TFJ's Sidewalk Cafe >

談話室 / Conversation Room

TFJ's Sidewalk Cafe 内検索 (Google)
[3640] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun May 20 20:41:30 2018

既に半月前の話になってしまいましたが、ゴールデンウィーク後半の5月4日の晩は両国へ。 この公演を観てきました。

勅使河原 三郎 / 佐東 利穂子 / 宮田 まゆみ 『調べ 笙とダンスによる』
『調べ 笙とダンスによる』
Saburo Teshigawara / Rihoko Sato / Mayumi Miyata: Shirabe
シアターΧ (両国)
2018/05/04, 19:30-20:45.
構成・振付・美術・照明・衣装: 勅使河原 三郎.
ダンス: 佐東 利穂子, 勅使河原 三郎. 笙: 宮田 まゆみ
演奏曲目: 1)沈黙 2)下無 (しもむ) 3)盤渉調調子 (ばんしきちょうちょうし) 4)平調調子 (ひょうじょうちょうし) 5)迦陵頻急 (かりょうびんのきゅう) 6)雙調調子 (そうじょうちょうし) 7)平調 (ひょうじょう) 8)沈黙
制作: KARAS

最近は海外でのバレエ団でのコンテンポラリー作品の振付やオペラの演出の活動も目立つ 勅使河原 三郎 の新作は、雅楽の楽器である笙を伴奏に、佐東 利穂子 とデュオで踊るというもの。 映像も使わず、控え目な照明の演出のみで衣装も暗色。笙の響きも静謐に感じられるダンスだった。 バレエのイデオムは無く、少し腰を落とした姿勢ですり足気味で足を動かしたり手を回したりする動き。 勅使河原の精悍な雰囲気もあってか、舞踏というより武道的な動きをスピードを落として見ているよう。 雅楽 (古代) というより能楽 (中世) と親和性の高い動きのようにも思いましたが、 音がミニマリスティックだったせいか違和は感じませんでした。

宮田のアブストラクトにすら感じる笙の響きとミニマリスティックな演出は好みでしたし、 スリット状の光を使って、闇の裂け目から手を伸ばすような動きなど、光使いは良いなと思うときもありました。 しかし、ひたすら客席に向かって踊り続けていたのが気になってしまいました。 横に向くというより半身の構え、背を向ける時は振り返りに向けての準備動作のよう。 横動きで二人の位置を入れ替えたりしていましたが、、後ろに下がって、前に出てきて、と空間使いが単調に感じられてしまいました。

以前に観たのが1999年の Absolute Zero なので [鑑賞メモ]、約20年ぶり。 国内のカンパニーはつい後回しになりがちなのですが、いつの間にかこんなに開いてしまったか、と。 今回は、静岡遠征をやめてゴールデンウィーク後半に余裕があったので、 細川 俊夫 の作品でもお馴染みの 宮田 まゆみ [鑑賞メモ] の音楽ということもあって、足を運んだのでした。 意外と席に余裕があって、余裕ができた時に当日券でさっと観に行くものありかな、と。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

5日も晩に某イベントを覗いてみたのですが、自分には少々緩すぎました。うむ。 ま、行ってみないとわからないということもありますし。

[3639] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon May 14 22:34:19 2018

ゴールデンウィーク後半の5月3日は、La Folle Journée Tokyo 2018 で有楽町にいたのですが、 ライブの合間に数寄屋橋まで足を伸ばして、この展覧会を観てきました。

銀座メゾンエルメス フォーラム [Maison Hermès Le Forum, Ginza]
2018/04/25-2018/07/22 (不定休), 11:00-20:00 (日 11:00-19:00)

ルーマニア出身でフランス・パリを拠点に活動する Mircea Cantor の個展。 国際現代美術展でその作品を観たことはあるが、さほど強い印象は残っていなかった。 今回の個展の表題作である、透明なアクリル板で作られた何も書かれていないプラカードを持った人々が新宿中央公園を整然と歩く様子を捉えたビデオ作品は、 プラカードが透明であることより反射で映っている木々や空を掲げているように見えることが面白く感じる程度だった。 もう一つの作品、アルミ製の西洋式の風鈴 (wind chime) を数十個整然と並べて吊り下げたインスタレーションは、 出入りのドアと連動して鳴るようになっていた。 その端正な形状と鳴り響く鈴の音は、記録ビデオで観たらさほどではなかったかもしれないが、 実際にそこにある質感を見て、ギャラリー空間に音が満ちる様を体感すると、 そのクリアな質感形状と音が自然に入ってくるように感じられた。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

連休中で天気も良く、晴海通りが予想外の混雑。ここまでたどり着くのがやっと。 銀座通りまで出ることは断念したのでした。うーむ。

[3638] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun May 13 22:59:46 2018

フランスのナント (Nantes, FR) で1995年に始まったクラッシックの音楽祭 La Folle Journée。 その東京版 La Folle Journée Tokyo (始まった当初は La Folle Journeé au Japon) が2005年からゴールデンウィークで開催されています。 通し券はなく指定席ですが、会場や料金も含め、いわゆるクラッシックの「音楽祭」というよりジャズフェスなどに近いフォーマットの「音楽フェス」です。 ゴールデンウィークは ふじのくに⇆せかい演劇祭 や TACT/FESTIVAL で潰れてしまいがちなのですが、 今年は、ふじのくに⇆せかい演劇祭のパスポートチケットが取れず、TACT/FESTIVAL の時期がずれたので、 これも良い機会かと、今年の初日、ゴールデンウィーク後半の5月3日に、La Folle Journée Tokyo に足を運んでみました。 今年のテーマは “Un Monde Nouveau” 「モンド・ヌーヴォー 新しい世界へ」ということで、 非西洋音楽というかワールドミュージックに近いプログラムが多いように感じました。 そんなこともあって、いわゆる古楽やワールドミュージックに近いプログラムばかり観てしまいました。 クラッシックとはいえPAを使ったライブでしたし、 自分の好みど真ん中の演奏に出会えたわけではありませんが、十分以上のレベルの演奏を楽しむことができました。 ライブ三昧な一日というのも良いものです。というわけで、観たステージについて個別に軽く。

東京国際フォーラム ホールB7 (クンデラ)
2018/05/03, 12:00-12:45.
1)Las Estrellas de los cielos (Instrumental Séfarade / Alexandrie) 2)Por allí paso un cavallero (Séfarade / Turquie) 3)Stella Splendens (Virelai à 2 voix / Llibre Vermell de Montserrat) 4)Los set gotxs (Llibre Vermell de Montserrat) 5)Mariam Matrem Virginem (Llibre Vermell de Montserrat) 6)Des oge mais quer'eu trobar – Cantiga 1 (Alfonso X el Sabio) 7)Punxa, punxa (Séfarade / Jérusalem) 8)Ductia – Cantiga 123 (Alfonso X el Sabio) 9)A Virgen - Cantiga 253 (Alfonso X el Sabio) 10)Stella Splendens (Virelai / Llibre Vermell de Montserrat)

タイトルに “Salam” が入っているように 中世スペインのキリスト教徒、イスラム教徒とユダヤ教徒の音楽のプログラムということでしたが、 演奏曲目を見ると、今回はイスラム教徒の曲は無かったよう。 会場で配られていたパンフレットには楽団の個々のメンバーのクレジットが無かったのですが、 男女2名の歌手と楽器演奏者9名の編成で、 楽器演奏者は前列7名上手から、oud、kanun、viola da gamga 等 viol 系の楽器、rebec もしくは Cretan lyra と viol 系の楽器、nyckelharpa、recorder、ney、 後列上手から、percussion、frame drum/darbuka という感じに見えました。 セファルディの曲ということで、Savina Yannatou & Primavera En Salonico [鑑賞メモ] などで 聞き覚えのあるメロディに近い曲もやりましたが、 歌手の歌い方や、即興で大きく外れることの無い演奏など、クラッシック寄りの端正さでした。 それでも、その旋律や古楽や中東の楽器の音色はかなり好みで、楽しむことができました。

東京国際フォーラム ホールB7 (クンデラ)
2018/05/03, 14:00-14:45.
Yom (clarinet); Quatuor IXI: Régis Huby (violin), Théo Ceccaldi (violin), Guillaume Roy (viola), Frédéric Deville (cello)

Buda Musique から多くのリーダー作をリリースしているクレツマーの clarinet 奏者 Yom と、 最近では Melanoia & Quartuor IXI: Red - Music by Luzia von Wyl (Budapest Music Centre, BMCCD238, 2016, CD) など クラシック良いうよりジャズ/即興に近い文脈で活動するフランスの string 4tet Quatuor IXI の共演。 星間旅行をイメージしたというノンストップ45分の演奏でした。 不協和音も多用するけど、時に Yom がクレツマーのイデオム強いフレーズを吹き上げる時もあって、 アブストラクトに過ぎない演奏でした。

東京国際フォーラム ホールB7 (クンデラ)
2018/05/03, 16:00-16:45.
1)Brahms: Hungarian Dance No. 5 2)Sarasate: Zigeunerweisen 3)Boulanger: Avant de mourir 4)Šporcl: Homage to János Bihari, Gipsy fire, Transylvanian fantagy, Nane Cocha 5)Babai: Caprice Tzigane encore)Monti: Csárdás
Pavel Šporcl (violin), Zoltán Sándor (viola), Ján Rigó (contrabass), Tomáš Vontszemü (dulcimer).

クラシックの文脈で活動を始めたチェコ violin 奏者 Pavel Šporcl による、 dulcimer (cimbalom) を含む中欧 (チェコというよりハンガリーに多いですが) ジプシー楽団のプロジェクト。 ジプシー音楽のイデオムを用いた19世紀のクラッシックの曲を、ジブシー楽団風の演奏で。 元の曲のせいもあるのか普段聴き慣れているジャズ〜ワールドミュージック文脈での演奏に比べて端正でしたが、 dulcimer の生音も含めて、十分に楽しめました。

東京国際フォーラム ホールB7 (クンデラ)
2018/05/03, 17:45-18:30.
1)Galliano: Parisian divertimento 2)Debussy: Clair de lune 3)Debussy: Doctor Gradus ad Parnassum from Children's corner 4)Galliano: La valse à Margaux 5)Galliano: Soleil de Paris 6)Legrand: Medley - Les moulins de mon cœur, La valse des Lilas, You must believe in spring 7)Nazareth: Odéon 8)Galiano: Fou rire 9)Granados: Andaluza (Danse espagnole No. 5) 10)Galliano: Tango pour Claude
Richard Galliano (accordion)

1960年代からジャズの文脈で活動するフランスの accordion 奏者 Richard Galliano。 2010年代に入ると Deutsche Grammophon からクラッシックや映画音楽の曲の録音を残すようになっていて、 このライブも Claude Debussy や Michel Legrand の曲を交えるなど、その色を感じる選曲でした。 技巧的な早弾きとか特殊奏法とか駆使するようなものではないものの、淡々というより能弁、ゴージャスな accordion のソロ演奏を堪能することができました。

Piers Faccini & his musicians
東京国際フォーラム ホールB7 (クンデラ)
2018/05/03, 21:30-22:15.
1)America 2)A new morning 3)Beloved 4)Judith 5)Billai Askara Min 6)Scetate 7)Anima 8)Three times betreyed 9)Sudani encore)
Piers Faccini (guitar, vocals), Simone Prattico (drums), Jules Bikoko (doublebass), Malik Ziad (mandolin, oud guembri)

イギリス出身のシンガーソングライターながら、2000年代以降、 Label Bleu や Tôt ou Tard, No Format といったフランス独立系レーベルからのリリースが多い Piers Faccini。 今回の編成は oud を含み、セファルディやアラブアンダルス、イタリアやアルジェリアの曲を取り上げるなどワールドミュージック的な色が強いものでした。 名前からしてイタリア系ですし、家系図にはスペイン・コルドバから亡命したユダヤ女性(ということはセファルディムか)がいるとのことで、そんな複雑なルーツを反映した選曲なのでしょうか。 しかし、いろいろ取り上げてているのにフォークロック的な SSW 臭が抜けないのは、その英語での歌い口のせいでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

しかし、ゴールデンウィーク中ということもあり、銀座・有楽町界隈は酷い混雑。 La Folle Journée Tokyo をやっている東京国際フォーラム周りが混雑しているのはわかるのですが、 晴海通りの歩道がまともに歩けない程の混雑だったのには驚きでした。 ランチや休憩の際も半ばカフェ難民になってしまい人混みにウンザリしていたのですが、 夕食の際に通りを挟んで北側の丸の内側に行ってみたら、銀座・有楽町界隈の混雑が嘘のよう。 こんなことであれば、ランチや休憩も丸の内側に行けばよかった……。

[3637] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed May 9 23:31:01 2018

ゴールデンウィーク前半、静岡から戻って明くる月曜は、午後に丸の内へ。この展覧会を観てきました。

Kengo Kuma: a LAB for materials
東京ステーションギャラリー
2018/03/03-2018/05/06 (月休; 4/30開), 10:00-18:00 (金 10:00-20:00)

著作も多く、新国立競技場の設計を行うことになったことで知名度も高まっている建築家 隈 研吾 ですが、 実作を観る機会はあまりなかったので (最近観たといえば、スターバックス太宰府天満宮表参道店でしょうか)、 これも良い機会と足を運びました。 建築展はそれなりに足を運んでいますので、隈 研吾 のプロジェクトも展覧会で観ていたような気でいましたが、実は 隈 研吾 の個展を見るのも初めてでした。

展示は、彼が建築に用いる主要なマテリアルを10選んで、それに沿って建築プロジェクトを整理した展覧会でした。 10のマテリアルとは、竹、木、紙、土、石、金属、ガラス、瓦、樹脂、膜・繊維。 建築模型というより素材を組み合わせて構造とテクスチャをどう作り出していくか示すような模型が多く、 素材と構造、テクスチャ、時には機能も未分化というか不可分なところを狙った建築を考えているような所が興味深い展示でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

この展覧会の前後の時間を使って、 神保町シアターの特集 『生誕115年記念 映画監督小津安二郎「をんな」たちのいる情景』 から、サイレント映画『その夜の妻』 (松竹蒲田, 1930) と、 初期トーキー『淑女は何を忘れたか』 (松竹大船, 1937) を観てきました。 いずれも何回も観たことのある映画ですが、 東京都写真美術館の展覧会 『『光画』と新興写真 モダニズムの日本』 を観て、 動く「新興写真」としての小津映画を観たい気分になって、足を運んだのでした。 サイレント期の方が「新興写真」っぽいかなと思っていたのですが、 実際のところ『淑女は何を忘れたか』のスタイリッシュな画面作りに気づかされたりもしました。 サイレントの『その夜の妻』はピアノ伴奏付き (演奏:神﨑 えり)。 「新興写真」っぽさを確認するように観るつもりが、結局、感情移入しながら涙しながら観てしまいました。 話は判ってるのに、メロドラマチックだと思いつつも。 やっぱりピアノ伴奏付きでのサイレント映画鑑賞は良いなあ、と、つくづく。

『『光画』と新興写真 モダニズムの日本』の展覧会カタログに載っていた論文の一つで、 新興写真の影響源として当時の思想と映画を挙げていました。 それだけに、当時の同時代の映画がどんなものだったのか、 小津 安二郎 などのモダンな戦前映画の上映会を合わせてやればよかったのに、と思わざるを得ません。 自分ですら思い付くくらいな事なので、様々な理由があってそういう企画をしようにも難しいのでしょうが……。

[3636] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue May 8 21:44:51 2018

ふじのくに⇄せかい演劇祭 2018 の話の続き。二日目晩、最後にこの舞台を観ました。

Thomas Ostermeier / Schaubühne Berlin
静岡芸術劇場
2018/04/29, 19:00-21:40.
Autor: Henrik Ibsen, In einer Bearbeitung von Florian Borchmeyer; Regie: Thomas Ostermeier.
Bühne: Jan Pappelbaum Kostüme: Nina Wetzel Musik: Malte Beckenbach, Daniel Freitag Dramaturgie: Florian Borchmeyer Licht: Erich Schneider Wandzeichnungen: Katharina Ziemke
Christoph Gawenda (Dr. Stockmann), Konrad Singer (Stadtrat), Eva Meckbach (Frau Stockmann), Renato Schuch (Hovstad), David Ruland (Aslaksen), Moritz Gottwald (Billing), Thomas Bading (Morten Kiil).
Production: Schaubühne Berlin
Premiere in Avignon am 18. Juli 2012; Premiere in Berlin am 8. September 2012.

ベルリンの劇場 Schaubühne の芸術監督を務める Thomas Ostermeier が演出した Ibsen の戯曲といえば、 以前に観た Nora [鑑賞メモ] が、 セリフのレベルでは大きく戯曲を弄らないままに舞台を現代に置き換えた演出だった。 今回も同様に現代に舞台を置き換えた演出だろう、と、予想していた。 確かに、ストーリーを大きく弄らずに、舞台を現代に (といっても、使われている音楽からして21世紀ではなく、1980年代っぽかったが) 置き換えたような演出だったが、 Nora に比べると、かなり自由にやっているように感じられた。

Nora においては夫殺しが変更のポイントだったが、 この作品では集会の場面が大きく手を入れられ、Dr. Stockmann の演説には 2007年にフランスのアナキスト集団が匿名で発表したという The Coming Insurrection 「来るべき反乱」というテキストが使われていた。 そして、その演説に対して観客に意見を求めるという観客参加という形をとっていた。 Nora では終演後に観客との討論会を設けていたが、 それを劇中に取り込んだような感じだ。

正直に言えば、この演説は元の戯曲からかなり浮いた内容になっていたのだけれども、 観客の発言の多くは、元の戯曲が扱っている問題 (温泉が汚染されていることを公にして、すぐに手を打つべきか) に対するもので、 差し替えられた演説—反グローバリズム、反商業主義のかなりメタな (少々ナイーヴな) 内容—とは関係無いもの。 おそらく Ostermeier は、あえて賛否が分かれそうな極端なテキストに差し替えたのだと思うのだが、 客席のほとんどがこの演説に賛意を示したのも意外だった。 日本語字幕があったもののドイツ語による上演という言葉もあったと思うが、 多くの人は人の話を聞いていないんだな、と、感慨深いものがあった。

観客参加だけでなく、舞台の上でのロックバンド演奏や、最後の場面での蛍光塗料の水風船を投げつける演出など、面白い演出もあったが、 かなりストレートな演劇だったという印象が残ったのは、 以前に観た Nationaltheatret (ノルウェー国立劇場) による En Folkefiende が、 ミニマリスティックでコンテンポラリーダンスに近い演出だったということもあるかもしれない [鑑賞メモ]。

ちなみに、Ostermeier は2005年に Ibsen の戯曲 Hedda Gabler の演出もしている。 最近、Hedda Gabler を立て続けに観て [関連する鑑賞メモ]、 面白いと感じている所なので、Ostermeier がどう演出したのか、観てみたいようにも思う。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

一昨年は全演目パスポートを買ってゴールデンウィーク後半も観に行ったわけですが、 今年はチケット一般発売日が出張と重なってしまい、全演目パスポートを入手し損ねてしまいました。 演劇祭どっぶりのゴールデンウィークもいいのですが、これも良い機会なので、ゴールデンウィーク後半は別のイベントに行くことにしたのでした。

あまり優劣を付けるようなものでも無いとも思いますが、 今回観た中で最も良かったのは、 Claude Régy: Rêve et folie [鑑賞メモ] でしょうか。 今回観た4本の中には、『さ(以下略)』みたいなわかりやすくハズレみたいのはありませんでしたが、 Tim Watts: The Adventures of Alvin Sputnik - Deep Sea Explorer [鑑賞メモ] とか、 Teatro de los Sentidos: Pequeños Ejercicios para el Buen Morir [鑑賞メモ] とか、 Olivier Py: La Jeune Fille, le Diable et le Moulin, d'après les frères Grimm [鑑賞メモ] のような 大アタリも無くて、なんとも不完全燃焼という感じでした。 ま、こんな年もあるでしょうか。

[3635] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon May 7 23:00:18 2018

ふじのくに⇄せかい演劇祭 2018 の話の続き。一泊して、翌昼に、この舞台を観ました。

Richard III — Loyaulté me lie [Richard III — Loyalty binds me]
静岡県舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」
2018/04/29, 13:00-15:20.
Direction: Jean Lambert-wild, Lorenzo Malaguerra & Gérald Garutti; Adaptation de Richard III de William Shakespeare; Traduction: Gérald Garutti & Jean Lambert-wild.
Musique et spatialisation en direct: Jean-Luc Therminarias; Scénographie: Stéphane Blanquet & Jean Lambert-wild.
Avec: Laure Wolf & Jean Lambert-wild.
Créé du 19 au 29 janvier 2016 au Théâtre de l'Union - Centre Dramatique National du Limousin (France).

インド洋のフランス海外県のレユニオン島 (île de la Réunion) 出身で、 現在はフランス中部リムザン (Limousin) 地方の首邑リモージュ (Limoges) の国立劇場を拠点に活動する Jean-Lambert-wild による、 Shakespeare の Richard III を道化芝居として解釈した舞台。 写真や予告映像から、2016年に観た Oivier Py: La Jeune Fille, le Diable et le Moulin, d'après les frères Grimm [鑑賞メモ] のような舞台が楽しめそうと期待していた。 実際、人形劇場を意識したと思われる舞台美術で繰り広げられる道化芝居を楽しんだけれども、その一 その一方で、物足りなく感じたところもあった。 特に、使われる音楽が生演奏ではなく、ダンスを踊るどころか歌うような場面すら無かったのが、とても物足りなかった。 人形芝居小屋の雰囲気の中にビデオや照明使いなど現代的な演出を忍ばせ、エンディングなどむしろ現代演劇的な演出になっていたが、 それも折角の道化芝居的な雰囲気を削いでしまっていたように感じた。

Shakespeare の Richard III に基づく作品としても、 2016年の Ong Keng Sen (dir.) 『三代目、りちゃあど』 [鑑賞メモ] に続いてとも言えるが、なんとも相性が悪いようだ。オリジナルがダメということではないと思うのだが……。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

続きはまた後ほど。

[3634] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun May 6 21:25:01 2018

ふじのくに⇄せかい演劇祭 2018 の話の続き。初日晩は、この舞台を観ました。

Claude Régy
Rêve et folie [Dream and Derangement]
静岡県舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」
2018/04/28, 20:30-21:50.
Mise en scène: Claude Régy; Texte: Georg Trakl, français de Jean-Claude Schneider et Marc Petit.
Assistant à la mise en scène: Alexandre Barry; Scénographie: Sallahdyn Khatir; Lumières: Alexandre Barry assisté de Pierre Grasset; Son: Philippe Cachia.
Avec: Yann Boudaud.
Une création des Ateliers Contemporains.
Création le 15 septembre 2016 au Théâtre Nanterre-Amandiers, centre dramatique national.

フランスの演出家 Claude Régy による作品は SPAC も度々取り上げているが、観るのは初めて。 非常に暗く照明を落とした空間で、一人、身をよじるようにゆっくり動き回りながら、散文詩を朗読するというパフォーマンスで、 演劇というより、むしろコンテンポラリーダンスに近く感じるようなパフォーマンスだった。

真っ暗闇の中、奥に微かに光る人型が蠢くのが見え始めた。 まるで Henri Michaux の描く不確かなフォルムの人型の染みの形をした光が蠢くかのような。 そして、次第に目が慣れてきて、ある時点でふっと焦点が合って、暗色のTシャツ、パンツ姿なの短髪の男がゆっくりうごめいている姿になった。 かつて James Turrell のインスタレーションで体験したような感覚 [鑑賞メモ] を久しぶりに体験することができた。

男の動きは、表現主義的なダンスというか、苦悩で身をよじる様であり、 シェルショック (戦争神経症) の発作的な動作の様でもあり、 錯乱している薬物中毒患者の動きの様でもあり。 そんな動きをしながら、半ば呂律の回らない様な口調で、時に強く唸る様な口調で、散文詩を朗読して行く。 節をつけて吟じていたわけではないが、次第に押し殺す様に歌われている無調の歌を歌いながら、踊っている様に見えてきた。 そしてそれがとても興味深く感じられた。

朗読されていたのは、第一次世界大戦に薬剤師として従軍し、戦場近くの病院でコカインの過剰摂取で23歳の若さで死んだオーストリアの詩人 Georg Trakl の詩。 途中から字幕をあまり負わずに動きを見ていたので、きちんと内容を追ったわけではないが、 その内容は、第一次世界大戦とは関係なく、むしろ、近親相姦の罪悪感に触発されたかのような内容だった。 しかし、詩人のバックグラウンドを知って観たせいか、 まるで Otto Dix: Der Krieg [鑑賞メモ] のような暗くグロテスクなイメージを、その言葉と動きで表現しているように感じられた。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

続きはまた後ほど。

[3633] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue May 1 21:53:40 2018

昨年は転居直後ということもあって行く余裕の無かった ふじのくに⇄せかい演劇祭。 今年はゴールデンウィーク前半、4月28,29日の一泊二日で4作品を観てきました。 まずは、28日夕方に静岡入りして、この舞台を観ました。

静岡県舞台芸術公園 野外劇場「有度」
2018/04/28, 18:15-19:50.
演出: 宮城 聰; 作: 北村 想.
出演: 奥野 晃士 (ゲサク), たきい みき (キョウコ), 春日井 一平 (ヤスオ (ヤソ)).
企画: 愛知県芸術劇場, SPAC-静岡県舞台芸術センター; 制作: 愛知県芸術劇場.

愛知県を活動拠点とする劇作家 北村 想 の『寿歌』 (1979) を新たに 宮城 聰 が演出したもの。 上演回数の多い戯曲とのことですが、この戯曲の上演を観るのは初めてです。 核戦争後の荒野を行く旅芸人、ゲサクとキョウコと、途中で落ち合ったヤスオの3人の オフビートな道中をユーモラスに描いた作品でした。

日が落ちて暗闇となって行く木々の緑をライティングで浮かび上がらせるような、「有度」の舞台の美しさは、相変わらず。 核戦争後の荒野を舞台としていることを考えると合っていません。 そんな部隊とは思えない緩いやりとりとのギャップがユーモアとなっているため、 演技によって荒野に見せることも難しく、なんとも微妙な状態となってしまっていました。 むしろ、発掘調査のため工事現場のようになっている駿府城公園の一角の方が良かったのではないか、と思ってしまいました。

関西弁でのやりとりは漫才的でもありますが、少々子供っぽいもの。 この子供っぽさが少々苦手に感じられたのですが、 ポストアポカリプスで少々ファンタジックなジュブナイルSFと考えると、 十代の頃に観ていたらもっと楽しめたかもしれない、とも。 そういえば、この戯曲が書かれた1970年代末はポストアポカリプスなジュブナイルSFが多くありましたし [関連する鑑賞メモ]、 少々子供っぽい笑いも含めて、そういう時代だったのかな、と思ったりもしました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

続きはまた後ほど。

[3632] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Apr 24 0:12:32 2018

先々週末の話になってしまいましたが、日曜15日の晩は、横浜馬車道へ。このライブを観てきました。

横濱エアジン
2018/04/15, 19:30-20:45.
Ikarus: Ramón Oliveras (drums, composition), Anna Hirsch (voice), Andreas Lareida (voice), Lucca Fries (piano), Mo Meyer (doublebass).

Nik Bärtsch のプロデュースで Ronin Rhythm Records から2枚のアルバムをリリースしているスイスのグループ Ikarus。 去年にも1度来日しているが年度末繁忙期のために観られず、今回の来日で観ることができた。 アンコールこみで1時間ほどのライブだった。 ちなみに、2枚のアルバム制作と昨年度来日のメンバーから女性歌手が替わっている。

アルバムで聴いていた時はさほど drums が際立たず、むしろ piano の音が耳に残り、 スキャットをフィーチャーした Nik Bärtsch's Ronin [鑑賞メモ] という印象だった。 ライブでみると (ライブだからか) リズムが力強く多様に感じられ、 淡々としたミニマルな音楽というより、ドラマチックな展開を感じた。 ドラマーがリーダーのグループというのも、納得だ。

男女二人のヴォイスも、classical な歌い方ではなく、 動きながら表情豊かに歌う様子も jazz のスキャットに近いもの。 アンコールで倍音も使ったりしたが、特殊な発声法を多用、強調するようなことは無かった。 リズミカルなスキャットというより、ソフトにディレイを真似るように歌うような時も多く、 Theo Bleckmann をフィーチャーした John Hollenbeck のビッグバンドを、小回り効くように小編成にしたよう、と感じる時もあった。

フロントのボイスの男女は、色は黒ながら立体的に造形されたデザインの服を着ていたのだが、 そんな衣装も似合う美男美女。特に男性は表情もMCの口調もフレンドリー。 そんな雰囲気も楽しむことができた。 演奏の種類によってはこぢんまりとした親密な空間という良さがあるが、 狭くて雑然としているとも言えるエアジンのような空間よりも、 コンテンポラリーダンスの公演とかもできそうなホールや Super Deluxe のようなオルタナティブスペースの方が似合いそうなグループだとも思ってしまった。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

Now for something completely different...

先の週末土曜は、午後に早稲田大学戸山キャンパス33号館へ。2月に続いて 桑野塾に顔を出してきました。 今回から会場を教育学部から文学部へ移しての開催でした。 2件の報告があったわけですが、今回の一番の興味は 八木 君人 「いわば、ポスト・ソヴィエト的芸術左翼戦線」。 サンクトペテルブルグのアートコレクティブ Что делать?Лаборатория Поэтического Акционизма や 雑誌 «Транслит» の紹介でした。 ロシアにおけるアート・アクティビスムやSEA (Socially Engaged Art) の一潮流といったところなのでしょうが、 詩や演劇的パフォーマンスに近いもので、造形美術的な面白さやが感じられなかったり、音楽との繋がりがあまり見えなかったのは、少々残念。 しかし、ロシア旅行に行った頃 (2011年) くらいまではそれなりにロシアの現代美術の動向をチェックしていたのですが、 それからすっかり疎くなってしまったので、最近の動向の話を聴けたのはありがたかったです。 現代美術などの同時代的な動向は十年一昔ですからね。 もう一件、島田 顕 「石坂幸子とモスクワ放送ハバロフスク放送局——元NHK女子アナウンサーが見た戦後直後のモスクワ放送日本語番組」は、 戦時中NHK樺太豊原放送局の女性アナウンサーの終戦後抑留の話。 NHKが制作した樺太地上戦サハリン残留のドキュメンタリーを 観たこのがあるという程度の知識しかなかったので多くはコメントしがたいのですが、 終戦後の樺太/サハリンについて明らかになっていないこともまだまだ多いのだろうなあ、と思いながら聞きました。

[3631] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Apr 22 21:18:51 2018

先週末の話ですが、土曜の午後に恵比寿へ。写真展を観てきました。

The Magazine and the New Photography: Koga and Japanese Modernism
東京都写真美術館 3階展示室
2018/03/06-2018/05/06 (月休;4/30開,5/1休) 10:00-18:00 (木金-20:00)

1932-33年に発行された 野島 康三 主宰で 木村 伊兵衛 と 中山 岩太 が同人だった写真雑誌『光画』、 1930年創刊の『フォトタイムス』やその編集主幹 木村 専一 が結成した「新興写 真研究会」 (堀野 正雄, 渡辺 義雄 らが参加) の写真を中心に、 戦間期の「新興写真」を集めた展覧会。 それまでのピクトリアリズム (絵画主義) の写真とは異なる、 ドイツの Neue Sachlichkeit の写真や Man Ray ら Surrealism の写真、 Aleksandre Rodchenko ら Russian Avant-Garde の写真など、 同時代の海外の動向の影響を感じられる、写真ならではの作風がその特徴だ。 野島 康三 [鑑賞メモ]、 中山 岩太 [鑑賞メモ] や 堀野 正雄 [鑑賞メモ] など、 これまでも代表的な写真家の個展を観る機会があったが、幅広く新興写真の作家を観るのは初めて。 こんな写真家もいたのかと、発見もあった。

中でも最も印象に残った写真家は、佐久間 兵衛。 ビルを見上げたり、ビルの上から街を行く人を捉えたり、遠くから客船を大きく捉えたり。 遠近短縮法のよう、というだけでなく、 小津 安二郎 のサイレント期のノワール映画 (『その夜の妻』 (1930) や『非常線の女』 (1933)) の一シーンを思い出させられた。 小津 安二郎、清水 宏 や 島津 保次郎など、モダンな松竹のサイレント現代劇映画は、 1930年代前半と新興写真と同時代のもので、動く新興写真とも言えるかもしれない。

そんなことを思いながら展覧会を観いたら、 戦間期の松竹映画ではお馴染みのクラブ石鹸 (タイアップしていたので、その広告がよく画面に映り込む) の写真 小石 清 『クラブ石鹸』 (1931) が出てきて、ここまで被るかとウケてしまった。

Geneses of Photography in Japan: Nagasaki
東京都写真美術館 2階展示室
2018/03/06-2018/05/06 (月休;4/30開,5/1休) 10:00-18:00 (木金-20:00).

東京都写真美術館は、日本における初期写真 (幕末から明治にかけての19世紀の写真) の展覧会として 『夜明け前 知られざる日本写真開拓史』という展覧会シリーズを続けていたが [鑑賞メモ]、 リニューアル前に完結し、リニューアル後の去年春は総集編だった。 今年から新たに『写真発祥地の原風景』というシリーズが始まり、「長崎」がその最初の展覧会。 長崎大学附属図書館の幕末・明治期日本古写真コレクションのデータベース公開20周年を記念した展覧会だ。 近年続けて2回ほど出張で長崎に行き、 長崎造船所 史料館 などにも足を運んでいるので、 そこで (複製を) 見た覚えのある写真もあったりした。 しかし、『『光画』と新興写真 モダニズムの日本』を観て盛り上がった直後ということで、 なかなか入り込みづらいものがあった。

Kiyosato Museum of Photographic Arts: Basically. Forever. —2018—
東京都写真美術館 地階展示室
2018/03/24-2018/05/06 (月休;4/30開,5/1休) 10:00-18:00 (木金-20:00).

清里フォトアートミュージアム 収蔵作品で構成した巡回展。 この美術館は35歳までに撮った写真を対象とした「ヤング・ポートフォリオ」というアニュアルの公募展開催し、コレクションをしてきているが、 この展覧会からの29人を含む、全95人の写真家の35歳までに撮った写真を集めている。 前期〈歴史篇〉(4/15まで) と後期〈作家篇〉(4/17から) の2期に分かれて展示されるが、自分が観たのは前期〈歴史篇〉。 年代順に並ぶので時代ごとのスタイルの流行が透けて見える面白さはあったが、35歳までという点についてピンと来るものは無かった。 展示作品が多過ぎて個々の印象は薄めだが、 2000年代以降、東欧・旧ソ連やアジア、アフリカの作家の写真も多くあり、 そういえば、あまり観る機会がなかったな、と気付かされたりもした。 名前を聞いたことがあったが公共交通機関で行きづらい場所ということもあり行ったことはなかった。 こうしてコレクションを見ると、足を運んでみてもいいかもしれないという気にはなった。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3630] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Apr 17 23:34:46 2018

4月6日に関西方面へ行ったので、翌土曜日午前、東京に戻る前に中之島へ。この展覧会を観てきました。

Travelers: Stepping into the unknown
国立国際美術館
2018/01/21-2018/05/06 (月休;2/12開,2/13休,4/30開), 10:00-17:00 (金土 10:00-20:00)

大阪の日本万国博覧会の万博美術館の建物を活用する形で1977年に開館した (2004年に中之島に移転) 国立美術館の40周年の展覧会。 千里の頃から積極的に現代美術を取り上げてきた美術館ということで、この40周年展も戦後の現代美術の展覧会だ。 日本人作家に限定せず半数近くは海外の作家で、コレクション作品を多く用いつつも、この展覧会のための作品もあり、規模大きめの国際現代美術展となっていた。

パフォーマンス作品やその記録のヴィデオ作品 (Marina Abramovic, Vito Acconci など)、 パフォーマンス性の高い形で製作された絵画 (白髭 一雄 など) などパフォーマンスと関係深い作品が多く集められていた。 事後のドキュメントばかりではなく、 美術館監視員と思いきや時々 “This is propaganda” と半ば歌うように声を上げる Tino Sehgal の作品や、 ギャラリーの中央に吊るされた石を3人の歌手が声というか息で吹き揺らす Allora & Calzadilla “Lifespan” のような、 劇的な所のないさりげないパフォーマンスを楽しむこともできた。 Tino Sehgal [鑑賞メモ] など最近注目されている作家だが、 過去のマスターピースも多いうえ、2000年代以降盛んになった work in progress 的なプロジェクトのドキュメントのような作品が目立たなかったこともあり、 むしろオーソドックスな現代美術展にも感じられた。

もちろん、パフォーマンスとは直接にリンクしないが、良い所蔵作品も出ていた。 畠山 直哉 の 『アンダーグラウンド』 [鑑賞メモ] や 米田 知子 の 『熱』や『壁紙』のような形式的な写真も印象に残った。 自動扉に描いてそこを通る形で鑑賞する Robert Rauschenberg: “Solstice” も 人数制限はしていたが体験できる形で展示されていた。 受付近くの 高松 次郎 の壁画的なパーマネント作品に Pipilotti Rist がビデオ作品を オーバーレイしていたのも、このような展覧会だから可能になったのだろう、と。

コンセプトを深読みしたくなるほどの強い印象は受けなかったけれども、 長年現代美術に取り組んできただけはあると思わせる充実した現代美術展だった。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

CD/レコードレビューは書かなくなって久しいですが、 最近は展覧会/公園の鑑賞メモもなかなか書けなくなってしまっています。 書き出してしまえばそんなに時間は要さないのですが、なかなか取り掛かれません。うーむ。 書いておかないと観たことすら忘れてしまいそうなので、鑑賞メモは書き残しておきたいのものですが、 最近はなかなかモチベーションが上がりません。うーむ。

[3629] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Apr 16 23:00:21 2018

平日の4月5日は仕事帰りに新宿二丁目へ。このライブを観てきました。

新宿 Pit Inn
2018/04/05, 20:00-22:30.
Kris Davis (piano), Eric Revis (doublebass).

New York の jazz/improv の文脈で活動する piano 奏者 Kris Davis と doublebass 奏者 Eric Revis が duo で来日した。 どちらも Clean Feed レーベルにリーダー作を残すなど、free 色濃い演奏の印象が強いが、 Revis はメインストリームの録音にも参加している bass 奏者だ。 途中休憩を入れて前半と後半、それにアンコール1曲で、約2時間半の演奏を聴かせた。

Kris Davis の piano は、内部奏法も駆使しつつ、比較的強いタッチで華やかな音を聞かせ、 (女性ということもあるのか) Myra Melford [鑑賞メモ] なども連想するところがあったが、 トレモロのような弾き方は少なく、もっと淡々とした印象。 あえて単調なテンポで弾く展開も多かったが、minimal ではなく、jazz 的なイデオムを強く感じた。 スタンダード的なメロディを使うときもあるのも一因と思うが、 アルコを用いずリズムを刻むように強くピチカートする Eric Revis のベースラインも、その一因のように聞こえた。 最近は jazz/improv のライブといっても、 folk 的だったり、classical だったり、electronica 風だったりばかりで、 ここまで jazz のイデオムの強い演奏のライブも久しぶりだったことに気づかされた。

このデュオに drums が加わったトリオや、さらに saxophone を加えたカルテットとして、 Eric Davis Trio/Quartet として録音を残してきているので、その編成でも聴いてみたかったが、 デュオだったので Kris Davis の piano をよく楽しめたのかもしれない、とも思った。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

主たる勤務先が横須賀 (それも陸の孤島の西地区) になってから、平日の晩に予定を入 れることが難しくなっているのですが、この日は急ぎの仕事が無かったので、 ふと思い立って18時前に職場を出て新宿に向かったのでした。夕食を取る余裕 とかはありませんでしたが、開演時間の20時にはギリギリ間に合ったのでした。 19時とか19時半は無理ですが、20時開演であれば頑張ればなんとかなるかもし れないとわかったのが収穫。

[3628] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Apr 15 23:07:49 2018

先月の話になってしまいましたが、3月31日土曜は午後に渋谷松濤へ。この舞台を観てきました。

オーチャードホール (渋谷)
2018/03/31, 14:00-15:30.
Choreography: Sidi Larbi Cherkaoui, María Pagés; Music composition: Szymon Brzóska, Rubén Levaniegos, José "Fity" Carrillo.
Dance: Sidi Larbi Cherkaoui, María Pagés.
Live music: Ana Ramón (cante), Bernardo Miranda (cante), Mohamed El Arabi-Serghini (voz arabe), Barbara Drążkowska (piano), José "Fity" Carrillo (guitarra), David Moñiz (violín), Chema Uriarte (percusión).
Producer: Creaciones Artísticas Dunas.
Premiere: Esplanade – Theatres on the Bay (Singapore), Oct. 2009.

モロッコ系のルーツを持つベルギーのダンサー/振付家 Sidi Larbi Cherkaoui と フラメンコの文脈で活動し自身のカンパニーも主宰する María Pagés の共演した作品。 1年前に同じハコで上演した Cherkaoui の Sutra [鑑賞メモ] と同じく、 この Dunas も評判が良い作品だったので [The Guardian のレビュー]、 観たいと思っていた作品だった。

タイトルは砂丘 (dune) から取られているが、砂漠の砂丘のようなベージュ色をした柔らかく伸縮する大きな半透明の布を使った、 そしてそれに映し出される影を巧みに使った演出がとても印象的な舞台だった。 フライヤのにも使われた左右の布の中から布越しに2人が近づこうとするオープニングや、 前半にあった、三重に垂らした布の後ろで後方から光を当てて三重の影が踊るかのような演出。 そして、最後の二人が一つの布に包まれて布の下に消えていくところまで。 そんな布と光による幻想的な演出が美しかった。 影では無いが、まるで砂絵アニメーションのように Cherkaoui がライブで音楽に合わせて砂絵を描いて変化させていく様子を大写しした演出も、手のダンスのようで面白かった。

もちろん、フラメンコダンサーである María Pagés の見所も各所に作ってあった。 背景に大きくうつされた拍手する手の下で踊るようなスタイリッシュな演出もカッコよかったが、 Pagés に打ちのめされるかのように少々コミカルに周囲でのたうち回る Cherkaoui の動きも、 まるで Pagés の凛々しさを引き立てるかのよう。 スマートに女性ダンサーをサポートするのと違う引き立て方だな、と。 もちろん、モロッコ系である Cherkaoui とスペインの Pagés という二人のバックグラウンドから、 地中海を挟んだヨーロッパと北アフリカの関係も暗示させ、深読みしたくなる所もあったが、 しかし、Akram Khan の Zero Degrees [鑑賞メモ] のような明示的なものではなく、 むしろ舞台をまとめ上げる枠組みという感もあった。

フラメンコの歌手だけでなくアラブの歌手もフィーチャーした生演奏の音楽も期待していた。 メリスマの効いた歌唱やハンドクラップ、フレームドラムの音が楽しめたが、 ピアノなども使いセミクラシックな展開になるという時も。 もっとルーツ色濃い Accords Croisés レーベルあたりがリリースしている汎地中海的な音楽を期待していたところもあり、 少々ロマンチックに過ぎるように感じてしまった。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

この日の晩は若林の元大家さん宅の花見園。 暖かい日が続いて花が持たないかとも思いましたが、まだまだ見頃の状態。 ちょうど満月の夜で、花に月を楽しむことができました。 そんなこともあってか人が多く、ほとんどずっと立ちっぱなしで呑んでました。 小杉に引っ越してから歩く機会が減っているため、翌日は酷い筋肉痛になってしまいました(弱)。

[3627] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Apr 1 23:45:30 2018

1週間以上前の話になってしまいましたが、23日金曜の晩は、万難排して六本木へ。 このライブを観てきました。

『夢見月』 Yomemitsuki: The Dreaming Moon
Super Deluxe
2018/03/23 20:00-22:20
八木 美知依 [Michiyo Yagi] (エレクトリック二十一弦箏 [electric 21-string koto], 十七弦ベース箏 [17-string bass koto], 十八弦ベース箏 [18-string bass koto], live electronics, vocals), Eivind Aarset (electric guitar, electronics); guests: 本田 珠也 [Tamaya Honda] (drums), Anne-Marie Giørtz (vocals).

ノルウェーの jazz/improv の文脈で活動する electric guitar 奏者 Eivind Aarset。 2010年に観たときは Sonic Codex 4tet でだったが [鑑賞メモ]。 今回の来日は観光がメインということで、特にバンドは引き連れず、ライブも日本のミュージシャンとの共演となるこの晩程度だった。 前半は 八木 美知依 の箏との duo。ラウドな展開にはあまりならず、繊細な弦の響きにエフェクトがかって音が漂うよう。 八木はいつもは2つの高音低音2台の箏を使い分けているのだが、十八弦ベース箏を加えて三段に箏が並ぶ見た目迫力のあるステージだったが、音の使い分けは自分には掴めなかった。 本田 珠也 の drums を加えての後半も、出だしはブラシも多用したチャカポコした音出しもあってか、Food [鑑賞メモ] も連想させられるような音空間。 しかし、これは良いかも、と思ったのもつかの間、パワフルなドラミングに煽られるかのように爆音の展開に。 Sonic Codex 4tet や Michiyo Yagi Double Trio [鑑賞メモ] からして、 彼ららしい演奏とは思ったのだけれども、少々耳には辛いものがあった。 そういえば、最近、爆音のライブを聴いていなかったな、と。 最後は、Aarset の妻でもある Ab und Zu などのグループでの活動で知られる女性歌手 Anne-Marie Giørtz を加えて1曲。 スローな曲だが少々フォーク的にも感じる (還暦とは思わせないような) 高めの漂うような歌声で、八木の箏も harp のよう。 1曲しか聴けなかかったのだけれども、Giørtz の歌を全面的にフィーチャーにしたライヴを聴きたかった。

レーベルはまだ明かせないとのことだったが、Eivind Aarset と 八木 美知依 のデュオのアルバムがそろそろリリースされるとのこと。 また、Aarset は秋に Sly & Robbie と来日するとのこと。 これは、おそらく、Sly & Robbie meets Nils Petter Molvær feat. Eivind Aarset and Vladislav Delay: Nordub (Okeh, 2018) での来日だと思われる。いずれも楽しみだ。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

例年は年度末の仕事は終わっている頃なのですが、 今年はギリギリまで年度末の仕事の山が超え切らない状態。 そんな中、2晩続けて万難排してしまったので、翌土曜日24日は職場に出て一日仕事したのでした。 しかし、平日は割り込みが入って集中できないので、週末に出た方が効率良かったかも、とも。 土曜にはケリを付けられたので、翌日曜25日は休みに。 完全休養日にしようかと思いつつも、会期末が迫って翌週に延ばすと見逃しそうだったので、午後には六本木へ。 森美術館の Leandro Erlich: Seeing and Believing 展を見てきました。 しかし、大混雑でまるでテーマパークのアトラクションのよう。まともに鑑賞できるような状況ではありませんでした。 観客に能動的に体験させるインスタレーションで、直感的にわかりやすい作品とは思いますが、ここまでの混雑とは予想していませんでしたよ。 Erlich は2014年の金沢21世紀美術館での展覧会も観に行ったほどで [鑑賞メモ]、それなりに期待していたのですが……。

[3626] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 25 23:16:25 2018

去年に続いて3回目の開催となったイスラーム映画祭。 去年見たレバノン映画 Et maintenant, on va où ? 『私たちはどこに行くの?』がとても楽しめたこともあり [鑑賞メモ]、次も楽しみにしていました。 三月後半になっても年度末仕事に終わりが見えず苦しい状態ではあるのですが、万難を排して、 渋谷ユーロスペースで春分の日の午後、と、翌平日の晩を使って3本観てきました。

Yek Habe Ghand [A Cube of Sugar]
『花嫁と角砂糖』
2011 / (Iran) / 114min / color.
Director: Seyyed Reza Mir-Karimi

イランの映画監督による同時代のイランを舞台とした映画です。 5人姉妹の末っ子 Pasandideh の婚前式 (結婚式?) の前日と当日朝に伯父が喉を詰まらせて死んだことによって葬式となった2日間を描いた映画です。 結婚する Pasandideh が主役とも言えますが、控えめな彼女は目立つことはなく、むしろしき集まった親戚たちの様子を描いた映画でした。 イランの冠婚葬祭の婚と葬を一気に疑似体験するよう。 婚約相手の男性が海外 (アメリカ?) 在住のため不在で、連絡取るためのスマートフォンやノートPCも出てきますが、 地方都市の比較的伝統的な生活をしているイランの人々の様子を垣間見る面白さがありました。 もちろん服装、料理、音楽などのディテールは異なるのですが、自分が子供の頃の、お盆などに父方や母方の実家で親戚一同が会したときの事を思い出させられました。 スーパー16mmで撮影されたという映像もソフトフォーカスのようでコントラストも弱め 色彩が綺麗で優しい画面も、風刺や皮肉も控えめで優しい話運びに合っているように感じました。

Ma Yatlubuhu al-Musstamiun [At Our Listeners’ Request]
『ラジオのリクエスト』
2003 / (Syria) / 89min / color.
Director: Abdellatif Abdelhamid

シリアの映画監督によるコメディ映画です。 内戦前の2003年の映画ですが、物語はさらに遡って1970年代頭。地中海沿岸の街タルトゥースに近い山間の農村が舞台で、 農場主の持つラジオを集まってリクエストでかかる音楽を皆で聴くのが楽しみとしている、という設定も、少々ノスタルジック。 ビジネスライクではなく慈善意識高い農場主という設定にもひと時代前に感じられました。 そんなの農場主の息子 Jamal と近くに住むヒロイン Azize の恋や、隣の農場の使用人の恋などを絡めつつ、 さほど毒の無いほのぼのとしたコメディが続きます。 演技や照明が不自然に感じられることが多く、画面の作りもあまり好みではなかったのですが、 コメディだと思えばあまり気になりませんでした。 しかし、農場主の息子は兵役に取られ、やがて第四次中東戦争 (1973) となります。 ほのぼのとした画面は一変、激しい戦闘シーンとなり、故郷の村に棺桶で帰る場面でこの映画は終わります。 20世紀半ばの平和で牧歌的な時代のシリアはこの戦争で終わってしまった、そんなことを感じさせるような映画でもありました。

Qiyami roz [True Noon]
『トゥルー・ヌーン』
2009 / (Tajikistan) / 83min / color.
Director: Nosir Saidov

ソ連崩壊後、タジキスタンで初めて制作された映画とのこと。 舞台はソ連崩壊直後のおそらくフェルガナ盆地と思われる山間の村。 村の外の高台にある測候所に働く初老のロシア人 Kirill と、そこで助手として働く村の娘 Nilufar が主人公です。 Kirill は Nilufar に仕事の後を継がせて家族の待つロシアへ帰るつもりだけれども、無線連絡も郵便も途絶えがちで、本部との意思疎通もままならないという。 Nilufar は相愛だった下の村の男性との結婚することになっているが、結婚式の直前になって、突然、下の村の間に (おそらくタジキスタンとウズベキスタンとの間の) 国境が引かれて、有刺鉄線や地雷で封鎖されてしまうという。 その後、紆余曲折ありつつ、上の村での結婚式にこぎ着けるが、下の村に花嫁を送り届ける行列が国境を越える時、 Kirill は地雷を踏んでしまい、行列を守りつつ死んでしまう、という話です。 本部との連絡途絶、突然封鎖される国境など、主人公や周囲の人々が置かれた状況は不条理なのですが、 少々感傷的ながら最後の死のあっけらかんとした描写も、不条理に対する諦観を感じるようでもありました。 救いの無い結末ですが、不条理を抑圧的に陰鬱に描がかず、それでも飄々とマイペースに生きる人々を、時にユーモラスに描いているよう。 そんな物語の展開の仕方 山間の風景や結婚式などを彩る民族衣装の人々も美しく、色彩豊かながら抑えた画面作りもとても好みでした。

ちなみに、この映画の音楽を手がけていたのは、タジキスタンのミュージシャン Daler Nazarov。 Bakhtiar Khudojnazarov: Luna Papa (1999) [鑑賞メモ] の音楽を手がけていた人です。 Luna Papa もソ連崩壊直後、内戦状態となったタジキスタンを舞台にした映画で、 その不条理な状況をユーモアを持ってファンタジックに描いていました。 Luna Papa ほど非現実的な描写はありませんでしたが、 不条理の扱い方などに似たところも感じた映画でした。 ちなみに Khudojnazarov もタジキスタン出身ですが、1993年以降2015年に亡くなるまでベルリン在住で、 Luna Papa もドイツなどによる国際共同制作映画ということになるようです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3625] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 18 23:20:16 2018

今週末も土曜は昼まで臥せってしまったのですが、夕方には三軒茶屋へ。この舞台を観てきました。

Company Derashinera: Tsubakihime
世田谷パブリックシアター
2018/03/17 17:00-18:30
演出: 小野寺 修二. テキスト: 山口 茜.
出演: 崎山 莉奈 (マルグリット), 野坂 弘 (アルマン), 斉藤 悠 (伯爵・私), 大庭 裕介 (伯爵・父), 増井 友紀子 (なりたい女), 仁科 幸 (友人の女), 菅 彩美 (運ぶ女), 牟田 のどか (新しい女), 宮原 由紀夫 (使者).
初演: 2016年.

2016年に『ロミオとジュリエット』を再見して以来 [鑑賞メモ]、 自分の中で再評価が進んでいるカンパニーデラシネラ。 若手育成目的で2015-17年に制作してきた「白い劇場シリーズ」の二作が再演されたので、 2016年初演の第二弾『椿姫』を観てきました。今回が初見です。 物語ることも重視しセリフも多用した演出で、身体表現を大きく取り入れた演劇とも言える作品。 ポータブルのプロジェクタも使った『WITHOUT SIGNAL! 〔信号がない!〕』 [鑑賞メモ] などに比べて、 演出のアイデアは控え目でしたが、椅子と一緒に踊るかのような動きや、机の周りでのパズルのように組み合わせた動きも相変わらず。 アルマンを中心に据えた不条理なユーモアを感じる演出も安定の面白さでした。

もちろん、オペラ La Traviata [鑑賞メモ] や バレエ Marguerite and Armand [鑑賞メモ] で有名な物語を どのように解釈するのかという興味も、足を運んでみた理由の一つ。 La Traviata の音楽を使ったりもしていましたが、 椿姫を中心に解釈するオペラやバレエとはかなり異なり、アルマン視点の解釈でした。 例えば、オペラでは省略される冒頭のマルグリットの遺品の競売場面などを丁寧に描き、 アルマンと別れるように父がマルグリットに告げる場面を最後の方に持って行き、 後に死に際して知ったかのような形の演出になっていたという所など、アルマンの視点を強く感じさせます。

カンパニーデラシネラに限らずマイムシアターでは主人公が不条理な状況に翻弄される様子をユーモアも含めて演じるものが少なからずあるわけですが、まさにアルマンは不条理に翻弄される男。 マルグリット役の他にも娼婦仲間というか分身に当たるような女性を計5名配することで、マルグリットは愛のため自己犠牲するような内面のある女性というより、 アルマンを翻弄する不条理な状況そのもののように感じられました。 小野寺 修二 が出演する作品であれば、不条理に翻弄される男アルマンはいかにも 小野寺 自身が演じそうな役ですが、 そんな役を 野坂 弘 が好演していました。

『椿姫』というとWilly Decker の演出したオペラ La Traviata のミニマリスティックな現代演出の印象も強く残っていて、 それに比べて見劣りするかもしれないという不安も見る前はありました。 しかし、良い意味で別物の、いかにもカンパニーデラシネラらしい舞台に仕上がっていました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

日曜は彼岸の墓参。その後にもう一つの『化身』を観に行く余力はありませんでした(弱)。 (土曜の晩に、若林の元大家さん宅の宴に顔を出したのも敗因ですが。)

[3624] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu Mar 15 0:01:22 2018

疲れが溜まっていたのか、先の週末は金曜の午後から調子が悪く、土曜は臥せってしまいました。 午後には復調してきたので、晩には横浜関内へ。このライブを観てきました。

Margit Myhr & Erlend Apneseth
横濱エアジン
2018/03/10, 20:00-21:00.
Margit Myhr (lyre, langeleik, vocals), Erlend Apneseth (hardingfele, vocals).

去年は Building Instrument と一緒にトリオで来日したノルウェーの hardingfele 奏者 Erlend Apneseth が [鑑賞メモ]、 今回はノルウェーの伝統的な撥弦楽器 lyra, langeleik を演奏する女性歌手 Margit Myhr とのデュオで来日した。 アンコールを含めて1時間程度の短いライブだったが、 Apneseth の hardingfele も良かったが、Myhr の lyre や langeleik、そして、ハイトーンな歌声の繊細な響きを楽しむことができた。

Myre の演奏した langeleik は小型の琴か violin の糸巻き部分が肥大化したかのような撥弦楽器で、 フレットのある1本のメロディ弦と数本のフレット無しのドローン弦を、ピックで弾いて演奏。 lyra は7本の弦の竪琴で、膝上に抱えて指で弾いて演奏していた。 会場がこじんまりしていたこともあり音量は十分だったが、とても繊細な響きだった。 演奏しながら歌う Myra の歌声もちょっと細めのハイトーンで、マイクを通して少しリバーブを強めにかけるときも。 Apneseth はトリオの時のようにはリバーブは使わなかったが、ピチカートを多用した繊細な音出しで、 Myhr の伴奏の時もその繊細さを損なわなかった。

女性歌手と hardingfele というと、2015年に公園通りクラシックスで観た Ulf-Arne Johannessen, Vegard Vårdal, Unni Løvlid のライブを思い出す [鑑賞メモ]。 このライブは、Ulf-Arne Johannessen のダンスもダイナミックで、フォークのダンスチューンのノリの良さが楽しめたものだった。 Myhr と Apneseth もフォークのダンスチューンや牛呼びの歌を演奏したのだが、ダンスは踊らず足で拍子を取る程度。 ノリが悪いわけではないのだけど、electronica に通じるような繊細さをむしろ楽しんだ。 そんな違いも興味深かった。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

2月にオペラ Matsukaze を観ていますが、 自分にとっては生伴奏ダンス公演として観た感が強かったですし、それを除くと、これが今年の初ライブ。 というか、去年11月に観た Gjertrud Lund ぶり、ということに気付きました。 すっかりライブから遠ざかってしまったなあと。うーむ。 (そういえば、12月と1月はサイレント映画の伴奏としてピアノの生演奏を聴いていますね。) しかし、やっぱりライブも良いので、もっと積極的に足を運びたいものです。

しかし、約1時間と短いライブでしたが、体調が良くなかったので、無理にならない長さで助かりました。 さすがに日曜は体調を戻すべく完全休養日にしたのでした(弱)。

[3623] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 11 22:47:50 2018

先週末は出張先から戻ったのが土曜夕方。 日曜は休養に充てるつもりだったのですが、会期最終日の展覧会に気づいて、午後に銀座へ。

中谷 芙二子 + 宇吉郎 『グリーンランド』
Fujiko & Ukichiro Nakaya: Greenland
銀座メゾンエルメス フォーラム [Maison Hermès Le Forum, Ginza]
2017/12/22-2018/03/04 (不定休), 11:00-20:00 (日 11:00-19:00)

人工霧によるインスタレーション「霧の彫刻」で知られる 中谷 芙二子 の展覧会。 彼女の父である物理学者 中谷 宇吉郎 が晩年にフィールドにしたグリーンランドを題材にした展示ということで少々腰が引けていましたが、 人工霧のインスタレーションもしているということで、足をはこんできました。 今までにも、人工霧を使ったインスタレーションを観たことがありますが [鑑賞メモ1, 鑑賞メモ2]、いずれも野外。 今回の展示作品「Glacial Fogfall」で初めて屋内での人工霧を体験しました。 間欠的に霧を発生させており霧が晴れている時間の方が長かったように思いましたが、 霧を発生させても風で流されないため、まさに霧に包まれるような体験をすることができました。 霧を発生させるノズルやその吹き出しの様を間近に見たのも初めて。その様子も興味深く見ることができました。

中谷 宇吉郎 の遺品、研究で用いたメモ、資料の類の他、 中谷宇吉郎 雪の科学館 のために1994年に、彼がフィールドにしていたグリーンランドに赴いて持ってきた石や、その際のビデオも展示されていました。 それで 中谷 宇吉郎 のグリーンランドでどういう研究をしていたのかわかったという程ではありませんでしたが、 石やドラム缶が霧に包まれると、フィールドにいるかのような気分になれました。 (実際のところ、ビデオで撮影されたグリーンランドはよく晴れており、研究していた場所が霧の多い場所だったわけでもなさそうでしたが。)

この展覧会で知ったのですが、 加賀市の片山津温泉に、 中谷宇吉郎 雪の科学館 (1994年開館) というのがあったのですね。 中谷 芙二子 の人工霧のインスタレーションもあるとこのと。 北陸新幹線が延伸されたら、金沢と合わせて足を伸ばしてみるのも良さそうだな、と。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

外出した勢いで、さらに乃木坂に移動して、会期最終日の展覧会をもう一件。 国立新美術館で『平成29年度 第41回 東京五美術大学連合卒業・修了制作展』を観てきました。 毎年という程ではないですが、タイミングが合った時は、今の若い世代の流行りをチェックするくらいの軽い気分で観に行っています。 最近は抽象やミニマリスティックな作品はあまり流行りじゃなのかしらん、と。 いかにもメディアアートな作品も目立たちませんでしたが、もはや普通のツールになったということなのでしょうか。 ダンス作品とかの舞台美術向けそうと思えるような面白い空間使いを感じる作品にのあまり出会えなかったのが残念でしたが、 これは所狭しと作品を並べた展示会場のせいかもしれません。うーむ。

[3622] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 11 20:51:56 2018

既に二週間前の話ですが、前々週末の日曜は午後に横浜山下町へ。この舞台作品を観てきました。

KAAT神奈川芸術劇場 ホール
2018/02/25, 15:00-16:20.
Created by Tuan Le, Nguyen Nhat Ly, Nguyen Lan Maurice, Nguyen Tan Loc.
Director: Tuan Le; Musical Director: Nguyen Nhat Ly; Artistic Director: Nguyen Lan Maurice; Choreographer: Nguyen Tan Loc.
Performers: Tran Duc An, Do Manh Hung, Bui Quoc Huy, Truong Chinh Phu, Nguyen Nhat Quang, Pham Van Son, Nguyen Van Thanh, Tran Ban Tin, Dinh Van Tuan, Quach The Nam, Dang Tram Anh, Nguyen Ton Doan Khanh, Nguyen Thi Lien, Nguyen Khanh Linh, Hoang Thi Lien.
Musicians: Thanh Hai, Luong Thang Long, Do Trong Thai, Nguyen Truong Tho, Nguyen Thi Phuong Thao.
Produced by Lune Production

ヴェトナムの現代サーカスという程度の予備知識で観に行ったのですが、 旧宗主国フランスの現代サーカスの影響下で活動を始めたパフォーマー主導のカンパニーかと思いきや、 Cirque de Soleil に触発されて作られたというプロダクションによるショーでした。 といっても、分かりやすいキャラクターが登場したり物語があったりするエンターテインメント作品ではなく、 ヴェトナムの近代化、社会発展という緩いテーマはあるものの、ノンナラティヴで抽象的な作品でした。

まずは、竹で組まれた人が入るくらい大きな籠を床の上で回して上に乗ったり、長さ5mはあろう竹竿を投げ合うような、力強くアクロバティックな動きから。 女性男性と半々程度で、竹竿の投げ合いなどは男性を中心に、籠を使ったパフォーマンス(特に並べて芋虫のような動きをしたもの)は女性を中心にしていたように思いますが、入り混じってのパフォーマンスも少なくありませんでした。 最初の場面は、近代化以前の農村社会といったところでしょうか。 続いて、竹で組まれた三階建ての足場を使っての、竹籔や竹で編んだ瓶のようなものを使っての、集団でのジャグリングやマニピューレション。 天井から吊るした竹の大籠をブランコのように揺らせて、そこから宙返りで飛び降りる技も。 ここは、機械化は進んでいないものの人手による近代化が進んだ20世紀といったところでしょうか。 そして、さらに場面は変わり、足場は集合住宅となり、街にオートバイが行き交う様を、マイムやダンスによる寸劇で演じていきます。 ここからは、経済発展を遂げる現在のベトナムといったところでしょうか。 最後は、ビートボクシングによるヒップホップなビートに乗ってのストリートダンスで盛り上げて終わりました。

技はアクロバットとストリートダンス、ジャグリングで、ソロやデュオで見せるというより集団でのパフォーマンスが中心。 エアリアルのソロやデュオのような華やで優雅な見せ場が無かったのは、少々残念。 分かりやすい登場人物や物語を使わない展開ということもあってか、単調に感じたときもあったのも確か。 マイムの寸劇にユーモアの要素ももう少し欲しかったようにも感じました。 しかし、籠や籔、竹竿を使い全体として統一感を感じさせたスタイリッシュな演出はかなり好みでした。

音楽は全て生演奏で、伝統的な楽器を使った伝統的な旋律も交えつつ、ギターなども使いジャズ、ロックやヒップホップの色濃い演奏も。 伝統的な楽器音や旋律は竹を多用した舞台の雰囲気に合っていたし、アクロバティックな演技との息の合い方も生演奏ならでは。 そんな生演奏の音楽も楽しめた舞台でした。

半年前にも日本とベトナムのダンサーとコラボレーションした作品、 KAAT × 小野寺 修二 『WITHOUT SIGNAL! 〔信号がない!〕』 を観ていますが [鑑賞メモ]、 ベトナムのダンスやサーカスも欧米と遜色ないというか同時代的に洗練されてきているんのだろう伺われるようでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

この週末は土曜も新国立劇場だったので、2日続けて舞台鑑賞。 どちらも徒労感を感じるような舞台ではありませんでしたが、 平日の負荷が重めの年度末に、週末に完全休養日が作れないのは体力的に厳しいなあ、と、つくづく。

[3621] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 4 19:38:07 2018

一週間前の話ですが、先の週末土曜は二週続けて初台へ。この舞台作品を観てきました。

高谷 史郎 (ダムタイプ)
『ST/LL [スティル]』
Takatani Shiro / Dumb Type: ST/LL
新国立劇場 中劇場
2018/02/24, 14:00-15:10.
総合ディレクション [Director]: 高谷 史郎 [Takatani Shiro]
出演 [Performers]: 平井 優子 [Yuko Hirai], 鶴田 真由 [Tsuruta Mayu], 薮内 美佐子 [Yabuuchi Misako], Olivier Balzarini.
音楽 [Music]: 坂本 龍一 [Sakamoto Ryuichi], 原 摩利彦 [Hara Marihiko], 南 琢也 [Minami Takuya].
照明 [Lighting]: 吉本 有輝子 [Yoshimoto Yukiko].
Production: Dumb Type Office. Co-production: Le Volcan - Scène Nationale du Havre, 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール [Biwako Hall - Center for the Performing Arts, Shiga], Napoli Teatro Festival Italia.
Premier: Le Volcan - Scène Nationale du Havre (France) on 12, 13 May 2015.

Chroma [鑑賞メモ] 以来約2年ぶりの新国立劇場での 高谷 史郎 のダンス公演は2015初演の作品。 Chroma では光の映像で床に水が張られているかのように見せる演出が印象に残ったのですが、 今回は実際に床に正方形に薄く水を張って、その上でパフォーマンスを繰り広げました。 先日観た 坂本龍一+高谷史郎 「water state 1」 (2013) [鑑賞メモ] をステージにして踊っているよう、 というか、このようなインスタレーション作品からイメージを広げて作られた作品なのでしょう。

水の床の上にテーブルが3台と椅子が数脚。 ときに会食のテーブルに、ときに寝台のように、テーブルを使っていました。 後方にテーブル天板の同じようなサイズの映像スクリーンが一枚建てられていて、 ライブで撮影した映像を投影したり、ほとんど白い背景に物が落ちて砕けるといったミニマルで象徴的な映像が流されたり。 寒白色で照度の低い少々逆光気味な照明は、半ばシルエットとしてダンサーを浮かび上がらせます。 技巧的なダンスを見せるわけではないけれども、水面の波紋の揺らぎ、足の動きに伴う飛沫なども加わって、 Chroma 以上にフォトジェニックでビデオジェニック。 実際の水の質感、光には、ビデオプロジェクションはまだまだ負けます。 坂本龍一+高谷史郎「water state 1」 (2013) [鑑賞メモ] のようなインスタレーションからイメージを広げて、この舞台作品になったのだろうな、とも。

高谷 史郎の作品を見るたびに思うのですが、ビジュアルとしてはかなり好みなのですが、 これが1時間半近く続くと、いささか単調で空虚な感も否めません。 「静物画」 (テーブルの上の物は「静物画」を意識していたように感じられた)や「静寂」を思わせるタイトルなので、 ドラマチックな展開などは意図していないだろうし、自分が空虚と感じるこの雰囲気も、作家の意図なんだろうとは思いますが。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

公演の前後は、NTT ICC で 坂本 龍一 with 高谷 史郎 『設置音楽2−IS YOUR TIME』。 先日表参道ヒルズで観た「water state 1」 (2013) は悪くなかったので期待したのですが。 「ST/LL」との関係というのもあるとは思いますが、こちらはピンときませんでした。

[3620] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 25 22:06:37 2018

一週間前の話ですが、先の週末土曜は午後に初台へ。この舞台作品を観てきました。

Sasha Waltz & Guests / Toshio Hosokawa
Matsukaze
新国立劇場オペラパレス
2018/02/17, 15:00-16:30.
Music by Toshio Hosokawa [細川 俊夫], Libretto by Hannah Dübgen, Based on a classic Noh play of the same name.
Conductor: David Robert Coleman. Direction and Choreography: Sasha Waltz. Set Design: Pia Maier Schriever, Chiharu Shiota [塩田 千春]. Costume Design: Christine Birkle. Lighting Design: Martin Hauk. Dramatrugy: Ilka Seifert.
Cast: Ilse Eerens (Matsukaze [松風]), Charlotte Hellekant (Murasame [村雨]), Grigory Shkarupa (Der Mönch [旅の僧]), Jun Hagiwara [萩原 潤] (Der Fischer [須磨の浦人])
音楽補 [General Music Staff]: 冨平 恭平 [Kyohei Tomihira] Vocal Ensemble: 新国立劇場合唱団 [New National Theatre Chorus]. Dance: Sasha Waltz & Guests. Orchestra: 東京交響楽団 [Tokyo Symphony Orchestra].
A production by Sasha Waltz & Guests commissioned by the Théâtre Royal de la Monnaie in coproduction with Grand Théâtre de Luxembourg, Teatr Wielki – Polish National Opera and in cooperation with Berliner Staatsoper.
World premiere: 03.05.2011, Théâtre Royal de la Monnaie, Brussels.

室町時代に成立した伝統的な能の演目『松風』に基づく2011年初演の新作オペラの日本初演。 作曲が 細川 俊夫 [鑑賞メモ] というだけでなく、 演出が Sasha Waltz [鑑賞メモ] で コンテンポラリーダンス色濃い作品だという評判もあって、足を運んで見た。 細川 敏夫 というと雅楽の楽器を笙を使った曲を聴いたことがあるものの能楽というイメージはなく、 Sasha Waltz のダンスも様式的というより即物的で少々グロテクスという印象があったので、 能の色は濃くなく、むしろ表現主義的というか舞踏風の作品を予想していた。 しかし、意外にも能らしさを感じる作品で、それがかなり好みだった。

オペラでダンスを用いる場合、例えば Romeo Castellucci 演出の Tannhäuser がそうだったが、歌手の背景として踊るというものが多い。 しかし、この作品では歌手とダンサーが入り混じり、特に松風、村雨の姉妹二役の女性歌手は他のダンサーと同程度の動きをしていた。 また、姉妹の登場の場面では、ワイヤーに吊るされて上から登場し、吊るされたまま難しい空中姿勢も交えつつ歌っていた。 (一方、旅の僧の役は途中でオーケストラピットに移動してそこで歌っていたが。) Metropolitan Opera や Royal Opera House の現代演出のオペラをイベントシネマで観ていて、 オペラ歌手も身体能力を求められて大変だなと思うことも少なく無いが [鑑賞メモ]、そんなレベルを超えていた。

動きは、身体を攀じるような動きも控えめで、むしろ手先足先で空間に線を描いて行くかのような動きが印象に残った。 能や狂言を意識した動きはさほど無かったように思うが、舞台上を速く移動するとき、走るというより摺足を思わせる足捌きを多用していた。 そんな所も興味深く見ていたのだが、最も印象に残ったのは、複数の歌手/ダンサーに一つの登場人物を演じさせていたこと。 それもムーバー/トーカーのような分業をせずに、2人が同時に並行して歌い踊る形で演じるという。 こういう演出は Simon McBurney [鑑賞メモ] や 小野寺 修二 [鑑賞メモ] などマイムに近い文脈でよくみるように思うが、 ダンサーや歌手が役を演じるのではなく、舞台の上の動きが場面や登場人物を作り出して行くよう。 舞台美術にこういう演出も合わせ、とてもミニマリスティックで象徴的な表現に感じられた。 能に近い表現に感じた一因は、そんな所にあったと思う。

オーケストラも用いた音楽は明確な旋律があるというより音のテクスチャを強調したもの。 あまり抑揚が無い歌の旋律で、ここぞというところで (能管や鼓を思わせる) 強いフルートの音やパーカッションの音が印象的に用いられ、そんな所にも能に近い所を感じた。 舞台が須磨の浦で海の近くということで、波の音が録音された効果音として使われていた。 風の音はコーラスで表現していたのだが、波の音も象徴的にオーケストラやコーラスで表現したらどうなっただろう、とも思った。

塩田 千春 [鑑賞メモ] の舞台美術も期待ていたのだが、 中盤の姉妹登場の場面で、枠を黒糸で不規則に編み上げた彼女らしいインスタレーションが使われていた。 ワイヤーで吊るされた姉妹役がその糸の中をまさぐり動き、下の方でもダンサーたちが蠢き、情念に囚われた姉妹を象徴的に表現して、最も印象に残る場面になっていた。 この黒糸のインスタレーションが下げられ、塩屋を象徴的に表す木枠だけとなった舞台も、 複数の歌手/ダンサーに一つの登場人物を演じさせた演出と合わせて、 マイム作品風の演出だとは思ったけれども、とても気に入った。

オペラの音楽的な面というより、歌手やダンサーの動きや舞台美術からなる作品として、 コンテンポラリーダンスや現代的で身体表現に重きをおくマイムや演劇の作品を観るのに近い感覚で楽しむことができた作品だった。 そして、コンテンポラリーダンスなどの作品でも、このレベルで興味深く楽しめる作品はそうそう無いように思う。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

終演後は近くの Kenji Taki Gallery でやっていた 塩田 千春 新作展へ。 『松風』の舞台美術制作のためのスケッチやマケットを展示するのもアリかと思いましたが、 相変わらずとはいえ、糸を張ったインスタレーション新作を展示していました。 自分のようにオペラから流れてきた客が多かったのか、いつもより人が多かったような。

年度末の繁忙期はまだまだ終わらないのですがピークは越えたので、この週末は久々に土日ともオフにしました。 土曜、日曜とも出かけてしまったので、あまり休養にはならかなったものの、気分のリフレッシュにはなったでしょうか。 この土日に観たものについては、また後ほど。

[3619] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 18 22:00:45 2018

一週間経ってしまいましたが、先の週末土曜の美術館・ギャラリー巡りの話の続きです。 最後にこの展覧会を観てきました。

MeCA | Media Culture in Asia: A Transnational Platform - Art Exhibition “self-reflexivity: Thinking Media and Digital Articulations”
表参道ヒルズ スペース オー + ラフォーレミュージアム原宿
2018/02/09-02/18 (会期中無休), 11:00-20:00
坂本 龍一 + 高谷 史郎 [Ryuichi Sakamoto + Shiro Takatani], Guillaume Marmin and Philippe Gordiani, Bani Haykal, Tad Ermitaño, Kawita Vatanajyankur, 平川 紀道 [Norimichi Hirakawa], Studio The Future, couch

国際交流基金アジアセンターが2016年より実施している「メディアアート交流事業」の活動を基に、 TodaysArt JAPAN/AACTOKYO と共催とした10日間のメディアアートのイベント MeCA | Media Culture in Asia: A Transnational Platform の中から、2会場で開催されている展覧会を観てきました。 特に新しい傾向を感じたわけではないですが、エンターティンメントに近い完成度の作品を楽しむことができました。 以下、印象に残った作品について個別に。

表参道ヒルズに展示されていた 坂本龍一+高谷史郎「water state 1 」は、正方形に張った水面に、水滴による波紋や、振動による漣を発生させる作品。 背景に流れるグリッチな電子音の音楽といい、いかにもそれらしいミニマリズムの作品でした。

同じく表参道ヒルズの Guillaume Marmin & Philippe Gordiani: Timée は スモークかかった暗室中にドット状のスリットを制御して光の筋を動かすダイナミックなインスタレーション。 鑑賞者も暗室内で鑑賞するので、光の筋を浴びるように感じられるのが良いです。

Kawita Vatanajyankur: Series: Tools / Work は、2会場の両方に展示されていましたが、 様々な姿勢を取った作家自身が卵、スイカなど様々な食べ物を浴びせられる様を固定カメラで影像化した作品。 炊事などの家事を押し付けられる女性の置かれた状況に対する皮肉を読むことも可能でしょうが、 むしろ、John Wood & Paul Harrison のビデオ作品 [観賞メモ] にも近い即物的な不条理さを感じました。 ポップでミニマリスティックな不条理ビデオは、けっこう好みです。 タイの作家ですが、このような国籍を感じさせない洗練された作品も出てきているのだな、とも。

平川 紀道 「datum」は、風景を撮影した動画を、時間軸も含めて4次元とした上で、様々に回転させたもので、 時間空間で量子化されたデータの粒がダイナミックに渦巻くよう。 淡々とデータ処理して見せているわけでなく、若干ギミック入ってたと思いますが、大画面で光の粒の波に揉まれるような感覚は面白かった。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

この土曜は、ほぼ期待の大きさ順に見て回ったのですが、 一番期待してなかったこの Media Culture in Asia の展覧会が、一番楽しめたように思います。 ま、自分の予断なんて、これ程あてにならないということでしょうか。 若い時ほど美術館・ギャラリー巡りできなくなっていますが、 あまり予断で見切りを付けないで、こまめに展覧会に足を運びたいものです……。

今週末もあまり余裕がある状況じゃ無いのですが、土曜は万難排して新国立劇場でオペラ『松風』を観てきました。 その話については、また後ほど。

[3618] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Feb 12 21:16:13 2018

年度末でも忙中感あり。この土曜は、美術館・ギャラリー巡り。まずは恵比寿のこの展覧会へ。

Yebisu International Festival Art & Alternative Visions 2018
東京都写真美術館, 日仏会館 ほか
2018/02/09-02/25 (2/13,2/19休), 10:00-20:00 (2/25 10:00-18:00)

東京都写真美術館とその界隈で開催されているアニュアルの映像を主な対象とした美術展。 改装休館を終えて東京都写真美術館がメイン会場として戻ってきた去年が結構良かったので [鑑賞メモ]、今年も期待していましたが。 しかし、テーマが「インヴィジブル Mapping the Invisible」ということで、 形式的な面白さというよりコンセプチャルな作品が多くあまり楽しめませんでした。

今回は周辺のギャラリーで開催されている地域連携プログラムも観て回ったのですが、 むしろそちらの方が楽しめました。(比較的暖かく散歩日和ということもありましたが。) そんな中では、レースのベールを人が被ったかのような形で下の人を消して白黒写真化した 小瀬村 真美 や、 ガラス容器に映像を封じ込めたかのような 松原 健 など、 MA2 Gallery の展示が印象に残りました。 小瀬村 真美 は今年6月に原美術館で個展が予定されているとのこと。これは楽しみです。

続いて、六本木へ移動。

国立新美術館 企画展示室2E
2018/01/13-2018/03/04 (火休). 10:00-18:00 (金土10:00-20:00).

アニュアルで開催されている文化庁芸術家在外研修の成果報告展。 こちらも、定点観測的に毎年のように観てますが、今年も画廊巡り代わりの気分で観てきました。 しかし、去年 [鑑賞メモ] ほど、良いなと思える作家に出会えませんでした。

そんな中で最も印象に残ったのは mamoru。 マルチプロジェクションのビデオインスタレーションですが、映像を丁寧に作っている所と、 展開はあるけど物語的に過ぎず音楽やダンスに共通するような抽象度な所が気に入りました。 『第10回 恵比寿映像祭』の方にも出展していたのですが、複数のディスプレイの組み方は面白いとは思ったもののこぢんまりしている上、映像がワーク・イン・プログレスなのが惜しいなと思っていたので、 『20th DOMANI・明日展』に展示されていた作品の方が良いな、と。

さらに表参道へ移動。

Yang Fudong [楊 福東]
The Coloured Sky: New Women II
Espace Louis Vuitton Tokyo (表参道)
2017/10/18-2018/03/11 (無休) 12:00-20:00 (臨時休業、開館時間変更はウェブサイトで告知)

現代美術の文脈で1990年後半以降注目されるようになった中国・北京出身の作家の展示です。 蔡 楚生 [Cai Chusheng] 監督によるサイレント映画 『新女性』 (aka New Women, 聯華影業公司, 1935) へのオマージュとなる作品 白黒の映像作品 New Woman (2013) の続編と言える作品とのこと。 マルチモニターのカラー映像作品となっています。 人口的というよりキッチュな色合いの水辺の風景を背景に、戦間期もモダンを思わせる装いの 水着姿の東洋系の若い女性がポーズを取ったり、動いたりしていました。 戦間期モダンな女性の姿に目が奪われつつ、キッチュな色のセンスは好みではなく、なんとも微妙な印象。

映像を丁寧に作っている所や、展開はあるけど物語的に過ぎず象徴的な表現に留まる抽象度など、 直前に観た mamoru の作品と共通点を感じました。 最近の流行に疎いのですが、最近はこのようなマルチスクリーンのビデオインスタレーションが一つの流行なのでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

表参道で、さらにもう一件、展覧会を観たのですが、それについてはまた後ほど。

と言っても、年度末の繁忙期はまだまだ続いています。日曜月祝は職場に出ていたのでした。しくしく。

[3617] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Feb 5 0:13:57 2018

先の週末は午前中には二子玉川へ。このイヴェントシネマを観てきました。

『皆殺しの天使』
from Metropolitan Opera House, 2017-11-18, 13:00–15:40.
Composer: Thomas Adès. Libretto: Tom Cairns.
Production: Tom Cairns.
Set and Costume Designer: Hildegard Bechtler. Lighting Designer: Jon Clark. Projection Designer: Tal Yarden. Choreographer: Amir Hosseinpour.
Cast: Joseph Kaiser (Edmundo de Nobile, the host), Amanda Echalaz (Lucía de Nobile, his wife), Audrey Luna (Leticia Maynar, an opera singer), Sally Matthews (Silvia de Ávila, a young widowed mother), Iestyn Davies (Francisco de Ávila, her brother), Christine Rice (Blanca Delgado, a pianist), Rod Gilfry (Alberto Roc, her husband, a conductor), Sophie Bevan (Beatriz), David Portillo (Eduardo, her fiancé), Frédéric Antoun (Raúl Yebenes, an explorer), David Adam Moore (Colonel Álvaro Gómez), Kevin Burdette (Señor Russell, an elderly man), Sir John Tomlinson (Doctor Carlos Conde), et al.
Conductor: Thomas Adés.
Cynthia Miller (ondes martenot), Dimitri Dover (piano), Michael Kudirka (guitar).
World Premiere: Salzburger Festspiele, 28 July 2016.
New Production: Oct. 26 - Nov 21, 2017. A co-commission and co-production of the Metropolitan Opera, Royal Opera House Covent Garden, Royal Danish Theatre, and Salzburg Festival.
上映: 109シネマズ二子玉川, 2018-01-27 10:00-12:50 JST.

メキシコ時代の Luis Buñuel 監督の映画 El ángel exterminador (1962) を翻案した新作オペラです。 不条理な映画をどのようにオペラ化したのかという興味で観てきましたが、まさに不条理オペラという感じで興味深く観ることができました。

Edmundo de Nobile の邸宅ではオペラ帰りの客人を迎えてのパーティの準備をしているが、 何故か使用人たちは逃げ出すように暇を取って帰ってしまう。 パーティは始まるが誰も帰ろうとせず、そのうち、扉が閉じて鍵がかかっているわけではないのに 客間から誰も出入りできなくなっていることに気づく。 水や食料も尽き、死者も出て、次第に極限状況の様相を示してくる。 緊張が頂点に達しようというとき、最初の晩の配置と同じになったことに気づき、それを繰り返すことで、 閉じ込められた状況から脱することができた。 しかし、それは新たな始まりに過ぎなかった、という物語です。 オペラでは登場人物やエピソードが若干整理されていましたが、ほぼ映画に忠実にオペラ化されていました。 登場人物が整理され演劇的にデフォルメされた表現のおかげで、映画よりオペラの方がわかりやすく感じました。 映画では見落としていた人間関係に気づかされたりもしました。

極限状況といっても極端な行動に走り出すというほどではなく、むしろ疲れ果てて雑魚寝している場面が多く、 部屋から出られない理由がわかない不条理さの方が際立地ます。 オペラ帰りのセレブ達が登場人物なのでさほど違和感はありませんでした。 現代オペラということでとっつきやすい旋律のアリアがあるわけで無く、 オペラというよりまるでストレートプレイの不条理演劇を観ているような気分でした。 主な登場人物は舞台上で出ずっぱりで、このような作品では、歌唱力だけでなく演技力も要求されるなと思いつつ観てしまいました。

Adès のオペラは初めて聴きましたが、変拍子や無調を基調とした現代オペラとはいえ、かなりとっつき易く感じられました。 Theremin にも似た音を出す1928年に発明された電子楽器 Ondes Martenot がフィーチャーされていましたが、 20世紀半ばに恐怖映画やSF映画の音楽として使われたような使い方。 メキシコの tamboril (snare drum に似た伝統的な打楽器) の連打も、息が詰まるような状況を盛り上げていました。 超絶高音の soprano も、極限状況下でのヒステリックな状態の表現にピッタリ。 このような映画音楽的とも感じられるイデオマティックな音使いも、とっつきやすさの理由かもしれません。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

シアター・イメージフォーラムで Luis Buñuel の特集上映 をやっていて、 El Angel Exterminador も上映していたので、 4日の年始行事帰りに予習したのでした。 わかりやすい演出だったので予習をしなくても話に付いていかれたように思いますが、 話を追うのに精一杯にならずに、演出や音楽も楽しめ、理解は深まったかな、と。

この週末は、土曜の午後に、早稲田大学早稲田キャンパス16号館へ。 久しぶりに桑野塾に顔を出してきました。 前回に行ったのが2015年ですから[メモ]、2年弱ぶりでしょうか。 テーマは『桑野塾×サーカス学ゼミ』ということで、ちょうど3年弱前に聞いた話の続編とでも言える内容でした。というか、続きが聴きたくて行ったわけですが。 もちろん、この3月で桑野先生が早稲田大学を退官されるということで、その節目となる回の話を聴いておきたいということもありましたが。 桑野先生の報告で紹介された オリガ・プレニナ=ペトロヴァ『文化空間のなかのサーカス』 (Ольга Буренина-Петрова: Цирк в пространстве культуры, Новое литературное обозрение, 2014) の話の広げ方はなかなか凄いものがありました。 しかし、後半の特別上映、上島 敏昭 氏が Yahoo! オークションで発掘したという 1947年ソヴィエトのサーカスのコンサート映画が、その45分という長さと言い、映像の状態の良さといい、収録されている技と言い、思わず釘付けになってしまいました。これは凄い。 この週末は他にも気になる公演や上映があったのですが、桑野塾にした甲斐がありました。 最近は本業が多忙になってしまったこともあり、桑野塾から足が遠のいてしまっていたのですが、 話を聴きに行くだけでも好奇心を刺激されて、良いものだなあ、と。

と言っても、今は年度末の繁忙期。 先の週末もこの週末も、趣味生活もそこそこに職場に出たりしていたのでした。しくしく。

[3616] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 28 20:06:40 2018

先の週末は、土曜午後に与野本町へ。この舞台を観てきました。

ジェローム・ベル 『Galaーガラ』
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
2018/01/20, 15:00-16:30.
Conception: Jérôme Bel Assisté de: Maxime Kurvers, Simone Truong. Costumes: les danseurs.
De et par: distribution en cours.
埼玉版キャスト: 相澤 陽太, 新井 悠汰, 入手 杏奈, 梅村 千春, Elhadji Ba, 大北 岬, オクダサトシ, 金子 紗采, 川口 隆夫, 木下 栞, 佐々木 あゆみ, 竹田 仁美, BIBIY GERODELLE, 百元 夏繪, 星 遙輝, 堀口 旬一朗, 矢崎 与志子, 吉田 駿太朗, 吉村 計、李 昊.
Création: 2015.

ダンスや舞台芸術の制度をズラすような作品のフランスの振付家 Jérôme Bel の2015年の作品は、 前回の日本公演 The Show Must Go On に続いて、 上演する現地でオーディションした特にダンサーに限らない人を使っての作品。 その前の 3Abschied [鑑賞メモ] を楽しんだものの、 The Show Must Go On [鑑賞メモ] はさほど楽しめませんでした。 そんなこともあってあまり期待していなかったのですが、今回は楽しんで観ることができました。

舞台前方下手にリング中とじのカレンダーの裏にフェルトペンで手書きした「めくり」が用意され、 前半はここに書かれた「バレエ」「おじぎ」「マイケルジャクソン」などのお題を、出演者が一人一人演じていくことからはじまります。 舞台に登場するのは、バレエや日本舞踊、コンテンポラリーダンス、バトントワリングなどの身体表現のトレーニングを受けている人から、車椅子に乗った人まで、老若男女問わず様々。 衣装は最も派手な私服ということだった。 全員が一度に舞台に出ての無音での即興の後、出演者間で衣装を交換し、後半は「カンパニー・カンパニー」ということで、一人の動きに皆が真似してのダンス。 そして、川口 隆夫 (ex-Dumb Type) が率いてのダンスから全員が集結して大きく盛り上げてエンディングを迎えました。

そんな舞台を観ていて連想したのが、大道芸での客弄りです。 まず、短い演目を複数連ねて演じるような大道芸では、手作り感ある「めくり」を使うことは多くあります。 そして、観客を引き出して、踊りなどのパフォーマンスをさせたり、お辞儀も定番です。 観客の不器用な動きで笑いを取るだけでなく、子供や老人、車椅子の人など引き出して観客から暖かい反応を引き出す事も、大道芸では少なからずあります。 また、引き出した観客の持ち物や帽子、上着などを交換させて奇妙さを演出するという演出も、 、芸人が引き出した観客に同じ動きをするように求めた上で、難しいジャグリングの技をして、真似るのも恥ずかしい変な踊りを踊って、笑いを取ったりすることも、大道芸では定番です。 後半の「カンパニー・カンパニー」で、バレエダンサーやバトントワラーの動きに振り回される他の人の動きなど、 固定の「芸人」はおらずお互いがやりあう形になりますが、共通点も多くありました。 そして、最後は引き出した人たちをコラボレーションさせての感動のフィナーレは、さながら 雪竹 太郎 の「ゲルニカ」。 そういう舞台上でのフォーマットだけでなく、不器用な動きや、バレエやトワリングの動きに付いていけないことに笑いが起きたり、 子供や車椅子の人の演技に暖かい拍手が起きたり、という、観客での反応も大道芸での反応にとても似ていました。

この作品のコンセプトはさておき (おそらく舞台上の人、動きのフラットな多様性というのはあったのだろうとは思いますが)、 大道芸の客弄りの場面を集めて大掛かりにして舞台を観てるよう。そんな一時間半を楽しみました。

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[3615] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 22 23:12:24 2018

一週間以上経ってしまいましたが、1月13日の土曜は昼過ぎに飯田橋へ。この映画を観てきました。

広島国際映画祭 Cinémathèque française 共同企画 『世界のすべての記憶』 (Tout la mémoire de monde) 特集の、 アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュの特別アンコール上映で、 ピアノ生伴奏 (演奏: 柳下 美恵) 付きサイレント映画上映を観てきました。

『洪水』
1923 / France / 87 min. / B+W (coloured) / silent
Réalisateur, Scénariste: Louis Delluc
Interprètes: Ève Francis (Germaine Broc), Van Daële (Monsieur Broc), Ginette Maddie (Margot Doucet), Philippe Hériat (Alban Perrin), et al.
『エルノアへの道』
1920 / France / 50 min. / B+W / silent
Réalisateur, Scénariste: Louis Delluc
Interprètes: Ève Francis (Majesty), Princesse Doudjam (Santa), Gaston Jacquet (Parnell), Albert Durec (Etchegor), et al.

元ジャーナリストで、第一世界大戦末期の1917年以降、1924年に亡くなるまでの間、 映画批評の雑誌を編集する一方7本のサイレント映画を演出した Louis Delluc の2本です。 フランスのサイレント期の監督として名を知られますが、作品を観たのはこれが初めて。

フランスの前衛映画の先駆とは言われ、回想シーンの使い方などモダニズムも感じられるとはいえ、 カメラワークやモンタージュも、 例えば去年末に観た Gustav Machatý: Erotikon (1929) [鑑賞メモ] と比べるとまだまだ素朴。 しかし、1920年代前半はまだまだこんなレベルでしょうか。 脚本もいささか無理があり感情移入し難たく感じられてしまいました。 L'Inondation など、勝手に横恋慕して心を病んだ主人公 Germaine に対して、 恋敵 Margot が不当に悪者に描かれているようにも思えてしまいました。

双方とも成就しない恋心や嫉妬の織りなすメロドラマ映画ですが、 L'Inondation の舞台は南仏のローヌ川沿いの村。 Le Chemin d'Ernoa の舞台は フランス領バスク地方、スペイン国境近くのピレネー北麓の村。 Le Chemin d'Ernoa は、アメリカで一稼ぎして戻った裕福な男 Etchegor) が主人公で、 三角関係の相手も密かに犯罪で稼いでいるアメリカ人夫婦 (Majesty et Parnell) で、 自動車に乗るなど、それなりにモダンなライフスタイルを感じさせるものがありました。 L'Inondation でも、主人公 Germaine の恋敵となる Margot はフラッパーを思わせるキャラクター。 どちらもパリのような大都会を舞台とした映画では無いということもあって、 メロドラマらしい都会のモダンでお洒落な道具立でが少なめなのも、物足りなく感じた一因でしょうか。

と、否定的な書き方になってしまいましたが、期待が大き過ぎただけで、ピアノ生伴奏に導かれつつ、普通に楽しんで観ていました。 モダンなメロドラマというより、Le Chemin d'Ernoa でのピレネー北麓の見通しの良い風景やその中を疾走する自動車、 L'Inondation での静かに洪水に浸るローヌ川沿いの村など、 美しい野外ロケの画面が印象に残りました。

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最近、ヨーロッパのサイレント映画からだいぶ遠ざかってしまってましたが、 去年末のチェコ映画特集を観て、少し興味が再燃気味だったりします。 やはり、ピアノ生伴奏付きでサイレント映画を観るのは楽しいものです。

[3614] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 21 19:49:23 2018

二週間前に行った金沢一泊旅行の帰り。 当初は予定に無かったのですが、金沢で富山に新オープンした美術館の情報を偶然目にしたので、 日曜の金沢は午前だけにして、昼には富山へ移動。この展覧会を観てきました。

富山県美術館
2017/11/16-2018/01/08 (水休;祝開,翌休;12/29-1/3休), 9:30-18:00,

1981年に富山駅の南側、城南公園の一角にオープンした富山県立近代美術館は、 耐震、空調、防火などの施設が現代の基準に満たなかったこともあり、移転新築することになり、 2016年12月末をもって閉館。 移転後は富山県美術館と名称が変わり、2017年3月25日からのプレオープンを経て、2017年8月26日に富山駅の北西側、富岩運河環水公園の一角にオープンしました。 良さげな作品が出展された展覧会をやっていることもあり、どんな美術館になったのかという興味もあって、 金沢へ展覧会 [鑑賞メモ] を観に行った帰りに足を運んでみました。

開館記念展 Part 2 『素材と対話するアートとデザイン』 は、 どちらかといえばデザイン寄りの展覧会。 やはり最も印象に残ったのは、会場入ってすぐの Emanuelle Moureaux: “Color of time” (2017)。 展覧会初日11/16の06:30から日没後色が見えなくなる19:49までの799分を色のグラデーションで表現したインスタレーションで、 1分毎の時刻を表した文字に色を付け、それを並べて吊るして、大きなトンネル状の空間を作り出していました。 物量的な存在感と色の美しさも良いのだが、緑色などの色も使われており、かなり恣意的に色は選ばれているよう。 その時々の空のある特定の領域の色からサンプリングしたりと条件を厳しくした方がコンセプチャルになると思うけれども、 そうしたらここまで鮮やかな色彩のインスタレーションにならなかっただろうな、とも。

デザインの展示は、素材に焦点を当てたもの。 いわゆる新素材というより、リサイクル素材が多くあったのは、時代でしょうか。 造形については素材を際立たせるミニマリズム的なデザインが目立ちました。

新開館といっても、富山県立近代美術館のコレクションを引き継いでいますので、コレクション展示も充実しています。 絵画や彫刻などの近代美術作品よりもデザインの展示の方が映える展示空間でしょうか。

富山県立近代美術館といえば1985年から開催している世界ポスタートリエンナーレで、 ポスターのコレクションが充実していることで有名。 戦後20世紀半ばのモダンなデザインなものを中心に、東欧のものも充実。そのポスターコレクションも楽しめました。

また、モダンデザインの椅子のコレクションの展示もありました。 椅子のコレクションといえば、武蔵野美術大学のコレクションが有名ですが [鑑賞メモ]、 富山にもこんなに充実したコレクションがあったのですね。座れる椅子も三脚あって、展示を堪能しました。

富山県といえば 瀧口 修造 の出身県で、その縁もあって、その遺品が富山県立近代美術館のコレクションとなっていたのですが、 この展示コーナーがオシャレになっていました。 まるでラグジュアリー・ブランドの商品ディスプレイのよう、と、思ってしまいました。 シュルレアリスムの紹介者としては、カオティックな展示にした方が、それらしい雰囲気が楽しめたんじゃないか、とも、思いましたが。

美術館の屋上は、佐藤 卓 のデザインの「グルグル」などのオノマトペに着想した遊具が並ぶ子供向けのプレイグラウンド『オノマトペの屋上』となっています。 年間スケジュールでは冬季は閉鎖でしたが、年末年始は特別開放していました。 子連れの家族でかなり賑わっていて、遊具もほとんど埋まっていました。コンセプト倒れになっておらず、何より。

北陸新幹線が出来て東京から近くなった上、富山駅からのアクセスも良いですし、 富山市内で古い街並みが残る岩瀬浜とも富岩運河で繋がってますし、金沢と合わせて行くのにうってつけ。 これからも時々足を運びたいものです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

日帰りではなく一泊の余裕のある旅程にしていたので、臨機応変に富山に寄れたわけで、 やはり、目的のものだけ見てトンボ帰りの強行軍の旅行はするもんではありません。

[3613] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 14 12:57:44 2018

先の週末三連休は一泊で金沢へ行ったわけですが、 土曜は遅くに呑んだので、日曜の朝は10時くらいまでゆっくり。 午前は、軽く観光散策しつつ、ちょっと気になったオルタナティヴ・スペースを覗いてみました。

『ゆらぎの所在』
金沢アートグミ
2017/12/16-2018/01/08 (水休;12/26-1/4休), 10:00-18:00,

Janet Cardiff and George Bures Miller 展 [観賞メモ] で立ち寄った 金沢21世紀美術館でフライヤを拾って気になった展覧会。 会場の金沢アートグミの場所は、 村野 藤吾 の作品として知られる [観賞メモ] 近江町市場に接した北國銀行武蔵ヶ辻支店の3F。 この建物は一度ちゃんと観に行きたいと思っていましたし、 金沢にも現代美術のオルタナティヴ・スペースがあったのか、と、足を運んでみました。 オフィスを改装したような天井の低い狭いスペースを予想していたのですが、元講堂らしきスペースを展示空間としていました。 NPO法人となって現在の場所にギャラリーを開設したのは2009年。 金沢へは金沢21世紀美術館に展覧会を観に数年に1回は来ていたので、今まで気付かな買ったのは痛恨。 これから、金沢21世紀美術館と併せてチェックしたいものです。

展覧会をしていた 坂本 のどか に関する予備知識は無かったが、2000年代以降に、主に東京周辺で活動している作家とのこと。 最近の現代美術作家に多い雑然としたプロジェクトの記録のような作品ではなく、スタイリッシュなビデオインスタレーションでした。 夜に街を歩くときに見かけるカーテン越しに人影を感じる住宅の窓を短時間のループのビデオを使ったインスタレーションが良かった。 奥の壁ほぼ一面を使ったものあったが、ギャラリーの上方の壁のあちこちに投影されると、集合住宅の窓を見ているよう。 使っているプロジェクタが1台のみで、ミラーを使って分割して複数の窓を投影するシステムも、低コストで維持も容易なように考慮されているようで良かった。 プロフィールを見ると、筑波大学総合造形 [鑑賞メモ] の出身とのこと。 それらしい作風だなと納得でした。

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[3612] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Jan 10 0:26:13 2018

先の週末土曜は昼頃に家を出て、北陸新幹線で金沢へ。 16時頃に金沢21世紀美術館へ着いたのですが、チケット売場から既に大行列。 このまま並んでもまともに作品は観られないので、遅めの時間に出直すか、明朝一番にすることに。 石川県立美術館に流れて1時間ほど過ごした後、 一旦チェックインしようとホテルへ向かう途中、金沢21世紀美術館を覗いたら、 行列の長さが1/3程度になっていたので、このまま観ていくことにしました。

Janet Cardiff and George Bures Miller
ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー
金沢21世紀美術館
2017/11/25-03/11 (月休;1/8,2/12開;12/29-1/1,1/9,2/13休), 10:00-18:00 (金土-20:00).

立体的なサラウンド・サウンドを使ったインスタレーションを得意とするカナダ出身の現代美術作家2人組の個展。 dOCUMENTA(13) での Alter Bahnhof Video Walk [鑑賞メモ] や for a thousand years [鑑賞メモ] が とても楽しめたので、彼らの作品をまとめて見ることができる絶好の機会と、金沢へ遠征してきた。 2014年にデンマークの美術館 ARoS で開催された個展 Something Strange This Way に基づく展覧会で、その際に展示された6作品に Playhouse (1999) と Imbalance. 6 (1998) を加えた8作品が展示されていた。 今まで見た作品の多くは造形的に作り込んだインスタレーションを伴わないサウンドよるAR (Augmented Reality) とでも言うものが多かったのだが、 今回の展覧会で展示されていた作品の多くはサウンドだけでなく造形的にも作り込まれたインスタレーション。 サウンドを使ったナラティヴなインスタレーションは音楽というよりラジオドラマに近いものを感じていたが、 これに造形が伴うことで、出演者のいないパフォーマンスというか舞台作品を観てるようになることもあった。

最も印象に残ったのは、やはり、ドラマ的な演出がされた作品。 椅子に座って劇場のミニチュアの舞台上のフォログラムの歌手を見つつ サラウンド・サウンドで謎の女性と歌手のリサイタルを観るような体験をするなど、 Alter Bahnhof Video Walk にも似たノスタルジックな感傷を感じた。 Opera for a Small Room (2015) は カナダのブリティッシュ・コロンビア州の田舎町のリサイクルショップで見つけたオペラのレコードのコレクションに基づき、 その持ち主の部屋とそこでかかっている音楽という形で作り上げたインスタレーション。 コレクター風の雑然とした無人の部屋でクラシカルなオペラのレコードの再生に始まり次第にノイジーなロック・オペラの様相を呈していく約20分だった。 これらの作品ほどドラマチックではないが、キャンピングカーに様々な人形が蠢く少々グロテスクさのある The Marionette Maker (2014) にも、 Playhouse にも似た舞台と歌手の人形があり、 彼らの好むモチーフとして、オペラ/声楽コンサートというとしてあるのかな、と。

以前に体験していたインスタレーションでは造形を作り込まないインスタレーションでモダンさも感じていたのだが、 この展覧会ではシュルレアリスティックな造形が多かったもは意外ですらあった。 拷問装置に着想したかのような The Killing Machine (2007) や、 回転木馬 The Carnie のような、 ドラマ的な演出が無い自動楽器のようなインスタレーションでは、そのグロテクスさが印象に残った。 しかし、ドラマ的では無い作品で最も気に入ったのは The Cabinet of Curiousness (2017)。 小さな引き出しが多く並んだ木製のキャビネットのそれぞれの引き出しにスピーカを仕込み、 引き出しを開くとそれぞれ異なる音楽や歌声が流れ出す作品で、 キャビネットのアンティークな雰囲気とノスタルジックなサウンドのシンプルな組み合わせが効果的だった。

15世紀ルネッサンス期のイタリアはメッシーナ (Messina) の画家 Antonello の絵画 San Girolamo nello studio (1475) に描かれた空間とそのサウンドスケープを再現した Conversation with Antonello (2015) は、 その音よりも、辻褄のあっていない復元された空間の方が印象に残った。 比較的初期の作品になる Imbalance. 6 (1998) は、 よろけるように飛び跳ねる素足の足元の映像を写したディスプレイを紐で吊るし、 その映像に合わせるかのようにディスプレイを揺らす作品。 全8作品の中では印象は薄かったが、サウンドをメインとしない面も観たようで、興味深かった。

体験するのに時間のかかる作品が多く、会場も混雑していたので、 通して観るのに3時間近くかかってしまったが、 短編ラジオドラマの様な作品だけでなく、造形の面白さも含め多様な8作品を堪能することができた展覧会だった。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

Playhouse で1時間弱の待ち時間がありましたが、 通して鑑賞すると30分近くかかる作品もあったので、結局、閉館の20時まで約3時間粘ってしまいました。 新幹線も出来、金沢は日帰りも余裕なわけですが、一泊にしておいたおかげで、余裕を持って鑑賞できました。 晩には香箱蟹を含む美味しい料理に地元の酒 (手取川や菊姫) も楽しめたし、一泊にした甲斐がありましたよ。

[3611] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 8 20:36:20 2018

実家・親戚付き合いから戻った正月3日は、美術館へ初詣。 今年も昼過ぎには東京都写真美術館へ行って、これらの展覧会を観てきました。

TOP Collection: Eugène Adget: The Eternal Inspiration
東京都写真美術館 3階展示室
2017/12/02-2018/01/28 (月休;月祝開,翌火休;12/29-1/1休) 10:00-18:00 (木金-20:00;1/2,3 11:00-18:00).

20世紀初頭にフランス・パリで活動した Eugène Atget の受容と影響に焦点を当てたコレクション展。 Adget を見出した Man Ray、 Man Ray の助手で Adget をアメリカへ紹介した Berenice Abbott、 MoMA写真部門ディレクターだった John Szarkowski を軸に、関係した作家の写真を展示していました。 20世紀半ばの海外での受容、影響、Walker Evans の展示までは良かったのですが、 20世紀後半の日本での受容、影響については判然としない展示でした。 Szarkowski の企画した展覧会 New Japanese Photography を取り上げているのですが、 そもそもこの展覧会がどのような内容だったのか分からなかったのが、物足りなかったです。 荒木 経惟 『写真論』 の中には Adget の影響を感じさせるような写真も少なからずあると気付くことができたなど、 得るところもあったのですが、その荒木の写真と New Japanese Photography の関係など、 もう少し繋ぎが欲しかったように思いました。

Contemporary Japanese Photography vol. 14: Photographs of Innocence and of Experience
東京都写真美術館 2階展示室
2017/12/02-2018/01/28 (月休;月祝開,翌火休;12/29-1/1休) 10:00-18:00 (木金-20:00;1/2,3 11:00-18:00).
片山 真理 [Katayama Mari], 金山 貴宏 [Kaneyama Takahiro], 鈴木 のぞみ [Suzuki Nozomi], 武田 慎平 [Takeda Shimpei], 吉野 英理香 [Yoshino Erika]

アニュアルで開催されている、新進若手の作家を紹介するグループ展示。 こういうグループ展は一人くらいは引っかかるものがあるのだけど、今回はあまりピンときませんでした。 そんな中では、古い木枠やアルミサッシのガラス窓や手鏡、鏡台などのガラス面に感光材を塗って、 かつて見えて/映っていた物の白黒写真をプリントしたものが、最も良かったでしょうか。 制作方法を知らずに観た時は微妙なボケ具合もピンホールを使って直接露光したのかもしれないと思いましたが、流石にそこまではせず、ネガからプリントしたよう。 それにしても巨大な暗室を要して、大変そうです。

W. Eugene Smith: A Life in Photography
東京都写真美術館 地階展示室
2017/11/25-2018/01/28 (月休;月祝開,翌火休;12/29-1/1休) 10:00-18:00 (木金-20:00;1/2,3 11:00-18:00).

主に1940s-70s、20世紀半ばに活動したアメリカのドキュメンタリー写真作家の回顧展です。 Life 誌フォトエッセーとして発表されたものが主ですが、 新興写真に連なるような白黒で端正な構図のものが中心で、散文的というより詩的に感じるところも。 Smith の意図通りにならなかった点も多かったですようですが、 最終的なフォトエッセーがどう仕上がったのかも、比較としてもっと見たかったです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]