TFJ's Sidewalk Cafe >

談話室 / Conversation Room

TFJ's Sidewalk Cafe 内検索 (Google)
[4350] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun May 17 21:20:21 2026

ゴールデンウィーク中の3日、4日は、例年通り一泊で静岡へ。 3日は午前中に静岡入りして、まずは駿府城公園へ。

駿府城公園 葵船
2026/05/03 11:00-11:40.
脚本・演出: ベイブル (bable); 出演: 鈴木真理子.

去年の『SPAC天竺舟』 [鑑賞メモ] に続いて、 今年も開催された 駿府城公園の堀を一周する観光遊覧船 葵船 を使った朗読劇が開催されました。 去年がゆったり楽しめたので、今年もさっそく乗りました。

今年のお題は、徳川 家康 が今川家の人質として駿府にいた時に結婚した正妻にて、後に 織田 信長 の命で息子 信康 と共に夫に処刑された 築山殿。 今年は『SHIZUOKAせかい演劇祭2026』で上演される『女王メデイア』とは関係無いのかなと思いきや、 夫に裏切られその主君の命で処刑/追放される親子という共通点を重ねた脚本に、なるほど、と。 もちろん、安倍川覆水流の湧水など新たな気付きもありましたし、水面から気持ち良い晴空と新緑の眺めをのんびりと楽しみました。

この後、東静岡へ移動して、静岡芸術劇場で Baro d'evel: Qui som? を鑑賞。 静岡に戻ってホテルへチェックインして荷物を置いてストリートシアターフェス 『ストレンジシード静岡2026』に参戦も、雨が降り出してしまいました。

3日最後は、次第に本降りとなる駿府城公園で、 『SHIZUOKAせかい演劇祭2026』かつ 『ふじのくに野外芸術フェスタ2026』のプログラムの公演を観ました。

Medea
駿府城公園 紅葉山庭園前広場 特設会場
2025/05/03, 19:00-20:30
構成・演出: 宮城 聰; 原作: Εὐριπίδης [Euripides / エウリピデス]; 音楽: 棚川 寛子.
衣裳デザイン: 高橋 佳代; 照明デザイン: 大迫 浩二; 空間構成監修: 木津 潤平 (Landscape THEATRE); 音響デザイン: 澤田 百希乃; ヘアメイクデザイン: 梶田 キョウコ.
出演: 美加理, 阿部 一徳, 大内 米治, 大高 浩一, 加藤 幸夫, 榊原 有美, 桜内 結う, 大道無門 優也, たきい みき, 舘野 百代, 寺内 亜矢子, 布施 安寿香, 本多 麻紀, 三島 景太, 宮城嶋 遥加, 山本 実幸, 吉植 荘一郎.
初演: 1999年 (ク・ナウカ).

恒例になっているSPACの駿府城公園での野外公演は、 2025年6月 The Coronet Theatre, London 公演の凱旋公演となる、 14年ぶりの再演となる1990年代にク・ナウカで初演した作品です。 ムーバーとトーカーを分離するスタイルを確立したとされる作品として名は知るもの、観るのは初めて。

元はギリシャ悲劇ですが、この作品では舞台を日本の明治時代前期に移し、全て男性の文士たちが座敷での宴席で日本語訳の『メデイア』を朗読しながら女中たちに演技をさせる、という体で展開します。 演じられるメデイアもワンピースに着物を羽織るというジャポニズムを思わせるもので、夫や息子も19世紀的な軍服です。 やがて、文士の一人が女中を裏手に連れ出し手籠にする様子を、錦絵が描かれた背景の簾越しに見せます。 そして、メデイアの夫たちへの復讐の場面が、女中たちの文士への復讐に重なって終わりました。

脚本は1999年上演時と同じということですが、#MeTooにも通じる今でも古さを感じさせない翻案の妙を楽しみました。 しかし、舞台にはバルーンのアーチによる屋根があったものの客席には屋根がなく、土砂降りの雨に打たれながらの鑑賞で、舞台に集中できませんでした。 元となるギリシャ悲劇 Medea は他の解釈での上演を観たこともあり [鑑賞メモ] 物語から置いていかれることはありませんでしたが、 ディテールを味わう余裕が殆ど無かったのは残念でした。 野外劇場ならではの空間使いの演出も特に無かったので、通常の劇場で観たかったでしょうか。

2000年前後にユーロスペースかイメージフォーラムのダンス映画特集のような企画の中でク・ナウカのビデオを観てムーバーとトーカーの分離を事を知った記憶があり、 その時の演目が『女王メデイア』だったのではないかと思っていたのですが、 その朧げな記憶とは全く異なっていました。 では、あのときに観たのは何だったのだろう、と。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

ゴールデンウィーク中の静岡の話は長くなるので、一旦ここで切ります。 既に2週間以上経ってしまいますが……。

[4349] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sat May 16 22:26:54 2026

ゴールデンウィーク中の5月2日は午後遅めに池袋西口へ。 東京芸術劇場のTACT FESTIVAL 2026で、この舞台を観てきました。

Liam Lelarge & Kim Marro
東京芸術劇場 シアターイースト
2026/05/02, 16:30-17:15.
De et par: Kim Marro et Liam Lelarge
Création Musique: Madeg Menguy; Création Lumière: Jérémie Cusenier; Création Costumes: Kim Marro; Regard Complice: Jean-Paul Lefeuvre; Régie: Léa Sallustro.
Administration: Pascale Baudin – Attention Fragile; Montage de Production et Diffusion: Ay-Roop
Création le 9 mars 2023 au Théâtre des Miroirs, Cherbourg, SPRING, Festival des nouvelles formes de cirque en Normandie, proposé par la Plateforme 2 Pôles Cirque en Normandie / La Brèche à Cherbourg et le Cirque Théâtre d’Elbeuf.

フランス出身で National Centre for Circus Arts (CNAC) では flying trapaze (空中ブランコ) を専攻としたという Liam Lelarge と、 スイス出身で CNAC で学び Cyr wheel を得意とし衣装も手がける Kim Marro という、サーカス・アーティストのデュオです。 2人とも粗く団子にまとめた髪にルースなタンクトップ、ショートパンツにスニーカーというラフな姿で、 背丈体格も含めて性別不明の (名前や英語のプロフィールから推測すると Liam は男性、Kim は女性ですが) 同じような姿で、パフォーマンスしました。

ロープで囲んだ長めの楕円に近いステージに、長径方向の両側に席を配置し、 2人ピッタリ並んで半時計周りに歩きながらパフォーマンスを繰り広げていきます。 ほとんど音響効果は使わず、時折、感傷的なエレクトリック・ギターのフレーズを響かせます。 最初は歩きながら抱き合い身体を絡み合わせ、それぞれの片足で歩いたり、三本足になったり、 次第にアクロバットやコントーションで使うような複雑な組みを使い、 2人の4本の手、もしくは、4本の足で歩いたり、時には転がるように、動き続けました。 衣装や小道具を用いず2人の身体だけを使い異形の生物を想起させるイメージを作り出して行きます。 そして、ラスト、衣装を裏返すとラメがびっしりの姿となり、 その状態で2人で組んで丸くなり、タイトルの通りボール (boule) となって、転がります。 2人が退場した後も歪んだミラーボールが転がり、その余韻を残しました。 身体を組み合わせてシュールな身体イメージを淡々を作り出していく所は面白く感じましたが、 タイトルのボールのイメージがそこから浮いてしまったようにも感じました。

TACT とは Theater Arts for Children and Teens の略で青少年向けの舞台芸術祭ですが、 サーカス、マイム、コンテンポラリーダンスやオブジェクトシアターの演目が多く毎年楽しみにしています [2023年の鑑賞メモ]。 東京芸術劇場が設備更新中で休館中は野外のみで [2025年の鑑賞メモ] で、 開館した今年から劇場公演が戻りましたが、結局観たのはこれだけでした。 ゴールデンウィーク中はSHIZUOKAせかい演劇祭/ストレンジシードもあるので、両方がっつり観るのは厳しいものがあります。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

池袋の後は、江戸川橋へ移動。ポルトガルvihno verdeのボトルを手土産に、 馴染みのレコード店、エル・スール・レコードへ顔を出しました。 店で話は伺ってはいたもの行く曜日が違って店で直接会うことなかった渋谷メアリージェーンの常連だった方とご対面したり、と、呑みながら他の常連客の皆さんと談笑し、楽しいひと時でした。 エル・スールへ行った時はたいてい立ち寄る江戸川橋のバーへ寄ろうかと思っていたのですが、充分酔ってしまい、これ以上は翌日に影響しそうだったので、自制しました。

[4348] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun May 10 23:42:01 2026

5月1日はギャラリー巡りの後、晩に京橋へ。 国立映画アーカイブの 『発掘された映画たち2026』で、この映画を観てきました。

『暖流』
1939 / 松竹大船 / デジタル復元、最長版 / 173 min. / DCP / 白黒.
監督: 吉村 公三郎; 原作: 岸田 國士; 脚本: 池田 忠雄.
佐分利 信 (日疋 祐三), 水戸 光子 (石渡 ぎん), 高峰 三枝子 (志摩 啓子), 徳大寺 伸 (笹島), 槙 芙沙子 (堤 ひで子), etc

戦前松竹大船のモダンなメロドラマ映画『暖流』の 輸出用英語版 (132分) と戦後検閲された短縮版 (124分) という2つの既所蔵版に、 2025年に発見、寄贈された16 mm版 (169分) を組みわせて作製されたデジタル復元、最長版での上映です。 状態の良い輸出用英語版 (英字幕付き) をベースに、主に新発見の16 mm版からフッテージを補い、 オリジナル177分中173分とほぼ完全に近い形まで復元されたことになります。 オリジナルは『前篇 啓子の巻』 (94分)、『後篇 ぎんの巻』 (83分) で、短縮版ではまとめて1本の映画となっていましたが、 今回はオリジナルに近い版ということで前篇と後篇の間に休憩を挟む形で上映されました。 今まで観てきたのはDVD化された短縮版 [鑑賞メモ] だったので、 今回の上映でオリジナルに近い形で観られることを楽しみにしていました。

短縮版でもある場面でも、DVDの低い解像度の画質ではなく、状態良いフィルムの大画面上映で観ると、細部が鮮明になりグッとモダンな印象になります。今回観て気づいたことも少なからず。 ニコライ堂の見える喫茶室で啓子と堤が、そして、啓子と銀が会う場面など、細部も鮮明になり、こんなに美しい場面だったのか、と。 音楽として『別れの曲』として知られる Frédéric Chopin: Étude op.10 nº3 が要所で、ある意味で 啓子 のライトモチーフのように使われていることにも気付きました。 日疋から笹島と堤の件を聞く場面での黙ってピアノで弾くフレーズがそうですし、 堤や石渡と対面する喫茶店の場面やラストで日疋から石渡と結婚したという話を聞く場面の背景音楽としてバイオリンで演奏された曲が流れます。 同様の配役の 大庭 秀雄 『花は僞らず』 (松竹大船, 1941) でも Chopin の『幻想即興曲』 Fantasie-impromptu, op. 66 が使われていましたが [鑑賞メモ]、 同じく、Chopin のロマンチックな曲想といい実にメロドラマチックな音楽使いです。

短縮版で削られていた場面の中には、実家が経済的に困難な状況にも関わらず現実を受け入れられずブルジョアな放蕩を止められない 斎藤 達雄 演じる 志摩家の長男 泰彦 (啓子の兄) に関わるエピソードがあります。 最長版では、家長の死の後に没落を受け入れる母と妹とそれを支える書生/監事に対立する無理解な兄というプロットが浮かび上がります。 このプロットは、同じく 池田 忠雄 脚本の 小津 安二郎 『戸田家の兄妹』 (松竹大船, 1941) [鑑賞メモ] では書生/監事ではなくはみ出し者の弟になりますが、 ほぼ同じ配役、藤野 秀夫 (父), 葛城 文子 (母), 斎藤 達雄 (兄), 高峰 三枝子 (妹), 佐分利 信 (弟) で演じられており、原型はここにあったか、と。

出番が全面的に削られていたのは、坂本 武 演じる 大阪の薬問屋 相良 や、河村 黎吉 演じる弁護士 煙山 に関する場面でした。 志摩家への恩義を感じ志摩病院へ債権取て立てを延期するどころかさらに融資する 相良 を演じる 坂本 武 の人情味溢れる演技や、 日疋と対立し遺産の分け前を要求する長男に付いた弁護士を演じる 河村 黎吉 のうさん臭い演技など、 戦前松竹の人情コメディ [関連する鑑賞メモ] らしいスパイスとして効いていて、これらを削除してしまったのはもったいないと、つくづく。

他にも、医師 笹島 に遊ばれ捨てられる看護婦 堤の場面や、病院内の対立を描いた場面も大きく削られていました。 兄 泰彦 や 薬問屋 相良、弁護士 煙山 に関する場面にしてもそうですが、これらの場面は確かに 志摩 啓子 と 石渡 ぎん の 日疋 をめぐるメロドラマのプロットには影響しないかもしれませんが、 復元された最長版を観ると病院内の対立を背景としたメロドラマに収まらない群像劇的な奥行きが感じられました。 最長版で見直して、やはり『暖流』は戦前メロドラマ映画の金字塔だと再認識しました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4347] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun May 10 0:35:33 2026

昭和の日4月29日は非常勤講師先の大学の授業日、30日は実家の用事で、ゴールデンウィーク入りは実質5月1日。 昼過ぎまでゆっくりしていましたが、午後遅めに京橋へ。京橋から銀座1丁目にかけて軽くギャラリー巡りしました。

Christian Marclay: Listening
ギャラリー小柳
2026/04/04-2025/06/30 (日月祝休), 12:00-19:00.

新作シリーズ «Concertric Listening», «Eccentric Listening», «Oculi» からなる新作展示です。 前2者は雑誌などの人の顔の写真に着目し、その輪郭と耳を切り出して、組み合わせたコラージュ。 後者は12インチレコードの黒のプレインスリーブのレーベル面の穴から人の顔を覗かせた作品。 Marclay らしいとは思うし、ギャラリーで売るのにはちょうど良いとは思いますが、 やはり国際美術展や美術館で観るコンセプチャルなインスタレーション [鑑賞メモ] が本領だな、とも。

『ポーラ文化研究所50周年記念展 モダンビューティー 近代の化粧文化』
ポーラ ミュージアム アネックス
2026/04/28-2026/05/31 (会期中無休), 11:00-19:00.

近代、明治文明開花期から昭和戦前にかけての化粧文化に関する展覧会です。 といっても、ポーラ銀座ビルのワンフロアを使った小展示ですが。 近代における化粧そのものの変遷を示すというより、化粧道具や髪飾り等のアクセサリ、化粧品パッケージ、化粧に関する広告などを通して、日本の近代文化の一面を示していました。 目につくのは、やはり広告ポスター。 御園クレームのポスターのモデルはサイレント期に活躍した松竹の映画女優 及川道子でしょうか。 松竹女性映画のプレースメント広告でお馴染みクラブ化粧品のポスターもあり、 国立映画アーカイブで戦前松竹映画を観る前に気分を盛り上げるにちょうどよい展示でした。

国立映画アーカイブ 展示室
2026/04/07-2026/07/26 (月休; 5/12-17,26-31休), 11:00-19:00 (4/24,6/26 -20:00).

1950s-1970sに焦点を当てた展示で、取り上げられている映画作品よりも、 戦後の色数が限定されシュールな画風のイラストなどを用いたモダンデザインから、 カウンターカルチャーの時代の写真も多用したカラフルなグラフィックデザインへの移り変わりを観るようでした。 同時代的に見覚えがあるフランス映画社BOWシリーズらしいポスターも、最後の方では展示されていていました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4346] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed May 6 23:04:04 2026

ゴールデンウィーク直前の週末土曜は、日帰りで静岡へ。 SPAC-静岡県舞台芸術センターのSHIZUOKAせかい演劇祭 2026の前半の3本を舞台を観てきました。

静岡芸術劇場
2026/04/25, 13:00-14:30.
Playwright: Alfian Sa'at; Director: Mohd Fared Jainal.
Performed By: Siti Khalijah Zainal, Ghafir Akbar, Kitagawa Rei [北川麗], Sugiyama Ken [杉山賢], Darren Guo.
Lighting Designer: Adrian Tan; Sound Designer: James Lye; Visual Media Designer: Eric Lee; Set Designer: Akbar Syadiq.
字幕翻訳: 日本映像翻訳アカデミー (JVTA), 中野 美緒; 字幕製作協力 (マレー語翻訳・監修): 上原 亜季; 字幕監修・操作: 戸田 史子
Production: Teater Ekamatra.
Premiere: 12 September 2018, Drama Centre Black Box.

戦中日本の映画『マライの虎』 (大映, 1943) をシンガポール・日本共同制作の演劇としてリメイクする、その過程を描いた、 シンガポールの劇場 Teater Ekamatra 製作のメタ演劇です。 『マライの虎』は、1930年代にマレーで盗賊として活動し、太平洋戦争最初期のマレー作戦の際に日本軍に協力した 谷 豊 を主人公とした伝記的なアクション映画です。 マレー作戦を描いた国策戦争映画『シンガポール總攻撃』 (大映, 1943) と合わせて現地ロケで撮影され、『シンガポール總攻撃』よりも人気を博し、 戦後『怪傑ハリマオ』 (日本テレビ, 1960-1961) としてテレビドラマ化されています。 国際共同制作で起きがちと思われるミスコミュニケーションもユーモラスに交えつつ、 戦中のプロパガンダ映画『マライの虎』を演劇として演じ直すことを通して、現在の俳優が演じる際の違和感としてツッコミを入れることで、そのイデオロギー性を暴きずらしていきます。

映画中の歴史的事実もテーマとしてあったように思いますが、『マライの虎』は実在の人物を主人公とした伝記的な面はあれど、フィクショナルな活劇という面もあり、その点については少々弱く感じました。 『マライの虎』は未見ですが、戦中日本の非民主的映画 (いわゆる返還映画) はそれなりに観ているので、 そういう映画を観ながら (心の中で) ツッコミを入れる際の観点の相違が興味深くありました。 ステロタイプな敵役、アジア解放なども含む戦意高揚に関わる場面についてはわかりやすいと思う一方、 マレー人のオリエンタリズム的表象は今まで観た映画の中で馴染みが無く、新鮮に感じた一方で、慣れないと気付き辛いものだとも実感しました。 そんな中では特に、看板に描かれたデタラメなジャウィ文字へのツッコミが、ツボにハマりました。

Eisa Jocson & Venuri Perera
静岡県舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」
2026/04/25, 16:00-17:30.
Concept, Creation, Dramaturgy, Performance: Eisa Jocson, Venuri Perera.
Light Design: Ariana Battaglia; Musical Composition: Soraya Lutangu Bonaventure; Artistic Advice: Rasa Alksnyte, Tang Fu Kuen; Text Advice: Ruhanie Perera; Spiritual Advice: Nenet Ocson Babaylan-Vaigaland; Creative Presence: Arco Renz; Dramaturgical support: Anna Wagner, Alexandra Hennig; Production Advice: Sandro Lunin.
字幕翻訳: 田村 かのこ; 字幕監修: 横山 義志.
Production: Künstler*innenhaus Mousonturm.
Premiere: 13. September 2024, Mousonturm Saal.

フィリピン出身の Eisa Jocson とスリランカ出身の Venuri Perera という2人の国際的に活動する女性パフォーマーによる、 移民家事労働者 (メイド) として海外へ働きに出ているフィリピン、スリランカ、インドネシアの女性に関するリサーチに基づくダンス、というより、コンセプチュアルなパフォーマンスです。 製作は現代的な舞台芸術を扱うドイツ・フランクフルト市の劇場 Künstler*innenhaus Mousonturm。

中盤にケア労働やメイドを雇うことについて観客に問いかける場面もあり、 後半にアジア系の家事労働者へ取材した人身売買や奴隷に近い扱いに関するエピソードも語られます。 しかし、1782年にスイスで魔女とされ処刑された Anna Göldi がメイドであったというエピソードが引かれ、 舞台での美術や動きは、むしろ、近世に異端尋問の対象となった魔女のイメージ ─といっても現代的なものですが─ に着想した部分が多いように感じられました。 魔女と家事労働の共通点でもある箒を象徴的に使い、様々な形の箒を持ち替え、並べ替えつつ、 箒に跨った状態のまま、時に静かに歩き、時に魔女というかシャーマンのように身悶え、時に客に語りかけつつ。 女性と家事労働やケア労働、移民労働者の問題をパフォーマーを交えた動的かつ象徴的に扱ったインスタレーションを観るようでした。

SPAC-静岡県芸術舞台センター / 石神 夏希
Eel Migration
静岡県舞台芸術公園 野外劇場「有度」
2026/04/25, 18:30-20:00.
台本・演出: 石神 夏希.
音楽: 棚川 寛子; 舞台美術デザイン: 佐々木 文美; 照明デザイン: 大迫 浩二; 音響デザイン: 和田 匡史; 衣裳デザイン: 清 千草.
出演: 赤松 直美, 貴島 豪, 森山 冬子, 吉見 亮 (以上SPAC); 相川 アンジェラ [Aikawa Angela], アイラ・ウェンディ [Ayla Wendy], ペレイラ・ハセヤマ・クレイデ [Pereira Haseyama Cleide], 矢野 陽規 (以上県民出演者).
製作: SPAC-静岡県芸術舞台センター
世界初演.

「SPAC秋のシーズン2025-2026」よりSPAC-静岡県芸術舞台センターのアーティスティック・ディレクターとなった 石神 夏希 の台本・演出による作品です。 浜松市にブラジル総領事館が置かれるほど県西部に多く住んでいる日系ブラジル人に一年以上取材し、 SPACの俳優だけでなく、4名の素人の県民が出演して、取材したエピソードを演じる、ドキュメンタリー演劇です。 それに重ねられるのは、やはり県西部の主要な水産品ウナギで、こちらも研究者や養殖業者に取材したエピソードが採られていました。 日系ブラジル人の私的なエピソードは生活史を垣間見るような興味深さがありましたが、 ウナギのエピソード、イメージが結びついておらず、連想による詩的なイメージを喚起される所に欠けました。 「思い出せないけれども体に残っているルーツ」というテーマがあるようでしたが、 ウナギに関するエピソードが、ウナギ自身ではなく、研究者や養殖業者に関するものということで、ズレてしまったでしょうか。

SPACの俳優も出演していましたが、その演技というか語りのスタイルは一市民の細やかなエピソードを演じるのには似合わないと感じてしまいました。 神話や古典的な物語に着想した祝祭的な演劇で観・聴き慣れているから、また、日本語だから、特に気になってしまったということもあるかもしれません。 その一方で、野外劇場「有度」はこのような作品には広すぎるのではないかと危惧していましたが、花道や前にせり出した段々など、空間使いはさすが慣れたものでしょうか。 SPACらしく俳優たち自身が演奏する打楽器をメインとした音楽も、祝祭的とは違いますが、意外にドキュメンタリー演劇にも合っていました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4345] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue May 5 22:37:24 2026

先々週末の日曜19日は、昼に家でこのライブを配信で観ました。

David Byrne
Outdoor Theatre, Empire Polo Club in Coachella 2026 Week 2
streaming: 2026/04/19, 14:25-15:25 JST.
setlist: 1)Everybody Laughs 2)And She Was 3)Strange Overtones 4)House In Motion 5)(Nothing But) Flowers 6)This Must Be The Place (Naive Melody) 7)What Is The Reason For It? 8)Slippery People 9)When We Are Singing 10)Psycho Killer 11)Life During Wartime 12)Once In A Lifetime 13)Burning Down The House

前作 American Utopia (Todomundo / Nonesuch 565710-2, 2018) が、というより、 そのショーの映画化 David Byrne's American Utopia (Spike Lee (dir.), 2020) が素晴らしかった [鑑賞メモ] David Byrne が、新作 Who Is The Sky? (Matador, OLE2178CD, 2025) を引っ提げてツアー中です。 そのツアーの一貫としてアメリカ・カリフォルニア南部の砂漠の中にある Coachella Valley で開催されたポピュラー音楽フェス Coachella (Coachella Valley Music and Arts Festival) に出演し、そのライブが YouTube で無料配信されました。 Coachella は続く二週末にほぼ同じラインナップで開催されるのですが、第1週での David Byrne のライブ (2026-04-11) の評判がとても良かったので [Rolling Stone 誌の記事]、第2週のライブを配信で観ました。

フェスの中での1時間のセットということで、ツアーでの通常のセットからの抜粋版の構成だったよう。 新作アルバムからの曲は3曲で、Talking Heads 時代の曲が過半の8曲を占めていました。 ダンサー兼コーラスだけでなく、ワイヤレスを駆使して全てのミュージシャンが楽器を抱え、移動しながら踊り演奏するパフォーマンスは Amarican Utopia 同様で、 その続編というかヴァリエーションとでもいうもの。 American Utopia ではスーツの衣装もグレーで照明も青白い光を使い、ミニマリズムを強調していました。 しかし、Week 2 では鮮やかな青一色の (Week 1 はオレンジ一色の) 作業服風の衣装で、何もない方体の舞台の背景と左右に映像を投影します。 ミニマリスト的な美学は残しつつも、色彩感豊かなステージに変奏していました。

そんな色彩感だけでなく、 American Utopia も控えめながらその色はありましたが、 このツアーでは David Byrne のMCや、使われる映像も、もう一歩踏み込んだ感がありました。 新作の曲の前のMCが特に印象的で、愛の意味についての曲 “What Is The Reason For It?” の前のMCでは、 映画監督 John Cameron Mitchell に言われた言葉 “Love and kindness are the most punk things you can right now” を引きつつ、 自分の言葉として “Love and kindness are a form of resistance” と。 さらに、歌うことに関する歌 “When We Are Singing” の前には、コロナ禍下2020年のイタリアで 解放記念日 (レジスタンスの日) でベランダで人々が歌ったというエピソードを映像付きで紹介したり。 David Byrne ならではの抵抗 (レジスタンス) の形 —愛と親切さ、そして歌うこと— を示そうという意図を感じるMCでした。

もちろん、新作からだけでなく Talking Heads 時代の曲も取り上げ、 後期の曲の中からは消費主義的な豊かさと社会的無関心に関する歌 “(Nothing But) Flowers” を取り上げました。 そのコードレスの自由なパフォーマンスが近年のライブのルーツにも感じられるビデオ [YouTube] も印象的な佳曲でしたが、 今歌われると、“And as things fell apart / Nobody paid much attention”「物事がおかしくなっているのに/誰もたいして注意を払わない」という歌詞は当時以上に重いもの。 さらに、このライブでは “There was a shopping mall. Now, it's all covered with flowers” という歌詞に呼応するように看板も外され棚も空のショッピングモールの内部が大写しされ、 “(Nothing But) Flowers” ではなく “Nothing (But Flowers)” と前に強調が移り、当時うっすら感じられた楽観が後退し、より悲観に寄ったようにも感じられました。

後半、“Psycho Killer” 以降は Stop Making Sense 以前の 前期 Talking Heads の曲で固めてきましたが、ここに入ると、映像はほぼ使わなくなり、照明も暗めの青や赤の単色に。 照明を落としての足元だけを照らすような照明や衣装をうっすら蛍光で浮かびあがらせるブラックライトも使い、 マイム的な身振りというよりフォーメーションダンスを効果的に、抽象的でミニマリスト的なステージへと転換しました。 しかし、そんな中、“Life During Wartime” [YouTube] の後半で、 第2次トランプ政権下のアメリカで起きている ICE (Immigration and Customs Enforcement, 移民関税捜査局) の暴力的な摘発・鎮圧の様子を捉えた映像がステージの背景に大写しされました。 Stop Making Sense [鑑賞メモ] の中でもその振付に強烈な印象を残した曲ですが、 今の時代における「戦時下の生活 (Life During Wartime)」の歌詞の意味に気付かされた一方で、 もはや歌詞中のフィクションでもメタファーでもなく現実になってしまったことに複雑な気分になりました。

3月にイギリス・ウェールズの首都カーディフでのライブの The Guardian 紙に載った評は、 “David Byrne review – in life during wartime, this show will restore your faith in humanity” と五つ☆で、 もちろんタイトルに “Life During Wartime” を含めていますが、掴みに “(Nothing But) Flowers” の歌詞を引いています。 去年12月1日にアメリカ公共放送NPRの Tiny Desk Concert に時 も、前半に新曲2曲、後半 Talking Heads 時代の曲から “(Nothing But) Flowers” と “Life During Wartime” を取り上げていました [YouTube]。 やはり、Tiny Desk Concert でも今演るべきメッセージを持った曲を的確に選んで演ったのだな、と。 さすがと思う一方、David Byrne は今までメッセージ性を解りやすくは押し出さない多義的な、アーティな作風だったと思うだけに、そこに彼の抱いている危機感を見るようでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4344] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Apr 29 22:59:07 2026

先々週末の土曜18日は、晩に神楽坂へ。このライブを観てきました。

Thomas Strønen Time Is A Blind Guide
赤城神社 氏子参集殿 (あかぎホール) (かぐらざか)
2026/04/18, 19:00-21:00.
Thomas Strønen (drums), Ayumi Tanaka [田中 鮎美] (piano), Håkon Aase (violin), Leo Svensson Sander (cello), Ole Morten Vågan (doublebass).

2000年前後からjazz/improvの文脈で活動するノルウェーの打楽器奏者 Thomas Strønen のアコースティックなグループでの公演です。 今までも度々来日していて、Food [鑑賞メモ] や Humcrush [鑑賞メモ] などエレクトロニックなグループのライブを観る機会はありましたが、 このグループを観るのは初めてです (2024年にも来日していますが見逃し)。 会場は神社境内内にあるホールですが、特に宗教色や伝統色の濃い空間ではなく、 温かみのある照明とウッディな内装のニュートラルな方形の落ち着いた雰囲気のスペースです。 奥中央に演奏スペースを設け、半ば囲むように客席を配置していました。 休憩を挟んで前半後半、さらに、アンコール込みで2時間のコンサートでした。

今回のグループ Time Is A Blind は既に ECM から3作のアルバムのリリースがあり、 クラシカルなピアノ四重奏団から音域を低音にずらして打楽器を加えたようなアコースティックな編成もあり、 そのアルバムからは室内楽的な jazz/improv. の印象を強く受けていました。 実際、内部奏法やピチカートも交えた繊細なピアノや弦楽器の音出しに、 Strønen のスネアのリムショットやカウベル、ウッドパーカッションなどを用いた柔らかい音で歌うように打楽器音をそえる所など、それらしい演奏を聴かせる展開もありました。

もちろん、それだけでなく、 Strønen の弱目の音で細かく刻むようなリズムの上にピアノや弦楽器が少々メカニカルなフレーズを散りばめる生演奏 electronica 的な展開や、 もしくは、ジャズピアノトリオ的な伴奏にヴァイオリンがフォーク的なフレーズを歌う展開など。 特に、前半の後の方でしょうか、ピアノとドラムスの強く手数多めのやりとりが浮び上がり free jazz のピアノトリオにも近づいた演奏を聴かせた時など、そういう面もあったか、と。 演奏している所を実際に見ているからわかりやすいということもあると思いますが、 そんな各パートの役割分担というかアンサンブルの組み合わせの自在さを楽しみました。

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[4343] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Apr 27 23:45:07 2026

2週間前の週末土曜11日は、午後に渋谷円山町へ。 渋谷ユーロスペースで開催されていた 『特集:ハル・ハートリー 90’sインディーズの伝説』で、 アメリカの映画監督 Hal Hartley による 1990年前後の初期三部作 The Long Island Trilogy 『ロング・アイランド・トリロジー』をまとめて観てきました。

The Unbelievable Truth
『アンビリーバブル・トゥルース』
1989 / Action Features, Inc. / Possible Film / 90 min. / color
a Hal Hartley film.
Director of photography: Michael Spiller; Production designer: Carla Gerona; Exective producer: Jerome Brownstein; Produced by Bruce Weiss and Hal Hartley; Edited, Written & Directed by Hal Hartley.
with Adrienne Shelly (Audry Hugo), Robert Burke (Joshua "Josh" Hutton), Christopher Cooke (Vig Hugo), Julia McNeal (Pearl), Gary Sauer (Emmet), Mark Bailey (Mike), etc.

Hal Hartley のデビュー長編です。1990年代には日本公開されず、 2014年に『ニューヨーク・ラブストーリー』の邦題で公開された際は見逃し、今回、初めて観ました。

ハーバード大学の文学部への入学資格を得られるだけの学力がありながら、 自動車修理工場を営む父にそれが認められるほどの理解も経済力もない Audry、 恋人とその父親を殺した罪による服役から釈放されたばかりの Josh の、二人の愛を描いています。 その自動車修理の腕を買われて Josh が Audry の父の工場に雇われることで2人は恋に落ちるものの父に関係を禁じられます。 しかし、二人には困難を乗り越えるようという程の積極性はなく、 Audry は学費稼ぎに知り合いのカメラマンのコネでモデルの仕事を始め家を出、 Josh は言われるままに Audry との関係を断ち仕事に専念します。 ラストは、ヌードモデルの仕事をした Audry を連れ戻すよう父から頼まれるものの、Josh はそれを果たせず。 しかし、Josh が来たことに気付いたことで Audry は彼を追い、落ち合った2人が逃避行を始めるところで映画は終わります。

続けて観た Trust とも共通する、 都市下層の居場所のない男女の不器用な恋愛をオフビートでデットパンな演出で描いたロマンチックコメディとでもいうもの。 Hal Hartley の作風の原点を見るようでしたし、そんな作風を楽しんで観ました。

Trust
『トラスト・ミー』
1990 / Zenith, True Fiction Pictures / Possible Film / 107 min. / color
a Hal Hartley film.
Cinematographer: Michael Spiller; Production Designer: Dan Ouellette; Exective Producer: Jerome Brownstein; Procuder: Bruce Weiss; Written & Directed by Hal Harltey.
with Adrienne Shelly (Maria Coughlin), Martin Donovan (Matthew Slaughter), Merritt Nelson (Jean Coughlin), Edie Falco (Peg Coughlin), John McKay (Jim Slaughter), etc.

日本では『シンプル・メン』公開後の1993年に公開された、長編第2作です。 公開当時に観ましたが、断片的なイメージと大まかなプロット程度の記憶で、ストーリーの細部はほぼ忘れていました。

女性主人公 Maria を演じるのが同じ Adrienne Shelly で、 腕の立つ技術者だけれども刑務所 (少年院) にいたという過去を持ち社会に居場所が無い男性主人公 Matthew の設定も The Unbelievable Truth の Josh に似ており、 The Unbelievable Truth の変奏ともいえるような映画ですが、プロットはより練られています。 聖職者のように世間離れした Josh に対し Matthew は世間とのズレに葛藤しますし、 女性主人公 Maria も望まない妊娠の結果、退学になり、父は叩かれたショックで死に、ボーイフレンドには逃げられるという、 The Unbelievable Truth の Audry より厳しい状況設定です。 2人の親がどちらもいわゆる毒親で、家庭すら安心できる場所ではありません。 そんな2人が出会い、人情、信頼といったもので繋がります。

「放っとけない」という人情やタイトルにあるような信頼を恋愛に対比させるような会話もあり、 情熱的に恋に落ちて2人で逃避行するのではなく、生活のために工場で地道に働くといった展開で、いわゆる恋愛映画をずらしていきます。 しかし、Maria や Matthew がアロマンティックなわけではなく、むしろそういうプロットも含めてデッドパンなロマンティック・コメディだったのだな、と、見直して気付かされました。 特にラスト、工場を道連れにした手榴弾自殺を試み不発により失敗した Matthew が警察に逮捕され、彼を止めようとした Audry と引き離されていく場面で終わるのですが、 そういったエンディングにむしろ、古典的とも言える最底辺の男女の不器用な恋物語、人情メロドラマを感じました。 男が警察に取り押さえられ女と引き離されて終わる 島津 保次郎『上陸第一歩』(1932) [鑑賞メモ]、 もしくはその元ネタのJosef von Sternberg: The Docks of New York (1928)) を思い出しました。

Simple Men
『シンプルメン』
1992 / Fine Line Features, Zenith, American Playhouse Theatrical Films, True Fiction Pictures / Possible Film / 105 min. / color
a Hal Hartley film.
Director of Photography: Michael Spiller; Production Designer: Dan Ouellette; Exective Producer: Jerome Brownstein & Bruce Weiss; Producer: Hal Hartley & Ted Hope; Written & Directed by Hal Harltey.
with Robert Burke (Bill McCabe), William Sage (Dennis McCabe), Karen Sillas (Kate), Elina Löwensohn (Elina), Martin Donovan (Martin), John MacKay (Dad), etc.

日本では最初に公開された長編第3作で、1992年公開当時に観ましたが、 Trust 同様、ストーリーの細部はほぼ忘れていました。

強盗犯罪者の兄 Bill と大学生 Dennis の兄弟が、警察に追われながら、 元大リーグ野球選手ながら革命家となり爆弾テロの罪で服役中に病院から逃走した父 (Dad) を追うという、犯罪サスペンス的なプロットです。 しかし、Hal Hartley らしく緊迫感の薄いオフビートな展開で、不器用な登場人物が繰り広げるコメディとも言える映画です。 父を追いかけて来たロングアイランドで居座ることになる酒場を経営する謎めいた女性 Kate と Bill とのロマンチックな関係や、 Kate と一緒に住んでいた父の愛人 Elina と Dennis との微妙な関係からなる、メロドラマ的な要素も感じられました。

The Unbelievable TruthTrust では、 Adrienne Shelly 演じる Audry や Maria は主役であり、 進学や仕事の選択肢の無さ、性的搾取、望まない妊娠など、女性の生き辛さとそれらへの抗いが描かれていました。 Simple Men は、Bill & Dennis の兄弟が主役ということもあってか、 Kate や Elina の女性像が男性に都合のいい受身的なもの、母のように受容する存在になってしまったように感じました。 もちろん、「私はあなたの母ではない」的な台詞で Elina が Dennis を拒絶する場面もあり、ある程度そういう問題点を監督も意識していたのではないかと思う所もありましたが。 Bill が父と一緒に逃亡せず、Kate の元に戻り、そこで警察に連行されるというエンディングは Trust の変奏でしょうか。

3作通して観て、大掛かりな仕掛けが使えないという限られた演出を逆手にとりつつデットパンな演技からなる会話劇でオフビートさを纏っていて、 1990年代に観た時はそこに惹かれましたが、 今観ると、かなりストレートにロマンチック&人情コメディだったのだと、感慨深いものがありました。 都市労働者階級の人々の物語という印象は残っていなかったのですが、 特に The Unbelievable TruthTrust は明らかにそうで、 労働の場面も含めて、Jim Jarmusch よりも Aki Kaurismäki に近いものを感じました。 Hal Hartley の映画をよく観ていた1990年代の時から Trust が最も好きでしたが [関連する鑑賞メモ1, 2]、 今回、The Long Island Trilogy 『ロング・アイランド・トリロジー』をまとめて観て、 Trust の良さを改めて実感しました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

前日に YBA&BEYOND 展を観たのに続き、 Hal Hartley の映画をまとめて観て、 その後しばらく、頭の中がすっかり1990s回顧モードになってしまいました。

[4342] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Apr 19 23:19:23 2026

先週末金曜は人間ドック受診のため休暇。終わって胃カメラの鎮静剤が切れた午後遅めに、乃木坂へ。 この展覧会を観てきました。

YBA&BEYOND - British Art in the 90s from the Tate Collection
国立新美術館 企画展示室1E
2026/02/11-2026/05/11 (火休;5/5開), 10:00-18:00 (金土 -20:00)
Sarah Ainslie, Francis Bacon, Richard Billingham, Sutapa Biswas, Black Audio Film Collective, Henry Bond, Christine Borland, Angela Bulloch, Helen Chadwick, Dinos Chapman, Jake Chapman, Mat Collishaw, Keith Coventry, Michael Craig-Martin, Martin Creed, Jeremy Deller, Cathy De Monchaux, Tracy Emin, Ceal Floyer, Mark Francis, Anya Gallaccio, Gilbert & George, Liam Gillick, Douglas Gordon, Lucy Gunning, Richard Hamilton, Mona Hatoum, Lubaina Himid, Damien Hirst, Derek Jarman, Sarah Jones, Anish Kapoor, Jim Lambie, Michael Landy, Mark Leckey, Sarah Lucas, Steve McQueen, Lisa Milroy, Seamus Nicolson, Chris Ofili, Julian Opie, Cornelia Parker, Simon Patterson, Grayson Perry, Steven Pippin, Marc Quinn, Julie Roberts, David Robilliard, Johnnie Shand Kydd, David Shrigley, Georgina Starr, Wolfgang Tillmans, Gavin Turk, Mark Wallinger, Gillian Wearing, Rachel Whiteread, Elizabeth Wright.

1980年代末に活動を開始し1990年代に YBA (Young British Artists) と呼ばれた現代美術の作家たち (Damien Hirst, Tracey Emin, etc) や、 その前後に近い文脈で活動した作家たち (Julian Opie, Jeremy Deller, etc) を特集した、 英国 Tate のコレクションに基づく展覧会です。 当時、YBAという呼称はさほど強調されていなかったように思いますが、 Real/Life - New British Art (栃木県立近代美術館, 1998) のような展覧会である程度まとめて観る機会がありました [鑑賞メモ]。 その後も、YBAとして纏められた形ではないですが、国際現代美術展などで、YBAやその近傍の作家を観る機会はありましたが、 コンセプチュアルでビデオ等も使ったインスタレーション作品や社会問題等を取り上げるプロジェクト的な作品が並んでいるのを観ながら、 個々の作品のメッセージを受け取るというより、 当時を思い出しつつ21世紀の現代アートの前駆だったのだなあという感慨に浸るように観ました。

自分にとってYBAの衝撃は Damien Hirst などではなく、 Tracey Emin, Georgina Starr, Gillian Wearing の三人展 English Rose (The Ginza Art Space, 1998) [鑑賞メモ]。 YBA&BEYOND で取り上げられていたのは、 いずれもインスタレーションではなくビデオ作品でした。 女性の性的自己決定の困難さを主題にした Tracey Emin: Why I Never Become A Dancer (1995) こそ スポットライトとして取り上げられ大きく上映されていましたが、他は小さなモニターでの上映でした。 Gillian Wearing の作品は English Rose で観た時は良いとは思わなかった Dancing In Peckham (1994) でしたが、 観客の「人通り」の中で観ると、人通りのある中で他人には音が聞こえない状態で踊る、というコンセプトが生きます。 Tate コレクション縛りがあるので仕方ないとはいえ他にもっと良い作品があるのにと思いつつ、やはりこの3人は良いな、と。

いずれもYBAではなく、同時代の近傍で活動した作家という位置付けかと思いますが、 木製の食卓の上にスチール製のキッチン用品を並べて通電し、電球をちらつかせたりジジジジいう音を立たせたりした Mona Khatum の Home (1999) や、 Cornelia Parker の家が爆発した瞬間を凍結したかのような空間インスタレーション Cold Dark Matter: An Exploded View (1999) など、 家庭にある不穏さを凄みのあるインスタレーションとした作品に感銘を受けつつ、 English Rose の3人だけでなく、この時代は良い女性作家が出てきていたのだなあ、と改めて気付かされました。 YBAの女性作家では Sam Taylor-Wood が代表格だったように思うのですが、彼女の作品が出ていなかったのは意外でした。

『国際芸術祭「あいち2025」―灰と薔薇のあいまに』での高精細な映像インスタレーション Vertigo Sea (2015) も印象的だった John Akomfrah の、 Black Film Audio Collective 時代の TV (Channel 4) 向けドキュメンタリー Handsworth Songs (1986) がスポットライトとして取り上げられていました。 当時、YBAの文脈にいたわけでなく、そもそも1990年代にアートの文脈で発表された作品ではないですが、現在は現代アートの文脈で活動するということで、取り上げられたのでしょうか。 Virtigo Sea とは対称的な、むしろ作り込みを避けたようなドキュメンタリーでしたが、こういう作風から始まったのか、と。 会場で上映されていたインタビュービデオで Akomfra は、新しいドキュメンタリーのあり方としてフィルム・エッセーというスタイルを採ったこと、しかし、そのスタイルもリアリティショーに取って代わられたことを語っていました。 バーミンガムの Handsworth といえば、ブリティッシュ・レゲエの曲/アルバム Steel Pulse: Handsworth Revolution (1978) を思い出します。 Handsworth Songs は1985年の暴動を扱っていて、映画の中でその言及もありませんが、Handsworth Revolution のようなアルバムが作られた背景を見るような興味深さもありました。

このように、YBA 以外の作家にむしろ興味が引かれましたが、 もちろん、Damien Hirst や Jake & Dinos Chapman のような作家のいかにも当時らしい作品や、 Freeze 誌の資料展示もありました。 同時代の作家も文脈として示しつつ狭義の YBA を再評価するというより、 YBA を核に20世紀末イギリスの当時の若手アーティストたちによる現代アートの興隆を示すいう意味で、YBA より BEYOND に重点を感じた展覧会でした。

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この後は晩に、京橋へ移動。 国立映画アーカイブの『発掘された映画たち2026』で、 小津 安二郎 『父ありき』 (松竹大船, 1942) [デジタル復元・最長版]を観ました。 以前に観たのは2020年のゴスフィルムフォンド版での上映でしたが [鑑賞メモ]、 画面のコントラストがはっきりして観やすくなりました。 GHQ検閲前のフッテージが残るゴスフィルムフォンド版を観ていたせいか、フッテージが補われて大きく映画印象が変わったわけではありませんでした。 生誕100年 (2003年) にNHK衛生映画劇場で観たのは松竹のGHQ検閲版ではないかと思うのですが (当時はそこまで気にしていなかったので記憶が定かではありません)、 むしろそちらの印象が上書きされてしまって今やよくわかりません。

[4341] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Apr 12 22:08:34 2026

先週末は、土日とも上野公園へ。 3月から4月にかけて東京文化会館をメインに上野界隈でクラッシックの『東京・春・音楽祭』が開催されています。 そのプログラムとして、2025年に Pierre Boulez が設立した現代音楽専門アンサンブル Ensemble intercontemporain が来日し、Boulez の曲を中心に演奏するコンサートをしたのですが、 今年も『東京・春・音楽』で再び来日しました。 2025年は平日で見逃しましたが、今年は週末の公演だったので、土日のそれぞれのコンサートに足を運びました。

東京文化会館 小ホール
2026/04/04, 19:00-20:40
Ensemble intercontemporain: Jeanne-Marie Conquer, Hae-Sun Kang (violin), Odile Auboin, John Stulz (viola), Éric-Maria Couturier, Renaud Déjardin (cello), Nicolas Crosse (contrabass), Sophie Cherrier (flute), Philippe Grauvogel (oboe), Jérôme Comte, Martin Adámek, Alain Billard (clarinet), Lucas Lipari-Mayer, Clément Saunier (trumpet), Lucas Ounissi (trombone), Aurélien Gignoux (cimbalom); Pierre Bleuse (conductor), Jenny Daviet (soprano), Joanne Evans (contralto).
György Kurtág: Signs, Games and Messages (excerpts) - Doloroso, The Carenza Jig, Schatten.
Malika Kishino: Ochres
György Kurtág: Signs, Games and Messages (excerpts) - Hommage à J.S.B
J. S. Bach, arr. György Kurtág: Christe, du Lamm Gottes BWV619
Malika Kishino: Nox (Gold and Silver) II
György Kurtág: Signs, Games and Messages (excerpts) - Hommage à John Cage, Summaia a B.P.Mondasinak, Ilona Rozsnyai in memoriam
George Benjamin: Into the Little Hill (Japan première)

前半は、7〜8名以下の少人数の編成を組み替えつつ、 ハンガリーの György Kurtág: Signs, Games and Messages からの曲に Kurtág 編曲の Bach や Malika Koshino [岸野 末利加] の曲も交えて。 Signs, Games and Messages の曲は1分前後と非常に短いのですが、 途中2回ほど拍手が入る程度の合間はあれど、全体として1つの曲のように続けての演奏でした。 弦楽器や oboe, trombone など、組み合わされる様々な楽器の響き合いを聴くようでした。

休憩を挟んで後半は、20人弱の編成に soprano, contralto の女声2名で、 イギリスの作曲家 George Benjamin による2006年作の chamber opera (“lyric tale” と銘打たれている)。 Martin Crimp によるリブレットは「ハーメルンの笛吹き男」をベースにしているとのことですが、 配布されたハンドアウトによると、移民排斥批判を寓話的に描いたもののようでした。 女声2人の役は固定ではなく、様々な登場人物を演じ歌っていきます。 mezzosoprano より低い contralto は珍しいようにも思いましたが、この音域はアンサンブルと被ると聴き取りづらく、歌詞は英語でしたが声楽的な発声では意味を取り難く。 演出無しの演奏会形式で話を追うのはなかなかに厳しく、場面的なイメージも湧きませんでした。 そんなこともあり、むしろ、cimbalom や mandolin のような楽器の音色使いが印象に残りました。

東京文化会館 小ホール
2026/04/05, 16:00-17:40
Ensemble intercontemporain: Jeanne-Marie Conquer, Hae-Sun Kang (violin), John Stulz (viola), Éric-Maria Couturier, Renaud Déjardin (cello), Nicolas Crosse (contrabass), Alain Billard, Martin Adámek (clarinet), Marceau Lefevre (bassoon (fagott)), Jean-Christophe Vervoitte (horn), Lucas Lipari-Mayer (trumpet), Lucas Ounissi (trombone), Sébastien Vichard (piano), Aurélien Gignoux (cimbalom); Pierre Bleuse (conductor), Jenny Daviet (soprano).
Olga Neuwirth: Fondamenta II
György Kurtág: Scenes from a Novel op.19
Wolfgang Rihm: Chiffre I
Rebecca Saunders: Hauch II
Wolfgang Rihm: Chiffre VI
Rebecca Saunders: blaauw / sinjo
Wolfgang Rihm: Chiffre VII

前半はオーストリア Olga Neuwirth の1998年の bcl × 2 + vlc という変則的な編成の曲の後、György Kurtág の歌曲。 女声 soprano にバックが vln, cb に cimbalom という、曲想的にはそれほどでは無いもののフォーク的にも感じる編成で、歌声とのバランスも良く聞こえました。 ハンガリー在住ロシア人詩人 Rimma Dalos の詩に曲を付けたもので、 歌詞はロシア語で意味は取れませんでしたが、そのニュアンス富んだ歌声を楽しみました。

休憩を挟んで後半は、ドイツ Wolfgang Rihm のアンサンブルのための曲 Chiffre シリーズからの3曲に、 イギリスの Rebecca Saunders による viola、trumpet それぞれソロの2曲を挟む構成。 明確な区切りを付けず、ソロのミュージシャンも前後の演奏の間にそろそろと出入りするほどで、拍手する間もなく、全体で1曲のように演奏しました。 Rihm の曲は、動きを抑えたアンサンブルの響きに強い piano の高音を散りばめるよう。 一方の Saunders は一つの楽器の響きに集中。2曲目はベルが2つ付いた改造 trumpet を使ってましたが、客席に背を向けて演奏していたのは、どう演奏してるか見せないためでしょうか。

正直、土曜は音楽を掴みかねた感があり、不安を抱えて日曜に臨んだのですが、杞憂でした。 日曜は、後半のいかにも現代音楽らしいアンサンブルやソロも良かったですが、前半の歌曲が最も楽しめたでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4340] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Apr 5 21:59:03 2026

先週末土曜は、晩に初台へ。この舞台を観てきました。

新国立劇場 小劇場
2026/03/28, 18:00-19:00.
Curated by William Forsythe and Rauf "RubberLegz" Yasit
Choreography by William Forsythe, Rauf“ Rubberlegz” Yasit, Matt Luck, Riley Watts, Brigel Gjoka, Aidan Carberry and Jordan Johnson (JA Collective)
Performed by Rauf“ Rubberlegz” Yasit, Matt Luck, Riley Watts, Brigel Gjoka, Aidan Carberry and Jordan Johnson
Technical consultant: Niels Lanz
Distribution and Tourmanagement: Plan B – Creative Agency for Performing Arts
Co-production: La Biennale di Venezia
World Premiere: ZKM | Center for Art and Media, 17/11/2023
主催: 新国立劇場.

アメリカ出身で1984年から20年間ドイツ Ballet Frankfurt の芸術監督として、 2004年の Ballet Frankfurt 終了後、ドイツの Dresden と Frankfurt を拠点とする The Forsythe Company を設立、 2015年からはアメリカに戻り University of Southern California の Glorya Kaufman School of Dance の教授、芸術顧問を務める振付家 William Forsythe と クルド系のドイツ出身で Los Angeles を拠点とするダンサー/振付家の Rauf "RubberLegz" Yasit との共同キュレーションで、 ダンサーたちと共同で振り付けた2023年作品です。 Ballet Frankfurt [鑑賞メモ] 時代の作品は、他のカンパニーのレパートリーになっているものもあり、 最近も観る機会はありましたが [鑑賞メモ]、 最近の作品を観るのは初めてです。 全体としてナラティブな要素もなく、音楽を身体で抽象的に空間に表現するものでもなく、 ヒップホップやバレエの動きを分析して再構成していくのを観るような作品でした。

会場に入ると、客席に囲まれた白い正方形の舞台上で寝転び絡み合いジリジリと動く2人。その会場の形もあって、まるで柔道の寝技よう。 そのうちの体格の良い1人が Rauf "RubberLegz" Yasit でしょうか。 一瞬の暗転を経て開演すると、もう1人が現れて2人を解きほぐし起き上がらせて動きが始まります。 Yasit はヒップホップダンスをバックグラウンドとするようで、特に床に手を突いての power moves のテクニックを解体再構成したような動きを織り交ぜつつ、他のダンサーと動きを絡めていきます。 続いて、2人のダンサーがバレエのテクニックを解体再構成したような動きで踊ります。反転した跳躍のような動きなど、Forsythe らしく感じました。 そして、最後はそのダンサーのうちの1人 (Brigel Gjoka でしょうか) と Yasit が、 バレエとヒップホップの動きをユーモア込めて対比するようなデュオで終わりました。

舞台装置の無い正方形の白い舞台に少々暖かめの白い照明をフラットに使い、時々、場面を区切るように暗転しますが、その間で大きく状況を転換するわけではありませんでした。 音楽も使わず、高周波のハム音のようなキーンという電子音が音量低く断続的に鳴る程度。 そんな、劇的な効果すら排除したミニマリスト的な演出でしたが、 それだけに、ダンサーによるボディパーカッションのように身体を叩く音や、掛け声に近い動きに合わせた息遣いがむしろ際立ち、音楽のようにすら聴こえました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4339] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 29 22:21:27 2026

先週末三連休の中日土曜は、昼には銀座から京橋へ移動。 国立映画アーカイブでおよそ1年ごとの頻度で開催されている映画人追悼企画 『逝ける映画人を偲んで 2023-2024』で、 実験アニメーション関連の以下のプログラムを観てきました。

『久里洋二 短篇アニメーション作品集』
approx. 87 min.
「人間動物園」
1961 / 久里実験漫画工房 / 2 min. / 35 mm / color
監督・アニメーション: 久里 洋二; 詩: 谷川 俊太郎; 音楽: 武満 徹; 声: 水島 弘, 岸田 今日子.
「LOVE(愛)」
1963 / 久里実験漫画工房 / 5 min. / 35 mm / color
監督・アニメーション: 久里 洋二; 詩: 谷川 俊太郎; 音楽: 武満 徹; 声: 水島 弘, 岸田 今日子.
「THE BUTTON(ボタン)」
1964 / 久里実験漫画工房 / 3 min. / 35 mm / color
監督・アニメーション: 久里 洋二.
「アオス/AOS」
1964 / 久里実験漫画工房 / 3 min. / 35 mm / B+W
監督・撮影: 久里 洋二; アニメーション: 古川 肇郁, 林 政道; 声: 小野洋子; 撮影: 古城 紀久子, 乃村 知子.
「SAMURAI/侍」
1965 / 久里実験漫画工房 / 7 min. / 35 mm / B+W
監督: 久里 洋二.
「FLOWER(花)」
1967 / 久里実験漫画工房 / 1 min. / 35 mm / color
監督: 久里 洋二.
「The ROOM(部屋)」
監督・撮影・アニメーション: 久里 洋二; 音楽: 一柳 慧.
1967 / 久里実験漫画工房 / 5 min. / 35 mm / color
「WHAT DO YOU THINK?/あなたは何を考えているの?」
1967 / 久里実験漫画工房 / 5 min. / 35 mm / color
監督・撮影・アニメーション: 久里 洋二; 詩: 谷川 俊太郎; 音楽: 山崎 宏; 声: 水島 弘, 岸田 今日子.
「AU FOU!(オー・フー!/殺人狂時代)」[カラー版]
1967 / 久里実験漫画工房 / 10 min. / 35 mm / color
監督・アニメーション: 久里 洋二; アニメーション: 古川 肇.
「二匹のサンマ」[カラー版]
1968 / 久里実験漫画工房 / 13 min. / 35 mm / color
監督: 久里 洋二; 撮影: 古川 タク; 音楽: 山上 路夫.
「THE MIDNIGHT PARASITES/寄生虫の一夜」
1973 / 久里実験漫画工房 / 10 min. / 35 mm / color
監督: 久里 洋二; 音楽: 冨田 勲.
「LIVING ON THE BOUGHS(木の上の生活)」
1974 / 久里実験漫画工房 / 2 min. / 35 mm / color
監督: 久里 洋二; 音楽: 武満 徹.
「POP(ポップ)」
1974 / 久里実験漫画工房 / 3 min. / 35 mm / color
監督: 久里 洋二; アニメーション: 佐々木 一恵.
「MANGA(漫画)」
1977 / 久里実験漫画工房 / 7 min. / 35 mm / color
監督: 久里 洋二; 音楽: 山崎 宏.

1950年代に活動を始め2024年に亡くなった一コマ漫画、イラストレーターで主に知られる作家 久里 洋二が、 1960年に設立した久里実験漫画工房の映画部で制作した短編アニメーションを回顧する上映です。 映画祭などでの受賞作を中心に1960年代から1970年代にかけて制作した14作品が年代順に上映されました。

彼の主要な仕事の一つである一コマ漫画のスタイルで描かれた絵を使ったドローイングの切り紙によるアニメーションです。 線画を基本として、彩色されている場合もありましたがほぼ白黒で、余白多めの画面です。 声が付けられていても叫び声のようなほぼ抽象的なもののみで、 シュールでユーモラスなオチのある寓話的というか一コマ漫画的なスケッチを連ねたような作風です。 悲鳴から声を連ねて音楽を作っていくかのような「人間動物園」でも、短いながら檻の中の男女のSM的な関係を思わせる状況を描きます。 そんな寓話的なシチュエーションから開発を皮肉に描いた物語を作り出した「二匹のサンマ」、 悪夢的なイメージの連鎖に仕上げた「THE MIDNIGHT PARASITES/寄生虫の一夜」が、特に印象に残りました。

「人間動物園」のような作品に典型的ですが、抽象的な音使いというか声使い音楽的です。 音楽クレジットに 武満 徹 や 一柳 慧 の名前があがり、小野 洋子 のパフォーマンスでの声が使われたり。 これらの実験的なアニメーションは草月ホールが発表の場としていたということで、 当時の前衛がジャンルを越えた狭いサークルで、まだ前衛たりえていた20世紀半ばという時代も感じました。

『田名網敬一作品集』
approx. 51 min.
「Commercial War」
1961 / 5 min. / 16 mm / color
監督・アニメーション: 田名網 敬一; 撮影・アニメーション: 田中 邦彦; 編集: 杉山 忠夫; 音楽: 山崎 宏.
「Artificial Paradise/人工の楽園」
1975 / 14 min. / 16 mm / color
監督: 田名網 敬一; 撮影: 遠藤 正.
「Crayon Angel」
1975 / 3 min. / 16 mm / color
監督: 田名網 敬一; 撮影: スタジオU; アニメーション: 佐藤 由美; 彩色: 田里 美紀.
「Sweet Friday/優しい金曜日」
1975 / 3 min. / 16 mm / color
監督: 田名網 敬一; 撮影: スタジオU; アニメーション: 佐藤 由美; 彩色: 田里 美紀.
「WHY」
1975 / 10 min. / 16 mm / color
監督: 田名網 敬一; 撮影: 遠藤 正; 音楽: 西岡 たかし.
「4 EYES」
1975 / 9 min. / 16 mm / color
監督: 田名網 敬一; 撮影: 遠藤 正.
「闇の記憶・夢の陰影」
2000 / 4min. / 16 mm / color
監督: 田名網 敬一; 動画: 相原 信洋; 音響: 稲垣 貴士.
「風の呼吸(アニメーションによる往復書簡)」
2000 / 4min. / 16 mm / color
監督: 田名網 敬一; 監督・撮影: 相原 信洋; 音響: 稲垣 貴士.

1950年代後半から主にデザイナー、アートディレクターの文脈で活動し、田名網 敬一 が制作した短編映画の回顧上映です。 2024年に国立新美術館で大規模な回顧展 『記憶の冒険』 が開催されましたが (残念ながら見逃しました)、その会期中に亡くなりました。 上映された作品は1971年、2000年、2001年制作が1本ずつ、残り5本は1975年の制作のものと制作時期に偏りがあり、その上映順も年代順ではありませんでした。

久里 洋二 の下でアニメーションを学んだと言われ、アニメーション技法を使った表現も使われていますが、 写真などのイメージを加工してコラージュする技法も多用されます。 ナラティブの要素は排除され、カラフルで画面を埋め尽くすようなイメージは、シュールというよりサイケデリックです。 一コマ漫画と商業美術のディレクターというバックグラウンドの違いもあるかもしれませんが、 20世紀半ばのモダニズム的な表現から、1960年代後半以降のカウンターカルチャー色濃い表現へ。 久里 洋二 と続けて観て、そんな時代の移り変わりを感じました。

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[4338] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Mar 24 23:36:46 2026

週末三連休中日土曜は、午前のうちに銀座へ出て、この展覧会を観てきました。

『ポーランドの巨匠 ヤン・レニツァ ポスター、アニメーション、イラストレーション、舞台』
Jan Lenica. Maestro z Polski. Plakat, Animacja, Ilustracja, Teatr
ギンザ・グラフィック・ギャラリー
2026/02/12-2026/03/26 (日祝休), 11:00-19:00.

20世紀後半に活動したポーランド出身のグラフィックデザイナー、絵本・カートゥン作家の Jan Lenica の、 オペラ、演劇や展覧会のポスターから、アニメーション、絵本に風刺画まで、幅広い活動をカバーする展覧会です。 1950年代共産政権時代のポーランドで活動を始め、1963年にフランス・パリへ移住、1986以降はベルリンを拠点としていましたが、パリやベルリンの時代でもポーランドの劇場や展覧会の仕事を続けていました。

同時代のポーランド出身のグラフィックデザイナーというと、ギンザ・グラフィック・ギャラリーでは Henryk Tomaszewski [鑑賞メモ]、 Roman Cieślewicz [鑑賞メモ] と取り上げてきましたが、彼らと共通する、 また同時代のチェコの映画ポスター [鑑賞メモ] とも共通する、 シュールレアリズムの影響を感じるポスター・デザインです。 といっても、余白使いやフォントのレイアウトに20世紀半ばのモダニズムとの共通点も感じる Tomaszewski や Cieślewicz と比較して、 画面を埋めつつすような有機的な形状のドローイング、手書きレタリングやセリフのある書体の多用など最もシュールレアリズム的です。

オペラや映画のポスターは、そのイメージを引用して構成するのではなく、自由に着想して抽象化して象徴的に描いた人物像等をメインに据えたもので、 元ネタを知っていると、映画とポスターとのイメージの間のギャップが面白く感じます。 その絵の強さもあって19世紀以前のクラシカルな作品のものよりも、 LuluWozzeck のような20世紀オペラの方がポスターの作風にも合って、目を引きます。 (実際、ギンザ・グラフィック・ギャラリーのパンフレットは Wozzeck が使われていました。) しかし、ツボにハマったのは地獄の業火に焼かれる Don Giovanni。 その場面を選びますか、と思いつつも、Ivo van Hove 演出を思い出して [鑑賞メモ]、やっぱりその場面を使うよね、と。

また、映画ポスターよりも人形劇ミュージアムやサーカスのポスターに、 絵本作家としての作風にもつなががる不気味可愛さが感じられました。

同時代チェコとの関係といえば、Karel Zeman のアニメーション映画 Vynález skázy [pl. Diabelski wynalazek] 『悪魔の発明』 (1958) のポスターが、 映画におけるイメージを比較的ストレートに引用したデザインだったのも、印象に残りました。

アニメーション作品に関する展示は原画などの関連資料展示だけでなく、 2Fライブラリを使って、15分弱の短編作品を2本、フィルムでではなくデジタル化したものをプロジェクタで上映していました。 Walerian Borowczyk と共同監督した Dom [en. House] 『家』 (1958) は 実写とストップモーションアニメーションを組み合わせたシュールレアリスティックな作風。 もう一本、Labirynt [en. Labyrinth] (1963) は、 19世紀風の細密で白黒の、時に一部彩色された挿絵版画を切紙アニメーションにしたもので、 そのコラージュ的なセンスとシュールな展開は、 アニメーション化された Max Ernst: La femme 100 têtes 『百頭女』 (1963) を観るようでもありました。

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[4337] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 22 23:12:50 2026

週末三連休初日、春分の日は細かい雨が降ったり止んだり、冬に戻ったような寒さの中、彼岸の墓参。 その後、夕方に買い物で六本木へ寄ったついでに、この展覧会を観てきました。

Roppongi Crossing 2025: What Passes Is Time. We Are Eternal.
森美術館
2025/12/03-2026/03/29 (会期中無休), 10:00-22:00 (火 -17:00; 12/8 -17:00; 12/30 -22:00)

森美術館でアニュアル開催されている、日本の現代アートシーンを取り上げる展覧会です。 前回行ったのは3年前 [鑑賞メモ] とすっかり疎くなっていますが、 最近の日本の現代アート・シーンを伺う良い機会かと、覗いてみました。 といっても、展示数が多く多種多様といえば言いけれとも雑多な雰囲気で、特に小さな作品などこの雰囲気に損している作品もあるだろう、とも思います。

フライヤやポスターにもその写真が使用されていた A.A.Murakami 《水中の月》 (2025) は、 煙を封じ込めたシャボン玉を、モノクロの色彩感も含め、柳の木のような形の管から玉がまろび出るような造形にスマートに仕上げ、フライヤに取り上げられているだけのものがありました。 窓の外の地平線とウイスキーの水面を合わせたインスタレーションも、存在感がありました。

また、映像字幕や香港の敷石をコンセプチュアルかつミニマリスティックに模した展示をしていたノルウェー出身東京在住の Garder Eide Einarsson や、 尾道の民家の瓦屋根に着想したマレーシア出身で広島も拠点とした Shooshie Sulaiman など、 いわゆる海外をルーツに日本で(も)活動する作家に存在感があり、そこに時代を感じました。

MAM Project 034: Sonia Boyce
森美術館
2025/12/03-2026/03/29 (会期中無休), 10:00-22:00 (火 -17:00; 12/8 -17:00; 12/30 -22:00)

元イギリス領カリブのガイアナとバルバドスのそれぞれの出身の親を持つアフロ・カリブ系イギリス人作家による個展です。 ワークショップを通して挙げられたブラック・ブリティッシュの女性歌手の名前が書かれた壁と、 音楽やファッションの雑誌の切り抜きから作られたプラカード様のものからなるインスタレーションです。 よくよく見ていると南アジア系と思われる人も含まれてるようにも思われブラック・ブリティッシュの定義に釈然としないものがあったものの、 音楽を通して知った名も多くありましたが、改めてカリブやアフリカなどから来た人々のイギリスのポピュラー音楽をはじめとする文化への寄与を意識させられました。

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[4336] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 15 22:02:34 2026

この週末土曜は、実家の野暮用を済ませた後に、先週末に続いて渋谷円山町へ。

シネマヴェーラ渋谷の特集特集『生き続ける清水宏』で、未見だったこの2本を観てきました。

『蜂の巣の子供たち』
1948 / 蜂の巣映画部 / 84 min. / 35 mm / 白黒.
監督: 清水 宏.
島村 俊作 (復員者), 夏木 雅子 (引揚者), 御庄 正一 (叔父貴と言ふ男); 久保田 晋一郎, 岩本 豊, 三原 弘之, 平良 喜代志, 硲 由夫, 中村 忠雄, 川西 清 (戰災児); 千葉 義勝 (引揚児), etc.

教護施設育ちで身寄りの無い復員兵の島村が、下関駅で出会った戦災孤児たちと仕事を求めながら瀬戸内を東へ行く、 最後は島村が戦前にいた学院「みかへりの塔」 (戦前の清水 宏の映画『みかえりの塔』 (松竹大船, 1941) から採られている) に辿り着くというオールロケのロードムービー的な群像劇です。 引揚してきたものの頼れる身寄りを広島の原爆で失い神戸でパンパン (売春婦) になろうという所を島村に救われる夏木、 下関駅では戦災孤児たちの犯罪グループの元締め、終わり近くの神戸ではパンパンの女衒と裏稼業に手を染めるが最後は改心して共に学院へ向かう隻脚の「叔父貴」を含めた群像劇的な面もあります。

当時、清水が引き取って育てていた元浮浪児たちを使った彼らの身寄り探しという面もあり、 助監督、カメラマンを除き、プロの俳優やスタッフを使わずに制作されたという映画です。 確かに、滑舌の悪い子供たちの台詞など聞き取りづらく、特に前半は厳しいものがあると感じましたが、 次第にその世界に慣れて気にならなくなりました。 その俳優的な演技に頼り過ぎない抑制的な語り、厳しい状況を扱いつつも人情的なユーモアを忘れない所、そして、映画の中で多く使われている道ゆく一団を捉える遠景の構図の決まり方など、清水 宏らしさを楽しみました。

しかし、それだけでなく、終戦直後の日本の様子、特に行き場を失った復員兵や引揚者、孤児などが終戦直後の過酷な時代をどう過ごしていたのか伺われるようで、その点も興味深く観られました。 まだ近代化がさほど進んでおらず工場が立ち並んでいない瀬戸内の様子、戦災を免れた岩国の錦帯橋の姿や、復興が進んでいない瓦礫だらけの焼け野原となった広島の様子が捉えられていることろも、興味深く観ました。

『その後の蜂の巣の子供たち』
1951 / 新東宝/蜂の巢/清水プロ / 94 min. / 35 mm / 白黒.
監督: 清水 宏.
岩本 豊, 久保田 晋一郎, 三原 弘之, 千葉 義勝, 中村 貞雄, 川西 清, 硲 由夫, 平良 喜代志, 若林 令子, 麥田 シゲ子 (蜂の巢の子供たち); 大庭 勝 (大庭), etc.

『蜂の巣の子供たち』の3年後にその続編として撮られた映画です。 といっても、その物語の続きではなく、出演した子供たちが共同生活をする熱海近くの山中にある「蜂の巣」の様子を描いた映画です。 映画『蜂の巣の子供たち』を観たりその後の取材の雑誌記事を読んだことをきっかけに、手伝いたいという若者たちや、収容を望む浮浪児たちが訪れるようになります。 そんな彼らによって波風が立つ様子を、細かいエピソードを積み重ねるように、ユーモアも含めて描いて行きます。 最後は、浮浪児時代に世話になったことがあるという理由で新たに受け入れた浮浪児2人が他の人の物を盗んで脱走し、彼らを追いかけて大阪へ行くという大きな展開はありますが、 それも収まり日常へ戻って終わります。 子供の描写や美しい遠景など清水 宏らしさを楽しみましたが、 大阪に行く展開の所以外はほぼ「蜂の巣」内で展開するので、前作に比べると少々物足りなかったでしょうか。

清水 宏 はその後、戦災孤児を出演させた映画をもう1作、『大佛さまと子供たち』 (蜂の巣映画部, 1953) を撮っています。 今回は見逃しましたが、いずれ映画館で観たい物です。

20日まで続きますが、今回の特集上映で観るのはここまででしょうか。 『蜂の巣の子供たち』の中で間接的に言及されていた『みかえりの塔』 (松竹大船, 1941) など、 観られていない 清水 宏 の映画はまだまだあるので、今後の上映の機会を捉えて観たいものです。

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[4335] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Mar 10 22:44:15 2026

先の週末土曜は夕方までゆっくりした後、晩に南青山骨董通りへ。このライブを観てきました。

Luft (Mats Gustafsson & Erwan Keravec) + Otomo Yoshihide
Polaris (青山)
2026/03/07, 19:40-21:00.
Mats Gustafsson (flute, slide whistle, baritone saxophone), Erwan Keravec (cornemuse), Otomo Yoshihide [大友 良英] (electric guitar, turntable, electronics).

2000年代半ばに L'Occidentale de Fanfare [鑑賞メモ] や Niou Bardophones [鑑賞メモ] で知り、 Vox, Sonneurs といったプログラムや Terry Riley: In C - 20 Sonneurs (Buda Musique, 2023) や 8 sonneurs pour Philip Glass (Buda Musique, 2024) など最近の現代音楽に寄った活動まで、 CDで追ってきたブルターニュの cornemuse (bagpipe) 奏者 Erwan Keravec が来日している、ということで、 生で観るまたと無い機会かと足を運びました。 この来日は、free jazz/improv の文脈で活動するスウェーデンの Mats Gustafsson (The Thing, Fire!, etc) [関連する鑑賞メモ] とのプロジェクト Luft でのもので、 今回観たライブはこの2人に日本の大友 良英 [関連する鑑賞メモ] を加えたものでした。 休憩を挟んで約30分のセットを2回、アンコールを1回、休憩を含めて約1時間半のライブでした。

Niou Bardophone のような drums のいる編成では無いので free jazz というより improv 色濃く、 Mats Gustafsson も最初は flute (もしくはシングルリードのマウスピースを付けた fluteophone) から始まり、 baritone saxophone の野太いフリーキートーンのブロウなど煽り合うような展開で終わる、というように、前半後半ともに、小さめの音で探り合うような音出しから始まり次第に激しさを増して行くような展開。 大友も guitar や turntable の特殊奏法で応じ、むしろ、大友 の演奏がリズムを作り出していきます。 そんな中、特に前半の前半は Erwin Keravec も bagpipe の cornemuse の drone の口を塞いだりして特殊音を試みたりもしていましたが、楽器の形状上、特殊奏法には限界があると観ていても実感しました。 大きな音の出し合いのフェーズでは bagpipe は他に劣らず、drone に加えて chanter でのトレモロも駆使して聴かせました。

Urban Pipes のような Erwan Keravec のソロを聴かせる時間はほとんど無かったのは少々残念でしたし、 cornemuse 楽器の構造上、特殊奏法ベースの即興より、現代音楽的なコンポジションの方が合っているかもしれないとも思ってしまいましたが、 貴重な生での演奏を聴く機会を楽しみました。

Polaris はまだ神田小川町にあった頃以来の2年ぶりでした。会場は以前より狭くなったでしょうか。 しかし、大友 良英 の人気もあってか会場は鮨詰めの入り。 そんな中で小さな椅子に座って観るのはさすがに1時間半が限界でしょうか。 あと、会場内は禁煙でしたがドア外から入ってきてしまうタバコの煙も気になってしまいました。 最近はこのようなライブ会場からすっかり遠ざかっていたので、椅子の悪さとか、タバコ臭さとか、辛いものです。 昔はライブ会場なんてそんなものかと気にしなかった/ならなかったものですが、歳を取ったものです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

日曜は毎週末の実家方面の用事を済ませた後の午後遅めの時間、思い立って渋谷へ。 シネマヴェーラ渋谷の特集『行き続ける清水宏』で、 清水 宏 (監督) 『有りがたうさん』 (松竹蒲田, 1936) を観てきました。 ふと、清水 宏 の映画、そして、桑野 通子 を観たくなったので。 この映画はDVD/YouTubeで度々見返していますし、十余年前に書いた鑑賞メモに付け加えることはありませんが、 国立映画アーカイブのフィルムでの映画館上映で観るのはまた格別です。 現在の暗い世相、そして、昭和恐慌や二・二六事件という映画公開当時の暗い世相を思いつつ、そんな中でのユーモアと人情が沁みます。

[4334] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 8 20:13:47 2026

先週末の日曜は昼前から午後半日、池袋西口。 東京芸術劇場のリニューアル閉館を挟んで約2年半ぶりの開催となった 『ボンクリ・フェス』 (“Born Creative” Festival) も今回で8回目。 久々ということで前回 [鑑賞メモ] に続いて今年も足を運び、4つのコンサートを観ました。

『ポーランドの部屋 弦楽カルテット×電子音×映像』
Polish Room - String Quartet × Electronics × Video
東京芸術劇場 シアターイースト
2026/03/01, 11:45-12:40
NeoQuartet: Karolina Piątkowska-Nowicka (1st violin), Paweł Kapica (2nd violin), Michał Markiewicz (viola), and Krzysztof Pawłowski (cello), Radek Deruba (music video production).
NeoQuartet: String Theory - 1. Inevitable path; 2. Protocol XSPT; 3. The fifth element; 4.Neo Voyager, 5. Kyrie, 6. Trancemission; 7. Faroe Islands.

ポーランドの弦楽四重奏団による、ライブでの electronics と video projection との組み合わせての自作曲のコンサートです。 演奏は post-classical 的というか抽象度低めで、 minimal music はもちろん rock, jazz 的な低音部にビート感を感じる展開もありましたが、 最も耳を捉えたのは中盤の東欧 folk (民族音楽) 的に感じる旋律でした。 electronics の使い方は、electronica 的なテクスチャを加えるというより、むしろ歪んだ音への加工を多用していました。 投影ビデオは白黒、うっすら顔が浮かび上がったり、実写の布のテクスチャをベースにしたものもありましたが、 基本は、流体を思わせる粒子や (物理的な) 場を思わせる線を物理エンジンかそれ相当の処理を使って演奏に合わせて動かすものでした。

『アンサンブル・ノマドの部屋 室内楽アラカルト』
Ensemble NOMAD's Room - Chamber Music à la carte
東京芸術劇場 シアターウエスト
2026/03/01, 13:30-14:45.
アンサンブル・ノマド [Ensemble NOMAD], 佐藤 紀雄 [Sato Norio] (conductor, electric guitar), 出会 ユキ [Deai Yuki] (笙 [sho]), 蓮沼 執太 [Kasunuma Shuta] (water, sound will spin), 増田 義基 [Masuda Yoshiki] (wind, vibration).
Lisa Illean: Tiding I; Terry Riley: G Song; Zygmunt Krauze: Elegy; 蓮沼 執太 [Hasunuma Shuta]: Pierrepont; 藤倉 大 『笙協奏曲』 [Fujikura Dai: Sho Concerto].

ボンクリでは毎回お馴染みの日本のアンサンブルのコンサートです。 今回は、前半3曲はソロ、カルテット、トリオの少人数編成、 後半2曲は十余人のアンサンブルを舞台いっぱいに載せてのコンサートでした。 鑑賞魚水槽や吊るした紙に扇風機など非楽器音とアンサンブルが共演した 蓮沼 執太: Pierrepont の少々カオス気味の舞台も楽しみましたが、 エレクトリック・ギターの残響をソロで聴かせるような Lisa Illean: Tiding I、 ピアノの音も粒立ったトリオでの Zygmunt Krauze: Elegy のような音をむしろ楽しみました。

『ノルウェーの部屋 ヤン・バングと仲間たちによるエレクトロ・セッション』
Norwegian Room - Electronic session by Jan Bang and his friends
東京芸術劇場 シアターイースト
2026/03/01, 15:00-16:20.
Jan Bang (live sampling), Nils Petter Molvær (trumpet), Eivind Aarset (electric guitar, electronics), 大友 良英 [Otomo Yoshihide] (turntables, synthesizer), 藤倉 大 [Dai Fujikura] (synthesizer).
Jan Bang / Eivind Aarset / Nils Petter Molvær / Dai Fujikura / Otomo Yoshihide: Under oak tree.

やはりボンクリでは恒例になりつつある、Jan Bang / Punkt のセッションですが、 歌物だった前回2023年 [鑑賞メモ] と打って変わって、音のテクスチャを織り成すような演奏でした。 Nils Petter Molvær の trumpet や Eivind Aarset や 大友良英の guitar もほぼ特殊奏法のみを使ってノイズ的な音を繰り出し、それに電子的に音を変容させて重ねていきます。 掠れた trumpet などはまだしも、guitar などは起点となる音を把握し難いほど。 そんな中で、大友の turntable の演奏によるプチプチいう針のトレース音が粒だって聞こえたのが、印象に残りました。

『スロバキアの部屋 クエーサーズ・アンサンブルがやってくる!』
Slovakian Room - Quasars Ensemble is coming!
東京芸術劇場 シアターウエスト
2026/03/01, 17:00-18:00.
Quasars Ensemble: Ivan Buffa (artistic director, piano), Diana Buffa (piano), Vira Zhuk (violin), Peter Mosorjak (violin), Alexander Znamenskyi (viola), Arne Kircher (cello).
Ilja Zeljenka: Musica slovaca; Vladimír Godár: Ricercar; Samuel Čamák: Tremors (commission by Quasars Ensemble); Vladimír Bokes: Coll'Age, Op. 28; Ivan Buffa: String Quartet.

スロバキアのアンサンブルによる20世紀以降のスロバキアの作曲家の音楽を取り上げたコンサートです。 管楽器等も含むアンサンブルのようですが、弦楽四重奏団にピアノを加えた形での来日で、 演奏した曲も全て、3, 4人組み替えて演奏する室内楽的なものだけでした。 今回観た中で最もオーソドックスに classic 的なコンサートでした。 しかし、1曲目こそ東欧 folk 的な旋律を感じるときもありましたが、わかりやすい旋律やリズムの無い曲が並びました。

前回までは東京芸術劇場のコンサートホールやそこに隣接する5Fギャラリーを会場としていましたが、今回は地階の小劇場と隣接するアトリエが会場でした。 ステージに大人数を乗せることが難しいこともあってか、小編成による室内楽的な曲を中心としたプログラムだったように思います。 また、特にシアターイーストは小劇場の音響・映像設備を生かしたプログラムだったのではないでしょうか。 リニューアルオープン直後の会場スケジュール上の都合でコンサートホールが使えなかったため、こういうスタイルになったと想像しますが、 結果としては面白いプログラムになったのではないでしょうか。

しかし4つのコンサート全ては、少々欲張りすぎました。後半、集中が途切れがち。 さすがに疲れたので、大人ボンクリ (演奏者のいない電子音響や録音を使った音楽のコンサート) と、クロージングは観ずに帰りました。

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[4333] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 1 22:17:04 2026

今週末は日曜に予定があったので、土曜は家事や実家対応などの野暮用程度にして休養日。晩に配信でこの音楽/ダンス映画を観ました。

À la télévision le dimanche 19 avril à 00:20, 53 min
Enregistre au Studio Kremlin, le 12 novembre 2025.
Vanessa Wagner (piano), Collectif Scale (scénographes), Kader Attou (chorégraphe), danseurs de la Cie Accrorap, Chloé Moglia / Rhizome (circassienne).
Musique: Etudes de Philip Glass (versions éditées): No. 8 / No. 1 / No. 18 / No. 6 / No. 2 / No. 13 / No. 7 / No. 12 / No. 17 / No. 16 / No. 9 / No. 5
Kader Attou / Cie Accrorap: Extrait de l'œuvre chorégraphique « The Roots ».
ARTE France, Les Films Jack Fébus présentent; Réalisation: Christian Beuchet.
ARTE Concert URL: https://www.arte.tv/fr/videos/128794-000-A/vanessa-wagner-friends/

« Une rencontre entre musique, danse et architecture » (音楽、ダンスと建築の出会い) という副題が付けられた ARTE Concert の音楽/ダンス映画シリーズ Sur Mesure の第6作です。 Philip Glass: The Complete Piano Etudes (InFiné, 2025) をリリースした Vanessa Wagner による抜粋編集された Etudes の演奏と、 Collectif Scale による 舞台美術、Kader Attou 率いる Cie Accrorap のダンス、Chloé Moglia / Rhizome によるサーカスアクトの共演を、無観客のスタジオで収録したものです。

共演と言っても、一緒に一つの作品を作り上げたわけではなく、互いの作品を持ち寄ったようでした。 曲毎に、ピアノとダンス、ピアノとサーカスアクト、ピアノソロのいずれかで、最後は三者が揃いますがフィナーレ的に盛り上がるわけではなく、全体として淡々と展開しました。

Collectif Scale の舞台美術は、Dan Flavin を動的かつ大掛かりにしたような光によるミニマルな立体造形で、それがピアノを取り囲みます。 Cie Accrorap / Kader Attou のダンスはヒップホップダンスの身体語彙をベースとしたコンテンポラリーダンスで、物語的という程ではないもののスケッチ仕立て。 1曲が短くミニマルミュージック的な反復感が少なくメロドラマチックな旋律が際立つせいか、男の友情や対立を描いているかのように感じられました。

Chloé Moglia のサーカスアクトは、ループ状の白く塗られた金属製のパイプを立て、 パイプが垂直近い所では Chinise pole のような、水平に近い所では trapeze の aerial のような動きを使います。 といっても、ダイナミックな大技するのではなく、曲に明示的には絡まずに静かに演技していました。

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[4332] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu Feb 26 0:27:37 2026

先の三連休中日日曜は午後に横浜・伊勢佐木長者町へ。 横浜シネマリンの『柳下美恵のピアノdeフィルム vol.17』で、このサイレント映画をピアノ伴奏付きで観ました。

『大活劇 爭鬪』
1924 / 東亜キネマ / 90 min. / 35 mm / 白黒 / サイレント.
監督: 金森 万象; 原作・脚本: 寿々喜多 呂九平.
髙木 新平 (南京鼠のサム), 関 操 (李 鳳勝), 青山 万里子 (その妻 桃蘭), 森 静子 (娘 桃鈴・後に美代子), etc.

マキノ映画が東亜キネマに吸収合併された1924年に、阪東 妻三郎 と並ぶマキノ映画のスターだった 髙木 新平 が主演した映画です。 『雄呂血』 (1925) [鑑賞メモ] と同じ 寿々喜多 呂九平 の脚本で、スタッフや俳優は当時の 阪東 妻三郎 の映画と被りがありますが、 時代劇ではなくニューヨーク (ただし撮影は神戸) と神戸を舞台とした現代劇でした。

ニューヨークで中国系のギャングに襲われていた寄席芸人 李らを救ったサムが、 彼らと神戸に戻り、李の娘を神戸に探すうちに、その娘を救い出すため、再びギャングと闘うことになる、という、活劇映画です。 「鳥人」と言われただけあって、冒頭の 髙木 新平 演じるサムがギャングに追われて建物内外や屋上を走り回る場面や、最後の中華料理店内での乱闘シーンでの身軽さを生かした立ち回りなど、見応えありました。 しかし、中盤の人情劇的な展開は少々退屈したでしょうか。 『雄呂血』でもそうでしたが、長く説明的な字幕が追いきれないところがありましたが、 物語自体は込み入ったものではなかったので、付いていかれなくなるほどではありませんでした。

前半の建物の内外や屋上の際どいところをパルクールのように走り回る場面を観ていて、以前もそういう日本のサイレント映画を観たことがあるような、と思ったのですが、 それは 八代 毅 (ハヤフサヒデト) の『争闘阿修羅街』 (大都映画, 1938) でした [鑑賞メモ]。 映画『争闘阿修羅街』のタイトルの「争闘」は『大活劇 爭鬪』を意識したもので、 そして、ハヤフサヒデトに先んじて「鳥人」の先駆者 髙木 新平 がいたということを知ったことが、観ての収穫でした。

[このメモのパーマリンク]

2月10日頃から家の空調が不調になってしまったので、三連休最終日は午前に実家用事を済ませて、午後に空調工事。 結局、4時間余りかかりましたが、天気がよく暖かい日で良かったでしょうか。 期末セールで安く入手した小型セラミックファンヒーターで工事まで寒さをしのいでいましたが、 そんなものも使えない夏の猛暑の時期でなくて良かったです。

[4331] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Feb 23 22:08:48 2026

この三連休初日土曜の午後は恵比寿へ。この芸術祭を観てきました。

Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions 2025 — あなたの音に|日花聲音|Polyphonic Voices Bathed in Sunlight
東京都写真美術館 ほか
2026/02/06-02/22 (2/9,2/16休), 10:00-20:00 (2/22 -18:00)

東京都写真美術館主催のアニュアルの映像芸術展 [去年の鑑賞メモ]、例年通り定点観測してきました。 今年は台湾出身の方がメイン・キュレーターとのことで、サブタイトルにもあるように多声的 (多文化、多言語) な色合いを感じ、 また、音楽、音声を含む音をテーマにした作品、台湾を含む東アジア、東南アジアの作家が多めの構成でした。

メインの東京都写真美術館の順路上最初のフロアとなるB1Fは規模大きめのインスタレーションが4作品。 リサーチに基づきビデオも使って国際美術展らしい洗練を感じましたが、少々、空虚さも。

むしろ、続く2Fの展示がよかったでしょうか。 オーストラリアの作家 Angelica Mesiti のビデオ作品 «The Rite of When» 《時にまつわる儀式》 (2024) は、 現代の異教 (pagan) の民俗音楽 (合唱)・舞踊からなる儀式的なパフォーマンス作品を収めたビデオという感じで、最も気に入った作品でした。

台湾に残した日本文化の影響のうち1950-60年頃に作られた日本の曲に台湾語の歌詞が付けられた歌3 曲に着目し戦前の日本統治時代の女学校等に遡り音ではなく刺繍を使った作品にした、 台湾の作家 候怡亭 [Hou I-Ting]の《所有的小姐 [レイディたち]》も、印象に残りました。

東京都現代美術館収蔵作品から、田中未知/高松次郎の言語楽器《パロール・シンガー》 (1974) が展示されていて、そんなものもあったのか、と。

3Fはコミッション・プロジェクトと東京都コレクションが半々の展示でしたが、 東京都コレクションの展示の方が興味深く観られたでしょうか。 さわひらき のビデオ作品 «pilgrim» (2022) は朝香宮邸竣工写真の組み合わせで展示されて、 2022に東京都庭園美術館で観たサイトスペシフィックな上映 [鑑賞メモ] とは違い、 いかにもホワイトキューブでの展示の作りで写真と映像の形式的な対比をするような展示となっていました。

館内B1Fや2Fのロビーや階段室を使って、京都を拠点に活動する 冥丁 [Meitei]のレコード『古風』三部作 (2020-2023) がサウンドインスタレーション的に使われていました。 そんなことも、音に意識的な展覧会に感じました。

東京都写真美術館のある恵比寿ガーデンプレイスのセンター広場では exonimo のモニュメンタルなインスタレーション《Kiss, or Dual Monitors》 (2017) の2026年恵比寿映像祭ヴァージョンが設置されていました。 東京都写真美術館2Fに撮影ブースも設けられ、観客参加型に。このような野外展示も芸術祭らしいでしょうか。

地域連携プログラムからは、かつて NADiff a/p/a/r/t のあったビルの3階のギャラリー MEM で、 Robert Wilson 追悼企画 Eleven Drawings for Einstein on the Beach + Video Portrait of Lucinda Childs。 Video Portrait ということで、動きの少ない映像を使ったいわゆる液晶絵画的な動画かと予想していましたが、音声付きの静止画を縦長液晶モニタに上映するというものでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

この後は湘南新宿ラインで恵比寿から鎌倉へ。今年初めてカフェ・アユーへ顔を出してきました。 アユーでは Fluxus Week ということで、関連音源を聴くだけでなく、 カフェ・アユー版 Fluxus Mistery Food や Fluxus Black Liquor などのフードを楽しみました。

[4330] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Feb 16 22:32:42 2026

この週末日曜晩は、配信でこのダンス映画を観ました。

2024 / ARTE France, Le Grizzly, Martha Productions, Heliox Films, RTBF / 44 min.
Directed by Tommy Pascal
Music: Max Richter The New Four Seasons - Vivaldi Recomposed
Spring
Choreography and Artistic Director: Franck Chartier; Creation in collaboration with and performed by Sarah Abicht and Alejandro Moya; Costumes: Yi-Chun Liu; A co-production: Peeping Tom.
Summer
Choreography, artistic direction and performed by Bobbi Jane Smith and Or Schraiber.
Autumn
Choreography and artistic direction: Imre & Mame van Opstal; Dancers Hessisches Staatsballett: Ramon John and Peng Chen; A co-production: Hessisches Staatsballett.
Winter
Choreography and artistic direction: Emilie Leriche; Performed by Emilie Leriche and Arika Yamada.
ARTE Concert URL: https://www.arte.tv/en/videos/121415-000-A/dance-of-the-seasons/ (- 2027/04/08)
NHKオンデマンド URL: https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2026154774SA000/ (- 2026/03/11)

2025年に ARTE Concert で配信されたダンス映画作品です。 公開当時、YouTube 公式チャネルで観ていましたが、NHKプレミアムシアターで放送されたので、その配信で再見しました。

テーマは Quatre saisons, quatre chorégraphies, quatre paysages, quatre duos de danseurs, quatre états du couple amoureux (四つの季節、四つの振付、四つの風景、四つのダンスデュオ、四つの恋愛カップルの状態)。 Max Richter が編曲 (再作曲) した Vivaldi: Le quattro stagioni [The Four Seasons] の季節の曲ごとに、 振付家を割り当て、その季節に合った雄大な自然が広がるロケーションで踊る様子を、ドローンを使った空撮も駆使したカメラワークで捉えた作品です。 基本的にカップルのロマンチックな関係をダンス化している所はありがちだなと思いつつも、 ARTE concert で放送・配信されるだけの洗練、完成度で、見応えありました。

春の振付は Peeping Tom の Frank Chartier [鑑賞メモ]。 清流とそれを取り巻く緑の茶畑、ラストはマングローブや浅瀬の海で、下着のような薄着の男女のカップルが踊ります。 Lynchesque ではなく、脱力した女性を男性が振り回し無造作に運ぶようなリフトに Peeping Tom らしさを感じました。

夏の振付は Bobbi Jene Smith & Or Schraiber。 振付家自身が演じる黒いドレスの女とワイシャツ黒パンツの男が、広い砂丘の中で踊ります。 冒頭に結婚指輪を砂に埋める場面があり、前半はクロースアップと遠景を使った演出も効果的に、 距離を置いて片方が苦悩するように踊るソロをもう一方静かに見つめたり。 既婚者同志の禁じられた愛と苦悩のダンスという感じで、中で最もロマンチックに感じられました。

秋の振付は Imre and Marne Van Opstal。 春夏と男女ペアでしたが秋は男2人のカップルで、ボロボロのスーツにスキンヘッド姿で、 針葉樹と葉がほとんど落ちた広葉樹から日の差す明るい林の中の敷き詰められた落ち葉や苔むした岩の合間や上で、また中盤で霧がかった荒野を挟んで、踊ります。 ブラザーフッドな感じかと予想しましたが、かなりロマンチックでした。

冬の振付は Emilie Leriche。女性2人のカップルで、山頂近い針葉樹林の間の雪原の中でスノーウェア姿で踊ります。 前半は喧嘩の取っ組み合いをダンス化したよう。ラストは一方がスノーウェアを脱いでもう一方の腕の中に残し、ほぼ全裸に近い姿で雪中を立ち去るという、別れを感じさせる終わり方でした。

この映像作品の監督 Tommy Pascal は、Béjart Ballet Lausanne と Ballet Preljocaj でダンサーとして活動し、 2007年にダンサーを引退した後、ダンスや音楽の映画/映像作品の監督となったとのこと。 今まで自分が観たものの中では、 Marit Moum Aune 振付・演出、Nasjonalballetten [The Norwegian National Ballet] の Ghosts — Ibsens Gengangere (2017) と Hedda Gabler (2018) [鑑賞メモ]、 Alexander Ekman 振付、Ballet de l'Opéra national de Paris の Play [鑑賞メモ] が Tommy Pascal 監督のものでした。 この Seasons of Dance [Les Saisons de la danse] は、 2025年第63回の Golden Prague International Television Festival で Grand Prix を 受賞したのをはじめとして、 様々な映像作品関係の賞を受賞をしています。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4329] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 15 22:10:41 2026

この週末土曜は昼過ぎまでゆっくりした後、夕方に池袋西口へ。この公演を観てきました。

東京芸術劇場 シアターイースト
2026/02/14, 18:00-19:20.
構成・演出・振付: 橋本ロマンス; 構成・演出・美術: サエボーグ.
出演: 岩田 柚葉, 松倉 祐希, UNA (パワーチキン), 河又 仁美 (サエシープ), 油井 文寧 (サエシープ), 今野 ゆうひ (サエポーク type 1), 大貫 友瑞, カミーユ, 髙橋 瑞季, 波多野 比奈, 廣瀬 一穂, マサムネ葵(鮭スペアレ), 川合 悦史 (サエポーク type 2), 原 知里 (サエチキン), 佐藤 靖子 (プーリンセス), 浅沼 圭 (ハエ/黒子).
舞台監督: 川上 大二郎(スケラボ), 守山 真利恵; 照明: 鳥海 咲 (Lighting Lab Ltd.); 音響: 遠藤 遥子; 楽曲制作: DJ TKD; 宣伝美術: 原田 晋; 制作進行: 清水 翼 (bench), 芝田 遥.

『Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展』 (東京都現代美術館, 2024) でサエボーグ を観た際に、 公演の方が面白そうと思っていたのですが [鑑賞メモ]、 それから約2年、やっと公演を観ることができました。 上演されたのは演出家・振付家・キュレーターとして活動する 橋本 ロマンス とのコラボレーションです。

東京都現代美術館での展示同様、空気で膨らませるラテックス製の舞台美術やボディスーツを使ったもので、その色彩造形もキッチュなもの。 登場するのは、家畜として改造された動物とその排泄物で生きる生物をカリカルチャライズしたキャラクターで織りなすパフォーマンスでした。 物語的な展開はほぼ無く、かといって音楽的に時間空間を抽象的に表現するものでもなく、儀式的とも感じられるパフォーマンスでした。

美術館でインスタレーションとして観るよりもその不気味可愛さが出て良かったと思う一方で、期待したほどには面白くはならなかったな、とも感じてしまいました。 エアーで膨らませたボディスーツは中の人の動きを制約する上に細かい動きを隠してしまうため、被り物を使ったキャラクターショーに近いものになってしまいます。 中の人が外のキャラクターとは前後逆向きに入っていると思われるサエチキンなど造形と動きの妙を感じるものもありましたが、 結局、新体操的な動きも駆使して飛び回った 浅沼 圭 のハエ/黒子が最も面白かったかもしれません。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4328] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu Feb 12 22:54:15 2026

祝日の昨日は、午後に渋谷へ。この映画を観てきました。

a film by Tarsem.
2006 / Googly Films (US) / 2024 (4K restoration) / 117 min. / DCP.
Lee Pace (Roy Walker / Black Bandit), Catinca Untaru (Alexandria / Bandit's daughter), Justine Waddell (Nurse Evelyn / Sister Evelyn), a.o.

1990年代にミュージックビデオの文脈で活動を始めたインド出身のアメリカの映像作家 Tarsem Singh の2006年の映画です。 当時は自分の興味のスコープ外という感もありましたが、4K版による再上映がロングランしていることもあり、観てみました。

20世紀初頭、サイレント映画時代のハリウッドで働いていたものの大怪我で下半身付随となり、恋人を主演俳優に奪われ、自棄的になったスタントマンと、同じ病院に入院していたオレンジの農場で働くインド移民の労働者の娘の交流と心情の変化を、 彼が彼女に話して聞かせる劇中劇の山賊を主人公としたおとぎ話と重ねて描いた映画です。 石岡瑛子が衣裳デザインを手がけ、世界遺産をロケ地に撮られた、劇中劇の場面でのスタイリッシュでファンタジー的な映像美は、さすがミュージックビデオ出身です。 やはりミュージックビデオの文脈でも知られる Spike Jonze や David Fincher が presenting としてクレジットされているというのもあるでしょうか。 また、ナラティブの面でも病床のスタントマンや少女の心理描写も期待以上に丁寧。 サイレント映画時代の冒険活劇やスラップスティック・コメディにおけるスタントへのオマージュも感じられました。 しかし、おとぎ話などそんなものかとも思いますが、そこでの男女関係や主従関係の描写はステロタイプで内面描写に欠け、社会的背景の描写も薄く、少々空虚で引っ掛かりに欠けたでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4327] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Feb 11 20:46:21 2026

先の週末土曜晩は、午後に引き続き初台で隣の建物へ移動して、今年の舞台鑑賞始めをしてきました。

The National Ballet of Japan: Ballet Coffret 2026
新国立劇場オペラパレス
2026/02/07, 18:00-20:10.
指揮: 冨田実里; 管弦楽: 東京交響楽団.
Choreography: David Dawson.
Music: Johan Sebastian Bach.
Set Designer: David Dawson; Costume Design: Yumiko Takeshima; Lighting Designer: Bert Dalhuysen.
出演: 直塚 美穂, 渡邊 峻郁, 花形 悠月, 山田 悠貴, 飯野 萌子, 中島 瑞生, 五月女 遥, 木村 優里, 根岸 祐衣.
World première: World Premiere: 15 June 2000, Het Nationale Ballet [Dutch National Ballet]; 新国立劇場初演: 2023.
上演時間: 18:00-18:30
Choreography: Hans van Manen.
Music: Astor Piazzolla (Todo Buenos Aires, Mort, Vayamos al diablo, Resurrección del angel, Buenos Áires hora cero).
Set and Lighting Design: Hans van Manen; Costume Designer: Jean-Paul Vroom.
出演: 小野 絢子, 福岡 雄大, 奥田 花純, 原田 舞子, 木下 嘉人, 原 健太, a.o.
World première: 3 November 1977, Het Nationale Ballet [Dutch National Ballet]; 新国立劇場初演: 2026.
上演時間: 18:55-19:20
Choreography: George Balanchine.
Music: Pyotr Ilyich Tchaikovsky.
美術: 牧野 良三; 衣裳: 大井 昌子; 照明: 磯野 睦.
出演: 柴山 紗帆, 李 明賢, 金城 帆香, 榎本 志結, 川本 果侑, 木村 優子, 仲村 啓, 渡邊 拓朗, 太田 寛仁, 小川 尚宏, a.o.
World première: 1947; 新国立劇場初演: 2000.
上演時間: 19:45-20:10

去年始まった20世紀以降の演目からなる新国立劇場バレエ団のトリプルビル公演、 去年が楽しめたので [鑑賞メモ]、今年も足を運んでみました。 今年は作品ごとに休憩を挟む形での上演でした。

最初は2023年の『ニューイヤー・バレエ』 [鑑賞メモ] で上演した David Dawson: A Million Kisses to my Skin。 その時と同様、ミニマリスティックでシャープな演出を楽しみましたが、今回は、男女の動きの差異に目が止まりました。 男女のダンサーが並んでユニゾンするように踊る箇所がかなりあるのですが、どちらも衣裳もシンプルなレオタードで、かつ Pas de deux のように明確に男女の役割で振り付けられていだけに、 腕や脚を上げた際などの形などの男女での差異が逆に浮かび上がって見えたように思います。 もちろん、こういう見方も、去年観た NDT2 [鑑賞メモ] の影響もあるかなとは思いますが。

続く Hans van Manen: 5 Tango's は、 Astor Piazzolla のタンゴ5曲を使った作品で、オーケストラ生伴奏ではなく、Piazzolla の演奏の録音 (おそらく Concerto de Tango en el Philpharmonic Hall de New York (Polydor, 1965) など) を使用していました。 動きや衣裳に男女の別はありますが、やはりミニマリスティックな演出で5曲それぞれに場面を作って音楽を表現する抽象バレエです。 男女が組むような所などにタンゴ的なものを感じますが、予想よりタンゴのイデオムは使わず、むしろ、極力バレエ・テクニックでタンゴを構築していくよう。 そこに面白さを感じましたが、赤黒の衣裳のイメージほど踊りにはシャープさを感じられませんでした。

ラストは Balanchine の抽象バレエ Themes and VariationsLe Palais de Cristal (1948) [鑑賞メモ] や Jewels [鑑賞メモ] なども思い出しますが、 使われるテクニックとクラシック・バレエ的な衣裳、というのはもちろん、宮廷のホールを思わせる美術に Tchaikovsky の音楽ということもあって、 クラシック・バレエの世界はそのままに、ナラティヴ成分だけ除去したものを観るよう。 抽象バレエ縛りのトリプルビルでしたが、コンテンポラリーな前2作と良いコントラストを興味深く観ました。

年明けから1ヶ月余り経ってしまいましたが、これが今年2026年の舞台鑑賞初め。 最近は新国立劇場バレエ団の年末年始は『くるみ割り人形』公演になり、『ニューイヤー・バレエ』はなくなってしまいました。 しかし、以前に『ニューイヤー・バレエ』で観た A Million Kisses to my Skin、 そして、クラシック・バレエ的なものを蒸留したかのような華やかな Themes and Variations で締めくくられるのを観て、 『ニューイヤー・バレエ』の代わりとなる今年の舞台鑑賞初めには丁度良かったでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4326] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 8 22:05:44 2026

この週末土曜は雪がぱらつく寒い天気。そんな中、午後遅めに家を出て初台へ。この展覧会を観てきました。

南米チリ出身で、クーデターと Pinochet 独裁を経験後、1982年に渡米、ニューヨークを拠点に現代美術の文脈で活動する作家の個展です。 最初期1970年代チリ時代の作品から、この展覧会のための新作までを辿る、回顧展的な内容でもあります。 受賞した 『プリピクテ Storm/嵐』 Prix Pictet: Storm [鑑賞メモ] の印象も新たですが、 このようにまとまった形で観るのは初めてです。

初期の作品を中心とした小規模な作品を集めた最初のギャラリーの展示は観念的に過ぎるかなと思いましたが、 1985年にブラジル東北部の露天掘り金鉱山 Serra Pelada の劣悪環境下で働く零細鉱夫 (Garimpeiro) を撮った写真に基づく «Gold in the morning» (1985/2002) や、 1994年にボスニア紛争に取材した «Europa» (1994) など典型的ですが、 報道写真としても成立するような写真を撮りつつ、それに、このような写真を撮る/観ること意味などを自省するメタな視線も加え、 ライトボックスや鏡も使った視覚的にもスタイリッシュなインスタレーションに落とし込みます。

もしくは、南アフリカ出身の報道写真家 Kevin Carter の1994年の Pulitzer Prize 受賞とその2ヶ月後の自殺を取り上げた «Sound Of Silence» (2006) では、 Carter のバイオグラフィ的な歩みを淡々とした語りと字幕のみで抑制的に示す展開から、 一転 Pulitzer Prize 受賞作で «The Vulture and the Little Girl» 『ハゲワシと少女』を示してフラッシュすることで、 報道か人命かとという議論を強く印象付けます。

『プリピクテ Storm/嵐』のようなグループ展の中で1作品だけ観ただけではわかりづらいメタな視点も腑に落ちるところがあり、 インスタレーションとしての仕上がりも上手いなと感心する展覧会でした。 しかし、主題的にもそういう所は狙っていないのかもしれませんが、観ていて「良かった!」という感じにならなかった展覧会でもありました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

Alfredo Jaar を観た後は、コレクション展示室でゆっくり。 相変わらずではあるのですが、いつものように 李 禹煥 などの抽象が静かに並んでいて、心が落ち着きます。

[4325] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Feb 2 22:34:31 2026

先の週末土曜の晩は家に帰って、毎年楽しみにしているサーカスのコンクールの配信を観ました。

Cirque Phénix, Paris
2026/01/24, 150 min.
Direction Artistique: Pascal Jacob.
École Nationale de Cirque de Montréal (Canada), Matìas Muñiz Del Rio (jonglerie, Argentien), Thomas Rochelet (sangles aériennes, France), Bert & Fred (Belgique), Lucas & Natalia (main à main, Finlande / Espagne), Colin André-Heriaud (equilibres sur chaises, France / Canada), Trio Rig'Humaine (cerceaux aériens, Canada / France (Guyane) / USA), Poésie Tribale (trapèze volant, France), Vladyslav Holda (jonglerie, Ukraine), Eline Guélat (mât chinois, Suisse), Gildo Gomes (sangles aériennes et contorsion, Angola), Machine de Cirque (planche coréenne rotative, Canada)
Une coproduction Telemondis et ARTE France; Réalisation: Guillaume Klein.
ARTE Concert URL: https://www.arte.tv/fr/videos/129956-000-A/45e-festival-mondial-du-cirque-de-demain/ (- 2027/01/24)

フランス・パリで毎年1月下旬頃に開催されているサーカス・アーティストの競技会 (コンクール) です。 レベルの高いサーカスのパフォーマンスが観られるので、例年 ARTE Concert で配信されるのを楽しみにしています [2017年の鑑賞メモ]。 年によってはジオブロックされることもあるのですが、今年 (2026年の第25回) はされず、観ることができました。

高度な身体能力という点では、 hair hang なども交え2つの hoop を介して人をぶら下げるなど複雑な構成で見せた aerial hoops [cerceaux aériens] の女性2男性1のTrio Rig'Humaine (Médaille d'Argent 受賞)、 大人数のチームでダイナミックな flying trapeze [trapèze volant] (空中ブランコ) をみせた Poésie Tribale が、特に見応えありました。

コミカルな演技では、女性 harp 生伴奏でクラウン的な危うげな演技を交えつつの balance on chairs [equilibres sur chaises] (椅子を積み上げてのバランス芸) の Colin André-Heriaud (Médaille de Bronze 受賞)、 Buster Keaton のようなデッドパンの演技で contortion (軟体芸) を交えつつの Chinese pole [mât chinois] を演技した Eline Guélat (Prix spéciau 受賞) を楽しみました。 これらは、日本の大道芸フェスや公共劇場の親子向け公演 (座・高円寺の『世界をみよう!』とか) にも合いそうです。

ラストは度々来日している Machine de Cirque (Grand Prix 受賞) [2024年の来日公演の鑑賞メモ]。 来日公演でも使っていた rotating teeterboard [planche coréenne rotative] (回転するシーソー) を女性1名を含む7名で演技するのですが、 普段着のような衣装で淡々と演じることで、大技を見るというより、自然なパフォーマー間の交流を見るよう。そんな演出が気に入りました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4324] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 1 21:39:15 2026

今週末土曜は昼過ぎに木場公園へ。これらの展覧会を観てきました。

Sol LeWitt: Open Structure
東京都現代美術館 企画展示室1F
2025/12/25-2026/04/02 (月休;1/12,2/23開;12/28-1/1,1/13,2/24休), 10:00-18:00.

20世紀後半 Minimal Art と Conceptual Art を橋渡しする文脈で知られたアメリカの現代美術作家 Sol LeWitt の個展です。 最近では『ミニマル/コンセプチュアル』展 (川村記念美術館, 2022) での立体作品が印象深いですが [鑑賞メモ]、 この展覧会は Wall Drawing の作品を8点展示していました。 東京国立近代美術館の常設に1点ありますが、これだけまとめて観る機会は無く、見応えありました。

Wall Drawing におけるSol LeWittの指示と実際に壁に描かれたドローイングの関係は、 その簡潔で抽象的な形態もあって、脚本とその上演というより、楽譜とその演奏 (インタープリテーション) の関係を見るよう。 解釈の裕度がある、もしくは、場所の条件が入り得る指示もあり、偶然性や即興を取り入れた作曲に近いものを感じました。 眼前の物質化された作品の向こうに理念的で抽象的な構造を想像しつつ楽しむという面もありますが、 立体作品と比べ Wall Drawings では、簡潔な形態だけに、形にした際の物の実感、テクスチャが逆に浮かび上がってくるようにも感じられました。

また1990年代の作品、小ぶりの版画作品 «Complex Forms» (1990) では手書きの非直線が使われてる一方で、 色面の塗り分けをという共通点のある «Wall Drewing #770» ではマスキングテープを使ったと思われる手書きを感じさせない直線が使われているなど、 その差異とコントラストも印象に残りました。

Tokyo Contemporary Art Award 2024-2026 Exhibition: Wetland
東京都現代美術館 企画展示室3F
2025/12/25-2026/03/29 (月休;1/12,2/23開;12/28-1/1,1/13,2/24休), 10:00-18:00.
梅田 哲也 [UMEDA Tetsuya], 呉 夏枝 [OH Haji].

東京都と TOKAS (Tokyo Arts and Space) によるアニュアルの現代美術の賞の第5回の受賞者展です [前回の鑑賞メモ]。 受賞者2名のうち 呉 夏枝 は『遠い窓へ 日本の新進作家 vol. 22』 (東京都写真美術館, 2025) [鑑賞メモ] に続いてですが、 梅田 哲也 は昔に 大友 良英 関連で観たことがあった程度で [鑑賞メモ]、最近の活動はほぼノーチェックでした。 これまでの受賞者展では選ばれた2名がそれぞれに展示を構成してきましたが、 今回は2人の作品が密に組み合わされ、2人が協働してインスタレーションを作り込んだような展覧会でした。

視線を誘導するようなオブジェや耳を引くような音響装置を配した足場を組んだ空中回廊等の大掛かりな 梅田 のインスタレーションの中に、 呉 の布や糸を使ったインスタレーションも配され、音響装置からは 呉 の作品に関連する語りが聞こえてきます。

様々な視線や音への注意が誘導される空間構成の中を歩いていくうちに、 呉 のルーツでもある済州島出身の祖母にはじまるナラティヴも辿ることになります。 足場の間を歩きながら誘導された視線の先の視野の面白さを堪能しつつ、 最後の《海人の道》と《椿の咲くところ》で呉のナラティブにじっくり向かい合う、という展開も良かったです。

mission∞infinity | space + quantum + art
東京都現代美術館 企画展示室B2F, ホワイエ他
2026/01/31-2026/05/06 (月休;2/23,5/4開;2/24休), 10:00-18:00.

『ミッション[宇宙×芸術]』 [鑑賞メモ] から10年、 国際量子科学技術年 (2025年) に合わせて開催された、宇宙や量子などのサイエンス領域とアートのコラボレーションの展覧会です。 10年前の展覧会もすっかり忘れていましたし、本を読んだりオーソドックスな作りの科学ドキュメンタリーを観た方が良いのではとは思ってしまいました。 しかし、そんな中では少々浮いてた気もしましたが、片岡 純也+岩竹 理恵 [鑑賞メモ] による《KEK曲解模型群》のユーモアを楽しみました。

MOT Collection: Multiple Self-portraits / NAKANISHI Natsuyuki, IKEUCHI Akiko: Arc and Catenary
東京都現代美術館 コレクション展示室
2025/12/25-2026/04/02 (月休;1/12,2/23開;12/28-1/1,1/13,2/24休), 10:00-18:00.

コレクション展示室の中では、3階の展示室を使った 中西 夏之 と 池内 晶子 の展示『弓形とカテナリー』。 『あるいは、地のちからをあつめて』 (府中市美術館, 2021-22) [鑑賞メモ] ぶりに、池内 の絹糸を使った繊細なインスタレーションの繊細な空間構成を楽しみました。 また、中西の絵画を壁掛けではなくレイヤーのように見えるよう宙に下げて展示しており、 泡や液体を思わせる抽象的な画面とその空間構成が合っていました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4323] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Jan 28 0:04:20 2026

先の週末土曜は昼に京橋へ。ランチの後、京橋を歩いていたら、 個性的な服装をした (おそらく外国の) 女性に National Film Archive へ行くか? と声をかけられたので、一緒にNFAJへ。 しかし、自分はそういう類の人に見えるのでしょうか。

国立映画アーカイブでアメリカ Anthology Film Archives 所蔵の映画を上映する企画 『アンソロジー・フィルムアーカイブス――アメリカ実験映画の地平へ』が開催されています。 アメリカの実験映画、個人映画、インデペンデント映画115本を23プログラムで上映するという大規模な企画ですが、その中から2つのプログラムを観てきました。

『抽象アニメーション作品集』
approx. 59 min.
Film Exercises 1 『フィルム・エクササイズ1』
1943 / John Whitney, James Whitney / 3 min. / 16 mm / color
Allures 『誘惑』
1961 / Jordan Belson / 8 min. / 16 mm / color
Lapis 『ラピス』
1966 / James Whitney / 10 min. / 16 mm / color
God Is Dog Spelled Backwards 『神を逆さに綴ると犬』
1967 / Dan McLaughlin / 3 min. / 16 mm / color
An Optical Poem 『オプチカル・ポエム』
1938 / Oskar Fischinger / 7 min. / DCP / color
Polka Graph 『ポルカ・グラフ』
1947 / Mary Ellen Bute / 5 min. / DCP / color
Breathing 『呼吸』
1963 / Robert Breer / 5 min. / DCP / color
Duo Concertantes 『デュオ・コンチェルタンテ』
1962-64 / Larry Jordan / 9 min. / DCP / color
Frank Film 『フランク・フィルム』
1973 / Frank Mouris / 9 min. / DCP / color

アニメーション作家 山村 浩二 [鑑賞メモ] のキュレーションによる20世紀半ばのアメリカでの実験アニメーションの歴史を辿るプログラムで、上映後の本人による講演付きで観ることができ、大変に勉強になりました。 作品の上映はありませんでしたが、Dada のアーティストが関わったフランスの Cinéma Pur (純粋映画) やドイツ Absolute Film (絶対映画) 欧州戦間期 Avant-Garde の映画を起点に、 ナチス台頭後の移住でアメリカ・ハリウッドへにそれをもたらした Oskar Fischinger (Polka Graph, 1938)、 その直系的表現の Film Exercises 1 (1943) や An Optical Poem (1967)。 Henri Michaux の疎なドローイングをアニメーションにしたかのような Breathing (1963)。 Beatnik とそれに続く Hippie といった Counter Culture の下での Psychedelic な Allures (1961) や Lapis (1961)。 Max Ernst の銅版画コラージュをアニメーション化したような Duo Concertantes (1962-64) や名画を早めくりで時間軸コラージュしたような God Is Dog Spelled Backwards (1968) などの抽象というよりコラージュ的な映画。 そして最後は Jonas Mekas [関連する鑑賞メモ] の日記映画、私映画のアニメーション版のような Frank Film (1973)。 と、抽象というよりノンナラティヴな (Frank Film は私的な語りがありましたが) 実験的なアニメーションの系譜を辿ることができました。

『ハリー・スミス作品集』
approx. 54 min.
Film No. 11 (Mirror Animation) 『ナンバー11:ミラー・アニメーション』
1957 / Harry Smith / 4 min. / 16 mm / color
Film No. 15 『ナンバー15』
1965-66 / Harry Smith / 10 min. / 16 mm / silent / color
Film No. 14 『ナンバー14:レイト・スーパーインポジション』
1964 / Harry Smith / 28 min. / 35 mm / color
Film No. 19 『ナンバー19』
1978 / Harry Smith / 12 min. / DCP / color

Anthology of American Folk Music (Folkways, 1952) の編纂で知られ、 Beatnik や Hippie といった Counter Culture に影響を与えた芸術家・評論家 Harry Smiths の映画作品の特集上映です。 山村 浩二 の講演でも言及があり、『抽象アニメーション作品集』の Harry Smiths にフォーカスした続編とも言えるかと思います。 画面の抽象度はあまり高くなく、Counter Culture 的な、もしくは、私映画的な素材のコラージュのようなノンナラティヴな映画でした。

しかし、実験映画を観続けるのはさすがに厳しく、特に『抽象アニメーション作品集』の前半は少々記憶が飛んだ時もありました。 というか、2023年の恵比寿映像祭では [鑑賞メモ] どうして約7時間も見続けられたのだろう、と。気力体力の衰えを感じました。 また、昔 (2000年前後) であれば、こういうプログラムは東京国立近代美術館フィルムセンターというよりむしろイメージフォーラム・フェスティバルのような場で観るものだったな、と、時代の変化も感じました。

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上映の合間の時間に国立映画アーカイブ (NFAJ) 展示室で 『写真展 ハリウッドの名監督たち 映画芸術科学アカデミーのコレクションより』。 写真だけでなく、関連するNFAJ所蔵のポスターも多く展示されていました。 Alice Guy, Lois Weber, Dorothy Arzner や Ida Lupino などの女性の映画人 [関係する鑑賞メモ] も取り上げられていた所に、現代的な企画を感じました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

上映後、Ginza Maison Hermès Le Forum で 榎 忠, 遠藤 麻衣子, Élodie Lesourd 『メタル』 を観ました。 いかにも現代アートな展覧会でしたが、映画で気力体力を使い果たしてしまったか、観ていても上滑りしてしまいピンときませんでした。こういう時もあるでしょうか。

[4322] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 25 22:36:52 2026

この週末金曜は夜に、このコンテンポラリーサーカス作品をストリーミングで観ました。

Circa / Yaron Lifschitz
Philharmonie de Paris
2025/06/14,15, 84 min.
Created by Yaron Lifschitz and the Circa ensemble; Direction & Stage Designer: Yaron Lifschitz
with Jon Bonaventura, Laya Manuelshagen, Holly-Rose Boyer, Oscar Morris, Helga Ehrenbusch, Luke Pearce, Chelsea Hall, Joshua Strachan, Samuel Letch Christina Zauner.
Hans Jörg Mammel (tenor), Tanguy de Williencourt (piano), Thomas Enhco (piano).
Music: Franz Schubert (excerpt from Winterreise & Schwanengesang), Klara Lewis & Igor Stravinsky (Le Sacre du printemps)
Costume Designer: Libby McDonnell; Lighting Designer: Yaron Lifschitz and Richard Clarke; Assistant Costume Designer: Anna Handford
World premiere 19 September, 2018 – Brisbane, Australia
ARTE France, Oléo Films & La Cité de la Musique - Philharmonie de Paris présentent; Réalisation: Louise Narboni.
ARTE Concert URL: https://www.arte.tv/fr/videos/127025-000-A/en-masse-by-circa/ (- 2026-01-25)
YouTube ARTE Concert Channel URL: https://www.youtube.com/watch?v=88qx_SJ0xiU (- 2027-12-19)

オーストラリア・クイーンズランド州ブリスベンのコンテンポラリーサーサスのカンパニー Circa のパリ公演の配信です。 二幕構成で、第一幕はピアノ伴奏で歌われる Franz Schubert の歌曲 SchwanengesangWinterreise からの歌、そして時々挟まれる Klara Lewis の電子音響が、 第二幕は2台のピアノで Igor Stravinsky: Le Sacre du Printemps が使われていました。 そんな音楽に合わせて10人のパフォーマーがタワーはもちろんコントーションや床体操的な動きを含むアクロバットを演技するのですが、 派手な技をみせるというより、不穏なイメージをスケッチ的に描いていきます。 エアリアルのようないかにもサーカスらしい技が無かったこともありますが、音楽生伴奏によるアクロバットの身体語彙を使ったコンテンポラリーダンスと言ってもいいような作品でした。

冒頭の場面でこそ空気で膨らませた透明な方形の透明なビニールの小部屋を使いましたが、 舞台装置はほとんど使わず照明のみのブラックボックスの舞台で、 アクロバットパフォーマーはストレッチデニムのパンツに白Tシャツ姿という簡素なもの。 第一幕の歌手はボロボロのコートにニット帽という冬の浮浪者のような服装で、 傷心で死を求めて彷徨う Winterreise の主人公を思わせます。 第二幕も前半までは第一幕同様の暗めの青みがかった照明で陰鬱さを感じさせますが、 終わり近くになると赤い照明も入って動きも激しくなりむしろ不吉で不穏な展開になります。 やはり、オリジナルの Le Sacre du Printemps のような最後に生贄が選ばれるようなエンディングかと思いきや、むしろ皆が倒れてしまうようなエンディングでした。

電子音響の Klara Lewis は主に Edition Mego レーベルからリリースしているミュージシャンです。 (あまり強調することでもないとは思いますが、自分にとっては Wire / Dome の Graham Lewis の娘という印象が強いのですが。) こんな舞台の随伴音楽の仕事もしているのか、と。 上演中に舞台上にはいませんでしたが、カーテンコールで出てきたので、電子音響も生演奏だったのかもしれません。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

年末年始の休暇中に約1ヶ月の期限で配信中と気付いていたのですが、油断したらあと2日になってしまった、と、金曜夜に慌てて ARTE.tv で観たのですが、 観終わった後に YouTube の ARTE Concert 公式チャンネルでも配信されていることに気付きました。 こちらは、1年間、2027-12-19までと余裕がありました。 といっても、こういうきっかけで先延ばしせずに観てしまってよかったでしょうか。

[4321] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Jan 20 22:29:01 2026

先の週末土曜の晩は、このダンス作品をストリーミングで観ました。

Un espectáculo inspirado a partir del imaginario de Ruvén Afanador
Teatro Real
2024/02/9,10, 104 min.
Idea y dirección artística: Marcos Morau
Coreografía: Marcos Morau & La Veronal, Lorena Nogal, Shay Partush, Jon López, Miguel Ángel Corbacho; Dramaturgia: Roberto Fratini; Diseño de escenografía: Max Glaenzel; Diseño de vestuario: Silvia Delagneau Composición musical: Juan Cristóbal Saavedra Colaboración especial: Maria Arnal; Diseño de iluminación: Bernat Jansà; Diseño de audiovisual: Marc Salicrú.
Ballet Nacional de España, Director: Rubén Olmo.
Estreno absoluto en el Teatro de la Maestranza de Sevilla, el 1 de diciembre de 2023, por el Ballet Nacional de España.
ARTE France, Ballet Nacional de España, Elzévir Films présentent; Produit par Xavier Dubois; Réalisation: Isabelle Julien.
ARTE Concert URL: https://www.arte.tv/en/videos/118635-000-A/afanador-spanish-national-ballet/
NHKオンデマンド URL: https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2025153958SA000/ (-2026/02/04)

2024年に収録された Ballet Nacional de España (スペイン国立バレエ団) の作品で、 以前に ARTE Concert やNHKプレミアムシアターで放送/配信されたのですが、当時はアンテナにかからず。 去年のNDT2日本公演 [鑑賞メモ] で上演された Folkå の Marcos Morau の振付ということで、再放送/配信で観てみました。

コロンビア出身でニューヨーク拠点で活動する写真家 Ruvén Afanador が フラメンコに関わるダンサー、ミュージシャン等の女性を撮った Mil Besos: 1000 Kisses (Rizzoli, 2009) と、 同じく男性を撮った Ángel Gitano: the Men of Flamenco (Rizzoli, 2014) という2つの写真集に着想した作品です。 それらはその生活をドキュメンタリー的に捉えた写真ではなく、 極端な構図や不自然なポーズや衣装を使い造形的な面白さを強調したコントラストの強い白黒の演出写真なのですが、 そのヴィジュアルイメージからダンスを展開します。 その音楽や動きはフラメンコをベースにしたもので、全体として大きな物語は感じさせず、写真集のようにスケッチを連ねていきます。 その一方で、密集での動きや引き攣り振動するような動きに Folkå で観たような Morau らしさも感じました。 写真作品に出てくるバルコニーなどの大道具もありましたが、フォトセッションで使うスタジオの照明等に着想した舞台美術を使い、 写真のイメージ通り衣装は黒、照明は白色光のみの色彩感を抑えて、そんな写真の世界をスタイリッシュにダンス作品化していました。

ちなみに、Ángel Gitano: the Men of Flamenco (Rizzoli, 2014) では Ballet Nacional de España の2019年に就任した現在の芸術監督でフラメンコ・ダンサー (Bailarín) でもある Rubén Olmo もモデルをしています。 これもこの作品が作られた縁でしょうか。 この Afanador では Rubén Olmo は終盤にソロを踊っています (5台のティンパニの前で踊る男性ダンサーです)。

[この鑑賞メモのパーマリンク]