TFJ's Sidewalk Cafe >

談話室 / Conversation Room

TFJ's Sidewalk Cafe 内検索 (Google)
[3724] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 24 18:38:11 2019

先週末の話ですが、日曜は夕方に横浜山下町へ。この公演を観てきました。

KAAT神奈川芸術劇場 アトリウム
2019/03/1y, 16:30-17:10.
演出: 小野寺 修二 (カンパニーデラシネラ)
出演: Nguyen Hoang Tung, 崎山 莉奈, 大庭 裕介, 藤田 桃子

2017年の 『WITHOUT SIGNAL! 〔信号がない!〕』 に続く KAAT制作による 小野寺 修二 とベトナムのダンサーとのコラボレーション第二弾です。 第一弾が楽しめたので [鑑賞メモ]、 この第二弾にも足を運んでみました。

といっても、第一弾にあったようなベトナムの印象スケッチのような要素は無くなり、 「待つ」という行為、仕草から着想しそこから緩く連想を広げたような9のスケッチ (「プロローグ」、「待つ男女」、「バイクに乗る男」、「彼の紹介」、「コマ送り」、「若い男女」、「ある提起」、「局面4」、「エピローグ」とそれぞれ題されていました) からなる作品でした。 会場のアトリウムは劇場のある建物の1階ロビーにあたる吹き抜け空間です。 スタジオやホールではない公共空間を使うということで、そんな空間の特徴を使うことを期待したのですが、 街中で待ち合わせするような状況は用いず、ドアとテーブル、椅子という小道具を用いて、むしろ小部屋の中という密室劇的な状況設定にしていました。

大庭 と 藤田 が 崎山 の両親という薄っすらとした設定はあるものの匿名的な男女2組によるマイム劇ということで、 公共空間で上演する必然性が感じられず、前半は少々物足りなく感じました。 しかし、ジャグリング用の黄色のグローボールを受け渡しするような場面から、 密室空間を4人の動きで揺らがせていくようになり、最後には密室の内外を反転させて終演。 このような展開はさすがです。 しかし、こういう作品であれば、小スタジオのような空間を使って作り込んだ照明や音響の演出込みで楽しみたかったものです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

KAATであれば電車一本、片道30分程度で行かれるので、夕方の買物ついでくらいの軽い気分で観に行かれます。 このくらいのフットワークの良さで観に行きたいものです。

[3723] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sat Mar 23 23:45:23 2019

先の週末の土曜の話の続き。プラザノースの後は、バスで大宮に出て、さらに北浦和へ移動。 会期末が迫ったこの展覧会を観てきました。

Impossible Architecture - Another History Of Architecture
埼玉県立近代美術館
2019/02/02-2019/03/24 (月休;2/11開); 前期: 2/2-2/24; 後期: 2/26-3/24; 10:00-17:30.

20世紀以降の未来構想的な建築、社会的技術的制約で提案に留まった建築、もしくは、未完に終わったい建築を集めた展覧会です。 19世紀にも実現できなかった建築プランはあったと思いますが、 実現可能性を必ずしも求めない建築が顕著になるのは、戦間期の Modernism、特に Avant-Garde から。

ということで、展覧会は、Russian Avant-Garde の作家として知られる Владимир Татлин [Vladimir Tatlin] の Памятник III Интернационалу [Monument to the Third Internationa] 『第三インターナショナル記念塔』から始まります。 実作を意識しない工場を含むモダニズム建築のイメージを絵本化したような Яков Чернихов: «Архитектурные фантазии. 101 композиция в красках» [Yakov Chernikhov: Architectural fantasies: 101 compositions in colours] (1933) は、もし復刻版が出たら買ってしまいそうです。 また、川喜田 煉七郎によるハリコフ・ウクライナ劇場 (Ukiranian Theatre) 国際設計競技応募案にも目が止まりました。 Константин Мельников [Konstantin Melnikov] の Дом культуры имени И.В.Русакова [Rusakov Workers' Club] (1927-28) を巨大化したような劇場で、 同時代に日本にも情報は入ってきてたのだな、と。 こういう劇場を日本で作ってくれれば面白かったのに、と思ったりしました。

戦間期の日本でのプランというと、1933-36年に日本に滞在した、ドイツのモダニズム建築家 Bruno Taut の 生駒山嶺小都市計画 (1933)。 大阪電気軌道 (現 近鉄) による依頼で作成した計画とのことですが、 ベルリンのモダニズム集合住宅で知られる Taut ですので、 こういう計画が日本で多く実現していたら、日本の集合住宅のあり方も今と違っていたかもしれないな、と。

Russain Avant-Garde や Bruno Taut など、戦間期のものが興味深く観れたのは、自分の好み、興味関心もあるとは思います。 しかし、戦後日本のメタボリズムなどミッドセンチュリーのモダニズムあたりまでは、実現しなかったもう一つの近代の可能性を感じさせてくれたように思うのですが、 1970sあたりから、批判といってもカウンターでしかなく、むしろ何でもありのポストモダンな中でグダグダ迷走、発散しまっていているようにも感じました。

少々気になったのは、『第三インターナショナル記念塔』を大きく取り上げる一方で、 1930sから40sにかけて建設が進められたものの完成しなかった Дворец советов 『ソビエト宮殿』に全く触れられていなかったこと。 単に取り上げる余裕が無かったということもあるかもしれませんが、 「逆説的にも建築における極限の可能性や豊穣な潜在力が浮かび上がってくる」という展覧会の狙いからして、 スターリン絡みというネガティヴな面もあってあえて避けたのでしょうか。 カタログ中の論文とかでは触れられているかもしれませんが、 展示中で『ソビエト宮殿』やナチスの Welthauptstadt Germania 『世界首都ゲルマニア』のようなものにもあえて触るというのも 企画として厚みを持たせるという点でありかもしれないと思いました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

展覧会をハシゴして一息つきたくなったものの、美術館併設のカフェレストランが貸切準備中。 カフェを探しに美術館の北側の商店街の方へ道を渡ったら、diskunion に遭遇。 埼玉県立近代美術館は長年年1回くらいの頻度では来ていたのに、存在に全く気づいていませんでした。 思わず店内に吸い込まれて散財してしまいました。いけません。 今まで駅から美術館へ直行直帰してましたが、たまには周辺を探索してみるのも良いものです。 しかし、本来の目的にカフェについては、良さげな店は満席で、なんとか入った喫茶店は喫煙で残念。うーむ。

[3722] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Fri Mar 22 0:05:12 2019

先の週末土曜の午後は、武蔵小杉から湘南新宿ラインで土呂まで。 この展覧会を観てきました。

『Wall to Wall』
プラザノース ノースギャラリー4-7
2019/02/19-08/02 (07/28休) 10:00-20:00

不条理ながら無骨な存在感のある機械をその作風とする造形美術作家 タムラサトルの個展。 まめに画廊巡りしなくなってしまい、彼の作品を観るのも久々でした。 摺動接点で電気火花を散らす「接点」シリーズ [鑑賞メモ] のような作風のありますが、 今回展示されていた作品は、「スピンクロコダイル」 (1997) [鑑賞メモ] や 「風に吹かれる布」 (1999) [鑑賞メモ] を思い出させるものでした。

『Wall to Wall』では、黒い鉄枠の土台に銀色の金属 (おそらくアルミ) パイプの腕からなる機械が ギャラリーの空間いっぱい使って回っていました。 腕は壁 (もしくは床天井) に当たらんばかりのギリギリの所を過ぎていきます。 「スピンクロコダイル」や「風に吹かれる布」でも、ワニや旗がギャラリー狭しと回る感が楽しめたわけですが、 巨大なワニのような具象的な形態はおろか、白い四角い布すら無くなり、 長い金属製の腕だけで空間いっぱいギリギリで回っている感だけを純粋に抽出していました。 まさに、壁 (もしくは床天井) ギリギリ回るためだけの機械。 そうすることでギリギリ感をミニマリスティックに表現しているところが、大変に良かった。

金属パイプの腕こそ壁 (もしくは床天井) に当たっていないのですが、 細い腕の先には細いピアノ線が付けて当て、それが壁を引っ掻いていました。 そのカリカリと引っ掻く微かな音も、不穏さを醸し出していました。 もし、接する壁 (もしくは床天井) の板をアースしてピアノ線に電圧をかければ、 摺動接点となってバチバチと火花が散らすこともできたかもしれませんが、 展示するには危険すぎるかもしれません。

ギャラリーの外に面した壁にもショーウィンドウ風の小さな展示スペースがあ流のですが、 そこにもミニチュアの機会が展示されていました。 小さくてもちゃんと壁や天井を擦るように作られていました。 それも可愛らしくて面白いのですが、やはり迫力ある大きな機械の方が不条理さが際立つでしょうか。

プラザノースはさいたま市北区の中核となる公共複合文化施設で、ノースギャラリーはその中にあるギャラリーです。 10年前にオープンして、その第一回の展覧会が『Domain of Art 1 タムラサトル展』でした [鑑賞メモ]。 今回の『Wall to Wall』は開館10周年記念展で Domain of Art 22 とのこと。 もう10年も経ってしまったのか、と。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

10年前はニューシャトルの加茂宮駅から行ったのですが、今回は東北線の土呂駅から15分程歩きました。 土呂駅からプラザノースまでの間には集合住宅やショッピングモールもあって、歩道もちゃんと整備されていました。こちらが表側なのでしょうか。 前回来た時は乗換も多く遠く感じられたのですが、今回は湘南新宿ラインで一本だったので、意外とアクセス良く感じられました。

[3721] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 3 22:16:58 2019

この週末土曜は、春めいた陽気。 散策日和ということで、飯田橋 (アンスティチュ・フランセ東京)、 初台 (ICCインターコミュニケーションセンター)、 六本木 (結局、展覧会は観ませんでしたが) と展覧会巡りしました。

In a Gamescape: Landscape, Reality, Storytelling and Identity in Video Games
NTTインターコミュニケーションセンター
2018/12/15-2019/3/10 (月休;月祝開,翌火休;2/11休,2/12開), 11:00-18:00.
出品作家: COLL.EO, Joseph DeLappe, Harun Farocki, Giant Sparrow, Ip Yuk-Yiu, JODI, Abdullah Karam & Causa Creations, Playables (Michael Frei & Mario von Rickenbach), Playdead, Lucas Pope, 谷口 暁彦, Jonathan Vinel, 和田 淳, Brent Watanabe, 山内 祥太.
共同キュレーション: 土居 伸彰, 谷口 暁彦.

PCや家庭用ゲーム機 (video game console) で遊ぶヴィデオ・ゲームを、 インディ・ゲームとヴィデオ・ゲーム・アートという2つの動向から捉えた展覧会です。 日本国内に絞ることなく、広く世界の動向を紹介するような内容でした。

インディ・ゲームは個人もしくは小規模チームで製作されたゲームのことで (インディとは独立系という意味)、 小規模ならではの作家性の強い、狭い意味でのエンターティンメントに留まらない作品が取り上げられていました。 中でも、戦争や難民などの社会問題を扱うゲームと、アニメーションの分野で「アート・アニメーション」に相当するゲームが目に付きました。 一方のヴィデオ・ゲーム・アートとは「ヴィデオ・ゲームというメディアを批評的な視座から俯瞰するメタメディアとしてのアート表現」とのことですが、 ゲームを想定された遊び方とは違う使い方をすることで批評的な視点を表出している作品が目にとまりました。

殺伐とした社会を舞台とした FPS (First Person Shooting) / TPS (Third Person Shooting) ゲームは 戦争や犯罪などの社会問題との親和性が高いのか、この展覧会の中では特に目立っていました。 米陸軍の作成したオンラインFPSゲーム America's Army 上で チャットのメッセージでイラクでの米軍の死者に関する情報を重ねていくパフォーマンス作品 Joseph DeLappe: dead-in-iraq (2006-2011) など、現実のレイヤにゲームのレイヤを重ねるARゲームとは逆の、ゲームのレイヤに現実のレイヤを重ねるような興味深さはありました。 しかし、そもそもほとんどゲームをしたことがないためベースとなるリテラシー不足は否めず、その表現の面白さは掴みかねました。

むしろ、PlayablesPlug & Play (2015) や Kids (2017-2019)、 和田 淳 『マイエクセサイズ』 (2017-2019) などのアート・アニメーション作家がらみのゲームは、インタラクティヴなアート・アニメーションのよう。 得点などの目標の設定が緩い、もしくは、そもそも無いところも、シュールさというか不条理さを倍加させていて、良かったです。 自分に比較的馴染みのある表現のせいか、自然に楽しむことができました。

意外だったのは、VR (Virtual Reality, 仮想現実) ゴーグルの廉価化で普及し始めているVRゲームについては 山内 祥太 の作品のみで (体験はできませんでしたが)、 スマートフォンの普及と Ingress や Pokémon GO のようなゲームの登場で一躍メジャーとなったAR (Augmented Reality, 拡張現実) ゲームが見当たらなかったこと。 このような企画に大きくフィーチャーされるほどにはジャンルとして成熟していない、ということでしょうか。

常設展示相当の 『オープン・スペース2018 イン・トランジション』 は流し観た程度。 新進アーティスト紹介コーナー ermergencies!平瀬 ミキ 『半透明な物体』 はそこはかとなく既視感もあって強い独自性を感じたわけではないですが、 シンプルなアイデアと造形の面白さをミニマリスティックに映像化した作品が気に入りました。

『イン・ア・ゲームスケープ』展の前に、 アンスティチュ・フランセ東京の主催するアートとデジタルカルチャーのフェスティバル Digital Choc のアンスティチュ・フランセ東京の展覧会に寄ったのですが、 こちらもヴィデオ・ゲームの展示、それもVR/ARゲームの展示でした。 Julia Spears et Ferdinand Dervieux の作品はVRゲームで、 イサム・ノグチの彫刻に着想した2人で遊ぶ Playgrounds と 1人で体験する物語風ゲーム Recall。 Julie Stephen Chheng はタヌキ探しのARゲーム Uramado, le réveil des TanukisRecallUramado, le réveil des Tanukis を体験しましたが、 どちらも、得点などの目標の設定が無い、もしくは、重要でないゲームで、 ゲームとしての面白さというより、類型的な2D/3D CGではなく作家性の高い「絵」を楽しむ インタラクティヴな「アート・アニメーション」としてのインディ・ゲームと言えるもの。 意図したわけではないのですが、In a Gamescape を補うような展覧会を観たことになりました。

同会場で開催していた Digital Choc 関連イベント Contemporary Computer Music Concert 2019 は、第一部のみ。 そのあと NTTインターコミュニケーションセンターへ移動してしまったので、雰囲気に触れる程度でした。 NTTインターコミュニケーションセンターの後、 Digital Choc の東京スカイビュー会場の展覧会を観ようと六本木ヒルズまで行ったのですが、 スカイビューまで40分待ちという表示を見て断念しました。 週末晩の六本木ヒルズの混雑を甘く見ていました……。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

日曜は、うって変わって、雨で真冬のような寒さ。年度末繁忙期の疲れた身体には寒暖の差が堪えます。

[3720] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Feb 25 0:21:33 2019

まだまだ年度末の繁忙期のトンネルは抜けられず、土曜は職場に出ていたのですが、 少しは気分転換も必要ということで、日曜はオフにして、この舞台を観てきました。

オーチャードホール (渋谷)
2019/02/24, 12:30-15:00.
Chief choreographer, artistic director: Yang Liping; Production, visual director, costume and set design: Tim Yip; Stage installation: Beili Liu.
Creation: 2016.

中国雲南省大理出身で白 (ペー) 族というバックグラウンドを持ち Peacock Dance 『孔雀の精霊』で知られる ダンサー/振付家/演出家の 楊麗萍 (Yang Liping)。 日本にも度々来日していたものの、観たことはなかったのですが、 2016年の Sadler's Wells での公演が 少々気になっていたので、思い立って観てみました。

中国古代、秦王朝滅亡後の項羽と劉邦の戦いを舞台化したもの。 チャイニーズ・オペラやカンフーの身体語彙を使ったコンテンポラリーダンスというより、 カンフーの身体語彙やコンテンポラリーダンスの演出テクニックを使ってアップデートしたチャイニーズ・オペラ、と言った方が良い作品でした。 かなり物語性が強い作品なのですが、音楽の使い方や動きが、自分にとっては説明的に過ぎて、 2時間半は逆に少々退屈に感じられてしまいました。 大量に吊るされてた銀色に光る金属製の鋏を上下に動かしたり、 最後の場面で床一面に赤い羽根を敷き詰めて巻き上げながら踊ったりと、 視覚的に非常に豪華で、写真映えしそうな舞台美術は圧巻でしたし、 カンフー的なイデオムを多用した力強い動きなどダンサーの身体能力の高さも感じられましたが、 それも心に響きませんでした。

楊麗萍 はカーテンコールに登場しただけでなく、開演直前にも挨拶というほどではないものの客席内を通って行きましたが、出演は無し。 このような作風のカンパニーということであれば、楊麗萍が出演するより伝統色濃い作品の方が楽しめたかもしれません。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

この日曜は、『紫苑物語』『恵比寿映像祭』と迷って、 結局 Yang Liping にしたのですが、果たしてこの選択は正しかったのか、と。うーむ。

公演後、どこかでゆったり一休みしようとしてカフェ難民に。 以前は行きつけのジャズ喫茶があったので、渋谷で他の店をほとんど探しておらず、これといったあてもなく。 人混みの中を歩き回ることになってしまい、逆に疲れてしまいました。 こんなことであれば、さっさと帰って、家でゆっくりすればよかった。

[3719] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sat Feb 16 23:16:42 2019

年度末という事で、先週末は職場に出ていたのですが、日曜は忘れ物をして仕事にならず。 諦めて、午後遅くなったものの、この展覧会を観てきました。

国立新美術館 企画展示室2E
2019/01/23-2019/03/03 (火休). 10:00-18:00 (金土10:00-20:00).

アニュアルで開催されている文化庁芸術家在外研修の成果報告展。 定点観測という事で、今年も観てきました [去年の鑑賞メモ]。

最も印象に残ったのは 白木 麻子 の整然としたインスタレーション。 21世紀のインスタレーションはワーク・イン・プログレスのような未完を演出するような 雑然とした雰囲気を強調するインスタレーションが目立つわけですが、 それとは対照的で、むしろ20世紀半ばの謎解きがかったコンセプチャルなインスタレーションを思わせます。 作品が読み解けたという程ではありませんでしたが、そんな雰囲気が面白く感じられました。

他には、モロッコのラバトで撮影した赤いポピーの写真を次第に枯れるかのように床に配置した 松原 慈、 和田 的 のシンプルな造形の白磁や青白磁、 計算づくしでカオスを設計しているかのような 村山 悟郎 の「自己組織化する絵画」が印象に残りました。

Leiko Ikemura: Our Planet - Earth & Stars
国立新美術館 企画展示室1E
2019/01/18-2019/04/01 (火休). 10:00-18:00 (金土10:00-20:00).

日本出身ながらスイスを拠点を拠点に活動する美術作家 イケムラケイコ の1970年代後半からの活動を回顧する展覧会です。 暗いトーンでぼんやりボヤけた少女像を描いた油彩や、埴輪や土偶すら連想させられる造形のテラコッタの立体作品などで知っていた作家ですが、 思ったより多様な作風を持った作家だったと気づかされました。 しかし、大画面の山水画のような作風の作品よりも、ボヤけた少女の油彩から近年のアマゾン像へという対称的とすら感じる展開に興味を引かれました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3718] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 10 22:37:35 2019

先週末の話。 日曜は休養に充てるつもりだったのですが、土曜の朝にこのライブに気付いてしまったので、予定を変更して、晩に観てきました。

近江楽堂 (東京オペラシティ3F)
2019/02/03, 17:30-19:00.
Olov Johansson (nyckelharpa), Roger Tallroth (12-string guitar), Mikael Marin (5-string viola).

1989年に結成されたスウェーデンの folk/roots グループ Väsen が、 結成30周年を記念して来日、その軌跡を辿る5回連続コンサートを開催しました。 2000年前後に NorthSide レーベルの活動を追っていたので Väsen もその頃から知っていましたが、 これまでもの度々の来日も公演が終わってからそれを知ることが多く、見逃していました。 今回も第1回コンサートの後に知ったのですが、5回連続だったおかげで、4回目のコンサートに足を運ぶことができました。 4回目のコンサートは “Väsen street 2009-2013 From Väsen Street & Mindset” と題されていて、 2010年前後のアルバムからの曲を演奏するという内容でした。 (MCからは必ずしもその時期の曲でないものも演奏していたように聞こえましたが。)

主にクラッシックの室内楽やソロ演奏に用いられているステージも固定席も無いこじんまりとした会場で、観客用に並べた椅子も100席ほど。 上手から viola (Tallroth), nyckelharpa (Johansson), guitar (Marin) という並びで、 PAは用いず、アコースティックな楽器の響きを生かしていました。 ライブなのでもう少し即興的な要素があるかと予想したのですが、そうでもなく、 viola と nyckelharpa がユニゾンで、もしくは、代わる代わるに、時に装飾フレーズを加えて、歌うようにメロディを弾き、 guitar はコードをかき鳴らしてリズムを刻んでいきます。 viola と nyckelharpa もピチカートする曲もありましたが、間合いを取って音の余白を使ったり、 各楽器がこの基本的な役割から大きく逸脱する (例えば viola や nyckelharpa の通奏低音の上でで guitar がソロを取る) ことはほとんどありませんでした。 ノリの良い polska の曲を中心に、しかし、演奏中に掛け声などの声を上げることもなく、足をふみ鳴らす程度で、荒っぽさのない丁寧な演奏でした。

スウェーデンの民族楽器 nyckelharpa をCDで聴くことはそれなりにありますが、演奏を生で聴くのは久しぶり。 最近は遠ざかってたタイプの音楽ですし、アンコール2回を含めても1時間余りというコンパクトさもあって、最後まで集中を切らすことなく新鮮に楽しむことができました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

2000年前後は、それまでの folk の録音に比べ、 NorthSide の紹介する北欧 folk/roots に world music 以降ならではのくっきりシャープな音作りを感じたものです。 しかし、その後、ノルウェーの Hubro や NOR-CD といったレーベルで聴かれるような improv や electronica を通過した音作りの方がより好みとなったこともあり、 それ以前のものからすっかり遠ざかってしまっていました。 しかし、たまにこういう音楽を聴くのも良いものです。

[3717] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Feb 4 22:05:02 2019

土曜午後、横浜赤レンガ倉庫でダンス公演を観た後は、大桟橋というか開港広場の方へ移動。 新たにオープンしたアートスペースをチェックしてきました。

『映像と身体』
BankART SILK
2019/02/01-2019/02/24 (会期中無休), 11:00-19:00.

2018年3月31日をもって閉鎖となった BankART Studio NYK の運営母体 BankART 1929 が、 2月1日に開港広場前のシルクセンターに新スペース BankART SILK をオープンさせたので、 横浜赤レンガ倉庫へ行ったついでに、早速、行ってきました。

オープニングの展覧会は、 Nibroll の舞台美術を手がける 高橋 啓祐 の個展です。 展示されていたのは、«The Foctional Island» (2016) と «a world» (2010) の2つのビデオインスタレーション。 BankART studio NYK でのグループ展で観たことのあった作品 [鑑賞メモ] で、 作品そのものというより、空間の違いを意識させられてしまいます。 BankART Studio NYK の日本郵船所有の古い倉庫という重厚で広い空間は望むべくもありませんが、 BankART SILK はシルクセンター1階の開港広場に面したガラス張りのオフィス2部屋程度のスペース。 そんな空間の特徴を生かして制作された作品ではなく、 むしろ閉鎖的な空間を半ば前提としたビデオインスタレーションなため、 外光を遮断するためベニヤ板やスクリーンで目張りしてたのですが、安普請感は否めませんでした。 BankART SILK は BankART Studio NYK と空間の特徴が大きく異なるので、インスタレーション作品は苦戦しそうです。

空間としては BandART Studio NYK の方が好みですが、 BankART SILK の方が、KAAT や県民ホール、象の鼻テラスなどに近く、他のイベントついでに寄り易い、という利点はあるでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3716] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 3 22:07:30 2019

この土曜は午後に横浜新港地区へ。 木曜から始まった Yokohama Dance Collection 2019 から、この公演を観てきました。

Futuristic Space
エラ・ホチルド 『Futuristic Space』
横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホール
2019/02/02 15:00-16:30
Choreography, Direction: Ella Rothschild.
Art: Ohmaki Shinji [大巻 伸嗣]; Music: Gershon Waiserfirer
Performance: Omiya Daisuke [大宮 大奨], Sasamoto Ryoji [笹本 龍史], Suzuki Ryu [鈴木 竜], Yuasa Ema [湯浅 永麻], Michal Sayfan.
World Premiere.

Inbal Pinto & Avishalom Pollak Dance Company [鑑賞メモ] や Batsheva Dance Company [鑑賞メモ] で ダンサーとして活動し、現在はカンパニーから独立した振付家・ダンサーとして イスラエルのテルアビブ (Tel-Aviv, IL) を拠点に活動する Ella Rothschild の新作が、 Yokohama Dance Collection 2019 のオープニング・プログラムとして上演されました。 作風に予備知識はほとんど無かったけれども、彼女のバックグラウンドと、 シャボン玉自動発生装置を使ったインスタレーション [鑑賞メモ] で知られる 大巻 伸嗣 が舞台美術ということに引かれて、観てきました。

全員黒もしくは暗色の衣裳で、舞台美術は宙をたなびく半透明の煌めく布のみ、というミニマリスティックなビジュアル。 床に5箇所メッシュの送風口が設けてあり、そこからの送風を強弱して布の位置形状を変えつつ、天井からのライティングで煌めかせていました。 抽象ダンスというほどではありませんでしたが、はっきり分かるような物語は無く、倒れる動きや倒れた状態が多く、 近未来のアポカリプティックな死をイメージさせられました。

音楽は Gershon Waiserfirer による生演奏。 ドラムパットやフレームボディのエレクトリック・ウードをルーパー駆使して重ねて作る音は、 中東的な旋法など使わず音響的で、時にリバーブも効かせて幻想的。けっこう、好みの音でした。 しかし、2018単にステージ脇で演奏するだけでなく、ミュージシャンがダンスに絡むのですが、 それが演出的に面白く感じられることはありませんでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3715] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 27 18:34:29 2019

年度末の繁忙期でこの土日は職場に出ていたのですが、そんな合間を縫って、土曜の晩は仕事帰りに渋谷へ。このライブを観てきました。

公園通りクラシックス
2019/01/19, 19:30-21:10.
Asbjørn Lerheim (electric guitar), Atle Nymo (tenor saxophone), Roger Arntzen (doublebass), Torstein Lofthus (drums); guests: 田中 徳崇 [Noritaka Tanaka] (drums), 八木 美知依 [Michiyo Yagi] (koto).

Chrome Hill はノルウェーの jazz/improv の文脈で活動する4tet。 去年最新作を Clean Feed からリリースしたこと程度の予備知識しかありませんでしたが、ちゃんと聴く良い機会かと、ライブに足を運んでみました。 Appalachian folk, Delta blues や Redneck rock などのアメリカの音楽と jazz の融合がコンセプトのようですが、 ラウドな Blues rock の縦ノリもそのままに、 1960s半ばの John Coltrane あたりを思い出す脈動的で厚い free jazz 的な音を合わせたよう。 リーダーがギターなので、guitar のソロを聴かせるような展開が多いかと予想していましたが、むしろ、アンサンブルを厚くするようにかき鳴らしていることの方が多かったでしょうか。 ゲストを入れて、ダブルドラムとなり、かき鳴らされる弦の音もグッと厚くなっていました。 変拍子を多用したり guitar のソロを聴かせたりしない所は、1970s の fusion や jazz rock とはかなり違いました。 正直に言えば、ラウドで厚い音は今の自分の気分では無かったので、演奏にはさほど乗り切れませんでしたが、こういう音もありでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

あと、この週末は、ISU European Figure Skating Championships 2019。 時差もあって開催時間が日本時間で真夜中前後。 帰りが遅くても観られる時間帯ということで、今年もライブストリーミングで楽しむことが出来ました。 欧州各国のトップの選手が出てくるので、応援している選手、上位選手以外でも十分に楽しめます。 やはり欧州の Ice Dance は観ていて楽しいなあ、と。

[3714] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 21 22:52:03 2019

この日曜は午前中から川崎へ。イベントシネマでこのオペラを観てきました。

『マーニー』
from Metropolitan Opera House, 2018-11-10, 13:00–16:00.
Music by Mico Muhly, libretto by Nicholas Wright, based on the novel by Winston Graham.
Production: Michael Mayer.
Set and Projection Designers: Julian Crouch and 59 Productions. Costume Designer: Arianne Phillips. Lighting Designer: Kevin Adams. Choreographer: Lynne Page. Dramaturg: Paul Cremo.
Cast: Isabel Leonard (Marnie), Christopher Maltman (Mark Rutland), Iestyn Davies (Terry Rutland), Janis Kelly (Mrs. Rutland), Denyce Graves (Marnie's Mother), et al.
Conductor: Robert Spano.
World Premiere: English National Opera, London, 2017.
New Production: Oct. 19 - Nov 10, 2018. Commissioned by the Metropolitan Opera. A co-production of the Metropolitan Opera and English National Opera.
上映: 109シネマズ川崎, 2018-01-20 11:20-14:20 JST.

Alfred Hitchcok の1964年の映画、というか原作の1961年の小説に基づく新作オペラです。 Post-classical というか indie/alternative の文脈での共演も多い Nico Muhly の作曲という興味もあって、 Met Opera live in HD で観てきました。 舞台は1950年代のイギリス。トラウマとなるような過去を抱え盗癖を持つ女性 Marnie と、 盗癖を持つと知りつつその弱みを握って彼女と結婚する同族会社の社長 Mark Rutland の 二人を軸に展開する心理サスペンス劇です。 現代的でかつ分かりやすい演出と音楽で、現代オペラを見てるような感も無い作品でした。 もう少し抽象度の高い演出と音楽の方が好みですが、主演の良さもあって、楽しめました。

演出家の Michael Mayer をはじめとするする Broadway で活躍しているチームによるプロダクションということで、 音楽のスタイル、特に唱法以外はミュージカルを思わせるもの。 それでもオペラにしたのは、 音楽的に明朗なミュージカルよりも不協和音多目のオペラの方が、 音楽のスタイルとして心理サスペンスに向いていた、ということでしょうか。 Nico Muhly の音楽は、歌いやすいリズムやメロディの歌を付けるわけではないものの、 Minimal Music の影響を強く感じる反復フレーズをあちこちに散りばめるような post-Minimal な作風で、取っつきやすいものでした。

原作の小説を読んでおらず、Hitchcock の映画も観ておらず、小説や映画との違いはわかりませんが、 オペラ化にあたり物語をわかりやすく整理したのか、 サスペンス的な面が薄れて、特に後半、オペラによくあるファム・ファタール物、 Marnie を巡るメロドラマっぽく感じてしまう事も少なからずありました。

演出面で少々気になったのが、 Marnie 役を mezzosoprano 歌手 (Isabel Leonard) に加えて churus 4人の5人1役としていたこと。 複数人1役というのはマイム劇などでよく使われますが [関連する鑑賞メモ]、 mezzosoprano と chorus のヒエラルキーが明確過ぎて、単なる影のように感じられてしまいました。 歌の役割も入れ替わるくらいのことがあるとスリリングになったのではないかと思いつつも、 そんなことをしたらオペラの約束事から外れ過ぎになるのかもしれないと思ったりもしました。

主役 Marnie を演じた mezzosoprano の Isabel Leonard は、 ファッションモデルとまではいかないもののハリウッド映画女優を思わせるオペラ歌手らしからぬ体型 と美貌で、 ミッドセンチュリー・モダンなハイファッションのデザインに基づく衣装を早替えで変えていくのに目を奪われました。 衣装替え15回という回数、一回1分以下という早さも含めて、実はこのオペラの一番の見所かもしれません。 初演は English National Opera ですが、Metropolitan Opera による委嘱で、 Metropolitan Opera でのキャストがオリジナルとなるとのこと。 そういう点でも Isabel Leonard のために作られたようなオペラでした。

2016/17シーズンの L'Amour de Loin [鑑賞メモ]、 2017/18シーズンの The Exterminating Angel [鑑賞メモ]、 そして、この Marnie と、 ここ3年、Met Opera live in HD は新作もしくはそれに近いオペラをプログラムの中に1本、必ずように入れてきています。 有名な古典的作品と比べて集客は厳しそうですが、Met Opera live in HD のプログラムの中でも楽しみな一本です。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

ちなみに、Isabel Leonard が主演する次の Met Opera live in HD は、 Francis Poulenc の Dialogues des Carmélites。 1957年初演と20世紀半ばに作られたオペラ作品ですが、1977年の John Dexter のプロダクションのリバイバル上演とのことです。 ということで、これも観てみたいものです。

しかし、川崎のショッピングモールにあるシネマコンプレックスは、オペラとかバレエを観るような落ち着いた雰囲気じゃないよなー、と。 今回は日曜に観たので近場を選びましたが、土曜だったら場所も選びたいものです。うむ。

[3713] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu Jan 17 0:02:04 2019

去年の展覧会・公演等 Top 10 の番外特選に イベントシネマかストリーミングで観たバレエかオペラを選ぼうかと振り返っていて、 去年の3月にストリーミングで観て気に入っていたのに、 年度末繁忙期のために鑑賞メモを書かず仕舞いだったものがあったことに気づきました。 既にストリーミングは終わってしまっていますが、 書きかけの原稿が残っていたので、 当時の関連ツイートも参考に、鑑賞メモを作っておきました。 というわけで、ここにも振っておきます。

Nasjonalballetten [The Norwegian National Ballet]
Enregistré à The Norwegian National Opera & Ballet, 22 septembre 2017.
Production: Bel Air Media; Réalisation: Tommy Pascal
Ballet d'après la pièce de Henrik Ibsen
Création et mise en scène: Marit Moum Aune; Choréographie: Cina Espejord; Musique: Nils Petter Molvær; Scénographie: Even Børsum; Costumes: Ingrid Nylander; Lumières: Kristin Bredal; Vidéos: Odd Reinhart Nicolaysen; Voix off: Håkon Ramstad
Solistes: Andreas Heise (Oswald / Le Capitaine Alving, père d'Oswald), Kristoffer Ask Haglund (Oswald enfant), Camilla Spidsøe (Mrs. Alving, mère d'Oswald), Sonia Vinograd (Mrs. Alving jeune), Ole Willy Falkhaugen (Le Pasteur Manders), Philip Currell (Le Jeune Pasteur Manders) Grete Sofie Borud Nybakken (Regine, one jeune fille), Erle Østraat (Regine enfant), Yoshifumi Inao (Le Charpentier Engstrand, beau-père de Regine)
Danceurs: Ballet national de Norvège Ecole du Ballet national de Norvège
Musicien: Nils Petter Molvær, Jan Bang.
Première: 2014.
URL: https://culturebox.francetvinfo.fr/danse/danse-contemporaine/ibsen-s-ghost-par-le-ballet-national-de-norvege-262845
Nasjonalballetten [The Norwegian National Ballet]
Enregistré à The Norwegian National Opera & Ballet, 27 février 2018.
Production: Bel Air Media; Réalisation: Tommy Pascal
Mise en scène et choréographie: Marit Moum Aune; Assistant: Christopher Kettner; Choréographie de group: Kaloyan Boyadjiev. Cast original et co-créateurs: Grete Sofie Borud Nybakken, Eugenie Skilnand, Samantha Lynch, Klara Mårtensson, Silas Henriksen, Philip Currell, Shane Urton, Kristian Alm
Musique: Nils Petter Molvær, Décors: Even Børsum, Costumes: Ingrid Nylander, Lumières: Kristin Bredal.
Grete Sofie Borud Nybakken (Hedda Gabler), Silas Henriksen (Eilert Løvborg), Philip Currell (Jørgen Tesman), Eugenie Skilnand (Thea Elvsted), Shane Urton (Assessor Brack), Samantha Lynch (Tante Julie), Klara Mårtensson (Diana), Kristian Alm (Général Galber, Le père d'Hedda), Erle Østraat (Hedda Gabler enfants), Helle Flood (Thea Elvsted enfants).
Danceurs: The Norwegian National Ballet, The Norwegian National Ballet School.
Première: 2017.
URL: https://culturebox.francetvinfo.fr/danse/hedda-gabler-par-le-ballet-national-de-norvege-269103

Henrik Ibsen 戯曲 Ghost 『幽霊』と Hedda Gabler 『ヘッダ・ガブラー』を Nasjonalballetten [The Norwegian National Ballet, ノルウェー国立バレエ] がバレエ化したものを France.tv Culturebox がストリーミングしたので、観ることができました。 演出はいずれも演劇の演出家の Marit Moum Aune で、初めて手がけた Ghosts では別に振付家を付けていますが、 続く Hedda Gabler では Marit Moum Aune 自身が振付ています。 どちらも、抽象化された象徴的な舞台を使ったナラティブなダンスで、 バレエというより身体表現に重きを置き象徴的な表現を多用する現代的な演出の演劇を見ているよう。 そこがかなり好みの舞台でした。

Ghosts の前半は登場人物二人の会話を ロマンチックではなく表現主義的な Pas de deux というかペアのダンスで描き、 後半になると「幽霊」にもダンサーを割り当て舞台上の位置配置や映像も交えて描くようでした。 Hedda Gabler は最近上演をよく見ている戯曲ということもあり、 セリフが無いのに、まるでセリフが聞こえてくるよう。 逆に、群舞とかもあるのですが、あまりダンスが頭に入ってきませんでした。 そのせいか、Ivo van Hove 演出の演劇 [観賞メモ] にも近いものを感じました。

このバレエをストリーミングで観てみようと思った理由の一つは、Nils Petter Molvær が音楽を手がけているということ。 エフェクト深めの trumpet の漂うような音色と電子音からなる音楽は、 Hedda Gabler はもちろん、 特に Ghosts の雰囲気に合っていました。 ヨーロッパのバレエ団らしく、録音を使うのではなく、舞台の袖で Molvær がライブで演奏していたのも、良いです。

このような現代的な作風のバレエは、来日公演や映画館での上映の敷居は高そうですが、 DVD/BD化や音楽のCD化を期待しています。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

これを書き上げていて、 Ghosts は去年11月に上海公演があったことに気付いてしまいました。 この公演に限らず、コンテンポラリーなダンスやサーカスの公演は、中国で公演があっても日本までは来ないことが多くなってしまっています。 クラシカルな定番の演目やゴージャスな演出のバレエであれば日本でもそれなりに人気があるのでしょうが、 新作のコンテンポラリーなバレエとなると、日本には呼べるだけの金も客も無いのでしょう。 しかし、映画館への配給も始めたようなので、 来日公演が無理でも、せめてイベントシネマ上映が実現したら、と思ってしまいます。

[3712] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Jan 15 21:46:08 2019

日曜は、土曜とうってかわって晴れて日差しの暖かい一日。午後に砧公園へ行って、この展覧会を観てきました。

Bruno Munari: Quello delle Macchine Inutili
『ブルーノ・ムナーリ ― 役に立たない機械をつくった男』
世田谷美術館
2018/11/17-2019/1/27 (月休;12/24,1/14開;12/25,12/29-1/3,1/15休), 10:00-18:00.

イタリア・ミラノを拠点に、戦間期に未来派の一人として活動を始め、戦後、美術作家としてだけでなく、デザイナ、絵本作家としても活動した Bruno Munari の回顧展です。 戦間期モダニズムが自分の好みということもあるかもしれませんが、 このようなキャリアの作家の場合、戦間期に創造性のピークがあって戦後はその延長と感じられてしまうことも少なくありません。 しかし、Munari の場合は圧倒的に戦後の作品の方が面白く感じました。

1948年設立の具体芸術運動 Movimento Arte Concreta に参加していた頃の 絵画の地と図の関係、さらにはキャンパスと壁の関係すら反転させるような “Negativo Positivo” 「陰と陽」シリーズや、 ページ内の切り抜きや半透明の紙のページを使って図像のレイヤの面白さを生かした絵本など、 マスターピースを思わせるものがありました。

未来派時代のキネティック・アートというかモビール様の作品 “Macchine inutili” 「役に立たない機械」よりも、 その戦後の展開とも言える “Travel Sculpture” 「旅行のための彫刻」のような作品の方が興味深く思いました。 また、スライドにプラスチックの小片を挟み込み偏光を使ったスライドプロジェクタで投影する “Polarised Projection” 「偏光の映写」や、 製品化直後のPPC (Plain Paper Copier) 複写機を使った “Xerografia Originale” 「オリジナルのゼログラフィア」など、 メディア・アート的な世界にも踏み込んでいたことにも気付かされました。

余談ですが、この展覧会のタイトルは3年前の 『スペインの彫刻家 フリオ・ゴンザレス——ピカソに鉄彫刻を教えた男』 [鑑賞メモ] を連想させます。 同じ学芸員が担当した展覧会だったりするのでしょうか。

『アフリカ現代美術コレクションのすべて』
All of the African Contemporary Art Collectio
世田谷美術館
2018/11/3-2019/4/7 (月休;12/24,1/14,2/11開;12/25,12/29-1/3,1/15,2/12休), 10:00-18:00.
Saka Acquaye, Anapa, Sokari Douglas Camp, Moustapha Dimé, El Anatsui, Ablade Glover, Abdoulaye Konaté, Issa Samb, Pascale Marthine Tayou.

世田谷美術館にコレクションされているアフリカ現代美術の作品をお披露目するコレクション展。 El Anatsui [鑑賞メモ] をはじめ アフリカの現代美術を観る機会はそれなりにありましたが、 そもそも、世田谷美術館にこんなコレクションがあったということが驚きでした。 1989年の Saka Acquaye の個展、1995年の展覧会『インサイド・ストーリー 同時代のアフリカ美術』をきっかけに収蔵したとのこと。

世界的な現代美術ブームとなる2000年代以前、1980年代末から1990年代半ばにかけての作品で、 コンセプチャルなインスタレーションというより、平面もしくは立体の造形の面白さへのウェイトが まだ重かった時代の作品に感じられましたが、 それはそれで味わい深いものがありました。 『インサイド・ストーリー』展で展示された床屋の看板や服屋のマネキンとかのストリート・アートもありました。 展覧会を一過性のイベントとせずにコレクションしておくことの重要性を実感させる展覧会でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

しかし、Bruno Munari の人気を見くびっていました。 子連れも多く、会場は混雑していました。 もちろん、美術館併設のレストランやカフェも混雑。 13時半頃でしたが、レストランのランチは既に終了していて、ランチ難民になりかけてしまいました。 砧公園も美術館併設のレストランやカフェが使えないと、かなり辛いものがありますね。うむ。

[3711] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 14 18:48:36 2019

この週末の土曜は時折、雨や雪がぱらつく寒い一日。そんな中、午後に横浜のみなとみらいから山下町にかけて、3つの展覧会を観てきました。

Changing and Unchanging Things: Noguchi and Hasegawa in Postwar Japan
横浜美術館
2019/01/12-2019/03/24 (木休;3/21開;3/22休), 10:00-18:00 (3/2 -20:30).

戦後、アメリカと日本を拠点に活動した日系アメリカ人の彫刻家 イサム・ノグチ と、 イサム・ノグチと1950年に出会い、短いながらも影響を与え合った日本人美術家 長谷川 三郎 の二人、主に1950年前後の10年に焦点を当てた展覧会です。 書簡や写真などの交友の記録を用いる展示ではなく、主に1950年代の2人の作品からなる展示から影響を浮かび上がらせるような展示でした。

日本趣味がかった Hans Arp のようなイサム・ノグチの作品はそれなりに観る機会がありましたが、 長谷川 三郎 はほとんどノーチェックだったので、むしろそちらの作品を興味深く観ることができました。 特に第二室の1950年代前半の抽象コンポジションな墨拓刷の屏風や掛軸が、大変に気に入りました。 長谷川については戦間期のアヴァンギャルドな作風の作品も展示されていましたが、 写真シリーズ『郷土誌』 (1939) が新即物主義的な新興写真だったのに興味を引かれました。

Yokohama Museum of Art Collection: Rhythm, Resonance, Noise
横浜美術館
2019/01/04-2019/03/24 (木休;3/21開;3/22休), 10:00-18:00 (3/2 -20:30).

横浜美術館のコレクション展も、企画展に合わせたかのように、抽象度の高い作品を押し出したテーマの展示になっていました。 第一室に、抽象絵画の先駆ということで、20世紀初頭の Avant-Garde の絵画・彫刻や写真が展示さえていました。 Александр Родченко [Alexander Rodchenko] なども良いのですが、日本の新興写真を含む写真が楽しめました。 『『光画』と新興写真 モダニズムの日本』展 [鑑賞メモ] ではあまり印象に残らなかったけれども 堀 不佐夫 は良いな、とか、 後に Magnum Photos で活躍する Werner Bischof も Avant-Garde 風味のヌードを撮ったりしてたのか、とか、発見もありました。 さすが、コレクションの写真展示室を持つだけはあります。 今回は第一室で写真を展示していたので、写真展示室では写真以外の作品を展示していました。

5 Rooms II – The truth is in the air
神奈川県民ホールギャラリー
2018/12/17-2019/01/19 (12/30-1/4休), 10:00-18:00.
和田 裕美子 [Yumiko WADA], 橋本 雅也 [Masaya HASHIMOTO], 橋本 雅也 [Masaya HASHIMOTO], スコット・アレン [Scott ALLEN], 大西 康明 [Yasuaki ONISHI].

個性的というより少々癖の強い神奈川県民ホールギャラリーの空間を生かしたインスタレーションを中心とした現代美術のグループ展。 現代美術のインスタレーションというと、社会と関係するプロジェクトのワーク・イン・プログレスな展示も少なくないわけですが、 そういったものとは距離を置いた、造形に重心のある落ち着いた展示だったのは良かったです。 といっても、インスタレーションというより彫刻と言っていい作品が過半を占めてはいましたが。

スコット・アレンの “\Z\oom” は、照明を落としたギャラリーの床に光を散乱させたり乱反射させる様々な仕掛け (多分に手作り感がある) を並べ、 天井から床に向けて射た緑のレーザ光を移動させて、時々装置で散乱させて光らせるというインスタレーション。 散乱した時の光も美しいが、そうでない時のジリジリと動く緑の光点もユーモラスに感じられました。

吹き抜けの空間に大量のカラーの紙テープをぶち撒けたような 大西 康明 “tracing orbit” も力技だが印象に残りました。 力技といっても単純に紙テープをぶちまけるのではなく、紙テープがすぐに下に落ちないよう格子状に張ったテグスに紙テープをかけたりと、空間をコントロールしようという意図も感じられました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3710] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 13 1:10:30 2019

正月5日は映画でも観ようかと思ったのですが、観たい映画が思いつかなかったので、池袋西口へ。 年末年始にシネリーブル池袋で開催中の National Theatre Live アンコール上映を観ようかと。

『イェルマ』
from Young Vic, 2017-08-31, 19:00-20:30.
by Simon Stone after Federico García Lorca.
Direction: Simon Stone; Design: Lizzie Clachan; Costumes: Alice Babidge; Light: James Farncombe; Music & Sound: Stefan Gregory; Video: Jack Henry James.
Cast: Billie Piper (Her), Brendan Cowell (John), Maureen Beattie (Helen), John Macmillan (Victor), Thalissa Teixeira (Des), Charlotte Randle (Mary).
First Performance: 26 July 2016, Young Vig.
上映: シネ・リーブル池袋, 2019-01-05 12:05-13:30 JST.

ほとんど予備知識無く、正月に1本何か観ようということで観た National Theatre Live の1本。 演出の Simon Stone はオーストラリア出身ですが、近年は欧州で活動していて、 最近は Ivo van Hove の Toneelgroep Amsterdam で3作演出しているので、 Hedda Gabler [鑑賞メモ] のような スタイリッシュでフィジカルな演出を少々期待していました。 しかし、主役の Billie Piper のリアリズム的な演技もあってか、かなりストレートな演劇に感じられました。

スペイン内戦直前の1934年に書かれ初演された戯曲に基づくものですが、 舞台も現代のロンドンに置き換え、セリフも書き換え、不妊に悩む現代の夫婦の物語、 不妊治療に非協力的な仕事中毒気味の夫とすれ違い、匿名ながらブログに妊活を書く妻が追い詰められ、家庭が崩壊し、無理心中という悲劇的な結末になります。 この図式自体は若干ステロタイプかなと思いましたが、Billie Piper の熱演に見入ってしまいました。 ガラスかアクリルの透明な板で周囲を仕切られた長方形の舞台を四方から観客が囲むようになっていて、 観客がガラスケースの中の人を観察しているようにも見えるセッティングが、興味深く思いました。 ところで、話は頻繁に月日が飛ぶのですが、National Theatre Live の映像では字幕を挟んで編集していました。 実際の舞台ではどう転換していたのか、少々気になってしまいました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

後日の新年会で話題が出て、Bohemian Rapsody で世間の流行に乗っておくのもありだったかな、とか、 The Slits と L7 のドキュメンタリ映画の上映があったのか、と。 やはり、普段からちゃんと情報蒐集してないとダメですね。うむ。

[3709] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Jan 9 22:14:18 2019

正月4日の晩は、水戸から戻った足で御徒町へ直行。この展覧会を観てきました。

Film Posters – The Birth of Modern City Landscape, from NFAJ's Kyohei Misono Collection
アーツ千代田3331 1階ラウンジ ほか
2018/12/12-01/16 (12/29-1/3休), 10:00-19:00.

国立映画アーカイブ (NFAJ) による、 戦前1910-30年代日本の映画ポスターの展覧会です。 国立映画アーカイブは約59,000点のポスターを所蔵しているとのことでですが、 そのうちの24点の複製を用いた展覧会です。 所蔵ポスターのデジタル化を進めているとのこと。 デジタル化されたポスターを印刷してたものが、 飲食も可能な1階ラウンジや階段踊場スター掲示スペースを使って、展示されていました。 オリジナルの紙の質感が失われつるっとはしてますが、 もともと複製されることが前提で作られたポスターですし、 スキャナやプリンタの性能向上はそのイメージを楽しむには十分なレベルです。 他の企画と連動していなかったこともあると思いますが、 むしろ、展示されていた24枚の選択の方向性がはっきり感じられな買ったことの方が気になりました。

ポスターよりも、同時に展示されていた、震災後の復興時に建てられた モダンなデザインの映画館 (バラック建築の映画館を含む) の写真資料 (こちらもデジタル化された写真をディスプレイでスライドショーしていた) の方が興味深く見れました。 吉川 清作 設計で内装や緞帳を 村山 和義 が手がけたことで有名な 葵館 だけでなく、 浅草や新宿の主要な映画館の様子も伺えるもので、これだけまとまって観るのは初めて。 現在のシネコンはもちろん、自分が体験してきた20世紀後半の映画館とも異なり、 無声映画時代の当時のはスクリーン前にオーケストラピットがあり、 スクリーン前は長椅子 (背もたれも無い場合も多い) が並ぶ平土間席で、 後方や二階に一人ずつ背もたれや肘掛けが付く席が階段状に並ぶという、 歌劇場 (オペラハウス) をお手本にした作りだったことが伺えたのが、とても興味深く感じました。 浅草オペラや歌舞伎の劇場の転用だったり併用だったりするものも少なくなく、 映画館と劇場の分化が進んでいない時代だったのだな、と。

展示専用のギャラリーを会場とせずデジタル複製を用いた小規模な展示ということ、あまり期待していなかったのですが、意外と楽しめました。 今回は、国立映画アーカイブ開館記念ということで、特に他の展覧会と連動したような企画ではありませんでした。 しかし、戦間期日本モダン文化の展覧会が開催されているときに、その企画に合わせた選択で、 会場の美術館の併設カフェ・レストランや売店などのスペースを使って、 このようなデジタル複製のポスターや写真を展示するというのは、良さそうです。 そんなデジタル複製の活用の可能性を感じさせる展覧会でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

4日の水戸への往路は空いていたのですが、復路は正月帰省Uターンラッシュで満席。 すぐの特急に乗れずに駅で1時間弱待つ羽目に。 仕事始めの日だし少しは空いているかとの期待は甘かったでしょうか。 仕事を休みにして年末年始の連休を延ばした方も多かったのでしょうか。

[3708] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 7 22:19:51 2019

正月4日は休暇取得。午前のうちに家を出て水戸へ。この展覧会を観てきました。

中谷 芙二子
Fujiko Nakaya: Resistance Of Fog
水戸芸術館現代美術ギャラリー
2018/10/27-2019/01/20 (月休;12/24,1/14開;12/25,12/27-1/3,1/15休), 9:30-18:00.

1970年大阪の日本万国博覧会のペプシ館で E.A.T. (Experiments in Art and Technology) [鑑賞メモ] の活動の一環として水を使った人工霧によるインスタレーション「霧の彫刻」を手掛けて以来、 人工霧のインスタレーションを作り続けている 中谷 芙二子 [鑑賞メモ] の1970年代以降の活動を回顧する展覧会です。 霧のインスタレーションは、 広場の噴水周辺を使った野外のインスタレーションと、 ギャラリー第4室を使った屋内のインスタレーションの2箇所。 インスタレーション作品やプロジェクト的な活動が多いこともあり、過去の活動記録の資料展示が中心となるのは仕方ないでしょうか。

ギャラリー第4室のインスタレーション《フーガ》(「崩壊」シリーズより)は、霧とビデオプロジェクションを組み合わせた上映時間約6分の作品です。 ギャラリー奥三分の一ほどの所に半透明の布を下げ、その奥から飛ぶ鳥たちのシルエットを投影しつつ、布の向こう側で霧を発生させます。 布の隙間から漏れる霧にうっすら包まれつつ、まるで雲の上を飛ぶ鳥を太陽に向かって逆光で見ているよう。 最後に布が取り払らわれ、鳥のシルエットが消え、濃い霧が迫ってくると、そんな飛ぶ鳥たちを追い越して、雲に飛び込んだようにも。 再現的な意味合いのものを除けばビデオプロジェクションと霧を組み合わせたインスタレーションは初めてでしたが、 淡々としつつもダイナミックな展開を体験できました。 一方の屋外のインスタレーションは、普段は噴水の所で霧を発生させていたので、噴水のバリエーションにも感じられてしまいました。 ただし、17時以降は 逢坂 卓郎 [鑑賞メモ] によるライトアップをやっているとのことだったので、 それを観ていたら、また印象も変わったかもしれません。

資料展示は、最初に手かげたペプシ館「霧の彫刻」プロジェクトに関するものは、 水を実際の霧と同じ粒子サイズにするノズルの開発や、ペプシ館の霧システムの配置や制御に関する資料もあり、興味深く楽しめました。 昔は 父 宇吉郎 との関係を語ることはあまり無かったような気がするのですが、 この展示では、この霧のプロジェクトをE.T.A.に任された理由の一つとして、父の関係で研究者との人脈があったことが挙げられていました。 また、霧のノズルを開発したのは Mee 社で その技術は MeeFog というシステムとして実用されていることを知ったり。 しかし、霧のインスタレーションの様子を捉えた映像を上映したものを見ても、実際のインスタレーションの印象で霞んでしまいます。

インターネット以前のまだ国際データ通信が高価で一般的ではなかった1980年代初頭に、 テレックスを使って理想主義的な意見交換したプロジェクト『情報彫刻 ユートピアQ&A』や、 1980年代から1990年代前半に原宿にあった『ビデオギャラリーSCAN』 (実はリアルタイムで知っている) の活動記録なども展示もありました。 当時の技術レベルからすれば先駆的な試みといえばそうですが、その時代の技術への依存度の高さに、少々、時代の徒花的なものを感じてしまいました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

ライトアップのことを知っていれば、午後ゆっくりめに水戸に着くように行ったのに。 ま、事前の調査不足でしたね。仕方ありません。

[3707] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Fri Jan 4 0:21:08 2019

正月3日は美術館へ初詣。今年も昼過ぎに恵比寿の東京都写真美術館へ詣でてきました。

Contemporary Japanese Photography vol. 15: Things So Faint But Real
東京都写真美術館 2階展示室
2018/12/01-2019/01/27 (月休;月祝開,翌火休;12/29-1/1休) 10:00-18:00 (木金-20:00;1/2,3 11:00-18:00).
森 栄喜 [Mori Eiki], ミヤギ フトシ [Miyagi Futoshi], 細倉 真弓 [Hosokura Mayumi], 石野 郁和 [Ishino Fumi], 河合 智子 [Kawai Tomoko]

アニュアルで開催されている新進若手の作家を紹介するグループ展です。 性的なマイノリティのアイデンティティなどをテーマにした 形式的な作風というよりもスナップショット風の私的な写真に一手加えたような作風の写真が多く、 正直に言えば好みの展覧会ではありませんでした。 しかし、ミヤギフトシの展示などを観いて、 例えば Bill Viola のような高精細のくっきりした絵画的な動画でなくとも [観賞メモ]、 むしろ「私写真」に近い暗く荒れ画面でも、「液晶絵画」 [観賞メモ] は有り得ると気付けたのは、収穫でした。

A 45 Year Odyssey 1973-2018 Retrospective
『マイケル・ケンナ写真展』
東京都写真美術館 地階展示室
2018/12/01-2019/01/27 (月休;月祝開,翌火休;12/29-1/1休) 10:00-18:00 (木金-20:00;1/2,3 11:00-18:00).

イギリス出身で現在は米国西海岸シアトルを拠点に活動する写真家 Michael Kenna の 1970年代来の写真を振り返る展覧会です。 人物を写し込まない白黒の風景写真がメインの作風です。 風景写真といっても、 「サイトグラフィックス」 [観賞メモ] 的な写真に 多く見られるパンフォーカスでくっきり描くようなものではなく、 霧なども使ったソフトで奥行きと間合いのある画面です。 抽象的な絵画を描くような画面の切り取り方や、 カメラを地面近くに据えての遠近短縮法的な視点使いなど、モダンな画面作りながら、 そのソフトさがピクトリアル的に感じる時もあったのが、面白かったです。 1980年代末からアスペクト比1:1の正方形写真がメインになるのですが、 静謐で抽象的な作風といい、レコード/CDのジャケットにうってつけです。 コマーシャルな仕事もしている写真家ですが、自動車の広告が多かったのは意外でした。 ナチス強制収用所を撮った Imposible to Forget: The Nazi Camps Fifty Years After 1989-2000 でもその作風は変わりませんが、 日本で撮影している女性のヌード写真シリーズ RAFU: Japanese Nude Studies 2008-2018 は それまでの風景写真とは違った作風への試行錯誤もあるのでしょうか。 あと、落ち着いた雰囲気の作風の写真なのに、会場に掲示されていた写真家自身による挨拶文では撮影の過酷さが語られていて、そのギャップが少々面白く思われました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

東京都写真美術館は毎年 「トップのお正月」と題して2日から開館、イベントを開催しています。 「とっぷ雅楽」も毎年恒例。 今年も鳳笙、篳篥、龍笛の編成で、定番の平調越天楽をはじめ、 三鼓を使っての高麗楽や Gospel “Amazing Grace” の雅楽編曲などの演奏を楽しめました。 (左の写真は鳳笙と三鼓です。)

[3706] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Jan 2 23:36:43 2019

2018年に歴史の塵捨場 (Dustbin Of History)に 鑑賞メモを残した展覧会やダンス演劇等の公演の中から選んだ10選。 音楽関連 (レコード/ライブ) は別に選んでいます: Records Top Ten 2018

第一位
Back To Back Theatre: Small Metal Objects (演劇)
池袋西口公園 2018/10/28.
[鑑賞メモ]
第二位
Janet Cardiff and George Bures Miller (美術展)
金沢21世紀美術館, 2017/11/25-2018/03/11.
[鑑賞メモ]
第三位
Claude Régy: Rêve et folie [Dream and Derangement] (演劇)
静岡県舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」, 2018/04/28.
[鑑賞メモ]
第四位
Daniel Jeanneteau: La ménagerie de verre (演劇)
東京芸術劇場 プレイハウス, 2018/10/28.
[鑑賞メモ]
第五位
内藤 礼 『明るい地上には あなたの姿が見える』 (美術展)
水戸芸術館現代美術ギャラリー, 2018/07/28-2018/10/08.
[鑑賞メモ]
第六位
Sasha Waltz & Guests / Toshio Hosokawa: Matsukaze (オペラ)
新国立劇場オペラパレス, 2018/02/17.
[鑑賞メモ]
第七位
Stereoptik: Dark Circus (ライブパフォーマンス)
東京芸術劇場シアターウェスト, 2018/10/28.
[鑑賞メモ]
第八位
『フランス絵本の世界 — 鹿島茂コレクション』 (デザイン展)
東京都庭園美術館 新館・本館書庫, 2018/03/21-2018/06/12.
[鑑賞メモ]
第九位
カンパニーデラシネラ 『椿姫』 (フィジカルシアター)
世田谷パブリックシアター, 2018/03/17.
[鑑賞メモ]
第十位
Mathurin Bolze / Cie MBTA: La Marche / Ali (サーカス)
KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ, 2018/09/22.
[鑑賞メモ]
次点
MeCA | Media Culture in Asia: A Transnational Platform - Art Exhibition “self-reflexivity: Thinking Media and Digital Articulations” (美術展)
表参道ヒルズ スペース オー + ラフォーレミュージアム原宿, 2018/02/09-2018/02/18.
[鑑賞メモ]
番外特選
Nasjonalballetten [The Norwegian National Ballet]: Ghosts & Hedda Gabler @ Den Norsk Opera & Ballett [The Norwegian National Opera & Ballet] (バレエ / streaming)
France.tv Culturebox, 2018.
[観賞メモ]

[リストのパーマリンク]

[3705] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Jan 2 23:35:08 2019

2018年に入手した最近数年の新録リリースの中から選んだ10枚+α。 展覧会・ダンス演劇等の公演の10選もあります: 2018年公演・展覧会等 Top 10

#1
Susanna
Go Dig My Grave
(SusannaSonata, SONATACD040, CD, 2018)
#2
Joost Lijbaart, Sanne Rambags, Bram Stadhouders
Under The Surface
(Challenge, CR73438, CD, 2017)
#3
Nataša Mirković, Michel Godard, Jarrod Cagwin
En El Amor
(Carpe Diem, CD-16313, CD, 2017)
#4
Brot & Sterne
Tales of Herbst
(Traumton, 4643, CD, 2017)
#5
Kathrin Pechlof Trio
Toward The Unknown
(Pirouet, PIT3104, CD, 2018)
#6
Elina Duni
Partir
(ECM, ECM 2587, 2018, CD)
#7
Laura Veirs
The Lookout
(Raven Marching Band, RMB012, CD, 2018)
#8
Burnt Friedman & Mohammad Reza Mortazavi
Yek
(Nonplace, 44, DL, 2017)
#9
Gurlz
Run Boy, Run
(Grappa, GRCD4571, CD, 2018)
#10
Toto Bona Lokua
Bondeko
(No Format, NOF39, CD, 2017)
次点
Sara Serpa, Ingrid Laubrock, Erik Friedlander
Close Up
(Clean Feed, CF467CD, CD, 2018)
番外特選
Margit Myhr & Erlend Apneseth
横濱エアジン
2018/03/10, 20:00-21:00.
[鑑賞メモ]

[リストのパーマリンク]

[3704] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Jan 2 23:30:30 2019

あけましておめでとうございます。

このサイトや Twitter を頼りに去年一年を振り返りつつ、 2018年の レコード Top 10展覧会・公演等 Top 10 を選びました。 すっかり世の中の最新動向とか流行といったものに疎くなってしまい、読者の方の参考にどれだけなるのか不明ですが、 この一年間の趣味生活の備忘と反省をしておくのも悪くないかな、と。

仕事が忙く時間が取れないという以上に、このサイトを始めた20代の頃と比べ体力気力の衰えは否めず、 レコード/CDのレビューは完全に途絶えてしまいましたし、展覧会・公演等の観賞メモも遅れがちで、 このサイトの更新もどこまで続けられるかという状況になってしまってます。 しかし、無理の無い範囲で、細々とでも趣味生活とこのサイトの更新が続けられたらと思っています。

こんなサイトではありますが、読んでくださっている皆さん、ありがとうございます。 今年もよろしくお願いします。

[3703] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Dec 26 23:46:40 2018

先の三連休は趣味生活的にはほとんど無為になってしまったのですが、 ちょっと気になった展覧会が会期末だったので、駆け込みで観てきました。

In Goude we trust!
Chanel Nexus Hall
2018/11/28-2018/12/25 (無休), 12:00-19:30

1980年代初頭に Island レーベル時代の Grace Jones のレコードジャケット等、 当時の New Wave 界隈の一連のビジュアルデザインによって注目を浴びるようになった フランス出身のデザイナー Jean-Paul Goude の回顧展です。 Chanel とは1990年代初頭から仕事をしてきているようで、そんな縁もあってか、銀座 Chanel ビルにあるホールが会場でした。

Goude というと 1980s Postmodernism [関連レビュー] のデザイナという印象が強すぎて、 その頃から有名でしたが、1990年代に入った頃には自分の視界の外。 1991年に Vanessa Paradis を起用しての Chanel の香水 COCO の広告 [YouTube] を作っていた事を、この展覧会で知る程です。 そんな感じでしたので、この展覧会も会期末になるまで気付いていませんでした。 デザイン史的な位置付けを示したり作風の変遷を描くようなものではなく、 セレクションも Chanel の広告の色合いも感じる展示でしたが、会場からして仕方ないでしょうか。 2015年の Chance Chanel とか、 1980sのようには尖ってないですが、最近もなかなか良いもの作っていたのだなあ、と、気付くことができました。

会期末に飛び込んでみた一番の理由は、会場内でのパフォーマンスの噂を耳にして、これは観てみたいと。 Chanel のジュエリー Fire のためにビデオ作家 Pierrick Sorin と2001年にコラボレーションして制作した椅子に座ると映った鏡上で手や頭に火が付いて見えるインスタレーションが展示されていたのですが、 そのインスタレーションを使ったパフォーマンスでした。 白いドレスを着たダンサーが、鏡の前の椅子に座って歌ったり、その周囲を滑るように移動しつつ出て歌い踊る手振りで踊るというパフォーマンスです。

この滑るようなステップは、 ロシアの民族舞踊団 Ансамбль «Березка» の «плывущий» шаг [“floating” step] (伝統的な民族舞踊ではなく舞踊団を創設した Надежда Надеждина の振付) のようですが、会場で間近に見ると、その速さは驚きでした。 胸にマフを下げてましたし、頭部のアクセサリはロシアの伝統的な扇状の髪飾り кокошник とそれに付ける鎖状の飾り рясна に着想したものでしょうか。 バレリーナを思わせる美貌と踊りと歌のスキルの上、交代できるだけの数を揃えていたようですので、 実際に Ансамбль «Берёзка» のダンサーたちを起用していたのかもしれません。 まるで帝国時代のロシアの踊子の亡霊を見ているかのような少しミステリアスで幻想的な感が面白いパフォーマンスでした。 移動が速くコースが予想付かない上、狭い会場に観客も多く、会場が暗く展示が光っているので、写真を撮るのがとても難しいパフォーマンスでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3702] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Dec 25 23:00:20 2018

15日土曜は秋田。 秋田入り直前まで吹雪いていたようで、金曜のAXT行フライトは条件付き運行でどうなるかと思いましたが、 土曜にはたまにぱらつく程度の天気になったので、市内中心部にある美術館を軽く巡ってみました。

秋田県立美術館 3Fギャラリー
2018/11/10-2019/01/07 (11/19休), 10:00-18:00 (12/31-1/2 10:00-15:00).
本郷 仁, 小牟禮 尊人

少し空いた時間に入った美術館でやっていた展覧会で、出展作家についての予備知識は無かったのですが、 秋田と富山ガラス造形研究所に縁のある2人のガラス造形作家の展覧会です。 ガラス工芸に近い文脈の作家のようですが、ガラスを素材とした器や照明のデザインの展覧会では無く、 ガラスをメインの素材とした立体作品やインスタレーションの美術作品の展覧会でした。 小牟禮 尊人 『ガラスのこだま』 のような作品にしても本郷 仁 『外のうちと、内のそと』にしても、 オブジェの色や形の面白さ美しさというより鑑賞者とのインタラクションを意識している所など現代美術的ですが、 コンセプチャルに過ぎずに、シンプルかつややトリッキーに造形による視覚や聴覚の面白さを体験させる、なかなか良い展覧会でした。

今年の6月に釧路芸術館で観た 八戸 耀生 『風に導かれ 僕は旅をする』 [鑑賞メモ] もそうでしたが、 移動の空き時間に入った地方の美術館で予備知識なしで観た展覧会が良いと、良い旅先での出会いがあったような気分になれます。

秋田県立美術館、秋田市立千秋美術館といった市内のアートスポットや商店街を繋ぐ artlineAR というアプリがあったので、 街歩きついでにやってみたのですが、単に作品中の動物が動き出したり、秋田犬が出てくるだけ。 そういう単純な親しみやすさもあってもいいかとは思いますが、行った場所の歴史的地理的なエピソードを知るフックのようなものもあればと思ってしまいました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

秋田で風邪をもらってきてしまったか、帰った翌日曜から風邪気味。 月曜晩から火曜にかけて発熱で臥せってしまいました。 発熱は38℃弱程度でインフルエンザという感じではありませんでしたが、こんなキツい風邪は久々です。 出張多くて年末進行綱渡りだったのが、風邪ひいて完全に破綻してしまいました。 以来、臥せっているか仕事してるかで、先週末の三連休も潰れてしまいました。 楽しみしていた呑み会もキャンセルせざるを得ず。しくしく。

[3701] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Dec 24 22:19:40 2018

12月9日日曜は、晩に横浜馬車道へ。このライブを観てきました。

Toivo Sõmer
横濱エアジン
2018/1209, 20:00-21:00.
Toivo Sõmer (kannel, lute, looper, vocals).

チター (zither) 族の伝統楽器 kannel や中世から近世にかけて用いられた弾弦楽器 lute を演奏するエストニアのミュージシャン Toivo Sõmer のソロでのライブを観てきました。 2017年に沿ボルガ地方のウドムルト (Удмурт) のミュージシャンとのプロジェクト AR-GOD で来日した時は見逃したので、初めて観ます。 彼自身の出身地であるエストニアを中心に、西はスウェーデン、東はウドムルドまで伝統的な民俗音楽を取り上げて、kannel や lute を弾き歌いました。 アンコール無しの約1時間のこぢんまりとしたライブでした。

kannel はフィンランドの kantele やロシア gusli にも似た楽器ですが、 昔ながらなアコスティックなものと、現代的なチューニング機構とピックアップを付けたエレクトリックアコースティックなものを使い分けていました。 また、lute もピックアップを付けたエレクトリックアコスティックなタイプ。 ギターアンプ Roland Jazz Chorus JC-120 を使い、アンプ付属の looper 機能で音を重ねていく時もありました。 しかし、そんな技法から想像されるようには electric な jazz や rock のイデオムは無く、 楽器のアコスティックで繊細な音を生かした、少し口に篭るような歌い方もフォーク的な演奏を楽しむことができました。

AR-GOD というプロジェクトもあるようにウドムルドの音楽も演奏しましたが、 これは、エストニアもウドムルドもフィン・ウゴル系の民族という関係があるから。 しかし、エストニアというかバルト地域やフィン・ウゴル系の民族の音楽に疎くて分解能が低いこともあると思いますが、 zither 族の楽器をかき鳴らしながらの歌い口など、ロシアの Сергей Старостин [Sergei Starostin] [鑑賞メモ] との共通点を感じました。 一方で、スウェーデンの音楽は lute を弾きながら歌ったのですが、 Ale Möller などの fiddle や mandola を使ったものとは少々違うように感じました。 むしろ、こういう音楽もあったのかという新鮮さがありました。 17世紀、エストニアがスウェーデン・バルト帝国領だったわけですが、その影響がエストニアに残っているということで、スウェーデンの音楽を取り上げていたようです。 エストニア最古のタルトゥ (Tartu) 大学はスウェーデン領時代に設立されたとのことで、 Sõmer はスウェーデン時代を好意的に見ているようでした。

このハコでは、今年3月にもノルウェーの Margit Myhr & Erlend Apneseth のライブを観ていますが [鑑賞メモ]、 こういう民俗音楽の色の濃いこぢんまりしたライブをするのにちょうどいい距離感で、良い雰囲気だな、と。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3700] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 23 22:51:01 2018

2週間前の話になりますが、12月8日土曜の午後は神保町から白金台へ移動。この展覧会を観てきました。

French Art Deco and inspiration from afar
東京都庭園美術館 本館・新館
2018/10/06-01/14 (第2,4水休,12/28-1/4休), 10:00-18:00 (11/23,24,30,12/1,7,8: 10:00-20:00).

2015年の『幻想絶佳 ― アール・デコと古典主義』展 [鑑賞メモ] に続く、 フランスにおけるアール・デコのイメージの着想元を探る展覧会第二弾。今回は絵エクソティシズム (異国趣味) というの観点から。 似たような観点の展覧会というと、『ようこそ日本へ:1920‐30年代のツーリズムとデザイン』 (東京国立近代美術館, 2016) が興味深く楽しめましたし、 [鑑賞メモ] 東京都庭園美術館は19世紀から戦間期にかけてのモダンなデザインの展覧会を得意としているので、期待していた展覧会でした。 そんな期待が大きすぎたか、少々物足りなく感じられてしまいました。

本館を会場とした前半は、モードや装飾におけるエクソティシズムを、戦間期だけでなく第一次世界大戦前夜の時期まで広く取って概観するよう。 新館を会場とした後半は、1セクションを L'Exposition Coloniale Internationale de Paris 1931 (1931年パリ植民地博覧会) に充て焦点を当てたような展覧会でした。 この植民地博覧会に関する展示を期待していたのですが、展覧会の様子がわかるような展示が薄かったのは残念。 「§4 異郷の再発見」に植民地の人々を描いた絵が多く出ていたのですが、 それらの多くが Musée des Années 30 (30年代美術館) のコレクションで、 1930年代という微妙な時期 (戦間期といっても狂乱の1920年代ではなく大恐慌後の不穏な時代) を テーマにした博物館があったのかと。 展示されていた物よりも、そんなことに興味が引かれてしまいました。

最後の展示室では関連プログラムとして、 この展覧会のために委嘱されたという Mounir Fatmi による映像作品 Human Factor (2018) が上映されていました。 映画 L'Inhumaine (Marcel L'Herbier (regie), 1924; 『人でなしの女』) [鑑賞メモ] を解体して、 1931年パリ植民地博覧会や当時のアール・デコに関するアーカイヴ資料をコラージュしたような映像でした。 しかし、そもそも元になった映画『人でなしの女』や1931年パリ植民地博覧会のアーカイブ資料といったものはなかなか観る機会が無い物ですし、 オリジナルをズタズタにした映像作品など不要とまでは言いませんが、まずは元の映画や資料をちゃんと上映して欲しかったです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

先週末日曜15日頃から風邪気味で、17日にはついに発熱して臥せってしまいました。 しかし、予定がぎっしりで休む事もほとんどできず、なかなか快復できずに現在に至っています。 このサイトを更新する体力的余裕がほとんどありません。うーむ。

[3699] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 16 19:31:44 2018

12月8日土曜は二週続けて朝から 神保町シアターの特集 『生誕百五年記念――清水宏と小津安二郎』へ。 今度は未見のこの映画を観てきました。

『風の中の子供』
1937 / 松竹大船 / 白黒 / 91min.
監督: 清水 宏. 原作: 坪田 譲治 (東京朝日新聞 連載).
河村 黎吉 (父親), 吉川 満子 (母親), 葉山 正雄 (善太), 爆弾 小僧 (三平), 坂本 武 (おぢさん), 岡村 文子 (おばさん), etc

あらすじ: 優秀な兄 善太 とガキ大将だが成績の悪い弟 三平。 父親は地元の会社の経営者だが、ある日、私文書偽造の容疑で会社を辞めさせられてしまう。 さらに父親は警察に拘留され、家財は差し押さえられてしまう。 そんな中、近所の子供達も、善太や三平と疎遠な態度をとるようになってしまう。 困窮した母親は、幼い三平を離れた街に住む親戚に預け、仕事を探すことにする。 預けられた先で、盥に乗って川に流される、河童に会いに行くと言って姿を眩まし、サーカスに入門する、と言った騒動を引き起こす。 持て余された三太は母親の元に帰される。 母親は、善太と二人で住み込みで働くと話を付けてきた病院へ、善太の代わりに三平を連れて行くが、三太では幼いと、断られてしまう。 母親は途方に暮れるが、そんなとき子供達が偶然、父親の無罪を証明できる日記を発見する。 父親は無罪放免となり、子供達にも以前のように遊び友達が戻ってきた。

児童文学を原作とした子供が主人公の「子供映画」ですが、 やはり 坪田 譲治 原作で2年後に公開された 清水 宏 『子供の四季』 (松竹大船, 1939) [鑑賞メモ] とかなり似た映画です。 兄弟は善太と三平で、善太、両親役、おじさんおばさん (祖父母役) が同じ俳優ですし。 大人の世界での社内政治の話と子供の世界の絡め方といい。 監督も同じ 清水 宏 で画面の作りやのんびりしたテンポの演出も似ていて、記憶が曖昧になる数年後には色々混同してしまいそうです。 しかし、この『風の中の子供』は、父がいなくなり、母子で苦労する場面があり、 いわゆる母子ものメロドラマ [関連する鑑賞メモ] という面を見せる時があるという所は違うでしょうか。 母子ものメロドラマといっても、ハッピーエンドで終わるというだけでなく、 野外ロケの開放的な画面の美しさ、子供中心のユーモアもあって、後味は良いです。 子役の良さもありますが、母子ものという面もあったせいが、そういった映画での母役にハマる 吉川 満子や、 河村 黎吉や坂本 武とかの大人の俳優陣も人情味が感じられて良い、ということにも気付かされた映画でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3698] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu Dec 13 23:06:46 2018

12月2日は晩に新宿三丁目へ。このライブを観てきました。

Elifantree
新宿 Pit Inn
2018/12/02, 20:00-21:30.
Anni Elif Egecioglu (vocals, synth), Pauli Lyytinen (saxophone, wind synth (Akai EWI), live effects, drum machine), Olavi Louhivuori (drums, percussions), Joonas Saikonen (sound).

フィンランドを拠点に活動する3人組 Elifantree。アルバムを聴いたことは無かったのですが、 Olavi Louhivuori が参加した、Augur Ensemble 等でも活動している女性歌手を フィーチャーしているという興味で、聴きに行ってみました。

以前に Sun Trio で聴いた時に近いバスドラのきいたリズムといい、 glitch 以前の synth の音といい、wind synth のソロといい、 テクスチャ的ではない時にドラマチックに歌い上げるような歌唱といい、 デジタル化以降の disco / synth pop の影響を受けた fusion を思わせる非常に80年代的なサウンドでした。 そんなビートに合わせてステップを踏みながら歌う Egecioglu を観ていると、おそらくそういうノリを狙っているのだろうとは思います。 しかし、自分のツボからは外れたか、それが面白いという程には感じられませんでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

12月4日は都心で仕事だったので、仕事帰りに Megumi Ogita Gallery ヘ。 中村 ケンゴ 『モダン・ラバーズ』、『JAPANS』 のオープニングパーティへ。 新作展の『モダン・ラバーズ』の方が楽しめたでしょうか。 しかし、引用も、マンガの描線とかではなく、19世紀後半の近代美術の花や静物では、描くだけでも大変そう。 静物アイテムを集めた『収蔵庫』がユーモアも感じられて良かったです。 友人の展覧会はコメントしづらいので、軽めに。

オープニングパーティでは久しぶりの人たちに会って、楽しかったのですが、二次会は失礼して、 6日の晩に改めて関内の BankART home 界隈で合流して呑むことができました。 Studio NYK の亡き後、新拠点の興味深い話を聞いたり。 中でも、BankART の拠点である関内周辺に約1,000人のアーティストが住んでいるという話にびっくり。 そんなに大きなアーティストのコミュニティが形成されているのか、と。 横浜市庁舎移転や新高島駅周辺の開発の中で、色々動きがあるんんですね。ほほう。

[3697] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Dec 12 23:08:08 2018

12月1日は神保町で映画を観た後に竹橋へ移動。 東京国立近代美術館と工芸館で開催中の展覧会を見てきました。

Ingegerd Råman
東京国立近代美術館 工芸館
2018/09/14-2018/12/09 (月休; 9/17,9/24,10/8開; 9/18,9/25,10/9休), 10:00-17:00.

日本・スウェーデン外交関係樹立150周年として開催された、スウェーデンのデザイナ、陶芸家 Ingegerd Råman の展覧会です。 この展覧会で初めて意識したのですが、 有田焼のティーセット 2016/ など、デザインショップなどで見覚えあるもの。 いかにも北欧モダンなシンプルなデザインの陶器やガラス器のデザインです。 IKEA とのコラボレーション Viktigt からスウェーデン王室用の食器までという振れ幅。 このようなデザインの場合、差別化できるのはほぼ質感のみ、というのも興味深く思いました。

Awakenings: Art in Society in Asia 1960s-1990s
東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
2018/10/10-2018/12/24 (月休; 12/24開), 10:00-17:00 (金土10:00-20:00).

あ 20世紀後半に展開した東アジア、東南アジアから南アジアにおける 近代美術から現代美術への展開を、国の枠組みを超えて辿った展覧会です。 残念ながら強く興味を引かれる作品には出会えませんでしたが、 美術史も各国史からグローバルヒストリーの時代へ、なんてことが頭に浮かぶ展覧会でした。 しかし、グローバルヒストリーのような歴史の描き方を目指したにしては、政治的なトピックを作品に紐付けるような構成は合っていないように感じました。 グローバルヒストリーったら、対象としたアジア世界における文化交渉史のようなものを 貿易額や美術市場の規模などの定量的な指標に着目して分析するといったアプローチの方がそれらしく思われますし、 そんな中から美術の展開を浮かび上がらせたらどうなるだろう、と思いました。

I Want To Go Somewhere Far Away
東京国立近代美術館 ギャラリー4
2018/10/06-2018/01/20 (月休; 10/8,12/24,1/14開; 10/9,12/25,12/28-1/1,1/15休), 10:00-17:00 (金土10:00-20:00).

1962年の歌謡曲「遠くへ行きたい」に着想したという、コレクションによる小企画です。 その企画意図は掴みかねましたが、 大辻 清司 [関連する鑑賞メモ] が 《うまく作ってやろうと思うので、八年たっても手をつけられないプラモデルの写真》 (1975) や 《熱気球がうまく昇らなくて、朝早くからがんばっている人》 (1975) のようなお茶目な写真を撮ってたことに気付けたことが、収穫でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3696] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Dec 10 22:45:56 2018

12月1日は朝から神保町へ。 神保町シアターの特集 『生誕百五年記念――清水宏と小津安二郎』が始まったので、 さっそく、この2本を観てきました。 どちらも観たことがある映画でしたが、やっぱり映画館の大画面で楽しみたいので。

『信子』
1940 / 松竹大船 / 白黒 / 91min.
監督: 清水 宏. 原作: 獅子 文六 (『主婦の友』連載).
高峰 三枝子 (小宮山 信子), 三浦 光子 (細川 穎子), 岡村 文子 (関口校長), 森川 まさみ (保坂教頭), 高松 栄子 (吉岡先生), 松原 操 (特別出演・松原先生), 奈良 真養 (細川 源十郎), 飯田 蝶子 (お佳さん), 三谷 幸子 (チァー子さん), 日守 新一 (泥棒), etc

あらすじ: 九州出身の 小宮山 信子 は新任の女学校教師として九州から上京し、 芸者の置屋をしている親戚のお佳さんの家に下宿する。 女学校では国語教師の予定が、体育教師をすることになる。 芸者見習い チャー子 が弁当を女学校に届けに行ったことをきっかけに、 置屋に下宿していることを女学校に知られ、置屋を出て舎監として寮に住み込むことになる。 女学校の先生たちは、女学校を支える有力者 細川 の娘 穎子 の勝手な振舞に手を焼きつつ、注意し叱ることができないでいた。 穎子の寮でのいたずらやピックニックでの失踪などに信子も振り回されるが、手加減せずに穎子と向かい合う。 寮の女学生たちも信子を慕うようになり、勝手な穎子に反感を示すようになる。 孤立した穎子はガス自殺を図るが、無事に救出される。 女学校の先生たちは不祥事として信子に責任を取らせようとするが、 穎子の父 細川は依怙贔屓せずに接した信子に感謝したのだった。

女性版『坊ちゃん』とも言われる 獅子 文六 の小説の映画化です。 少々単純で曲がった事が嫌いな 信子 の性格付は、確かに『坊ちゃん』と似ています。 穎子 との関係が物語の主軸になっていますが、 九州訛りが抜けずに生徒にも揶揄われ校長にも注意される話や、 穎子のいたずらと感違いして寮の侵入した泥棒を退治する話など、 細かいエピソードをユーモアも込めて丁寧に積み重ねていく所が楽しい映画です。 もちろん、戦前に撮られた女学校を舞台とした学園物ということで、戦前の女学校の様子を垣間見る興味深さもあります。

女学校は校舎はもちろん寮もとてもモダンな建物。 そんなモダンな室内をシンメトリーや幾何的な構図を強調するように撮影していますし、 女学生の体操する様子をローアングルや下から見上げるようなアングルで捉えたり、 そんな画面はまさに、新興写真 [鑑賞メモ] の映画版。 野外ロケでの画面も美しく、上方から俯瞰するような引いた画面と、ローアングル気味で女学生を捉えた画面を交える、 ピクニックで失踪した穎子さんを皆で探す場面など、この映画の中でも最も美しい場面でしょう。 この美しい画面に女学生たちの「えいこさーん」という呼び声が重なるのも良いです。 テンポ良く畳み掛けるように話を進めるのではなく、 少しゆったりとしたテンポで間合いを多く取って情感を描いていく所が、さすが 清水 宏 でしょうか。

『按摩と女』
1938 / 松竹大船 / 白黒 / 67min.
監督: 清水 宏. 原作: 獅子 文六 (『主婦の友』連載).
高峰 三枝子 (三沢 美千穂), 徳大寺 伸 (徳市), 日守 新一 (福市), 爆弾 小僧 (研一), 佐分利 信 (大村 真太郎), etc

あらすじ: 「めくら」の徳市は伊豆の温泉場を巡る按摩。 感が鋭く健脚な徳市は、旅歩きの「めあき」を追い抜くことを「道楽」としていた。 そんな 徳市 がやってきた山中の鄙びた温泉場に、馬車に揺られて、謎めいた東京の女 (三沢) や、男の子を連れた男 (大村) が乗り合わせてやってきた。 宿に着いた女は按摩を頼み、それ以来、徳市を指名するようになる。 徳市は女が何かに追われて怯えていると勘付いた。 そんな女が泊まった 鯨屋 で窃盗が発生する。 男が連れていた甥の 研一 と遊んであげた事がきっかけで、男と女は知り合い、男はお礼に女を夕食に誘う。 女が男が泊まる鉋屋を訪れたとき、今度は、鉋屋で窃盗が発生する。 男は少しずつ三沢に好意を抱きはじめ、宿泊の予定を伸ばす。 しかし、はぐらかし続ける女を諦め、帰ることを甥から女に告げさせ、甥と東京へ帰る。 男が帰ることを知って女は馬車乗り場に駆け付けるが、男が乗った既に馬車は山中を走り去っっていた。 再び温泉場で盗難が発生し、警察は温泉場を封鎖した。 女を犯人と疑っていた徳市は女を逃そうと手引きをした。 一時的に隠れた路地で温泉場で続発した窃盗の犯人と決めつけ徳市は女を諭すが、 それは徳市の勘違いだと女は言い、自分は妾であり執拗に追いかける旦那から逃げていると明かす。 そして、女もまた温泉場を去っていった。

温泉宿を舞台にそこに集まる温泉客、按摩や宿の人々を描いた映画で、 グランドホテル形式ともいえますが、モダンなホテルではなく、伊豆山中の温泉宿を舞台とすることで、 グランドホテル形式とは思えないような日本的な情緒を感じさせる映画です。 物語に謎の女を中心としたミステリ的な要素も無いわけじゃないですが、 むしろ、ゆったりとした間合いの多いテンポで、温泉場での些細なエピソードをユーモアも含め情緒豊かに描いていきます。 近世から変わらない日本家屋の温泉宿の雰囲気を生かす一方、 東京からハイキングに来ている大学生や女学生のグループ、そして、鉄道駅からのアクセスである馬車など、モダンな要素の取り入れ方も絶妙。

そしてそんな情緒ある温泉を背景に、 東京の女らしいモダンな洋装も温泉での浴衣姿も似合う 高峰 三枝子 を、美しくとらえていきます。 そして、彼女をめぐる二人の男、徳市と男。 しかし三角関係という程ではなく、徳市については、女は徳市へは風変わりと興味を持っているだけで、徳市の一方的な好意。 むしろ、男との関係は、お互い仄かな好意を抱いているのに、男は甥連れという引け目もあってか積極的になりきれず、 女も謎めいた答えでぐらかして、諦めに終わってしまうという。 そんな諦めに終わる仄かな好意の描写が、情緒的な温泉場の雰囲気に合っています。 夜の温泉場の橋で二人が「銀座なんかでばったり出会っても知らん顔でしょうね」「そんなことありませんわ。……でも、わたし、東京には帰らないかもしれませんの」なんていう いかにも松竹メロドラマにありそうな会話 [関連する鑑賞メモ] で好きです。 しかし、何と言っても、二人の別れの場面、 女へ帰りを告げに行かせた甥を馬車脇で待つ男、 そして駆け付けるも間に合わずに去っていく男が乗った馬車を目で追う女、 そして、雨の中、和傘をさして寂しげに川辺を歩く女という一連の場面をほとんどセリフを用いず描くところは、 この映画の中でも最も情緒的で美しくもメロドラマチック。 今まで観た戦前の日本映画の中で、最も美しい映画です。

というわけで、この2本で、戦前松竹時代の 高峰 三枝子 の美しさを堪能しました。 戦前の映画女優で最も好きなのは 桑野 通子 ですが [関連する鑑賞メモ]、 桑野はその勝気なキャラクタが良いのでスチルでは魅力が半減する一方、高峰はスチルで絵になる美しさ、という違いを感じます。 網羅的には観ていませんが、戦前の 高峰 三枝子 映画Top 5を選んでみました。

  1. 清水 宏 『按摩と女』 (松竹大船, 1938)
  2. 吉村 公三郎 『暖流』 (松竹大船, 1939) [鑑賞メモ]
  3. 大庭 秀雄 『花は僞らず』 (松竹大船, 1941) [鑑賞メモ]
  4. 清水 宏 『信子』 (松竹大船, 1940)
  5. 島津 保次郎 『浅草の灯』 (松竹大船, 1937) [鑑賞メモ]

『暖流』や『花は僞らず』のような、気品ある令嬢の役は 高峰 三枝子 のハマり役ですね。 令嬢役といえば 島津 保次郎 『婚約三羽烏』 (松竹大船, 1937) [鑑賞メモ] にも美しさが炸裂する場面がありますが、これは出番少ないということで選外。 令嬢役ではなく庶民的な町娘を演じた 大庭 秀雄 『むすめ』 (松竹大船, 1943) [鑑賞メモ] も意外な良さがありますが、 高峰 三枝子 の美しさを堪能する映画とは違います。 「歌う映画女優」という点では『純情二重唱』 (松竹大船, 1939) も重要な作品だとは思いますが、自分の好みからは外れるかしらん、と。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3695] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 9 22:50:27 2018

11月24日晩は、葉山から、横浜山下町へ移動。 神奈川県民ホール時代から「アート・コンプレックス」として [鑑賞メモ]、 KAAT神奈川芸術劇場になってからは「KAAT EXHIBITION」と題して [鑑賞メモ]、 アニュアルで開催されている展覧会とパフォーマンスのコラボレーション企画を観てきました。

Hiraki Sawa: Latent image revealed
KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ
2018/11/11-12/09 (会期中無休), 10:00-18:00.

さわ ひらき は2000年代以降に映像作品を中心にインスタレーション等の作品を発表してきている現代美術の文脈で活動する作家。 グループ展等で観たことはありますがその時の印象は薄く、 2014年の東京オペラシティギャラリーでの個展は観ておらず、こうして作品をまとめて観るのは初めてです。

実写を多用していますが、ピクシレーション (コマ撮り) や、実写を背景にキャラクタ的なオブジェ等をシュールレアリスティックにコラージュしたものを動画化したような所は、 アートアニメーションのテイスト濃い映像です。 ドローイングを使っているわけではないですが、William Kentridge にも近いセンスを感じました。

インスタレーションや立体作品という観点からすると、 アンティーク風小物に埋め込んだ作品など、映像の作風に合っているように感じました。 しかし、匿名的なブラックキューブな空間が会場ということもあるのか、 空間を使ったビデオインスタレーションは、そうする必然性をあまり感じられませんでした。 映像を全て観るようとすると約1時間を要するボリュームだったので、むしろホールでの上映という形でじっくり観た買った。

KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
2018/11/24, 19:00-20:00.
会場構成・映像: さわ ひらき; 演出・振付・演出: 島地 武保; 出演: Altneu (酒井 はな, 島地 武保)

展示会場 (中スタジオ) でパフォーマンスが行われている日もあったのですが、この公演は大スタジオで。 さすがインスタレーション作品も制作しているだけあって、映像を映す衝立も後方だけでなく、上手側で前方に折り曲が流というもの。 そんな作りの衝立に映像を投影するだけでなく、床面に投影したり、衝立からパーツが外れるようになっており、ダンサーにそれを持たせて投影させたり。 と、映像が単純に背景にならないような、かつ、正面性をずらして奥行きも生かした舞台使いになるよう、工夫が見られたのは良いと思いました。 衝立への映像投影に超短焦点の大画面プロジェクタを使っていて、 投影する映像がダンサーに被ってしまうことがほとんど無かったのも、印象的でした。 超短焦点プロジェクタの登場で、 ダンサーを投影する映像に埋没させてしまうことなく、むしろ横からのライティングと併用することでダンサーを映像から浮かび上がらすことが出来るようになったんだな、と。

にも関わらず、やはり映像がダンスの背景になってしまっていたように感じることが多かったのは、映像が既に作られているものでライブ感が無かったからでしょうか。 伝統的なバレエのイデオムに基づく 酒井 はな と、それを感じさせない力強いコンテンポラリーな 島地 の動きも、 面白い組み合わせとなっているとより、ソロの時の方が良く感じられてしまいました。 そんなこともあり、前半はかなり微妙に思っていたのですが、 段ボール箱の中で焚いたスモークを箱を叩いて穴から打ち出す場面頃から、 手持ちのパーツに映像を映させるなど、映像とダンスの関わりが面白くなったりと、 可能性を感じるところもあ李ました。このコラボレーションも、一つの試みでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]