TFJ's Sidewalk Cafe >

談話室 / Conversation Room

TFJ's Sidewalk Cafe 内検索 (Google)
[4256] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Apr 28 22:12:17 2025

一週余前の週末の土曜は、昼に恵比寿へ。この展覧会を観て来ました。

TOP Collection — Continuity and Change
東京都写真美術館 3階展示室
2025/04/05-2025/06/22 (月休; 5/5開, 5/7休). 10:00-18:00 (木金-20:00)

総合開館30周年を記念してのコレクション展の第1弾です。 学芸員5人による共同企画で「写された女性たち 初期写真を中心に」、「寄り添う」、「移動の時代」、「写真からきこえる音」、「うつろい/昭和から平成へ」の5つのテーマ展示の組み合わせになっていました。 1995年の総合開館記念展『写真都市TOKYO』の再現を含む「うつろい/昭和から平成へ」で王道の30周年記念企画を押さえつつ、 誰かということだけでなく被写体の女性の姿勢、動きなどにも着目した「写された女性たち 初期写真を中心に」を興味深く観ました。

個別の作家では、インターセクションとして配された 山本 彩香 〈We are Made of Grass, Soil, and Trees〉 (2014-2015) の青みがかって幻想的な一連の演出写真が印象に残りました。 やはりインターセクションにあった〈版画集 トマソン黙示録〉 (1988) は、 Bernd and Hilla Becher を思わせるグリッド状の展示方法ながら被写体が無用の建築「トマソン」という所が可笑しく感じました。

砂丘を舞台とした家族を使った演出写真の印象強い 植田 正治 の違う一面も観られましたし、 集合住宅の通路の照明パターンをライトボックス化した畠山 直哉 〈光のマケット〉 (1995) を久々に観ることもできるなど、 企画を離れてコレクションの展示としても楽しみました。

Takano Ryudai: Kasubaba — Living Through The Ordinary
東京都写真美術館 2階展示室
2025/04/05-2025/06/22 (月休; 5/5開, 5/7休). 10:00-18:00 (木金-20:00)

1990年代から活動する写真家の個展です。 グループ展やコレクション展で観る機会はありましたが、個展で観るのは初めて。 観る機会の多かった〈In My Room〉のようなセクシュアリティをテーマとした写真という印象が強かったのですが、 〈CVD19〉のような手の造形の面白さを切り出すような抽象度の高い作品から、 〈毎日写真〉や〈カスババ〉のようなコンセプチャルなスナップ写真、 人影を写すフォトグラム〈Red Room Project〉、など、その多様な作風に気付かされました。 すっきりとしながら非線形に回遊させるような展示空間の作りもスタイリッシュでしたが、 多様な作風につかみどころの無さも感じてしまいました。

B1F展示室では 『ロバート・キャパ 戦争』 [Robert Capa: War]。 戦間期から戦後1954年まで活動した報道写真家 Robert Capa (元々はAndré FriedmannとGerda Taroの2人の共同の名で、Taroの死後Friedmannの写真家としての名となる) の、 東京富士美術館コレクションの Capa の写真約1000点のうち戦争に関する約140点からなる展覧会です。 歴史に関する書籍やTVドキュメンタリーなどで度々使われるような有名な写真が多く観られるのですが、個々の写真というより展示の量に圧倒されました。 今回展示されていた140点でも相当でしたが、Capa のコレクションは約1000点あるのか、と。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4255] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Apr 27 21:42:35 2025

2週前の週末の土曜は、午後遅めに鎌倉へ。この展覧会を観て来ました。

Iwatake Rie + Kataoka Junya, and the Museum Collection: An Illustrated Guide for Gravity and Materials
神奈川県立近代美術館 鎌倉別館
2025/02/01-2025/04/13 (月休;2/24開), 9:30-17:00

2013年にユニットで活動を始めた 岩竹 理恵 + 片岡 純也 による展覧会です。 神奈川県立近代美術館のコレクションから選ばれた近世以前の日本美術とそれらに着想した新作を中心に、過去の作品も交えての展覧会です。 今までも『BankART Life』 [鑑賞メモ] や 『MOTアニュアル』 [鑑賞メモ] などのグループ展で 特に片岡によるその不条理で無用な機械とでもいう作風の作品を楽しんでいましたが、 美術館のコレクションを交えているとはいえ、個展を観るのは初めてです。

好みの作風の作家なのでどれも楽しみましたが、中でも最も気に入ったのは、片岡 純也 の 『Ghost in the Sellotape』 (2015/25)、『サークル管による輪郭の連続性について』 (2025)、『0から1へのアナログ変換』 (2025)を組み合わせてのインスタレーション。 薄暗いギャラリーの一面を使い数寄屋の壁の一面を外から見るかのようなのですが、 クレーター様の影の動きから満月が自転するのを観るかのようなセロテープを透過した円形の光や、 サークル管光源の光が回転する竹箒を抜ける際にピンホール効果で沸き立つような小さな円形の光となっての投影に、 障子窓越しに覗く茶器や掛け軸が組み合わさり、侘び寂びの雰囲気が生かされつつもそれが微妙にズラされるよう。 裏に回ってみると、茶器や掛け軸はインスタレーション中に配置されているというわけではなく、 展示ガラスケース中に通常の展示かのように展示されている、というのも面白く感じました。

このインスタレーションは光使いの妙ですが、 音使いという点ではインスタレーションというより小ぶりな立体作品、 『枝の曲りによる茶器の演奏』 (2025) や『茶筅による巻貝の演奏』 (2023)の細やかな音が印象に残りました。 茶室や茶器からの着想というのは、今まで観た作品では特に印象に無いので、 やはりコレクションから着想するという今回の企画ならではでしょうか。 そして、その着想の妙を楽しむことができました。

キャッチのある動く作品に何かと目が行きがちな展覧会でしたが、 郵便物などからスタンプや模様を切り出す岩竹の採集シリーズの繊細なペーパーワークも、印象に残りました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

だいぶ緑が混じりつつありましたが、まだまだ桜の花が残っており、 小町通りを避けて鎌倉別館に向かう若宮大路や鶴岡八幡宮はかなりの賑わい。 さすが花見のシーズンと思ったのですが、夕方遅くに小町通りへ行くとこちらの混雑はさらに酷く、人を掻き分けないと歩けないほど。 桜の咲いている場所はそこまでの混雑ではなかったので、やはり花より団子な人が多いのだなあ、と。

晩は早めの時間に小町通りにあるカフェー・アユー縁の小料理屋で食事しつつ一杯やってから、二軒目はかつら小路のカフェ・アユーへ。 開店2周年特別企画「松山晋也ワールドミュージックセレクション」で、世界各地の音楽の一味違ったセレクションを楽し観ました。

[4254] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Apr 20 18:24:32 2025

4月最初の土曜は、昼に高輪台へ。この展覧会を観て来ました。

Back to Modern – Graphic Design from West Germany
東京都庭園美術館
2025/03/08-2025/05/18 (月休;5/5開,5/7休), 10:00-18:00 (3/21,22,28,29 -20:00)

ドイツのグラフィックデザイナーJens MüllerとKatherina Sussekが蒐集した A5 Sammlung Düsseldorfのコレクションに基づく展覧会です。 焦点が当てられているのは、第二次世界大戦後の西ドイツ、 継続性のある出版物などの中には1980年代のものがありましたが、 20世紀半ばのモダニズム色濃いデザイン (いわゆるミッドセンチュリー・モダン) から、 カウンターカルチャー, サイケデリックの影響が見え隠れする1970年代前半までのデザインの、 書籍、パンフレットなどの出版物とポスターをメインとしたグラフィックデザインです。 モダニズムならではの簡潔明瞭にしてスタイリッシュで見応えのあるデザインが楽しめました。

導入は、Hochschule für Gestaltung Ulm (ウルム造形大学) 設立者の1人のOtl Aicherによる LufthansaやMünchen 1972 Olympiadeのグラフィックデザイン。 そして、その時代を感じさせるKiel WocheやDocumenta, Kasselといったイベントの一連のポスター。 その後、年代順ではなく、幾何学的抽象、タイポグラフィ、イラストレーション、写真というデザイン技法をテーマに展示が作られていました。 作家性が強く出るようなデザインではないため、特に、前半の幾何学的抽象、タイポグラフィの展示は少々掴みに欠けたでしょうか。 イラストレーション、写真の章は公共デザインよりも映画ポスターなどが多めという点でもキャッチーで、 そこでの作品を観てから前半を見直して、その抽象の中にあるレイアウトの個性が腑に落ちたところがありました。

そんなこともあって、作家として印象に残ったのは後半のイラストレーションや写真を大きく使ったデザイン。 Hans Hillmann や The Beatles: Yellow Submarine で知られる Heinz Edelmann による映画ポスター、 Celestino PiattiによるDeutscher Taschenbuch Verlag (dtv)のブックデザインなどでした。 このあたりのデザインとなると、モダニズムに収まりきらない、むしろ1970年代のカウンターカルチャー, サイケデリックのデザインとの連続性も感じられました。

少々意外だったのは、レコードジャケットのデザインが少なかったこと。 レコードジャケットのデザインがグラフィックデザインの中で重要な位置を占めるようになるのは ロックやポップの分野でコンセプチャルなアルバムが制作されるようになる1960年代末以降、 つまりこの展覧会が焦点を当てている時代より後なのかもしれません。 そんなことにも気付かされた展覧会でした。

この展覧会は5月18日までですが、5月27日からはギンザ・グラフィック・ギャラリーで 『アイデンティティシステム 1945年以降 西ドイツのリブランディング』 というA5 Sammlung Düsseldorfのコレクションに基づく展覧会が始まります (7月5日まで)。 この展覧会とは違う観点からの展覧会のようですので、併せて観たいものです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

ちょうど桜が満開で、天気も良いということで、展覧会というより庭園の桜を目当ての観客も少なからず。 といっても、混雑しているというほどでもなく、庭園を散策しながらの花見を楽しむことができました。

[4253] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Apr 14 21:35:35 2025

2週間遅れの話が続きますが、3月最後の土曜は、午後遅めに横浜伊勢佐木長者町へ。この映画を観て来ました。

Je t'aime, je t'aime
un film de Alain Resnais.
『ジュ・テーム、ジュ・テーム』
1968 / Parc Film (Fr), Les Productions Fox-Europa (Fr) / 94 min.
Réalisation: Alain Resnais; Scénario: Jacques Sternberg; Image: Jean Boffety; Musique: Krzysztof Penderecki; Directeur de production: Philippe Dussart.
Claude Rich (Claude Ridder), Olga Georges-Picot (Catrine), Anouk Ferjac (Wiana Lust), a. o.

L'Année dernière à Marienbad 『去年マリエンバードで』 (1960) [鑑賞メモ] などの作品で1960年代にヌーヴェルヴァーグ左岸派として知られるようになった、 フランスの映画監督 Alain Resnais が1968年制作したタイムリープ物のSF映画です。 今まで見逃していて、今回の上映で初めて観ました。 1980年代以降はむしろ演劇などの演出技法を映画に置き換えたコメディ色濃い作風となりましたが [鑑賞メモ]、 こちらはむしろ L'Année dernière à Marienbad に近い、記憶に関する映画です。

ピストル自殺を試みたものの未遂になった男 Claude は、退院して病院を出るとすぐ、 声をかけられ車に乗せられて町外れにある秘密の研究所へ連れて行かれます。 そこではタイムリープの研究をしており、ネズミでの実験に成功した彼らは、Claude の合意を得て人体実験に乗り出します。 Claude はタイムマシンに入れられ短時間だけ約1年前の過去に飛ばされますが、動作が安定せずに、行ったり来たりすることになります。 不安定なタイムリープによって、Claude が自殺に至った経緯が、時間順がシャッフルされた断片として、再生されていきます。 事故死なのか自殺なのかClaudeが殺したのか明確にならない鬱病的な状態のガールフレンドCatrineの睡眠中のガス中毒による死、 Catrine以外のClaudeと関係のある女性、そして、Claudeの自殺未遂。 過去と現在を往復しCatrineとの関係を思い出すうち、Claudeはやがてタイムマシンを抜け出し、研究所の中庭でピストル自殺を試みます。 Claude は倒れている所を発見され、再び病院へ向かうところで映画が終わります。

自分の女性の識別能力が低下したこともあるのか、Catrineなのか、Catrine以外の女性なのか観ていて混乱することも少なからず。 断片的なエピソードも時系列順では無いため、Catrineの死やClaudeの自殺未遂の経緯は把握できず。 むしろ、自殺未遂した男のそれに至る断片的で混乱した記憶を、安定しないタイムリープのという設定を使って一緒に辿るような映画でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

この前の週は David Lynch の映画 Lost Highway 『ロスト・ハイウェイ』と Twin Peaks: Fire Walk With Me 『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』 [鑑賞メモ]、 その前に観た映画も Los Hiperbóreos 『ハイパーボリア人』 [鑑賞メモ]、と、 意図せずして非線形なナラティヴによる映画が続いてしまいました。続くときは、続くものです。

この後は、夜桜に鎌倉へ。といっても開花し始めたばかりでしたが。 手術入院等もありすっかり足が遠のいてしまっていたカフェ・アユーに顔を出したのでした。

[4252] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Apr 6 19:14:41 2025

先々週末の土曜は午前に彼岸の墓参を済ませた後、有楽町へ。 今年(2025年)1月16日に死去した映画監督David Lynchの追悼として4Kリストア版の上映企画が 角川シネマ有楽町で組まれたので、映画館で観る良い機会かと1990年代の2作品を観てきました。

Lost Highway (4K restoration)
a David Lynch film.
『ロスト・ハイウェイ 4K』
1997 / CIBY 2000 (Fr), Asymmetrical Productions (US) / 2022 (4K restoration) / Janus Films (US), mk2 films (Fr) / 134 min. / 2.39:1 / DCP.
Music Composed and Conducted by Angelo Badalamenti; Edited by Mary Sweeney; Production Designer: Patricia Norris; Director of Photography: Peter Deming; Written by David Lynch and Barry Gifford; Directed by David Lynch.
Bill Pullman (Fred Madison), Patricia Arquette (Renee Madison / Alice Wakefield), Balthazar Getty (Pete Dayton), Robert Blake (The Mistery Man), Robert Loggia (Mr. Eddy / Dick Laurent), a. o.

ミュージシャンのFredがその妻Reneの不義を疑う余り妻とその情夫 Dick Laurent を殺すという Wozzeck [鑑賞メモ] (もしくは Woyzeck [鑑賞メモ]) のような妻殺しの物語と、 自動車整備工の Pete がマフィア Mr. Eddy の情婦 Alice との破滅的な恋に落ちるという Lulu [鑑賞メモ] (もしくは Die Büchse der Pandora [鑑賞メモ]) のような宿命の女 (famme fatale) の物語を、 二つ絡み合わせた上で、一捻りしてメビウスの輪状に巡る物語としています。

ポルノ映画制作を手がけるマフィアMr. EddyとDick Laurentは同一人物で、 瓜二つのReneeとAliceはそのマフィアの情婦かつポルノ女優であることが暗示されます。 妻を殺して収監されたFredが獄中でPeteと入れ替わり、Peteが逃避行先でFredと入れ替わり、Fredが追ってきたDickを殺し、 冒頭の場面の反対側からの再現、自宅へ戻ってインターフォン越しにDickの死を自分へ告げて終わります。 Twin Peaksでは心の闇をBobとして描いていましたが、 この Lost Highway でのThe Mistery Manは伴奏者。 むしろ、妻殺しの男Fredの情念に取り憑かれたPeteが宿命の女で破滅し、 宿命の女で破滅した男Peteの情念に取り憑かれたFredが妻殺しする、 そんな、業を負ったの男の輪廻を見るようでした。

もちろん、そんな物語的な枠組みを使いつつ、The Mystery ManのようなLynchらしい登場人物はもちろん、 FredとReneeのモダンな住宅 (Davin Lynchの自宅) の玄関先の階段にビデオテープ入り封筒が置かれることで始まる導入の不穏なスリラー的展開や、 PeteとAliceの逃避行先の荒野の中に立つ古物商の木造の建物や、その炎上を逆回しする幻想シーン、 その前でのヘッドライトに照らされてのPeteとAliceのラブシーン (添えられる音楽はThis Mortal Coilの“Song To The Siren”) など、 現実と幻想、妄想が混在する魔術的な映像を楽しみました。

2000年前後に観た時は全く頭に無く難解に感じた物語ですが、 今観るとまさに Wozzeck + Lulu で、 むしろ、Alban Bergのオペラの題材選びの現代性に気付かされました。

Twin Peaks: Fire Walk With Me (4K restoration)
a David Lynch film.
『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間 4K』
1992 / CIBY Pictures (Fr) / 2017 (4K restoration) / mk2 films (Fr) / 134 min. / 1.85:1 / DCP.
Production Design by Patricia Norris; Edited by Mary Sweeney; Director of Photography: Ron Garcia; Music Composed by Angelo Badalamenti; Written by David Lynch and Robert Engels; Directed by David Lynch.
Sheryl Lee (Laura Palmer), Moira Kelly (Donna Hayward), David Bowie (Special Agent Phillip Jeffries), Chris Isaak (Special Agent Chester Desmond), Harry Dean Stanton (Carl Rodd), Kyle MacLachlan (Special Agent Dale Cooper), a. o.

1990年から1991年にかけて放送されたTVドラマシリーズ Twin Peaks の The First Season, The Second Season の前日譚を描いた映画です。 Laura Palmerの、Bobに取り憑かれた父による性的虐待、コカインに中毒する様子や娼窟・カジノOne-Eyed Jackで売春する姿を描くなど、 TVドラマシリーズでは幻想的な映像や関係者のセリフで仄めかして視聴者の想像に委ねていた部分のネタバレをする一方、 先立つ未解決事件であるTeresa Banks事件やその捜査中のChester Desmond捜査官の失踪などの描写で、ますます謎めくような映画です。

The First Season, The Second Season の Twin Peaks は田舎町Twin Peaksの名士たちの闇を描く面が強く、 Jamesの叔父で自動車修理店のEd Hurleyやダイナーを切り盛りするNorma Jenningsなど、名士という程ではない主要登場人物もいますが、 いわゆる貧困層の描写はほとんど見られません。 しかし、この映画では、身寄り無くトレーラ・ハウス住まいのTeresa Banksや、トレーラー・パーク管理人Carl Roddも登場します。 今回観直して、そんな所に、TVドラマシリーズ Twin Peaks で不可視化されていたものを観るように感じられました。

映画を観たことをきっかけに、TVドラマシリーズ Twin Peaks も見直し始めました。 2000年前後に観た当時は、ポストモダニズム的なモダニズム批判の延長で、20世紀半ばの古き良きアメリカ、近代の夢が20世紀末には不気味なものになってしまったということを描いているように感じていました。 しかし、今改めて観ると、名士たちの闇や貧しいトレーラーパークなど、 古き良きアメリカ以来の豊かな中流階級が崩壊していく時代の雰囲気をLynch的なセンスで描いていたのかもしれない、と感じられました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

これを期にBluray DiscでTwin Peaksを見直し始めたものの、 まだ The Second Season半ば、未見のA Limited Event Seriesに辿り着けていません。 それにしても、TVドラマシリーズは時間が溶けます……。

[4251] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 30 22:34:14 2025

21日は野暮用のため休暇。野暮用は早々に済ませて午前中のうちにん清澄白河へ。この展覧会を観てきました。

Ryuichi Sakamoto | seeing sound, hearing time
東京都現代美術館 企画展示室1F/B2F, 中庭, サンクン・ガーデン
2024/12/21-2025/03/30 (月休;1/13,2/24開;12/28-1/1,1/14,2/25休), 10:00-18:00 (3/7,14,21,28,29 -20:00).
コラボレーション・アーティスト: 高谷 史郎, 真鍋 大度, Carlsten Nicolai, Apichatpong Weerasethakul, Zakkubalan, 岩井 俊雄; スペシャル・コラボレーション: 中谷 芙二子.

2023年に亡くなった 坂本 龍一 が生前に遺した東京都現代美術館のための構想に基づく展覧会です。 いわゆる回顧展ではなく、資料展示はありましたが20世紀のミュージシャンとしての活動を紹介するものではなく、 21世紀に入ってからの 高谷 史郎 (Dumb Type) [鑑賞メモ] や 真鍋 大度 (Rhizomatiks) [鑑賞メモ] といった作家とのコラボレーションによる大型のインスタレーション作品を集めた展覧会でした。

半数近くを占めた 高谷 史郎 とのコラボレーション作品は、映像の断面を横に引き伸すようなプロジェクションや薄く張った水面を使ったインスタレーションなど、 今まで観たこともある作風の作品の変奏で、よくも悪くも予想を裏切らないもの。 舞台作品『Time』 [鑑賞メモ] に基づくインスタレーションもありましたが、 舞台を観た時も感じたのですが、スタイリッシュなかっこよさがあり、 よく言えば映像に寄り添う音なのですが、少々説明的で感傷的に感じてしまう所がありました。

そんな中で、坂本 龍一+Zakkubalan 《async-volume》 (2017) は、 坂本のニューヨークのスタジオ、リビングや庭などの日常を切り取った断片的な映像のループを 24台のiPhone / iPad で上映した作品で、 いわゆる「液晶絵画」[鑑賞メモ] 的な作品なのですが、 その題材やサイズ感が、大仰な絵画というよりさりげない素描や小版の版画を見るよう。 「液晶絵画」でもこれができたか、と。

屋外のサンクン・ガーデンでは 坂本 龍一+中谷 芙二子+高谷 史郎 《LIFE-WELL TOKYO》霧の彫刻 #47662。 久々に 中谷 芙二子 の霧の彫刻 [鑑賞メモ] を楽しみました。 が、昼で 高谷 史郎 の光の演出もわからず、坂本 龍一 の音も印象に残らず、少々物足りなさも残りました。

1月の手術入院に年度末繁忙期が重なり、行くのが会期末近くになってしまいました。 チケット購入に1時間余 (オンラインチケット購入済みだったのでこれは回避)、入場に1時間余という長い待ち行列でした。 混雑は覚悟していたのですが、大型インスタレーション作品中心だったこともあり、会場内の混雑はさほど苦ではなく、期待以上に作品と向かい合えました。

MOT Annual 2024: on the imagined terrain
東京都現代美術館 企画展示室3F
2024/12/14-2025/03/30 (月休;1/13,2/24開;12/28-1/1,1/14,2/25休), 10:00-18:00.
清水 裕貴, 川田 知志, 臼井 良平, 庄司 朝美.

東京都現代美術館のアニュアルの現代アートの展覧会 [昨年度の鑑賞メモ] ですが、 今年は作家を4人に絞っていましたが、作風はそれぞれ大きく異なり、4人の個展をそれぞれ観るようでした。 大連の海岸と東京湾の映像とそこを舞台としたフィクション小説の朗読からなる 清水 裕貴 のスタイリッシュなインスタレーションにも引かれましたが、 普段は無いものとしてあえて意識に入れないような無機質な工事現場の仮囲いやブルーシート、捨てられて空のペットボトルを 作品として前景化するような 臼井 良平 の殺風景なインスタレーションが最も印象に残りました。

MOT Collection: Seven Beauties in the Bamboo Forest / Small Glow / Pre-30th Anniversary Exhibit: Leiko IKEMURA Mark Manders / Rising Light/Frozen Moment
東京都現代美術館 コレクション展示室
2024/12/14-2025/03/30 (月休;1/13,2/24開;12/28-1/1,1/14,2/25休), 10:00-18:00.

女性作家7人の展示の「竹林之七妍」[鑑賞メモ は若干の展示替えをしつつ継続。 福島 秀子 の舞台美術・衣装デザインの展示 [鑑賞メモ] が出て来なかったのは残念ですが、平面作品を多く観られました。 他にも、Olafur Eliasson, イケムラケイコ, Mark Mandersなどを楽しみました。

坂本 龍一 展の観客が『MOTアニュアル』や『MOTコレクション』へも多少は流れてるだろうと予想しましたが、さにあらず、 こちらの展示室はいつも通り、大行列混雑が嘘幻のように閑散としていました。 おかげでゆっくり作品と向かい合いながら混雑疲れを癒すことができました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

2日続けての大行列の展覧会。 自分の行く展覧会は空いていることがほとんどなので、2日連続というのは我ながら珍しいです。 坂本展の入場列に比べたら、前日のDIC川村記念美術館はまだ優しく感じるほど、 3月頭の evala 展も入場列がありましたが比べたら無いに等しい程度でしょうか。 会期末近くになる前に、さっさと行ってしまえば良かったのですが、 1〜2月はそうもいかなかったので、仕方ありません。

[4250] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Mar 24 22:07:19 2025

春分の日20日は午前中早めに家を出て、10時半頃には佐倉へ。この美術館へ行ってきました。

『DIC川村記念美術館 1990-2025 作品、建築、自然』
Kawamura Memorial DIC Museum of Art 1990-2025: Art Architecture, Nature
DIC川村記念美術館
2025/02/08-2025/03/31 (月休,2/24,3/31開,2/25休), 10:30-17:00.

資産効率の観点からの「価値共創委員会」の助言を受け、 保有・運営するDIC (旧社名:大日本インキ化学工業) から2024年8月27日に運営見直しの発表のあったDIC川村記念美術館は、 結局、作品保有数1/4で都内移転という「ダウンサイズ&リロケーション」の方針が決まり、 DIC総合研究所や庭園と隣接する佐倉の美術館は3月31日で閉館となりました。 それを受けて開催された、企画展示室を含む全館を使用した現在のコレクションの展示するこの美術館での最後の展覧会です。 というわけで、見納めに足を運びました。

19世紀後半の Impressionism、20世紀初頭の École de Paris や戦間期 Avant-Garde や、1970年代以降の作品も少なから展示されていましたが、 やはり戦後 (1945-1970) のアメリカ美術がコレクションの核の美術館だったのだと実感する展覧会でした。 それも、常設の展示室を持った Mark Rothko [鑑賞メモ] や Barnett Newman (2013年に売却してしまったため、本来 Barnett Newman を常設展示していたギャラリーを今回の展覧会では空にしていた)、 また今回の展覧会でも1ギャラリーを充てていた Frank Stella などの Color Field Painting の系譜です。 シュルレアリズム的な表現では、欧州の作家ではなく、そこから少々外れるアメリカの作家 Joseph Cornell [鑑賞メモ] で1ギャラリーを作れる、 というのも、この美術館らしいでしょうか。

JRや京成の駅からもバスで数十分かかる少々不便な場所で、数年に1度程度の頻度でしか足を運んでいませんでしたが、 池もある広々とした緑豊かな庭園の中にあり、日常から離れての日帰り小旅行で展覧会を味わうのにはむしろ良い環境にある美術館だと思っていました。 完全に終わるのではなく縮小して都心へ移転だとしても、かなり残念です。

閉館間際の休日に行ったこともあり入館に長蛇の列が出来る混雑で、10時45分頃に着いたものの、入館に30分程かかりました。 Mark Rothkoの部屋にも行列が出来ていましたが、こちらは10分程度の待ちで済みました。 ゆっくり作品と向かい合える環境ではなかったのは少々残念でしたが、 今までこの美術館でこんなに混雑した状況を体験したことが無かったですし、こう事も含めてまた一つの美術体験でしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4249] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 23 21:03:43 2025

先週末土曜は、2週続けて初台へ。夕方に美術展を覗いた後、晩にバレエを観てきました。

The National Ballet of Japan: Ballet Coffret
新国立劇場オペラパレス
2025/03/15, 18:30-20:50.
指揮: Martin Yates.
新国立劇場初演: 2010年10月.
L'Oiseau de feu [The Firebird]
『火の鳥』
Choreography: Michel Fokine.
Music: Igor Stravinsky.
Set Designer: Dick Bird; Costume Designer: Natalia Goncharova; 照明: 沢田 祐二.
出演: 小野 絢子 (火の鳥), 奥村 康祐 (イワン王子), 益田 裕子 (王女ツァレヴナ), 小柴 富久修 (魔王カスチェイ).
Premiere: 1910-06-25, Ballets Russes, L'Opéra de Paris; 新国立劇場初演: 2010年10月.
The Vertiginous Thrill of Exactitude
『精確さによる目眩くスリル』
Choreography: William Forsythe.
Music: Franz Schubert. Allegro Vicance from Symphony No. 9 in C-Major, D944.
Stage Designer: William Forsythe, Costume Designer: Stephen Galloway, Lighting Desinger: Tanja Rühl; Staging: José Carlos Blanco.
出演: 米沢 唯, 直塚 美穂, 根岸 祐衣, 速水 渉悟, 渡邊 峻郁, a.o.
Premiere: 1996-01-20, Ballett Frankfurt, Oper Frankfurt; 新国立劇場新制作.
Études
『エチュード』
Choreography: Harald Lander.
Music by Knudåge Riisager after Carl Czerny.
Staged by Johnny Eliasen; Artistic Advisor: Lise Lander; Original Lighting Design: Harald Lander; 照明リプロダクション: 鈴木 武人.
出演: 木村 優里 (プリマ・バレリーナ), 井澤 駿 (プリンシパル), 福岡 雄大 (プリンシパル).
Premiere: 1948-01-15, Den Kongelige Ballet, Det Kongelige Teater; 新国立劇場新制作.

現代の演目が減ってしまい暫く足が遠のいてしまった新国立劇場バレエ団ですが、 20世紀の演目からなるトリプルビル、それも全て観たことない作品ということで、 2年余ぶりに足を運んでみました [鑑賞メモ]。

前半は Ballets Russes で知られる L'Oiseau de feu 『火の鳥』、20世紀初頭、第一次世界大戦前の物語バレエです。 その音楽を聴いたことはありましたが、バレエの上演として観るのは初めてでした。 第一幕こそ王子や火の鳥のソロがメインの構成ですが、 第三幕の魔物たちの力強い踊りから優雅な囚われの王女たちの踊りまでの大人数をかけた目眩く展開の群舞は見応え抜群でした。 ここまで大人数とは思っていなかったので、この展開の音楽にこういう群舞が付いてたのかと、感慨深いものがありました。

休憩を挟んで後半は対照的にノンナラティヴな作品。 まず、William Forsythe による20世紀末近い1990年の The Vertiginous Thrill of Exactitude。 Forsythe にしては珍しく電子音ではなくクラシックの音楽を使いバレエ・テクニックに基づく作品ですが、 少々早回しに感じるほどのスピード感はエレガントというより機械的。 ダンサーの配置の幾何的な絶妙さも Forsythe らしいでしょうか。 バレエ・カンパニーのレパートリーになっていることも多いようですが、 チュチュの形状を引用した衣装もあって、クラシカルなバレエのポストモダンな脱構築というか、 バレエの身体語彙を引用したコンテンポラリー・ダンスの印象を強く残しました。

続く Études は戦後間もない1948年の作品。 バレエ・レッスンの形を使いつつ、ライティングやダンサーの幾何的な配置でバレエ・テクニックの本質的な部分を抽出することで、抽象化するよう。 チュチュもクラシカルな物で、20世紀半ばのモダニズム的な抽象化としての抽象バレエを観るよう。 同じ抽象的なバレエでも、直前の Forsythe の作品とコントラストを成し、その方向性の違いを強く感じました。

Forsythe の作品を目当てに観に行ったのですが、L'Oiseau de feu も堪能できましたし、 20世紀初頭の前衛前夜の物語バレエ、ミッドセンチュリーモダンな抽象バレエ、20世紀末ポストモダンな脱構築バレエという 20世紀のある種の流れを感じさせるという点でとても興味深いプログラムでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4248] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Mar 17 23:37:50 2025

先々週末土曜の三軒茶屋の後、そして、先週末土曜の夕方と、二週続けて初台へ。 これらの展覧会を観てきました。

Emerging Site / Disappearing Sight
NTTインターコミュニケーション・センター
2024/12/14-2025/03/09 (月休;月祝開,翌火休;12/28-1/3,2/9休), 11:00-18:00.

2000年代以降活動する音楽家、サウンドアーティストのevala (江原 寛人) の個展です。 会期末の週末に駆け込んだこともあり、入場列ができるほどの混雑でした。

2017年以降に手がけている「See by Your Ear」シリーズを核とした展示で、 新作《ebb tide》 (2024) では、海から突き出た磯の大岩のような暗色の構造体 (ただし表面はスポンジで覆われゴツくはない) がブラックボックス化したギャラリーの中央に置かれ、そこで潮騒に耳を傾けるかのような没入型のインスタレーション 潮騒か雨音かのようなさざめきと轟くような雷鳴、と、稲妻のようなフラッシュ光。 岩に取り付く余裕もない混雑で没入し難いものがありましたが、 人が多くなければ嵐の中で取り残されたような気分になれたのかもしれません。

昨年のBunkamuraでのインスタレーション [鑑賞メモ] が第一作となったという「音の芽吹き」シリーズの《Sprout “Fizz”》 (2024) は、 サイトスペシフィックな興味深さは後退したものの、スピーカーが多様になって視覚的にはグッと面白くなりました。

環境音などのフィールドレコーディングされた音を使いつつも、 例えば Susan Philipsz [鑑賞メモ] のような音楽的でナラティブなサウンドインスタレーションではなく、 映像を想起させつつもむしろテクスチャ的な音を志向したサウンドアートでした、 生成AIを使った習作《Studies for》を聴きつつ、雨音は「evalaのような音」かもしれないと思いつつも、 それは『Rain』 [鑑賞メモ] の印象に引きずられているかもしれません。

今津 景
Kei Imazu: Tanah Air
東京オペラシティ アートギャラリー
2025/01/11-2025/03/23 (月休;月祝開,翌火休;2/9休), 11:00-19:00.

2000年代以降に現代アートの文脈で活動するインドネシア・西ジャワ州バンドン在住の作家の個展です。 グループ展で観たことがあるかもしれませんが、作家を意識して観るのは初めてです。

インドネシアに日本軍が遺した事や、開発に伴う環境問題、自身のインドネシアでの出産経験などを題材に、 絵画や立体作品などを組み合わせたインスタレーションとして仕上げていました。 といっても、題材への理解を深めるものではなく、あくまで造形を着想する際のキックでしょうか。 絵画はシュールレアリスティックなコラージュのような作風 (コンピュータ上で画像を合成した後で油彩として仕上げている) で、 立体作品も含めて髑髏のようなモチーフが多用されているものの、 「おぞましきもの」というほどではなく、むしろ明るくあっけらかんとした印象を受けました。

収蔵品展は『紙の上の芸術』。 具象的なドローイングというより抽象の水彩や版画を中心とした構成。 ここの収蔵品らしいといえばそうなのですが、 淡くテクスチャ的ながら疎らなリズムを感じる作品が多く展示されていました。 特にキャッチのある作品があるというわけではありませんでしたが、 今の自分にとっては、作品に落ち着いて向かい合える展示でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4247] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 16 22:12:06 2025

先週末の土曜は冷たい雨模様。2週連続で午後に三軒茶屋へ。このコンテンポラリー・サーカスの公演を観てきました。

2025/03/08 15:00-16:00
演出・出演: 目黒 陽介; 音楽監督: イーガル; ピアノ演奏: 菊池 智恵子.
初演: 2022年.

コンテンポラリーサーカスのカンパニー ながめくらしつ の『うらのうらは、』 (2018) [鑑賞メモ] 以来7年ぶりのシアタートラム公演は、 2022年に初演した主催の 目黒 陽介 によるピアノ生伴奏による約1時間のジャグリング・ソロです。

最初のボールジャグリングの時こそ、ストールや後方の壁を使い、時には不安定な姿勢でのジャグリングを見せたり、壁に足をかけて逆さまの姿勢になったりしましたし、 上手に小さなテーブル等を置いて道具を置いたり、天井から下げたフックに道具をかけたりしましたが、 基本、ジャグリングに使う道具以外の道具はほぼ使わず、ビデオプロジェクションも床に抽象的なムラを投影する程度。 ボールやリングは白いものの、ブラックボックスに黒い衣装、壁やデーブルやストールも暗色、 音楽もピアノソロというミニマリスティックな演出です。 ナラティブなプロットも感じさせず、難易度の高い技をスリリングにみせることもなく、 ジャグリングする際の滑らかなな動き、そして、ジャグリングされるものが作り出す視覚的なパターンを見せることに強く焦点が当たっていました。

最初はボールジャグリングで、続いてリングを使ったジャグリング。 三番目は重心が偏ったボールを使い、そのボールを床を円を描くようにころがしてのジャグリング。 ラストはコンタクトジャグリング。 様々に姿勢を変得てのボールジャグリングや、不規則なポルカドットを作るかのように床に撒かれたリングなど、 前半の方がキャッチーに感じられましたが、そこで引き込まれてこそ、後半の静かな動きが生きるということもあるでしょうか。

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[4246] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Mar 11 23:12:59 2025

先々週末の土曜は午後に三軒茶屋へ。このコンテンポラリー・ダンス公演を観て来ました。

世田谷パブリックシアター
2025/03/01, 15:00-16:00.
Choreografie: Sharon Eyal.
Künstlerische Beratung: Gai Behar; Kostüme: Rebecca Hytting; Komposition: Ori Lichtik; Licht und Bühne: Alon Cohen; Choreografische Assistenz: Rebecca Hytting, Keren Lurie Pardes.
Tänzer*innen: Amber Pansters, Maasa Sakano, Marija Slavec-Neeman, Zachary Chant, Finn Lakeberg, Cornelius Mickel. (Matti Tauru)
Produktion: Staatstheater Mainz
Premiere: 2021-11-28.

ドイツ・ラインラント=プファルツ州の州都マインツ (Mainz, Rheinland-Pfalz, DE) の州立劇場 Staatstheater Mainz 付きのダンスカンパニー tanzmainz の初来日公演です。 バレエではなくコンテンポラリーダンスをレパートリーとしていて、今回の公演では ex-Batsheva Dance Company の振付家 Sharon Eyal が tanzmainz に振り付けた作品を上演しました。 Sharon Eyal の作品は去年の Nederlands Dans Theater 来日公演で観る機会がありましたし [鑑賞メモ]、 ストリーミングでですが Staatsballett Berlin の上演も観たことがあります [鑑賞メモ]。

舞台美術をほとんど使わず彩度の低いボディスーツのような衣装というミニマリスティックな演出と、 舞台正面向きで先立ちと身を寄せ並ぶようなフォーメーションでの脈動するような群舞が特徴的という点は、今までに観た作品と変わらず。 その点では今まで観た作品の変奏のようというのが印象は否定できません。 しかし、長さが最も長かったこともあり、今までの観た中では最も展開が感じらました。

コロナ禍で劇場が閉鎖状態となった中で制作された作品とのことでしたが直接的にそれを表現してはおらず、 「希望」というテーマ選びにその状況が伺われます。 2人が両手を繋いで輪というかハート型を作るような動きや、祈り見上げるようなポーズ、 ラスト近くで天井から降りてくる星空のようなまばらで小さな点々とした照明。 音楽もミニマル・テクノを基調とするものの Rawhide のテーマがサンプリングされたりと具体的なフレーズが耳を捉えることもありました。 そんな、ミニマリスティックな演出や反復を基調とした動きの中のささやかな変化や逸脱の中から、 ドラマ的な展開がうっすらと浮かび上がるようでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4245] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 9 17:26:01 2025

2週間前の話になってしまいましたが、3連休初日の2月22日土曜は昼に渋谷宮益坂上へ。この映画を観てきました。

Los Hiperbóreos [The Hyperboreans]
2024 / León & Cociña Films (CL), Globo Rojo Films (CL) / 71 min. / 1.85:1 / 5.1ch.
un film de León & Cociña.
Elenco: Antonia Giesen, Francisco Visceral, Jaime Vadell, Marcelo Liápiz, Álvaro Morales; Dirección de fotografía: Natalia Medina Leiva; Dirección de arte: Natalia Geisse, Cristóbal León, Joaquín Cociña; Diseño sonoro: Claudio Vargas; Música original: Valo sonoro; Escrita por Cristóbal León, Joaquín Cociña, Alejandra Moffat; Dirigida por León & Cociña.

実寸規模のセットや人形を作りインスタレーション展示しながらのストップモーション・アニメーション La casa lobo [The Wolf House] 『オオカミの家』 (2018) [鑑賞メモ] で知られるチリの2人組ユニット、León & Cociña の新作です。 新作では俳優が実写で登場することもありストップモーション・アニメーションの要素が後退、 俳優の演技も映画的なリアリズムではなくマイムの要素も多い舞台作品的なこともあり、 ブリコラージュ感溢れるオブジェを駆使した人形劇一人芝居の収録映像をベースに、 ストップモーション・アニメーションや編集による効果も加えて映像作品として仕上げたよう。

観ていて、むしろ、人形劇やアニメーションを交えたマルチディシプナリーな舞台作品 Tim Watts の The Adventures of Alvin Sputnik: Deep Sea Explorer [鑑賞メモ] や It's Dark Outside [鑑賞メモ]、 Stereoptik: Dark Circus [鑑賞メモ]、 1927: The Animals and Children took to the Streets [鑑賞メモ]、 Kid Koala: Nufonia Must Fall [鑑賞メモ] に近い感覚になりました。 カメラが引いて舞台裏まで写し込んでいくエンディングは Philippe Parreno のビデオ・インスタレーション作品 Marilyn [鑑賞メモ] と同じ。 そういう点でも、舞台作品やアート・インスタレーション作品など様々なジャンルから合流しているマルチディシプナリーな作品の、 映像の側からアプローチを観るような興味深さがありました。

物語は、外交官、詩人でナチズムの信奉者として Augusto Pinochet 軍事政権時代にネオナチ運動を組織した Miguel Serrano と、 Pinochet 軍政時代の文民部門の中心人物 Jaime Guzmán を題材としたもの。 俳優にして臨床心理士の Antonia Giesen を訪れた患者の幻聴が Miguel Serrano のものだったことを切っ掛けに、 Giesen は物語中の世界に迷い込んで行き、国の指令で機密が記録された映画を追いかけるうちに、Guzmán によって自身のコピーを総統2.0にされてしまう、という、 かなりシュールレアリスティックで荒唐無稽感のある冒険物語です。 しかし、2025年1月20日の Donald Trump の二期目のアメリカ大統領就任移行の“Trump 2.0”を思うと、 そんな物語にも一定のアクチュアリティを感じざるを得ません。

Cuaderno de Nombres [Notebook of Names]
『名前のノート』
2023 / Centro para las Humanidades UPD (Universidad Diego Portales) / 8 min. / blanco y negro / 1.85:1.
Elenco: Nina Salvador. Música original: Valo sonoro. Escrita por Alejandra Moffat, Cristóbal León, Joaquín Cociña Dirigida por León & Cociña

こちらは、Pinochet 軍事政権下で多くの未成年者が行方不明となったことを、 ノートへのメモやドローイングが動き出すようなドローイングアニメーションを使って想起させる作品です。 静かな合唱の響と色彩感を抑えた画面で、行方不明者を追悼するかのような作品でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

本業の年度末に繁忙期に加え、自宅のPCの故障もあって、この3連休はほとんど身動き取れませんでした。仕方ありません。

[4244] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 2 18:51:56 2025

2週間前の話になってしまいましたが、2月15日土曜は昼に横浜伊勢佐木長者町へ。 横浜シネマリンの『柳下美恵のピアノdeフィルム vol.14』で、このサイレント映画をピアノ伴奏付きで観ました。

『女學生と與太者』
1933 / 松竹鎌田 / 98 min. / 35 mm / 白黒 / サイレント.
監督: 野村 浩将; 原作・脚色: 池田 忠雄.
磯野 秋雄 (磯野), 三井 秀男 (三井), 阿部 正三郎 (阿部), 水久保 澄子 (北嶋 和子), 吉川 満子 (その母 静江), 若水 絹子 (三好 絹子), 斎藤 達雄 (校長), 飯田 蝶子 (校長夫人), 瀧川 玲子 (近藤 邦子), 坂本 武 (その父 憲三), etc.

1930年代前半に松竹蒲田の野村 浩将 監督が磯野、三井、阿部の與太者トリオで撮ったサイレント映画「與太者シリーズ」全11作中 (ただし第11作は三井抜き、第11、12作はサウンド版) の第8作です。 第1作『令嬢と與太者』 (1931) [鑑賞メモ] では 3人は與太者本来の意味である不良青年で、彼らの更生の話でした。 しかし、シリーズもこの頃になると彼らのキャラクターの位置付けも、少しダメで悪い所はあるけれども根は良い青年となります。

この作品では、阿部こそ犯罪グループから足抜けできずにいますが、三井は元ボクサーで喧嘩早くて警察の厄介になったこともあるけれども更生済み、磯野は美術学校を目指してペンキ屋として働いています。 水久保 澄子演じるヒロイン 和子は、小学生の教師だった父を亡くし、母と貧しい二人暮らし。 和子が與太者に絡まれている所を阿部と三井が助けたのをキッカケに、 3人の小学校時代の恩師が和子の父だったこともあり、3人は和子の希望をかなえ裁縫学校に進学させます。 裁縫学校の生徒は裕福なお嬢様ばかりで和子は馴染めず、三好先生の教えもあり優秀な成績を収める物の、他の生徒に妬まれ、三好先生の立場も危うくなります。 そんな状況に対しても3人はなんとかしようと奮闘していきます。

ヒロイン和子を演じた水久保は、同年の 小津 安二郎 『非常線の女』 (松竹蒲田, 1933) [鑑賞メモ] や成瀬 巳喜男 『君と別れて』 (松竹蒲田, 1933) [鑑賞メモ] にも出演しています。 裁縫学校校長母の斎藤、校長夫人役の 飯田、ヒロインの母役の吉川、裁縫学校のパトロン近藤役の 坂本 など、松竹お馴染みの名脇役の揃っています。 そんな中では、庶民的な和装の中年女性役が多い飯田の洋装というレア物も見られます。 犯罪や犯罪組織の描写などギャング物の映画という面もありながらシリアスに過ぎず、 また、裁縫学校のそれぞれに個性的な装い華やかなお嬢様たちを演じる層の厚い女優陣もさすが松竹らしい、モダンな装いをまとった人情喜劇が楽しめました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

2月13日、自宅用のiMac (Retina 5K, 27-inch, 2017)が故障してしまいました。 起動ドライブ不良で、Fusion Drive 3TBのうちSSD 128GBしか認識されていないので、HDD故障と判断。 現行の24-inchのみのiMacへの移行はあり得ないので、HDD交換してもらうつもりで、Genius Barを予約して、15日土曜朝一番に担ぎ込みました。 やはりHDD故障だったのですが、部品が無く正規の修理はできないとのこと。 約8年さすがに寿命かと、非正規修理ではなく、Mac miniへの移行を決断しました。 Mac mini本体は店頭から持ち帰ったものの、周辺機器やケーブルは週末には間に合いませんでした。 結局、平日の晩に、少しずつ環境再構築の作業をしました。 バックアップはTime Machineにあったのですが、内蔵ストレージが激減したので、移行アシスタントでそのまま持ってくるわけにもいきません。 OSもVentura (13) から Sequoia (15)へ一気に上がるので、これを期にアプリケーションは使っている物だけインストールし直し。データは手動で戻しました。 外部ストレージをAPFSでフォーマットし直さず出荷時のexFATのまま再構築を進めてしまうという大ポカをして再構築をやり直したということもあり、 鑑賞メモを書いたり、CDをリップしたりする環境が整い、その時間もとれるようになったのは、3連休最終日、故障から12日目でした。

単に環境を再構築するだけでは面白くないので、Korg DS-DAC/ADC-10Rを使ってレコードプレーヤーをMac miniへ接続しました。 実は8年前の転居の際にそうしようかと考えていたのですが、iMacが想像以上に重量と奥行きがあったため、出来ずにいたのでした。 これで手軽にレコードを再生したりデジタル化することができるようになりました。 そんな8年前の構想を実現する契機が得られたというのが、今回の怪我の功名でしょうか。

1月は手術入院、2月はPC/HDD故障、と、今年は厄災続きの始まりになってしまいました。 世界もTrump 2.0でその秩序が音を立てて崩壊している感もありますし、 国内でも政治経済の問題はもちろん八潮道路陥没事故に大船渡山林火災と災害が続いていて、心安からぬ日々が続きます。

[4243] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Feb 24 22:12:19 2025

約2週間前の話になってしまいましたが、2月11日祝日は昼に恵比寿へ。この美術展を観てきました。

Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions 2025 — Docs: Images and Records
東京都写真美術館 ほか
2024/02/02-02/18 (月休), 10:00-20:00 (2/18 -18:00)

東京都写真美術館主催のアニュアルの映像芸術展 [去年の鑑賞メモ] ですが、今年もメイン会場の展示を中心に観ました。

2023年から始まったコミッション・プロジェクトは全体テーマもあってドキュメンタリー映画もしくは それを批判的に継承したものを核としたインスタレーションを作風とするものが揃っていました。 このような作品に対してはドキュメンタリー映画としてストレートに撮ったほうが扱っている問題が伝わるのではと思ってしまうことが少なくありませんし、今回もそう思うところはありました。 しかし、今回の4作家の中では、マッコリを通して朝鮮半島での米品種と醸造技術の植民地化、近代化に取材した 永田 康祐《Fire in Water》が最も興味を引かれました。 といっても、その作品の形式の面白さというより、扱っている題材が自分の興味に合ったのですが。

コミッション・プロジェクト以外の展示で印象に残ったものといえば、 野外を含めて大型小型様々なディスプレィにメッセージ、引用された言葉をシンプルに投影した Tony Cokes の作品に、 デジタルサイネージ時代の Barbara Kruger / Jenny Holzer 的な表現を感じました。

神話の普遍性に着想したという 劉 玗 [Liu Yu], If Narratives Become the Great Flood (2020) は、 その着想源の深さというより、そこを起点に立体へのプロジェクションマッピングを含めた視覚の遊びを感じる仕上がりでした。

Apichatpong Weerasethakul, a BOX of TIME (2024) は、 ビデオから様々な間隔で切り出した一連のスチルをカード化したもの。 観客はそれを手に取ってめくりつつ観ていきます。 短時間間隔のものは1枚ごとの変化がほどんどなくまるで凍結した時間を切り出したよう。 そこから、いかにもコマ撮りのように動きを感じるものを経て、 長時間感覚のものではストーリーを感じる異なる場面の連続へ。 同じ主砲ながら時間間隔を変えるだけで、これだけ受ける印象が変わるものかと、面白く感じました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4242] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Feb 11 21:12:54 2025

先の週末土曜は夕方に与野本町へ。このダンス公演を観てきました。

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
2025/02/08, 17:00-19:00.
『過ぎゆく時の中で』
約15分
演出振付: 金森 穣.
音楽:John Adams, The Charman Dances 衣裳: 堂本 教子, 中嶋 佑一.
出演: Noism0: 金森 穣; Noism1: 三好 綾音, 中尾 洸太, 庄島 さくら, 庄島 すみれ, 坪田 光, 樋浦 瞳, 糸川 祐希, 太田 菜月, 兼述 育見, 松永 樹志 (準メンバー).
初演: 2021年8月13日, TOKYO MET SaLaD MUSIC FESTIVAL 2021 [サラダ音楽祭].
『にんげんしかく』
約40分
演出振付: 近藤 良平.
音楽: 内橋 和久 《Singing Daxophone》; 衣裳: アトリエ88%.
出演: Noism1: 三好 綾音, 中尾 洸太, 庄島 さくら, 庄島 すみれ, 坪田 光, 樋浦 瞳, 糸川 祐希, 太田 菜月, 兼述 育見, 松永 樹志 (準メンバー).
『Suspended Garden-宙吊りの庭』
約30分
演出振付: 金森 穣.
音楽: Tôn Thất An, 映像: 遠藤 龍, 衣裳: 鷲尾 華子.
出演: Noism0: 井関 佐和子, 山田 勇気; ゲスト: 宮河 愛一郎, 中川 賢.

りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 の劇場付きダンスカンパニー Noism Company Niigata [鑑賞メモ] の2024/2025シーズンの冬公演は、 ゲストの振付家にコンドルズの近藤 良平を迎えてのトリプルビルでした。

最初の『過ぎゆく時の中で』は、初演時は音楽祭の中でのオーケストラの前での上演とのこと。 奥行きのない横長の空間を使い、舞台下手から上手に向かって時が流れるように人々 (ダンサー) が流れていきます。 そんな中を、男 (金森) がゆっくりながら着実に歩みを進めていきますが、 男女が歩む男に絡んだ時は流れが止まり、時も止まったよう。 ラスト、追い越して行ったダンサーが背景幕の向こうにシルエットで浮かび上がり、 歩む男が客席に背をむけ彼らに手を伸ばした時、男が向きを変えたのではなく、映像を捉えるカメラが動いたかのような感覚にもなりました。 短い作品でしたが、このトリプルビルの中では最も気に入りました。

2作目はゲスト振付家の近藤が Noism1 に振付た新作『にんげんしかく』。 近藤がNoismに振付るのは19年ぶりとのことですが、自分が観るのは初めて。 ダンボール箱のを使ったシンプルでミニマリスト的な舞台ながら、 その箱から人格が現れるかのように中からダンサーが現れて踊ります。 シャープな踊りで見せるというより、セリフではないものの声も使ったわちゃわちゃとしたやり取りや、 音楽も daxophone を使いつつも抽象には徹せず歌うかのようにBella Ciao や What A Wonderful World のようなメロディを浮かび上がらせ、 ダンボールを組み合わせて様々な形を見せていくところは、 Noismとはかなり違うテイスト。やはり、コンドルズっぽかったでしょうか。

ラストは、元 Noism のゲスト2名を迎えての Noism0 に振付た金森の新作『Suspended Garden-宙吊りの庭』。 床と対になるように頭上に、赤や黄の紅葉などの映像を投影しつつ、 コールドのドレスが掛けられたトルソーと光沢のある赤のドレスを着た 井関 を対比させます。 途中で着替えるのかと思いきや、赤のドレスの上にゴールドのドレスを着て、踊ると裾から赤がのぞくところが印象的。 『夏の名残のバラ』 [鑑賞メモ] に近い雰囲気も感じしたし、 『過ぎゆく時の中で』でもあった手を前に差し出すようなポーズがポイントで使われるなど、いかにもNoismらしい作品でした。

『LIFE SCAPER in SAITAMA ARTS THEATER –– ライフ・スケーパー』
彩の国さいたま芸術劇場 ガレリア, 光の庭.
2025/01/21-2025/02/24 (休館日を除く), 9:00-22:00.

劇場1階のガレリアと狭い吹き抜け様のスペースである光の庭を使って、目 [mé]がインスタレーションを展示していました。 といっても、『さいたま国際芸術祭2023』 [鑑賞メモ] や2019年の千葉市美術館 [鑑賞メモ] のように大規模に作り込んだものではなく、むしろさりげなく。 特に、光の庭を使った展示は、中央に落ちていたトゥーシューズは意図的なインスタレーションと思われますが、舞っていた透明なビニール袋は強風で偶然舞い込んだものかもしれない、という、 作品なのかそうでないのか判然としない雰囲気を楽しみました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

2月3日に手術で入れたステントの抜去だったのですが、途中で引っかかってしまい抜くのに1時間以上かかるという大ごとに。 そんなこともあってか、ダメージが大きく帰って寝込んでしまいました。倦怠感と疼くような違和感は翌日まで残りましたが、手術に至らずに済んでよかったでしょうか。 ステントの違和感がなくなり、外出・外食時の不安がなくなったので、金曜晩に退院後初めて、地元の行きつけの店で飲みました。(不調になってもすぐ帰れるように。) 料理もお酒も美味しくいただけ、体調が戻ってきていることを実感。

そんな体調ですので、土曜は大宮の駅ビルで夕食した他は寄り道せず、家と劇場を往復するだけにしたのですが、それでも、帰ったらぐったり。 この週末から軽いながらも花粉症の症状も出始め、飲み始めた花粉症の副作用の眠気というか倦怠感もあります。 そんな良好とは言い難い体調となんとか付き合っている日々です。

[4241] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 26 17:51:06 2025

この週末土曜は午後に渋谷円山町へ。この映画を観てきました。

2023 / Womanray (FR), Cinenovo (FR) / B+W / 70 min. / Standard 4K / DCP.
New restoration of four films by Man Ray. Original music by SQÜRL (Jim Jarmusch / Carter Logan).
L'Étoile de Mer 『ひとで』 (1928), Emak-Bakia 『エマク・バキア』 (1926), Le Retour à la Raison 『理性への回帰』 (1923), Les Mystères du Château de Dé 『骰子城の秘密』 (1929)

1920年前後からニューヨーク、そしてパリの Dada の文脈で活動を始め、 後は第二次世界大戦中を除きパリで活動した写真家・美術作家 Man Ray が1920年代に残した Avant-Garde なサイレントの短編映画4本を、2023年に4Kリストアしたものです。 上映順は L'Étoile de Mer (1928), Emak-Bakia (1926), Le Retour à la Raison (1923), Les Mystères du Château de Dé (1929) と、年代順ではありません。 2023年に上映に合わせ SQÜRL (Jim Jarmusch / Carter Logan) による反即興の伴奏の録音と合わせての上映です。

1920年代のフランスには Henri Chomette によって提唱された 視覚的時間的な構成に焦点を当てたナラティヴではない映画を目指す Cinéma Pur (純粋映画) という Avant-Garde な映画運動があり、 Man Ray の映画もその文脈上にありました。 最初期の2作 Le Retour à la Raison (1923) 約2分、 Emak-Bakia (1926) 約15分は、まさにその典型で、 即物的に撮った写真やフォトグラム、ディストーションやソラリゼーションといった効果をかけた画面がリズミカルに展開します。 Emak-Bakia の方が人物や風景が加わったりストップアニメーションの技法を使ったりとアイデアは多様で、 Le Retour à la Raison はその習作のようにも感じます。 続く L'Étoile de Mer (1928) となると、 男女関係の抽象的ながらナラティヴが展開やあり、映画のタイトルでもある「ヒトデ」に性的な象徴性も感じます。 このような作風の変化に Dada から Surrealism への移り変わりを見るようです。

最後の Les Mystères du Château du Dé『骰子城の秘密』 (1929) は約30分の中編です。 主な撮影の舞台になっているのは、当時のフランスの前衛芸術家たちのパトロンで、この映画の出資者でもあり、出演もしている Charles & Marie-Laure de Noailles 子爵夫妻が 南仏コート・ダジュールの中世の城塞の跡に構えたモダニズム建築の別荘 Villa Noailles (1928) です。 手掛けた建築家 Robert Mallet-Stevens は、UAM (Union des Artistes Modernes) 設立に関わっており、 Marcel L'Herbier の映画 L'Inhumaine 『人でなしの女』 (1924) のセットデザインも手掛けています [関連する鑑賞メモ]。 4Kリストアで鮮明に蘇った当時最新のモダニズム建築やモダニズムやアールデコのデザインの調度品や美術品のディテール、 プール、ウォールバー (肋木)、ジャーマンホイールなどを使ってリクリエーションする別荘での過ごし方、 そしてそれを捉える映像の撮り方までも含めて、当時のモダニズムの雰囲気を堪能しました。 パトロンが最新の流行のデザインを反映した新しい別荘に芸術家たちを招待するついでに、 単なる記録映画を撮るのではなく、寸劇を交えて謎めいた物語仕立で映画化したかような遊び心も感じます。 モダニズムの邸宅を「骰子 (サイコロ) 城」と呼ぶセンスも含め、楽しみました。

今回の上映に付けられた音楽を演奏しているのは、映画監督 Jim Jarmusch と2010年代以降に映画のプロデューサを務める Carter Logan の2人による音楽ユニット SQÜRL です。 2010年代以降の Jarmusch の劇映画の音楽はこの SQÜRL によるものです。 しかし、Paterson (2017) [鑑賞メモ] のような映画と違い、 純粋映画的なサイレント映画ではその音楽の存在感が前に出てきます。 ドローンなギターをベースに Le Retour à la Raison のような場面ではパーカッシヴな音な音を交えた SQÜRL の音楽も、 抽象的かつミステリアスな雰囲気に合っていました。 一方で初演時を再現した音楽を付けての上映で観たいとも思いましたが、それはまた別の機会でしょうか。

記憶も朧げですが、これら Man Ray の1920年代の映画を初めて観たのは確か1980年代半ば (当時高校生)、默壺子フィルム・アーカイブでの自主上映だったように思います。 その後、この4本も収録したDVD 2枚組 Avant Garde: Experimental Cinema of the 1920s and '30s (Kino Video, 2005) も買っています。 最近こそ遠ざかり気味ですが、戦間期 Avant-Garde / Modernism への興味からそれなりに観知った映画でした。 しかし、特に Les Mystères du Château de Dé は、4Kリストアの精細さで改めてその興味深さ、面白さに気付かされました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

既に1週間余り前の話になりますが、1月14日から18日にかけて4泊5日の手術入院しました。 きっかけは、遡ること2年余り前になるのですが、見てわかるような血尿が出たことでした。 前立腺癌の可能性も否定できないと地元の泌尿器科で内視鏡検査したのですが、結果は腎結石でした。 その後、経過観察状態だったのですが、去年9月についに激痛が発生してしまいました。 ドイツ出張などもあり (この状態での海外出張は無謀だと言われました) 本格的な検査・治療になかなか入れなかったのですが、 結局、大学病院を紹介され、腎結石閉塞を伴う水腎症のため手術 (経尿道的尿路結石破砕術) をすることになったのでした。 全身麻酔の手術とはいえ経皮的ではなく5日の入院で済むということで、2年前の内視鏡検査と似たようなレベルを予想していましたが、実際は体への負担がそれなりにありました。 現在は、手術時に尿路へステントを留置した状態です。 じっと座っている間はそうでもないのですが、歩いている時などに違和感があり、排尿時や尿意を感じた時に痛みが出る時もあります。 尿意のコントロールが難しい時があり、確実にすぐにトイレへ行けない所では長居できない状況です。 退院時は30分程度が限界でしたが今は2時間弱くらいと少しずつ慣れてきてはいますが、2月頭にステント抜去するまでは無理はできません。

手術とその後の麻酔が切れるまでの時間、さらにその前後の検査もあって、入院はあっという間で終わりました。 しかし、合間の時間に iPad で Amazon Prime を使い Aki Kaurismäki の映画を2本観ました。
1本は I hired a contract killer 『コントラクト・キラー』 (1990)。 雇用打切となった男がギャングに自分の殺害を依頼したものの、その後に花売りの女性に恋をして、逃げ回ることになるというブラックなコメディです。 主演の Jean-Pierre Léaud 目当てというのもありましたが、Kaurismäki の映画にうまくハマっていました。 そういえばヌーヴェル・ヴァーグの映画でも Léaud はデットパン気味の演技だったなあ、と。 あと、冒頭の雇用打切を言い渡す部長が、今見ると Boris Johnson ぽく見えました。
2本目は Mies vailla menneisyyttä [The Man Without A Past] 『過去のない男』 (2003)。 暴漢に襲われ記憶を失った労働者の男がホームレスから人生をやり直すという話で、 最初に彼を助けるコンテナ住まいの夫婦らホームレスやその周囲の人々との人情物、救世軍の女性との恋物語、という面もあり、 後の oivon tuolla puolen [The Other Side of Hope] 『希望のかなた』 (2017) や Kuolleet lehdet [Fallen leaves] 『枯れ葉』 (2023) に繋がる画面作りもありましたが、 メロドラマチックというにはもっとドライな余韻を残す映画でした。

入院中には David Lynch の訃報もありました。 2022年に Julee Cruise, Angelo Badalamenti と訃報が続いた時に買った BlueRay 16枚組 Twin Peaks: The Television Collection (Paramount, 2019) も、 Season 1, 2を観終えたところで止まってしまい、A Limited Event Series は未見のまま。 Lynch も亡くなってしまいました。 (といっても、今の体調では Lynch の映画/TVドラマを観たいという気分にはなれないのですが。) 未見のものも少なくなく Lynch の映画/TVドラマの熱心なファンとは言い難いですが、 映画だけでなく舞台作品を観ていても Lynch の影響を感じることが少なくなく、コンテンポラリーな表現における影響力の大きさを感じていただけに、 彼の死に一つの時代の終わりを感じます。

[4240] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 13 23:33:40 2025

この週末土曜は渋谷松濤で展覧会を観た後に円山町へ移動。この映画を観てきました。

Toivon tuolla puolen [The Other Side of Hope]
2017 / Sputnik Oy (FI), Bufo (FI) / 98 min. / DCP.
ohjaus Aki Kaurismäki.
Sherwan Haji (Khaled Ali), Sakari Kuosmanen (Waldemar Wikström), Ikka Koivula (Calamnius), Janne Hyytiäinen (Hyrhinen), Nuppu Koinu (Mirja), a. o.

フィンランドの映画監督Aki Kaurismäkiの Kuolleet lehdet [Fallen Leaves] 『枯れ葉』 (2023) [鑑賞メモ] の前作2017年作です。 当時は観なかったのですが、Kuolleet lehdet [Fallen Leaves] が良かったので、 Cinema Laika 『キノ・ライカ 小さな町の映画館』 [鑑賞メモ] に合わせて企画された 特集上映『アキ・カウリスマキ傑作選』での上映を観ました。

内戦のシリアを中心に大量難民がヨーロッパへ押し寄せた2015年欧州難民危機を受けた作品で、 主人公の一人はシリアを逃れ貨物船経由でフィンランドへ不正入国した Khaled。 難民申請をするも却下されて収容施設から逃亡し、極右に付け狙われ、ホームレス状態となった中、 彼を匿い雇い入れることになったのは、アル中の妻と別れ、服のセールスマンを辞めて、ギャンブルに勝った金を元手に飲食店経営者となったもう一人の主人公 Wikström。 Khaled も、周囲の助けを得ながら、ハンガリーで生き別れた妹を探し出し、妹を呼び寄せます。 そんな、難民が直面する難民申請手続きの不条理や極右による差別と、 そんな中で見せる市井の人々のささやかな思いやりや助けの手を差し伸べる様を、 Kaurismäki らしいセリフや感情表現を抑えたオフビートなユーモアを交えた演出で描きます。

といっても、難民への取調の場面で Khaled が自身の経験を語る場面や、 アレッポは安全だと難民申請却下を告げるくだりの直後にアレッポ空爆のTVニュースを見る場面を繋ぐモンタージュなど、 Kaurismäki にしてはかなり直接的な社会的コメンタリーで、そこに難民問題での不寛容への怒りが感じられました。 その一方、Khaled を助ける人々、特に、Wikström の店の店員たちの中のぶっきらぼうで不器用な人情は、 Kuolleet lehdet [Fallen Leaves] における Ansa と Liisa の連帯に繋がるものを感じます。

主要な登場人物を演じた俳優がほとんど Kuolleet lehdet [Fallen Leaves] に出演しているということもありますし、 初期の Kaurismäki のような救いの無さに比べささやかな人情が人を救う様の描写なども共通していて、 Toivon tuolla puolen [The Other Side of Hope]Kuolleet lehdet [Fallen Leaves] は、 地続きの世界を描いているように感じられました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

Kuolleet lehdet [Fallen Leaves] で Aki Kaurismäki の良さに改めて気付いたので、 過去の作品が映画館で上映される機会を使って少しずつ見直したいものです。

[4239] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 13 18:55:58 2025

この週末土曜は昼過ぎに渋谷松濤へ。この展覧会を観てきました。

須田 悦弘
Suda Yoshihiro
松濤美術館
2024/11/30-2025/02/02 (月休;1/13開;12/29-1/3,1/14休), 10:00-18:00 (金 -20:00).

まるで本物かのようにリアルな草花の彩色木彫とそれを使ったインスタレーションを作風として、 1990年代から現代美術の文脈で活動する作家 須田 悦弘 の、1990年代から現在に至る活動を追う回顧展です。 現代美術のグループ展で観る機会は多くありましたが、美術館クラスの個展を観るのは『泰山木』 (原美術館, 1999) [鑑賞メモ] 以来、四半世紀ぶりです。

学生時代など最初期の作品が多く展示されており、 卒業制作《朴の木》 (1992) や銀座の野外の駐車場で展示された《東京インスタレイシヨン》 (1994) に、中に入る形で体験できました。 『The Ginburart』 (1993) などゲリラ的な街中展示の1990年代を思い出しつつ、 自律した彩色木彫作品というより、スタート時点から空間というか鑑賞体験を演出すること込みの作品だったのだと、改めて認識しました。 ちなみに、卒業後に1年在籍した日本デザインセンターでのパッケージデザイン、イラストレーションの仕事まで展示されていました。

彩色木彫だけでなく最近はプラチナな金のものもあるようですが、 主張の強い現代美術作品の中で、時には雑草のような草花の彫刻を展示することで見落としがちな所へ視線を誘導するようなささやかなインスタレーションに、 内藤 礼 の作品に近い趣があります。 密度の高い展示でささやかさの趣はだいぶ削がれてしまったかなとは思いましたが、 それでも、隅っこなど建物の所々に仕掛けられたインスタレーションを楽しみました。

最も新しい作風の作品は、2023年以降、杉本 博司 の依頼により始まったという古美術の補作。 といっても古美術をネタにしている所など、須田 というより 杉本 の作品に近いセンスを感じました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

美術館に着いたのは12時半頃、館内はそれなりに人が多いと感じる程度で、入館の列はありませんでした。 しかし、14時前に美術館を出る時には、入口の外に入館を待つ行列ができていました。 まさか行列ができるほどの人気とは予想していなかったので、びっくり。混雑する前に観るられて良かった。

[4238] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 12 19:00:56 2025

4日は昼過ぎに八重洲へ。この展覧会を観てきました。

Mohri Yuko: On Physis
アーティゾン美術館 6階展示室
2024/11/29-2025/02/09 (月休;11/4,1/13開;11/5,12/28-1/3,1/14休), 10:00-18:00 (金 -20:00).

La Biennale di Venezia 2024の日本館で個展をした 毛利 悠子 による、 La Biennale di Venezia 2024 帰国展ではなく、 アーティゾン美術館のコレクションも交えて展示する「ジャムセッション」の形式の個展です。 『日産アートアワード2015』 [鑑賞メモ] や 『新しいエコロジーとアート』 (The 5th Floor, 2022) [鑑賞メモ] などのグループ展や ギャラリーでの個展 [鑑賞メモ] で 水が滴り流れたり物音が疎らに鳴ったりするプリコラージュによる無用の装置のような立体作品を楽しんできましたが、 美術館規模の個展で観るのは初めてです。

会場入口に鎮座した「歌い」ながら熟して腐敗していく果物静物 «Decomposition» (2021-)、 Bozak のせいかその映像を使ったバリエーションにも感じられた «Piano Solo: Belle-Île» (2021-/2024) など、近年の近作や、 奥の展示室を使って暗闇の中に浮かび上がる鉄琴を鳴らすインスタレーションなども良いのですが、 やはり、«I/O» (2011) や «鬼火» (2013) のような、ブリコラージュ感満載の作品の方が好みでしょうか。

そういう点では、近代以前の西洋美術のコレクション展示を主とするアーティゾン美術館では難しいと想像されますが、 «Moré Moré (Leaky)» のような水を使った作品が無かったのは残念でした。 この美術館に期待することではないとも思いますし、自分が今までこの作家の作品を観てきた場所の印象に引き摺られているようにも思いますが、 過去の痕跡の残る古い建物を使ったオルタナティブスペースに置かれたブリコラージュの持つ雑然さが持つ面白さが漂白されてしまったようにも感じました。

アーティゾン美術館のコレクションも交えて展示する「ジャムセッション」の形式の個展という点も、 ブリコラージュ的な共通点も感じられる Marcel Duchemp や Joseph Cornell の作品も展示されていましたが、 毛利のインスタレーションの存在感の向こうに霞んでいました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

この後、銀座から有楽町にかけて正月セールを覗いてみたのですが、収穫はなし。 40歳前後から20年近く定番としていた Issey Miyake Men がなくなって以来、ここというブランドが無くなってしまい、着る服を選ぶのに難儀しています。うーむ。

[4237] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 6 21:39:04 2025

3日は恵比寿の後に六本木へ移動。この展覧会も観てきました。

Louise Bourgeois
I have been to hell and back. And let me tell you, it was wonderful.
森美術館
2024/09/25-2025/01/19 (会期中無休), 10:00-22:00 (火-17:00; 9/27,9/28 -23:00; 10/23 -17:00; 12/24,12/31 -22:00)

1911年フランス生まれで1930年代にニューヨークへ移住、1940年代から2000年代まで現代美術の文脈で活動した Louise Bourgeois の回顧展です。 それなりに観る機会のある作家ですが、美術館規模の回顧展で観るのは Homesickness (横浜美術館, 1997) [鑑賞メモ] 以来の四半世紀ぶり。

Annette Messager [鑑賞メモ] などども共通する、 後のフェミニズム・アートへの影響も大きい、部屋のようなインスタレーションなどを改めて体感しつつ、 1940年代から作品を制作していたものの、1970年代からフェミニズム・アート的なインスタレーションを手がけるようになり、70歳代となる1980年代に注目されるようになった、という時代性を、改めて認識し直しました。

しかし、Bourgeois の作品そのものよりも、展示室に Bourgeois の言葉を投影する Jenny Holzer の Bourgeois × Holzer Projections (2024) のシャープさが強く印象に残りました。 「おぞましきもの」を示す作風という点で Bourgeois と共通するところもある Cindy Sharman がむしろ社会の中での女性のイメージを扱うのに対し、Bourgeois が扱うのは自身の親との関係性などグッと私的。 こういうところが後の世代の作家 [関連する鑑賞メモ] との違いだと思いつつも、 Holzer のプロジェクションによって「私的なことは政治的なこと」と言われたような気分になりました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

この後、晩は地元の行きつけの店へ初詣してスイーツ呑み初め。正月らしい1日を過ごしました。

[4236] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 5 18:28:25 2025

ここ20年程の年末年始の過ごし方となってますが、年末29日に大掃除して、30日は若林時代の大家さん宅での餅つき宴。 年末年始は実家で過ごし、自宅へ戻って、3日は美術館へ初詣。 美術館初詣の定番は写美、ということで、昼に恵比寿に出てこの展覧会を観てきました。

Alec Soth: A Room of Rooms
東京都写真美術館 2階展示室
2024/10/10-2024/01/19 (月休; 月祝開,翌火休; 12/29-1/1休). 10:00-18:00 (木金-20:00)

2000年代以降に活動するアメリカの写真家 Alec Soth の個展です。 グループ展やコレクション展示で観たことががあるかもしれませんが、 2022年の神奈川県立近代美術館 葉山での個展は見逃しており、意識して観るのは初めてです。 生活感のある室内の写真やポートレートなど私的な雰囲気の強い作風でしょうか。

最初期の Sleeping by the Mississippi (2004) など David Lynch など連想するアメリカン・ゴシック的な雰囲気もありました。 しかし、本展覧会の核 I know how furiously your heart is beating (2017-2019) などに典型的ですが、 ガラスの映り込みや浅めの焦点を使ってレイヤー感を出したポートレイトの、焦点の定まらない雰囲気が印象に残りました。

The Gaze of the Present: Contemporary Japanese Photography vol. 21
東京都写真美術館 3階展示室
2024/10/27-2025/01/19 (月休; 月祝開,翌火休; 12/29-1/1休). 10:00-18:00 (木金-20:00)
大田黒 衣美 [Otaguro Emi], かんのさゆり [Kanno Sayuri], 千賀 健史 [Chiga Kenji], 金川 晋吾 [Kanagawa Shingo], 原田 裕規 [Harada Yuki].

アニュアルで開催されている写真を主なメディアに使う新進作家展です [去年の鑑賞メモ]。 方向性を強く出さない企画ですが、特殊詐欺を取材してコラージュに仕上げた 千賀 健史、私的な題材を取り上げた 金川 晋吾、ゴミとして捨てられる写真を題材とした 原田 裕規 など、ドキュメンタリ色濃め作品が目立つ構成でした。

その中では かんのさゆり の東日本大震災の津波被害地 (女川でしょうか) 復興の風景を撮った写真は、 題材の点で 畠山 直哉 の陸前高田を撮ったシリーズを思い出されつつも、風景の中に「津波の木」 [鑑賞メモ] のような画面に緊張を持たせる存在に欠け、 住宅の撮り方にしても、正面を避けて建物の輪郭がわからないようなフレーミングにしてタイポロジー的な型を避けるよう。 その撮り方が生むうつろさはむしろ ホンマタカシ の『東京郊外』[鑑賞メモ] に近く感じました。

大田黒 衣美 の作品はドキュメンタリ的ではなくむしろ造形的なもの。 オブジェを組み合わせての写真は20世紀半ばの美術ぽい形式性と思いつつ、 チューイングガムで作ったものを猫の背中に乗せて撮ったものと気付き、その光景を思い浮かべて、微笑ましくなりました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

担当学芸員のギャラリートークがあったので聴こうかなとも思ったのですが、 展示室に入りきらずロビーいっぱいとなるほどの人の多さに、断念。 今年は仕事初めが6日ということもあるのか、3日に美術館へ来ていた人も多かったのでしょうか。

[4235] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Fri Jan 3 22:03:25 2025

話は前後しますが、年末28日は午後に新宿東口のシネマカリテへ。この映画を観てきました。

Robot Dreams
2023 / Arcadia Motion Pictures SL (ES), Lokiz Films AIE (ES), Noodles Production SARL (FR), Les Films du Worso SARL (FR) / 103 min. / DCP.
Director y Guionista: Pablo Berger; Basada en la novela gráfica de Sara Varon.
Director de Arte: Jose Luis Ágreda; Director de Animación: Benoît Feroumont; Música: Alfonso de Vilallonga; Music Editor: Yuko Harami.

アメリカの Sara Varon によるグラフィック・ノヴェル Robot Dreams (2007) の スペインの映画監督 Pablo Berger によるアニメーション映画化です。 アニメーション映画を撮ったのは初めてのことで、実写での映画の作風も知らないものの、 Festival international du film d'animation d'Annecy 2023 Contrechamp セクション長編のベストだったこと、 実現しなかったものの当初は Cartoon Saloon との協働を望み、 The Secret of Kells (2009) [鑑賞メモ] に参加した Benoît Feroumont をアニメーターに迎えたこと、 といったことに興味を惹かれて観てみました。

登場人物は全て擬人化された動物で、主人公は犬 (Dog) と、そのパートナーとなったロボット (Robot) です。 原作は読んでいませんが、原作ではセリフが無いとのことで、アートハウス系のアニメーション映画ではよくある手法ではありますが、映画でもセリフを用いていません。 シンプルな描線によるキャラクター造形をそのまま生かし、1970年代頃のセル画アニメーションのようなベタ塗りの彩色の2Dアニメーションとして仕上げています。 また、原作は時代や場所を特定できるような描写は無いとのことなのですが、映画では1980年代半ばのニューヨークに舞台設定されています。

孤独な都会暮らしの青年 Dog が友達ロボット Robot を購入することで始まる、 出会いと突然の別れ、そしてそれぞれの別の出会いと、すれ違うような再会を描いたストーリーです。 セリフよりも音楽と動き (ダンスではなくアニメーションですが) で展開する所がミュージカル的に感じる時もあり、 新しいパートナーとの将来を選ぶほろ苦く切ないエンディングに Jacques Demy: Les Parapluies de Cherbourg 『シェルブールの雨傘』 (1964) を思い出されました。 といっても、2人を隔てる階級差のようなものはなく、別れの原因も兵役ではなくオフシーズンのビーチの閉鎖、意図しない妊娠のような要素もなく、後味はそこまで重くはありません。 Dog と Robot は友情以上に親密な関係とは思いましたが、映画中では恋愛とも友情とも取れるようなプラトニックな描写のみ。 性別やエスニシティを明示するような描写はほぼありませんでしたが、 大きくフィーチャーされた Earth Wind & Fire のヒット曲 “September” もあって Dog と Robot の関係にゲイ的なものを感じました。

映画において舞台とした1980年代半ばのニューヨークのディテールも具体的です。 ニューヨークは2003年に一度一泊したことがあるだけで1980年代当時は知りませんので店などの固有名詞は分かりませんが、 1980年代半ばというとちょうど高校生の頃でTV等のメディアを通して垣間見る機会はあり、 Gayla Kite や Chupa Chups などの小道具を懐かしく思いました (これらの流行は1970年代のようにも思いますが)。 Dog の部屋のレコードコレクションにはThe Feelies, R.E.M., The Smiths, Talking Heads, Blondieなどニューウェーヴ/インディロックのジャケットが見え、 いかにも社交的ではない孤独な都会の青年の趣味っぽくあります。 (当時、自分もその手の音楽をよく聴いていたので、懐かしくもありました。) 映画中では Earth Wind & Fire “September” が象徴的に使われていましたが、 そんなファンク/ディスコとレコードジャケットから推測されるニューウェーヴ〜インディ・ロックとは受容層が被らないので、 “September” は Dog ではなく Robot のフェイヴァリットなのでしょう。

Dog の部屋の中の描写といえば、Pierre Étaix の映画 Yoyo (1964) [鑑賞メモ] のポスターが貼られていました。 アートハウス系の映画館に通っていそうという Dog の性格付けという面もあると思いますが、 Yoyo もセリフを極力排した無声映画的な演出という点も符合します。 Dog の不器用で不甲斐ないキャラクターは、Étaix より Jacques Tati に通じるかな、とは思いますが。 というか、Dog の悲哀と笑いとのアンビバレントを感じさせるキャラクターは Chaplin や Buster Keaton のサイレント映画をも思わせるところがあります。 特に中盤の Dog と Duck の出会いやデートの場面は Buster Keaton 演じるダメ男の台無しデートコメディのようです。 他にもクラシックなミュージカル映画のオマージュと思われる場面も少なくなくありませんでした。

もちろんそんな予備知識無しにも十分に楽しめると思いますが、 1980年代当時を知る人やクラシックな映画を知る人にとっては懐かしくもあり、 多くの出会いと別れを重ねてきた大人には心に沁みるという、 大人向けの寓話アニメーション映画でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

観終わった後は湘南新宿ラインで一路鎌倉へ。 その前の週末に体調を崩して行かれなかったカフェ・アユーに年末の挨拶がてら顔を出してきました。 月1程度しか行かれていませんが、こういう店はありがたいので、大切にしたいものです。

[4234] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu Jan 2 22:24:36 2025

2024年に入手した最近数年の新録リリースの中から選んだ10枚+α。 展覧会・ダンス演劇等の公演の10選もあります: 2024年公演・展覧会等 Top 10

#1
Erwan Keravec
In C - 20 Sonneurs
(Offshore / Buda Musique, 860391, 2023, CD)
[Buda Musique]
#2
Sergio Armaroli, Giovanni Maier
Figure(s) a due
(Dodicilune Dischi, Ed550, 2024, CD)
[Dodicilune Dischi]
#3
Don Nino & Françoiz Breut
Cover songs in inferno
(Prohibited, PRO062CD, 2023, CD)
[Prohibited]
#4
Karl Ivar Refseth
Unfolding
(Traumton, 4717, 2024, CD)
[Traumton]
#5
Miklós Lukács Cimbiosis Trio / Ligeti Ensemble
Responses to Ligeti
(Budapest Music Center, BMC CD 330, 2024, CD)
[Budapest Music Center]
#6
Torun Eriksen
Fastlandet
(Jazzland, 377 960 7, 2024, CD)
[Bandcamp]
#7
Natascha Rogers
Onaida
(No Format!, NOF.60, 2024, CD)
[Bandcamp]
#8
Sanne Rambags
The Frieze of Life
(SONNA, 2024, DL)
[Bandcamp]
#9
Laurie Anderson
Amelia
(Nonesuch, 075597904765, 2024, CD)
[Nonesuch]
#10
Patricia Brennan Septet
Breaking Stretch
(Pyroclastic, PR35, 2024, CD)
[Bandcamp]
次点
Alice Zawadzki, Fred Thomas, Misha Mullov-Abbado
Za Górami
(ECM, ECM 2810, 2024, CD)
[ECM]
番外特選
Nik Bärtsch's Ronin
Baroom (青山)
2024/07/12, 19:30-21:10.
[鑑賞メモ]

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4233] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu Jan 2 22:22:52 2025

2024年に歴史の塵捨場 (Dustbin of History)に 鑑賞メモを残した展覧会やダンス演劇等の公演の中から選んだ10選+α。 おおよそ印象に残った順ですが、順位には深い意味はありません。 旧作映画特集上映や劇場での上演を収録しての上映などは番外特選として選んでいます。 音楽関連は別に選んでいます: Records Top Ten 2024

第一位
Rachid Ouramdane / Compagnie de Chaillot: Corps extrême (ダンス)
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール, 2024/10/26.
[鑑賞メモ]
第二位
Dimitris Papaioannou: INK (ダンス)
ロームシアター京都 サウスホール, 2024/01/20.
[鑑賞メモ]
第三位
内藤 礼 『生まれておいで 生きておいで』 (美術展)
東京国立博物館 平成館企画展示室, 本館特別5室, 本館1館ラウンジ, 2024/06/25-2024/09/23
Ginza Maison Hermès Le Forum (8F, 9F), 2024/09/07-2025/01/13.
[鑑賞メモ]
第四位
Philippe Parreno: Places and Spaces (美術展)
ポーラ美術館, 2024/06/08-2024/12/01.
[鑑賞メモ]
第五位
Nederlands Dans Theater 1 (NDT 1) (ダンス)
神奈川県民ホール 大ホール, 2024/07/06.
愛知県芸術劇場, 2024/07/13.
[鑑賞メモ]
第六位
Veit Helmer (Regie): Gondola (映画)
Veit Helmer Filmproduktion (DE), Natura Film (GE), 2023; ムヴィオラ, 2024.
[鑑賞メモ]
第七位
青木 野枝 / 三嶋 りつ惠 『そこに光が降りてくる』 (美術展)
東京都庭園美術館, 2024/11/30-2025/02/16.
[鑑賞メモ]
第八位
Machine de Cirque: Ghost Light - Between Fall And Flight (サーカス)
世田谷パブリックシアター, 2024/07/27.
[鑑賞メモ]
第九位
Sterling Ruby: Specters Kyoto (美術展)
Taka Ishii Gallery Kyoto, 2023/11/23-2024/01/20.
[鑑賞メモ]
第十位
Cirkus Cirkör: Knitting Peace (サーカス)
世田谷パブリックシアター, 2024/11/20.
[鑑賞メモ]
次点
『両大戦間のモダニズム:1918-1939 煌めきと戸惑いの時代』 (美術展/デザイン展)
町田市国際版画美術館 企画展示室1, 2, 2024/09/14-2024/12/01.
[鑑賞メモ]
番外特選1
田坂 具隆 (監督) 『愛の町』 (映画)
日活太秦, 1928; 国立映画アーカイブ 上映企画『没後50年 映画監督 田坂具隆』, 2024/10-11.
[観賞メモ]
番外特選2
Soundies 『サウンディーズ 元祖ミュージック・ヴィデオ』 (映画)
various productions, 1940-1946; distribution: Kino Lorber (US), 2023; Peter Barakan's Music Film Festival 2024.
[観賞メモ]
番外特選3
Jonathan Demme and Talking Heads: Stop Making Sense (4K Restoration) (映画)
Talking Heads Films, 1984; A24 (4K Restoration), 2023.
[観賞メモ]

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4232] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu Jan 2 22:21:12 2025

あけましておめでとうございます。

この一年を振り返りつつ、2024年の展覧会・公演等Top TenレコードTop Tenを選びました。

2023年に続いて2024年も映画へウェイトかかっていたかなと思っていたのですが、振り返ってみると、 2024年はコンテンポラリー・ダンス/サーカスの公演を多く観たほどではないものの良いものが多かったな、という気付きがありました。 音楽については、レコード/CDの新譜情報すら疎くなってしまい、コンサート/ライブからも足が遠のきがちで、Top 10を選ぶ程ではなさそうだったのですが、 いざ選び出してみると意外にTop 10を選ぶのに困らない程度は聴いていたのかな、とも思い直しました。

元旦の能登半島地震に始まった2024年は、12月に入ってからもシリア・アサド政権崩壊、韓国非常戒厳令・大統領弾劾不成立に、アゼルバイジャン航空旅客機撃墜事件と、大波乱の国際情勢続き。2023年に続いて夏の世界的な異常高温も記録的なものに。 こんな世の中だからこそ、ささやかながらでも趣味生活を続けていけたらと思っています。

そろそろtwitterも辞めどきかと思いつつも、移転先のSNSが定まらず、ツイートも途切れがち。 フォローも少ない自分の場合はSNSへ投稿したからといって多くの人の目に触れるわけでもなし、 むしろ、このサイトの鑑賞メモをちゃんと継続した方が良いかと思いつつあります。 今年も引き続きマイペースで続けたいと思っていますので、よろしくお願いします。

[4231] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Dec 31 12:51:45 2024

27日は昼に白金台で展覧会を観た後、渋谷円山町へ移動。この映画を観てしました。

Cinéma Laika
2023 / 43e Parallèle Productions (FR), Les Films du Woso (FR) / colour / 81 min.
un film du Veljko Vidak.
avec Aki Kaurismäki, Mika Latti, Les habitants de Karkkila Finlande, avec la perticipation exceptionnelle de Jim Jarmusch et Amy Taubin.

ヘルシンキから車で1時間、人口1万に満たない町 Karkkika に映画監督 Aki Kaurismäki が2021年にオープンさせた、 鋳物工場跡を改装した映画館 Kino Laika (Cinéma Leika はそのフランス語表記) のオープンまでの1年を追ったドキュメンタリー映画です。 映画館というよりも映画を核とした地域コミュニティセンターのような場を、 Kaurismäki 自らスクリーン張りや大工作業もするようにD.I.Y.的に作っていく様子を捉えています。

しかし、Kaurismäki や住民の映画館への熱い想いや困難の乗り越えるための苦闘を感動の物語として描くようなものでは全くなく、 Kaurismäki の映画同様、むしろ、淡々として、かなりオフビートな作りです。 インタビューされる Kaurismäki 縁の人々、Karkkila の人々の言葉も、 映画館への想いや Kaurismäki の人物像にきっちり焦点は合っておらず、 例えば、Kuolleet lehdet [Fallen Leaves] (2023) に登場した 姉妹インディ・ポップ・デュオ Maustetytöt が出てくる場面でも、むしろ Kaurismäki との縁はほとんど無かったと語るよう。 Kaurismäki もラストに「Karkkila へ恩返しをしたい」と語る場面はあるけれども、 雄弁に意図や想いを語ることはせず、むしろ、自ら映画館作りの作業をするその姿を通して示すよう。 そんなところに Kaurismäki らしさを感じたドキュメンタリーでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

映画を観た後は、公園通りにある馴染みのレコード店、エル・スール・レコーズへ。 といっても、渋谷からかなり足が遠のいていますし、週末の外出パターンと開店時間も合わなくなりがちで、 店に足を運んだのも1年余りぶりでしょうか。久しぶりに行くと、楽しいものです。 通販とは違う実店舗での出会いという面白さはもちろん、いつまでここで営業できるのかという状況とも聞きますので、あるうちにもっと足を運びたいものです。

[4230] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Dec 30 1:17:51 2024

26日で仕事を納めて、27日は昼に白金台へ。この展覧会を観てきました。

青木 野枝 / 三嶋 りつ惠
Noe Aoki / Ritsue Mishima: Wonderment
東京都庭園美術館
2024/11/30-2025/02/16 (月休;12/28-1/4休;1/13開,1/14休), 10:00-18:00 (11/30,12/6,7 -20:00).

鉄を素材に使ったサイトスペシフィックな立体作品を主な作風とする 青木 野枝 と、 ヴェネチア・ムラーノのガラス工房でグラス・アート (ガラスを素材にしたオブジェ作品) を制作している 三嶋 りつ恵 の、二人展です。 2人の作品が同じ部屋に展示されていたのは入口脇と本館3階のウィンターガーデンのみで、コラボレーション的な展示構成はありませんでした。 東京都庭園美術館でグラス・アートの展覧会は以前にも観たことがあり [鑑賞メモ]、 三嶋のガラス作品については展示空間に映えるだろうとは思ってました。 しかし、青木の作品 [鑑賞メモ] は鉄を切り出したディテールの重めの質感もあり、 アール・デコの洋館という癖の強い展示空間にここまで馴染むとは予想していませんでした。

三嶋 りつ恵 のガラス作品は、ムラーノとはいってもカラフルなものではなく、無色透明なもの。 ガラスケースやライトボック上で50 cm 程度のオブジェを見せるようなオーソドックスな展示も良いのですが、 小ぶりの菊の花の形のガラスを床に並べた«Crisantemo» (2024) や庭木の枝に粒の連なりのようなガラスを懸けた«Rugiada» (2024) など、 小ぶりな作品のシンプルな白い輝きで視線を誘導するかのようなインスタレーションは、 内藤 礼 のようなミニマリズムとは違いますが、窓から差すぼんやりとした日差しや室内照明の微妙な光や輝きも含めて感じさせるような作品でした。

一方の 青木 野江 の作品は、石鹸を使った作品などもありましたが、鉄板から切り出した円や直線から構成したサイトスペシフィックな作品をメインとした構成です。 大きいながら、向こうが透けた、球体や回転放物面のような曲面からなる形状もあって、実際の重量ほどの重さを感じさせません。 その金属の質感がアール・デコの金属装飾に近かったこともあってか、異質なもので空間を強烈に異化するのではなく、隠されていた構造を浮かび上がらせてるよう。 そんな展示空間に寄り添うようなインスタレーションでした。 しかし、狭い展示空間いっぱいに作り込まれたものも多く、どうやって搬入して組み立てたのだろうと思うような作品も少なからずありました。

正門横スペースで、2024/11/29から2025/01/13までの間、 「そこに光が降りてくる カフェ・プロジェクト 光のカフェ」 という、三嶋りつ惠によるグラスやプレートを実際に使ってワイン等の飲み物やチーズ、ケーキを楽しめる カフェスペースを営業しています。 アールデコ装飾された室内での展示を観たあとのせいかカフェにしては若干殺風景にも感じましたが、 こういう試みも悪くはありません。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4229] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 15 18:35:07 2024

先週末土曜は晩に横浜山下町へ。 YPAM – 横浜国際舞台芸術ミーティング連携プログラムの 愛知県芸術劇場 × Dance Base Yokohama 共同製作 Performing Arts Selection 2024 のAプログラム2作品を、 Dance Base Yokohama (DaBY) の活動を垣間見る良い機会かと、観てきました。

小暮 香帆 × ハラサオリ
『ポスト・ゴースト』
KAAT神奈川芸術劇場 ホール
2024/12/07, 19:00-19:50.
構成・演出・振付・出演: 小暮 香帆, ハラサオリ.
ドラマトゥルギー: 丹羽 青人; 音楽: 小田 朋美; 衣裳: 藤谷 香子.
初演: 2024年11月, 愛知県芸術劇場, 「間の時間」にて

中盤のクリノリン風のスカート枠を2人で取り合うかのようかの場面や、 敷かれた白い方形のシートの上に横になってペンで描き合う場面など、 後者は後方に大きく映像上映するなど、工夫していましたが、動きが細か過ぎて、そのニュアンスを感じるというには厳しいものがありました。 歌舞伎の性表現や歌舞伎に多く登場する女の幽霊に着想した作品とのことでしたが、そういったコンセプトが、例えばクリノリンのような道具や、 観客への幽霊を信じるかの問いかけや、子供時代に一度だけ幽霊を見たという記憶の独白が、どのように繋がるのか腑に落ちるようなこともありませんでした。 こぢんまりとした親密な空間で20〜30分程度の長さで上演されればばまた違ったかもしれませんが、空 間・時間を使いきれていない印象を受けました。

島地 保武
『Dance for Pleasure』
KAAT神奈川芸術劇場 ホール
2024/12/07, 20:00-20:50.
演出・振付・出演: 島地 保武; リハーサルディレクター・出演: 貝ヶ石 奈美.
出演: 青柳 潤, 織田 若菜, 木ノ内 乃々, 鈴木 大翔, 畠中 真濃, 藤村 港平, 星野 めいや, 堀川 七菜, 山口 泰侑, Liel Fibak.
音楽: 岡 直人.
初演: 2024年11月, 愛知県芸術劇場, 「間の時間」にて

12人のダンサーによるナラティブな要素はほぼ無い抽象的なダンス作品です。 音楽の使い方も控えめで、そもそも無音での動きが多く、音楽を視覚的に表現するというより、動きによって視覚的な音楽を作り出すよう。 4〜5人のダンサーが絡みながらの動きがメインで、12人が舞台上に揃う時も全体で動くというより 4×3くらいの組み合わせが感じられることが多かったでしょうか。 ダンサーの動きもシャープで、その点は楽しめました。 しかし、そんな抽象度がそれなりに高い舞台だったせいか、衣装や動きにおけるジェンダーや、 大人数になった際の舞台正面に向いた、もしくは背を向けた方向性の強い動きの多用が、気になってしまいました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

今週末土曜は午後に早稲田へ。桑野塾の今年を振りかえる会に参加してきました。 前に参加したのが去年11月でしたので1年ぶりです。 アピールしたいものを持ち寄って一人数分話をする会なので、ネタが無いと厳しいのですが、 今年はちょうど Аж Гай Гуде: Українські звукові архіви [Even the Forest Hums: Ukrainian Sonic Archives] 1971-1996 (Light In The Attic, 2024) という後期ソ連後半の1970年代からソ連崩壊直後の1990年代半ばにかけてのウクライナのポピュラー音楽のアンソロジーCD付きの本を入手したばかりだったので、それと関連するCDを数枚持参しました。 他の人の話もとても興味深く、読んでみたくなった本も何冊か。 いろんな人から様々な刺激を受けるためにも、時々はこういう会に顔を出したいものです。

[4228] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 8 17:06:38 2024

先週末土曜は日帰りで箱根へ。会期末になってしまったこの展覧会を観てきました。

Philippe Parreno
Places and Spaces
フィリップ・パレーノ『この場所、あの空』
ポーラ美術館
2024/06/08-2024/12/01 (会期中無休). 9:00-17:00.

現代美術の文脈で1990年代から活動するフランス出身の作家 Philippe Parreno の個展です。 Nicolas Bourriaud: Esthétique relationnelle 『関係性の美学』 (1998; 辻 憲行=訳, 水声社, 2023) で言及され、 リレーショナル・アートの作家として知られます。 個展としてまとまった形で観る良い機会かと、会期末に駆け込み鑑賞しました。

リレーショナル・アートというと、ワークショップを多用したりワーク・イン・プログレスの展示だったりで、 展示自体はそれらのドキュメントだったり、DIY色濃いとりとめないものだったりすることが多いものですが、 今回の展覧会はポーラ美術館という場所のせいか、その後の作家の作風の変化か、むしろ、しっかり構成演出された展示でした。

最も印象に残ったのは、Marilyn Monroe が1955年に住んでいたニューヨークの高級ホテル Waldorf Astoria のスイートルームを題材とした作品です。 人のいた気配はあるけれども無人のスイートルーム内を漂うように捉えつつその様子を語るようで微妙に食い違いのある女性のナレーションが添えられたビデオが大きく投影されます。 ほぼ同じナレーションで2巡目に入ると、軽い機械の音を背景にホテルの便箋に文字をダブらせるようにペンを滑らす様子が投影されるのですが、 やがてカメラが引くとペンを走らせていたのはプロッターであり、スイートルームもセットであったことが明かされて、ビデオは終わります。

そのビデオは壁自体もしくは壁掛けの薄いスクリーンや液晶ディスプレイで上映されるのではなく、 ステージのように張り出して設置されたうっすら半透明のパネルに投影され、 パネルの後ろにスピーカーや照明が置かれ、 ビデオが投影されていない時は後ろに枠状に並んだ照明がポツポツと透けて見えます。 また、ビデオの伴奏の音楽も、録音を流すのではなく傍に置かれた自動ピアノで演奏されます。 さらに、上映されている空間はブラックボックスのままではなく、上映が終わる度に暗幕がひらき、外の可動式のリフレクタを使い外から陽が差し込ませられます。 そんな仕掛けもあって、ブラックボックス内でループで上映されているビデオ作品を鑑賞しているのとはかなり違う、 ピアノ伴奏も機械仕掛けて映像の中も無人であるものの、ライブでの上演を観たのに近い感覚になりました。 ラストでメタな視点が入ってくるビデオの構成も舞台上演を収録した映像に近く感じられ、そういった時間空間の演出に合っていました。

ビデオ作品 Anywhen (2016) の上映も Marilyn ほどでは無いものの、 他のインスタレーションの動作と組み合わせて上映されていましたし、 ドローイングの展示でもガラスケースのガラスを調光ガラスにして断続的に不透明化してケース内と手前の視野を切り替え、 空間の奥行きや時間展開を鑑賞させることで、Marilyn に類似した、時間空間を忘れた鑑賞とは異なる体験をさせるようでした。

そういった時間空間演出とは違うものの、窓越しの周囲の緑と外光が美しい展示空間を生かし、 そんな空間にヘリウムガス封入の魚型のバルーンを漂わせた My Room Is Another Fish Bowl (2018) も、 親しみやすく空間を異化する楽しさを感じました。

展覧会を観た後は森の遊歩道へ。 2019年の『シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート』展以来常設の Susan Philipsz: Wind Wood (2019) [鑑賞メモ] や、 2021年の Roni Horn: When You See Your Reflection in Water, Do You Recognize the Water in You? 展以来常設の Air Burial (Hakone, Japan) (2017-2018) [鑑賞メモ] と再会してきました。 しかし、2010年代末から現代アートの企画展が増えたのでもっと足を運びたいと思いつつ、2〜3年に1回程度。 箱根という好ロケーションですし、もっと足を運びたいものです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

この週末は、新国立劇場バレエ団 『DANCE to the Future 2024』はチケット争奪戦に敗北。 同じく会期末になってしまった大阪中之島美術館 の 塩田 千春 『つながる私』 とどちらへ遠征すべきか悩んだのですが、天気が良かったこともあり、温泉もある箱根にしてしまいました。 Philippe Parreno の方も、いかにもリレーショナル・アートな展示では無いかと危惧していましたが、結局、よく演出されたとても好みの展覧会でした。 紅葉はあまり綺麗ではありませんでしたが、美術館レストランのランチはもちろん、日帰り温泉では野生猪の温泉しゃぶしゃぶで晩酌。 日帰りながら箱根を満喫できました。 直前に行くのを決めるので日帰りになってしまいますが、やはり、一泊で行くくらいのんびりしたいものです。

[4227] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 1 22:27:54 2024

先週末土曜は午後に新宿東口へ。新宿シネマカリテでこの映画を観てきました。

Gondola
2023 / Veit Helmer Filmproduktion (DE), Natura Film (GE) / colour / 85 min.
ein Film von Veit Helmer.
Drehbuch und Regie: Veit Helmer.
Mathilde Irrmann (Iva), Nini Soselia (Nino), Suka Papuaschwili (Chef), etc.

セリフをぼぼ使わない映画を撮ることで知られるドイツの映画監督 Veit Helmer の新作は、 グルジアの山間の村の谷を渡るロープウェイのゴンドラを舞台にした、女性乗務員2人が主人公のロマンティックなコメディです。 父の死をきっかけに戻った村でロープウェイの乗務員と働き始めた Iva と、 航空会社の客室乗務員を志望している先輩乗務員 Nino の、2人の間の関係をセリフを使わずに描いていきます。 最初のうち、ロープウェイを行き来しながらチェスをするあたりまでは、長閑な田舎でのちょっとギクシャクしつつの微笑ましい交流かなというところですが、 相手を喜ばすために仮装したりゴンドラを改造するようになるあたりから、次第にリアリズムから外れてファンタジー色濃くなります。 中盤頃までは2人の間の関係、気になる相手から次第に好意を寄せる相手に、そして、仲違いから仲直りへ、などの二人のロマンチックな関係の機微を、 表情や仕草、音楽や環境音はもちろん仮装やゴンドラ改造の方法などを使って、微笑ましくもコミカルに描いていきます。 しかし、終盤に入って、それまで駅長 (Chef) に乗車拒否されていた車椅子の男をゴンドラから吊り下げて谷を渡らせてあげるあたりから、 シスターフッドによる現状の打破というほど強いものではないですが、現実からの飛躍が寓話的に描かれます。

登場するゴンドラが Veit Helmer の親友だったタジキスタンの映画監督 Бахтиёр Худойназаров [Bakhtyar Khudojnazarov] [関連する鑑賞メモ] Кош ба кош [Kosh ba kosh]『コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って』 (1993) と同じ型式のもので、 ファンタジー色濃い展開になってからは Лунный папа [Luna Papa]『ルナ・パパ』 (1999) も思い出させられました。 Бахтиёр Худойназаров [Bakhtyar Khudojnazarov] の作風から、 ポストソ連の混乱に対する風刺 (とセリフ) を抜いて、優しい寓話に寄せたような作風に感じられました。 セリフを使わず状況と動きでクスッとした笑いをとる所は Jacques Tati も思い出します [関連する鑑賞メモ]。 相手の気を引き喜ばせるための仮装やゴンドラ改造、車椅子の男に谷を渡らせること、ラスト近くの村人総出の鳴り物演奏も添えられた夜のゴンドラパーティの場面などは、 ファンタジックなクレイアニメーションなどで使われそうな表現でもあります。 しかし、そういったことを実写でこんなにチャーミングな映像にできるのか、と。 もう少し風刺を効かせてもいいのではないかとも思いつも、このご時世、この邪気のない浮世離れ感が貴重に感じてしまいます。

派手な映像効果演出は無くファンタジックな場面でも手作り感満載で、そこが味わい深いのですが、 当初予定していたロープウェイが故障で使えず、代わりのロープウェイは単線だったため、ロープウェイのすれ違いの場面などはコンピュータでの合成とのことでした。 駅の乗り場が片面しかないので少々不自然に感じていたのですが、そういうことかと。

監督の Veit Helmer は Чулпан Хаматова [Chulpan Khamatova] 出演作を度々撮っているので名は知ってましたが、作品を観るのは初めて。 こんな面白い映画を撮る監督と知り、今まで観ていなかったことを悔やみます。 Tuvalu (1999) や The Bra (2018) など、他の作品も特集上映して欲しいものです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

ジョージア映画祭2024で予告編を観て、これは良さそうだと楽しみにしていたのですが、期待違わず大変に好みの映画でした。

映画の後、夕方には鎌倉へ移動。マスター復活、営業再開を祝いに鎌倉、カフェ・アユーへ。 さらに、二軒目に雪の下の喫茶邂逅へ初めて足を運んでみました。 こんな所に店あるのかなと住宅街を進んだ先に、個性的なお店がひっそりと。 渋谷に居場所がなくなりつつある中、小杉からの便はいいし、鎌倉かなあと思いつつあったり。