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談話室 / Conversation Room

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[3528] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Tue Feb 21 22:47:20 2017

2週続けて週末 (って、火曜にズレ込んでしまいましたが) のCD/DLレビュー。

Yacine Boularès, Vincent Segal, Nasheet Waits
Abu Sadiya
(Accords Croisés, AC167, 2017, CD)
1)Dar Shems 2)Disappearance 3)Bahriyya 4)Interlude I 5)Takhmira 6)Mirage 7)Demian 8)Qmar 9)Nuba 10)Resillience 11)Interlude II 12)Sadiya
Enregistré en Juin 2016. Composition: Yacine Boularès & Vincent Segal.
Yacine Boularès (saxophone soprano, clarinette basse), Vincent Segal (violoncelle, percussions), Nasheet Waits (batterie).

パリ育ちのチュニジア人で、現在はニューヨークを拠点に Afrobeat のグループ Ajoyo (Ropeadope レーベルからリリースがある) を率いて活動する saxophone 奏者 Yacine Boularès。 Bumcello [レビュー] や Ballaké Sissoko とのデュオ [レビュー] など jazz だけでなく world music の文脈での活動も目立つフランスの cello 奏者 Vincent Segal。 そして、Ralph Alessi, Avishai Cohen や Tony Malaby などのグループで活動する New York の jazz/improv の drums 奏者 Nasheet Waits。 この3人によるトリオが、フランスの world music のレーベル Accords Croisés よりアルバムをリリースしている。

アルバムのタイトルは boussadia として知られる子供を怖がらせるチュニジアの民話上のキャラクターから採られている。 そして、黒い顔をしたその griot 的なキャラクター Abu Sadiya を11世紀のチュニジアにいたサブサハラ西アフリカからの奴隷と関係付け、 Abu Sadiya はサブサハラ的な音楽や舞踊からなる儀式 stambali (モロッコの gnawa に似ている) をチュニジアへもたらし、西に jazz をもたらした、と。 このプロジェクトの音楽は、そんな物語に着想したものだという。

といっても、面子とレーベルから音が想像し難く、どちらかといえばアフリカ的な色のある world music のプロダクションだろうと予想していた。 しかし、むしろ jazz/improv の色の濃いアルバムだ。 Boularès は clarinet かのような柔らかく高い音色の sopraneo saxophone で、 時に落ち着いた音色 bass clarinet で飄々としたフレーズを吹く。 対する、Segal はベースラインというには軽いピチカートのフレーズや弓引きで、 Waits の控えめな手数の drums もリズムを刻むようなフレーズはほとんどない。 間合いの多い音空間の中で3者が淡々と落ち着いた調子で対話するかのよう。 楽器の組み合わせも同じ Michael Moore / Ernst Reijseger / Han Bennink の Clusone 3 [レビュー] を連想させるような演奏だ。 Clusone 3 ほどフリーキーになることは無いし、 Boularès のモーダルなフレーズがアラブ的というより John Coltrane 風に聴こえる時もあり、 Clusone 3 とは違った色も感じられる。そんな演奏が楽しめるアルバムだ。

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[3527] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Feb 20 22:33:48 2017

土曜の晩は、池袋から三軒茶屋へ移動。この舞台を観てきました。

ロシア国立サンクトペテルブルグ マールイ・ドラマ劇場 『たくらみと恋』
2017/02/18 18:00-20:15
Friedrich von Schiller: Kabale und Liebe (1784). перевод Н. Любимова
Сценическая композиция и постановка: Лев Додин; Художник: Александр Боровский.
Игорь Иванов (Леди Мильфорд, фаворитка герцога [Präsident von Walter, am Hof eines deutschen Fürsten]), Данила Козловский (Фердинанд, его сын, майор [Ferdinand von Walter, sein Sohn, Major]), Ксения Раппопорт (Леди Мильфорд, фаворитка герцога [Lady Milford, Mätresse des Fürsten], Игорь Черневич (Вурм, личный секретарь Президента [Wurm, Haussekretär des Präsidenten]), Сергей Курышев (Миллер, учитель музыки [Miller, Stadtmusikant]), Татьяна Шестакова (его жена [dessen Frau]), Елизавета Боярская (Луиза, его дочь [Luise, dessen Tochter]).
Премьера состоялась 28 сентября 2012 года.

Малый драматический театр (МДТ) は1944年にロシア・レニングラード (現サンクトペテルブルグ) に設立された劇場。 Лев Додин [Lev Dodin] はソ連時代の1960年代から演出家として活動し、1983年に МДТ の芸術監督に就任しています。 この劇団もこの演出家が演出した作品を観るのも初めてですが、ロシアのトップクラスと言われる激短を観る良い機会かと、足を運んでみました。 2011年の旅行でサンクトペテルブルグへ行っていて、この劇場の前も通りがかっている (夏だったのでオフでしたが) というのも、観ようという気になった理由の一つです。 上演作品は、ドイツ古典主義の (Beethoven: Sinfonie Nr. 9 の元となった詩の作者として知られる) Schiller の Kabale und Liebe ですが、 あらすじも知らないまま、予習もせずに臨みました。

音楽師の Miller 夫妻がロシア風で、現代的な恋愛を感じさせるように変えていたのではないかと思いますが、 舞台を現代に翻案するようなことはせず、マルチメディアを駆使するわけでもない、セリフで展開するストレートな演劇でした。 それでもスタイリッシュでオシャレに感じたのは、 シンブルな舞台美術に、時にリアルな俳優の演技だけでなく、 俳優の立ち位置や第三の登場人物の視線も使ってシンボリックに物語るような演出だからでしょうか。 しかし、主役 (Ferdinand と Luise) を演じた2人 (Данила Козловский と Елизавета Боярская) がモデルのような美男美女で、 ポースだけでも絵になったということもあったかもしれません。 といっても、一番気に入ったのは、2つの三角関係の一つをなす Lady Milford 役の女優 Ксения Раппопорт。 セリフだけでなく踊るような動きも使ったコメディリリーフを楽しみました。

18世紀の戯曲ですが、身分違いの恋に2つの三角関係の駆け引きが絡み、悲劇的な結末とストーリーは予想以上にメロドラチック。 ロシア語のセリフはほとんど理解できませんでしたが、演技演出が良かったのか、ほとんど気になりませんでした。 自分の好みとは若干方向性が違い、斬新な演出を楽しんだというほどではありませんでしたが、 比較的ストレートに古典を上演してもこれだけ楽しめる舞台になることもあるのかと気付かされた舞台でした。

三軒茶屋に着くと、街にロシア人らしき人がたくさんいてびっくり。 実際、劇場の客席のかなりの割合がロシア人らしき人たちで、東京にいるロシア人が皆集まってしていたのではないかと思うほど。 終演後の拍手の際には舞台前で俳優たちに花束を渡す姿も多く観られ、ロシアの劇場ではこうなんだろうなあ、と。 外国の劇団の東京での公演をそれなりに観ていますが、東京にいるその国の人が来ているのを見たのは初めてです。

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数年前は演劇といってもポストドラマ演劇とかフィジカルシアターとかそんなのばかり観てたわけですが、 去年末に観た Kolozsvári Állami Magyar Színház [Hungarian Theatre of Cluj] といい、 今回の Малый драматический театр [The Maly Drama Theater] といい、 ストレートなドラマ演劇もいいものだなあ、と。そんな気分の昨今だったりるのでした。

しかし、2時間超の舞台を2本ハシゴは、さすがに疲れます。 日曜は家事 & 休養してたので、この週末のネタはこれまで。

[3526] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Feb 19 23:50:40 2017

土曜は昼過ぎには池袋へ。まずは、この舞台を観てきました。

Madama Butterfly
東京芸術劇場 コンサートホール
2017/02/18, 14:00-16:40.
Director: 笈田 ヨシ [Yoshi Oida].
Music: Giacomo Puccini; Libretto: Luigi Illica & Giuseppe Giacosa; Based on the story Madame Butterfly (1898) by John Luther Long.
小川 里美 (soprano; Madama Butterfly), Lorenzo Decaro (tenor; Pinkerton), Peter Savidge (baritone; Sharpless), 鳥木 弥生 (mezzosoprano; Suzuki), Sarah Macdonald (Kate Pinkerton), etc
Conductor: Michael Balke; Orchestra: 読売日本交響楽団; Chorus: 東京音楽大学.
Production: 平成28年度全国共同制作プロジェクト.

1960年代末からヨーロッパを拠点に活動する俳優/演出家 笈田 ヨシ の日本での初オペラ演出作品。 日本制作とはいえ、ヨーロッパでオペラ演出も手がける演出家によるオペラという興味で足を運んでみました。 演目は1904年 Teatro alla Scala で初演された『蝶々夫人』 (Madama Butterfly)。

第2幕以降の蝶々夫人にモンペを着せるなど19世紀末から20世紀半ばに時代を移しているものの、 大胆に現代に置き換えたりすることなく、解釈や演出に意外さは感じられませんでした。 大掛かりな舞台装置や映像を駆使したり、象徴的なイメージだけのミニマルな表現にすることなく、物語が素直に伝わってくるように感じた演出でした。 Royal Opera House や Metropolitan Opera の event cinema で、 Robert Lepage とかの金のかかった奇抜な演出のばかり見過ぎだと、少々反省。 後方に半透明の幕を下げて舞台の奥行き感を殺してしまった上、その幕の後ろでの演技の存在感が薄かったのは惜しかったものの、 第1幕の Madama Butterfly と Pinkerton の初夜の場面は、薄暗い中の行灯の光の並びも美しく、赤と白を基調とした床もエロティックで、印象的。 第2幕末から第3幕頭の Pinkerton を待つ夜の場面も、明度の変化だけでなく、衝立から漏れる光も使った美しい演出でした。

『蝶々夫人』は、ジャポジズムやオリエンタリズムの文脈で言及されることの多い作品 [読書メモ] というだけでなく、 他の作品でネタとして使われることも多いので、今回の公演で、一度ちゃんと観ておこうというのもありました。 第2幕の始めの方で歌われる有名なアリア Un bel dì vedremo 『ある晴れた日に』 はなるほどこういう場面の歌なのか、と。 当時最新の照明技術 (電気照明) を使って夕暮れから曉までの光の変化を14分間全く歌、セリフ無しで見せたという 第2幕末から第3幕頭の場面も実感することができましたし、 観ていていろいろ勉強になりました。

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東京芸術劇場へはよく行っていますが、コンサートホールの方へ行くのは初めて。 客層もあってか、アウェー感が……。

[3525] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Feb 19 20:23:25 2017

金曜は仕事帰りに新宿へ。このライブを観てきました。

新宿 Pit Inn
2017/01/28, 20:00-21:30.
Terje Isungset (percussion, jew's harp, goat horn, whirly tube, voice, electronics).

氷を使った楽器による音楽 Ice Music で知られる Terje Isungset。。 彼のライブは、今まで2回観ているけれども [レビュー]、完全ソロで観るのは初めて。 最近では、氷の楽器だけでなはくガラスの楽器によるプロジェクトも初めており [レビュー]、 ガラスの楽器も演奏するかと期待したけれども、それはなし。 bass drum, floor tom, cymbal など通常の drumset の中央から右に加え、 石や木で自作した percussion を左に配したようなセットで、jew's harp や goat horn, whirly tube も使用。 アンコール1回を含めて約1時間半のライブだった。

左側の木や石の percussion の音はリバーブを深くかけたうえで大きく響かせ、 jew's harp、goat horn、whirl tube の音も手持ちの小型マイクで拾った上でリバーブをかけ エフェクト無しの細やかな音とは異なるテクスチャのような音響に。 この音が鳴っただけで、まるで北国の森林の奥から響いてくるかのよう。 それは相変わらずではあるのだけど、ソロだったこともあり、そんな響きの中に時折かすかにメロディやリズムが浮き上がってくるような音楽を楽しむことができた。

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[3524] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Thu Feb 16 0:16:23 2017

先週末の日曜は昼前には渋谷へ。 ユーロスベースで開催中の トーキョーノーザンライツフェスティバル 2017 で、 映画を2本観てきました。

Jag är nyfiken - en film i gult
『私は好奇心の強い女』 [I Am Curious (Yellow)]
1967 / Sandrews (Sverige) / B+W / 132min.
Regissör: Vilgot Sjöman.
Lena Nyman (Lena, teaterelev), Börje Ahlstedt (Börje, hennes pojkvän / kronprins Carl Gustaf), Vilgot Sjöman (Vilgot Sjöman, regissör), et al.

演劇学校の女学生 Lena の当時のフリーセックスの風潮を反映した奔放な性関係や左翼的だが素朴な政治活動を、 映画監督、そして、その相手役の男性 Börje との関係を通して描いた作品でした。 1967年の映画ということで、いかにも当時のカウンターカルチャーの時代を感じる主題と手法で、 映画を撮ること映画にしたメタムービーながら、映画内映画を撮影シーンで異化させつつも、 映画内映画の話なのか映画の話なのかそれともドキュメンタリーなのか混乱させるような作りといい、 字幕を使った異化といい、Jean-Luc Godard の映画との共通点を強く感じました。 フォロワーというほど時代が離れていないので、これも時代の雰囲気だったのでしょうか。

Hamlet
『女ハムレット』
1921 / Asta Films (Germany) / Colour (tinted) / silent / 121min.
Regie: Svend Gade & Heinz Schall.
Asta Nielsen (Prinz Hamlet), et al.

サイレント時代に活躍したデンマーク出身の女優 Asta Nielsen が、 ドイツへ拠点を移した後、自身の映画プロダクション Asta Films を設立して制作した映画です。 William Shakespeare の戯曲 Hamlet が原作ですが、 Edward P. Vining による Hamlet は男性のふりをした女性だという説に基づいて、 Asta Nielsen が Hamlet を演じています。

この頃の映画は、時代考証もいいかげんで、原作を大胆に改変することも少なくなかったので、 Hamlet を女性にするなどさぞぶっ飛んだ話になっているだろうと期待して観に行きました。 しかし、さほどでもなく、Hamlet が女性であること以外は原作に比較的忠実でした。 編集で物語る技法もまだまだ素朴とは思いますが、 先に観た Den sorte drøm (1911) [レビュー] に比べ洗練された作り。 修復が良いということもあるのか、Asta Nielsen の麗しい男装も楽しめました。

柳下 恵美 による伴奏で観たのは久しぶりでしょうか。 伴奏のこともサイレントであることも忘れさせてくれるような伴奏は相変わらず、さすがの安定感で良かったです。 やはり、サイレント映画はちゃんとした伴奏付きで観たいものです。

上映には Edition Filmmuseum 版の DVD が使われていたのですが、 エンドロール見ていてDVDの音楽が Michael Riessler によるものであることに気付きました。 これはこれで聴いてみたいものです。 ちなみに、サウンドトラックのCD/DLはイタリアのレーベル Cinik からリリースされています。

[このレビューのパーマリンク]

この週末は少し余裕ができたので、 TPAM 2017 観に行ってもいいかなと思ったのっですが、 直前に思い立っても Apichatpong Weerasethakul は既に売切。 ということで、トーキョーノーザンライツフェスティバルへ切り替えたのでした。

[3523] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Wed Feb 15 1:16:22 2017

去年、ロシアのフィギュアスケート女子シングルの Мария Сотскова [Maria Sotskova] のプログラムにはまって以来 [関連発言]、 フィギュアスケートの競技会だけでなく、アイスショーの情報もチェックするようになっています。 そんな中で気付いたのは、ロシアで本格的な演出がされたアイスショーが上演されるようになってるということでした。 中でも目立つのはオリンピック銀メダリストの元アイスダンス選手 Илья Авербух [Ilya Averbukh] が設立したアイスショー制作カンパニー Продюсерская компания «Илья Авербух»。 有名スケーターをフィーチャーした競技会エキシビションの豪華版のようなショーから、 オペラやバレエの作品をアイスショー化したものまで、手がけています [カンパニー公式 YouTube チャンネル]。 このようなショーを制作する一方、振付家として Евгения Медведева [Evgenia Medvedeva] などのフィギュアスケート選手の競技会用プログラムも振付ています。

2016-17年末年始にはモスクワで、3つの『くるみ割り人形』のアイスショーが上演されていました。 1つは前述の Илья Авербух のカンパニーによる Щелкунчик и мышиный король で、 Аделина Сотникова [Adelina Sotnikova]、Алексей Ягудин [Alexei Yagudin] といったオリンピック金メダリストが出演していました。 2つ目はやはりオリンピック金メダリスト Евгений Плющенко [Evgeni Plushenko] のプロデュースによる Щелкунчик で、 オリンピック銀メダリスト Ирина Слуцкая [Irina Slutskaya] が出演し、年明けには サンクトペテルブルグでも上演していました。 3つ目は、モスクワ市がクリスマスシーズンのイベントとして企画した Большой театр [Bolshoi theater] 前の Площадь Революции [Revolution square] の特設会場 «Волшебный ледовый театр» [Magical Ice Theater] での アイスショー。 このモスクワ市のアイスショー劇場では Щелкунчик だけでなく、 Лебединое озеро 『白鳥の湖』や Белоснежка 『白雪姫』といった演目も上演されていました。

『くるみ割り人形』といえばクリスマスシーズンに上演されるお約束のバレエ作品ですが、 アイスショーの題材としてもこれだけ使われるほど人気が根付いているのかと、感慨深いものがありました。 『くるみ割り人形』といえば、5年前にこのパロディ作品 The Love Show: Nutcracker: Rated R を観ています [レビュー]。 大人になってから観た記憶はなかったのですが、子供の頃に何らか接する機会があったのか、そのあらすじや音楽の有名所はなぜか一通り知っています。 しかし、この手の古典を大人の目でちゃんと観ておいた方が、後々いろいろ楽しめそうと思っていました。 そんなところで、Royal Opera House Cinema Season 2016/17 のバレエ第2弾として The Nutcracker がかかったので、これもちょうど良い機会と、観てきました。

『くるみ割り人形』
Royal Opera House, 8 December 2016.
Choreography: Peter Wright after Lev Ivanov; Music: Pyotr Il'yich Tchaikovsky; Original scenario: Marius Petipa after E.T.A. Hoffmann's Nussknacker und Mausekönig
First performance of Peter Wright's production: 20 December 1984, Royal Opera House.
Gary Avis (Herr Drosselmeyer), Francesca Heyward (Clara) Alexander Campbell (Hans-Peter/The Nutcracker), etc
Boris Gruzin (conductor), Orchestra of the Royal Opera House.
上映: TOHOシネマズ日本橋, 2017-02-10.

Tchaikovsky の3大バレエの一つとして有名な2幕物のクラシック・バレエ (classic ballet) の作品。 今回上映されたのは、1984年に初演された Peter Wright 振付のプロダクションですが、 やはりクラシックな物語バレエの演出のもの。 現代的な解釈や抽象化がされていないので、古典を知るために観るという点では良かったでしょうか。 第1幕終わりの雪片 (Snowflakes) のワルツの冒頭にコーラス使ってることに気付かされたりもしました。 登場人物で最も印象に残ったのはマントを美しくたな引かせてソロを踊る姿がかっこいい Herr Drosselmeyer。 比べて Clara & Hans-Peter はアクが弱く存在感が薄かった。 踊りの場面は、ソロやパ・ド・ドゥよりも、 雪片のワルツでの群舞や、第1幕での贈り物の人形 (アルレッキーノとコロンビーナ、兵士と酒保女)の踊り、第2幕での歓迎の宴での踊りの方を楽しんでしまいました。 構えずに気楽な気分で観たこともあるのか期待以上に楽しめてしまい、 古典を観たつもりなままで済ましていたのは、もったいないことしていたなあ、と反省。

Евгений Плющенко [Evgeni Plushenko]
Щелкунчик [The Nutcracker]
Спортивный комплекс «Олимпийский»
Генеральные продюсеры шоу: Яна Рудковская, Евгений Финкельштейн; Режиссер - постановщик: Филипп Григорьян; Хореограф-постановщик: Евгений Плющенко, Emanuel Sandhu, Никита Михайлов.
Артисты: Евгений Плющенко (Дроссельмейер), Ирина Слуцкая (Рождественская звезда), Emanuel Sandhu (Мышиный король), Никита Михайлов (Щелкунчик / Ганс), Анастасия Мартюшева (Мари), Константин Гаврин (Принц);
Акробаты: Сергей Азарян, Михаил Мельник, Анна Свирина, Ирина Усенко, Сlement Pinel; В роли Дракона: Александр Плющенко; и другие.
First performance: 2016-12-23.
Streaming: Матч ТВ, 2017-01-01 [YouTube].

ロシアの3つの『くるみ割り人形』アイスショーのうち、最も評判が良かったのが Евгений Плющенко によるもの。 ロシア版 Vogue が美しい写真入りの記事 Премьера ледового шоу «Щелкунчик» в «Олимпийском»: фото Яны Рудковской и других を掲載するなど、 ファッショナブルなショーという扱いも見られました。 これは観てみたいと思っていたところ、ロシアのインターネットテレビ局 Матч ТВ が元旦にストリーミングしてくれました。 その映像が YouTube に投稿されていたので、Peter Wright 版バレエの印象が薄れないうちに観てみました。

サーカス的な要素や映像や照明による演出などフィギュアスケート以外の要素も取り入れた 金と技術をかけた演出ですが、その一方で物語バレエのオーソドックスな演出を踏襲しており、 Royal Ballet の Christopher Wheeldon が演出したハイテクでアップデートした物語バレエ [レビュー] のアイスショー版のよう。 物語の設定やあらずじもバレエ版の『くるみ割り人形』にかなり忠実なもので、 Nutcracker: Rated R [レビュー] のように舞台を現代に置き換えたりすることはしていませんでした。 「アーティスト」としてフィーチャーされたスケーターによるシングル (ソロ) やペア (パ・ド・ドゥ) の演技、 そしてその合間の贈り物の人形や歓迎の宴での色物的な演技、と、 演技の見せ場を繋げつつ無理なく物語が進んで行く『くるみ割り人形』の構成は、 バレエに限らずショーの枠組みとしてよく出来ていたのだなあ、と感心することしきりでした。 Peter Wright 版でも Herr Drosselmeyer が目立っていたわけですが、 ここでも Плющенко が Дроссельмейер [Drosselmeyer] を演じていて、 The Nutcracker [Плющенко] の主役は Drosselmeyer だったのだなあ、と気付かされました。

もちろん、変えられているところもあり、 特に、第1幕最後の雪片のワルツの群舞と第2幕の金平糖の精と王子のパ・ド・ドゥという、 バレエ版ではハイライトとも言えるシーンが無くなっていたのは、意外でした。 雪片のワルツの群舞の場面をシンクロナイズドスケーティングのチームの演技にしたら面白かっただろうと思いましたが、 さすがにそこまでの人・費用をかけられなかったのでしょうか。 Ирина Слуцкая が出演するという話を目にして第2幕の華ともいえる金平糖の精をやるのだろうかと予想していたのですが、 金平糖の精の役すら無くなっており、このアイスショーのオリジナルの役 Рождественская звезда [Chrismas star] という Мари (Clara 相当の役) の guiding star のような役を演じていました。 それらほど大きな変更ではありませんが、人形とネズミの戦いがネズミに囚われた Рождественская звезда の救出という形を取っていたこと、 ネズミの王様が退治されるのが Мари / Clara のスリッパでではなく Щелкунчик / The Nutcracker から戻った王子の剣でだという点にも、少々違和感を覚えました。

サーカス的な要素が使われていたのは、もちろん色物的な演技の場面。 Drosselmeyer の贈り物の場面では、Soldier (兵士) & Vivandière (酒保女) は 手持ちのトラペーズを使って少々アクロバティックなペアケーティングという程度でしたが、 Harlequin (アルレッキーノ) & Columbine (コロンビーナ) の方は Columbine のソロに置き換えられていて、 スケートエッジを付けた棒の上に持ち手を付けて、その上で氷上アクロバットをしてから、さらにリングのエアリアルを演技しました。 後半の歓迎の宴では、アラビアの踊りは氷上にステージを置いてのボールをマニピュレーションしながらのコントーション、中国人の踊りはトランポリンのデュオとスケートすら履かない演技でした。 こういう演目も交えるあたり、バレエだけでなく、 Cirque du Soleil [レビュー] のような現代サーカスの影響も感じられます。 ところで、前半の贈り物の人形の方はよく分からなかったのですが、 クレジットを見る限り、コントーションは新体操の元選手 Анна Свирина、 トランポリンはトランポリンの元選手 Сергей Азарян と Михаил Мельник が出演していたよう。 元スポーツ選手を使うところは、スケートと共通しているでしょうか。 そして、Peter Wright 版バレエでも Плющенко 版アイスショーでも、これらの色物的な演目が一番楽しめていまいました。

このようなハイテクでアップデートした物語バレエのようなアイスショーも十分に楽しめましたが、 やはり、Philippe Decouflé [レビュー] や Sidi Larbi Cherkaoui [レビュー] のような演出家が non-narrative なコンテンポラリーダンス作品のようにアイスショーを演出したらどうなるのか、 観てみたいものです。

Плющенко 版以外の『くるみ割り人形』の映像は無いようなのですが、 モスクワ市のアイスショーのうち Белоснежка 『白雪姫』は、 客席から観客が撮ったと思われる映像が YouTube に投稿されています [YouTube]。 これを観る限り、Плющенко 版 Щелкунчик と比べると素朴な演出で、子供向けバレエのアイスショー版のよう。 これはこれで楽しいですし、Плющенко のアイスショーより低予算でツアーできそうですので、 まずはこのあたりから来日して欲しいものです。

ところで、 モスクワ市のサイトでは 作曲家として Иоганн Штраус とクレジットされていますが、 Johann Strauss II は『白雪姫』のバレエなど書いていませんし、そもそも、主に使われているとはいえ、 オープニングは Waldteufel の “The Skater’s Waltz” で、フィナーレは Oppenbach の “Orpheé aux Enfers” です。 しかし、これについて調べていたところ、新国立劇場バレエ団の『しらゆき姫』が、 Johann Strauss II の音楽を使い、姫の衣装も水色で似ていることに気付きました。 双方の作品の元となるプロダクションの『白雪姫』が何かあるのでしょうか。

ロシアだけでなく、近年、このようなアイスショーが盛んになってきているようなのですが、 特にその分水嶺となったのは、2015年にロンドンの Royal Albert Hall で上演された The Nutcracker on Ice [YouTube] のようです。 英 The Guardian 紙のレビュー記事 “It's great when you skate: how ice dance became cool ” でも、 スパンコール衣装やキャラクター着ぐるみのアイスショーだけでなく、 その形式に芸術的な要素を取り入れる動きが出てきているとして取り上げています。 さらに、この記事ではコンテンポラリーダンス的なアイスショーのカンパニーとして、 2005年にカナダのモントリオールで設立された Le Patin Libre [カンパニー公式 YouTube チャンネル] を紹介しています。動画を観る限り、このカンパニーもとても面白そうです。 こういうアイスショーの動きが日本にも来てくれたら、と思うことしきりです。

もちろん、それまで作品的な演出がされたアイスショーが無かったわけではないと思います。 最近 The Planets - A Figure Skating and Modern Dance Fantasia (EuroArts, 2017) というDVDがリリースされたので知ったのですが、 1994年にカナダで The Planets というフィギュアスケートとモダンダンスによるショーが上演されたようです。 DVDは未見ですが、トレイラー [YouTube] を見る限り、 演出というか使われている技術に時代を感じ、それはそれで興味深いものがあります。 それが今のアイスショーにどのように繋がっているのか、それとも単発的で終わってしまったのか。 アイスショーの歴史を知ることができる何か良い文献はないでしょうか。

[このレビューのパーマリンク]

去年末から時々 twitter で書き散らかしていた内容が多く含まれますが。 ツイートのままにしておくと散逸してしまうので、まとめておきました。 それにしても、書き出したら収拾がなかなか付けられなくなってしまい長くなってしまいました。ふう。

[3522] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Feb 12 23:30:56 2017

約1ヶ月半ぶりというか今年初のCD/DLレビュー。

Jean-Guihen Queyras, Sokratis Sinopoulos, Bijan Chemirani, Keyvan Chemirani
Thrace: Sunday Morning Sessions
(Harmonia Mundi / Latitudes, HMC 902242, 2016, CD)
1)Khamse 2)Nihavent Semai 3)Sacher Variation 4)Zarbi é Shustari 5)Visite nocturne 6)I would I were a bird 7)Sunday morning 8)Dast é Kyan 9)Étude Digitale 10)Hasapiko 11)Karsilama 12)Dance in 7/8
Enregistrement septembre - octobre 2015.
Jean-Guihen Queyras (cello), Sokratis Sinopoulos (lyra), Bijan Chemirani (zarb, daf), Keyvan Chemirani (zarb, daf).

イラン出身のペルシャ古典音楽の打楽器奏者 Djamchid Chemirani を父とし、 フランスで生まれ育った兄弟 Keyvan & Bijan。 父との Chemirani Trio としてペルシャ古典の打楽器アンサンブルの活動をするだけでなく、 jazz や world music の文脈で様々な共演をしてきている [関連レビュー]。 このCDに収められたセッションは、classical の cello 奏者 Jean-Guihen Queyras と、 ギリシャの民族楽器 lyra の奏者 Sokratis Sinopoulos の4人によるセッション。 Queyras は、ケベック出身ながら Pierre Bourez によって設立されたフランスの現代音楽のアンサンブル Ensemble InterContemporain での活動で知られ、 Harmonia Mundi から現代音楽だけでなく幅広く classical のCDをリリースしている。 Sinopoulos は、Ross Daly のグループ Labyrinth のメンバーとして folk の文脈で活動を始め、 最近は Eight Winds (ECM, ECM 2407, 2015, CD) をリリースするなど、jazz 寄りの活動も多い。

演奏しているのは、東地中海の伝統的な音楽、即興から、現代の作曲家の音楽まで。 アルバムのテーマは「トラキア」ということで、バルカン半島南部のトラキアの伝統的な音楽を多く取り上げている。 Keyvan & Bijan Chemirani の一連の東地中海音楽プロジェクト [関連レビュー] に近い雰囲気を持つアルバムだが、 歌がフィーチャーされておらず、lyra のような伝統的な楽器に比べ澄んだ音色の cello が入ったこと、 そして、現代音楽も交えて、音数を絞って楽器の音の響きを生かしたプロダクションもあって、 明るいながらも落ち着きの増した音世界になっている。 特に、アラブの伝統的な曲を cello と zarb のデュオで演奏した “Visite nocturne”、 伝統的な曲を cello と lyra のデュオで演奏した “I would I were a bird” など、 今までの Chemirani のプロジェクトには無かった美しさ。 バルカンならではの複合拍子ダンス曲を演奏した “Hasapiko”、“Karşılama” そして “Dance in 7/8” にしても、優雅さが増している。 Chemirani の一連の東地中海音楽プロジェクトのパレットに classical という色が新たに加わった、そんなアルバムだ。

ちなみに、Chemirani 兄弟と Queyras という異なるジャンルのミュージシャンのどこに接点があったのかと思いきや、 ライナーノーツにある Queyras の言葉によると、子供時代の遊び友達で、一緒にサッカーをして遊んだりした仲とのこと。 そんな経緯も、コンセプト先行のプロジェクトとは違ったリラックスしたセッションと感じる一因かもしれない。

このアルバムをリリースした Harmonia Mundi の Latitudes シリーズは、まだ4タイトルのリリースしかないが、 去年リリースした Kayhan Kalhor, Aynur, Salman Gambarov, Cemîl Qoçgirî Hawniyaz (Harmonia Mundi / Lattitudes, HMC905277, 2016, CD) も素晴らしかった [レビュー]。 ECM の音作りに近い classsical 寄りの world music のシリーズとして今後のリリースを期待したい。

[このレビューのパーマリンク]

まだまだ年度末繁忙期ですか、仕事する週末が続いて疲れが溜まってきてましたし、山を一つ越えたので、今週末は休養してリフレッシュ。 今週末に観たものについても書いているのですが、収拾つかなくなって、仕上がってません……。

[3521] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Tue Feb 7 0:14:57 2017

土曜の晩、横浜でダンスを観た後は、新宿へ。 移動時間に余裕は無かったのですが、なんとか開演前に会場へ。 このライブを観てきました。

The New Songs + Christian Wallumrød (live)
新宿 Pit Inn
2017/02/04, 20:00-22:00.
The New Songs: Sofia Jernberg (voice), Kim Myhr (electric guitar, electronics), David Stackenäs (guitar, preparations, e-bows); Christian Wallumrød (piano, electronics).
A sound track to:
1911 / Fotorama (Denmark) / 53min / B+W / silent.
Director: Urban Gad.
Cast: Asta Nielsen, Valdemar Psilander, etc.

The New Songs は、 エチオピア出身ながらノルウェーを拠点に活動する女性歌手 Sofia Jernberg、 フランスの piano 奏者 Eve Risser、 ノルウェーの guitar 奏者 Kim Myhr [関連レビュー]、 スウェーデンの guitar 奏者 David Stackenäs の 4人の jazz/improv の文脈で活動するミュージシャンによるグループ。 今回は Eve Risser が来日せず、 ノルウエーの piano 奏者 Christian Wallumrød [関連レビュー] をゲストに加えての編成で来日した。 この晩のライブはトーキョーノーザンライツフェスティバル2017参加企画として、 第1部では映像等は使わずに、第2部ではデンマークのサイレント映画 Den sorte drøm の伴奏という形で演奏した。 第1部は40分余り、第2部は約1時間でアンコールは無かった。

Jernberg はエチオピア出身だがいわゆる Azmaris のような歌い方ではなく、 細くハイトーンな歌唱でほとんど抽象的な voicing。 残りの3人もメロディを弾くのではなく特殊奏法に live electronics も駆使して音のテクスチャを作るような演奏だった。 Jazztreffen 2016 の Monkey Plot の時のように [レビュー] サイレント映画がBGVにならないか危惧していたが、ちゃんと映画に合わせた演奏。 テクスチャ作るような piano や guitar の音も、ほぼ抽象的なままの voice も、映画に対して説明的に過ぎず、映画の理解の妨げにならず、良かった。

映画 Den sorte drøm は、女性サーカス芸人 Stella を主役とする劇映画。 Stella は、賭けに負けて大きな借金を負ってピストル自殺未遂した恋人のために、高価なネックレスを万引きする。 しかし、宝飾店主にすぐに見つかり、彼女はそれをネタに愛人となるように迫られる。 Stella は宝飾店主の家に赴くが、嫉妬にかられた恋人が追ってきて、彼女を射殺してしまうという物語。 モダニズム以前の映画スタイルで、少しパンする程度の固定カメラで撮ったロングショットのロングテイクを繋ぐもの。 モンタージュせず、遠近短縮法のような画面作りもない。 The Birth of a Nation (1915) 以前の映画の話法という点は興味深く観たが、やはりかなり単調に感じられた。 主役 Stella を演じた Asta Nielsen [関連レビュー] も見所の一つだが、ロングショットの粗い画面のため、その魅力を感じるという程では無かった。

しかし、北欧映画をメインとしたフェスティバルの参加公演にもかかわらず、アスペクト比が狂った横伸びした画面で上映。 フェスティバルの映画プログラムの1つとして参加してるのだから、映画の上映にも少しは気を使って欲しかった。

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で、日曜は職場で仕事していました……。

[3520] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Feb 5 22:17:58 2017

土曜は夕方遅くに横浜へ。この公演を観てきました。

KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
2017/02/04, 18:00-18:45.
Choreographed and Performed by Claire Cunningham. Lighting Design: Karsten Tinapp. Sound Design: Zoë Irvine.
Cello: Matthias Herrmann. Additional music: Nesciens Mater: Jean Mouton, Den Tod.: JS Bach.
Creation: 2014.

スコットランド・グラスゴーを拠点に活動する障害者のパフォーマー Claire Cunningham のソロ公演を観てきた。 健常者のための伝統的なダンスのテクニックを用いず、障害者の身体性を使ったパフォーマンスという点に興味を持って足を運んでみた。 演出的な面ではミニマルでコンセプチャルなコンテンポラリーダンスで、身体語彙として杖を必要とする障害者のものを用いたもの。 舞台は後方と上手に黒い壁を囲むのみで何もなし。 暗めの照明で、多くの時間は彼女の周りを薄明るく照らし出す中、 背丈に対して長すぎる前腕部支持型杖 (Lofstrand Crutch) を2本両腕にパフォーマンスを繰り広げた。 ルネッサンス初期の15世紀フランドルの画家 Hieronymus Bosch の絵に「罪」の象徴として描かれた物乞いする障害者の姿に着想した作品ということで、 大きな動きは無く、微妙にゆらぎのある静的なイメージを作り出すようなパフォーマンスだった。 後半に入って、杖を外して小刻みに震え堪えながらも両足で立ちづつける場面など目を捉えたし、 両腕の杖と後方の壁を支えに身体を宙に浮かしながら J. S. Bach: BWV 4 Cantata “Christ lag in Todesbanden III. Versus II” の歌声の力まない美しい歌声も印象に残った。 時にはっとする場面はあったのだが、全体としては少々単調で長く感じられたパフォーマンスだった。

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土曜の晩は、さらにライブも観たのですが、その話はまた別途。

去年末の Челябинск 2017 - Чемпионат России по Фигурному Катанию (チェリャビンスク2017 フィギュアスケート・ロシア選手権) 以来、 フィギュアスケートの競技会をライブストリーミングで観る楽しみを覚えてしまい、 先週の Ostrava 2017 - European Figure Skating Championships 2017 (ヨーロッパ・フィギュアスケート選手権) に続いて、 今週は Almaty 2017 - Winter Universiade (アルマトイ2017 冬季ユニバーシアード) のフィギュアスケートを観戦。 以前からちょっと気にはなっていたのですが、今回のお気に入りは、 女子シングルの Aiza Mambekova (KAZ)。 SP “Tango Amore” の衣装も素敵なのですが、overtone singing や jew's harp を使った音楽 (Daulet Kerei: “Ker Oglu”) に合わせ 伝統的な髪型衣装をアレンジしたスタイルで滑るFSもなかなか。 開催地が地元ということで盛り上がってましたし。楽しめました。

フィギュアスケートは、Первенство России по фигурному катанию среди юниоров 2017 (フィギュアスケート・ロシア・ジュニア選手権2017) もやっていて、 気になるスケーターも出場していたのですが、こちらはライブストリーミングはなし。

その一方で、バレエの Prix de Lausanne (ローザンヌ国際バレエコンクール) のライブストリーミングがあって、そっちを観てしまいました。 Finales を後半から観ていて、Nijinsky を踊った Michele Esposito が最も気に入ったのですが、その人がコンテンポラリー賞取って第1位になったので、ちょっと盛り上がってしまいました。 演技終了から授賞式までのインタリュードでの上演の 第1部 Bundesjugendballet: John’s Dream で Leonard Cohen の “Hallelulah” が使われていました。 最近、フィギュアスケートよく観るようになって、“Hallelujah” が定番曲の1つになってることに気付いたのですが、まさか、バレエでも使われてるのを聞くとは。 前から好きな歌ではあるのですが、踊り向けの曲とは思ってなかっただけに、かなり意外です。 第2部は Lauren Cuthbertson & Alexander Jones による Christian Spuck (choreo.): Le Grand Pas De Deux。 女性ダンサーがメガネにハンドバックで登場する、コミカルなパロディ物。 ありがちといえばそうなのですが、こういうのは大変に好みです。面白かったー。 (というか、先週のフィギュアスケート・ヨーロッパ選手権のアイスダンスのEXが、揃いに揃ってコミカルなパロディ物だったような……。)

[3519] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Jan 30 22:58:10 2017

土曜の晩は新宿へ。このライブを観てきました。

Tore Brunborg Slow Snow Quartet
新宿 Pit Inn
2017/01/28, 20:00-21:30.
Tore Brunborg Slow Snow Quartet: Tore Brunborg (tenor saxophone, piano, electroics), Eivind Aarset (electric guitar, electronics), Steinar Raknes (double bass), Per Oddvar Johansen (drums, electronics).

Tore Brunborg は、1980年代に Nils Petter Molvær, Arild Andersen, Jon Christensen とのグループ Masqualero で活動するなど、 jazz/improv の文脈で活動してきているノルウェーの saxophone 奏者。 最新リーダー作 Snow Slow (ACT Music, ACT9586-2, 2015, CD) での 4tetを率いての来日だ。 Eivind Aarset [レビュー] 参加という期待もあって、聴きに行った。 休憩なしでアンコールは1回、約1時間半のライブだった。

舞台上手 (向かって右手) から Aarset, Johansen, Raknes, Brunborg という並び。 saxophone を吹くときは、Brunborg は Aarset の近くまで歩み寄って吹くことが多かった。 electronics 使いが3人もいることで、もっと音を弄りまくるか、electronics 的なリズム感を強調するかと期待していたが、 浮遊するような Aarset の guitar こそそれらしかったが、全体としては少々リバーブ強めに感じる時がある程度。 リズムも jazz のイデオムが強めで、saxophone や piano の繰り出すメロディもぐっと保守的に感じられてしまった。 単に浮遊するような音作りだけでなく、ラウドに盛り上がるときもあったが、 自分に引っかかるところがなかったせいか、あっさりと感じられたライブだった。

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この水曜から日曜まで Ostrava 2017 - European Figure Skating Championships 2017 (ヨーロッパ・フィギュアスケート選手権)。 年度末でいろいろ余裕の無い時期ではあるのですが、時差で日本時間の真夜中24時前後にちょうどライブストリーミングで観られたので、つい観てしまいました。 年末にロシア選手権を見てロシアの選手は知ってましたが、それ以外のヨーロッパの選手は、 去年のNHK杯に出場した選手と男子の Javier Fernandez、女子の Carolina Kostner くらいしか知りませんでした。 そんなこともあり、新鮮に楽しむことができました。 最も楽しんだのはやはりアイスダンスですが、 女子シングルで Laurine Lecavalier (FRA), Nicole Rajičová (SVK), Ivett Tóth (HUN), Michaela-Lucie Hanzlíková (CZE) など、 ロシア以外のお気に入りとなるスケーターを見つけることができました。

フィギュアスケートは良い息抜きになりましたが、年度末で仕事は繁忙期。 今週末はこれしか談話室更新ネタは仕込めませんでした。

[3518] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Tue Jan 24 23:50:51 2017

先週は後半に風邪をひいてしまい、土曜も昼過ぎまで臥せってしまったのですが、 快復してきたような気がしたので、晩に築地の東劇へ。この event cinema を観てきました。

Metropolitan Opera
『遥かなる愛』
from Metropolitan Opera House, 2016-12-10.
Composer: Kaija Saariaho. Librettist: Amin Maalouf.
Stage Director: Robert Lepage. Set, Costume and Props Designer: Michael Curry.
Cast: Susanna Phillips(Clémence), Tamara Mumford (The pilgrim), Eric Owens (Jaufré Rudel), etc.
Conductor: Susanna Mälkki.
A coproduction of the Festival d’Opéra de Québec and The Metropolitan Opera, in collaboration with Ex Machina
World premiere: 15 August 2000 at the Salzburg Festival. Premiere of Ex Machina production: 5 July 2015 at Grand Théâtre de Québec
上映: 東劇, 2017-01-21 18:30-21:20 JST.

以前に Metropolitan Opera で Richard Wagner: Der Ring des Nibelungen [レビュー] を演出したことのある Robert Lepage が、 新たに演出を手がけた現代オペラ。 この L'Amour de loin を2015年の『コンポージアム』で演奏会形式で聴いたときはあまり楽しめなかったのですが [レビュー]、 Lepage によって演出された舞台作品として観たらどうなるのだろうという興味もあって、 METライブビューイング2016-17 での上映を観てきました。

演出された舞台でオペラ歌手の演技を観ながら聴いていると、演奏会形式で聴き取るのとは違って、 音楽が自然に入ってくるというというか、音楽の構造がちゃんと見えてくるよう。 例えば、ソリストの歌に対して、コーラスがツッコミを入れるような形になっていて、 時にはコーラスにソリストが反論するよう。 こんな面白いコーラスが付いていたのか、と気付かされました。 Jaufré が Clémence を歌った劇中歌と地の曲とニュアンスの違いも聴こえてきました。

LED 3万個使った演出が話題となった作品ですが、 LEDを連ねたリボンを何十本と舞台横方向に並べて張って、それぞれを色を変えたり点滅させることで、時間よって様々な色にきらめく海を表現していました。 また、LEDのリボンで舞台の床がほとんど見えなくなり、波間に消えるような演出も可能となっていました。 といっても、前半はあまり動きが無くさほどでもなかったのですが、後半はぐっと良くなりました。 LEDのリボンを上下に動かしての後半冒頭のうねる大海原の演出もダイナミックでしたが、 Jaufré が行く暗く凪いだ夜の海の上に青白くライトアップした Clémence が幻影のように浮かび上がるような演出が、 まるでコンピュータグラフィックで合成したかのような不自然な見え方。 そんな Lepage ならではの光によるトリッキーな演出を楽しむことができた。。

事前にウェブサイトやフライヤのスチル写真で見ていた Clémence の衣装や髪型(ウィグ)は、 Jaufré 理想の女性がこれかと、不吉な予感がしていました。 しかし、Susanna Phillips の演技、というか、表情が良かったのか、実際に動いている様子を見ていると、とても可愛らしく見えました。 銀の鱗のようなワンピースドレスは、特定の時代を感じさせるものではなく、背景の光の海もあってSF的。 大きな舞台装置も、シーソー状に可動する金属製の足場のみを用い、抽象的に情景を表現。 Jaufré や巡礼者の衣装こそヨーロッパ中世風とも取れるものでしたが、そんな中では、SFの中での擬古的なデザインのように見えました。

演奏会形式で聴いたときは脚本の十字軍時代の地中海世界という舞台設定と音楽の形式にギャップを感じてしまい物語の世界に入れませんでした。 しかし、Lepage 演出では、抽象的で特定の場所時代を感じさせなビジュアルに 現代音楽にしてはとっつきやすいとはいえ特定の場所時代を感じさせない Saariaho の音楽がマッチしていて、 むしろ、十字軍時代の地中海世界という設定とは関係無い、遠距離恋愛の物語として自然に楽しむことができました。

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風邪で滞り気味になった仕事を立て直すために、日曜は職場に出ていたのですが、 週明けまた体調崩れ気味になってしまったという……(弱)。いけません。

[3517] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jan 22 21:56:34 2017

火曜は仕事帰りに新宿二丁目へ。このライブを観てきました。

Arild Andersen Anniversary Trio
新宿 Pit Inn
2017/01/17, 20:00-23:00
Arild Andersen Anniversary Trio: Arild Andersen (contrabass, electronics), Helge Lien (piano), Thomas Strønen (drums); guest: 巻上 公一 [Koichi Makigami] (theremin).

1960年代から jazz/improv の文脈で国際的に活動し ECM レーベルに多くの録音を残しているノルウェーのベテラン contrabass 奏者 Arild Andersen の、 70歳を記念して結成したピアノトリオ Anniversary Trio のライブを観てきました。 オープニングは 巻上 公一 - Thomas Strønen duo。休憩挟んで2セット。アンコールでは 巻上 公一 を加えて。23時近くまで演奏してくれました。

Food の Thomas Strønen [レビュー] が参加しているのでひょっとしてと期待しましたが、 比較的オーソドックスなピアノトリオによる演奏。 2010年にワンホーントリオで観た [レビュー] の時は ルーパーを駆使していましたが、前半では若干リバーブ深めな時がある程度。 アコースティックなメロディアスな前半の展開は若干退屈しました。 しかし、後半に入ると、アップテンポでパワフルな展開が増え、内部奏法やルーパーも使うようになり、ぐっと演奏が良くなりました。 巻上 公一 の絡みはオープニングの duo は相変わらずでしたが、 アンコールではトリオとの絡みを手探りするうちに終わってしまった感もありました。

平日の晩でしたが、ほぼ満席。ピアノトリオ人気もあるとは思いますが、さすがです。 しかし、去年11月の Bobo Stenson Trio を観た時にも思ったことですが、 このクラスのミュージシャンの来日であれば、ちゃんとプロモーションして集客して、数百人規模のコンサートホールでやっても良かったのではないかと思うことしきりです。

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[3516] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jan 22 21:53:22 2017

土曜は渋谷円山町で映画を観たあとは、乃木坂へ移動。この展覧会を観てきました。

国立新美術館 企画展示室2E
2016/12/10-2017/02/05 (火休; 12/20-1/10休). 10:00-18:00 (金土10:00-20:00).
秋吉 風人, 池内 晶子, 今井 智己, 岡田 葉, 折笠 良, 金子 富之, 曽谷 朝絵, 平川 祐樹, 保科 晶子, 松井 えり菜, 南 隆雄, 三原 聡一郎, 山内 光枝.

アニュアルで開催されている文化庁芸術家在外研修の成果報告展。 最近は地道な画廊めぐりをする気力、体力も時間も無いので、その代わりという気分で観てきた。 以下、気になった作家と作品についてコメント。

平川 祐樹 の Vanished Tree - Teifelberg (2010) は、 床に上向きに置かれたビデオを映し出す箱と天井に下向きに設置されたスクリーンの組みからなるビデオインスタレーション。 照明を落としたギャラリーの床には切り株を、天井には下から見上げたアングルでの林冠の切れ目から覗く空を、固定カメラによるモノクロの映像で投影している。 このビデオの光によるギャラリー空間の光の柱が、まるで木を切り倒しでできた空間に差し込む淡い日差しのよう。 色彩を抑えたモノクロでスタイリッシュなインタレーションで、ビデオではなくスチルのライトボックスでも十分に良いのではないかとも思った。 しかし、じっと観ている、風による樹冠の揺らぎや切り株を照らす光の揺らぎも感じられる。 一緒に展示されていた Fallen Candles (2014) も「液晶絵画」的な作品。 火がついたまま倒れたロウソクを真上から固定カメラで捉えた白黒ビデオを24枚の液晶パネルに映し出して並べた作品。 ほとんど動きの無い白黒でスタイリッシュなビデオが並ぶ様は、タイポロジカルな写真作品の「液晶絵画」版 [レビュー] のよう。それも良かった。

池内 晶子 は以前にも『MOTアニュアル2011 —— Nearest Faraway | 世界の深さのはかり方』 でも観たことがあるが [レビュー]、 今回の『Knotted Thread』 (2011-2013/2016) はそのバリエーション。 前とは色違いで、細い赤い絹糸を結びあわせて10m四方ほどの蜘蛛の巣様の繊細な構造を水平に空中に浮かび上がらせていた。 遠目に見ると空中に浮いているかのようで、近付いて観ると繊細な構造に目がいく、繊細な美しさを久々に楽しんだ。

他にも印象に残った作品としては、透明なアクリル板にシンプルな幾何模様を描きその油彩絵具のムラを浮かび上がらせた 秋吉 風人の Naked Relations 連作 (2016) や、 折笠 良 の『水準原点』 (2015) の白いクレイによる波打つようなアニメーション (石田 尚志 のドローイングアニメーション [レビュー] のクレイ版のよう) があった。

若い頃は、このようなほとんどキュレーションされていないグループ展は好きではなかった (むしろ反発すら感じていた) のですが、 こまめに画廊めぐりする時間も気力・体力が無くなってくると、その代わりとしてのこのようなグループ展のありがたみを実感します。 キュレーターによって変に方向付けられて展示されていない分、個々の作家の作品に素直に向き合える所も良いです。

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[3515] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Thu Jan 19 0:44:56 2017

土曜は昼に渋谷円山町へ。渋谷ユーロスペースイスラーム映画祭が始まったので、 さっそくこの映画を観てきました。

Et maintenant, on va où ? [Where Do We Go Now?]
『私たちはどこへ行くの?』
2011 / Les Films des Tournelles (France / Lebanon / Egypt / Italia) / 110min / blue-ray / color.
un film de Nadine Labaki.
Musique Originale de Khaled Mouzanar. Paroles des chansons par Tania Saleh.
Nadine Labaki (Amal, patronne du café), Claude Baz Moussawbaa (Takla, la mère de Nassim, épicière), Leyla Hakim (Afaf), etc.
予告編 [YouTube]

レバノンの女性監督・女優 Nadine Labaki は、 初の長編映画 Caramel (2007) が 日本公開 (邦題 『キャラメル』) されていますが、その時はノーチェック。 イスラーム映画祭2で上映された、この Et maintenant, on va où ? で初めて観ました。 クリスチャンとムスリムが同居するレバノンの村を舞台にしたコメディ映画で、 内戦は小康状態でそれなりに平和裡に暮らしているものの、 村の男たちはクリスチャンとムスリムの間で一触即発の状態。村の女たちは、男たちの衝突を避けるため、あれこれ策を弄します。 奇蹟の真似事をしたり、息子の死を伏せたり、セクシーなショーダンサーを村に呼んだり、大麻入りの料理を供するパーティを開いたり。 そんなドタバタをコミカルに描いた映画です。 弄する策も現実的とは言い難いものが多いわけですが、描写はリアリズムではなく、時に歌やダンスを交えてミュージカル的な演出も交えて、面白おかしく。 笑いはブラックではなく、むしろ微笑ましく感じるものでした。 確かに、多様な女性の描かれ方に比べて、男性の描写が単純に過ぎるようにも思いました。 しかし、それでも十分に楽しめましたし、テーマにも関わらずかわいらしいとすら感じた映画でした。

この映画のハイライトシーンの一つ、男たちを酔い潰すためのパーティの準備で大麻を仕込んだ料理を女たちが作る場面で、 “Hashishet Albi [The Hash Of My Heart]” という歌が使わていてます。 約2年前にレバノンの女性シンガーソングライター Tania Saleh のアルバム A Few Images (Kirkelig Kulturverksted, FXCD 404, 2014, CD) をレーベル/ジャケット買いしたことがあったのですが、その時に彼女の Soundcloud で この “Hashishet Albi” を聴いていました。 この映画を観ていてこの Tania Saleh の歌が使われていることに気付いて、 後で調べて、そもそもこの歌はこの映画のために作られた歌だった事に気付きました。 この映画で使われた曲の歌詞は全て Tania Saleh によるもののようです。 Tania Saleh は Crammed Discs からアルバムを出した Yasmin Hamadan とも親しいようなのですが、 Nadine Labaki とも一緒によく仕事しているようです。 この映画がきっかけで、レバノンの女性アーティスト達のちょっとしたサークルがあるらしいことに気付くことができたのでした。

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[3514] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jan 15 23:37:53 2017

金曜は午後に出張先から戻って、夕方は都心で打合せしていたのですが、無事に終えることができたので、 ふと思い立って日本橋へ。このバレエの event cinema を観てきました。

『アナスタシア』
Royal Opera House, 2 November 2016.
Choreography: Kenneth MacMillan; Music: Pyotr Il’yich Tchaikovsky and Bohuslav Martinů: Symphony No. 6 (Fantaisies symphoniques); Electronic music: Fritz Winckel and Rüdiger Rüfer; Designer: Bob Crowley.
First performance: Deutsche Oper, Berlin, 25 June 1967.
Natalia Osipova (Anastasia / Anna Anderson), Marianela Nuñez (Mathilde Kschessinska), Federico Bonelli (Kshchessinska’s Partner), Edward Watson (The Husband), etc
Simon Hewett (conductor), Orchestra of the Royal Opera House.
上映: TOHOシネマズ日本橋, 2017-01-13.

Royal Opera House Cinema Season 2016/17 のバレエ第一弾は、Anastasia。 1920年に記憶喪失の自殺未遂者として精神病院に収容された “Anna Anderson” が、 一部の強い支持者もあり、ロシア革命で行方不明となったロシアの皇族の1人 Anastasia を自称するようになった、という実話に基づく作品です。 (ちなみに、この作品が作られてから20年余り経ったソ連崩壊後、ロシア皇族は処刑されたことが明らかとなり、彼女の死後のDNA鑑定でも Anna が Anastasia では無かったことが確認されています。) 振付は Kenneth MacMillan。 1967年に Deutsche Oper, Berlin で Anna のいる精神病院を舞台とした第3幕のみの1幕物の作品として初演された後、 Royal Opera House の芸術監督となった Macmillan が1971年に第1、2幕を追加しています。 ベルリンで制作されたということもあり第三幕はトイツ表現主義的で、 追加された第1、2幕は Royal Opera House らしくクラシカルな作風となったことが知られています。 去年末に MacMillan 版の L'Histoire de Manon を観て [鑑賞メモ]、 クラシカルな物語バレエは自分の今の好みからは外れるだろうと思いつつも、 ドイツ表現主義と言われる第3幕への興味で、足を運んでみました。

スチールパイプの簡素なベッドのみの舞台で、Anna を演じるボサボサの短髪にグレーのワンピースパジャマ姿の Natalia Osipova が 革命の前の幻影と革命の亡霊に苛まされるように踊る様は、確かに内面を演じる表現主義的と感じるもの。 しかし、例えば Dore Hoyer: Afectos Humano [鑑賞メモ] のように文脈から切り離した抽象的な感情として表現するのではなく、 クラシカルに演じる幻影や亡霊を演じるダンサーと共に、そのリアクションとしてのように踊るという点でもかなり物語的。 トゥシューズを履いてバレエもイデオムを感じる踊りで、あくまで物語バレエがベースにあって、 内面描写に表現主義的な動きも取り入れたもののように感じられました。 しかし、やはり第三幕があっての Anasitasia。 不穏な電子音のみから始まって10分程経った頃からオーケストラが湧き上がってくるという音楽使いの緊張感もよく、見応えがあって、最も印象に残った幕でした。 第三幕の Anastasia / Anna Anderson の記憶/妄想の中の登場人物に深みや説得力を付けるという点で、第一、二幕が不要とまでは思いませんが、二幕もあるのは少々冗長に感じました。 L'Histoire de Manon でも最後の沼地の場面だけ現代的に感じられたのですが、 過去の幻影が現れる演出といい、Anastasia での演出手法を踏襲したもの。そういう点も興味深く観れました。

Björk にも少々似た顔立ちの Natalia Osipova は少女 (Anastasia) / 狂女 (Anna Anderson) 役にぴったりでしたし、 Mathilde Kschessinska を演じた Marianela Nuñez の華やかさも印象に残りましたが、 実は今回観に行った一番のお目当ては第一皇女 Olga 役の Olivia Cowley。 去年の秋頃に彼女の運営しているブログ Ballet Style や Instagram (@missolivia) を を知って、それ以来楽しんできていたので、ぜひ出演している作品を観たいと思っていたのでした。 はたして見分けが付くか少々自信が無かったのですが、すぐに判りました。 なかなか素敵ではなないですか。これからも応援したいものです。

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しかし、出張移動もあった仕事後の、バレエのイベント・シネマ3時間余りというのは体力的にきついなあ、と、つくづく……(弱)。

[3513] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jan 15 21:14:04 2017

先の日曜の午後、『恋の花咲く 伊豆の踊子』を観終えて神保町シアターを出たら本降りの雨。 ということで、ちょっとひるみましたが、やっぱり竹橋へ。この展覧会を観てきました。

endless: The Paintings of Yamada Masaaki
東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
2016/12/06-2017/02/12 (月休; 1/2,9開; 12/28-1/1休; 1/10休), 10:00-17:00 (金10:00-20:00).

戦後まもない1948年から1990年代まで活動した画家 山田 正亮 の展覧会。 コレクション展などで一度は観たことがあるとは思いますが、 1990年代以降インスタレーションなどを好んで観てきた自分にとっては、ほぼノーチェックの作家でした。 作品と合わせて制作意図が窺われるような制作ノートも展示されていましたが、 キュビスムの影響を感じる静物画から、Klee や Kandinski を思わせるような抽象画へ、 さらに、抽象表現主義的なストライプの絵画へ。さらに、ハメ毛が際立つほとんど単色のミニマリズムへ。 そこから、枠線のような構造やストロークが色鮮やかに回帰してくる晩年の作品へと、 まるで戦後の絵画におけるモダニズムを一人の作家でたどるような興味深さがありました。

特に印象に残ったのは、フライヤ等に用いられている代表作とされるストライプの絵画ではなく、 ミニマリズムから鮮やかな枠線のような構造やストロークが湧き上がってくる1970年代の展開。 色鉛筆やコンテのストロークで淡いテクスチャのある色面を作った作品や、 枠構造を色数は抑えつつ鮮やかな色で大きなストロークでムラを作りつつ塗り分けたような作品が気にいりました。

EI-Q 1935-1938: Seeking the “Real” in the Dark
東京国立近代美術館 ギャラリー4
2016/11/22-2017/02/12 (月休; 1/2,9開; 12/28-1/1休; 1/10休), 10:00-17:00 (金10:00-20:00).

戦前はフォトグラムやモンタージュ、コラージュの技法を駆使した前衛的な写真作品で、 戦後は絵画や版画で知られる 瑛九 のコレクションに基づく企画展。 瑛九の評伝を著した 山田 光春 の旧蔵していた作品・資料を近年コレクションに加えたとのこと。 その中からデビュー直後の1935-38年に焦点を当て、書簡などの資料も合わせて展示されていました。 展示されていた作品は、フォトグラム技法による『眠りの理由』 (1936)、『フォト・デッサン』 (1936) や写真のコラージュ『作品』 (1937) など。 瑛九の写真作品をまとめてみる良い機会でしたが、 少々期待しすぎていたせいが、作品より関連資料の多さに肩透かし感じもありました。

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[3512] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jan 15 19:05:45 2017

神保町シアター『没後40年特別企画 女優・田中絹代』が始まっています。 そんなわけで、先週末の日曜となりますが、昼に神保町に出て、 戦前のサイレント映画をピアノ生伴奏付きで観てきました。

『恋の花咲く 伊豆の踊子』
1933 / 松竹蒲田 / 白黒 / 95min.
監督: 五所 平之助.
田中 絹代 (踊子 薫), 大日方 傳 (学生 水原), 小林 十九二 (踊子の兄 栄吉), 若水 絹子 (妻 千代子), 高松 栄子 (母 おたつ) 兵藤 静江 (雇い女 百合子), 新井 淳 (湯川楼の主人 善兵衛), 竹内 良一 (息子 隆一), 河村 黎吉 (鉱山技師 久保田), etc

原作は 川端 康成 の短編小説『伊豆の踊子』 (1927)。 後に度々映画化されることになるこの小説の、最初の映画化です。 ご存知のとおり、伊豆下田街道の美しい風景を背景に、 一高の学生 水原 と道連れのとなった伊豆の一人旅で旅芸人の一座との交流、 団員の踊子 薫 との淡い恋を描いた作品です。

この映画にあたっては、湯川楼の主人、山師 久保田 などの登場人物を加え、大きく話を膨らましています。 湯川楼の主人、山師 久保田、栄吉の3人はかつて共に金鉱探しした仲間で、 久保田と栄吉が先に諦めたことで、湯川楼が金鉱の富を独り占めしたこと。 湯川楼の若旦那 龍一 は水原の顔なじみの先輩ということ。 そして、湯川楼の主人は 薫のために貯金するなど、栄吉 たち旅芸人一座をことを密かに考えててやっており、 道楽者の栄吉が改心したら 薫 を息子 龍一の嫁に迎えるつもりでいるという設定が加わっています。 その結果、原作では身分違いの恋ゆえに諦めた淡い恋心だったのに対し、 映画では、先輩と相手のために身を引いた恋になって、わかりやすくメロドラマ的になってしまっていました。

成就する可能性の低い淡い恋心をもっと淡々と感傷的に描いたほうが好みですし、 当時の他の松竹メロドラマ映画に比べると登場する女優陣に華美さが欠けて、 文芸映画としてもメロドラマ映画としても半端な印象を受けました。 しかし、まだ20代前半の若くて庶民的な可愛らしさのある 田中 絹代 と、 相手役の 大日方 傳 のかっこよさだけでも、十分に楽しめました。 というか、主演の2人を魅力的に描くこと、この映画のメインはそちらなんでしょう。

実は、この映画は3年前に家で観ていたのですが、鑑賞メモなどを残すこともなく済ましてしまっていました。 大きく話が変えられていたことをすっかり忘れていました。 やっぱり、映画館と比べ家で観た場合、よほど意識的に観ない限り、細部の見落としが多くなりますし、印象も薄くなるなあ、と、つくづく。

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[3511] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Jan 9 23:59:17 2017

この週末の土曜は日帰りで水戸へ。これらの展覧会を観てきました。

『筑波大学〈総合造形〉展』
茨城県立近代美術館
2016/11/03-2017/01/29 (月休; 1/2,1/9開; 12/29-1/1休; 1/3,10休), 9:30-17:00.
三田村 畯右, 山口 勝弘, 篠田 守男, 河口 龍夫, 河口 洋一郎, 國安 孝昌, 逢坂 卓郎, 村上 史明, 小野 養豚ん, 佐々木 秀明, 岩井 俊雄, 明和電機 (土佐 信道), クワクボリョウタ, 寺田 真由美, 林 剛人丸.

東京教育大学から筑波大学への改組移転に伴い1975年に創設された 筑波大学 芸術専門学群 総合造形領域 の展覧会。 領域を方向付けた創設初期の4教員、その後の現在に至る5教員の作品と講義に関する資料の展示、 そして、卒業生で作家として活動している6人の作品展示からなる展覧会でした。 美術館・ギャラリー巡りして現代美術をよく観るようになった1990年代、 写真、光、ビデオや音響を使ったインスタレーションやユーモラスで遊び心あるジェットのような立体作品を得意とする作家といえば筑波の総合造形出身という印象が強かったこともあり、 特に前半の展示を、そのような作家を多く排出した背景として興味深く観たのは確か。

しかし、最も楽しめたのは、やはり、卒業生の6人の作家による作品展示でした。 たとえば、佐々木 秀明 『雫を聴く』 (2016) は、水滴で透明なボウルに張った水を揺らがせ、それで光を揺らがせるインスタレーションですが、 雫の音、ゆらぐ光のインスタレーションというだけでなく、水滴を落とす装置、受けるボウル、光源、光を受けるスクリーンを一体とした装置の造形もスタイリッシュ。 寺田 真由美 は初めて意識して観たが、ゼラチンシルバープリントの大判の写真シリーズも構成的な画面作りも、 大辻 清司 [レビュー] に連なる筑波らしい写真で、気に入りました。 クワクボリョウタ 『10番目の感傷(点・線・面)』 (2010) [レビュー] は、度々観る機会がありましたが、この良さも再び体感することができました。

21世紀に入って現代美術は work in progress のプロジェクトやその記録をインスタレーションとするものが多くなっています。 卒業生の作品に観られたように、写真、光、ビデオや音響といったメディアをスマートに使った造形の面白さが、自分の好みなのだとつくづく実感した展覧会でした。 しかし、教員の展示を観ると、最近は総合造形の講義においてもそのようなものに取り組みつつあるようにも伺われ、 変わりつつあるのかもしれないなあ、と、感慨深いものがありました。

Naoki Ishikawa: Capturing the Map of Light on This Planet
水戸芸術館 現代美術ギャラリー
2016/12/17-2017/02/26 (月休; 12/26-1/3休; 1/9開; 1/10休), 9:30-18:00.

極地や高山などの極限的なフィールドに赴いての撮影で知られるようになった写真家 石川 直樹 の個展。 前半の、極地や高山で撮影された大判の風景写真は、かっちりした構図に抽象画のような落ち着きもあり、 単なる冒険写真にとどまらない、フォーマルでコンセプチャルな写真にも感じられました。 しかし、後半、日本周辺の島々や福島で撮影された写真となると、そういう形式性が薄れ、むしろ何を撮るかに関心が移ってしまったようでした。

水戸芸術館 広場
2016/10/29-, 17:00-22:00 (秋冬), 18:00-22:00 (春夏)
デザイン・監修: 逢坂 卓郎.

水戸芸術館のタワーのライトアップは昔から行われていたが、 去年の10/29から「水戸芸術館ライトアッププロジェクト」として 逢坂 卓郎 のデザイン & 監修によるライトアップとなっていました。 以前のライトアップが見慣れてしまっていたせいか、地味な記憶しかなかったので、時間変化するカラフルなライトアップに華やかさを感じました。 といっても、ショッピングモールの照明のような賑やかささとは違う落ち着きも感じられる色合いや変化のスピードでした。

ちなみに、デザイン & 監修の 逢坂 卓郎 は、 『筑波大学〈総合造形〉展』で取り上げられた教員の一人。 連動した企画ではありませんでしたが、関連展示を観るような絶妙さを感じました。

かつては年に1回は行っていた水戸芸術館ですが、最近はめっきり足が遠のいてしまい、 4年ぶりでしょうか。 1990年代は東京駅発の高速バスで行ってましたが、腰を悪くして以来、上野駅から常磐線の特急で。 今回は、常磐線が品川駅まで乗り入れるようになって初めて。 上野駅へのアクセスがイマイチなだけに、品川駅から一本で水戸駅まで行けるようになり、 実際の距離や所要時間、料金は別として、逗子駅からバスに乗らなくてはならない 神奈川県立近代美術館 葉山 よりも体感的に近く感じられました。 少しは水戸へも行くようにしようかしらん、と。

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[3510] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Wed Jan 4 20:55:22 2017

正月の実家・親戚付き合いから戻って、正月三日は例年どおり美術館へ初詣。 今年は、リニューアル中ということで数年初詣できなかった恵比寿へ行って、展覧会を観てきました。

Apichatpong Weerasethakul
Ghosts in the Darkness
アピチャッポン・ウィーラセタクン 『亡霊たち』
東京都写真美術館 地階展示室
2016/12/13-2017/01/29 (月休; 月祝開, 翌火休, 1/3開, 12/29-1/1休), 10:00-18:00 (木金-20:00, 1/2,3: 11:00-18:00).

タイ東北部イサーン地方に取材した映像を用いたナラティブなインスタレーションや長編映画で知られる Apichatpong Weerasethakul は1990年代末より主に映画と現代美術の文脈で活動する作家。 長編劇映画 Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives (2010, 『ブンミおじさんの森』) は、 2010年に Festival de Cannes (カンヌ映画祭) で Palme d'Or (映画祭の最高賞) を受賞している。 しかし、インスタレーション作品を国際美術展などで度々観る機会があったが、 [関連レビュー]、映画は未見。 最近はナラティヴな作品における映像の実験性も思わせぶりな虚仮威しに感じられがちで、 半透明スクリーンに花火やその明かりに照らされる石像などを投影した Fireworks (Archive) (2014) は、 本当に暗闇の中に浮かび上がるよう。そこがとても気に入った。

Tokyo Tokyo and TOKYO – Contemporary Japanese Photography vol. 13
東京都写真美術館 2階展示室
2016/11/22-2017/01/29 (月休; 月祝開, 翌火休, 1/3開, 12/29-1/1休), 10:00-18:00 (木金-20:00, 1/2,3: 11:00-18:00).
小島 康敬 [Kojima Yasutaka], 佐藤 慎太郎 [Sato Shintaro], 田代 一倫 [Tashiro Kazutomo], 中藤 毅彦 [Nakafuji Takehiko], 野村 恵子 [Nomura Keiko], 元田 敬三 [Motoda Keizo].

アニュアルで開催している (といっても去年はリニューアル中の閉館で開催されなかったが) 新進の写真作家を取り上げるグループ展。 今年取り上げられた6人の作家は意識して観るのは初めての作家ばかりだった。 今年のテーマは東京。ということで、大都市の「猥雑さ」に焦点を当てたナラティブ作品が多め。 そういう作品もありとは思うが、 むしろ形式的な写真、合成で東京スカイツリーか写り込んだパンフォーカスなパノラマ写真を撮る 佐藤 信太郎 の『東京|天空樹』シリーズ (2009-2013) が良かった。 作家自身は浮世絵を意識して作品を作っているようだが、やはり Andreas Gursky [レビュー] を連想したのは確かだし、 路地の家々を撮った作品は歪みが大きく感じられてしまったりもしたが、 もう少しいろいろな作品を観てみたいと思わせるだけの魅力を感じた。

20 Year Anniversary TOP Collection: Tokyo Tokyo and TOKYO
東京都写真美術館 3階展示室
2016/11/22-2017/01/29 (月休; 月祝開, 翌火休, 1/3開, 12/29-1/1休), 10:00-18:00 (木金-20:00, 1/2,3: 11:00-18:00).

アニュアルの新進作家展と合わせて、同じテーマでコレクション展も開催されている。 こちらも作風は多様ですが、特に後半、期待以上に形式的な作品が多くて楽しむことができた、 宮本 隆司 『建築の黙示録』 [レビュー]、 楢橋 朝子 『Half Awake And Half Asleep In The Water』 [レビュー]、 畠山 直哉 『Slow Glass』 [レビュー]、 佐藤 時啓 『光―記憶』 [レビュー]、 など、好きな作家の作品を多く観ることができたということもある。 しかし、奈良原 一高 [レビュー] が 『Vertical Horizon-Tokyo』 (1991-1995) という青空を背景とした高層建築のカラー写真を万華鏡のようにコラージュした作品を作っていたということに気づいたり、 皇居の内堀の緑を白黒写真で抽象画のように捉えた 山本 糾 『Jardin』 (2002) や、 人影も走る自動車も全くない首都高や都心の交差点をパンフォーカスのカラー写真で捉えた 中野 正貴 『TOKYO NOBODY』 (1990s) など、 今まで気付かなかった面白い作品との出会いもあった。

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[3509] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jan 1 0:45:38 2017

2016年に歴史の塵捨場 (Dustbin Of History)に 鑑賞メモを残した展覧会やダンス演劇等の公演の中から選んだ10選。 音楽関連 (レコード/ライブ) は別に選んでいます: Records Top Ten 2016

第一位
Ex Machina / Robert Lepage: 887 (演劇)
東京芸術劇場 プレイハウス, 2016/6/25.
[レビュー]
第二位
Oivier Py: La Jeune Fille, le Diable et le Moulin, d'après les frères Grimm (演劇)
静岡県舞台芸術公園 野外劇場「有度」, 2016/5/7.
[レビュー]
第三位
『ようこそ日本へ:1920‐30年代のツーリズムとデザイン』 (デザイン展)
東京国立近代美術館 企画展ギャラリー, 2016/01/09-2016/02/28.
[レビュー]
第四位
Compagnie DCA - Philippe Decouflé: Contact (ダンス)
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール, 2016/10/29.
[ レビュー]
第五位
『MIYAKE ISSEY 展 — 三宅一生の仕事』 (デザイン展)
新国立美術館, 2016/03/16-2016/06/13.
[レビュー]
第六位
Compagnie Defracto: Flaque (サーカス)
世田谷パブリックシアター, 2016/10/15.
[レビュー]
第七位
Sidi Larbi Cherkaoui / Antony Gormley / Szymon Brzóska with monks from the Shaolin Temple: Sutra (ダンス)
オーチャードホール, 2016/10/01.
[レビュー]
第八位
Thomas Ruff (美術展/写真展)
東京国立近代美術館 企画展ギャラリー, 2016/08/30-2016/11/13.
[レビュー]
第九位
Cie Non Nova: L'Apres-midi d'un Foehne - Version 1 (サーカス)
座・高円寺 阿波おどりホール, 2016/07/09.
[レビュー]
第十位
Cía. Kamchàtka: Habitaculum (体験型パフォーマンス)
三島市立中央幼稚園, 2016/07/16.
[レビュー]
次点
『木々との対話 再生をめぐる5つの風景』 (美術展)
東京都美術館, 2016/07/26-2016/10/02.
[レビュー]
番外特選
Maria Sotskova [Мария Сотскова]: Short program & free skating
Figure skating, Ledies, season 2016-2017.
[レビュー]

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[3508] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jan 1 0:43:37 2017

2016年に音盤雑記帖 (Cahiers des Disques) に聴取メモを残した最近数年の新録リリースの中から選んだ10枚+α。 展覧会・ダンス演劇等の公演の10選もあります: 2016年公演・展覧会等 Top 10

#1
Kayhan Kalhor, Aynur, Salman Gambarov, Cemîl Qoçgirî
Hawniyaz
(Harmonia Mundi / Latitudes, HMC905277, 2016, CD)
[レビュー]
#2
Basel Rajoub Soriana Project
The Queen of Turquoise
(Jazz Village, JV570123, 2016, CD)
[レビュー]
#3
Şirin Pancaroğlu / Meriç Donük
Elişi
(Kalan, no cat. no., CD, 2011)
[レビュー]
#4
Trygve Seim
Rumi Song
(ECM, ECM 2449, 2016, CD)
[レビュー]
#5
Cyro Baptista
BlueFly
(Tzadik, TZ4014 / Spectrum 14, 2016, CD)
[レビュー]
#6
Michel Benita Ethics
River Silver
(ECM, ECM2483, 2016, CD)
[レビュー]
#7
Kazalpin [Казальпін]
East Side Story
(Double Moon, DMCHR71509, 2011, CD)
[レビュー]
#8
Zuzana Homolová / Miloš Železňák
Medzi Dvomi Prázdnotami
(Slnko, SZ 0071 2 331, 2014, CD)
[レビュー]
#9
Anne Gravir Klykken & Frøydis Grorud
Blåsang
(Jazzland, 474 825 9, 2015, CD)
[レビュー]
#10
Farvel
RÖK
(Jazzland, No 1 / 472 128 3, 2015, CD)
[レビュー]
番外特選
Elina Duni Quartet
安養院 瑠璃光堂 (板橋区 小竹向原)
2016/09/04, 18:30-20:15
[レビュー]

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[3507] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jan 1 0:41:32 2017

あけましておめでとうございます。

近年は振り返るほどの趣味生活はしていないような気もしますが、20年以上続けていることですし、 備忘も兼ねて、この1年の趣味生活を反省しつつ、 2016年の レコード Top 10展覧会・公演等 Top 10 を選んでみました。 世間の動向・流行に疎く、近年のトレンドや将来の展望などあるわけでなし、 2016年も選んだものに対するコメントは省略します。

ちなみに、過去23年間のレビューというか鑑賞メモの本数の推移は下表のとおりです。

199419951996199719981999 2000200120022003200420052006200720082009 2010201120122013201420152016合計
音盤雑記帖 (Cahiers des Disques) 719310978807578636353404944523944473035312625241249
歴史の塵捨場 (Dustbin of History) --75666575725557472831424967575151747910474741293
合計 7193184144145150150118120100688086101106101988110911013099982542

音盤雑記帖 (音楽レコード/ライブのレビュー)歴史の塵捨場 (展覧会/公演等のレビュー) いずれも 去年とほぼ同数。 談話室のバックアップファイル・サイズで見ても2015年が 611884byte で2016年は 606454byte、 twitter で見ても2015年の2573ツイートに対して2016年は2617ツイート。 忙しいながらも、音楽を聴いたり、展覧会や公演を観る生活にも慣れて、 仕事と趣味生活のバランスが新たな定常状態に入ったように思います。

音楽趣味は、とくに上半期は、 まめにライブに行くこともなければ、家でも昔の音源ばかり聴くようになって、 もはや音楽趣味からは引退かと思っていました。 しかし、9月に Elina Duni Quartet や Paolo Fresu & Daniele di Bonaventura のライブを聴いて、 第四四半期になって少しは前向きな気分になれました。やはり、良いライブを観ることは重要だなあ、と。

音楽以外の趣味については、 今年は演劇/ダンス鑑賞が楽しめた一方で、いい展覧会に出会えなかったな、と。 というか、最近はすっかり現代美術が楽しめなってしまったようにも思います。 2014年以来の20世紀前半日本映画も相変わらず楽しんで観ていますが、 2016年は海外のオペラ/バレエや演劇の event cinema を観る楽しみを覚えた年でした。 そして、12月に入ってフィギュアスケート (特にロシアの) にハマってしまうという。 振り返って見ると、戦前松竹メロドラマ映画がオペラ/バレエ (event cinema) の19世紀メロドラマ的世界への地均しに、 そして、オペラ/バレエがフィギュアスケートへの地均しになった感もあって、 我ながら興味関心がどう繋がっていくのか読めません。 まあ、割けるリソースは限られていてこれから趣味として深掘りすることはできないと思いますが、 これは守備範囲などと壁を作らずに興味が赴くままに楽しんでいきたいと思います。

2017年は職場の引越しが計画されていて、転居を含めて生活が大きく変わることが予想されます。 ますます趣味生活を縮小することを余儀なくされそうです。 無理することなく、しかし、趣味生活から引退していまうようなことなく、ささやかながらでも趣味生活を楽しんでいければと思っています。 この談話室に美術展や公演の鑑賞メモなどを残すことも、未来の自分のためにも継続していきたいと思っています。

それでは、今年もよろしくお願いします。

[3506] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Wed Dec 28 23:56:41 2016

年末のCD/DLレビュー。スウェーデンの女性歌手率いるこのグループのアルバムを。

(Jazzland, No 1 / 472 128 3, 2015, CD)
1)Dämman 2)Elevate 3)Rök 4)Pingis 5)Mörka hav 6)Hitta 7)In i dimman 8)Svarta hål 9)Katharsis
Recorded 16-19 March 2014.
Isabel Sörling (voice), Otis Sandsjö (tenor saxophone, clarinet), Kim Aksnes (trumpet), Henrik Magnusson (piano), Alfred Lorinius (double bass), Carl-Johan Groth (drums).

Farvel はスウェーデンの女性歌手 Isabel Sörling 率いる Jazz/improv のグループ。 以前は Isabel Sörling Farvel の名義で活動し、 スイスのレーベル Unit からアルバム Isabel Sörling Farvel (Unit, UTR4357, 2013, CD) というリリースもある。 ノルウェーのレーベルからのこのアルバムは名義は変わったが、編成は同じ6tet。 といっても、前作は未入手未聴で、このアルバムで初めて聴いたグループだ。

編成だけ見れば、アコースティックな楽器からなるオーソドックスな2管5tetに女性歌手をフィーチャーしたものだが、 音はぐっとコンテンポラリーだ。 楽器音のテクスチャも使う静かな展開からオフビートなリズムの展開まで、 音の間合いや複雑な展開の作曲の部分が多そうな演奏だ。 しかし、electronica Jazzland のレーベルから予想されるほど北欧の nu jazz 風ではなく、 むしろ、1990年代に hatART 〜 hatLOGY あたりからリリースされていたような techno / electronica の影響が入ってくる前の jazz/improv だ。

このような演奏をバッキングに、ではなく、 このような演奏の中の一パートとして Isabel Sörling も抽象的なヴォイシングを使う。 しかし、free improv の女性歌手によくあるアクロバティックなスキャットを駆使するのではなく、 むしろ、pop / rock の文脈の女性歌手のような軽く漂うような歌声を多く使っている。 このような演奏と歌声の組み合わせは、ありそうでない。 そんなところが新鮮に楽しめたアルバムだ。

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明日の晩は呑み会、明後日は大家さんの餅つき、明々後日には帰省してしまうので、 年内のこのサイトの更新はこれまででしょうか。それでは、よいお年を。

[3505] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Wed Dec 28 20:02:54 2016

年末も押し迫っていますが、CD/DLレビュー。ノルウェーの folk/roots meets jazz な女性歌手と女性 sax 奏者のデュオを。

Anne Gravir Klykken & Frøydis Grorud
(Jazzland, 474 825 9, 2015, CD)
1)Sjung hjerte, sjung en aftensang 2)I mine kåte ungdomsdagar 3)Gamle Guro 4)Eg gjekk meg ut ein aftenstund 5)Hans Nybøes springdans 6)Solbønn 7)Svein Trondson 8)Dagsens auga sloknar ut 9)Strandpols 10)Op på di fjella 11)Troldkjærringas Bånsull
Innspilt i Nobember 2014 og February 2015.
Anne Gravir Klykken (sang, rytmer), Frøydis Grorud (fløyter, saksofoner, rytmer).

Anne Gravir Klykken はノルウェーの folk/roots の文脈で1990年代から活動する女性歌手。 ノルウェーではよくあることだが、jazz/improv のミュージシャンとの共演もあり、 Knut Buen, Bugge Wesseltoft, Michiyo Yagi, Anne Gravir Klykken: Tonebod ‎(Nyrenning, NYCD12, 2008, CD) のようなリリースもある (残念ながら未入手未聴だが)。 一方の Frøydis Grorud も2000年前後から活動するノルウェーの女性 saxophone 奏者で、 女性歌手 Torun Eriksen の録音に参加している他、自身のリーダー作を Jazzland からリリースしている。

Klykken と Grorud はキーボード奏者 Torjus Vierli を加えてのトリオ Vintermåne として活動していたが、 これはデュオでアコースティックな音作り。 folk の歌手らしい森奥から響くような Klykken の詠唱に、 Grorud が音数少な目にゆったりした伴奏を添える。 flute での伴奏など folk 的だが、Jan Garbarek を思わせるような soprano sax の時もある。 柔らかい tenor sax を吹くときは jazz 的なイデオムが滲み出すようで、それも良い。 ECM や Kirkelig Kulturverksted、NOR-CD からいかにもリリースされそうな音で、 個性的な音というほどではないが、ゆったり落ち着いた雰囲気が楽しめるアルバムだ。

[このレビューのパーマリンク]

今までサボっていたCD/DLレビューを年末に辻褄合わせしている感もないわけではないですが、 公演ラッシュがひと段落して、やっと時間が取れるようになったというのが正直なところだったり……。

[3504] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Dec 26 22:29:37 2016

週末のCD/DLレビュー。もう一本。スロバキアの folk/roots の女性SSWのアルバムとその関連盤を。

(Slnko, SZ 0071 2 331, 2014, CD)
1)Turice S Divými Makmi 2)Nepýtaj Sa 3)Popevok (Na Starý Motív) 4)Omotaná Snom 5)Vlak 6)Priesvitnosť 7)Piesnička 8)Prosté A Ťažké Ako Príslovia 9)La Main (Ruka) 10)Vŕby
Recorded: July - August 2014.
Zuzana Homolová (spev), Michal Balla (tenorsaxofón, klarinet, basklarinet, flauta), Miloš Železňák (Ak., el. gitary, diagonálna citara, bendžo, mandolína, buzuki, rhuan, perkusie, bicle, basová gitara, keybordy, barytón ukilele, spev), Tobiáš Potočný a Miloš Železňák (loops).

共産政権時代から活動するスロヴァキアの folk/roots の歌手 Zuzana Homolová。 2012年にリリースした Ňet Vekšeho Rozkošu (Slnko, SZ 0048 2 331, 2012, CD) [レビュー] のトリオ Trojka Z.H. の1人、Miloš Železňák とのデュオ名義でのアルバムだ。 Ňet Vekšeho Rozkošu ほどフォーキーではないが、 Tvojej Duši Zahynúť Nedám (Slnko, SZ0017 2 332, 2005, CD) [レビュー] のようなビート感も抑えて、楽器音の響きと音の間合いを生かした、落ち着いたアルバムだ。

特にこのアルバムでは、ソフトな管楽器の響きが生きている。 吹きまくることなく、ソフトに歌に寄り添うように、鳴っている。 guitar も澄んだ響きのアルペジオだけでなく、緩くファズを効かせたり Bill Frisel のようにリバーブを効かせるときも。 また、guitar だけでなく bouzouki や banjo を使った曲でも、その音色でぐっと雰囲気が変わる。 jazz 的というほどではないのだが、シンプルな folk に収まら無いひっかかりが随所に仕込まれたアルバムだ。

合わせて、少し前のリリースになるけれども、最近入手できた関連盤を紹介。

(Hevhetia, HV 0029-2-331, 2008, CD)
1)Byla jedna hrlička 2)Oj Čorna, Že Ja Čorna 3)A na gori kukurička 4)Nerubaj liščinu 5)Holosočku moho 6)Tam za lisom 7)Že solnce Ňiženko 8)Mala baba kurku 10)Ty skazala 11)Oj pomerla bidna maty 12)Pečená oliva a 2 plenené pirohy
Miloš Železňák (akustické., elektrické gitary, mandolina, buzuki, banjo, Priečna flauta, perkusie, loop station), Kristián Bujak (gajdy), Michal Balla (soprán saxofón, klarinet).

Homolová と長年共演を続けている Miloš Železňák は jazz の文脈でも活動する guitar 奏者で、 やはりスロバキアのレーベルから Hevhetia から 4枚リーダー作をリリースしている。 Miloš Železňák Trio は特に folk 的要素を感じさせない power trio だが、 このソロ名義の Rusnácke [Ruthenian] は、 彼のルーツであるルテニア人 (Ruthenian; ハプスブルグ帝国領に住んでいたウクライナ人やベラルーシ人に近い民族) の民謡を演奏した作品。 歌詞カードは付いているが、多くは歌なしのインストゥルメンタルの演奏で、ほとんどが guitar ソロ。 曲に gajdy (いわゆる bagpipe) や soprano saxophone, clarinet も加わった曲もある。 民謡のメロディをモチーフに、Bill Frisell の影響も感じられるリバーブなどのエフェクトを控えめに効かせた guitar が楽しめるアルバムだ。

[このレビューのパーマリンク]

舞台とか観に行かないと、CD/DLとかゆっくり聴く時間が作れるなあ、と、つくづく。

[3503] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Dec 25 22:14:24 2016

週末のCD/DLレビュー。ノルウェーの jazz/improv のミュージシャンによるこのアルバムを。

(ECM, ECM 2449, 2016, CD)
1)In Your Beauty 2)Seeing Double 3)Across The Doorsill 4)The Guest House 5)Leaving My Self 6)When I See Your Face 7)Like Every Other Day 8)The Drunk And The Madman 9)Whirling Rhythms 10)There Is Some Kiss We Want
Recorded February 2015.
Tora Augestad (vocal), Frode Haltli (accordion), Svante Henryson (violoncello), Trygve Seim (tenor and soprano saxophones).

Trygve Seim は1990年代から jazz/improv の文脈で活動するノルウェーの saxophone 奏者。 2000年代に入ってから Sinikka Langeland Ensemble のメンバーとして活動しており、 その演奏を聴いたことはあったが [レビュー]、リーダー作を聴くのは初めて。 このアルバムは女性歌手をフィーチャーしたプロジェクトで、 13世紀に活動したイスラーム神秘主義のペルシャ語詩人 Rumi の詩に曲を付けて歌うというもの。

Tora Augustad は初めて聴いたのだが、透明感あるハイトーンの中に少々可愛らしさも感じる歌声。 英訳された詩を歌っており、楽器演奏のところは別として、歌の旋律では中東のモードらしきものはほとんど使われていない。 音だけ聴いたら Rumi を歌っているとは気付き難いほど。 この意外な歌声だけで、ぐっと引き込まれてしまった。

アンサンブルも ECM らしい音の隙間を生かした演奏だ。 Trygve Seim の saxophone の音はソフトに時に中東の管楽器のように、 Svente Henryson の cello もアルコでゆったりと鳴らしている。 drums も bass も無い中で要となるのは Frode Haltli の accordion [関連レビュー]。 時に歌に寄り添うようにゆったりと、時にリズムを刻むように、落ち着いた多彩な演奏が楽しめた。

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10月頭から毎週末舞台かその event cinema を観るパターンが続いて、 さすがにちょっと一息つきたくなってしまいました。 というわけで、その手の予定はお休みして、金曜祝日は友人宅でのパーティ、 土曜晩はいきつけのジャズ喫茶でゆっくり一人呑みで過ごすことに。 ……にするつもりが (まあ、そうはしたのですが)、 11月末のNHK杯以来、 フィギュアスケート女子シングル、ロシアの Мария Сотскова [Maria Sotskova] にすっかりハマってしまい、 結局、ちょうど23-25日開催だった Челябинск 2017 - Чемпионат России по Фигурному Катанию (チェリャビンスク2017 フィギュアスケート・ロシア選手権) をライブストリーム映像やソーシャルメディアですっと追いかけて過ごしてしまいました。 いやー、面白かった。(これについては、余裕があれば、後日別途書くかもしれません。) しかし、音楽趣味と Russian Avant-Garde 趣味で得たささやかながらのロシア語スキルが、 フィギュアスケート情報を追っかけることに生かせるときがくるとは、思いもしませんでしたよ。

[3502] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Dec 19 23:44:11 2016

土曜は晩は、渋谷から三軒茶屋へ移動。この舞台を観てきました。

2016/12/17 18:00-19:30
演出・振付: 目黒 陽介; 音楽: 坂本 弘道; 美術: カミイケタクヤ
目黒 陽介 (juggling), 森田 智博 (juggling), 宮野 玲 (juggling), 長谷川 愛実 (aerial, dance), 谷口 界 (acrobat, dance), ハチロウ (juggling), 中村 愛由子 (aerial, dance), 安岡 あこ (dance), 鈴木 仁 (juggling), 坂本 弘道 (cello, musical saw, electronics), 南方 美智子 (piano effects), 一樂 誉志幸 (drums, junk).

ジャグリングの舞台作品を作るカンパニーとして活動を始めた ジャグラー 目黒 陽介 の主宰するながめくらしつ。 うつしおみ (目黒 陽介, 長谷川 愛実) を大道芸で観ることはあったが、舞台公演は2年ぶり。 観るのはこれで3作目だが、 『おいていったもの』 (2014) [鑑賞メモ] 『終わりをみながら』 (2014) [鑑賞メモ] に比べて アイデアに富んでいて、空間も広く使うようになっていた。 ナラティヴではないものの作品としてまとまりもあって、抒情的ですら感じられた作品だった。 ジャグリングだけでなく、ダンス、アクロバット的な動きやエアリアルの見所もあり、 コンテンポラリー・サーカスの作品として十分に楽しめた。

特に気に入ったのは、邪魔されながらのボールのジャグリング。 はいつくばっての口まで駆使してジャグリングなど Compagnie Defracto: Flaque [鑑賞メモ] の影響もあるかなと思いつつ、 身体が十分にコントロールできない状態でジャグリングなど真似しなくても簡単に真似できるものでもなく。 邪魔するの者と邪魔されつつジャグリングする者のデュオとしてでなく4組を舞台に配することで ミクロにコントロールされていないもののマクロではきっちり配置されているような見せ方になっているところも気に入った。

エアリアルは、最初にあったリングよりも、天井に半ば網のように張り巡らせたティッシュ。 それだけでも造形的にも綺麗で良いアイデアだと思ったが、 階段状に並べたシガーボックスを使っての登っていき方や、 2人のエアリアル・パフォーマーがティッシュの網をひとしきり巡った後、 再び降りるのではなく、そのまま舞台後方の天井に消えていくエンディングも良かった。 エアリアルをジャグリングを同時に組み合わせるような構成が無かったのは残念だったし、 シガーボックスを使って将棋を打つのを真似たような動きをする場面で 動きのコントロールが甘く感じられたりしたのも確かだが、全体の雰囲気を損なうほどでは無かった。

音楽は piano / drums / cello の生演奏。 パフォーマンスの展開に合わせてきっちりメリハリは付けるものの、 フリーな展開にはさほどならずに、メロディも生かして抒情的な雰囲気を作りだしていた。 鍵となる形や物が明示的にあったわけでもかわらず、作品を通して統一感があったのは、 この生演奏の音楽があったからのようにも思われた。

今まで観た三作の中で最も良く、 11月頭に観た 頭と口 『WHITEST』 [レビュー] と合わせ、 日本のコンテンポラリーサーカスのカンパニーの成熟を実感することのできた舞台だった。

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[3501] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Dec 18 23:47:04 2016

土曜は昼に渋谷松濤へ。この映画というか event cinema を観てきました。

『マノン』
Palais Garnier, L'Opéra national de Paris, 2015-05-18
Compositeur: Jules Massenet; Chorégraphe / Metteur en scène: Kenneth MacMillan; Sets and Costumes: Nicholas Geargiadis.
First performance: Royal Opera House, Covent Garden, 7 March 1974.
Aurélie Dupont (Manon), Roberto Bolle (Des Grieux) Stéphane Bullion (Lescaut), Alice Renavand (La maîtresse de Lescaut), Benjamin Pech (Monsieur Guillot de Morfontaine) Karl Paquette (Le Geôlier), Viviane Descountures (Madame), Le corps de ballet de L'Opéra National de Paris.
Martin Yates (conductor), Orchestre de L'Opéra National de Paris
Réalisation: Cédric Klapisch.
上映: Bunkamura ル・シネマ, 2016-12-17.

今年観た event cinema (ライブビューイング) が演劇とオペラばかりでバレエを観ていなかったうえ、 最近 L'Opéra National de Paris の event cinema を観る機会が無いと思っていたところ、 去年のエトワール Aurélie Dupon の引退公演の上映に気付いたので、観てきました。 演目は L'Histoire du Manon。 原作は Abbé Prévost: L’Histoire du Chevalier des Grieux et de Manon Lescau (1731) で、 Jules Massenet 作曲でオペラ化 (Manon, 1884初演) されています。 その物語を、オペラの曲ではないけれども Massenet の曲を使って1974年に Kenneth MacMillan がバレエ化した作品です。 オペラも観ていませんし、バレエも観るのは初めて。

現代的な作品に挑戦し続けていた Sylvie Guillem [鑑賞メモ] ほどの思い入れが Aurélie Dupon にあるわけでなく、 20世紀の作品とはいえクラシカルな演出の物語バレエ (narrative ballet) で Christopher Wheeldon [鑑賞メモ] のような現代的な演出も楽しめるわけでもなく (第3幕は少々現代的でしょうか)、 やはり、現代的な非物語バレエ (non-narrative ballet) [鑑賞メモ] の方が好みと確認したような所も。 しかし、それでも予想以上にメロドラマ的な物語がツボにはまり、 メロドラマ映画を観るように楽しんで観ることができました。 これもオペラのメロドラマ性を継承しているのでしょうか。

Madame の衣装が Robe à la française [鑑賞メモ] に基づいているなど、 衣装や舞台美術は原作の18世紀に合わせた Rococo 調がベースにあるように見えました。 しかし、原作では騎士であった Des Grieux が若い学生という設定になって、 騎士対放蕩貴族の話が、貧乏学生対富豪という19世紀的な話に置き換えられているよう。 そこがメロドラマ的な面を強調しているように感じられました。 1週間前に Hedda Kabler を観たばかり [鑑賞メモ] だったので、 Manon と Hedda が、Des Grieux と Lövborg が被って見えました。

戦前松竹メロドラマ映画なら、Manon が桑野 通子、Des Grieux が佐分利 信、Lescaut が河村 黎吉 かなーと思っつつ、 それって『男の償ひ』 [鑑賞メモ] の冒頭部分じゃないかと思い至ったり。 佐分利 信 ら松竹三羽烏は看板女優の相手役とはよく言われたものだけれども、 なるほと、Aurélie Dupon のようなエトワールな女性ダンサーと Pas de deux で組む男性ダンサーのようなものかと、腑に落ちることしきりでした。 戦前松竹「メロドラマ」映画と言うものの、そう言われているから使っていた面が強く、 何が「メロドラマ」なのか、19世紀的なメロドラマとの連続性はあるのか、いまいちわかってなかったのですが、 event cinema でオペラやバレエを気楽に観るようになって、腑に落ちることしきり。 やはり、古典を知ると楽しみ方が深まります。 まあ、戦前松竹メロドラマ映画をある程度まとめて観たおかげで、19世紀オペラ・バレエに対する敷居が下がったというのもありますが。

しかし、現在、L'Opéra national de Paris で上演中なのは Jiří KyliánInstagram に流れてくる写真を見ながら、 こちらの方が観たいなあと思うことしきりです。 こういう作品も event cinema にして上映してくれたらなあ、と。

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今年はこれで event cinema は11本。 オペラが Metropolitan Opera Live in HD 6本、Royal Opera House 1本の7本、 演劇が National Theatre Live 3本で、バレエを観てなかったなあ、と。 観てるオペラはいわゆる前衛演出な作品ばかり。 しかし、今回 L'Histoire de Manon を観て、 そうではない演出のオペラでもそれなりに楽しめるかもしれない、という感触を得たような。 しかし、event cinema でとはいえ我ながらオペラやバレエをここまで観るようになるとは思いませんでしたよ。 今から振り返れば、2014年に戦前松竹映画にハマったことが、そこへの地均しになったような。 我ながらこんなふうに繋がっていくとは予想しませんでしたよ。

Bunkamura へ行ったので、ついでに地下へ。 ザ・ミュージアムで始まった 『マリメッコ展』 (marimekko - Design, Fabric, Lifestyle) を覗いてきました。北欧モダンというかミッドセンチュリー・モダンというか。こういうデザインは嫌いではありません。 しかし、単独で取り上げると、どうしても企業展のようになってしまうような。うむ。 1960年に登場した際のデザイン史的な文脈はもちろん、 1980年代後半から1990年代はほとんど忘れられた存在だったと思うのですが、 2000年代入ってリバイバルし経緯が marimekko の事業の内的な要因からしか説明されていなかったのが、少々、物足りなかったでしょうか。

[3500] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Dec 18 21:11:42 2016

水曜日、仕事をなんとか切り上げて20時前に渋谷へ。待望のライブを観てきました。

渋谷 WWW X
2016/12/14, 18:00-22:15
Chris Abrahams (piano), Tony Buck (drums), Lloyd Swanton (bass).

The Necks はオーストラリア・ニューサウスウェルズ州シドニーを拠点に 1987年以来 jazz/improv の文脈で活動するトリオ。 2011年に来日の予定があったが東日本大震災の影響でキャンセルとなり、トリオとしては今回が初来日だ。 (Tony Buck は日本で活動していた時もある。) 編成的にはいわゆる piano trio だが、いわゆる典型的なそれではなく、 ミニマルな反復によって音のテクスチャを作り出す、 1990年代半ばに登場した post-rock や、nu jazz 以降の electronica に影響を受けた jazz を先取りしていたかのようなトリオだ。 途中休憩を挟んで約1時間の演奏を2セット。アンコールはなかった。 このライブでも、looper はもちろん live electronics を一切使ってないとはにわかには思えないような音を堪能することができた。

CDで聴いていたときは、同郷シドニーの Triosk との共通点を多く感じていた [レビュー]。 しかし、生で観ると、electronics も使う Triosk とは違い、楽器の生の響きを生かした演奏。 そんな所に、Nik Bärtsch [レビュー] を連想したりもした。 しかし、Nik Bärtsch が音の隙間を生かした音作りをするのに対し、 The Necks は音を細かく刻んで音空間を埋め尽くすようなテクスチャを作るよう。 そのミニマルな反復から脈動するようなグルーヴが湧き上がってくる。 まるで Moritz von Oswald の minimal techno のようなミニマルな脈動がアコースティックな生演奏で生まれているのが、面白かった。

舞台上手から piano, bass, drums という並びで、piano は中央に向かって背を向ける形。 開演10分前頃に会場に着いたこともあり、中央の席が取れず、drums 側の後方の席となった。 そんなこともあり、drums の演奏が何かと気になったライブだった。 第1セットは drums がちゃんと刻む時があったたが、第2セットは金属製/木製のベルやでんでん太鼓を使ったチャカポカとした音を多用していた。 このチャカポコした音がまるで looper で回しているかのように持続していて、最初のうちはどうしているのかよくわからなかった。 しかし、舞台奥側の左手で紐で下げた鳴り物をクルクルと回し続けて鳴らしているのに気づいて、なるほどと。 音を electronics を使ってループさせるかのように、鳴り物を物理的に回しているところが、面白く感じられた。

1ヶ月前に買ったチケットは整理番号11番。 このままではガラガラになるのではと危惧していたのですが、 用意された丸椅子約100席が埋まって数十人の立見が出る程度に埋まって、なにより。 当初はオールスタンディングとのことで、それも危惧していたのですが、丸椅子が用意されて助かりました。 しかし、オールスタンディングを前提としたハコではなく、 椅子がちゃんとした小ホールか、もしくは SuperDeluxe のようなオルタナティヴスペースがよかったのではないかと思うようなライブでした。

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[3499] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Dec 18 20:21:06 2016

先週末の話ですが、日曜の午後、三軒茶屋に週末の家事買物に出たついでに、この舞台を観てきました。

クルージュ・ナポカ マジャール劇場 『ヘッダ・ガブラー』
2016/12/11 14:00-16:50
Ddirected by Andrei Şerban; Set and costume design: Carmencita Brojboiu.
Imola Kézdi (Hedda Gabler), Zsolt Bogdán (Jörgen Tesman), Anikó Pethő (Ms Elvsted), András Hatházi (Judge Brack), Ervin Szűcs (Ejlert Lövborg), Csilla Varga (Juliane Tesman), Réka Csutak (Berte).
Date of opening: 24th of January 2012

Kolozsvári Állami Magyar Színház [Hungarian Theatre of Cluj] はルーマニアのトランシルバニア地方 (ハンガリー系の住民が多い) の中心都市 Cluj-Napoka にある ハンガリー語による戯曲を主に上演する最も歴史のある劇団。 その劇団によるハンガリー語版 Hedda Gabler『第3回東京ミドルシアター・フェスティバル 国際演劇祭 イプセンの現在』 のプログラムの1つとして上演されたので、観てきました。 もちろん、この劇団も、この演出家が演出した作品を観るのも初めてです。 実は Hedda Gabler はあらすじ程度しか知らなかったのですが、 この舞台を観るまでこんなにメロドラマ的な要素があるとは思いませんでした。

1890年に出版された原作では舞台は19世紀後半のノルウェーですが、 衣装や音楽で作られるイメージはミッドセンチュリー (第二次大戦後、カウンターカルチャー前) のアメリカに置き換えられていました。 しかし、最初のうちはそんな置き換えの意味も感じられない脚本に沿ってセリフ主導で進む演出。 このような演劇は苦手なので、前半で帰ろうかと思うほどでした。 後から思えばこの段階は登場人物の設定紹介みたいなものなので、仕方ないでしょうか。 しかし、Lövborg が登場した所でぐっとメロドラマ的になって、これはソープオペラかと。 このあたりからユーモアも冴えてきて、特に陰気な女中 Berte が「家政婦は見た」的な役回りとなる所もツボにはまりました。 ということで、メロドラマ映画を観るかのように、最後までぐいぐい引き込まれて楽しんで観ることができました。

ソープオペラを意識した演出なんだろうとは思いつつ、ソープオペラには疎いので、むしろ、 戦前松竹メロドラマ映画 [関連する鑑賞メモ] に ありがちな登場人物設定や展開だなと思いつつ観ていました。 戦前松竹が映画化していたとしたら、 Gabler が桑野 通子、Elvsted が田中 絹代、Tesman が上原 謙、Lövborg が佐分利 信、Black は 河村 黎吉 か 奈良 真養、Berte は 飯田 蝶子 かな、とか。 しかし、ブルジョワの家庭を舞台として、スキャンダルを気にして、とかそういう展開は、 トーキーとなって小市民的な色が濃くなる1930年代後半ではなく、 1930年代前半サイレント期のメロドラマ [関連する鑑賞メモ] かな、とも。 なら、Hedda Gabler は八雲 美恵子、Elvsted は川崎 弘子、Tesman は鈴木 傳明、Lövborg は岡田 時彦でしょうか。 島津 保次郎や鈴木 傳明は小山内 薫 門下ですし、 Hedda Gabler などは当然踏まえたうえであのようなメロドラマ映画を作っていたのだろうなあ、と、今更ながら思ったりしました。

[このレビューのパーマリンク]

実は、直前まで Royal Opera House CinemaCosì Fan Tutte と、どちらにするか迷っていました。 が、Royal Opera House Cinema の都内上映館はいずれも朝10時台の上映開始で、9時には出かけないと間に合いません。 土曜も朝から夜まで一日活動していて疲れていたので、さすがに起きれませんでした……。 けど、Hedda Kabler も楽しい舞台だったので、それもラッキーだったかな、と。