TFJ's Sidewalk Cafe >

談話室 / Conversation Room

TFJ's Sidewalk Cafe 内検索 (Google)
[3824] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 29 19:19:01 2020

27日〆切の厳しい年度末仕事をなんとか乗り切り、やっとひと息。 その一方で、新型コロナウイルスについては、都内で1日50人前後の感染者が報告されるようになり、事態は深刻化の一途。 そんなわけで、この土日は地元での日常の買い物と散策に留めて、外出自粛。 土曜の午後は、観に行ってもいいかなと思っていたこのダンス公演の無観客上演ライブストリーミングを観ました。

『DANCE to the Future 2020』よりコンポジション・プロジェクトによる作品
The National Ballet of Japan: DANCE to the Future 2020 - Works from the Composition Project
新国立劇場小劇場 / streaming via YouTube
2020/03/28, 15:00-16:00.
構成・振付・出演: 新国立劇場バレエ団 コレオグラフィック・グループ [Choreograhic Group, The National Ballet of Japan]
アドヴァイザー [Production Advisor]: 遠藤 康行 [ENDO Yasuyuki]. 音楽 [Music]: 平本 正宏 [HIRAMOTO Masahiro]. 芸術監督 [Artistic Director]: 大原 永子 [OHARA Noriko]. 制作 [Produced by]: 新国立劇場 [New National Theatre, Tokyo].
『〇 ~wa~』
グループDO/動 [Group DO]: 渡邊 峻郁 [WATANABE Takafumi], 木村 優里 [KIMURA Yuri], 益田 裕子 [MASUDA Yuko], 稲村 志穂里 [INAMURA Shiori], 太田 寛仁 [OTA Kanjin], 関 優奈 [SEKI Yuna], 徳永 比奈子 [TOKUNAGA Hinako], 中島 春菜 [NAKAJIMA Haruna], 中島 瑞生 [NAKAJIMA Mizuki], 原田 舞子 [HARADA Maiko], 廣川 みくり [HIROKAWA Mikuri], 渡部 義紀 [WATABE Yoshiki], 伊東 真梨乃 [ITO Marino].
『A to THE』
グループZA/座 [Group ZA]: 柴山 紗帆 [SHIBAYAMA Saho], 飯野 萌子 [IINO Moeko], 広瀬 碧 [HIROSE Aoi], 福田 紘也 [FUKUDA Hiroya], 益田 裕子 [MASUDA Yuko], 赤井 綾乃 [AKAI Ayano], 太田 寛仁 [OTA Kanjin],関 晶帆 [SEKI Akiho], 仲村 啓 [NAKAMURA Satoshi], 西川 慶 [NISHIKAWA Kei], 原田 舞子 [HARADA Maiko], 樋口 響 [HIGUCHI Hibiki], 廣川 みくり [HIROKAWA Mikuri], 横山 柊子 [YOKOYAMA Toko].

新国立劇場バレエ団のダンサーたちの振付によるコンテンポラリー・ダンス作品からなるアニュアルの公演です。 今年度は新型コロナウイルス感染症拡大防止のため公演はキャンセルとなったのですが、 第3部にあたるコンポジション・プロジェクトによる作品2作品が無観客上演のライブストリーミングされました。 コンポジション・プロジェクトとは、ダンサー同志がアイディアを出し合いながらワークショップを重ねて作品を創作する企画とのことです。

最初に上演した『〇 ~wa~』は、ビートのある electronic な音楽を使った抽象的な作品。 ビートのある音楽を使っているのに、身体をコントロールし過ぎて、こじんまりとしてしまった感も。 照明が薄暗くコントラストも弱く、画面を通して見るとますますぼんやりとした印象となってしまいました。

15分の休憩を挟んで続いて上演した『A to THE』は、照明のメリハリが感じられて、画面を通して観ても観やすなりました。 カメラの感度を調整したのかもしれませんが、 横からの強いライティングで暗い背景にダンサーを浮かび上がらせたり、最後の場面で背景を光らせてシルエットを見せたり、 ダウンライトで区画を作るときも斜めだったり奥行き方向だったりと、照明での演出に色々工夫を感じました。 照明だけでなく動きについても、動と静、多様性と同調性の間の変化にもメリハリが感じられました。 特に、様々なポーズで横一列に連なる場面とその前後の動きの構成など。 全体的な展開についても、抽象的な作品ながら、中程と最後に短めの物語性をほのめかす場面を入るなど、 平板にしない工夫が感じられました。 そんなこともあって、『A to THEの方』が楽しめました。

ストリーミングの配信には YouTube と Facebook を使っていましたが、 負荷が集中して途切れてしまうことが若干ありました。それも仕方ないでしょうか。 YouTube ではライブストリーミング終了後も観られるようになっていますが、そのままアーカイブとして公開し続けて欲しいものです。 ライブストリーミングのノウハウ、経験がほとんど無いと思われる中、目立つトラブルはありませんでした。 Royal Opera House Cinema や Metropolitan Opera Live in HD に比べると、 カメラのスイッチングやアップが少々多すぎるように感じられましたが、続けるうちに洗練されるのではないかと思います。 権利上の約もあってライブストリーミングに乗せることができる公演も限られているかと思いますが、今後もこういう試みを続けて欲しいものです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

日曜の午後は、 沼野充義(東京大学教授)最終講義「チェーホフとサハリンの美しいニヴフ人――村上春樹、大江健三郎からサンギまで」 を一日遅れで拝聴。 すっかり文学から疎くなっており、前半の 村上 春樹 とロシア文学の関係の話などは感想を口にする言葉すら無いのですが、 サハリンの少数民族ニヴフ (Нивхи [Nivkh]) の作家 ヴラジーミル・サンギ (Владимир Санги [Vladimir Sangi]) の話に興味を引かれました。 久しぶりに桑野塾を聴講したくなりましたが、この状況では、暫くは開催は難しいでしょうか。

土曜は午後まで初夏のような暑さでしたが、日暮れから天気が崩れ、一転して日曜は昼過ぎまで積もるほどの雪。 この週末はちょうど桜は見頃でしたが、この天気であれば、外出自粛で花見ができないことも諦めつくでしょうか。 といっても、地元のいつもの散策コースに桜並木があるので、散策しながら桜を楽しみました。 例年であれば、若林時代の大家さん宅で花見宴もあるはずなのですが、今年の開催は厳しいでしょうか。

[3823] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Mar 17 0:27:44 2020

この週末の日曜は午後に日本橋室町へ。この一人芝居をイベント・シネマで観てきました。

Wyndham's Theatre, London, 2019-09-12.
Written and performed by Phoebe Waller-Bridge. Directed by Vicky Jones.
Presented by DryWrite, Soho Theatre and Annapurna Theatre
First Performance: the Big Belly Underbelly, 1 August 2013, Edinburgh Fringe 2013.
上映: TOHOシネマズ日本橋, 2020-03-15 13:00-15:40 JST.

Fleabag は Edinburgh Fringe 2013 で Fringe First Award を受賞して話題作となった Phoebe Waller-Bridge による女性一人芝居のコメディ作品の、 2019年ロンドンでの公演を収録したものを Natinal Theatre Live で観てきました。 2013年にBBCが全6回のTVコメディ・ドラマ化され数多くの賞を受賞、 2019年にTVコメディ・ドラマの第2シリーズが作られています。 と言っても、TVコメディ・ドラマや演じている Pheobe Waller-Bridge などについて予備知識もありませんでした。 普段、イベント・シネマで観るのは Royal Opera House や Metropolitan Opera のオペラ、バレエなどが中心で、 一人芝居をイベント・シネマで観るという経験はどういうものか、という興味もあって観てきました。

小さな舞台の上に、3 m四方程度の低い台とその中央にアームレストの無いシンプルな椅子が一脚。 ほぼ、その狭い舞台の上だけで演じました。 映像プロジェクションなどは用いず、照明演出若干の明暗の変化はあれど、色や明度を大きく変えることもなく、 音響演出も時々録音と思しき声や効果音も使う程度で、会話の相手も声色を変えて演じました。 服を変えるようなこともせず、マイムやダンスのようなフィジカルな演技も控えめ。 手振りや表情は豊かに、椅子への座り方やその脇での立ち方、歩き回り方などの姿勢、仕草と、 語りだけという、ある意味絵でミニマリスティックな演出の一人芝居でした。

主人公の Fleabag は Guinea pig-themed café (モルモット・カフェ) を経営していた女性。 店の家賃が払えなくなり、仕事を求めて採用面接に臨に失敗する場面から始まり、 回想として語るのではなく、その場面をそのまま描くように、カフェの最後の日々を演じていきます。 その話はあけっぴろげな下ネタ中心の話が中心で、字幕の助けもあったと思いますが、笑える場面も多くありました。 しかし、むしろ、その語りの中の様々なエピソード、例えば、 共同経営者だった Boo の死、関係があまりうまくいっていない姉や父、 縒りを戻しても続かず別れてしまう元恋人 Harry、Harry がいない間の男漁り、 そして、何より、下ネタばかりの語りということ自体が、 次第に焦点を結び始め、焦点を結んだ瞬間に、最初の採用面接の場面に戻る、という 物語の話の運び方の巧みさにすっかり引き込まれてしまいました。

正直に言えば、表現のスタイルという点でもテーマという点でも、普段、接点があまり無いもので、 語る言葉が無いという感もあったのですが、 ユーモアと物語の話の運び方の巧みさを期待以上に楽しむことができました。 小劇場やライブハウスのような場所のような会場で雰囲気込みで楽しみたい作風でしたが、 語りが中心だっただけに字幕の見やすいという点ではイベントシネマにも合っていたかもしれません。 ただ、今回、観た映画館は場違いに大きなスクリーンで、 ミニシアターでの上映の方が雰囲気に合っていたかもしれないと思ってしまいました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

土曜のストリーミングで不完全燃焼気味になって、まともな舞台の上映を見たい、と、 守備範囲外の作品かなと思いつつ足を運んだのですが、楽しめて良かったです。 あまり観なタイプの舞台を観る良い機会だったでしょうか。

美術館と劇場という普段の週末の行き先を失い、 映画館でイベントシネマを観るだけでなく、久々にレコード屋巡りなどしています。 この週末は新宿、その前の週は渋谷。しかし、このペースで買っても、積聴になるだけです。 COVID-19 (新型コロナウイルス感染症) も、日本国内も感染が止まらないどころか、世界的なパンデミックとなってしまった現在、 今後、日本においてもヨーロッパのように映画館やレコード屋、本屋までも営業停止になる可能性も否定できません。 暫くは、週末のささやかな趣味生活も難しい日々が続きそうです。

[3822] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 15 20:52:12 2020

今週末は、土曜の午後に彩の国さいたま芸術劇場で Batsheva Dance Company: Venezuela を観る予定だったのですが、 新型コロナウイルス感染拡大防止のためキャンセルになってしまいました。 ハシゴで夜にもう一つ観る予定だったのですが、公演としてはキャンセルになったものの、 無料の無観客ストリーミングが行われたので、家でそれを観ました。

東京文化会館 小ホール
2020/03/14 17:50-19:30.
Written and directed by Stefan Winter
Composition after Ludwig van Beethoven: Fumio Yasuda [安田 芙充央].
Live-Performance with: Ferhan Önder & Ferzan Önder (piano for four hands), Fumio Yasuda [安田 芙充央] (piano (improvisation)), Joachim Badenhorst (clarinet), Gareth Davis (bass clarinet), Tetsuya Hayashi [林 徹也], Mari Adachi [安達 真理] (viola), Aki Tsujita [辻田 暁], Ichiro Hosoya [細谷 一郎] (art of noise and sound).
with: 1-Chanel-Film-Installation (16:9) in portrait format; Allegory (living sculpture): Aki Tsujita [辻田 暁].
Producer: Mariko Takahashi [髙橋 真理子] (Neue Klangkunst gGmbH)
[PART I] Infinite Blue: 1. Water and Air (after Meeresstille und glückliche Fahrt [Calm Sea and Prosperous Voyage], Op.112); 2. Afterlife (after Sonata for Piano No.30, Op.109); 3. Seafoam (after String Quartet No.14, Op.131 and Great Fugue, Op.133)
[PART II] Deep Green: 1. Forest (after “Fidelio”–Prisoners’ Choir); 2. Wandering (after Symphony No.5, Op.67–2nd movement); 3. Under the Waterfall (after Missa Solemnis, Op.123–Benedictus)
[PART III] Zone Red: 1. At the Bank of the River Styx (after Symphony No.7, Op.92–2nd movement); 2. Red Rain (after “Fidelio”–Prisoners’ Choir); 3. The Great Wave (after Symphony No.9 op.125–4th movement ‘Ode to Joy’)

Winter & Winter レーベルを主宰する Stefan Winter の Sound Art のプロジェクトが 東京・春・音楽祭 2020 のプログラムとして上演されました。 2018年にドイツ文化会館で上演された Gedicht einer Zelle - Triptychon der Liebe und Ekstase - Klang- und 3-Kanal-Film Installation が良かったので [鑑賞メモ] 楽しみにしていたのですが、 新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、公演はキャンセルとなり、 (株)インターネットイニシアティブ (IIJ) の配信協力により無観客上演の無料ライブストリーミングとなりました。

サーバの能力を超えたアクセスがあったためか、音声は途切れがち。 後半はサーバとほとんど繋がらなくなり、エンディングを見ることもできませんでした。 まともな鑑賞ができたとは言い難いのですが、 Ludwig von Beethoven の曲を即興を交えて解体再構築した音楽は、jazz 的な要素が薄く室内楽的ではあるものの、 Winter & Winter からリリースされていた Uri Caine Ensemble による Mahler, Wagner, Bach などの音楽を解体再構築するプロジェクトを思い出しました。 art of noise and sound (ノイズアート) とクレジットされた2人が アンサンブルの前にインスタレーションのように並べられたオブジェ群を使って波や風のような音から 不穏なサイレン様の音まで、様々な音を出していたのですが、 舞台に動きを作り出していましたし、 Winter & Winter の AudioFilm シリーズに入っている効果音をライブにするとこうなるのか、という面白さもありました。

ビデオインスタレーションはHDのアスペクト比を縦長にした1面のみ。 Gedicht einer Zelle - Triptychon der Liebe und Ekstase - Klang- und 3-Kanal-Film Installation では Noriko Kura [倉 紀子] による “Living Painting” をメインにフィーチャーしていましたが、 この作品では Aki Tsujita [辻田 暁] による “living sculpture”。 白く光をバックにして、ベール状だったり体にタイトに巻きつけた布様だったりする衣装を着た彼女の上に、 実写ながら抽象度高めのコントラストと彩度の高い映像を投影していました。 実際に絵の具を浴びるのではなく映像を投影するものですが、近いものを感じました。 その一方で、動きも少なく、東アフリカ・ザンジバルの浜や廃墟のような建物が映し出されることはありませんでした。 その結果、あくまで演奏の方が主体で、その象徴的な像を背景に掲げているかの様な演出と感じました。

プログラムの作家の言葉として Stefan Winter は、 Beethoven を選んだ理由として、Beethoven が意図せずして専制君主の英雄となってしまうことを挙げ、 そしてその “An die Freude [Ode to Joy]” (歓喜の歌) に、 欧州難民危機の中で起きた2013年のランペドゥーザ島難民船沈没事故や 古典主義的ながらロマン主義の先駆と言われる Théodore Géricault の絵画 “Le Radeau de la Méduse” 「メデューズ号の筏」 (1818-1819) を重ねています。 しかし、“An die Freude [Ode to Joy]” を使った最後の Part III - 3. の場面を観ることができなかたこともあるのか、 この作家の言葉と演奏や投影されていたビデオとの関係を感じ取ることはできませんでした。

公演がキャンセルになり、代わりの無観客ライブストリーミングもズタボロと、残念な限りでした。 その一方で、静かな展開の時は音があまり途切れず、激しめの展開、特に立ち上がりの急な音が続くと音が途切れがちという、 非可逆圧縮の音声コーデックの特性が音からうかがえるような所が興味深く感じられました。 ストリーミングだけでなく録音録画もされたと思うので、いずれ Winter & Winter レーベルからCDもしくはDVDとしてリリースされることを期待しています。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

ちゃんと鑑賞できなかったものについてメモを残してもと思ったのですが、長いスパンで見ると、 公演キャンセルやズタボロな無観客ストリーミングという状況も含めて鑑賞メモとして残しておいた方が良いかな、と、思い直しました。

[3821] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Mar 3 0:10:15 2020

この週末日曜は昼前に川崎に出て、このオペラ公演のビューイングを観てきました。

Metropolitan Opera
『ヴォツェック』
from Metropolitan Opera House, 2020-01-11 Matinee.
Composer: Alban Berg; Libretto by the composer, based on the play Woyzeck by Georg Büchner.
Production: William Kentridge.
Co-director: Luc De Wit; Projection designer: Catherine Mayburgh; Set designer: Sabine Theunissen; Costume designer: Greta Goiris; Lighting designer: Urs Schönebaum.
Cast: Peter Mattei (Wozzeck), Elza van den Heever (Marie), Christopher Ventris (Tambourmjor), Andrew Staples (Andres), Gerhard Siegel (Hauptmann), Christian Van Horn (Doktor), Tamara Mumford (Margaret), Eliot Flowers (Maries Knabe), et al.
Puppeteers: Andrea Fabi, Gwyneth E. Larsen.
Conductor: Yannick Nézet-Séguin.
World Premiere: Staatsoper, Berlin, 14 December 1925.
A co-production of Salzburger Festspiele [Salzburg Festival], the Metropolitan Opera, Opera Australia and the Canadian Opera Company. This production's premier: Haus für Mozart, Salzburg, 8 August 2017.
上映: 109シネマズ川崎, 2020-03-01 11:20-13:35 JST.

2017年 Salzburger Festspiele [Salzburg Festival] での初演が評判良かった William Kentridge のプロダクション によるオペラ Wozzeck の Metropolitan Opera での上演が Live in HD で上映されたので、観てきました。 Kentridge は現代美術作家としても好きで、彼の演出したオペラも、 2015/16シーズンの Met Opera: Live in HD での Lulu と 2018年の新国立劇場での Die Zauberflöte [鑑賞メモ] を観ています。 Wozzeck も新国立劇場で観たことがある程好きなオペラですし [鑑賞メモ]、 原作の戯曲 Woyzeck好きで、 この戯曲に基づく Josef Nadj [鑑賞メモ] や Robert Wilson [鑑賞メモ] の作品も観ています。 Kentridge がこの Wozzeck をどう演出したのか、観るのをとても楽しみにしていましした。

ビデオプロジェクションにより貧民街、駐屯地、酒場や街外れの沼の辺りの道にもなる足場状のセットに、 Kentridge によるイラストレーションに基づくアニメーションや短い実演による動画をビデオプロジ ェクションを駆使してイメージを被せてくるような演出でした。 原作の戯曲は1821年の実話に基づいて1836年頃に執筆されたと言われていますが、 19世紀前半ではなく、第一次世界大戦のイメージを被せていました。 ガスマスク、鉄条網、泥沼のような塹壕、負傷兵、軍馬、飛行船や複葉の飛行機、Mark I 風の戦車、銃後の街並みなど。 (第一次世界大戦から外れるイメージもいくらかあったのですが、その意図はつかみかねました。)

以前から Kentridge の画風から Otto Dix を連想させられることがありましたが [鑑賞メモ]、 まさに Dix が第一次世界大戦を描いた Der Krieg (1924) の沈鬱なイメージを、 同時代の Wozzeck (1925年初演) を通してオペラ化したようにも感じました。 第一次世界大戦の影響を受け、ワイマール時代の風刺画 [鑑賞メモ] とも共通するテーマを扱ったオペラという点でも、 この演出は納得で、好みのツボにもハマりました。 しかし、プロジェクションされるビデオの情報量が多くてそれを追うのも大変だったということもありますが、 意外性の無さのせいか、想像力を膨らませる契機に欠けたようにも感じられてしまいました。

意外といえば、ビジュアル的なクライマックスを、 Wozzeck が Marie を殺す場面ではなく、その前の Marie の独唱に持ってきていたことでしょうか。 この場面では、戦線の作戦地図のイメージを被せ、歌に合わせて部隊の動きを示す矢印を動かすという。 Wozzeck が Marie を殺す場面では血のように赤い月を象徴的な演出に使うことが多く、 Kentridge がどのように視覚化するのか楽しみにしていたのですが、 この場面では赤い月を視覚的に見せることはしませんでした。 また、Wozzeck が Marie 殺害現場に戻って沼に沈む場面で、 沼のようになった戦線の塹壕のイメージを投影したのも秀逸でした。

Kentridge 演出の Lulu では黙役のマイムを使ったわけですが [鑑賞メモ]、 Wozzeck では Maries Knabe (Marie の子) をガスマスク顔のパペットにしていました。 パペットならでの演出の妙は感じられませんでしたが、 Kentridge は Highspring Puppet Company とコラボレーションも多く [鑑賞メモ]、 Kentridge らしいと思いましたし、 第一次世界大戦の泥沼に沈んでしまった世界というイメージという点でも、 ガスマスク顔はラストの場面にはまっていました。

とても好みの演出だったとは思うのですが、事前の期待が過大だったせいか、 観ていて心の琴線に触れられることなく、不完全燃焼感が残ってしまった鑑賞でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3820] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 1 20:51:12 2020

COVID-19対策で美術館や休館、演劇・ダンスの公演が中止になり始めたこの週末ですが、 そんな中、土曜の夕方は横浜山下町へ。この公演を観てきました。

KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
2020/02/29, 17:00-18:00.
演出: 小野寺 修二.
出演: 大庭 裕介, 崎山 莉奈, 藤田 桃子, 小野寺 修二.
照明: 吉本 有輝子 (真昼); 音響: 池田 野歩; 美術: 杉山 至; 舞台監督: 橋本 加奈子, 鈴木 章友.

元-水と油の小野寺 修二のセルフユニットとして2008年に設立されたカンパニーデラシネラですが、 2019年4月に4人のパフォーマーからなるカンパニーとして新たなスタートを切っています。 小野寺 の振付作品としては去年3月に『WAITING FOR THE SIGNAL! 〔信号待ち!〕』を観ていますが [鑑賞メモ]、 カンパニーデラシネラとしては『椿姫』 [鑑賞メモ] 以来2年ぶり、新体制になってからは初めて観ます。

小野寺の振付作品はマイムの身体表現をベースとしたフィジカルシアターで、 水と油 ではセリフを排していましたが、 旧体制のカンパニーデラシネラでは次第にセリフを排さない演出に変わってきていました。 しかし、この新体制での作品ではセリフを排した演出になっていました。 今回の作品は、全体としてはっきりとした筋の物語が無く、 断片的なスケッチを繋いでいくところはマイムシアターによくある構成でしたが、 身体の動きを使ってミニマリスティックな舞台に空間を描いていくようなマイムシアターに典型的な演出には収まりきらないものを感じました。

20世紀前半くらいのモダンながらアンティークな雰囲気も感じさせる 公共建築の一階ロビー、洋風のアパルトマン、もしくは、商業建築の一室とも取れそうな空間が、 舞台美術を使って設定されていました。 そして、空間を無からマイムで描くのではなく、舞台装置で設定された空間の意味付けを変え、 場面を重層的に編集するかのように、マイムが使われていました。 例えば、舞台上手のドアの前の空間は、大庭にとっては恋人の家の前であり、 崎山にとってはアパルトマンの自室内であり、藤田にとっては暴風雨の中向かう公共建築や店舗への道であり、 それらの場面が時には同時にほとんど干渉せずに並行して、 もしくは、ドアの内外が折り返されてどちらも手前にあるかのように、演じられていました。

そんな演技で意味付けられた様々な場面の切替、変容や並行して展開する場面の関係付けには、 今までのように、椅子や机の移動、もしくは、鞄のようなキーとなる小道具も使われていました。 しかし、照明による場面の文節や影を使った場面の関係付け、 音をキーとした場面の関係付けなど、照明や音を使った演出が印象に残りました。 特に、美容室のドライヤーの音に庭の芝刈り機の音を関係づけるような所は、面白く感じました。

大きな話の流れが感じられない細かいスケッチの連続のような展開は、 捉えどころなさも感じて、途中、集中が切れかけた時もありました。 しかし、その一方で、場面を重層的に編集していくようなアイデア溢れる演出については、 随所で新鮮に感じられ、興味深く観ることもできました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3819] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Feb 25 22:10:53 2020

この週末日曜は午後に恵比寿へ。 アニュアルで開催されている映像の展覧会を観てきました。

Yebisu International Festival Art & Alternative Visions 2020
東京都写真美術館, 日仏会館 ほか
2020/02/07-02/24 (月休), 10:00-20:00 (2/24 10:00-18:00)

東京都写真美術館とその界隈で開催されているアニュアルの映像芸術展です。 年度末繁忙期で毎年とはいかないものの継続的に観てきているので [2年前の鑑賞メモ]、定点観測的な気分で観てきました。 今年のテーマ「時間を想像する The Imagination of Time」にピンときて楽しめた程ではないですが、 いくつか気になった作品について。

別会場の日仏会館で展示されていたのは、高谷 史郎 の新作委嘱作品《Toposcan/Tokyo》。 『明るい部屋』展 (東京都写真美術館, 2013) [鑑賞メモ] に展示されていたアイルランドで撮影された《Toposcan/Ireland》 (2013) の東京版です。 同様8枚のディスプレイを使ったインスタレーションで、 ストライプに引き延ばされた風景と、通常の同ビデオ、そして、氷付いたかのようにスチル化していく映像は同様ですが、やはり見入ってしまいます。 特に、東京港湾で撮られたものの、波が凍っていくように見える様が良いです。

地階に展示されていた韓国の作家 Hwayeon Nam (남 화연, 南 和延) によるビデオインスタレーション Dancer from the Peninsula 《半島の舞姫》 (2019) は、 1911年京城生の舞踊家 崔 承喜 (최 승희, Choi Seung-hee) に取材した作品。 作品中では、日中戦争中は日本占領下の中国北京で活動し、戦後は北朝鮮で舞踊研究所の設立したというエピソードに触れています。 映像の中では触れられていませんでしたが 石井 漠 に師事し、1967年に粛清され家族と共に行方不明になったといいます。 崔 承喜 という題材は良く、研究をまとめた本として読んだり、 主演映画『半島の舞姫』 (今 日出海=監督, 新興キネマ, 1936) や当時の資料展示を観たいとは思うきっかけにはなりましたが、 ビデオインスタレーションとしての説得力はさほど感じられませんでした。

LEDディスプレイの上にグラスやアルミのオブジェを並べて幻惑的なイメージを作り出していた 木村 友紀 《MPEG-4 H.264 Reflecting in Sizes》 (2019) や、 まだそういう言葉が無かった時代ながらアートアニメーション的なイメージ連想を白黒映画化したかのような 都筑 道夫 原案、高橋 悠治 音楽による 真鍋 博 《時計》 (1963) も、印象に残りました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3818] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Feb 24 21:45:00 2020

年度末の繁忙期はまだ続いているのですが、この3連休は完全休養。 土曜は昼過ぎまで溜まった野暮用をこなしていたのですが、夕方に築地へ。 このオペラ公演のビューイングを観てきました。

『アクナーテン』
from Metropolitan Opera House, 2019-11-23, 13:00–16:15.
Composed by Philip Glass. Llibretto by Philip Glass in association with Shalom Goldman, Robert Israel, Richard Riddell, and Jerome Robbins. Vocal text drawn from original sources by Shalom Goldman.
Production: Phelim McDermott.
Set and Projection Designer: Tom Pye. Costume Designer: Kevin Pollard. Lighting Designer: Bruno Poet. Choreographer: Sean Gandini.
Cast: Anthony Roth Constanzo (Akhnaten), Dísella Lárusdóttir (Akhnaten's mother), J'Nai Bridges (Nefertiti, Akhnaten's wife), Zachary James (Amenhotep III), Richard Bernstein (Aye, Nefertiti's father), Aaron Blake (High priest of Amon), Will Liverman (General Hremhab), et al.
Skills ensemble: Sean Gandini, Kati Ylä-Hokkala, et al.
Conductor: Karen Kamensek.
World Premiere: Staatstheater Stuttgart, Stuttgart, 24 March 1984.
This production was originally created by English National Opera and LA Opera. This production's premiere: London Coliseum (English National Opera), London, 4 March 2016.
上映: 東劇, 2020-02-23 18:30-22:10 JST.

Akhnaten は、 Minimal music の作曲家と知られる Philip Glass が1970年代後半から1980年代前半にかけて作曲した The Portrait Trilogy と呼ばれる三部作の最後の作品です。 Robert Wilson 演出で知られる1作目 Einstein on the Beach (初演: 1976) をはじめ Glass を有名にした三部作の作品の一つですし、 今回上演された Phelim McDermott のプロダクションも ジャグリングを大きくフィーチャーした演出が2016年の English National Opera 初演時に話題になっていたので、 今回の Met Live in HD での上映を楽しみにしていました。

舞台は古代エジプト第18王朝 (新王国時代) の紀元前14世紀半ば、 それまでの多神教の信仰からアテン (Aten) のみを信仰する一神教への改革 (この時に建設された新首都アマルナ (Amarna) からアマルナ革命とも呼ばれる) を試みた国王 アメンホテプ4世 (Amenhotep IV) ことアクエンアテン (Akhenaten) に関する作品です。 (このオペラではアクナーテン (Akhnaten) と呼んでいます。)

父アメンホテプ3世 (Amenhotep III) が最初の場面の死の後、語り手となるのですが、 英語によって語られるのは近代的な登場人物の内面描写ではなく大きな歴史語りでの場面説明で、 改革とその挫折の群像劇の世界に引き込むような演出ではありません。 考古学的な資料から採られたという古代エジプト語や古代ヘブライ語の言葉を用い、 Minimal music らしく執拗に反復されるフレーズからなる音楽はもちろん、 ゆっくりと様式的な歌手の所作や、ジャグラーたちの振付もあって、 時に恍惚的な、時に瞑想的な儀式に参加しているかのような全3幕3時間半でした。

演出を手がてた Phelim McDermott はイギリスの演出家で、 English National Opera で度々演出を手がけていて、 2008年にも Glass のオペラ Satyagraha を演出しています。 旧体制である多神教の世界、首都テーベ (Thebes) の場面では、登場人物の衣装も過剰に装飾的で、 三段の高さに組まれた足場にジャグラーやコーラスが並んで様式的な動きをすると、遺跡の壁に書かれたヒエログリフのようにすら感じました。 といっても衣装は、必ずしも古代エジプトを意識したものではなく、 18世紀末から19世紀にかけての西洋の服装にシュールな装飾を過剰に付けてエキゾチックにしたもの。 主役 Akhnaten の衣装はロココの Robe à la française がベースになっていましたし、 旧体制派の3人も山高帽と紳士服だったりナポレオン戦争の頃を思わせる軍服だったり。 インタビューではヴィクトリアン・スタイルを参照したと言っていましたが、もう少し前の時代という印象を受けました。

その一方で、一神教の世界、新首都アマルナが舞台となる第2幕後半では、 衣装も長くシンプルなローブとなり、 足場は脇に引かれ、美術は吊るされた大きな球体、そしてそこに登るかのように置かれた階段のみ。 多神教と一神教の世界を一目でわかるよう視覚的に表現するのは、さすがです。 唯一英語で歌われるアリア Hymn の場面では、 ゆっくりとした様式的な所作と色の移ろうライティングを使ったミニマリスティックな演出に Robert Wilson の演出を連想させられました。

幕間の McDermott へのインタビューによると、ジャグリングを使う着想は音楽からのイメージが先で、 紹介されて会った Gandini に最古のジャグリングの記録が古代エジプトの壁画であることを教えられたとのことでした。 Gandini のダンス的とも言えるジャグリング振付もあってか、 Minimal music の可視化という点でも、様式的な儀式的所作との相性という点でも、演出にうまくハマってました。 主に白いジャグリング・ボールを使っていましたが、舞台の上で沢山の白いボールがひょいひょいと繰り返し動く様は、 オーケストラの音数多いながら細かいフレーズがポリリズミックに反復する音楽を見るよう。 背景としてジャグリングしている場面が多いのですが、 それだけでなく、第2幕頭の革命の場面ではクラブ (棍棒) を武器に見立てて戦いを演出したり、 第2幕後半ではミニマリスティックな舞台で約 1 m 大のバルーンのような球をふんわりジャグリングして理想の世界を演出したり。 ジャグリングするのは Skills ensemble とクレジットされた黙役の12名のジャグラーだけでなく、 コーラスにボールを一つ持たせてトスさせる場面も少なからず、 Zachary James 演じる進行役 (Amenhotep III) がジャグラーたちに混じって三つ玉のジャグリングをする場面もありました。

振付を担当したジャグラーの Sean Gandini は、 ジャグリングを主な技をして使うロンドンの現代サーカスカンパニー Gandini Juggling を主宰しています。 1992年で結成で2004年に London Internatinal Mime Festival に初出場して以来、その常連的な存在です。 彼らを有名にしたのは、Pina Bausch へのオマージュ作品 Smashed! (2010) [Vimeo]。 4 x 4: Ephemeral Architectures (2015) [Vimeo] では、Royal Ballet の Ludovic Ondiviela の振付でバレエとコラボレーションしてもいます。 舞台作品としての最新作 Spring (2019) [YouTube] も コンテンポラリーダンスの文脈で活動する振付家 Alexander Whitley とのコラボレーションです。 Gandini Juggling はジャグリングとコンテンポラリーなバレエ、ダンスとの融合の最先端を行っているカンパニーです。

Metropolitan Opera の Akhnaten に出演するために New York へ行った際でしょうか、 2019年12月にブルックリンの National Sawdust に Gandini Juggling が出演した際の動画が、 カンパニーの公式 YouTube チャンネルにアップロードされています。 一つは Steve Reich の Clapping Music の juggling version [YouTube]。 もう一つは、György Ligeti の Poème Symphonique for 100 Metronomes に着想した作品という The Metronome Piece [YouTube]。 いかにも彼ららしい選曲です。 The Metronome Piece では、 Akhnaten でタイトル役を歌った Anthony Roth Costanzo も出演しています。

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[3817] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 2 23:14:49 2020

年度末の繁忙期で身動きが取れなくなりつつありますが、 日曜午後は気分転換に横浜みなとみらいの赤レンガ倉庫へ。 このダンス公演を観てきました。

スー・ヒーリー 『ON VIEW:Panorama』
横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホール
2019/02/02 15:00-16:15
振付・演出・映像 [Choreography, Direction]: Sue Healey.
出演 [Performance]: 浅井 信好 [Asai Nobuyoshi], 湯浅 永麻 [Yuasa Ema] (Japan); Joseph Lee, Mui Cheuk-yin (Hong Kong); Nalina Wait, Benjamin Hancock (Australia).
委嘱製作: 愛知県芸術劇場, Freespace West Kowloon Cultural District (Hong Kong); 共同製作: 横浜赤レンガ倉庫1号館 (公益財団法人横浜市芸術文化振興財団).
World Premiere.

オーストラリア・シドニーを拠点に活動する振付家・映像作家・インスタレーション作家の Sue Healey が 2013年から続けてているシリーズ On View は、 主にコンテンポラリーダンスの文脈で活動しているダンサーを題材に、 映像作品や映像を交えたインスタレーション、時にはパフォーマンスを加えた ポートレート (肖像画) とするような作品です。 Yokohama Dance Collection 2020 のオープニング・プログラムとして上演された ON VIEW: Panorama は、 そのシリーズ中の1作品として、オーストラリア、日本、香港の男女2名ずつを取り上げ、城崎国際アートセンターで制作されたものです。

開場すると、まずはインスタレーションの鑑賞ということで、10分ほど映像のプロジェクションやポートレイトが描かれたガラスの衝立を絡めてのパフォーマンスを歩きながら観て回り、 その後に、客席に着いて約1時間の上演を観ます。 舞台には4面のスクリーンが並び、城崎や横浜で撮られたとおぼしき、ダンサーの映像を上映しつつつ、ダンスが上演されます。 複数のダンサーの絡みが無い訳ではなのですが、相乗効果を生んでいるというより、併置してコントラストと生じさせるような使い方でした。 後半近くになると、ポートレートが書かれたガラスの衝立のシルエットを使った演出や、 スモークに半透明スクリーンに多重的、多層的に映像を投影するなど、視覚的な効果の面白い演出も楽しめました。

映像、インスタレーションとダンスによる「クロスディシプリナリー」な作品という謳いでしたが、 現代アートのインスタレーションのような舞台美術やプロジェクションマッピングのような映像投影を駆使したダンス作品や、 歩きながらビデオインスタレーションの前でのパフォーマンスを観て回るというような演出は少なからず観たことがあり、 その手法自体というより、立体的に物語ったり幻惑的なイメージを作っていく使い方ではなく、多面的なダンサーのポートレイトを構成していく使い方に興味を引かれました。 といっても、プロモーションに使えそうと思うほど映像の完成度が高がったせいか、そちらが主と感じられがち。 映像とライブのダンスで個々のダンサーを見せつつ、映像、照明や音楽による演出で統一感を持たせた ガラ、というかショーケース公演を観たようでした。 これで、推したくなるようなダンサーに出会えたら良かったのですが、全体の構造の方に意識が行きがちで、個々のポートレートについての印象が薄くなってしまいました。

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[3816] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 26 20:38:02 2020

この週末土曜の午後は横浜はみなとみらい線沿線へ。 散策がてら、BankART 1929 のスペースを巡ってこの展覧会を観てきました。

BankART Station + BankART SILK
2019/12/28-2020/02/02 (12/30-1/3休). 11:00-19:00.
牛島 達治, タムラサトル, 川瀬 浩介, 早川 祐太, 西原 尚, 片岡 純也, 武藤 勇, 小林 椋, 今村 源, 三浦 かおり, 田中 信太郎.

横浜トリエンナーレ2008 の連動プログラムとして開催された 『心ある機械たち』 [鑑賞メモ] の11年ぶりの続編的な展覧会です。 今回は2019年横浜に新たにオープンした BankART Station と BankART SILK を会場としていました。 「心ある」かは微妙ですし、コンセプト的な深さのようなものはありませんでしたが、 役に立つ機械ではなく純粋に動きの面白さを楽しむようなメカニカルな作品が相変わらず楽しめた展覧会でした。 以下、特に気に入った作品について個別に。まずは、BankART Station から。

BankART 1929 のこの手の展覧会の常連といえば 牛島 達治 [鑑賞メモ]。 Studio NYK 時代は大きくゴツくも泥臭い機械が似合っていましたが、Station に展示されていたのは、いくらか軽め。 回転する街の模型に砂をかける《まっすぐなキュウリたちの午後 (砂の街)》 (2019/1997) 半ループで閉じた長い周回コースとなったレール上を競争する《まっすぐなキュウリたちの午後 (競争)》 (2019/1997) にしても、 「無用」以上の風刺を感じましたが、後者の滑らかというより断続的なメカニカルな動きの面白さは楽しめました。

タムラサトル [鑑賞メモ] が出展していたのは、1990年代の《スピンクロコダイル》系の作品、 《回転する3頭のシカ(前)》 (1996)と《回転する3頭のシカ(前)》 (1996)。 ゆっくり回るので危なさはありませんが、すっとぼけた造形の馬鹿馬鹿しさが楽しめます。

最近は、森山 開次 や ひびの こづえ の舞台音楽も印象深い 川瀬 浩介 [鑑賞メモ] は、 11年前の前回に続いて、そのヴァリエーションとも言える《ベアリング・ブロッケンII》 (2009)。 リズミカルな鉄琴の響きも楽しい作品です。

BankART Station で、そしてこの展覧会で最も気に入ったのは、片岡 純也。 中のコーヒーが回転している《Coffee cup》 (2019) や 説明の不要なタイトル通りの作品《ソファーの足を回る電球》 (2017)、《回る時計・進まない秒針》 (2019) など、 見落としがちなさりげなさながら、気付くと現実を異化するシュールさもある所が良いです。 大掛かりな《Floating paper》 (2017) はそれらとまた異なる作風ですが、 A4大の紙が水平に、ぴったりの大きさの透明なアクリル板の角柱の中を下りていくという、 紙の縁とアクリル板の間を抜ける空気が作る紙の繊細な動き、 空気に支えられつつ下りていくゆっくりとした動きが、味わい深いです。

BankART SILK では、三浦 かおり の《秒の音》 (2019)。 約20台壁に固定された数センチ大のベースを持つ数度ずつ断続的に動くムーブメントの針先に付けられた鈴が、細やかな音を奏でていました。

武藤 勇 の《不測の事態》は天板がロールして動く100円玉投入口のある展示台。 100円玉をスロットに投入と発生する事は、「不測の事態」という程ではなく、十分に予想できる動きです。 そうなるとわかっていても、実際に100円玉を投入して、展示されていた小壺が耳障りな破壊音と共に破片となって飛び散る様はやはり心穏やかではありませんでした。

横浜市内にオルタナティヴなアート・スペースを運営する BankART 1929 も 2017年末にそれまでの核となるスペース BankART Studio NYK を失ないましたが、 去年、山下町開港広場前のシルクセンター 1Fの BankART SILK と、 みなとみらい線新高島町駅の地下コンコース空スペースを使った BankART Station をオープンしています。 SILK へは KAAT神奈川芸術劇場や神奈川県民ホールへ行ったついでに覗いたりしていますが [鑑賞メモ]、 Station へ行ったのは、今回が初めて。 流石に、2004年開業した営業中の地下駅のコンコースなので、1953年築の元倉庫だった Studio NYK のような味わいはありません。 しかし、SILK と違って、外光の入らない広い空間という点では空間の特徴が Studio NYK に近く、大掛かりなもしくは/かつ映像を使ったインスタレーションには向いていそうです。 駅近ですし、横浜美術館、KAAT神奈川芸術劇場や神奈川県民ホールへ行く際は、 東急線みなとみらいパスなどを活用して、 立ち寄るのも良いかもしれません。

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今週末は ISU European Figure Skating Championships Graz 2020。 日本の Figure Skating のTV中継は Ladies や Men、それも日本選手ばかりにフォーカスするので、 こうして公式チャネルがジオブロック無しでストリーミングして、かつアーカイブしてくれているのは、ありがたいと限りです。 といっても、Ice Dance 以外はほとんど観られてないのですが。 しかし、流石にトップレベルの Euro の Ice Dance は見応えあります。

[3815] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 20 23:37:24 2020

この週末土曜の晩は、本郷から渋谷桜丘へ移動。この舞台を観てきました。

Adapted for the stage from Kid Koala's book and soundtrack Nufonia Must Fall.
Directed by K.K. Barrett; Created by Eric San (Kid Koala).
Set design by Benjamin Gerlis; Puppet design by Clea Minaker, Patrick Martel, Félix Boisvert, Karina Bleau; Director of photography AJ Korkidakis; Music by Kid Koala; Musical direction and string arrangements by Vid Cousins; Produced by Ryhna Thompson.
Puppeteers: Karina Bleau, Félix Boisvert, Clea Minaker.
Musicians: Kid Koala (electronics, turntable); The Afiara Quartet: Valerie Li (violin), Timothy Kantor (violin), Eric Wong (viola), Adrian Fung (cello).
A Nufonia Live Inc. production.
Co-commissioned by Luminato Festival, Adelaide Festival, Banff Centre, Internationales Sommerfestival Hamburg, Noorderzon Performing Arts Festival Groningen, Roundhouse UK, and BAM.
Premier: May 31, 2014, Eric Harvie Theatre, Banff, Alberta, Canada.

グラフィック・ノヴェル作家としても活動するカナダ・モントリオールの scratch DJ の Kid Koala が 2003年に出版したグラフィック・ノヴェル Nufonia Must Fall を、 2014年に音楽ライヴ、パペット・ショーとライヴ・シネマを組み合わせたマルチディシプリナリーな舞台作品として作品化したものです。 演出を手がけたのは、Being John Malkovich (1999)、Her (2013) などの Spike Jonze の一連の映画で 美術監督 (production designer) を務めてきた K. K. Barrett です。 Barrett が美術監督した映画としては、他に、 Michel Gondry の映画 Human Nature (2001)、 Sofia Coppola の映画 Lost In Translation (2003) や Marie Antoinette (2006) などがあり、 ミュージックビデオの分野でも活動しています。

この舞台は、生演奏を伴奏に、人形遣いによるライヴでの人形操作をカメラで収録し、 パペット・アニメーション風 (ストップモーション撮影しているわけでなくアニメーションではない) のワンテイクのライヴ・シネマを上演上映していくという、約1時間半の作品です。 様々な場面に合わせたセットが舞台狭しと並べられ、3人の人形遣いが人形やセットを操作し、カメラマンがそれを撮影して映像化していきます。 人形操作や撮影は淡々としたもので、映画に介入して作られた映画が異化されるような演出はありませんでしたが、 上演する時と場所のネタを背景となるセットの細部に仕込んであって、こういう点はライヴ・シネマならではでしょうか。

物語は、優秀だが働きづめで孤独な女性ロボット研究者 Malorie と、 彼女の開発した最新のロボット (Hexabot) で馘になってしまう旧式なロボット (名前が判る場面がありませんでした) の、 Boy meets girl ならぬ Robot meets girl 物です。 Kid Koala 自身も Charles Chaplin にインスパイアされたと言いっているようですが、 コールセンター (Consumer Complaint) のオペレータやファストフードの店員など 現代的な不安定な低賃金労働に就く旧式ロボットは、 20世紀初頭、サイレント時代の Chaplin 演じる浮浪者 (The Little Tramp) を近未来にアップデートしたもの。 近代の格差社会やディストピアの中でのささやかながら少しドタバタ入り人情味あるロマンスも City Lights (1931) や Modern Times (1936) のような 「浮浪者」を主人公としたサウンド版サイレント時代の Chaplin 映画を思わせる時もありました。

そんな物語を演じる人形は、ずんぐり可愛らしいロボットも頭部が大きめにデフォルメされた Malorie も、真っ白。 ロボットには表情がなく、Malorie の顔も細い目に口も小さく豊かな表情を作り出せるものではありません。 しかし、台詞を使わずに繊細な動きで丁寧にキャラクタの感情を描いていきます。 特に、Malorie の顔は、能面と同じく、向きやライティングで、時に微笑んでいるように、時に憂いを浮かべているように見せていました。 背景のセットもモノクロで落ち着いた画面を作り出していましたが、これもサイレント映画のモノクロの画面を意識していたように思います。 ロボット物ということで近未来的な舞台にも関わらずモノクロの画面はノスタルジック。 そんな背景と、ひかえめに可愛らしい人形の造形と動きが、 ディストピアに生きる男女が不器用に想いを交わしていくハッピーエンドとは言い難い切ない物語に合っていました。

Kid Koala というと、アクロバティックなスクラッチを多用するターンテーブリズムのDJとして知られるわけですが、 この作品では、むしろ ukelele 様の楽器や percussion などの生音のテクスチャや keyboards で弾く旋律を生かした electronica 的なもので、The Afiara Quartet による繊細な strings と共に、繊細な音楽を映像に合わせていました。 モノクロのノスタルジックな画面、台詞無しで繊細な動きで描かれる切ないながら心優しくロマンチックな物語もあって、 まるで20世紀初頭の人情味溢れるコメディやメロドラマのサイレント映画を生伴奏で見ているようでした。

このような映像とパフォーマンスを組み合わせたマルチディシプリナリーな舞台作品といえば、今まで観たものとしては、 Tim Watts の The Adventures of Alvin Sputnik: Deep Sea Explorer [鑑賞メモ] や It's Dark Outside [鑑賞メモ]、 Stereoptik: Dark Circus [鑑賞メモ]、 1927: The Animals and Children took to the Streets [鑑賞メモ] などがあります。 それらと比べると、Nufonia Must Fall はセットの数や操作する人数を増やして映像側の完成度を上げてきた作品でした。 (映像側の完成度と舞台作品としての面白さはまた別の話で、それぞれ異なる面白さのある舞台作品だったと思っています。)

この Nufonia Must Fall は2014年から2015年にかけて Adelaide FestivalBAM Next Wave など世界各地の舞台芸術のフェスティバルで上演され、 好評を得ていました。 しかし、自分が観に行った回は客席の半分も埋まらない状態。 今回の日本公演は Kid Koala のライヴという扱いで、 クラブやライブハウスに撒くようんなフライヤが作られ、その方面にプロモーションされていたようです。 その一方で演劇やダンスの公演でこのフライヤを見ることはありませんでした。 しかし、BAM Next Wave に取り上げられるようなコンテンポラリーな舞台芸術に関心の持っている観客にアピールしそうなフライヤを作って、 その文脈でフライヤを撒いた方が集客できたのではないか、と。 そして、Tim Watts、Stereotpik や 1927 が手がけるような舞台作品が好きな人に勧めたい公演でした。 良い公演だっただけに、残念な限りです。

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振り返ってみれば、土曜は、図らずしも人形劇2本のハシゴだったのでした。 人形劇といっても、その演出や方法論は大きく異なるものでしたが。 特に人形劇を好んで観ているわけではないのですが、重なる時は重なるものです。

[3814] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 19 21:45:32 2020

この週末土曜は一日雪交じりの雨。そんな中、昼過ぎに本郷というか水道橋と御茶ノ水の間の北側あたりへ。このパフォーマンスを観てきました。

トーキョーアーツアンドスペース本郷
演出: 目黒 陽介; 音楽: イーガル; 美術・出演: 長井 望美.

トーキョーアーツアンドスペースの公募プログラム 『OPEN SITE 2019-2020』 の一企画と行われた、 ジャグラーとしてだけでなく演出家としてもカンパニー ながめくらしつ を主宰して活動する 目黒 と 人形遣い・美術作家として活動する 長井 のコラボレーションしての作品です。 長井 の人形遣いについては予備知識はほとんど無かったのですが、 目黒 がどのように人形遣いを動かすのかという興味もあって観てきました。

会場はギャラリー空間で、はっきり舞台は設けず、作品展示かのように 長井 作のオブジェが展示されていました。 そんなギャラリーの隅でのエレクトリックピアノの生演奏に合わせて、人形遣いのパフォーマンスがギャラリー内を移動しながら行われました。 客の誘導してパフォーマンスエリアを確保するために移動の際にビーンバックで範囲を示したり、 手持ちの小型ライトで証明したりする程度で、目黒 はパフォーマンスに大きくは絡みませんでした。 ジャグリング的なトリッキーな人形のマニピュレーションなどがあるかと予想していたのですが、 ジャグリングに発想した動きは感じられませんでした。

セリフの類なく、長井 は人形を操るだけでなく、最初の場面では輪となるよう立てられ複雑に糸が絡められた12本のポールの中で人形を使わず蠢いたり、 パペットダンスを踊るわけでないけれども人形を手足を使って操るため手足を上げて仰向けの状態になるような姿勢になるときもあり、 現代的なパペット/フィジカル・シアターとでもいうパフォーマンスでした。 人形の造形もあって去年観た Duda Paiva Company, BLIND [鑑賞メモ] も思いだしましたが、 そこまで主題に沿ったグロテスクさを感じたわけではなく、 幼児を思わせる造形の人形やその動きに不穏さ、不気味さを忍ばせた、可愛らしい悪夢のような作品でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

この後の話はまた後ほど。

[3813] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Fri Jan 17 1:44:18 2020

先週末の日曜は午後に乃木坂へ。この展覧会を観てきました。

国立新美術館 企画展示室2E
2020/01/11-2019/02/16 (火休;2/11開,2/12休). 10:00-18:00 (金土10:00-20:00).
石内 都, 畠山 直哉, 米田 知子, 栗林 慧 / 栗林 隆, 日高 理恵子, 宮永 愛子, 藤岡 亜弥, 森 淳一, 若林 奮, 佐藤 雅晴.

アニュアルで開催されている文化庁芸術家在外研修の成果報告展です。 定点観測で毎年観ていますので、今年も観てきました [去年の鑑賞メモ]。 今年は日本博スペシャル展というわけか、新進芸術家というより既に公立美術館でのそれなりの規模の個展を開催してる作家を揃えてました。 テーマを持って構成されていましたが、強く方向付けられたという程の展覧会ではありませんでした。 今回参加された中では、日高 理恵子、宮永 愛子、そして、畠山 直哉が良かった。

日高 理恵子 は1980年代から樹木の重なる枝葉をほとんど白黒に見えるほどの低い彩度で麻紙に岩絵具で描いてきた作家です。 近年の作品のタイトルが「空との距離」とあるように、枝葉を使って距離感というか奥行き感を表現するよう。 焦点深度浅く撮られたかのように奥に行くにつれてボケて奥行き感を強調したり、 長時間露光で撮られたかのように奥行き感の無いのっぺりとした描き方をしたりと、 奥行感を操作するかのように描かれた抽象画のように感じられました。

宮永 愛子 といえば 揮発するナフタリンを素材に日用品を象った立体作品 [鑑賞メモ] ですが、 今回出展されていたのは東日本大震災以降に制作を始めたという、 金木犀の脱色した葉脈を12万枚繋ぎ合わせて作った紙もしくは不織布のようなものを使ったインスタレーションでした。 淡いベージュのような色彩も繊細なレースようであり、 その一方で幅約3.8 m、長さ約30 mというスケールの大きさも同居した美しさでした。 久しぶりに観ましたが、ナフタリンだけでは無いのだなあ、と。

畠山 直哉 は新作シリーズ、untitled (tsunami trees) が展示されていました。 近年は東日本大震災で激甚な津波被害を被った故郷 陸前高田の様子を捉えた 彼にしてはドキュメンタリー色濃写真を撮っていましたが [鑑賞メモ]、 それ以前の画面の幾何的構造の面白さを生かした写真 [鑑賞メモ] が戻ってきました。 被写体となっているのは、津波の被害で立ち枯れたり、息を吹き返した立木ですが、 1990年代半の Blast シリーズで 採石場で発破で飛び散る岩で不定形に歪んだ球形を描いていたのと同じように捉えられています。

特に良かったのは、巨大堤防、自動車道の高架橋や整えられた盛土などが一緒に写し込まれた写真。 立木の描く不定型な形状と人工的な構造物の直線的な形状とのコントラストが、 彼の写真らしい、静かな緊張感を作り出していました。 やはり、こういう 畠山 直哉 の写真は大好きです。

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同美術館で開催中の展覧会 『日本・ハンガリー外交関係開設150周年記念 ブダペスト国立西洋美術館 & ハンガリー・ナショナル・ギャラリー所蔵 ブダペスト――ヨーロッパとハンガリーの美術400年』 も観ました。 近世16世紀から近代19世紀まで。 彫刻が少しありましたが、ほぼ絵画で、自分にとってはあまりにアウェーな展覧会でした。 展覧会後半、Biedermeier 期以降になって、ちょっとほっとしました。

[3812] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Jan 15 23:30:57 2020

先週末の土曜、初台でバレエを観た後は、隣接する美術館へ移動して、この展覧会を観てきました。

Kazuo Shiraga: a retrospective
東京オペラシティアートギャラリー
2020/01/11-2020/03/22 (月休), 11:00-19:00 (金土11:00-20:00).

戦後1950年代に具体芸術協会の中心メンバーとして活動し、2000年前後まで活動を続けた、白髪 一雄 の回顧展です。 美術館の近現代美術のコレクション展示で観る機会も多い作家ですし、 『「具体」 —— ニッポン前衛 18年の軌跡』 (国立新美術館, 2012) [鑑賞メモ] のような展覧会もありましたが、 白髪 単独で焦点を当てた回顧展を観るのは初めてです。

具体以前の1950年前後の作品も展示されていましたし、 少ないものの『赤い液』 (牛レバーを水に漬けた作品。展示は石膏による再制作) のような立体作品の展示もありましたが、 やはり作品として見ごたえあるのは具体以降。 大きなキャンバスを床に平置きし、大量の油絵の具をぶちまけて、足で直接描く「フット・ペインティング」です。 同時代のアクション・ペインティングの影響も感じられる作風ではありますが、 赤や黒を基調とした色の太く粗く盛りあがった絵の具のマチエールから受ける力は強いものがあります。

スキージを使うなどのマイナーな変化はあるものの同じ作風の作品が続くと、 常設展などで他の作家の作品に混じって展示されているときに受けるようなインパクトはありません。 作風の変遷よりも、タイ トルの変遷の方に興味を引かれました。 コレクション展示などで観てきて無題か色に基づくタイトルが付いている印象を受けていたのですが、 1959-1964年には「水滸伝豪傑シリーズ」と名付けられた水滸伝から採られてタイトルの作品があり、 他にも軍記物 (もしくはそれに基づく歴史物の歌舞伎) から採られているのではないかと思われる 「平治元年十二月二十六日」 (平治の乱の六波羅合戦の日) というタイトルの作品もあり、 1971年に比叡山延暦寺で得度してからはタイトルに密教の用語が用いられるようにもなります。 そんな一連のタイトルに、荒々しい印象を受ける画面のイメージの源泉を垣間見るようでした。

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もちろん、同ビル内のNTTインターコミュニケーション・セーターで 企画展 『開かれた可能性——ノンリニアな未来の想像と創造』 なども観ましたが、 ピンとくるものはありませにでした。ま、こういう時もあるということで。

[3811] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 13 18:49:59 2020

この土曜は午後に初台へ。今年の舞台鑑賞初めをしてきました。

The National Ballet of Japan: New Year Ballet (2019/2020 Season)
新国立劇場オペラパレス
2020/01/11, 14:00-16:00.
指揮: Martin Yates; 管弦楽: 東京交響楽団.
Choreography: George Balanchine.
Music: Peter Ilyitch Tschaikovsky, Serenade for Strings in C, Op. 48.
Premiere: 1935.
Staging: Patricia Neary.
出演: 寺田 亜沙子, 柴山 紗帆, 細田 千晶, 井澤 駿, 中家 正博, 他.
Raymonda, Pas de deux.
Choreography: Marius Petipa.
Music: Alexander Glazunov.
改訂振付・演出: 牧 阿佐美.
出演: 小野 絢子, 福岡 雄大.
Le Corsaire, Pas de deux.
Choreography: Marius Petipa.
Music by Riccardo Drigo.
出演: 木村 優里, 速水 渉悟.
DGV: Danse à Grande Vitesse
Choreography: Christopher Wheeldon.
Music: Michael Nyman, MGV: Musique à Grande Vitesse (1993).
Set & Costume Designer: Jean-Marc Puissant. Lighting Designer: Jennifer Tipton.
Premiere: 17 November 2006, The Royal Ballet, Royal Opera House, Covent Garden.
Guest Repetiteur: Jason Fowler.
出演: 1st Region soloists: 本島 美和, 中家 正博; 2st Region soloists: 小野 絢子, 木下 嘉人; 3rd Region soloists: 米沢 唯, 渡邊 峻郁; 4th Region soloists: 寺田 亜沙子, 福岡 雄大; 他.

新国立劇場バレエ団の恒例の正月公演です。といっても、観たのは今回が初めてです。 Royal Opera House in Cinema の2018/2019シーズンのンテンポラリー・バレエのトリプルビル [鑑賞メモ] で Wheeldon の抽象バレエの良さに気付かされたところだったので、演目は違うとはいえ生で観る良い機会と足を運んでみました。

というわけで、目当ては休憩を挟んで後半に上演された Wheeldon の抽象バレエ Danse à Grande Vitesse 『超高速ダンス』。 フランスの超高速鉄道 TGV (Train à grande vitesse) の北線パリ=リール間開業の際に委嘱された Michael Nyman の1993年の曲に振り付けた約30分の作品で、 2006年に Royal Ballet が初演しています。 5つの Region (区間) からなる曲で、4 Region ぞれぞれにソロを取る男女の組がいて、最後の Region では4組が共に踊ります。 ソロの背景でのコールも群舞というよりいくつかの男女の組が踊るという展開が多く、 Within the Golden Hour 同様、 多様な形の pas de deux をライティングも駆使して時間的空間的に編集していくようなバレエが楽しめました。 前半で Balanchin の抽象バレエ Serenade を観ていたので、 その幾何的に整ったフォーメーションで音楽を可視化していくような振付との違いも良いコントラストになって、興味深く観ることができました。

音楽はもちろん、舞台美術、衣装も、ハイテクな超高速鉄道のイメージに合っていました。 舞台美術もメタリックながら透けて見えるパンチングメタルのひしゃげた衝立が後ろに並んでいるだけ。 ひしゃげ方が超高速鉄道の事故を連想させはしまいかと要らぬことを思ってしまいましたが、 衣装もメタリックなレオタードで、舞台美術と合わせていました。 Michael Nyman の post-classical な音楽も、高速鉄道をテーマにしてるだけあってか 反復が強調されてオーケストラやブラスをサンプリングした minimal techno に近い感触。 Region 5 では派手に打楽器も入り、映画音楽よりもダンサブル。 生オーケストラの迫力もあり、楽しめました。

さて、前半、公演のオープニングは Balanchin の抽象バレエ Serenade。 ダンサー全体のレベルが高く揃っているので、幾何的に整ったフォーメーションの群舞で見せていく展開も、繊細で美しいです。 そして、クラシック・バレエの Pas de deux でプリンシパルのダンサーの顔見せ。 正月らしく華やかめにモダン、クラッシック、そしてコンテンポラリーとバランス良く配したブログラムで、 期待以上に楽しめた公演でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

実は、観たい展覧会が東京オペラシティアートギャラリーで始まったし、 チケットが残っているようだし、初台行くついでという気分で観たのですが、期待以上に楽しめました。 こんな感じあれば、毎年の恒例にしてしまってもいいかもしれない、と思ってしまったり。

[3810] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 6 22:30:18 2020

先の土曜は午後に清澄白河というか木場公園へ。この展覧会を観てきました。

Dumb Type: Actions+Reflections
東京都現代美術館 企画展示室 企画展示室 1F
2019/11/16-2020/02/16 (月休;12/28-1/1休;1/13開;1/14休), 10:00-18:00.

1984年に京都で結成されたパフォーマンスを含むメディアアートのグループ Dumb Type の Centre Pompidou-Metz での2018年の個展をベースとした回顧展です。 といっても、大規模なものではなく、企画展示室ワンフロアだけ、 インスタレーションは4点だけの展示は、こじんまりしたものを感じました。

自分が Dumb Type を初めて観たのは 古橋 悌二 の没後の1990年代後半、 熱心な観客というわけではありませんが、高谷 史郎 の舞台作品や 池田 亮司 の音楽/美術作品をそれなりに観てきていることもあってか、 ヴァリエーションも含めそれなりに見覚えがありました。 デジタルデータ処理の時代の美学を可視化したような格好良さはあるのですが、 パフォーマンスを観ていてもスタイリッシュながら空虚さを感じることが多いのも確か。 この展覧会でも虚ろな無人のパフォーマンスを観ているように感じるときがありました。

MOT Annual 2019: Echo after Echo - Summoned Voices, New Shadows
東京都現代美術館 企画展示室 地下2F.
2019/11/16-2020/02/16 (月休;12/28-1/1休;1/13開;1/14休), 10:00-18:00.
THE COPY TRAVELERS, PUGMENT, 三宅 砂織, 吉増剛造プロジェクト|KOMAKUS + 鈴木余位, 鈴木 ヒラク.

東京都現代美術館がアニュアルで開催しているグループ展です。 今年のテーマはコピー、サンプリング、書写といった技術を用いた作品ということのようですが、 造形に着目しているというより、プロジェクトをインスタレーション化したものが中心。 そんな中では、かえって、伝統的な平面作品に落とし込んだ 鈴木ヒラク の作風が印象に残ってしまいました。

コレクション展示室では 『MOTコレクション 第3期 いまーかつて 複数のパースペクティブ』。 モダニズム終演後の20世紀末以降のコンセプチャルな作品と、20世紀半ばの現代絵画作品とを 半々で対比させるかのような構成でした。

企画展示室 3Fでは 皆川 明/minä perhonen 『つづく』。 服飾デザイナー 皆川 明 とそのブランド minä perhonen の展覧会です。 さすがにブランドは知っていましたが、今まで自分とはほとんど接点がありませんでした。 美術館に着いて、ホワイエのチケット売場や、カフェ、レストランが大変な混雑を見て、 さすがに Dumb Type の人気は凄いなと思ったのですが、 実際はほとんどの客はこちらの展覧会を目当てにしていたのでした。 自分と接点があまり無い女性服であることに加え、人混みに圧倒さえれて、展示が入り込むことができませんでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

その後は、十数年来の友人たち (ホストは四半世紀来でしょうか) との新年会。 恒例のメンツではありますが、楽しいものです。 80年代のミュージックビデオがBGMだったこともあり、 その勢いで日曜は80年代のメインストリーム寄りの Rock / New Wave ばかり聴いていたりしました。

[3809] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 5 22:24:37 2020

正月3日は美術館へ初詣。毎年恒例、午後に東京都写真美術館へ詣でてきました。

Eiko Yamazawa: What I Am Doing
東京都写真美術館 3階展示室
2019/11/12-2020/01/26 (月休;月祝開,翌平休;12/29-1/1休) 10:00-18:00 (木金 -20:00;1/2,3 10:00-18:00)

1899年に生まれ、1920年代のアメリカ留学中に写真を学び、1980年代まで大阪を拠点に活動した 写真家 山沢 栄子 の回顧展です。 大阪に写真スタジオを持ち肖像写真で生計を立てていましたが、 いわゆる写真の文脈で制作・発表をあまりしていなかったとのことで、 自分がこの写真家のことを知ったのも、この展覧会で。 新興写真、ニューフォトグラフィーから抽象写真に至る時代の流れとは必ずしもシンクロしておらず、 日本写真史の流れの中に位置づけづらそうですが、 個人的な歩みの中で同じ道を辿るのを見るような展覧会でした。

晩年に過去の仕事のほとんどを自身で廃棄してしまったとのことで、 オリジナルプリントで現存するのはスタジオを畳んだ後の1970-80年代 (つまり70-80歳代) に制作した 『私の現代』 (What I Am Doing) シリーズのみ。 様々なオブジェを組み合わせて作った抽象的な造形を撮った抽象写真のシリーズです。 1950年代に 大辻 清司 が実験工房のオブジェを撮った写真を思わせるものですが、 1980年代にそれを受け継ぐような作風の写真を撮り続けた作家がいたのかと、感慨深いものがありました。 その前の『遠近』シリーズ (1955-61) となると、初期の街中で撮影されたストレートフォトグラフィに連なるような作風から、 次第に抽象度が上がっていき、『私の現代』となるのか、と。

彼女がアメリカ留学時にサンフランシスコで師事したのは Consuelo Kanaga。 後の1930年代にベイエリアで活動したモダニズムの写真家のグループ Group f/64 (Ansel Adams, Edward Weston 等がメンバー) の近傍にいた写真家で、 Group f/26 の展覧会に出展したこともあったとのこと。 そんな系譜に連なる写真家が1980年代まで細々ながら日本で活動していたのか、と、感慨深いものがありました。

Close-up Universe: Contemporary Japanese Photography vol. 16
東京都写真美術館 2階展示室
2019/11/30-2020/01/26 (月休;月祝開,翌平休;12/29-1/1休) 10:00-18:00 (木金 -20:00;1/2,3 10:00-18:00)
相川 勝, 井上 佐由紀, 齋藤 陽道, 濱田 祐史, 藤安 淳, 八木 良太.

新進作家に焦点を当てるアニュアルのグループ展です。 双子を組みで撮影、展示することで差異を浮かび上がらせる 藤安 淳 「empathize」シリーズや、 赤子の開いたばかりの目を捉えた 井上 佐由紀 「私は初めてみた光を覚えていない」シリーズなど、 などコンセプトと形式のバランスが良いと思いました。 しかし、好みとは、アルミ箔を山に見えるよう空を背景にクロースアップで撮影した 濱田 祐史 「Primal Mountain」や 相川 勝 のゲームの画面やAIで合成した肖像をプリントした、架空のイメージを意識した作品でしょうか。 ただ、後者の作風となると、インターネットに流布する「ディープフェイク」な画像や動画の世界に 追い越されかけているかも、とも思ってしまいました。

地階展示室では 中野正貴写真展 『東京』。 東京の街中の風景を早朝の人や車のほとんどいない時間帯を使い長時間露光も使い無人で 走る自動車も無い状態で撮った『TOKYO NOBODY』が印象に残っている作家で、 やはり、そのシリーズの写真が多く展示されていました。 しかし、壁いっぱい、縦方向も三段くらいという詰め込み過ぎの展示で、 無人の街中の風景の余白というか余韻のようなものを感じる余地もありませんでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

写美の正月イベントでは雅楽のコンサートも恒例なのですが、 今年は4、5日開催ということで、2、3日にはやっていませんでした。 これを目当てに行っているわけじゃないのでスケージュールを確認していなかったのですが、 いつもやっているのが無いと少々寂しく感じるものです。

[3808] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Fri Jan 3 1:11:49 2020

2019年に歴史の塵捨場 (Dustbin Of History)に 鑑賞メモを残した展覧会やダンス演劇等の公演の中から選んだ10選+α。 おおよそ印象に残っている順に並べていますが、順位には深い意味はありません。 音楽関連 (レコード/ライブ) は別に選んでいます: Records Top Ten 2019

第一位
Nederlands Dans Theater (ダンス)
神奈川県民ホール, 2019/07/06
[鑑賞メモ]
第二位
Cie l'Oublié(e) / Raphaëlle Boitel: La Chute des Anges (サーカス)
世田谷パブリックシアター, 2019/10/20.
[鑑賞メモ]
第三位
Театр «Красный факел» / Тимофей Кулябин (режиссер): Три сестры [“Red Torch” Theatre / Timofey Kulyabin (director): The Three Sisters] (演劇)
東京芸術劇場 プレイハウス, 2019/10/19.
[鑑賞メモ]
第四位
Salva Sanchis, Anne Teresa De Keersmaeker / Rosas: A Love Supreme + Anne Teresa De Keersmaeker, Jean-Guihen Queyras / Rosas: Mitten wir im Leben sind / Bach6Cellosuiten (ダンス)
東京芸術劇場 プレイハウス, 2019/05/18
[鑑賞メモ, 鑑賞メモ]
第五位
Israel Galván + Niño de Elche (フラメンコ)
Tablao Flamenco Garlochí, 2019/09/07.
[鑑賞メモ]
第六位
Jörg Müller / Noémi Boutin: Sarabande + La Cie. Quotidienne: Vol d'usage (サーカス)
座・高円寺1, 2019/07/20+27
[鑑賞メモ, 鑑賞メモ]
第七位
目 『非常にはっきりとわからない』 (美術展)
千葉市美術館, 2019/11/02-12/28
[鑑賞メモ]
第八位
1927: The Animals and Children took to the Streets (アニメーション/パフォーマンス)
東京芸術劇場 プレイハウス, 2019/05/05.
[鑑賞メモ]
第九位
『シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート』 (美術展)
ポーラ美術館, 2019/08/10-2019/12/1.
[鑑賞メモ]
第十位
Yoann Bourgeois: Scala (サーカス)
静岡芸術劇場, 2019/04/27.
[鑑賞メモ]
次点
Θεόδωρος Τερζόπουλος (Σκην.): ΤρωάδεςM [Theodoros Terzopoulos (dir.): The Trojan Women] (演劇)
利賀芸術公園 野外劇場, 2019/08/25.
[鑑賞メモ]
番外特選1
Metropilitan Opera, John Dexter (prod.), Francis Poulenc (comp.): Dialogues des Carmélites @ Metropolitan Opera House (オペラ / event cinema)
Met Live in HD, 2018/19.
[観賞メモ]
番外特選2
Royal Ballet: Within the Golden Hour / Medusa / Flight Pattern @ Royal Opera House (バレエ / event cinema)
Royal Opera House in Cinema, 2018/19.
[観賞メモ]

[リストのパーマリンク]

[3807] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Fri Jan 3 1:10:23 2020

2019年に入手した最近数年の新録リリースの中から選んだ10枚+α。 展覧会・ダンス演劇等の公演の10選もあります: 2019年公演・展覧会等 Top 10

#1
Joost Lijbaart, Sanne Rambags, Bram Stadhouders
Trinity
(Challenge, CR73471, CD, 2019)
#2
Ex:Re
Ex:Re
(4AD, 4AD0132CD, CD, 2019)
#3
Blick Bassy
1958
(No Format, NOF.44, CD, 2019)
#4
Gwenno
Le Kov
(Heavenly Recordings, HVNLP145CD, CD, 2018)
#5
Joachim Badenhorst & Mógil
Adventa
(Winter & Winter, 910 260-2, CD, 2019)
#6
Lumen Drones
Umbra
(Hubro, HUBROCD2607, CD, 2019)
#7
Alim Qasimov & Michel Godard feat. Salman Gambarov & Rauf Islamov
Awakening
2019
(dreyer gaido / Full Rhizome / Buda Musique, 860347, 2018)
#8
Matt Mitchell
Phalanx Ambassadors
(Pi Recordings, PI81, CD, 2019)
#9
Frode Haltli
Border Woods
(Hubro, HUBROCD2613, CD, 2019)
#10
Areni Agbabian
Bloom
(ECM, ECM2549, CD, 2019)
次点
Kronos Quartet / Mahsa & Marjan Vahdat
Placeless
(Kirkelig Kulturverksed, FXCD457, CD, CD2019)
番外特選
Jan Bang, Erik Honoré, Eivind Aarset, Nils Petter Molvær
東京芸術劇場 ギャラリー1
2019/09/28, 17:40-18:25.
[鑑賞メモ]

[リストのパーマリンク]

[3806] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Fri Jan 3 1:08:31 2020

あけましておめでとうございます。

去年一年を振り返って 2019年の レコード Top 10展覧会・公演等 Top 10 を選びました。 もはや動向や流行に疎いどころか、音楽ライブや現代アートの展覧会などへあまり足を運ばなくなってしまい、 そもそも10件も選びたいものがないのではないかと思っていたのですが、 このサイトやTwitterを振り返ってみると、 10件に絞るのに悩むくらいで、それなりに2019年も趣味生活を楽しめていたのだなあ、と思い直したりしました。 そう思えただけでも、選んだ甲斐がありました。

このサイトへの展覧会・公演等の観賞メモが遅れがちなだけでなく、 Twitterへのツイートも途切れがちで、 モチベーションの衰えは否めません。 しかし、無理の無い範囲で趣味生活とこのサイトの更新は続けたいと思っています。

読んでくださっている皆さん、ありがとうございます。 タイムリーな更新もまともにできていないサイトではありますが、今年もお付き合いいただければと思います。

[3805] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 29 23:57:30 2019

27日金曜で仕事納め。ということで、翌土曜が年内最終開館日という美術館が多かったので、美術鑑賞納めをしてきました。

府中市美術館
2019/12/14-2019/03/ (月休;12/29-1/3休,1/13開,1/14休,2/12休,2/24開,2/25休), 10:00-17:00.

鉄を素材とする彫刻というより立体作品を得意とする1980年代から活動する美術作家の個展です。 越後妻有トリエンナーレなどの国際美術展でサイトスペシフィックなインスタレーションとも言える作品を観たことはあれど、 美術館での個展は観たことが無かったので、良い機会かと足を運んでみました。

府中市美術館の展示室に合わせて制作された新作がメインですが、最初期の1981年の作品など過去の作品も交えています。 鉄を素材に使い、作品の大きさも、初期のものでも1〜2mはあり、最近のものでは5mから高いものでは10mはあろう規模になっていますが、 実際の重さはさておき、見た目がマッシヴに感じられないのは、見通しが利く透けた構造だからでしょうか。 新作『霧と鉄と山と』にしても、近くで見るとゴツいテクスチャがあるとはいえ、個々のパーツが円形で、柔らかい滑らかな山形という形態というのも、重さを感じさせません。 卵を使った1990年代の作品や、カラフルな石鹸を使った新作、大きな作品の中での波板使いなど、 ソフトなものとのコントラストをわかりやすく示したものもありますが、 重厚な素材だけで描く軽さが面白く感じました。

府中市美術館の展示室は、古美術品や日本画などの展示を意識したか、壁がガラスの展示ケースとなっています。 最初に展示をざっと通して観た時は、そんなガラスの展示ケースが、現代美術のインスタレーションをする空間に合わないように感じました。 しかし、通して観た後に、改めてゆっくり作品を観ていて、照明が付いて白っぽい展示ケースに映った鉄の造形が、 まるで濃い霧の中にぼんやり浮かび上がる山のよう。 深読みしすぎかもしれませんが、一見空のようですがIの方の展示室の展示ケースには波板が等間隔で下げられていましたし、ガラスに映った姿が「霧」だったのか、と。 そんな見え方も面白く感じられたインスタレーションでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

一時期は鑑賞メモを書くのも1ヶ月後となっていた時期もありましたが、 なんとか積み残すことなく、年末を迎えることができました。 年内の更新はこれが最後です。それでは、良いお年をお迎え下さい。

[3804] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 22 20:59:13 2019

先週末土曜14日は日帰りで新潟へ。この公演を観てきました。

りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場, 2019/12/14, 17:00-18:30.

無事2022年8月までの活動延長となった新潟市のダンスカンパニー Noism [鑑賞メモ] の2019/2020シーズンの初公演です。 Noism はプロフェッショナル選抜メンバーによる Noism0、 プロフェッショナルカンパニーNoism1、研修生カンパニーNoism2の3つの集団からなり、 その前者2つのメンバーによる公演となります。 芸術監督である 金森 自身の新作と、 2018/2019シーズンまでドイツ Theater Rengensburgダンス部門の芸術監督・振付家を務めた 森 優貴 [鑑賞メモ] の新作からなるダブルビルです。 今まで本拠地のりゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館で観たことが無かったので、これも良い機会かと、本拠地で観てきました。

『シネマトダンス––3つの小品』
演出振付: 金森 穣.
衣装: 堂本 教子; 映像: 金森 譲, 遠藤 龍.
新作
1. 『クロノスカイロス1』
音楽: J. S. Bach: Harpsichord Concert No. 1 in D minor, BWV 1052 - I. Allegro
出演: 池ヶ谷 奏, Geoffroy Poplawski, 井本 星那, 林田 海里, Charlie Leung, Kai Tomioka, Stephen Quildan, 鳥羽 絢美, 西澤 真耶, 三好 彩音.
2. 『夏の名残のバラ』
音楽: F. V. Flotow: Martha - “Last Rose of Summer”
出演: 井関 佐和子, 山田 勇気.
3. 『Fratres II』
音楽: Arvo Pärt: Fratres for violin and piano
出演: 金森 穣.

前半は 金森 の新作ですが、 『クロノスカイロス1』は集団で時空を描いていくような作品、 『夏の名残のバラ』は 山田 の手持ちカメラも活用して 井関 の成熟した美にクロースアップするような作品、 『Fratres II』は15周年記念公演で上演した『Fratres I』の 金森 ソロ・ヴァージョンとでもいうもの、 と、作風やコンセプトの異なる独立した3作品を続けて上演するというものでした。 題名に「シネマ」があったので、劇映画的なナラティヴさがテーマかと予想していたのですが、 むしろ3作品に通底する共通点は、ダンス公演でよく用いられるライヴビデオプロジェクションの虚実、というか、 ライヴの映像か録画済みの映像に合わせて踊っているのか意図的に観客を混乱させるような映像使いがあったように感じられました。

楽屋からステージへドキュメンタリーかのように 山田 は 井関 をカメラで追い、 最後には、カメラを持ちながらも組み踊るわけですが、最後にカメラを客席に向けても、客席には誰もいないという『夏の名残のバラ』。 ソロで踊る 金森 のシルエットを背景に投影しているようで、シルエットと動きは完全に一致はしない『Fratres II』。 しかし、ダンサーたちが走り踊る様子を同時に背景に投影しているようで、次第にその軌跡が異なるものになる『クロノスカイロス1』の方じ、 単に差異で惑わすというより、それで時間や空間を広げていくように感じらました。 ダンサーのコスチュームもピンクで、照明も抽象的ながら色彩にあふれていました。

『Farben』
演出振付: 森 優貴.
衣裳: 堂本 教子.
出演: 井関 佐和子, 池ヶ谷 奏, Geoffroy Poplawski, 井本 星那, 林田 海里, Charlie Leung, Kai Tomioka, Stephen Quildan, Tyrone Robinson, 鳥羽 絢美, 西澤 真耶, 三好 彩音.
新作

休憩を挟んで後半は 森 の新作。 2年前に観た振付作品が Macbeth [鑑賞メモ] だった頃もあり、 ナラティヴな作風と思いきや、自分が捕らえられた限りでは、娘と両親の物語がうっすら浮かび上がる程度。 「色彩」という意味のタイトルながら、衣装、美術に照明も彩度を抑えた演出でした。 正直に言えば演出意図を捉えそこねた感もあったのですが、 床に並べたテーブルを動かしつつ、天井から逆さ吊りにしたテーブルも上下させ、テーブルの上にダンサーを上げたりと、 幅方向だけでなく、奥行きも高さ方向も感じさせる、立体的な舞台使いはかなり好みでした。

ダブルビルを通して観て、2人の振付家の違いは捕らえ損ねた感はあったのですが、 『クロノスカイロス1』や『Farben』のような、群舞というか、 10名前後のダンサーを使って空間的な配置やリフトも含めた人の組み合わせでの表現も楽しめる作品が良いと実感しました。 日本のコンテンポラリーダンスは個の身体性にフォーカスしがちで空間使いはいまいちに感じることが多いのですが、 Noism は劇場専属カンパニーだけあって、時間空間的な表現としてのダンスに強みを感じた、そんな公演でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

新潟へ行くならついでに観光、とも考えたのですが、気象情報では新潟は雨。 ということで、ゆっくり新潟入りして新潟駅からはタクシーで劇場へ。 早めに行ってカフェでのんびり時間調整すればいいかと考えてたら、カフェはクローズドでした。 で、帰りも雨でタクシーで駅へ直行。 駅直結のビル内にある地酒の居酒屋で一杯やろうとしたら、満席で入れず。 本降りの雨の中、駅周辺の店を探し歩く気にもなれず、駅弁買って、さっさと帰り新幹線で帰りました。 開演前もカフェに嫌われ、終演後も居酒屋に嫌われ、駅と劇場の間の移動もタクシーで街中を見ず、 新潟へは純粋にNoismを観に行っただけになってしまいました。 遠征して、観たものは悪くなくても、美味しいものにありつけなかったりすると、なんだか残念な感じになってしまうものです。しくしく。

今週末土曜は午後から晩まで、大学時代からの友人宅でホームパーティのようなクリスマスパーティのような何か、だったのでした。 例年のことなのですが、こうして続けて楽しめるというのも、ありがたいものです。

[3803] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu Dec 19 23:06:48 2019

先週金曜13日は仕事帰りに半蔵門というか三宅坂へ。この歌舞伎を観てきました。

国立劇場
原作: Charles Chaplin: City Lights (1931)
脚色: 木村 錦花 (1931).
補綴: 国立劇場文芸研究会; 脚本考証: 大野 裕之; 演出: 大和田 文雄.
松本 幸四郎 (蝙蝠の安さん), 坂東 新悟 (花売り娘お花), 市川 猿弥 (上総屋新兵衛), 大谷 廣太郎 (井筒屋又三郎), 澤村 宗之助 (海松杭の松さん), 上村 吉弥 (お花の母おさき), 大谷 友右衛門 (大家勘兵衛), ほか.

サイレント時代の Charles Chaplin の映画 City Lights 『街の灯』を、 1934年日本公開の前、アメリカでの映画公開と同年1931年に翻案した歌舞伎の再演です。 Charles Chaplin 生誕130年の企画の一つとして、 国立劇場の令和元年12月歌舞伎公演の二本立ての一つとして上演されましたが、 金曜とクリスマスの夜に “Chaplin Kabuki Night” として単独の公演も行われたので、夜の単独公演を観ました。

主人公のキャラクターを『与話情浮名横櫛』の登場人物 蝙蝠の安五郎 に置き換え、江戸下町の長屋を舞台として 世話物風 (1931年に作られた歌舞伎なので、世話物とも言い難い) に翻案されています。 台本は残っていますが、単独で公演する程ではないものの二本立てにするには長いということもあり、冗長な箇所を削り展開をテンポ良くしているとのこと。 1931年当時の再現上演ではありませんが、スーパー歌舞伎やコクーン歌舞伎のような現代的演出でもありません。 セリや廻し舞台など舞台機構を駆使し、宙釣り (ワイヤーアクション) もありましたが、世話物人情喜劇風にオーソドックスと感じる演出でした。

普通に違和感なく江戸長屋での人情喜劇になっていて、にも関わらず、随所で City Lights のあの場面だと思う所があり、 ストーリーは十分にわかっていても、最後は涙してしまいました。 それも、物語的な面だけでなく、スラップスティック喜劇的な面も翻案していたのは、さすが。 City Lights ではなく The Gold Rush が元ネタと思われるもの (パンのダンスを、お座敷の場面での鯛に箸を指してのダンスにしていた) もありましたが、 これは元の台本にはない演出ではないでしょうか。 舞台転換の間、竹本の義太夫による説明、描写に合わせ、仕草で物語を進めていく演出など、 弁士付きの無声映画と歌舞伎の連続性を感じました。 また、オリジナルの映画音楽のメロディを邦楽器で演奏して使ってましたが、 箏や三味線の音色で、間合いのある切れ切れの音で聴くと、違う曲のよう。

サイレント期の小津 安二郎の喜八ものの映画、例えば King Vidor: The Champ (1931) の翻案と言われる『出来ごころ』 (1933) [鑑賞メモ] や Josef von Sternberg: The Docks of New York (1928) の飜案とされる 水谷 八重子 主演、島津 保次郎 監督の初期トーキー映画 『上陸第一歩』 (1932) [鑑賞メモ] などを ふと思い出させられ、 これらと『蝙蝠の安さん』と同時代の試みだったんだな、と思いつつ、 当時のアメリカ映画の日本での受容と変容を見るようでもありました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3802] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu Dec 19 0:00:47 2019

12月7日土曜の夕方は初台から渋谷へ移動。 渋谷ユーロスペースでの特集上映 『バウハウス100年映画祭』のプログラムで、 戦間期モダニズムの中心地の一つ、 ドイツ・ワイマール共和国時代の芸術学校 Bauhaus [関連する鑑賞メモ] のドキュメンタリー映画2本を映画上映を観てきました。

2018 / Filktank (Deutschland) / 52 min. / DCP
Buch und Regie: Niels Bolbrinker, Thomas Tielsch.

Bauhaus の精神を今に引き継いでいるとみなした学校、ダンサー、建築・都市計画プロジェクトなどを取り上げたキュメンタリー。 Bauhaus というよりモダニズム一般の話と感じられるほど枠は緩めでしたが、 ほとんどが良い話として取り上げていましたが、 そんな中、フランスの郊外 (バンリュー) のモダニズム集合住宅の荒廃の問題という負の面も取り上げていたのが、印象に残ってしまいました。

Bauhausfrauen
2019 / Koberstein Film (Deutschland) / 44 min. / DCP
Regie: Susanne Radelhof.

バウハウスに学んだ女性に光を当てるドキュメンタリーです。 彼女らの仕事を再評価するだけでなく、Bauhaus にすら根強く残っていた女性差別 (女学生は希望によらず織物工房に所属させられた、待遇が低かった、等) との闘いの話も多く、そこがとても興味深い映画でした。

取り上げられた女性アーティストは、 テキスタイルの分野で活躍した Gunta Stölzl、 子供向け玩具 Bauhaus Bauspiel で知られる Alma Buscher、 女性ながら金属工房のマイスターになった Mariannne Brandt、 Terezín ゲットーや Auschwitz-Birkenau 強制収容所内で美術教育をするもそこで死亡した Friedl Dicker、 夫 László の名の下で撮影した写真を戦後に自分の作品とすべく闘った Lucia Moholy など。 中でも最も印象に残ったのは、 Alfred Arndt と結婚し Bauhaus を去ることになった後に Cindy Sharman を思わせるキャラクタを演ずるセルフポートレート写真シリーズ “Mask Portrait” (1930) を制作した Gertrud Arndt でした。

Bauhaus で活躍した女性に関しては、このドキュメンタリー映画と同じタイトルの Ulrike Müller: Bauhausfreuen: Meisterinnen in Kunst, Handwerk und Design (Elisabeth Sandman Verlag, 2019) や、 Elizabeth Otto & Patrick Rossler: Bauhaus Women: A Global Perspective (Herbert Press, 2019) といった研究書も出版されていて、その著者たちのコメントも映画の中で使われていました。 ドキュメンタリー映画もとっつきやすいですが、書籍でちゃんと読みたいものです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

久々に渋谷に出たので、桜丘の 蓮華の五徳 で夕食に排骨担々麺をいただきました。 名前が変わり、店舗も今風に小洒落て明るくなったし、胡麻ペーストが控えめになって辛さがシャープになった気もしましたが、 これは、桜丘再開発で閉店した亜寿加の排骨担々麺が復活したと言えるでしょう。 亜寿加の排骨担々麺は、美味しいかどうかというより、大学時代から約30年食べ続けてきた馴染みの味だったので、 こうして復活したのは嬉しい限りです。

[3801] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Dec 16 22:12:23 2019

12月7日土曜は午後に初台へ。会期末の迫ったこの展覧会を観てきました。

Stepping on a Serpent
東京オペラシティアートギャラリー
2019/10/16-2019/12/15 (月休), 11:00-19:00 (金土11:00-20:00).

Camille Henrot はフランス生まれながらニューヨークを拠点に活動する現代美術作家です。 2000年代以降に作品を発表するようになり、2010年代に入って国際的に注目されるなった作家ですが、 作品を観るのはこの展覧会が初めてです。 映像作品も多く作っているようですが、この展覧会では、コンセプチャルなインスタレーションをメインに据えた展覧会でした。

コンセプトに合わせて作風を大きく変えているようで、作家としてのこだわりのポイントが掴めず、展覧会としてはピンとくるものがありませんでした。 しかし、草月流いけばなに影響受けたという書物に着想したいけばなインスタレーション・シリーズ Is it possible to be a revolutionary and like flowers? (2012/2014/2019) は、 着想元の書物やテキストに対して説明的ではなく、むしろそのズレも含めて楽しめました。

The Pale Fox (2014) は、 青い部屋のビジュアル的な強さもある、半ば謎解きがかった読み解きインスタレーション。 隣室で上映された Smithonian Institute での Artist Research Fellowship プログラムで製作したという 博物館に取材したビデオ作品 Grosse Fatige (2013) とも共通するような、 博物学的な「脅威の部屋」的なセンスを感じましたが、 読み解きに引き込まれるようなフックに欠けました。 というか、自分の現在の興味とうまく噛み合いませんでした。

And now for something completely different...

同時開催の収蔵品展は 李 禹煥 『版との対話』。 リトグラフ、シルクスクリーン、ドライポイントなど。モノクロのミニマルな世界を堪能することができました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3800] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 15 19:21:07 2019

11月30日土曜の話の続き。 神奈川県民ホールギャラリーでの昼過ぎに展覧会を観た後、晩のパフォーマンスまでの時間、桜木町というか紅葉坂へ移動。 このコンサートというかパフォーマンスを観てきました。

Arditti Quartet × Kenta Kojiri
神奈川県立音楽堂
2019/11/30, 15:00-16:30.
Arditti Quartet: Irvine Arditti (1st violin), Ashot Sarkissjan (2nd violin), Ralf Ehlers (viola), Lucas Fels (violoncello).
小㞍 健太 [Kenta Kojiri] (choreography/dance).
1)西村 朗:弦楽四重奏曲 第6番〈朱雀〉 [Akira Nishimura: String Quartet No. 6 “Suzaku - The Vermilion Bird”] (2017)
2)細川 俊夫:パッサージュ(通り道)〜弦楽四重奏のための [Toshio Hosokawa: Passage for String Quartet] (2019)
3)Wolfgang Rihm: Geste zu Vedova [「Geste zu Vedova〜ヴェドヴァを讃えて」] (2015)
4)Wolfgang Rihm: String Quartet No. 3 “Im innersten” [弦楽四重奏曲 第3番〈胸裡〉]

特に欧州の前衛の現代音楽を得意とするイギリスの弦楽四重奏団 Arditti Quartet の来日公演を聴いてきました。 彼らの演奏を収録したCDは十数枚は持っていますが、 コンサートで聴くのは2000年 [鑑賞メモ] 以来なので約20年ぶり。 その時からは Arditti 以外はすっかり入れ替わってます。 今回は、演奏される曲への興味というより、 2003-2015にオランダの Nederlands Dans Theater [関連する鑑賞メモ] に在籍し、現在は Opto を主宰するなど、 コンテンポラリーダンスの文脈で活動する振付家ダンサー 小㞍 健太 との共演に興味を引かれて、足を運んでみました。

ホワイエで小㞍による「インスタレーション」があるという話だったので、早めに会場に行って暫くすると、黒いTシャツパンツ姿の 小㞍 が登場。 開演待ちをする観客たちの合間で踊り出しました。 客弄りするほどではありませんでしたが、強いオーラでステージ的な空間を作り出すことなく、 客の間を移動しつつ、その姿勢で空間を変えていきました。 時折、笑顔を見せる時もあり、観客を化かす道化のように感じられました。 ストールに座って貰ったフライヤの整理をしていたので、そのまま座って観ていたら、小㞍さんに隣に座られてしまいました。 変に逃げるわけにもいかないので、大人しく座っていたら、「素敵な服ですね」と声をかけられたり。

コンサートの前半は、ダンスとの共演なして、日本の作曲家の2曲を演奏しました。 最近、このタイプの音楽から遠ざかっていることもあり捉えどころ無かったのですが、 あからさまに日本的な音階というわけではないものの、ポルタメントも使った音階の移動などに、ふと日本的な雰囲気を感じたりしました。

後半はダンスとの共演で、ドイツの作曲家 Wolfgang Rihm の2曲を演奏しました。 クラシック音楽の専用のホールでダンス等の上演は想定されていない作りの舞台ですが、 上手半分で正方形のマットの上でダンス、下手半分で演奏、と、分かれて並置するよう。 共演ならではの演出の妙は無さそうなセッティングでしたが、実際に始まってみると、 ダンス側の後方に置いた4枚の鏡でそれぞれズレた角度からダンサーを映し出したり、 演奏してる側の背景にシルエットを映したり、と、干渉は避けつつも単なる並置とは違う仕掛けが感じられました。 開演前にホワイエで上映されていたスタディの際の映像に引きづられたかもしれませんが、 1曲目の Geste zu Vedova の時は、 音楽の構造を視覚化するというか、4つの弦楽器の音の緊張関係を体で示すかのよう。 しかし、2曲目の “Im innersten” になると、音楽もときおり旋律が浮かび上がるようになり、 ダンスも音楽の視覚化というより、マイム的な動きも交え表情もドラマチックに怒りや苦悩を描くよう。 そんな変化も印象に残ったパフォーマンスでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3799] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Dec 9 22:35:19 2019

11月30日土曜は昼過ぎに横浜山下町へ、この展覧会を観てきました。一旦会場を離れたのですが、晩に戻ってパフォーマンスも観ました。

Miwa Yanagi: Myth Machines
神奈川県民ホール ギャラリー
2019/10/20-12/01 (木休), 10:00-18:00 (11/30,12/01 -17:00).

最初期1990年代の《エレベーター・ガール》から、 2016年以降に取り組んでいる写真《女神と男神が桃の木の下で別れる》や、 2019年の「モバイル・シアター・プロジェクト」と呼んでいるマシンを使ったインスタレーション《神話機械》、 演劇プロジェクトの資料を含む、やなぎみわ の今までの活動を辿る回顧展的な個展です。 個展は10年はぶりということで、 最近は演劇プロジェクトを観ることはあれど [鑑賞メモ]、 美術展で作品を観るのは企画展の中で1作品を観る程度。 自分が個展で観るのはひょっとして1997年の水戸芸術館のクリテリオム [鑑賞メモ] 以来でしょうか。

物語的な時間を感じさせない《エレベーター・ガール》は好きだったのですが、 コンセプチャルながらナラティブな演出写真になった《マイ・グランドマザーズ》や《フェアリー・テール》は今から振り返ると過渡期だったのかも知れません。 もともと演劇的な資質を持っていたのか、演出写真よりも演劇プロジェクトでそそれが生きているように感じました。 「モバイル・シアター・プロジェクト」は新作の《神話機械》は高専や高校の生徒と制作した手作り感溢れるロボットを使ったインスタレーション作品。 常に動態で展示しておらず「無人上演」として、時々ロボットが録音されたセリフを流しながら動く様子を見せていましたが、 Heiner Müller の日本語訳テキストとの関係はさておき、 ユーモラスな一方不気味さもあって人が演じない分だけクールで突き放したようにも感じられた所が好みでした。 その一方で、人を写した演出写真ではなく、福島の桃を夜に撮影した《女神と男神が桃の木の下で別れる》については、 画面の中でのナラティブさが後退し過ぎて、意図を掴みかねました。

この展覧会は11月29, 30日にライブ・パフォーマンスがありました。 ということで、ライブ・パフォーマンスに日程を合わせ、その昼に展覧会を観たのでした。

神奈川県民ホール ギャラリー
2019/11/30, 19:30-20:30.
構成・演出: やなぎみわ.
原作: ウィリアム・シェイクスピア [William Shakespeare], ハイナー・ミューラー [Heiner Müller].
作品引用: ウィリアム・シェイスクピア 『ハムレット』 (Hamlet), ハイナー・ミューラー 『ハムレットマシーン』 (Hamletmaschine; 訳: 岩淵 達治, 谷川 道子; 未來社), ハイナー・ミューラー 『メディアマテリアル』 (Medeamaterial; 訳: 岩淵 達治, 越部 遥, 谷川 道子; 未來社).
メインマシン《タレイア》 実機制作: 政岡 恵太朗, 宅和 広樹.
振動マシン《テルプシコラー》 香川高等専門学校機械電子工学科逸見研究室.
のたうちマシン《メルポネメー》 群馬高等専門学校機械工学科ロボット工学研究室.
投擲マシン《ムネーメー》 福島県立福島工業高等学校.
髑髏制作: 京都造形芸術大学 ウルトラプロジェクト.

演劇プロジェクトではなく、展覧会中のライブパフォーマンスとしての上演ということで、 演劇色薄いパフォーマンスを予想していました。 しかし、小劇場や商業演劇を思わせる口調や演技を伴う熱演による一人芝居でした。 やなぎみわ演劇プロジェクトでも演劇の演出は結構ベタなものなので、後から思えば意外でもなかったのですが、 昼に先に無人公演を観ていて、その突き放したクールさを気に入っていたので、 演技に最後まで違和感を覚えて演じられた世界に入り込めないまま終わってしまいました。 こういう時もあるでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

展覧会を観た後、一旦移動して観たコンサートについては、また後ほど。

[3798] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 8 19:39:31 2019

冷たい雨降る11月23日土曜は午後に千葉へ。この展覧会を観てきました。

『非常にはっきりとわからない』
千葉市美術館
2019/11/02-12/28 (11/5,11,18,25,12/2,9,16,23休), 10:00-18:00 (金土10:00-20:00).
目: 南川 憲二 (ディレクター), 荒神 明香 (アーティスト), 増井 宏文 (インストーラー).

鑑賞者に幻惑させるような体験をさせる空間インスタレーションで知られる 2012年に活動を開始した3人組アートユニット 目 [め] の個展です。 『たよりない現実、この世界の在りか』 (資生堂ギャラリー, 2014) [鑑賞メモ] の印象も強いものでしたが、 その後、「ワームホールとしての東京」 (『“TOKYO”——見えない都市を見せる (Tokyo Art Meeting VI)』東京都現代美術館, 2015-2016) [鑑賞メモ] しか観る機会が無く、久しぶりに体験することができました。

作り込んだ空間と外部の間の移行的な導入部に養生などで作業中を思わせるような空間を置くというのは、 『たよりない現実、この世界の在りか』でもそうでしたが、 今回は一階の入口、通路やホールを養生し、美術品の梱包や廃棄品らしきものが並び、 まるで美術館の引越しか大規模な展示替えの最中のよう。 いつもとは異なり受付は一階にあり、 養生されたエレベータに乗って展示室の7,8階へ向かうのですが、 7階で降りると、展示室も養生が施された空間になっていました。 ショーケースや壁に作品が掛けられていたりするのですが、展示を片付け中という感じで、 脚立や台車、足場なもあちこち置かれ、美術品の梱包らしきものも並んでいます。 工具やゴミもあちこちに置かれ、まさに作業現場。

これを越えて行くと作り込まれた別世界に踏み込むことになるのだろう、と、8階へ上がると、何とここも養生が施された展示室。 踏み出して少し歩くと、まるで7階にいるよう。 間取りが同じな上に、同様に養生され、作品や梱包、脚立や台車、足場や各種部材が同じように置かれていたため、 間違えて同じ階で降りてしまったかと、思った程。 なるほど7階と8階の差異を楽しむ作品か、と、2つの階を行き来しながら差異探しを始めたのだけれども、これがなかなか難しい。 養生がなされた空間は非常にノイジーで情報量が多く状態が覚えきれません。 さらに、作業中ということで養生の変更、梱包や足場、荷台の移動も行われているため、 ゴミの形状や汚れの違い、部材への書き込みなどに細かい差異があることに気づくことはあったけれども、 大きな状況の違いについては、根本的な設定の違いなのか、作業中の異なる断面を見ているに過ぎないのかも、判断しかねます。 さらに、何回も2つの階を行き来しするうちに、今自分がいる階がどちらかだったすら混乱してくるという。

というわけで、美術館の引越もしくは展示替えの状況を体感する、もしくは、似たような2つの状況の差異を楽しむ、というより、 似たような2つのノイジーな状況を行き来するうちに自分の記憶や感覚が混乱していく様を体感するような展覧会でした。

観に行った11日23日の14時から約1時間、展示も行われた1階のホールで デンマークのミュージシャン Jens Paldam ライブパフォーマンスも行われtました。 音楽は、アナログモジュラーシンセを使っての、アンビエント気味のエレクトロニカ。 美術品の梱包が並ぶ空間に置かれたモジュラーシンセに静かに向かっているだけで、 動きも照明やプロジェクションなどの演出も無いので、 腰を据えて演奏を聴くというより、そういう演奏を聴きながらそんな様子も横目に展示を観る方がいいパフォーマンスでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3797] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Dec 2 23:29:58 2019

11月17日日曜は昼に京橋へ。この映画を観てきました。

国立映画アーカイブのサイレント映画特集上映 『サイレントシネマ・デイズ2019』のプログラムで音楽伴奏は録音ながらサイレント映画上映を観てきました。

Die Stadt ohne Juden
1924 / Walterskirchen und Bittner (Österreich) / 91 min. / restored DCP / B+W (coloured) / silent
Regie: Hans Karl Breslauer.
Drehbuch: Hans Karl Breslauer, Ida Jenbach nach dem Roman von Hugo Bettauer.
Anny Miletty (Tochter Lotte), Johannes Riemann (Leo Strakosch), Eugen Neufeld (Bundeskanzler Dr. Schwerdtfeger), etc

戦間期、ナチスが政権を以前の1924年に制作された反ユダヤ主義を風刺する内容の映画です。 原作は G. W. Pabst: Die freudlose Gasse (『喜びなき街』, 1925) [鑑賞メモ] と同じ Hugo Bettauer です。 映画の中では国名を「ユートピア」としていますが、ウィーンで撮影されており、当時のオーストリアを状況を風刺したもののようです。 ユダヤ人追放をしたものの、国内での消費の落ち込みや外国のボイコットを受けて経済が破綻し、再びユダヤ人を受け入れる、という大きな物語を、 資産家の娘 Lotte とユダヤ人の恋人・許嫁の Leo、そして、ユダヤ人追放法を撤回させるための Leo の策略をコミカルに交えて描いています。

と言っても、技法は素朴で、画面やモンタージュなどで登場人物の深く描写したり状況の緊迫感を感じさせるようなことはなく、 反ユダヤ主義の風刺という主題の割には物足りなく感じました。 翌年の映画となる Die freudlose Gasse を思い出しつつ、あの映画の表現の洗練を実感しました。 スタイルとしては、Expressionism (表現主義) から Neue Sachlichkeit (新即物主義) 映画への移行期にあたるようで、 ユダヤ人排斥法が撤回されて反ユダヤ主義の議員が錯乱してしまう場面で、多重露光の表現主義の技法が半ば取って付けたように使われていました。

その一方で、ユダヤ人追放の様子の描写は、 1933年以降のナチス政権下でのユダヤ人の追放や強制収容の様子を捉えたドキュメンタリー映画や それを題材としたドラマ映画での描写から大きく外れるものではなく、まるで予言したかのよう。 もちろん監督たちの想像力の賜物ということもあるかと思いますが、 第一次世界大戦中、戦後の難民、住民交換などの様子がイメージの源泉にあったのかしらん、と。

2014年の『シネマの冒険 闇と音楽 2014 from ウィーン フィルムアルヒーフ・無声映画コレクション』の企画に携わった Filmarchiv Austria の常石 史子 氏がこの映画の復元を担当しており、上映前に短い解説がありました。 この映画は1933年に上映された後に失われたと思われていたものの、 1991年に不完全ながらフィルムが Nederlands Filmmuseum で発見され、 2015年にパリの蚤の市で完全版に近いフィルムが発見され、それを元にデジタル復元されています。 内容もあって復元に国の予算が付かず、クラウドファウンドで資金調達したとのことでした。 原作者でもある Hugo Bettauer が1925年ナチスのシンパに暗殺されたということを、今更ながら知りました。 Die freudlose Gasse は Gerhard Gruber のピアノ生伴奏で観ることができたのですが、 今回は Gruber のトリオによる伴奏の録音だったのは残念でした。 (平日晩に 神﨑 えり による生伴奏での上映もあったのですが、都合が付きませんでした。)

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[3796] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 1 20:50:59 2019

11月16日は箱根へ日帰り旅行。この展覧会を観てきました。

ポーラ美術館
2019/08/10-2019/12/1 (会期中無休), 9:00-17:00.
Oliver Beer, Abdelkader Benchammma, Céleste Boursier-Mougenot, Candida Höfer, 石塚 元太良 [Gentaro Ishizuka], 磯谷 博史 [Hirofumi Isoya], Alicja Kwade, Susan Philipsz, Prinz Gholam, Wolfgang Tillmans, 渡辺 豊 [Yutaka Watanabe], 横溝 静 [Shizuka Yokomizo]
From the Collection: Claude Monet, Paul Cézanne, Pablo Piccaso, 東洋磁器コレクション [Oriental Ceramics Collection], etc.

フランス印象派 (French impressionists) の作品を主なコレクションとする箱根仙石原のポーラ美術館で開催された、 コレクションを組み込むような形で制作された現代美術のインスタレーション作品の展覧会です。 組み合わせの妙が楽しめたという程ではありませんが、視覚だけでなく聴覚を使いその感覚を味わう作品が多く楽しめた展覧会でした。

最も気に入ったのは、Céleste Boursier-Mougenot。 小鳥 (zebra finch) に electric guitar を演奏させるインスタレーション From Here to Ear で知られるフランスの作家ですが、 この展覧会では、水色の円形のプールに白磁のボウルをたくさん浮かべた clinamen v. 7 を出展しました。 水流で穏やかな動きがあり、窓の外の林の緑もあって、視覚的にも美しく楽しい作品というだけでなく、 ボウル同士が触れ合う際に出す澄んだ響きがボウルの大きさなどでチューニングしているのか美しいハーモニーを作り出していて、聴覚的にも美しい作品でした。 ちなみに、対比するように展示されていたのは、Claude Monet の Les Nymphéas 『睡蓮』でした。

ポーラ美術館の東洋磁器コレクションの 響きをマイクで拾って聴かせる Oliver Beer のインスタレーション Devis も面白い作品でした。 普段の展示では無いようなオーケストラ様にずらりと並べらた陶器たちが、 耳障りなハウリング音にならないぎりぎりの不穏な不協和音を響かせていました。

もちろん、音響抜きに面白い作品も。透明なガラスと鏡が嵌められた衝立を使った Alicja Kwade の Between Glances は 一見してガラスなのか鏡なのか判らない視覚的なトリッキーさを楽しむことができました。 氷河で撮影された 石塚 元太良 の写真シリーズ Le Conte_Glacier#001 も、型式的な美しさを楽しめました。 また、ピアノ曲を弾く年老いた女性たちのビデオインスタレーション 横溝 静 《永遠に、そしてふたたび》に Chopin のピアノ曲を弾く様を淡々と端正な映像で捉えて差異を静かに浮かび上がらせる様は、 ビデオによるタイポロジーを観るようでした。

野外彫刻が散在する「森の散歩道」では、Susan Philipsz の11チャネルのサウンドインスタレーション Wind Wood。 James Joyce の娘で1920年代にダンサーとして活動した Lucia に捧げられた作品で、 Lucia が好んだという Maurice Ravel の歌曲集 Shéhérazade (1904) から “La Flûte enchantée” の旋律を音符毎に林のあちこちに置かれたスピーカーに割り当て鳴らします。 音符毎に鳴らされることで旋律も分解され、林の中に響く澄んだフルートの音もはっきりと旋律が感じられるものではなくなり、不思議な響きになっていました。 丁度、紅葉が美しい季節で、小春日和の日差しもあって、とても気持ちよく感じられました。 Susan Philipsz の作品は2012年の dOCUMENTA (13) を始め度々体験していますが [鑑賞メモ]、 やはり Philipsz の作品は良いです。 ちなみに、印象派の絵を多くコレクションするポーラ美術館に合わせて印象主義の Ravel の曲を選曲したということもあるようです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

10月の台風で箱根も甚大な被害。国道138号の一部通行止めも続いていますし、路盤流出した箱根登山鉄道も運行再開の目処が立っていません。 しかし、観光客が戻っていないかもしれないという予想は甘く、箱根湯本から先の道路渋滞、代行バスや路線バスの混雑は酷く、かなり混乱していました。 美術館にたどり着くまでは少々後悔しましたが、小春日和で紅葉も美しく、展覧会も良く、帰りは湯本で日帰り温泉も楽しめ、やっぱり箱根まで行った甲斐はあったでしょうか。

[3795] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Nov 25 21:53:51 2019

11月9日土曜の夕方は、日本橋から乃木坂へ。会期末が迫ったこの展覧会を観てきました。

国立新美術館 企画展示室1E
2019/08/28-2019/11/11 (火休;10/22開;10/23休). 10:00-18:00 (8,9月 金土10:00-21:00;10,11月 金土10:00-20:00).
北島 敬三, 小林 エリカ, ミヤギフトシ, 田村 友一郎, 豊嶋 康子, 山城 知佳子.

国立新美術館の企画による現代美術のグループ展です。 映像、写真やインスタレーションを通して物語をうっすら浮かび上がらせるようなナラティブな作風の作品を集めた展覧会です。 ナラティブな作風は少々苦手なのですが、観客も少なく落ち着いた雰囲気もあってか、意外とその雰囲気を楽しむことができました。

最も好みだったのは、田村 友一郎のインスタレーション《Sky Eye》。 ファストフードの店でコーヒー飲みつつぼんやり浮かんだ物語というほどはっきりしないイメージを、 イメージの連想で広げたかのよう。 社会的な背景というより、不条理とも感じられる意味の希薄さに、引っ掛かりを感じた作品でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

同じく国立新美術館で開催されていた 『カルティエ、時の結晶』 を観てきました。 フランスのジュエリー、時計などの高級宝飾品のラグジュアリー・ブランド Cartier のデザインを辿る展覧会です。 国立新美術館なので少しは接点を感じられる展覧会かと期待したのですが、デザインの歴史や体系が Cartier の中で閉じていて、興味の接点を持ちづらいものがありました。 杉本 博司 による骨董と組み合わせたインスタレーションも展示されていたのですが、趣味の良さよりもあざとさの方を感じてしまいました。うむ。