていたのですが、 National Theatre Live で延長上映となるほどの評判なら観ておいても良いかもしれない、と足を運んでみました。

原作の Cyrano は17世紀フランスの cadet (貴族子弟の士官候補生) ですが、 それを現代の欧米の軍隊の下士官に置き換えられていました。 詩人という設定は現代のラップ的なポエトリー・リーディングに優れた者として、 醜男という設定はそうであるという自意識に囚われている者という設定とされていました。 その周囲の男性たちは、いかにも現代的な兵士 (それも志願兵や傭兵) を思わせるゴツい男ばかり。 Christian が口下手なのも、その出身の社会階級によるものかのように描かれていました。 また、Roxanne は、大人しい文学少女というより、むしろ知的で快活な、現代的な女性となっていました。

前提知識不足でそういった翻案の妙が楽しめたわけでは無いのですが、 Cyrano 演じる McAvoy の圧の高い演技が発するオーラにぐいぐいと引き込まれました。 舞台美術は、方形の素の大箱を置いただけのようなシンプルなもので、後方の壁が上がると階段状の雛壇が現れる程度。使う道具も椅子程度。 格闘シーンなどもありますが、基本的にその雛壇やその前での立ち位置や、 椅子の並びや座る向きなども使って、象徴的に場面を描いていきます。 例えば、Roxanne と Christian の接吻の場面から De Guiche の横恋慕の場面にかけての 4人が並んだ椅子にかける順と向きを変えつつ会話で場面を描く演出や、 Cyrano と Christian が送られた戦場の場面での階段上雛壇使いなど。 National Theatre Live の字幕付きという助けも大かったかと思いますが、 そんなミニマリスティックな演出も楽しめました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3877] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Dec 22 23:38:26 2020

10日ほど空いてしまいましたが、先々週末土曜の午後は相模大野へ。この駅を降りたのは初めて。 ということで、初めて足を運んだホールでこの公演を観てきました。

相模女子大学グリーンホール[相模原市文化会館(グリーンホール)]
2020/12/12, 15:00-16:20.
演出: 小野寺 修二.
原作: Miguel de Cervantes: Don Quijote; テキスト: 山口 茜.
出演: 藤田 桃子, 大庭 裕介, 崎山 莉奈, 雫境, 伊吹 卓光, 小野寺 修二.
美術: 石黒 猛; 照明: 吉本 有輝子; 音響: 池田 野歩; 衣裳: 駒井 友美子(静岡県舞台芸術センター); 舞台監督: 橋本 加奈子;
初演: 2017/03/03, 高知県立美術館ホール.

『ロミオとジュリエット』 [鑑賞メモ] に続く カンパニーデラシネラの古典名作劇場第二弾『ドン・キホーテ』です。 初演から4年近く経ち、初の首都圏での上演です。 バレエ化された Kitri と Basilio の恋物語ではなく原作に着想した作品です。 マイムをベースとした無言の作品で、はっきりと物語の筋を追って描いてはいません。 騎士道物語を読み耽って空想と現実の区別が付かなくなる話、 風車を巨人と間違えて突撃してしまう話、 田舎娘を Dulcinea 姫と Sancho に騙される話、 そして、銀月の騎士 Carrasco との決闘の話など に着想したと思われる場面が演じられ、 ある程度粗筋を知っているだけで物語が辿れると思われる演出でした。 (バレエ版の元ネタになった話は使われていなかったように思います。)

『ロミオとジュリエット』がそうでしたが、 全国を回ってのツアーで必ずしも劇場での上演を前提としない作品ということでしょうか、 大きな装置は使わず、人手で持ち運べる程度の道具のみでの上演です。 しかし、逆にそれが身体の動きで空間を描く面白さ、 一つの物から様々なアイデアを使って多様な情景を描いていく面白さを 引き出していたように思います。

冒頭の騎士道物語を読み耽る場面、 一辺2m程度の細い白い棒で作られた立方体の枠の中に読書机を置き、 その中と外を、書物という空想に繋がる世界と現実という異なる世界として動きとして演じ分け (空想を映像と見立て、それを演出している様子として見せたり)、 そこから本がパフォーマーたちの手づてでこぼれて、やがて舞台全体に空想が広がるよう。 そして、なんと言っても、Don Quixote が風車を使う場面。 優に5m四方はあろう軽い布を使い、広げて風を表現し、 張って風車への道を作りつつその上を行くDon Quixote と Sancho を張る手でライトアップし、 布の下の動きで巨人のイメージを作り出し、翻して場面転換し、と、 布使いのアイデア溢れる楽しい場面でした。 もちろん原作が風刺的、喜劇的な作品ということもあり、 客席からも笑い声が溢れるようなコミカルな場面も少なからずありました。

2月に観た『どこまでも世界』 [鑑賞メモ] や 前の週に観た『Knife』 [鑑賞メモ] のような試みも良いのですが、 『ロミオやジュリエット』や『ドン・キホーテ』のような有名な物語を使って取りつきやすく楽しめる作品も、彼らの持ち味が生かされていて、また良いものです。 それにしても、『Knife』が振替公演となったため、2週続けての公演。 出演者はもちろんのこと、制作サイドも諸々の調整が大変だったのではないかと。

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[3876] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 13 18:58:10 2020

国立フィルムアーカイブでは、11月17日から12月6日まで 上映企画 『生誕100年 映画女優 原節子』をやっていました。 自分の観てきた戦前日本映画は松竹大船に偏っていて、当時、東宝の女優だった 原 節子 の出演した映画はほとんど観てませんでした。 これも戦前の 原 節子 出演の東宝映画を観る良い機会かと、3回の週末を使って4本観ました。

『田園交響樂』
1938 / 東宝東京 / 白黒 / 35mm / 75min.
監督: 山本 薩夫. 脚本: 田中 千禾夫. 原作: André Gide, La Symphonie pastorale
高田 稔 (日野 東作), 原 節子 (盲目の少女雪子), 佐山 亮 (東作の弟進二), 清川 玉枝 (東作の妻敦子), 富士山 君子 (東作の娘道子), 御橋 公 (田口医師), etc

フランスの André Gide の小説を、舞台を札幌に翻案しての映画化です。 原 節子 はキリスト教徒の教師 日野 (原作では牧師) に育てられる盲目の少女 雪子を演じています。 貧しい身なりで言葉もろくに喋れない姿での登場こそ鬼気迫るものがありましたが、知的で美しい女性へ成長するプロセスの描写はあっさり。 日野の妻の描写も少なめ。 むしろ、東京から訪れた日野の弟 進二 (原作では長男に相当) を交えての微妙な三角関係の描写の方が丁寧でした。 雪子は進二に託され東京で手術を受けて視力を得るのですが、進二の元を抜け出し一人 日野の元に向かいます。 その旅路の描写がドラマチックで、ラストは吹雪の中で行き倒れる場面は、彼女を探す2人も合わせてかなり緊張感溢れる見せ場になっていました。 ラストは雪中に行き倒れた雪子を日野が見つけ、教会に担ぎ込むのですが、雪子の最期の言葉の場面は暗示的にしか描かれませんでした。 雪子の自殺ではなく、日野への旅路の描写に力が入っていたので、原作とは少々トーンが変わって、日野と雪子のメロドラマを観るようでした。

『東京の女性』
1939 / 東宝東京 / 白黒 / 35mm / 82min.
監督: 伏水 修. 脚本: 松崎 與志人. 原作: 丹羽 文雄 『東京の女性』.
原 節子 (君塚 節子), 江波 和子 (妹 水代), 藤輪 欣司 (父 榮治郎), 水町 庸子 (母 お幾), 立松 晃 (木幡 好之), 水上 怜子 (タイピスト たき子), 外松 良一 (一森 営業課長), 柏原 徹 (販賣主任), etc

原 節子が、自動車販売会社のタイピストからセールスマンに転身し成功するモダンな女性を演じた映画です。 転身するきっかけはDVを振るう甲斐性なしの父の入院費のためと、いささか保守的な理由で状況に背を押された感もあるのですが、 性格に仕事が合っていたのか、そんなきっかけも忘れたかのように (実際、後半になると親は登場しない)、仕事にのめり込んで行きます。 節子と恋人の仲の 販売会社で一番の成績を出しているセールスマン 木幡 は、 当初は反対するも、決意が固いと見ると、彼女にノウハウを教え、セールスマンになることを支援します。 当時はセールスマンのような仕事は男の仕事で、ライバル間での暴力沙汰もよくあることのように描かれています。 そんなセールスマンの世界に飛び込んできた女性ということで、今であればセクハラとされるような嫌がらせも受けるのですが、 そんな事も気にせず、むしろ実力ではね飛ばして、節子は仕事を進めて行きます。 しかし、辣腕セールスマンぶりを節子が見せるようになると、木幡は次第に節子に対して気後れするようになり、 やがて木幡に好意を持っていた妹 水代に惹かれて行きます。 やがて、節子は木幡と妹の仲に気付くことになり、妹と木幡を結婚させます。

原 節子 は体格も姿勢も良く、顔立ちも強めなので、ので、洋装、特にスーツ姿、コート姿が似合いますし、 油塗れになって車を整備する様子も様になります。 男性もたじたじとなる辣腕自動車セールスマンとなっていく女性は、実にハマり役でした。 ラスト、妹と木幡の結婚式の後、納車するオープンカーの外車を運転してモダンな東京近郊の街中を走るのですが、 新婚旅行へ行く2人の列車を追いつつ、やがてそれも吹っ切れたかのように走り去っていく姿も、実に決まってました。 妹は姉と対照的な、しかし、古風ではなく、むしろ、女性であることを利用してモダンな文化を享受するような女性で、 それを演じる 江波 和子 も、奔放な (少々あざとさも感じる) 可愛さ。 恋人 木幡 を演じた 立松 晃 はこの映画が東宝 第1作だったようですが、そんな姉妹に見劣りしない有能イケメンぶり。 そんな脇を固める俳優たちも、原 節子 の魅力を引き立てていました。 また、節子ほどの野心はないもののしっかりした感のあるタイピスト時代の同僚 たき子 (水上 怜子) との仲の描写に、男社会の中でのシスターフッドを感じました。

『嫁ぐ日まで』
1940 / 東宝東京 / 白黒 / 35mm / 69min.
監督, 脚本: 島津 保次郎.
原 節子 (好子), 矢口 陽子 (浅子), 御橋 公 (生方 光三), 沢村 貞子 (牧 常子), 1934) 清川 玉枝 (片桐 房子), 汐見 洋 (奥村 喜造), 大川 平八郎 (戸田 淳), 英 百合子 (秋子), 杉村 春子 (丸川先生), 大日方 伝 (樫村 富士雄), etc

『東京の女性』とはうって変わって、保守的な家庭観結婚観のホームドラマです。 男寡の 生方 と、その面倒を観ている年頃の長女 好子、亡くなった母が忘れられない次女 浅子の、 生方が常子を後添えに迎え、好子が資産家 樫村へ嫁ぐ日までの日々を、ドラマチックな抑揚は抑え 何気ない日常を通して描いています。 しかし、さりげない会話の積み重ねは、さすが 島津 保次郎 でしょうか。 好子が家を訪れた幼馴染みの戸田と居間で話様子に『隣りの八重ちゃん』 (松竹蒲田, 1934) [鑑賞メモ] を、 火鉢を囲んでのやりとりや満員列車での通勤・通学の場面に『兄とその妹』 (松竹大船, 1939) [鑑賞メモ] を 思い出させる所もあり、東宝の映画で登場する俳優の顔ぶれこそ違いますが、実に松竹大船調でした。

原 節子 の美しい和装の花嫁姿は見られるのですが、日常の服装も、基本、和装で、 颯爽としたモダンな姿が見られず、少々物足りません。 しかし、いかにもモダンな意匠はほとんど出てこないのですが、 家を訪れた叔母にお茶菓子に出すのがエクレアだったり、 夕食に味噌汁のようにお椀で食べる場面が火鉢で作ったシチューだったり、 姉妹で花見に行って食べるのがサンドウィッチだったり、と、 日常にさりげなく溶け込んだモダンな食文化が描かれていました。

『阿片戰爭』
1943 / 東宝映画 / 白黒 / 16mm / 115min.
監督: マキノ 正博. 脚本: 小国 英雄. 原作: 松崎 啓次.
市川 猿之助 (林則徐), 河津 清三郎 (穆資英), 小杉 義男 (丁徐成), 清川 莊司 (許沈伯), 菅井 一郎 (阿片吸飲者), 進藤 英太郎 (英国東洋艦隊提督), 浅田 健三 (印度提督), 山本 礼三郎 (黄露球), 丸山 定夫 (林牙梁), 原 節子 (愛蘭), 高峰 秀子 (麗蘭), etc

中国の管理貿易体制の終焉、欧米の中国進出の契機となった阿片戦争の直接のきっかけとなった、 林則徐のアヘン取締を描いた描いた群像劇の映画です。 戦時中に撮られた映画で、登場人物はイギリス人も中国人も日本人が演じて、日本国内に大規模なセットを作って撮影しています。 大規模なセットはもちろん特撮も駆使して撮られた、 右往左往する民衆で混乱する広州市内、炎上するイギリス人居留区などのスペクタクルは、さすが東宝でしょうか。 しかし、物語自体は、正義感を持って事に当たる林 則徐 たち、悪辣なイギリス人たち、 小狡賢そうなアヘン商人や腐敗した清の役人たちの描写もステロタイプで図式的に感じてしまいました。 原 節子 と 高峰 秀子 の2人が演じた、混乱に巻き込まれる盲目の少女とその姉のエピソードは、 Lilian & Dorothy Gish 主演の D. W. Griffith のサイレント映画 Orphans of the Storm (1921) の翻案とのことですが、 阿片戦争へ至る大状況の物語に埋もれ気味で、サブのエピソードのように感じられてしまいまいました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3875] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sat Dec 12 23:43:55 2020

先の週末、土曜の晩は20時までになんとか帰宅。自宅でこの舞台をストリーミングで観ました。

Lucent Danstheater, Den Haag
4 December 2020.
Choreographer: Yoann Bourgeois.
Assistant to the choreographer: Marie Bourgeois. NDT Assistants: Lucas Crandall, Tamako Akiyama, Ralitza Malehounova.
Music: Max Richter: Written on the sky, The end of all our exploring, The Departure, Path 19 (yet frailest), November Sequence, This bitter earth / On the nature of daylight.
Light: Yoann Bourgeois, realization by Barry van Oosten; Decor: Yoann Bourgeois; Costume: Yoann Bourgeois, realization by Yolanda Klompstra.
Duration: approx. 40 min.
World Premiere: 3 December 2020, Lucent Danstheater, Den Hague.
Streaming date: 2020/12/05 20:00-20:40 JST.
URL: expired.

コンテンポラリー・サーカスを背景にダンスの文脈でも活動する振付家 Yoann Bourgeois [関連する鑑賞メモ] が オランダのダンスカンパニー NDT (Naderlands Dans Theater) [関連する鑑賞メモ] のメインのカンパニー NDT 1 に振付た新作の有観客公演が、有料ストリーミングされました。 ちなみに、Bourgeois が NDT に振付るのは、若手のためのカンパニー NDT 2 に振付た Little song (2019) に続いてです。 (残念ながらこちらはトレイラーしか観ていませんが。)

舞台装置は、素の木で作った立方体の一つの頂点で接する3面。 一面は床として固定されていますが、もう2面は可動で、1面は上向に傾けて傾いた床のように、 もう1面は下向きに傾け引き上げて天井のように使うことができます。 さらに、2脚の椅子と1台のテーブルが道具として使われます。 最初に登場するのだ男女1組、親密というより、テーブルを挟んでそこから関係が少々冷めてしまったかのような微妙な距離感です。 そのうち女性がテーブルに伏せて眠ってしまうのですが、その中の夢かのように舞台上のイメージが変容させる動きが始まり、ラストに元の状況に戻って終わります。 その間、ダンスを通して男女のすれ違い諍いのような情景が時々浮かび上がります。 少々メロドラマチックな Max Richter の音楽もそんな情景に合っていました。

Les Grands Fantômes [鑑賞メモ] など典型ですが、物理的な動きの制約を逆に心情の表現に使うことが Bourgeois の作品の特徴の一つなのですが、 ここでは、垂直に立った、もしくは、大きく傾いた壁(床)、上下反転しての天井が、人の動きを物理的に制約する条件として使われます。 そこに椅子やテーブルを固定し、その周りでパフォーマンスすることで、水平な床ではありえない動きを作り出していきます。 また、最初の2人だけではなく、2人と同じ服を着た (上下を組み替えたパターンを含む) ダンサーを使い、動きを組み合わせていきます。 さらに、それを映像として撮り、まるで床が水平であるかのようにして壁面に投影し、実際の人と重ね合わせていきます。

壁際に立つ人に傾いた床を滑り落ちていく人の映像を重ねた所など、まるで幽体離脱。 傾いた床に固定したテーブルに着いた男女の周囲を人が転げ落ちて行き時折人が入れ替わることで、 静かに向かい合っているようで心中は崩れ落ち込んでいく様子を描くようでした。 そして、ラスト近くの上下反転した天井でのパフォーマンスは、 多くの人に支えられてなんとかテーブルに着いていられる一方で、 反転して投影された画面で観るとテープルから浮き上がってしまうかのように見えます。 それも、テーブルを挟んでいるものの心ここにあらず、しかし周囲の人もあってなんとかここに止まっているかのような、二人の置かれた状況を象徴するようでした。 また、傾いた床の上や上下反転した天井での動きに合わせ、速い動きは使わず、全体としてゆっくりとした動きでしたが、それも夢の中の出来事のようでした。

垂直に立てられた壁を床に見立てたダンスは vertical theater/dance として一分野となっていますが、 流石に、上下反転というのは滅多になく、この舞台のスチル写真を観たときは舞台の展開の中での状況が想像できませんでした。 それに、こういうセッティングではワイヤーも使い aerial acrobat 的な見せ方をすることが多くなるため、 動きを抑えてむしろ心象を表現するかのような表現は新鮮でした。 斜めの床を使って映像とも重ね合わせるというと、2000年に観た Studio Azzurro + Compagnia di Roberto Castello: Il Fuoco L'Acqua L'Ombra [鑑賞メモ] なども思い出しましたが、 この作品では、映像の中に身体が埋もれることなく、むしろ生身の身体の方を主に扱っているように感じられました。 このような映像使いはプロジェクタの技術進歩のおかげもあって、特に、 2000年前後はまだ輝度が低く暗くする必要があったけれども今は照明をさほど落とさずとも見れること、 超短焦点プロジェクタの登場により壁前の人と被らない壁際からの投影が可能になったこと、の2点が大きいのではないかと想像されます。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3874] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Fri Dec 11 22:05:47 2020

先の週末、土曜の午後は横浜山下町へ。この公演を観てきました。

KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ
2020/12/05, 13:00-14:10.
演出: 小野寺 修二.
出演: 大庭 裕介, 梶原 暁子, 崎山 莉奈, 雫境, 藤田 桃子, Nung Van Minh [ミン・ヌヴァン], 劉 睿筑 [Liu Rui Zhu / リウ・ジュイチュー] (aka Bamboo Liu), 小野寺 修二.
美術: 原田 愛; 照明: 吉本 有輝子; 音響: 池田 野歩; 衣裳: 武徳 ドァンフン; 舞台監督: 岩谷 ちなつ;
企画製作・主催: KAAT神奈川芸術劇場

カンパニーデラシネラを主宰する 小野寺 修二 の演出による新作の公演です。 カンパニーデラシネラの4人 (小野寺、藤田、大庭、崎山) が顔を揃えていますが、 国際的に他のダンサーも加えてのKAAT企画製作による公演です。 ベトナムからの Nung Van Minh は2017年の『WITHOUT SIGNAL! 〔信号がない!〕』 [鑑賞メモ] にも出演、 台湾からの 劉 睿筑 も2018年の小野寺の日台コラボレーションワークショップ『夢的故事(夢の物語)』に出演しており、 今までの国際的なネットワーク作りが生きた顔ぶれでしょうか。

マイムをベースとしたセリフを用いない作品です。 2月に観た『どこまでも世界』 [鑑賞メモ] にも 感じたことですが、空間を無からマイムで描くのではなく、舞台装置で設定された空間の意味付けを変えていきます。 特に今回は、装飾が控えめながらも、分割して組み合わせ並べ替え自在のテーブル状の台や、扉、壁状のパネルなどを駆使して、 それを動かし組み替えて、舞台上の状況の意味付けや変化などの基本的な枠組みを示していくようでした。 パフォーマーの動きは外的な空間描写ではなく、むしろ登場人物の内面描写をするように、 マイムというより無言での演劇的な演技があり、 そこから強い感情を吐露するような抽象的なダンス、マイム的な動きが時々湧き上がってきます。 そんな2つの動きのモードに、ミュージカルの地の台詞と歌 (オペラであればレチタティーヴォとアリアや合唱) も連想させられました。

『どこまでも世界』はスケッチ集という感じでストーリーは感じられなかったのですが、 『Knife』では、はっきりしたものではないものの不条理な状況に置かれた6人 (梶原, 崎山, 藤田, Minh, 劉, 小野寺) の間で繰り広げられる物語が浮かびあがらせるかのように、 右往左往し、議論し、他人の様子を伺い、時には我先に逃れようとする様が描かれていきます。 残る人物2名 (大庭 裕介, 雫境) は不条理な状況をもたらしている抑圧的な人物の役なのですが、 意図や内面を感じさせないような動きで、不条理感を高めていました。 不条理な極限状況でのグループでの旅 (パスポートチェックの場面もある) での心理劇を見るようでした。 ラスト、崎山の座っていた椅子に大庭が赤いテープで印を付け、崎山が赤いドレスを着る場面が赤いドレスを切るのですが、 人柱として選ばれることを象徴的かつ抽象的に表現しているよう。 その不条理さを強い動きで表現するのではなく、むしろ淡々と受け入れるかのような動きで描くところに、この状況をもたらしている抑圧の強さを感じました。

この公演は11月21日から大スタジオでの上演を予定していたのですが、 出演者に新型コロナウイルスPCR検査で陽性反応が出たため、急遽、日程と会場を変えての振替公演となったのでした。 2月末の『どこまでも世界』も、 2月18日の首相による突然の「イベント自粛要請」による公演中止が相次ぎ始めたギリギリの状況下での公演でした。 このような状況下で、『どこまでの世界』を上演し、『knife』の振替公演を実施した、関係者の上演への強い意志と努力には頭が下がります。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3873] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 6 0:15:45 2020

先の週末、土曜の午後ダンスを観た後、初台から神保町へ移動。 今年は松竹映画100年ということで、国立映画アーカイブの上映企画 『松竹第一主義 松竹映画の100年』 [鑑賞メモ] だけでなく、 神保町シアターでも特集企画 『松竹映画100周年 “監督至上主義”の映画史』をやっています。 その中から、未見だった戦前のこの映画を観てきました。

『花籠の歌』
1937 / 松竹大船 / 白黒 / 69min.
監督: 五所 平之助 脚色: 野田 高梧, 五所亭. 原作: 岩崎 文隆 『豚と看板娘』
田中 絹代 (洋子), 佐野 周二 (小野), 徳大寺 伸 (李さん), 河村 黎吉 (敬造), 高峰 秀子 (浜子), 岡村 文子 (伯母お菊), 谷 麗光 (その亭主富太郎), 出雲 八重子 (女中おてる), 笠 智衆 (堀田), 近衛 敏明 (岡本医学士), 立花 泰子 (女給鈴江), etc

あらすじ: 元国際航路客船コックの啓造が開いた銀座のトンカツ屋「湊屋」の看板娘 洋子 は、 妻を亡くした独り身の父の面倒を見て、24歳を目の前にしても独身。 家のことに気を使わない啓造や独身の洋子のことを、伯母お菊は気にしている。 妻の年回忌に何も用意してなかったのに、前日の伯母からの確認の電話に、 啓造は慌てて実家が寺の常連客 学生 堀田に頼んで法要をしてもらう。 伯母は岡本医学生を洋子の結婚相手として紹介しようとするが、啓造も洋子も関心を示さない。 洋子には好意を寄せ合う常連客の学生 小野がいた。 小野の学友 堀田を通してそれを知った啓造は、小野にトンカツ屋になる気がある事を確かめ、洋子との結婚を認める。 トンカツの腕が良いと評判の雇われコックの李さんは、密かに好意を寄せていた洋子の結婚にショックを受けて、店を辞めてしまう。 李さんに好意を寄せていた女中おてるも、店を辞めてしまった。 啓造と小野の2人で店を回すようになったが、客足は遠のいてしまった。 やがて、店に刑事がやってきて、小野が連行されてしまう。 小野が湊屋の常連となる前に行っていたカフェーの女給鈴江が殺されたという新聞記事を見た洋子は、 小野が犯人で、裏切られたと思い込んでしまう。 事情聴取から帰った小野は、過去の女給との仲を詫びて、洋子と仲直りする。

日本初の国産トーキー映画『マダムと女房』 (松竹蒲田, 1931) [鑑賞メモ] を監督したことで知られる 五所 平之助 による映画です。 看板娘 洋子と常連客 小野の恋物語が軸になっていますが、 階級差のような障害やすれ違いなどの2人の恋路を振り回す状況が小粒で、メロドラマにしては平坦な展開です。 特に、戦前松竹メロドラマでは娘の恋路に立ち塞がる無理解で抑圧的な親父を演じる事が多い 河村 黎吉 [鑑賞メモ] が、 むしろ娘やその恋の相手に理解のあるいい父親を演じている事が物足りなく感じました。

トンカツ屋の日常の中で起きるさざなみのような出来事を、 全体として大きなオチを付けるような物語構成でなく細やかなエピソードを連ねる形で、 ユーモアと人情を感じさせつつ、戦間期の風俗を交えて、描いています。 メロドラマ展開的には少々物足りなく感じましたが、 モダンだが庶民的でもあるトンカツを出す店の客層を含めた雰囲気はもちろん、 銀座の路地裏の店の二階からの眺めや地方から上京してきた苦学生がその眺めに込める心情など、 その丁寧な描写が楽しめました。 田中 絹代の演じる主人公も庶民的で勝気。度々口にする「バカねっ」も良いです。

映画の中で、特に印象に残ったのは、 名前やイントネーションから朝鮮人と思われる役の、徳大寺 伸 演じるコックの李さん。 フラレ役という点では可愛そうな役ではありますが、 トンカツの腕が良いと客の評判も良く、女中にも好意を寄せられています。 偏見が感じられないわけではないものの数年前の関東大震災時の虐殺などに見られるような差別をあまり感じさせない、フラットな描き方でした。 こういう人物を登場させることで、東京のモダン都市としての国際化を描こうとしていたのかしらん、と。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

国立映画アーカイブの方では、今、上映企画 『生誕100年 映画女優 原節子』 をやっていて、そちらも戦前の映画を目当てに観に行っています。 が、やっぱり、東宝よりも松竹の方が好みだなあ、と、つくづく。

[3872] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Fri Dec 4 22:31:25 2020

先の週末、土曜は、昼には初台へ。この舞台を観てきました。

中村 恩恵×首藤 康之×新国立劇場バレエ団
新国立劇場 中劇場
2020/11/28 14:00-15:10.
構成・演出・美術原案: 中村 恩恵, 首藤 康之
振付: 中村 恩恵; 音楽: Dirk P. Haubrich 照明: 足立 恒; 音響: 内田 誠.
キャスト: 渡邊 峻郁 (一場: 詩人/ロメオ/美青年; 二場: 詩人/オテロ/バック/シャイロック; 三場: 詩人/美青年/男), 小野 絢子 (一場: 詩人/ジュリエット/ダークレディ; 二場: 美青年/デズモーナ/タイターニア; 三場: 美青年/女),
初演: 新国立劇場中劇場, 2011/09/30
制作: 新国立劇場

2011年に新国立劇場ダンスの公演として初演された William Shakespeare の詩集 The Sonnets 『ソネット集』 (1609) に着想したダンス作品の再演です。 それ以来、何回か再演されていますが、観るのは初めて。 初演時は構成・演出の中村と首藤が出演しましたが、今回の再演では新国立劇場バレエ団のダンサーが踊りました。 (日曜の公演では男性ダンサーは首藤が踊りましたが。) 『ソネット集』はおよその内容を知る程度と疎いこともあり、 原作の解釈などはピンと来なかったのですが、 ダンサーの動きと色彩を抑えた衣装と照明を駆使したスタイリッシュな演出を堪能できました。

道具は舞台奥の三面鏡台と一人がけソファ、舞台下手の詩人の机、途中で使用される洋裁用トルソー程度。 照明は舞台全体をフラットに照らすというより、ダンサーの周囲の空間を区画するかのようで、 その区画の変化によって場面を切り替えていく演出が良かった。 闇の中にその区画が浮かび上がるので、二箇所の区画のフェードイン/フェードアウトが、 水平方向の移動ではなく、まるでオーバーラップしてクロスフェードするように感じられたりも。 一場ではリフトなども用いた男女ペアでの踊りはさすがバレエで鍛えられているだけある安定感とスムースさ。 しかし、二場での女性ダンサーが男装してのダンスも良かった。 キャスタ付きの一人がけソファに女性ダンサーを座らせ手を取って踊るように移動させたり、 洋裁用トルソを使ったパペットダンスのような踊りなど、物を使ったダンスを交えていたのも気に入りました。 全体としてモノトーンで暗めの舞台ということもあってか、 恋愛感情の明るい面というより暗い面を描いているようにも感じられました。

新国立劇場中劇場の客席は傾きが大きく、奥行き方向を使った舞台作品でも観やすいことも、良かったでしょうか。 去年夏に『Camille –カミーユ・クローデル–』 [鑑賞メモ] も、 スパイラルホールではなくこの新国立劇場中劇場で観たら、 この『Shakespeare THE SONNETS』のようなスタイリッシュな舞台として楽しめたのかもしれません。

今年は、1月の『ニューイヤー・バレエ』 [鑑賞メモ] に始まり、 7月の『竜宮』 [鑑賞メモ]、 11月の『ドン・キホーテ』、そして、この『Shakespeare THE SONNETS』と、4回も新国立劇場へ足を運ぶことに。 例年であれば海外カンパニーの来日公演へ行くのに精一杯で、新国立劇場から足が遠のきがちなのですが。 コロナ禍で来日公演が止まってみると、新国立劇場のような公共劇場やそのレジデンスのバレエ団のようなカンパニーが 国内にちゃんとあるとののありがたさを実感する1年でありました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3871] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Nov 29 22:06:50 2020

先の週末、日曜は、午前には家を出て千葉へ。この展覧会を観てきました。

千葉市美術館
Tatsuo Miyajima: Chronicle 1995-2020.
2020/09/19-12/13 (10/5,10/10,11/2,11/16,12/7休), 10:00-18:00 (金土-20:00).

千葉市美術館の拡張リューアルオープン・開館25周年記念の展覧会は、 7セグメントLEDカウンターを使ったインスタレーションで知られる 宮島 達男 の回顧展です。 1980年代には活動を始めていた 宮島 ですが、美術館開館の1995年以降を取り上げたものになっています。 国際美術展や美術館常設展などで作品を観る機会が多い作家ですが、美術館レベルでの個展として観るのは初めて。

まとめて観て新たな気付くがあったという程ではないのですが、 「7セグメントLEDカウンターを0を表示せずにカウントダウンを繰り返す」という確固たるモチーフを持って、 それを長年にわたって変奏して展開していることの強さを実感しました。 配置を変えるのはもちろん、LEDの色を変えたり、LEDに代わって液晶を使ったり、液晶プロジェクタで投影したり、 カウントダウンの方法に「IKEGAMI Model」のようなロジックを採用したり。 さらに、身体性を強調するように、人にペイントしたり、ペイントもせずに数えさせてパフォーマンス/ビデオ作品としたり、と、 変奏の展開の仕方も巧みで、変奏間の差異も楽しめます。 正直に言えば「柿の木ブロジェクト」は『Ripple Across The Water - 時の波紋』 (表参道界隈, 1995) で観て以来、微妙な作品に感じてはいるけれども、 LEDカウンターという作風の太い柱を持ち、しっかり継続してきているということで、 作家の作風の文脈中にそれなりに位置付けられるように感じられました。

と言っても、やはり良いと感じたのは、LEDカウンターを使った作品。 LEDモジュールに大きなものや小さなものを使い、 裏の配線も見せるように疎に格子状から揺らいで不定形に配置する、近年の作風が特に気に入りました。 1995年は実用化されたばかりの青色ダイオードの使用も新鮮でしたが、 今回の展示での新作では、淡いパステルカラーのLEDカウンターを、それも様々な色のものを交えて使っているのも新鮮に感じられました。

宮島も出展した千葉市美術館開館記念展『Tranquility – 静謐』は観ていますし [鑑賞メモ]、 今回の展覧会に取り上げられていた最初期にあたる 国際現代美術展『Ripple Across The Water – 水の波紋 '95』は、 自分にとっても現在に至るまで現代美術を見続ける大きなきっかけとなった展覧会でした。 1996年にはカウントダウン・パフォーマンスの収録にも参加したことありました [鑑賞メモ]。 そもそも、このサイトに残っている美術展の鑑賞メモが1996年頭からで、ほぼこの展覧会と扱う時代と同じ。 先日観た群馬県立近代美術館の『佐賀町エキジビット・スペース 一九八三—二〇〇〇 現代美術の定点観測』展にしてもそうですが [鑑賞メモ]、 作品を鑑賞するというより、1990年代中頃のことをいろいろ思い出させられた展覧会でもありました。 (自分の個人的な記憶については多くは語りませんが。)

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[3870] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Nov 24 21:34:39 2020

1週間余り前の日曜15日は、昼に京橋へ。 毎年恒例の国立映画アーカイブのサイレント映画の上映企画 『サイレントシネマ・デイズ2020』 で、柳下 美恵 によるピアノ生伴奏付きサイレント映画上映を観てきました。

La Proie du vent
1927 / Films Albatros (France) / 104 min. / 35mm 1.33:1 16fps / B+W / silent
Réalisation: René Clair
Scénario: René Clair le roman L'Aventure amoureuse de Pierre Vignal d'Armand Mercier
Charles Vanel (Pierre Vignal), Lillian Hall-Davis (Elisabeth, la châtelaine), Sandra Milowanoff (Hélène, la soeur d'Elisabeth), Jean Mura (le mari d'Hélène), Jim Gérald (docteur Massaski, le médecin), etc

サイレント期の René Clair の映画というと、 Entr'acte 『幕間』 (1924) や Paris qui dort 『眠るパリ』 (1925) のような Avant-Garde 色濃い実験的な作品の印象が強いのですが、 この映画はその後に制作された実験色を抑えた物語映画です。

時代は第一次世界大戦後。主人公の冒険飛行士 Pierre Vignal はパリからモスクワへの航空路開拓中に 中欧スロバキアの城館近くの森に不時着、城館の女主人である伯爵夫人 Elisabeth の手当てを受けます。 その Pierre と Elisabeth の間のロマンスを、城館に幽閉された妹 Hélène とその夫を交え、 少々ミステリー的かつアクションの要素もあるメロドラマとして描いています。 Elisabeth の一族はバルカンの架空の小国 Libanie [Libania] の貴族で、 クーデターで Elisabeth は夫を失い、追われて亡命生活し、 妹 Hélène はクーデター時に逮捕投獄された結果錯乱してしまったという設定は、 この映画を制作した Albatros がプランスの白系ロシア人の映画会社で、彼らにとってリアルなものだったのかもしれません。

Pierre が Elisabeth に好意を寄せるようになるも、その義弟の間の関係を疑ううち、幽閉された Hélène と出会います。 錯乱しているとは知らずに Hélène の妄想に振り回され、2人で城館を自動車で脱走するものの失敗し、彼女を事故死させてしまい、彼女たちの真実を知ることになります。 Hélène の死を契機に Elisabeth と義弟は母国に戦いに戻る決心をし、Pierre も Elisabeth への未練を残しつつパリに戻りますが、 最後はパリで再会して結ばれる、という、三角関係の交錯するメロドラマです。 特に、Elisabeth と義弟が関係しているのではないかと嫉妬する場面での妄想イメージの映像化など、 セクシーかつスタイリッシュで、流石、Clair。 亡命貴族の城館暮らしということで、モダンな意匠に溢れているわけではないですが、ファッションもアール・デコ期で、お洒落です。

しかし、一番の見所は、 不時着時を含む空撮映像や Hélène の事故死の場面を含むカーチェイスの映像など、スリリングな映像表現でしょう。 飛行機や自動車を使っているということも含め、当時としてはモダンというか斬新な表現だったのでしょう。 偶然、前日に『星の王子さま』 (Antoine de Saint-Exupéry: Le Petit Prince, 1943) を舞台化した作品を観たばかり、 図らずしも、不時着した飛行士の物語を続けて観ることになりました。 一方は子供の心を呼び起こす寓話、もう一方は大人向けメロドラマと、ある意味対照的ですが、 戦間期、飛行士の不時着という状況は想像を掻き立てられるものがあったのだろうなあ、と。

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[3869] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Nov 23 22:20:18 2020

先の週末土曜14日は、午後に横浜山下町へ。このダンス作品を観てきました。

KAAT神奈川芸術劇場ホール
2020/11/14 14:00-16:10.
演出・振付: 森山 開次
美術: 日比野 克彦; 衣裳: ひびの こづえ; 音楽: 阿部 海太郎
出演: アオイヤマダ (王子), 小㞍 健太 (飛行士), 酒井 はな (バラ), 島地 保武 (キツネ, 王様, 他), 森山 開次 (蛇, 地理学者, 他), 坂本 美雨 (コンスエロ), 池田 美佳 (ヒツジ, 渡り鳥, 点灯夫, バラたち, 他), 碓井 菜央 (ヒツジ, 渡り鳥, バラたち, 他), 大宮 大奨 (呑み助, 飛行隊), 梶田 留以 (夕日, 渡り鳥, バラたち, 他), 引間 文佳 (ヒツジ, 渡り鳥, 点灯夫, バラたち, 他), 水島 晃太郎 (うぬぼれ屋, 飛行隊, 他), 宮河 愛一郎 (実業家, 飛行隊, 他).
演奏:佐藤 公哉, 中村 大史.
企画製作・主催: KAAT神奈川芸術劇場

7月の新国立劇場バレエ団 『竜宮 りゅうぐう ~亀の姫と季の庭~』 も楽しかった [鑑賞メモ] が、 今度はコンテンポラリー・ダンスの文脈で活躍するダンサーを集めて 『星の王子さま』をダンス作品化したということで、観てきました。

森山の舞台といえば、プロジェクションマッピングやユーモラスな造形の道具や衣裳を駆使した、 軽妙さを感じることが多いのですが、 プロジェクションマッピングもほとんど使わず、道具や衣裳の造形も抑えめ。 バオバブ木をバルーンで象る所など ひびのこづえ のアイデアのように思われましたが、 クレジット上は美術が ひびのこづえ ではなく 日比野克彦 で、そのような造形物は控えめ。 新体操やサーカスなどのバックグラウンドなど個々のダンサーの身体性を生かした動きも抑えて、 グループでの動きでの表現を多用して、作品を描いていました。 予想していた舞台とかなり違ったので、少々戸惑いながら観ていました。 そんな中では元バレエダンサーという身体性を生かした 酒井 はな の「バラ」が最も印象に残りました。

最も印象に残ったのは、やはり、最後の場面。 王子さまがバラの元に戻ったように描くのではなく、 また飛行士も倒れた状態になり修理した飛行機で生還したかのような描き方ではなく、 バラが一人舞台中央で回り続けるまま幕が下りる終わり方は、 かなりペシミスティックな印象を残しました。

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