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談話室 / Conversation Room

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[3586] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Oct 15 10:48:17 2017

先週末土曜は昼前には東銀座へ。この舞台を観てきました。

歌舞伎座
2017/10/07, 11:30-15:40.
脚本: 青木 豪; 演出 宮城 聰.
尾上 菊之助 (迦楼奈 [カルナ], シヴァ神), 中村 時蔵 (汲手 [クンティ] 姫), etc

2014年の Festival d'Avignon で『マハーバーラタ 〜ナラ王の冒険〜』を上演した SPAC 静岡芸術劇場の 宮城 聰 が演出した新作歌舞伎。 『マハーバーラタ 〜ナラ王の冒険〜』は2012年に観て、その祝祭的な雰囲気を楽しんだので [レビュー]、 どのような歌舞伎になったかの興味もあって観てきました。

古代インドの神話的叙事詩『マハーバーラタ』 (Mahabharata) は長大で、様々な物語が含まれています。 ク・ナウカ 〜 SPAC は物語中物語であるナラ王の物語を取り上げていた一方、 この歌舞伎は『マハーバーラタ』の全体の話の流れを生かすよう歌舞伎化されていました。 話の流れを損なわないよう、日本の中世〜近世の風俗と大きな違和を感じさせないよう見せ場を繋いでおり、その点はさすが、と。 にもかかわらず、やはり SPAC 色を感じたのは、 SPAC で音楽を手がける 棚川 寛子 の音楽と SPAC の楽団による通常の歌舞伎では使われない打楽器 (スティールパンなど) の音色のせいでしょうか。 セリフも耳に馴染んていったせいもあるのか、後半に進むにつて聞き取りやすく現代劇ぽく感じられるようになりました。 そういう意味では、宮城 聰 / SPAC らしい祝祭性を感じる作品だと思ったのですが、 戯曲中心の作品やミニマルにそぎ落とされた演出による作品なども上演される現代劇の劇場ではなく、 すでにハレのお祭り的な空間となっている歌舞伎座で上演しても、 その祝祭性が埋没してしまうよう。 上演される文脈の重要性も意識させられた鑑賞でした。

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晩は世田谷若林の元大家さん宅での秋刀魚宴。 隣 (というか同一敷地内に) 住んでいた時と同じ気分で、つい、日付が変わる時間近くまで呑んでしまいました。 秋刀魚の写真を撮り忘れたので、代わりに持って行ったボトル (Rodenbach Caractère Rouge (いわゆる赤ビール) と Gouden Carlos Cuvée van de Keizer (ウイスキー酒精強化ビール) の写真を。) それでもなんとか電車で小杉まで帰ることができるという知見を得ることができたのが、収穫でしょうか。 (ま、そんなことはあまりしないことに越したことはないですが。)

[3585] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Oct 10 0:05:49 2017

一週間余前の話になってしまいましたが、先の週末の日曜は、午後に横浜山下へ。 この舞台を観てきました。

KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
2017/10/01, 14:00-15:15.
演出: 小野寺 修二 (カンパニーデラシネラ)
演出補助: 藤田 桃子; 美術: 石黒 猛; 照明: 吉本 有輝子; 音響: 池田 野歩; 衣装: 武徳 ドンファン; 舞台監督: 橋本 加奈子.
出演: Nguyen Hoang Tung, Nguyen Thi Can, Bui Hong Phoung, Nung van Minh, 荒 悠平 [Yuhei Ara], 王下 貴司 [Takashi Oshita], 崎山 莉奈 [Rina Sakiyama], 仁科 幸 [Miyuki Nishina].

『ロミオとジュリエット』 [レビュー] など、 カンパニーデラシネラでの古典的な原作のある物語的な作品が最近では印象に残っている 小野寺 修二。 今回はKAATの制作で、カンパニーデラシネラでお馴染みの日本人ダンサーとベトナムのダンサーとコラボレーションして作った、ベトナムを題材とした作品だ。 このこうな国際的なコラボレーションはえてして「伝統的」な物語や舞踊に着想したエキゾチズムに堕してしまうことが多く、 少々嫌な予感もあったのだが、どうなることかと足を運んでみた。

スクーターや車の行き交う活力ある現代のベトナムの街のイメージを、 物や音、そして動きの連想などで自在に繋いで構成した1時間余。 椅子だけでちょっと荒い運転をする車を表現したり、 離れた二人の動きを関連させて一つの場面を作ったり、 ミニチュアの車の動きと人の動きを連動させたり。 複数の赤い小さな椅子と机が街ゆく車となったり、合わさって屋台となったり。 いつも 小野寺 自身が演じる不条理な状況に放り込まれた道化的や役割の男性を Nguyen Hoang Tung が演じていたのだけど、マイム俳優だけあって、実に好演していた。 観ていて、カンパニーデラシネラというより 水と油 を思い出した。 というか、水と油 時代からのお馴染みの表現ではあるのだけど [レビュー]、 現代ベトナムの街というテーマを得て、新鮮に楽しめた。

もちろん、スクーターのハンドル部分を模したバーのヘッドライト部に ポータブルのプロジェクターを仕込んで、街中の様子をダンサーが持った板に動き回りながら投影することで、 スクーターで街中を走りながら見る流れるような断片的な光景を再現したり。 ポータブルのLED照明をスマートフォンに見立てたり、ミニチュアの道を照らす街の照明としたり。 こういう、電子ガジェットの使い方も、ハイテクな演出ではないものの、見立てのアイデアも良く、楽しめた。

カンパニーデラシネラではない公共劇場制作で、物語的ではないスケッチ集のような作品としては、 『シレンシオ』 [レビュー] なども思い出すのだけど、 それと比べても格段に良かったのは、テーマがはっきりしていたからだろう。 『シレンシオ』を観たときは物語的な枠組みがあったほうがよいのではないかと思ったけれども、 この『WITHOUT SIGNAL! 〔信号がない!〕』は、テーマの選び方次第では非物語的でもまだまだいけると思わせるだけの作品だった。

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[3584] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Oct 9 18:43:52 2017

週後半の出張の疲れが抜けず、先週末の土曜は昼過ぎまで、家事をしつつ休養していたのですが、夕方に六本木へ。 いきつけのジャズ喫茶に顔を出す前に、『六本木アートナイト』を軽く冷やかす程度のつもりだったのですが、 意外にも混雑していなかったので、勢いでこの展覧会をがっつり観てしまいました。

Sunshower: Contemporary Art from Southeast Asia 1980s to Now
国立新美術館 企画展示室2E
2017/7/5-10/23 (火休), 10:00-18:00 (金土 10:00-18:00)
森美術館
2017/7/5-10/23 (無休), 10:00-22:00 (火 10:00-17:00)

ASEAN設立50周年記念として、六本木の2つの美術館で同時開催されている 東南アジアの10カ国の80組を超える作家からなる大規模な展覧会。 一応、9つの視点からまとめられているが、強い方向性を示すほどではない。 近代的な絵画作品や彫刻作品はほとんど無く、インスタレーション作品やプロジェクトのドキュメンテーションがほとんど。 1980年代からと時代設定されているが、特に冷戦終結後の地域統合と経済発展の進んだ時代を背景として、 植民地時代の抑圧や冷戦時代の紛争・紛争の記憶や、地域統合の中での民族のアイデンティティの問題、 経済発展の影となる社会問題などをテーマとしたような “socially engaged art (SWA)” (21世紀の現代美術の世界的な潮流の一つだが) が多く集められていた。 特に、国立新美術館の展示は、SEA色濃いものだった。 そんな多くの沢山の作品の中から、自分の目に止まった作家をいくつか。

森美術館の「歴史との対話」コーナーに展示されていた カンボジアの Vandy Rattana による、内戦中の地雷や爆弾でできた池を捉えた写真シリーズ Bomb Ponds (2009) は、 dOCUMENTA(13) [レビュー] でも観ているけれども、 人影も無く静かに緑に沈む様子を静かに端正に捉えた写真はかなり好みだと再確認。 内戦で失った会ったことも無い姉の眠る地—大量虐殺された何千人もの人が眠る地—訪れた時の様を 独白ナレーション付きで映像化した Monologue (2015) も、 大きく育った2本のマンゴーの木と周囲の緑を静かに抽象的に捉えた映像と、 淡々とナレーションに、逆に引き込まれるものがあった。

森美術館の「発展とその影」コーナーに展示されていたカンボジアの Lim Sokchanlina の 写真シリーズ National Road Number 5 (2015) は、 再開発で失われつつある国道沿いの古い安普請の家を捉えたシリーズ。 Edward Ruscha: Twentysix Gasoline Stations (1963) の21世紀初頭経済復興期カンボジア版のようでもあり、 ミッドセンチュリーのアメリカと、21世紀東南アジアの違いを見るようでもあった。

「発展とその影」コーナーには、 抽象化されたフレームとスピーカーでの振動で高速道路を表現した Zul Mahmod (シンガポール) の VIBRATE Vibration (2017) や、 宗教や政治に関するデモ・演説をモーターバイクとメッセージの描かれた旗によるインスタレーションで抽象化した Jompet Kuswidananto (インドネシア) の Words and Possible Movement (2013) など、 他にも印象に残る作品があった。

新国立美術館で印象に残ったのは、「日々の生活」コーナーのいくつかの作品。 パンジャブ系の生地店の様子を濃密なインスタレーションにしてあまり意識されない国際的な人の動きを示した Navin Rawanchaikul (タイ) の A Tale of Two Homes (2015)、 家屋の廃材や涙滴型の真鍮鋳物を構成した抽象化された象徴的なインスタレーションとナラティブなビデオを組み合わせた Arin Rungjang (タイ) の Golden Teardrop (2013) などだ。

この晩は『六本木アートナイト』ということで、 六本木ヒルズや東京ミッドタウンのあちこちで展示やパフォーマンスが行われていた。 あまり時間をかけずに軽く観て回っただけだので、ピンとくるものには出会えなかった。 Anish Kapoor / 磯崎 新 による Lecerne Fetival Ark Nova 2017 in Tokyo Midtown の内部を観ることもできたが、 さすがに Lecerne 関係以外の一般のイベントはここでやっていなかったため、少々空虚なものであった。 これもスペシャルミニコンサートをやっている時に見れば、また違ったのかもしれない。

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[3583] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Oct 1 22:14:37 2017

先週末日曜は、夕方遅くにふらりと横浜関内へ。 舞台作品を収録した映像の上映を行う神奈川芸術劇場 KAAT の企画 KAAT de CINEMA 2017 の中から、 このビデオを観てきました。

Back to the 80's
2017 / Centre National de la Danse (France) / 55min.
KOK, Régine Chopinot (choreo./dir.), 1988; Caramba, Philippe Decouflé (choreo./dir.), 1986; Les Raboteurs, Angelin Preljocaj (choreo.), Cyril Collard (dir.), 1988; Mammame, Jean-Claude Gallotta (choreo.), Raoul Ruiz (dir.), 1986; Tauride, Catherine Diverrès (choreo.), Téo Hernández (dir.), 1992; Dix Anges, Dominique Bagouet (choreo.), Charles Picq (dir.), 1988; La Fiancée aux Yeaux de Bois, Karine Saporta (choreo.), Luc Alavoine (dir.), 1989; Anne de la Côte, N+N Corsino (choreo.), Nicole Alix & Marielle Gros (dir.), 1986; Waterproof, Daniel Larrieu (choreo.), Jean-Louis Le Tacon (dir.), 1986; Violences civiles, Odile Duboc (choreo.), Jacques Renard (dir.), 1990; Etreinte (L'), Joëlle Bouvier et Régis Obadia (choreo./dir.), 1987; 46 Bis, Pascal Baes (dir.), 1988.
Compilation program edited by Cinémathéque de la Dance

フランス Centre National de la Danse のシネマテークによる1980年代フランスをテーマとした ダンス映像集。 画質も悪く、作品全体を捉えたものではなく短い抜粋も多く、YouTube や Vimeo の動画で観られるものも少なくないということは、 去年の Dance New Air での同様の上映 [レビュー] から予想が付いていたが、 上映会というきっかけが無いと集中して観る時間がなかなか取れないし、 大きな画面で見た方が細部が見易いので、足を運んだ。 さほど期待していなかったこともあるのか、セレクションが良かったのか、 Nouvelle danse française が興隆した1980年代のフランスのシーンの勢いと多様さが感じられ、 去年の Dance New Air の時よりも楽しめた。 以下、個別の作品について。

プロボクシングに着想した Régine Chopinot: KOK や、 見世物小屋的な Philippe Decouflé: Caramba では、 1980年代ならではのポップな完成度を持つキッチュさを楽しんだ。 Gustave Caillebotte の絵画に着想した Angelin Preljocaj: Les Raboteurs [YouTube] には後の映画監督としての活動につながるメタ映画的なセンスを見ることができた。 2015年にシャンソンで踊る可愛らしい舞台を見せてくれた Daniel Larrieu が ほとんどシンクロナイズドスイミングなWaterproof [YouTube のような作品を作っていたというのも、なんでもありの時代だったのだな、と。 Lili Boniche の歌うアラビア語のタンゴ “Ana El Owerka” に合わせて、 白黒コマ撮り (ピクシレーション) で撮影された動画 Pascan Baes: 49 Bis [YouTube] では、ヴィンテージ・フィルムを思わせるエキゾチックでノスタルジックな雰囲気が楽しめた。

Karine Saporta: La Fiancée aux Yeaux de Bois [YouTube] は母親の子供時代のロシアの農村の生活を伝える白黒フィルムに、それに着想したダンスを交えた作品。 Joseph Nadj にもつながる東欧的なマジックリアリズムを伺わせ、見た中で最も興味を惹かれた動画だった。 ジプシー音楽やクレツマーなど東欧のフォークに着想した音楽を手がけているのは Jean-Marc Zelwer。 Crammed Discs / Made To Measure からリリースされたアルバムは持っていたのだが、 その舞台の様子を知ることができたのも収穫。全編を通して観てみたい。

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KAATへは、電車1本、ドアツードアで30分余で行かれるようになったので、 週末くらいフットワーク良く気楽にこの手のイベントに足を運びたいものです。

[3582] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Oct 1 20:43:51 2017

先週末土曜の夕方は、東池袋から汐留へ移動。この展覧会を観てきました。

AMBIENT - Lifestyle Items Designed by Naoto Fukasawa
パナソニック汐留ミュージアム
2017/7/8-10/1 (水休, 8/14-16休), 10:00-18:00.

ミニマリスティックなプロダクト・デザインで知られるデザイナー 深澤 直人 の展覧会。 スマートフォン登場以前のデザイン携帯電話 INFOBAR、 和紙漉きの製法で作られた新素材ナオロンを使った SIWAマルニ木工の椅子、 パナソニックの高級家庭電化製品から、 無印良品の小型家電・家具まで。 Alessi, Herman Miller など 海外のデザイン・ブランドの製品も展示されていたが、 日本国内の製品が中心に展示されていた。

複数のメーカーの製品が混在しつつも、 ミニマリスティクに統一された雰囲気でまとめられているのはさすが。 無印良品の製品を中心に使っている製品もあり身近であり、 無印良品のシェルフに Alessi の台所用品が並べられたりと、 ショップではあり得ない組み合わせの妙も楽しめた。 しかし、パナソニックのショールームの上のフロアにあるミュージアムということで、 ショールームの延長 — 無印良品のワンランク上のショールーム — のような印象も否めなかった。 戦間期モダニズムのデザイン展 [Pierre Chareau, Weiner Werkstätte, Bauhaus] をはじめ 良企画の展覧会も多いデザインミュージアムなので、もっと硬派な展示になるかとも期待したのだけれど、そうはならなかった。 その一方、もしこれが東京都庭園美術館を会場にしていたら、かなり意味合いを異に感じたろう、とも。 会場の文脈の影響の大きさも実感する展覧会だった.

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[3581] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Oct 1 19:02:48 2017

先週末の土曜は、午前に彼岸墓参を済ませて、午後に東池袋へ。この舞台を観てきました。

WHS & Sungsoo Ahn Pick-up Group
あうるすぽっと
2017/9/23, 14:00-15:00.
Concept and direction: Sungsoo Ahn and Ville Walo. Choreography: Sungsoo Ahn.
On stage: Juhee Lee, Boram Kim, Kungmin Jang, Hyun Kim, Jeeyeun Kim, Ville Walo.
Production: Sungsoo Ahn Pick-up Group & WHS
Premiere 18.8.2012 at Helsinki Festival.

フィンランドのヴィジュアルシアター/現代サーカスの団体 WHS の共同芸術監督である Ville Walo と、 韓国 KNCDC (Korean National Contemporary Dance Company) の芸術監督 Sungsoo Ahn の 国際共同制作による作品。 関連する作品を観たことはなく、作風などに予備知識は無かったが、 サーカス的な要素を持つコンテンポラリーダンスという期待もあって、足を運んでみた。

コンテンポラリー・ダンスらしい、装飾を抑えて最低限の舞台美術とライティングによる演出。 KNCDCのダンサーが出演していたようで、後半になるにつれキレのいい動きを楽しめた。 作品は整形手術ということだったが、顔を対象とする主題と全身を使った表現とに相性が悪かったか、 むしろ、タイトルにあるような様々な身体イメージの重ね合わせの妙をみせるよう。 左右二人の影を舞台中央で合成したり、少し異なるポーズの4人の影をコマ送りのように投影したりと、 影を使った演出は面白かった。 が、サーカス的な要素はジャグリング程度。 整形された顔の象徴だろうか、マネキンの腰部を複数使ってジャグリングしたり、 首の後ろに乗せて違バランスを取って、もう一つの顔が付いた姿を示したり。 しかし、ジャグリングというよりサーカスならではのアクロバティックでトリッキーな動きを 期待していたところもあったので、少々肩透かしだった。

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[3580] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Sep 24 22:27:58 2017

先の木曜は夏季休暇の消化。というわけで、午後に渋谷へ出てオペラを観てきました。

NHKホール (渋谷)
2017/09/21, 15:00-20:00.
Komponist: Richard Wagner · Libretto vom Komponisten.
Inszenierung, Bühne, Kostüme, Licht: Romeo Castellucci.
Choreographie: Cindy Van Acker; Regiemitarbeit: Silvia Costa; Dramaturgie: Piersandra Di Matteo, Malte Krasting; Videodesign und Lichtassistenz: Marco Giusti.
Cast: Georg Zeppenfeld (Hermann, Landgraf von Thüringen), Klaus Florian Vogt (Tannhäuser), Matthias Goerne (Wolfram von Eschenbach), Annette Dasch (Elisabeth, Nichte des Landgrafen),
Musikalische Leitung: Kirill Petrenko
Bayerisches Staatsorchester, Chor der Bayerischen Staatsoper.
Neuinszenierung, Premiere am 21. Mai 2017.

イタリアの現代演劇の文脈で活動する演出家 Romeo Castellicci が演出を手がけた Wagner のオペラ Tannhëuser の来日公演。 Castellicci 演出の作品は、 Divina Commedia 『神曲』三部作 [レビュー] や The Phenomenon Called I [レビュー] を観ているけれども、 俳優やダンサーの演技ではなく舞台装置や照明、音響でその雰囲気を作り出すような演出だったため、 オペラの演出ではどうなるのかという興味もあって、足を運んでみた。 もちろん、メインのキャストだけでなく、オーケストラも含めてフルに来日しての公演なので、 欧州の歌劇場付きオーケストラの演奏も楽しめるのではないかという期待もあった。

大きな円形に投影された目の映像に向かって上半身裸の女性たち舞台一列に並んで洋弓で矢を射続ける Overture での演出から、ケレン味たっぶり。 第1幕の演出は手前にほぼ透明なスクリーンを張って、後方に両腕を下に開いた女性の人型にくり抜かれた窓 (のちに円形になる) を作って、そこの中かでも映像を投影しているかのようなパフォーマンスを見せていた。 Divina Commedia. Purgatorio 『神曲 — 煉獄編』 を思わせるような演出だった。 Venus はいわゆる美しい「ビーナス」ではなくぶとっとした肉の塊に上半身が付いているような造形。 その周りに人の形もほとんど失ってしまい、ぶよぶよと動く塊がうごめいている。 とてもグロテスクな Venusberg の描写だった。

Tannhäuser が戻って Elisabeth の前で歌合戦をする Wartburg 城の第2幕では、 するする動いて次々と様相を変えていく大きな半透明のカーテンを使った演出は美しかった。 これが清らかな精神的な愛の象徴である一方、床上を蠢くダンサーの演出は、その下に抑圧されている肉欲の象徴か。 最初は背景だが、歌合戦に入ると半透明な箱入りとしで前面に押し出されてくる。 蠢くダンサーたちは肌色のボディスーツ着てたように見えたが、本当は全裸でやりたかったのだろうか。 カーテンの向こうで背景として蠢く人々のイメージは、 The Phenomenon Called I の観客で作り出したイメージとも重なるよう。

Venusberg からの脱出口となった女性の人型の穴だが、 第2幕では相補的な裸の女性の姿として Elisabeth の白ドレスの前にプリントされていた。 このプリントは半透明の布の上にプリントされており、 歌合戦で Tannhäuser が愛を歌うと Elisabeth のドレスからその布が外され、 Tannhäuser がその布を抱きしめるという。 少々図式的に過ぎるかなとも思いつつ、Tannhäuser によっての Elisabeth の2面性 (精神的/肉体的な愛の対象) が象徴的に示されているよう。

第3幕は話を進めつつも、早々に、 Tannhäuser と Elisabeth の亡骸 (もちろん模型だが) を石の棺の上に並べ、 その亡骸が朽ちていく様を九相図よろしく示していく。 (観ている間は九相図に考えが至らず模型を入れ替えた回数を数えていなかったのだが、9回であればまさに九相図を参照したのだろう。) 最後は2人とも灰となり、2人の灰は一緒にされる。 亡骸となった肉体が朽ち果てて形を失うこと (肉体を失うこと) を、Tannhäuser と Elisabeth の救済として描いてるよう。 棺に役の名前 (Tannhäuser と Elisabeth) ではなく歌手の名前 (Klaus と Annette) が刻まれていたのが気になったのだが、演出意図は掴みかねた。

第1幕のグロテスクな Venusberg といい、第3幕の「九相図」といい、 Venus に象徴される「肉体 (的な愛)」を醜くグロテスクなものとして否定的に描いた演出だった。 グロテスクなイメージは Castellicci らしいと思いつつ、Venus の側をここまで否定的に描いたのは少々意外だった。 もちろん、これはオリジナルの意図に比較的忠実なもので、 対等なものとして描くほうが現在の価値観に即した解釈になるんだろうけれども。

休憩を除いても3時間余り。話の展開は遅く少々退屈した時があったのも確か。 しかし、Der Ring des Nibelung [レビュー] でもそうだったので、それは覚悟の内。 演劇作品とちがって、オペラ歌手の個性というか登場人物のキャラクターを殺さない演出だったので、 Divina Commedia 『神曲』三部作よりとっつきやすく、歌や音楽もあってかさほど退屈せずに楽しめた。

欧州の歌劇場付きオーケストラの演奏も楽しんだが、その良し悪しについては判断しかねる。 (本来の歌劇場と会場となったホールの違いもあるだろうし。) しかし、Klaus Florian Vogt の歌声の美しさには耳を奪われた。 男らしい力強さを感じるというより、ハイトーンも優美で通る歌声で、Venus と Elisabeth の間で引き裂かれる優男のようにすら感じられた。 Vogt は Kasper Holten 演出の Die tote Stadt を観たとき [レビュー]、 その予習復習で観たDVD [YouTube] で聴いていたので、 そこでの優男の印象を引きずったということもあるかもしれないが。 生で聴いて Vogt の良さを実感することができた。

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[3579] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sat Sep 23 0:29:33 2017

先の週末日曜は雨。の中、昼過ぎには仙川へ。このライブを観てきました。

中村 達也 + PIKA + 坂本 弘道 with ながめくらしつ
JAZZ ART せんがわ 2017
せんがわ劇場, 仙川
2017/09/17, 13:30-15:00
中村 達也 [Tatsuya Nakamura] (drums), PIKA (drums, electric guitar, vocals), 坂本 弘道 [Hiromichi Sakamoto] (cello, musicalsaw, electronics), with ながめくらしつ [Nagamekurasitsu]: 目黒 陽介, 鈴木 仁 (juggling), 長谷川 愛実 (aerial, dance), 安岡 あこ (dance).

日本の jazz/improv のミュージシャンをメインとしたフェスティバル JAZZ ART せんがわ は今年で10周年。 2014年 [レビュー] まで毎年通っていたものの、 そこで途絶えてしまっていたのですが、10周年ということで、3年ぶりに足を運んでみることにしました。 観たのは、ジャグリング・カンパニーの ながめくらしつ [レビュー] が共演した回。 坂本 弘道 は ながめくらしつ の音楽も担当してきているので、顔合わせはとしては意外ではなく、 むしろ、せんがわ劇場の狭い舞台をどう使うのかというところが一番の興味でした。

ながめくらしつ というより大道芸でのユニット うつしおみ [関連写真] のような ミニマルな構成でくるかと予想していたのですが、なんと4名も登場。 さすがに4名同時に出てくることはほとんどありませんでしたが、 狭い舞台に、さらにドラムセット2つや並び、electic guitar や cello / electronics の機材が並ぶ中、よくやったなと感心してしまいました。

ツインドラムの編成でラウドな叩き合いになるかと思いきや、 前半は PIKA はドラムを叩かず、electric guitar を弾きながら歌うというもの。 叙情的というよりJ-Pop的な素朴な実感をそのまま歌にしたような歌詞は、 パフォーマンスに合っていなかったようにも感じました。 演奏とパフォーマンスが合わさったことによる妙はほとんど感じられませんでしたが、 作り込んだ舞台公演でもないですし、ま、こんなものでしょうか。

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[3578] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Sep 19 0:00:10 2017

今週末土曜の午後は恵比寿へ。写美へ行って、展覧会を一通り観てきました。

Japanese Expanded Cinema Revisited
東京都写真美術館 地階展示室
2017/08/15-2017/10/15 (月休) 10:00-18:00 (木金-20:00; 8/17,18,24,25 -21:00)
飯村 隆彦, シュウゾウ・アヅチ・ガリバー, おおえまさのり, 松本 俊夫, 城之内 元晴, 真鍋 博, 佐々木 美智子, etc.

エスクパンデッド・シネマは、1960年代後半から1970年代前半にかけて前衛映画や美術の文脈で展開した 映画館など通常の上映形態とは異なる形で上映される映画を指す言葉とのこと。 この日本での展開を収蔵資料とともに構成した展覧会。 記録資料中心の展示と思いきや、 18台ものスライド・プロジェクタを中央に配して円形に投影した シュウゾウ・アヅチ・ガリバー 「シネマティック・イリュミネーション」 (1968-1969) の再現があるなど、期待していたより頑張った展示でした。 撮影、編集、投影いずれも現在のヴィデオに比べて技術的な制約が遥かに大きく、カウンターカルチャーなサイケデリックな時代を感じざるを得ず、 作品として楽しんだという程ではありませんでしたが。 図録を読めば書かれているのかもしれないですが (図録は未入手)、ほぼ同時代の 『Re: play 1972/2015―「映像表現 '72」展、再演』 (東京国立近代美術館, 1972) [レビュー] と出展作家に被りが無く、こちらの展覧会では「エクスパンデッド・シネマ」という言葉はほとんど使われておらず、この関係について少々気になりました。

TOP Collection: Scrolling Through Heisei | Part 2. Communication and Solitude
東京都写真美術館 3階展示室
2017/07/15-2017/09/18 (月休) 10:00-18:00 (木金-20:00; 8/17,18,24,25 -21:00)

春季 [レビュー] に続いて、 今年度3期に渡って開催される平成年代の作品からなるコレクション展の第2期。 テーマから想像されるよりコンセプチャルでフォーマルな作風の作品もあり、自 生前に撮った母親の火傷痕や遺品をむしろ即物的に端正に捉えた 石内 都 「mother's」 [レビュー] は良い作品。 私的でナラティヴな作風の写真は基本的に自分の好みではないのだが、 中村 ハルコ 「光の音」 (1993-1998) [レビュー] にはなぜか惹かれるところがある。 何に惹かれているのか自分でもうまく言語化できないのだが、今回も思わず足が止まってしまった。

ARAKI Nobuyoshi: Sentimental Journey 1971-2017-
東京都写真美術館 2階展示室
2017/07/25-2017/09/24 (月休) 10:00-18:00 (木金-20:00; 8/17,18,24,25 -21:00)

1990年代に死別した妻「陽子」というテーマに焦点を当てた展覧会。 被写体との距離の取り方が、石内 都 「mother's」などと正反対で、 やはり苦手だなあ、と最確認したような展覧会だった。

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[3577] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Sep 18 1:05:20 2017

先週末日曜晩に新宿二丁目へ。このライヴを観てきました。

Steiner Raknes & Tore Brunborg
新宿 Pit Inn
2017/09/10, 20:00-21:30.
Steiner Raknes (doublebass), Tore Brunborg (tenor saxophone).

Tronheim Jazz Orchestra などで活動する doublebass 奏者 Steiner Raknes と、 1980年代の Arild Andersen, Jon Christensen, Nils Petter Molvær らとのグループ Masqualero で知られる Tore Brunborg という、 2人のノルウェーのミュージシャンによるデュオ。 途中休憩を入れて前半と後半、それにアンコール1曲で、約1時間半、 リリースされたばかりのデュオでのアルバム Backcountry (Reckless, 2017) からの自作曲を重心に演奏したライブ。

ソフトな音色の tenor sax と、弓を使わず高音域を多用した doublebass が、歌い合わせるような演奏だった。 オリジナル曲中心とのことだったけれども、親しみやすいメロディの歌ばかり。 (2曲目は Chris Isaak の “Wicked Game” のようにも聴こえた。) 特殊奏法を多用するわけでも、エレクトロニクスの効果を加えるわけでもなく、斬新な音というわけではなかったが、 drums のいない Jewels & Binoculars [レビュー] のよう。 こういう演奏は好みだ。 日曜晩にリラックスして聴くのにうってつけの音楽だった。

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[3576] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Sep 17 22:56:06 2017

すでに先々週末の話になってしまいましたが、観た映画の話。

2016 / 118min. / color.
Written and Directed by Jim Jarmusch.
Cinematography: Frederick Elmes. Music: SQÜRL.
Adam Driver (Patterson), Golshifteh Farahani (Laura), etc
Production: K5 International, Amazon Studio, Inkjet Production, in association with Le Pacte, Animal Kingdom (USA / France / Germany)
予告編 [YouTube]

1980年代に独立系の映画監督として頭角を現したアメリカの映画監督 Jim Jarmusch。 1990年代までは新作が出ると必ずのように観ていたのですが [レビュー]、 2000年代以降は新作映画への興味が薄れたこともあり、すっかり遠ざかってしまっていた。 前日、National Theater Live を観たときに予告編がかかって、それがとても良い雰囲気だったので、観に行ってみた。

アメリカはニュージャージー州パターソン (Paterson, NJ, USA) で働くバス運転手 Paterson の一週間の生活を淡々と綴った約2時間。 平日は朝決まった時間に起きて、働きに出て、帰宅後妻と夕食を食べて、犬の散歩ついでにいきつけのバーで一杯やってという、ルーチンな生活。 カントリーシンガーとかカップケーキ屋とか夢見がちと一癖ある妻がいるけれども、それで大問題を引き起こすわけでなく、可愛いと思える程度。 週末もフリーマーケットに出店する妻を手伝ったり、映画館に古い映画を夫婦で観に行く。 そんな Paterson は詩が好きで、そんな平凡な日常生活の中、詩を詠んでノートブックに書き留めている。 週末に詩を書き留めたノートブックを飼い犬にぼろぼろにされ、少々気を病むのですが、結局新たなノートブックがに入り、再び変わらない日常が続くという。 そんあさりげなく日常を観察したような即興的な詩を、映像化したような映画だった。 バス運転手のルーティンなささやかな日常生活が、この映画の中だけは詩的に感じられてしまうような。

ちなみに、映画中で使われた詩は、詩人 Ron Padgett が映画のために書き下ろしたもの [PBSの記事]。 William Carlos Williams は Paterson という詩を書いており、 Allen Ginsburg の生まれた町でもあって Howl にその名を読み込んでいることも、 映画の中に織り込まれている。 Paterson はそんな詩人たちへのオマージュも感じさせた。

一点のひっかかりは、Paterson が退役軍人というか帰還兵という設定ということ。 バス故障対応のエピソード、いきつけのパーで銃を持った男を取り押さえるエピソードなど、 そんな元兵士の片鱗を感じさせる場面もある。 そんな出来事があった翌朝の少々寝起きの悪い感じの描写などPTSDかと深く詮索したくもなります。 しかし、そんなこともとてもさりげない描写に止め、 大きな事件に発展させることなく話が進めていくところも、この映画の良さと感じた。

最近、オペラとかバレエとか、過剰なまでにロマンチックでメロドラマチックなものを観ることが多いので、 たまには Paterson のような映画を観て、過剰さを洗い流したいものです。

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[3575] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Sep 11 23:06:23 2017

先々週末の話になりますが、9月2日の土曜は昼過ぎに日本橋室町へ。このイベント・シネマを観てきました。

Royal Opera House, 11 September 2017.
Emmanuel Plasson (conductor), Orchestra of the Royal Opera House.
上映: TOHOシネマズ日本橋, 2017-09-02.
Choreography: Frederick Ashton.
Music: Felix Mendelssohn. Musical arrangement: John Lanchbery. Designer: David Walker.
Performers: Akane Takada [高田 茜] (Titania), Steven McRae (Oberon), et al.
Premiere in 1964.
Choreography: Frederick Ashton.
Music: César Franck. Designer: Sophie Fedorovitch.
Performers: Marianela Nuñez, Vadim Muntagirov, Yasmine Naghdi, James Hay, Yuhui Choe, Tristan Dyer
Paul Stobart (piano).
First performed on 24 April 1946.
Choreography: Frederick Ashton
Music: Franz Liszt. Orchestration: Dudley Simpson. Designer: Cecil Beaton.
Dancners: Zenaida Yanowsky (Marguerite), Roberto Bolle (Armand), etc
Robert Clark (piano)
Created for Rudolf Nureyev and Margot Fonteyn in 1963.

Royal Opera House Cinema Season 2016/17 の最後のバレエプログラムは、 1963-1970年に Royal Ballet の芸術監督を務めた Frederick Ashton 振付のトリプルビル。 といっても、Ashton の作品は観たことありません。 Zenaida Yanowsky の引退公演ということもあり、半ば勉強気分で、観てきました。

最初の作品は William Shakespeare の喜劇 A Midsummer Night's Dream 『真夏の夜の夢』に基づく、 Felix Mendelssohn が付けた劇音楽を使った、クラシカルな物語バレエ。 Steven McRae の身体能力を堪能するなら、 Woolf Works [レビュー] のような抽象的な現代バレエだな、と、つくづく。日本人プリンシパルの 高田 茜 をじっくり観ることが収穫だったでしょうか。

続く、Symphonic Variations は第二次大戦終戦直後に作られた クラシカルなテクニックに基づく抽象バレエ。 George Balanchine の Le Palais de Cristal [レビュー] が1947年で、 Harald Lander の Études [レビュー] も初演は1948年。 第二次世界大戦終戦直後は、クラシカルな抽象バレエが流行だったのかな、と思いつつ観ました。 イベントシネマならではの幕間のインタビュー映像での、終戦直後で食べることにも事欠く中練習したとういう当時の出演者の話も印象に残りました。

最後に、今回の一番の目当てだった Zenaida Yanowsky の Royal ballet のプリンシパルとして最後の舞台。 オペラ La Traviata 『椿姫』の原作 Alexandre Dumas fils: La Dame aux camélias に基づく物語バレエです。 タイトルも原作での登場人物名から採っているくらいなので、オペラとはかなり異なる構成かなと予想していたのですが、 オペラのバレエ化といっても違和感がないくらいの場面構成でした。 クラシカルなテクニックで踊りまくるような場面がほとんどなく、 Yanowsky らの演技の上手さもあって、バレエというよりメロドラマティックなダンスシアターを観ているよう。 Willy Decker 演出 [レビュー] ほど現代的ではないものの、すっきり抽象化された舞台美術も良かったです。

Yanowsky というと、 Alice's Adventures in Wonderland [レビュー] での The Queen of Hearts (ハートの女王) や、 Winter's Tale [レビュー] での Paulina のような、 コミカルだったり男前だったりする個性的な難役を演じきる演技力が印象的だったのですが、 『椿姫』の Marguerite (Violetta) のようなメロドラマ・ヒロインも全然いけるということに気付かされました。 相手役は、Aurélie Dupont 引退公演の L'Histoire de Manon [レビュー] でも相手役を務めていた Roberto Bolle。 (他にも多くの引退公演で相手役を務めているようで、バレエ・ファンの間で「引退公演請負人」などと 呼ばれているのを知って、笑ってしまいました。) バレエダンサーというより体操選手のようなシャープな雰囲気すらある Steven McRae などと違い、華のある優男な雰囲気のあるバレエダンサー。 自分の好みは別として、このような優男はメロドラマ・ヒロイン相手役としてバレエ団には不可欠だなあ、と。

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[3574] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Sep 11 0:15:53 2017

夏休みにした8月30日の晩は、北浦和から渋谷桜丘へ移動。この公演を観てきました。

『マクベス』
Macbeth
渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール
2017/08/30, 19:00-20:30.
構成・演出・振付: 森 優貴 [Yuki Mori].
出演: 森 優貴 [Yuki Mori]、池上 直子 [Naoko Ikegami].
初演: 2017/08/18, 神戸文化ホール中ホール 『ダンス×文学シリーズvol.1』

Theater Rengensburgダンス部門の芸術監督・振付家を務める 森 優貴 の日本制作でのダンス公演を観てきました。 自分がアンテナを張っている方面から少々外れていたせいかほとんどノーチェックだったのですが、 偶然インタビュー記事を目にし、 劇場の YouTube チャンネル で 過去の作品のトレーラー (The Jouse, Loops, など) を見た所、 良さげだったので、足を運んでみました。

William Shakespeare の Macbeth をベースに、 Macbeth 夫婦に焦点を当てて抽象化した、二幕もののダンス作品でした。 舞台美術は抽象化的な背景にテーブルやソファなど。 取り囲むように配置された三体のマネキン様の人形は Three Witches でしょうか。 後半の薄いスモークをかけて照明を使って背景を消すなど面白いと感じる演出があったのですが、 Theater Regensburg の YouTube チャネルで観たほど、 スタイリッシュと感じられるダンスではなく、全体としてはいまいちピンときませんでした。

そもそも、会場が「伝承ホール」という日本の伝統芸能の公演のためのホールで、 ステージが狭くて奥行きもなく、およそダイナミックなダンスの動き向きではなさそうというのが残念なところ。 世田谷パブリックシアターのシアタートラムか、東京芸術劇場のシアターイースト/ウェストのような会場だったら、 そして、美術や照明にもっとリソースが割けていれば、もっとスタイリッシュな作品に観えたのかもしれないな、と。 そういう劇場やプロダクションのためのスタッフも含めて、ダンスはやはり総合芸術なんだと、つくづく思った公演でした。

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若干自分の守備範囲外かなと思いつつも、たまにはそういう公演に足を運ばないと、ますます視野が狭くなってしまいます。 それにしても、普段、自分が見に行っているコンテンポラリーダンスやコンテンポラリーサーカスとはかなり異なる客層。やはりバレエの文脈なのでしょうか。ふうむ。

[3573] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Sep 11 0:05:37 2017

既に先月の話になってしまいましたが、8月30日は夏休み取得。 不安定な天気で昼から雷雨になってしまいましたが、そんな中、会期末が迫ったこの展覧会を観てきました。

遠藤 利克
ENDO Toshikatsu: The Archaeology of the Sacred
埼玉県立近代美術館, 2017/07/15-08/31 (月休,7/17開), 10:00-17:30.

1980年代から活動する現代美術作家 遠藤 利克 の個展です。 シンプルな形状の大きな木彫を炭化させたような作品など、 所沢でバイアニュアルで開催されている『引込線』 [レビュー などのグループ展で、 圧倒的な質感と存在感が印象に残っている作家ですが、 こうして美術館レベルの個展でまとめて観るのは初めて。 ある程度作風の展開を伺うことができる展示でしたが、2010年代の作品を中心とした構成で、回顧展という感じではありませんでした。

ミニマル・アートやもの派に連なる作風だと思ってはいましたが、 コンセプトというか作品を着想する源には物語的な面もあったことに、と気付かされました。 水を使った作品など炭化した木の立体以外の作風の作品も、コンセプトという面で繋がりがあり興味深くありましたが、 やはり、焼かれて炭化したマッシブな木に質感のかっこよさを堪能しました。 大きな立体作品を作る作家なので、広いギャラリー空間に、疎らに作品を並べるような展示を予想していたのですが、 ギャラリーを迷宮のように細かく区切って、1つ1つの作品が限られた空間いっぱいに広がるよう。 視野が限られて、俯瞰的な視点が持ちづらいため、 彫刻の大きさが強調される一方、マクロな形状よりもディテールに目に行きました。 特に、炭化した木の表面といっても、一様ではなく、黒くなった程度のものから、炭化が進んでぼろぼろになる寸前まで、その質感の多様さに気付かされました。

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[3572] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Sep 3 23:28:29 2017

また、先週末の話ですが、先週末の日曜晩に、このイベントシネマを観てきました。

『コンテンポラリー・イブニング』
Большой театр, 19 марта 2017 г.
上映: 文化村ル・シネマ, 2017-08-27.
Choreographer: Jerome Robbins.
Music: Concerto in D for String Orchestra, “Basler” (1946) by Igor Stravinsky.
Costume Designer: Ruth Sobotkal; Sets by Jean Rosenthal
Premiere: June 10, 1951, New York City Ballet, City Center of Music and Drama
Действующие лица и исполнители [Cast]: Анастасия Сташкевич [Anastasia Stashkevich] (Novice), Янина Париенко [Yanina Parienko] (The Queen), Никита Капустин [Nikita Kapustin] (The First Intruder), Эрик Сволкин [Erick Swolkin] (The Second Intruder), и другие
Дирижер: Игорь Дронов [Conductor: Igor Dronov].
Choreographer: Alexei Ratmansky [Алексей Ратманский].
Music: The Russian Seasons by Leonid Desyatnikov [Леонид Десятников].
Costumes by Galina Solovyeva; Lighting by Mark Stanley.
Premiere: June 8, 2006, 2006 Diamond Project, New York State Theater
Действующие лица и исполнители [Cast]: Юлия Степанова [Yulia Stepanova], Владислав Лантратов [Vladislav Lantratov] (Couple in Yellow (then in white)); Екатерина Крысанова [Ekaterina Krysanova], Денис Савин [Denis Savin] (Couple in Red); Анна Никулина [Anna Nikulina], Антон Савичев [Anton Savichev] (Couple in Green); Анна Окунева [Anna Okuneva], Дмитрий Дорохов [Dmitry Dorokhov] (Couple in Blue); Виктория Литвинова [Victoria Litvinova], Артур Мкртчян [Artur Mkrtchyan] (Couple in Violet); Виктория Якушева [Victoria Yakusheva], Михаил Кочан [Mikhail Kochan] (Couple in Claret Red); Яна Иванилова [Yana Ivanilova] (Soprano)
Дирижер: Игорь Дронов [Conductor: Igor Dronov].
Choreographer: Harald Lander. Sceneries, costumes and lighting by Harald Lander.
Music: Carl Czerny arranged and orchestrated by Knudage Riisager.
Costumes by Galina Solovyeva; Lighting by Mark Stanley.
Premiere: 18 January 1948, Royal Danish Ballet, Royal Theatre in Copenhagen. Recreated: 1952, Ballet de l'Opéra national de Paris.
Действующие лица и исполнители [Cast]: Ольга Смирнова [Olga Smirnova] (Ballerina); Артем Овчаренко [Artem Ovcharenko], Семен Чудин [Semyon Chudin] (Principal Dancers); и другие
Дирижер: Игорь Дронов [Conductor: Igor Dronov].

Большой балет в кино [Bolshoi Ballet in cinema] Season 2016/17 の中で、 「コンテンポラリー作品」を集めたトリプルビル。 Большой балет ならではのレパートリーというほどではありませんでしたが、 日本ではコンテンポラリーの演目を観られる機会も少ないので、これも良い機会と観てきました。

といっても、The Cage は1951年、 Études は1948年 (上演は1952年の改訂版)、と、 第二次世界大戦の終戦直後の作品です。 昆虫の生殖を題材とした The Cage は、動きも虫を擬したような、 表現主義的にすら感じられるもの。1950年頃にはこんな作品も作られていたのか、と。 Études はバレエのレッスンでの動きを構成してショーとして仕上げたような作品。音楽も練習曲。 ライティングで足の動きだけ見せたり、シルエットを見せたり、と基本動作の美しさと見せるような作品でした。 このようなメタな作品は、バレエの型に詳しく、なおかつ思い入れがある人なら面白いのでしょう。

最も楽しめたのは Russian Seasons。 振付の Алексей Ратманский [Alexei Ratmansky] は2004年から2008年まで Большой балет の芸術監督でしたが、この2006年の作品は New York City Ballet のための作品です。 Ратманский の振付といえば、 Светлый ручей 『明るい小川』の復元上演を観ていますが [レビュー]、 こちらがクラシカルな物語バレエだったこともあり、あまり期待していませんでした。 しかし、6色のシンプルなイブニングドレス風 & シャツパンツの姿の6組の男女が踊る抽象バレエ。 衣装だけでなく、舞台装置なしで照明のみの演出もミニマルでとても好み。 ロシアの民謡に基づく時に歌入りの Leonid Desyatnikov [Леонид Десятников] の音楽に載って、 ロシアの農村における四季の儀式というか祭礼 (宗教的なものもあれば非宗教的なものもあったよう) を抽象化してバレエ化。 音楽もダンスも、ほのかに香るロシアの民俗 (フォーク) のイメージとモダンで抽象的な美しさのバランスが絶妙でした。

Russian Seansons のような音楽 and/or 衣装のプログラムで滑る フィギュアスケート選手が出てこないかな、と思いつつ観てしまいました。 昨シーズン、Alfred Schnittke で滑った Мария Сотскова [Maria Sotskova] [関連発言] はそこに最も近い所にいたと思ったのですが。 今シーズンは SP が Debussy の Claire de Lune、 FS が Tschaikovsky の Swan Lake の waltz だとのことで、かなり保守的な選曲。 EX は民謡の Калинка [YouTube] ですが、 こういうベタな民謡ではなく、 Russian Seansons のような曲を使う方が美しく仕上がりそうなんだけどなあ、と。

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そういえば、フィギュアスケートの2017/18シーズンが開幕しましたね。 ISUの Junior Grand Prix シリーズが始まってます。 子供っぽい雰囲気の演技は好みではないので、Junior は観ることないかな、と思いつつ、 YouTube でストリーミングしているので、つい観てしまいます。 移動中に観られるのもありがたいのですが、そうでなくても持ちの悪い iPhone のバッテリーが……。

[3571] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Sep 3 21:18:55 2017

先週末の話になりますが、土曜午後に Met Live in HD 2016-2017 アンコール上映観た後、表参道へ。この展覧会を観てきました。

Dan Flavin
『ダン・フレイヴィン』
Espace Louis Vuitton Tokyo (表参道)
2017/02/01-2017/09/03 (無休) 12:00-20:00 (臨時休業、開館時間変更はウェブサイトで告知)

1960年代に Minimal art の文脈で知られるようになり、20世紀後半に活動したアメリカの現代美術作家 Dan Flavin の小規模な個展。 蛍光灯を使った Op art としても知られます。 美術館の常設展示やグループ展でよくその作品を観たことがありましたが、個展は初めて。 今回は代表作の一つ “Monument” for V. Tatlin 連作の4作品をメインに7作品が展示されていました。 こうして観ると、単調にマッシブに並べるようなインスタレーションとは異なり、様々な長さのコンポジションの妙を感じさせる作品だということに気付かされました。

しかし、まじまじと観ていると、白い色でも蛍光灯の管の色の違いに気付かされます。 管にプリントされたメーカーや型番までチェックしてみたのですが、必ずしも統一されていません。 カラーの管も “Yellow Special” などとプリントされており、限定生産かもしれませんが、作家が色を付けたのではなく、既製品なのだなあと。 よくよくみると、極の近くが黒ずんでかなり劣化が進んでいる蛍光灯もありました。 制作されて50年以上つものもあり、寿命が来て交換した管もあるのだろうかと思ったりしました。 しかし、会場で配られていたリーフレットを読むと、 「これらの“モニュメント”の寿命は照明装置が機能している間(2,100時間)に限られるのです。」 という作家の言葉もあり、蛍光灯の寿命が切れても交換しないのが、作家の意図のよう。 白色の蛍光灯の管の色の違いも、経年劣化の進行のばらつきのせいなのかもしれません。

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[3570] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Aug 28 23:45:36 2017

土曜は昼過ぎに築地へ。Met Live in HD 2016-2017 のアンコール上映を観てきました。

『ばらの騎士』
from Metropolitan Opera House, 2017-05-13, 13:00–15:35.
Composer: Richard Strauss. Libretto: Hugo von Hofmannsthal.
Production: Robert Carsen.
Set Designer: Paul Steinberg. Costume Designer: Brigitte Reiffenstuel. Lighting Designer: Robert Carsen, Peter Van Praet. Choreographer: Philippe Giraudeau.
Cast: Renée Fleming (Marschallin), Elīna Garanča (Octavian), Erin Morley (Sophie), Günther Groissböck (Baron Ochs), Markus Brück (Fininal), Matthew Polenzani (a singer).
Conductor: Sebastian Weigle.
Premiere: Court Opera, Dresden, 1911.
New Production: Apr. 13 - May 13, 2017. Co-production of the Metropolitan Opera; Royal Opera House, Covent Garden, London; Teatro Colón, Buenos Aires; and Teatro Regio di Torino.
上映: 東劇, 2017-08-26 13:30-17:54 JST.

第一次大戦直前に作られた Richard Strauss による大作オペラ。 『オペラの運命』 (中公新書, 2001) [読書メモ] や 『メロドラマ・オペラのヒロインたち』 (小学館, 2015) など、 岡田 暁生 のオペラに関する本を読んで気になっていた作品ということもあり、良い機会かと Met Live in HD で観てきました。 ということで、あらすじや Mozart の喜劇オペラを意識した作品だという予備知識はありました。 それでも、Richard Strauss というと、Elektra の無調音楽寸前の音楽の印象も強く [レビュー]、 これで3時間半は辛そうだなあ、とも、思ってました。 結果としては、音楽としても軽妙さもある風刺のきいた風俗喜劇が楽しめました。

演出は、Patrice Chéreau の Elektra や、 Willy Decker の La Traviata [レビュー] のような 現代的なミニマリズムではなく、そういう点ではさほど好みのものではありませんでした。 原作の Maria Teresia 時代のロココな1740年代 (Mozart が活躍する少し前の時代) ではなく、 作品が作られた20世紀初頭、第一次大戦直前のウィーンとしていたのは、 この作品がハプルブルグ帝国の終焉、というか、宮廷文化、貴族文化の名残がある19世紀的な欧州近代社会の終焉という時代の雰囲気を反映した作品だった、 という点を明確化するという点でも効果的だったでしょうか。 Baron Ochs は単純な道化役ではなく、没落しつつつあるハブスブルグ帝国の貴族将校であり、 軍事産業で財をなした新興ブルジョア Faninal 家の娘 Sophie と、財産目当てに愛の無い結婚をしようとする、という魅力的な悪役。 最後には愛人 Octavian から身を引く元帥夫人 (Marschallin) の仕掛ける恋のかけひきに 全てには終りがある諦観もにじませた喜劇というより、 20世紀初頭、没落する貴族と新興するブルジョアを風刺する風俗喜劇のようなっていました。

第一幕はロココではなく19世紀の歴史主義的な貴族の邸宅、 第二幕はいかにも20世紀初頭らしい Vienna Secession というか Jugendstil なモダン邸宅 (Vienna Secession のパトロンであった実業家 Karl Wittgenstein を連想させる)、 第三幕は居酒屋ではなく20世紀初頭の退廃的な雰囲気のある娼館。 第一次大戦直前の雰囲気ってこうだったのかな、と、楽しめました。 しかし、エンディング、若い二人の幸福を子供の召使を出して単に異化するのではなく、 軍靴 (第一次世界大戦) でぶち壊して終えるのは、その時代を描くという意味ではわかるけれども、残酷。 古典的な作品をその舞台とする時代を変えて翻案するということはよくあるわけですが、 先日観た National Theatre の The Threepenny Opera も そうでしたが [レビュー]、 制作された時代に移すこの翻案は正攻法なのかもしれません。

アリアは第1幕中の元帥宅を訪れた「歌手」が歌うだけというメタな使われ方で、歌というよりもセリフに近いようなものも多いもの。 第3幕の終幕の三重唱もそうですが、対話的というよりお互いの違う立場の歌詞を重ねるように歌うことが多いのが印象的。 演劇的な意味でも多声的に感じられて、面白いなあ、と。 といっても、音楽はキャッチーで、Vienna waltz も時に群舞も伴って印象的 (Neuejahr Konzert かよ、と思ったりもしましたが)。 それも楽しみましたが、20世紀初頭という時代設定であれば、特に娼館を舞台とした第3幕など 表現主義すらに接近した Elekra のような音楽の方がぴったりきそう、とも。

あまりオペラ歌手には詳しくないのですが、今回のキャストは役にぴったりハマっているように見えました。 Renée Fleming のとても艶っぽいマダム感もいかにも Marschallin のイメージそのものでしたが、 なんといっても Elīna Garanča の Octavian がいわゆるスボン役というレベルを超えていて、 単なる立ち姿だけでなくその所作も美青年 (女性ですが)。 第1幕のこの2人の絡みだけでも舞台にぐっと引き込まれました。 (Garanča の Octavian を見ていて、こういうのが宝塚歌劇の魅力なのかな、と思ったり。) ちょっとコミカルで可愛らしい Sophie 役の Erin Morley といい、 憎まれ役だけど魅力的な Baron Ochs 役の Günther Groissböck も、物語を盛り上げていました。 それにしても、かなりドタバタ風味の喜劇演出だったので、激しい動きを伴う演技。 もちろん皆、歌も巧いわけですが、演技の巧さに感心しながら観ていました。

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[3569] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Aug 28 0:36:01 2017

金曜晩は渋谷へ。このライブを観てきました。

渋谷 WWW
2017/08/25, 19:00-20:15.
New Zion Trio: Jamie Saft (Fender Rhodes, piano), Brad Jones (electric bass), Ben Perowsky (drums); with Cyro Baptista (percussion).

かつては Knitting Factory Works 界隈、最近は Tzadik レーベル界隈から多くリリースしている ニューヨークの jazz/improv の文脈で活動するミュージシャンたちによる jazz meets reggae のグループ New Zion Trio が Sunshine Seas (RareNoise, RNR065, 2016, CD) [レビュー] と同じく Cyro Bapstista を加えた編成で来日した。

自由席だが丸椅子が用意された第1セットと立席の第2セットの2公演で、 CDで聴いていた限りでは繊細な展開も多く着席して聴く音楽だろうと予想して、第1セットにした。 しかし、PAの音圧は jazz 的なものではなく、reggae のダンスフロア仕様。 Tzadik から小難しい音楽を多くリリースしている人たちなので、淡々と演奏するのかと思いきや、 Cyro Baptista など客煽りもして、ノリのいい演奏。 その低音も気持ち良かったが、これであれば立席で踊りながら聴いた方が楽しかったかも、とも。

Jamie Saft は piano はほとんど弾かずに Fander Rhodes や電子オルガン (機種確認し忘れた) がメイン。 Bapstita は pandeiro, cuica や berimbau などブラジルの打楽器を駆使してその色を添えていた。 Brad Jones と Ben Perowsky のリズムは、CDよりも遥かにヘビーでシャープ。 アンコールでは Stevie Wonder の曲をやったのだが、reggae のリズムにはせずに、むしろ1970年代の fusion 風。 全体として、初期 Return To Forever あたりの1970年代の良質な fusion が、 1980年代前半の Roots Radics (Dub Syndicate) か Sly & Robbie の early dancehall のダブワイズな演奏が出会ったよう。 斬新というより懐かしい音だけれども、意外とありそうで無かった組み合わせの音で、 ノリのいい演奏も気持ち良く楽しめたライブだった。

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[3568] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Aug 28 0:27:38 2017

金曜日は夏休み。ということで、午後に大崎というか御殿山へ。会期末が迫ったこの展覧会を観てきました。

Mercedes-Benz Art Scope 2015-17: Wandering to Wonder
『メルセデス・ベンツ アート・スコープ 2015-2017 − 漂泊する想像力』
原美術館
2017/05/27-2017/08/27 (月休;7/17開;7/18休) 11:00-17:00 (水-20:00)
泉 太郎, Menja Stevenson, 佐藤 時啓.

原美術館で数年おきに開催されている Mercedes-Benz 社のメセナ活動 Art Scope の成果報告の意味合いもある展覧会を、久々に観てきました。 (前にレビューを残したのは、10年近く前になるのか……。) キュレーションされた展覧会ではなく三人三様の作風でしたが、画廊巡りすることを思えば、こういうグループ展示は、ありがたいです。

ドイツ・シュトゥットガルト在住の作家 Menja Stevenson が主に日本で制作した作品は、 ライトボックスの写真だったり、コンセプチャルなオブジェだったり、と様々。 そんな中では、浮世絵版画職人の小机を「版木」として刷った版画は、色だけのミニマルな浮世絵のよう。 李 禹煥 あたりも連想させられたけど、色だけからも浮世絵的な艶かしさも感じられるよう。 こういうミニマルな作風は好みです。

佐藤 時啓 は1983年の Art Scope の下、ドイツで撮影した1点のほかは、 ドイツ制作の新作というわけではなく、 『光−呼吸』シリーズの1990年代初頭の東京で撮った白黒写真 [レビュー] と、ほぼ同じ位置構図で撮った2017年のカラー写真を、同じ大きさにプリントして並置。 長時間露光したパンフォーカスの風景写真が好きというのもあるが、 時間お置いて撮影した写真をこのように並置されると、時間の経過を見い出そうと、思わず見入ってしまいます。

泉 太郎 のドキュメンタリ的に撮ったビデオも使ったちょっと雑然としたインスタレーションは、 いかにも21世紀の現代美術とは思いましたが、今の自分には合わなかったか、ピンときませんでした。

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[3567] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Aug 20 22:12:20 2017

一週間前の話になりますが、先週末の日曜は、晩に渋谷へ。 Bolshoi Ballet in cinema 2016/17 のアンコール上映中の Bunkamura ル・シネマで、 シーズン最初の作品で当初は日本では上映されたなったこの作品を観てきました。

Bolshoi Ballet: The Golden Age
『黄金時代』
Большой театр, 16 октября 2016 г.
Музыка Дмитрий Шостакович [Music by Dmitri Shostakovich]
Либретто Исаака Гликмана и Юрия Григоровича [Libretto by Isaak Glikman and Yuri Grigorovich]
Хореограф-постановщик: Юрий Григорович [Choreographer: Yuri Grigorovich]; Сценография и костюмы: Симон Вирсаладзе [Sets and Costumes: Simon Virsaladze]
Премьера состоялась 26 октября 1930 г., [Премьера: 26 октября 1930 г.]; Новая редакция: 23 марта 2006 г. [New production: March 23, 2006]; Возобновление постановки: 13 октября 2016 г. [Revival of production on October 21, 2016.]
Действующие лица и исполнители [Cast]: Нина Капцова (Рита) [Nina Kaptsova (Rita)], Руслан Скворцов (Борис) [Ruslan Skvortsov (Boris)], Михаил Лобухин (Яшка) [Mikhail Lobukhin (Yashka)], Екатерина Крысанова (Люська) [Ekaterina Krysanova (Lyuska) и другие
Дирижер: Павел Клиничев [Conductor: Pavel Klinichev].
上映: 文化村ル・シネマ, 2017-08-13.

Светлый ручей [The Bright Stream] 『明るい小川』 [レビュー] に続いて Шостакович 作曲のソヴィエト・バレエ3作の1つが Большой балет в кино [Bolshoi Ballet in cinema] Season 2016/17 でかかったので、観てきました。 1930年初演後すぐにお蔵入りしていた作品を、 1982年に Юрий Григорович [Yuri Grigorovich] が脚本を大きく書き換えた上で再制作、 さらに2006年に再々制作しています。今回の上演は、2006年版に基づくもののようです。

物語の舞台は、1920年代の НЭП (NEP, 新経済政策) の時代のレストラン。 (舞台美術には кафе (カフェー) とあったが、ショーをやっていて、カバレット風。) 町のアジプロ劇団員 Борис (Boris) が祭でレストランの踊り子 Рита (Rita) と恋に落ちるが、 Рита は町のギャングのリーダー Яшка (Yashka) の愛人だった。 Яшка はレストランを去って Борис のもとへ行こうとする Рита を引き止めそうとするが、Яшка に恋する女ギャング Люська (Lyuska) に邪魔され、Яшка は Люська を殺めてしまう。 最後には Борис らにギャングは一掃され、ハッピーエンド。

そんな単純な勧善懲悪のハッピーエンド恋愛話で、 特にメインのキャラクタである Борис と Рита の人物像に深みが感じられなく、 物語全体としても薄っぺらく感じてしまいました。 むしろ、悪役の Яшка と Люська の方がキャラクタとしては魅力的で、 特に Люська は妖艶なモガないでたちといい複雑な心情を表現するマイム的な振付といい、良かったなあ、と。

“Таити-Тротт” [“Tahiti-Trot”] でボールルームダンスを踊る場面が予告映像で使われていたので、 ボールルームダンス・ショー的な舞台かと予想していたのですが、さほどでもなく、 バレエ、レストランでのレビューのダンス、アジプロ劇団のギムナスティックス風の (体操的な) ダンスなど、 様々な身体語彙を交えていたのは面白かったです。 レストラン「黄金時代」では内装も踊り子たちもアールデコでレビューやボールルームダンス、 一方、Борис らアジプロ劇団 (おそらく Синяя блуза 「青シャツ」を意識している) の労働者たちの世界は ロシアアヴァンギャルドな美術・服装で動きはギムナスティックス、と、多分に図式的な割り当てでしたが。 形状を大きく変えることなく色合いやちょっとしたシンボル使いで 時にアールデコ風に時にロシアアヴァンギャルド風に見せる舞台美術が、 対比させているようで共通点を示してしまっているようで、皮肉にも感じられて可笑しかったです。

物語は酷いものでしたが、よくよく考えると酷い物語はバレエやオペラにはよくあることですし、 見目麗しいダンサーが1920年代ファッションに身を包んで踊るのを見てると、ま、これはこれでいいのかな、という気分にもなりました。 ジャズやタンゴ、フォックストロットなど1920年代に流行したダンス音楽を参照した音楽に乗せて、 アールデコとアヴァンギャルドが交錯する1920年代のモダンな雰囲気を舞台化することがメインの演出意図で、 物語はそういったものを繋ぎ合わせるための器のようなものに過ぎないのかもしれないな、と。

これで、残す Шостакович の戦間期のバレエは Болт [The Bolt] (1931) のみ。 Нос [The Nose] (1928) や Леди Макбет Мценского уезда [Lady Macbeth of the Mtsensk District] (1934) のような オペラも、 イベントシネマで上映されないかなと、と期待しています。

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予告編を観ていて気付いたのですが、Bolshoi Ballet in cinema を制作している Pathé Live は、 Comédie-Françaiseイベントシネマもやってるんですね。 これも日本で上映しないかなあ。

さて、昨日、土曜は二子玉川の花火大会。 若林に住んでいた家の大家さん宅では、例年、花火を見ながら宴会です。 今年は夕方に雹混じりの激しい雷雨に見舞われて花火は中止になってしまったのですが、宴会はありました。 大荒れの天気のときは三軒茶屋にいたのですが、小雨になるのを待ってから若林へ移動したので、びしょ濡れにならずに済みました。 武蔵小杉へ引っ越して初めての元大家さん宅の宴会への参加で、久々にその雰囲気を楽しみました。 が、やはり隣に住んでいたときのような気楽さは無くなったなあ、と。ふむ。

土曜に呑み過ぎたか、夏バテか、日曜は少々体調不良。 今晩も Bolshoi Ballet in cinema に行ってもいいかなと思っていたのですが、 無理しても楽しめないので、止めておきました(弱)。

[3566] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu Aug 17 23:27:30 2017

先の週末の土曜は、昼前には池袋西口へ。 National Theatre Live のアンコール上映中のシネ・リーブル池袋で、 6月のアメリカ出張時期と重なって観に行かれなかったこの舞台を観てきました。

『三文オペラ』
from National's Olivier Theatre, 2016-09-22, 19:00–22:25.
by Bertolt Brecht and Kurt Weill, in collaboration with Elisabeth Hauptmann in a new adaptation by Simon Stephens.
Director: Rufus Norris; Designer: Vicki Mortimer; Music Director: David Shrubsole; Choreographer: Imogen Knight; Lighting Designer: Paule Constable; Sound Designer: Paul Arditti; Fight Directors: Rachel Bown-Williams & Ruth Cooper-Brown of RC-ANNIE Ltd.
Cast: Rory Kinnear (Macheath), Rosalie Craig (Polly Peachum), Haydn Gwynne (Mrs. Peachum), Nick Holder (Mr. Peachum), Sharon Small (Jenny), Peter De Jersey (Tiger Brown), George Ikediashi (Street Singer), etc.
Musicians: David Shrubsole, Andy Findon, Christian Forshaw, Sarah Campbell, Richard Hart, Sarah Freestone, Martin Briggs, Ian Watson.
First Performance: 26 May 2016, National's Olivier Theatre.
上映: シネ・リーブル池袋, 2017-08-12 11:40-15:05 JST.

National Theatre 芸術監督でもある Rufus Norris の新演出による『三文オペラ』。 Norris 演出の作風の予備知識は無かったけれども、 予告編やレビューで少し気になっていたので、National Theatre Live のアンコール上映で観てきた。 劇中歌の多くがスタンダード曲になっているので歌を聴く機会は多いし、 『三文オペラ』は G. W. Pabst による映画化 (1931) を観たこともあるが [レビュー]、 英語による新解釈とはいえ舞台上演を観ておくのも良いかなと。

元の Brecht の戯曲では19世紀半ばのロンドンが舞台となっているが、 この新解釈では作品が初演された1928年頃のベルリンを意識したもの。 幕間の Norris のインタビューでドイツ表現主義 (Expressionism) や Otto Dix の名を挙げていたが、 Dix というより George Grosz: Ecce Homo。 戦間期ワイマール・ドイツでは Dix や Grosz だけでなく多くの風刺画が描かれていたのだが [レビュー]、 そんな風刺画でカリカルチャライズされていたような人物造形がそのまま飛出してきたようなキャラクター (特に Macheath と Mr. Peachum) が、 『三文オペラ』の歌や音楽にぴったり。 19世紀ロンドンを舞台に借りていたものの、『三文オペラ』の風刺の対象は Dix や Grosz の風刺画と同じ戦間期のベルリンなので、合わないはずがない。 ワイマール時代の風刺画のキャラクターが演じる2.5次元ミュージカルを観ているようだった。

色男というよりも Grosz の描くようなごつくグロテスクな男の Macheath や、 体型が風刺画的なだけでなく後半は異性装にまでなった Mr. Peachum も楽しんだが、 Mrs. Peachum、Polly、Jenny、Lucy といった女性陣の方がキャラクターが際立っていたのは確か。 特に、ワイマール時代の風刺画的というよりむしろイギリスのオタク少女とでもいう風貌の Polly がとても良かった。 Polly は会計士としてのスキルを持ち、Macheath との仲も、その性的な魅力に惹かれたというより、 権力や財力が目当てで、半ば親への当てつけという設定。 それが、色男というより権力と金で女性を物にするブルジョワ的存在という Grosz の風刺画の世界に出てきそうなキャラクタとなった Macheath のカウンターパートとして合っていた。

The Curious Incident of the Dog in the Night-Time で知られる Simon Stephens の脚色は、思っていたよりは Brecht の戯曲に忠実。 大きな変更のポイントは舞台を戦間期に持ってきたところだろうか。 登場人物の外見をワイマール時代の風刺画風にしただけでなく、 乞食たちの演じる芝居に第一次大戦の従軍兵士に発生した戦争神経症 (shell shock) があったり、 「大砲の歌」 (“Canon Song”) に第一次世界大戦最大の激戦地ソンム (Somme) を歌い込んだりと、 明確に第一次世界大戦後を意識させるものとなっていた。 「大砲の歌」でソンムと並んで歌い込まれただけでなく、Macheath と Tiger Brown の仲を暗示させる地名として、 アフガニスタンのカンダハル (Kandahar) が使われていたのだが、その隠された意味合いが判らなかったのは残念。

元の『三文オペラ』が19世紀半ばのロンドンを舞台にしつつワイマール時代のベルリンを風刺したように、 この脚色では戦間期という設定を使いつつ、現代のイギリスを風刺するかのような要素も盛り込まれていた。 そもそも、『三文オペラ』の世界は、2006年頃から「ブロークン・ブリテン」と呼ばれるようになったイギリスのアンダークラスの世界に重なって見える。 現代で言えばアンダークラスの人々ともいえる Peachum の乞食達にジョージクロス旗を纏わせ愛国者を名乗らせる様は、Brexit を彷彿させるものがある。 (この作品の上演中の2016年6月23日に、英国のEU離脱の国民投票が行われている。) 自分には判らなかっただけで、他にも多くイギリスの現在と繋ぐ仕掛けが盛り込まれていたのかもしれない。 そして、Brexit に反対している人が多い裕福なインテリ層が National Theatre の主要な客層だということを思うど、 なかなかキツい皮肉が込められているな、と。

音楽の演奏は生演奏で、役を演じるというほどではなかったが、舞台上を動き回りながらの演奏。 特に奇抜なアレンジはせず戦間期の雰囲気を生かしつつ、ライブならではの生々とした印象。 オペラやミュージカルの歌手ではなく、いわゆるストレートプレイの文脈で活動する俳優が演じていたのだが、 ジャズやロックの文脈での Brecht / Weill ソングのカバーでよくあるように高音域でオクターブ下げることなく、普通に歌っていたのが驚き。 Macheath を演じた Rory Kinnear も上手かったが、Polly 役の Rosalie Craig など、感心してしまった。

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土曜の夕方は、竹橋の東京国立近代美術館に移動して、 『日本の家 – 1945年以降の建築と暮らし』。 3年前の『戦後日本住宅伝説——挑発する家・内省する家』 (埼玉県立近代美術館, 2014) が 楽しめたので期待していたのですが……。 いい所もあったんだろうけど、端々にある金持ちの寝言がキツくて、見てられませんでした。 少なくとも、The Threepenny Opera 見た直後に見る展覧会じゃなかったな、と。 まあ、食い合わせが悪かったということで。

前日金曜も祝日「山の日」で休み。ということでユーロスペースで映画2本。 まずは、山村 浩二 『右目と左目でみる夢』。 2010年代制作の短編アニメーション9本を上映。 15年前くらい前、『頭山』 (2002) とか好んで観ていたものの、最近はすっかり遠ざかってました。 アートアニメーションということで、表面的にハイテクな作風になるということもなく、相変わらずの作風だな、と。

2本目は、Abel & Gordon: Paris pieds nus 『ロスト・イン・パリ』 (20 16)。 ベルギー・ワロニア出身の男女2人のクラウン・コンビによる、ほのぼのしたスラップスティック・コメディ。 Jacques Tati を思わせるようなセンスを楽しみました。 しかし Tati の映画にあった映像的/音楽的な美しさは感じられなかったでしょうか。 またホームレスのような人々に自由を見出すセンスは、アンダークラスが台頭する以前の20世紀的なものかもしれないなあ、なんて思ってしまったりしまいました。ふうむ。

[3565] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Aug 8 0:04:43 2017

先の週末から東劇で 「METライブビューイング アンコール2017」 が始まったので、土曜の午後、さっそくこれを観てきました。

『椿姫』
from Metropolitan Opera House, 2017-03-11, 13:00–15:35.
Composer: Giuseppe Verdi. Libretto: Francesco Maria Piave, after the play La Dame aux Camélias by Alexandre Dumas fils.
Production: Willy Decker.
Set and costume designer: Wolfgang Gussmann. Associate costume designer: Susana Mendoza. Lighting Designer: Hans Toelstede. Choreographer: Athol Farmer.
Cast: Sonya Yoncheva (Violetta Veléry), Michael Fabiano (Alfredo Germont), Thomas Hampson (Giorgio Germont).
Conductor: Nicola Luisotti.
Original production of the Salzburger Festspiele, 2005
上映: 東劇, 2017-08-05 13:30-16:21 JST.

2005年の Salzburger Festspiele で初演され、 そのミニマリスティクな演出が話題になったという Willy Decker プロダクションによる上演。 といっても、当時はオペラが自分の視野になくノーチェック。 Met Live in HD 2016-2017 の予告編映像を見て興味を引かれていたので、 アンコール上映で観てきた。

奥が低くなって奥行きが強調された半円筒状の舞台で、壁はテクスチャがあるもののほぼ真っ白。 そして、大道具は大きな針式の時計とソファ程度。 コーラスは女性も男装で Violetta 以外の衣装はほぼ黒に統一。 舞台上の色がほとんど白黒赤に抑えられていた。 そんな中、シンプルな色の転換で、登場人物の置かれた状況や内面を象徴的に描いていく。 Violetta は赤のドレスから白のスリップ、さらに第三幕の死の間際では黒のコートへ。 同じ形のソファが、最初は赤く、さらに花柄のカバーが掛けられ、それが除けられると白く、そして最後にはソファーも失われるという。 大きな時計が彼女の限られた残された時間を意識させ、 若くして死期を悟った女性が今を精一杯生きようとする物語かのよう。 ラストにこの時計が舞台からなくなるのも死を象徴しているよう。 演出意図が全て捉えられたとは思わないが、そんな演出がとても好みだった。

そんな象徴的な舞台美術使いだけでなく、立ち位置や動きで物語るような演出も面白かった。 特に、冒頭から死神を演じる黙役のように舞台の脇や背景の壁の上で存在感を示す Dr. Grenvil は、 第一幕前半の Libiamo ne' lieti calici 「乾杯の歌」の乱痴気騒ぎから、すでに不穏含み。 がらんとしたラスト近くで黒い衣装となった登場人物たちが、半円の壁にそったベンチに間を置いて座る図など、 メロドラマチックな感情描写の中にふっと異化を持ち込むようなかっこよさがあった。 Violetta もダンスを踊るというほどではないものの、舞台広く動き回り、フィジカルな演技をしながら歌っていた。 幕間のインタビューで Violetta 演じる Sonya Yoncheva が息を整えるのが大変と言っていたのも、さもありなん、と。

Violetta を演じたソプラノの Sonya Yoncheva を見るのは Àlex Ollé による現代演出での Norma [レビュー] に続いて。 Violetta に強く焦点を当てた演出だったので、彼女の華やかな歌声と容姿でよかった、と。 Norma もそうだったが、グラマラスな中にも凛々しさを感じさせるところがあって、 現代演出が映えるオペラ歌手/女優だなあ、と、つくづく。 Norma は Anna Netrebko の代役だったのだが、 この La Traviata も2005年初演時に Violetta を演じたのは Netrebko。 この初演は Deutsche Grammofon から DVD/BD 化されているので、いずれ比べて観てみたい。

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[3564] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jul 30 19:52:17 2017

今週末、土曜の晩は池袋西口へ、この公演を観てきました。

東京芸術劇場 プレイハウス
2017/07/29, 17:00-18:15.
Concept, mise en scène, décor, chorégraphie et interprétation: Martin Zimmermann
Dramaturgie: Sabine Geistlich; Developpement du décor, coordination technique: Ingo Groher; Création musicale: Colin Vallon.
Production: Verein Zimmermann & de Perrot.
Résidence de fin de création au Théâtre Vidy-Lausanne, première le 4 novembre 2014.

Martin Zimmermann はスイス出身、主に現代サーカスの文脈で活動する演出家/振付家/パフォーマーだ。 フランス CNAC (Centre national des arts du cirque) でサーカスをを学び、 1998年より、同じくスイス出身の Dimitri de Perrot と Zimmermann & de Perrot として、スイス・チューリヒを拠点に活動している。 Zimmermann & de Perrot として、 2013年に Chouf Ouchouf [レビュー]、 2014年に Hans was Heiri [レビュー] で来日しているが、 今回はソロでの来日だ。

平行四辺形にひしゃげて潰れる高さ2m、幅5mほどの小部屋のような箱状の装置や、 箱、枠や板のような道具を使ってのパフォーマスは、 Hans was Heiri も思い出させるもの。 しかし、ソロ作品として期待するものではないと思うけれども、 Zimmermann & de Perrot として観た2作にはあった、 アクロバティックでダイナミックな動きが少なく、いささか単調に感じられた。 黒子的な女性アシスタントを使って、マジック的トリックも使っていたが、 たとえば Philippe Genty [レビュー] のように 幻想的なイメージ作りがあまりされていなかったせいか、さほど効果的には感じられなかった。 といっても、ひしゃげ潰れる箱状の装置の使い方はアイデアにあふれていたし、 ほぼ一人でのパフォーマンスと思えない広い空間使いに感心。 スラップスティックなクラウン的な動きも楽しんだ。

音楽を担当していたのは、ECM からのリリースもある jazz/improv の文脈で活動するスイスの piano 奏者 Colin Vallon [関連レビュー]。 パーカッシブな反復音や内部奏法も駆使した電子音とも親和性く、 適度に抽象的でコミカルな展開や感傷的なメロディを忍ばせた演奏は、 Zimmermann のパフォーマンスに合っており、ソロの単調さを救っていたようにも感じられた。 ピアノも生演奏で、演奏と掛け合うようにパフォーマンスしたら、もっとスリリングになったかもしれないとも思った。

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池袋の前、乃木坂の新国立美術館へ寄って、 『ジャコメッティ展』 (Albert Giacometti - Collection Fondation Marguerite et Aimé Maeght) を観てきました。 1920年代、パリのキュビズム〜シュルレアリズムの文脈で注目されるようになった彫刻作家、 ということで、もっとモダニズム的な面を期待していたところもありました。 しかし、その造形とは裏腹に、その制作スタイルといい 20世紀モダニズムの「イズム」が似合わない、19世紀的な作家だったのかもしれないなあ。 なんてことを観ながら思った展覧会でした。

[3563] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jul 23 20:54:54 2017

今週末、土曜は久々に劇場へ。この公演を観てきました。

ヨルグ・ミュレール 『モビール』
座・高円寺 1
2017/07/22, 13:00-13:20.
Avec: Jörg Müller
Conception, Écriture, Création musicale, Mise en scène, création d’objet: Jörg Müller. Création lumière: Jérémie Cusenier
Création: 1994.

Jörg Müller はドイツ・バイエルン出身ながらフランスを拠点に活動するジャグリングを得意技とするサーカス・パフォーマー。 Mobile は1994年 CNAC (Centre national des arts du cirque) の卒業制作として作ったソロの作品。 円形の舞台の中央に、5本の金属パイプがそれぞれ天井から長く黒い紐で高さ1mほどの所に吊り下げられている。 この吊り下げられた5本のパイプを使ったジャグリングだ。 音楽は一切使わず、金属パイプも彩色などさえれず銀色の金属の質感がむき出しのもの。 シンプルな白い照明でパイプを浮き上がらせるだけ。 はじめは無音で、パイプの間をすり抜けつつ、パイプを揺り回していく。 もちろん、金属パイプ同士がぶつかったり、紐が絡んだりすることはなく、動きは滑らかに。 はじめのうちは小さく、しかし、やがて大きく、観客の頭上まで振り上げていく。 頭上を金属パイプが飛び交うよう。 やがて、人差指に付けた硬質のキャップを使ってパイプを打ち鳴らしたり、息でパイプを吹き鳴らしつつ、ジャグリング。 異なる長さの5本のパイプはチューニングされており、パイプの響きも美しかった。 ミニマルで静謐、そんな中にダイナミックな迫力も感じられる、美しいパフォーマンスだった。

この公演は、座・高円寺の夏の子供向けプログラム『世界をみよう!』の一つだったのだが、 同じプログラムの公演を続けて見た。

シアター・ノーアクラフト 『フォークがおどる』
座・高円寺 阿波おどりホール
2017/07/22, 15:00-15:40.
Producent/produced by: Teater Nordkraft, Claus Carlsen, Lisa Becker, Cathrine Sombsthay (Compagnie Mediane)
Medvirkende/on stage: Claus Carlsen, Lisa Becker
Instruktør/director: Cathrine sombsthay

デンマークの劇団による、子供向けの作品の公演。 セリフは一切使わず、セミアコスティックギターやソプラノサックス、ひょうたん笛を演奏しつつ、 フォークやペットボトルの立てる物音やシンプルな光と影を楽しむような作品。 ファンシーなビジュアルを用いることもなければ、おどけた仕草をすることも無い、シンプルな演出だったが、 可愛らしさを感じる雰囲気のパフォーマンスだった。

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現代サーカスの公演に注意が行きがちなけですが、 今週末、ボリショイサーカスの東京公演があったことに、いまさらながら気づきました。 毎年のように来日していますが、今年は、 『ロシアの季節 日本2017』 のプログラムということもあるのか、例年より評判良さげ。 しばらく東京近郊でやっているようですが、どうしようかなぁ……。

[3562] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jul 17 22:22:36 2017

梅雨明け宣言の無いまま、外出する気力を削がれるような暑さが続いています。 そんなわけで、日曜の昼は家でのんびり、このストリーミング・ビデオを観ました。

Cirque Phénix, Paris
ART Concert, Dernière actualisation 16.03.2017
Filmé le 28.01.2017 - (130 minutes)
Akorearco [France], AcroArno - Arnaud Caizergues [France] (cerceau aérien et sangles), Baltic Seamen [Suède] (mât chinois), Masha Terentieva [Canada] (acrobaties aériennes), Troupe Acrobatique de Zhejiang [China] (icariens et équilibres de tête), Incredible Mallakhamb [Inde] (mallakhamb), Chih-Han Chao [Taiwan] (diabolo), Compania Havana [Cuba] (cadre volant), Alejandro Escobedo [Chili] (jonglerie), Marco Motta [Brésil et Espagne] (contorsion sur sangles), Kerol [Espagne] (jonglerie et beatbox), DanyzoO [Espagne] (equilibre et danse), Cirque "La Compagnie" [France et Suisse] (mât chinois et planche coréenne).

フランスのパリで開催されているアニュアルの国際的なサーカスの競技会 (コンペティション) Festival Mondial du Cirque de Demain『大道芸ワールドカップ in 静岡』のワールドカップ部門に招聘されるパフォーマーが出演していることが多く、その名は知っていましたが、断片的な動画でしか見たことがありませんでした。 しかし、今年1月に開催された第38回は、仏独共同出資の公共放送 ARTE の 音楽や演劇・ダンスのヴィデオ・ストリーミング・サイト ARTE Concert でストリーミングされました。 ストリーミング公開されていました。 そのビデオをやっと観ることができました。

ある程度予想していましたが、 派手な音楽で注意を引きつつ高度な技を見せつけるようなパフォーマンスが中心。 作品として一つの世界を作り出しているというより、 サーカスやキャバレーのショーの1プログラムに組み込まれることを前提としている構成が多いです。 といっても、現代サーカスの影響でしょうか、短い時間ながら一つの世界を作り出し道具や技にアイデアを感じるものもありました。

もっとも気に入ったのは、ロシア出身でカナダで活動する Masha TerentievaAerial Hotel Cart。 ホテルにあるバゲージ用のカートを使って器械体操というかコントーション・アクロバットのようなパフォーマンスを見せたかとおもいきや、カートを釣り上げてのエアリアルに。 シンプルなリングとは異なるカートの形を生かした動き、 そして、最後はドアボーイに戻ってカートを押して去っていくという演出が気に入りました。 音楽は Jacques Brel 晩年の曲 “Les Marquises” 「マルキーズ諸島」。 派手ではなく落ち着いた少々ミステリアスな雰囲気が良いです。

フランス/スイス混成のサーカス・カンパニー Cirque La CompagniePlanche/Mât は、 男性4人による、シーソー (コリアン・プレート) とチャイニーズ・ポールを組み合わせてのパフォーマンス。 シーソーでのダイナミックに走り回り飛び上がる動きと、 チャイニーズ・ポールでのスタティックながら力強い動きという、異質な2つの動きを巧みに組み合わせていました。 Noir Desir “Le Grand Incendie” のノイジーな alt-rock なビートに乗って力強く技を見るパフォーマンスですが、 音楽無しで始まり、最後も一人外れたまま終わってしまうなど、単に派手に見せるだけではない演出も気に入りました。

オープニング (ouverture) は、コンペティション参加ではなく招待による フランスのカンパニー Akoreacro によるパフォーマンス。 Kraxon からの抜粋だったようで、少々断片的に感じられましたが、 音楽は生演奏ですし、エアリアル、アクロバットなどの技の組み合わせ方にアイデアが感じられました。 一つの現代サーカスの作品として見たかったものです。

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1月のライブ・ストリーミング時には気付いていたのですが、年度末やら引越しやらでまとまった時間が取れず、結局今まで観ていませんでした。 土曜は盆墓参などで出歩いていたこともあり、日曜は家でゆっくり。そんなとき、ふと思い出したのでした。 こうも暑いときは、無理に美術館・ギャラリー巡りなどせずに、家でゆっくりこういうビデオを観て過ごすというのも、悪くないですね。

ちなみに、Festival Mondial du Cirque de Demain のストリーミングに気づいたのは Prix de Lausanne のストリーミングのおかげですが、 久々に ARTE Concert の Arts de la Scene をチェックしたら、 "Fractus V" de Sidi Larbi Cherkaoui à la Maison de la danse de Lyon"FLA.CO.MEN" d'Israel Galván à la Biennale de la Danse de Lyon が上がっていることに気付きました。 これも観たいものです。

現代サーカスといえば、来週末は座・高円寺で Jörg Müller: Mobile [公演情報]、 再来週末は東京芸術劇場で Martin Zimmerman: Hello の公演があります [公演情報]。 イベント・シネマは観てますが生の舞台も2ヶ月余りご無沙汰ですし、どちらも観るのが楽しみです。 夏休み中は子供向け公演として現代サーカスの公演があちこちで観られるものなのですが、 今年は現代サーカスの公演が少なめのように感じます。うーむ。

それにしても、まだまだ慣れ無い遠距離通勤疲れに、夏バテもあって、ぐったりです。 公演を観に行く予定のある来週末再来週末には、暑さが和らいでくれていたらいいのですが……。

[3561] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jul 9 21:34:54 2017

今週末は猛暑に近い真夏日。 歩き回る気にもなれない暑さに、土曜は映画館に篭ろうと決めて、昼には恵比寿へ。 このイベント・シネマを観てきました。

上映: 東京都写真美術館ホール, 2017-07-09.
Teatro Real de Madrid
Inspirado en la obra de Prosper Merimée.
Argumento, coreografía y dirección Antonio Gades y Carlos Saura. Escenografía Antonio Saura.
Música: Antonio Gades, Antonio Solera, Ricardo Freire. Música grabada: Georges Bizet “Carmen”, M. Penella “El gato Montes” y José Ortega Heredia/Federico Garcia Lorca “Verde que te quiero verde”, Orchestra della Suisse Romande dirigida por Thomas Schippers, con Regina Resnik, Mario del Monaco, Tom Krause.
Solistas: Vanesa Vento (Carmen), Ángel Gil (Don José), Jairo Rodríguez (Torero), Joaquín Mulero (Marido)
Grabado en vivo en el Teatro Real de Madrid el 6 de mayo de 2011.
Estreno absoluto en el Théâtre de Paris el 17 de mayo de 1983
Teatro Real de Madrid
Ballet en seis escenas inspirado en la obra “Bodas de sangre” de Federico García Lorca.
Coreografía e iluminación: Antonio Gades. Adaptación para ballet Alfredo Mañas. Espacio escénico y vestuario Francisco Nieva.
Música: Emilio De Diego, ¡Ay, Mi Sombrero!, Ramon Perelló y Renato Monreal, Rumba Felipe Campuzano
Cristina Carnero (La novia), Ángel Gil (Leonardo), Vanesa Vento (La madre), Joaquín Mulero (El novio), Maite Chico (La mujer), etc.
Grabado en vivo en el Teatro Real de Madrid el 9 de mayo de 2011.
Estreno absoluto en el Teatro Olímpico de Roma el 2 de abril de 1974.
Teatro Real de Madrid
Coreografía: Antonio Gades. Coreografía Soleá por Bulerías y Tanguillos: Cristina Hoyos Diseño de luces: Antonio Gades
Música: Antonio Gades, Antonio Solera y Ricardo Freire
Solistas: Stella Arauzo, Miguel Lara.
Grabado en vivo en el Teatro Real de Madrid el 9 de mayo de 2011.

フラメンコなどスペイン舞踊の舞踊団 Compañía Antonio Gades が 創設者 Gades 生誕75年を記念して行った Teatro Real de Madrid (マドリード王立劇場)での2011年5月の公演が、 『アントニオ・ガデス舞踊団inシネマ』と題して東京都写真美術館ホールで上映されています。 フラメンコには疎く、去年の同演目での日本公演は観ていません。 フラメンコを基調とした民族舞踊団の作品を知る良い機会かと、観てきました。

Carmen は Antonio Gades が映画監督 Antonio Saura と1983年に制作した映画を舞台作品化したものです。 映画は Bizet のオペラで有名な物語に基づく作品を上演する舞踊団の物語という形式を取っているようですが、 舞台作品ではそのメタフィクションの構造を利用しているわけではありません。 ナラティブに物語を丁寧に表現するような場面はほとんど無く、 Carmen の物語の枠組みを利用しての、約1時間半のフラメンコ・ショーでした。 ソロ、デュオ、群舞などフラメンコがドラマチックに繰り広げられました。

Bodas de sangre は Gades が1974年に自身のカンパニーを設立して最初の作品です。 フラメンコのイデオムもかなり使われていますが、まるでフラメンコ・ショーかのような CarmenSuite Flamenca とは違い、 ミニマルな演出にマイム的な演技の多用もあって、 抽象的な動きやダンスで象徴的に物語るフラメンコ色濃いダンスシアターを観るよう。 今回観た3作品の中で最も楽しめました。 Carmen に先立つ1981年に Antonio Saura によって映画化されたそうですが、 そちらではやはりメタフィクションの形式を取っているようです。

Suite FlamencoBodas de sangre と合わせて上演される演目。 Carmen のような物語の枠組みはなく、生演奏のギターと歌に合わせ、ソロに群舞にデュオと、様々な形式のフラメンコが次々と繰り広げられました。 特に群舞には華やかさも感じられました。

フラメンコは Ketama や Pata Negra などの1980年代以降の伝統的ではない演奏でのレコード/CDを数枚持っている程度ですが、舞踊団の踊り付きで大きな音で聴くと、パーカッシヴな響きが印象的。 拍手やタップのように足を踏み鳴らす音の重要性に気づかされました。 早い8分の6拍子のポリリズム感も堪能しました。 そのキレのいい速く細かい足捌きやスピンは確かに素晴らしいのですし、 フラメンコでは脚を大きく振り上げたり、ジャンプしたり、リフトしたりすることは無いので 空間的に広がりを感じる動きがあまり無い点が、無いものねだりではありますが、物足りないところでしょうか。 Bodas de sangre が楽しめたのは、フラメンコだけでなくそういう動きも取り入れていたからかもしれません。

バレエ、オペラに演劇とイベント・シネマを楽しんできているわけですが、それ以外の作品にも少しは手を広げていきたいな、と。 といっても、今回は、オペラ・バレエ劇場でのフラメンコとはいえバレエに近い公演なので、大ハズレすることはないだろうというのもありましたが。 バレエ以外のダンス作品のイベント・シネマがもっと広がって欲しいものです。

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しかし、イベント・シネマは当日に思い立っても気楽に観に行けて、いいなあ、とつくづく。 映画よりは高いですが、公演のチケットに比べれば格段に安く、 普段自分がよく観ているものからちょっと外れているものでも、試しに観てみようという気になれます。 今週末も、Dreams on Ice (フィギュアスケート) とか English National Ballet (バレエ) とかもあったようですが、 チケット争奪戦を考えただけで腰が引けてしまいます。

といっても、生の舞台は2ヶ月近くご無沙汰で、そろそろ観たいなあと。 7月の後半の Jörg Müller、Teater Nordkraft、Martin Zimmerman を楽しみにしてます。

[3560] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jul 2 20:29:36 2017

ここに書くのも約1ヶ月ぶりです。今週末の土曜は、この展覧会を観てきました。

Dayanita Singh: Museum Bhavan
東京都写真美術館 2階展示室
2017/05/20-2017/07/17 (月休;7/17開) 10:00-18:00 (木金-20:00)

インド出身で欧米でフォトジャーナリストとして活動し、2000年前後から現代美術の文脈で活動するうになった写真家/現代美術作家の展覧会。 収納部や自立のためのテーブル部も含む折り畳み式パネル状の大形木製の移動式美術館 “Museum Bhavan” の作品を中心に、 フォトジャーナリストから美術作家への転換となった1990年代の作品からほぼ最新の2016年作までを辿る展覧会でした。 インドにおける女性のセクシャルマイノリティの社会的な立場を主題とした初期の作品には、 ストレートにフォトジャーナリストに徹した方が良かったのではないかとも思いつつ、 フォーマルになっていくにつれて良くなっていくよう。 特に、最新の “Museum Bhavan” である Museum of Shedding の静物や人気の無い建築をモノクロで捉えた写真の並びか、 其々異なる様子でまだらに色あせた布の包みが並んだ Time Measures は、 フォーマルな端正さも感じられました。

TOP Collection: Scrolling Through Heisei | Part 1. In the Here and Now
東京都写真美術館 3階展示室
2017/05/13-2017/07/09 (月休) 10:00-18:00 (木金-20:00)

今年度3期に渡って開催される平成年代の作品からなるコレクション展の第1期。 日常を捉えたような作品といっても、私的で物語を感じさせる作風から、もっと即物的で形式的なものまで。やはり、後者の方が好みでしょうか。 松江 泰治 のパンフォーカス空撮カラー写真シリーズ [レビュー] を観て、 やっぱりこういう写真が最も好みだと再確認。 また、日用品を静物画のように、しかし静物画のような陰影の無い影の少ないフラットな照明で、パンフォーカスで撮った 安村 崇 『日常らしさ』シリーズ、特に、「ホッチキス」 (1998) のアクリル画のようなノッペリした色・質感が面白かった。 パンフォーカスで絵画のように撮るというと風景写真が多いわけですが、こういう写真もありだな、と。

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6月は11日から18日まで海外出張。というわけで、その前後の週末は談話室向けの話題を仕込むことができず。 先週末は土曜に軽く銀座のギャラリー巡りなどしたのですが、どれもイマイチだったり、ということで、ネタが無く。 そんな感じで間が空いてしまったのでした。まあ、そんな時もあるということで。 今週末観た展覧会もアタリという程でもなかったのですが、少しは書くリハビリしておこうか、と。

土曜は昼、写真美術館へ行く前に、中目黒 楽屋でフィンランドの jazz/improv 文脈で活動する drums - electronics のデュオ Olavi Louhivouri - Teemu Korpipää のライブを観ました。 Olavi Louhivouri の参加したアルバムは何枚か聴いているので、それなりに期待していたのですが。 繊細な音が無いわけではないのですが、テクスチャ感が違うというか、electronica 以前のセンスのようにも感じられて、いまいち入り込めませんでした。ふうむ。

[3559] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jun 4 23:24:15 2017

土曜の晩は、横浜から六本木へ移動。このイベント・シネマを観てきました。

Royal Opera House, 11 April 2017.
Choreography: George Balanchine.
Set Designers: Jean-Marc Puissant; Costume designer: Karinska.
Pavel Sorokin (conductor), Orchestra of the Royal Opera House.
April 13, 1967, New York City Ballet, New York State Theater
上映: TOHOシネマズ六本木, 2017-06-03.
Emeralds.
Music: Pelléas et Mélisande (1898) and Shylock (1889) by Gabriel Urbain Fauré.
Dancners: Beatriz Stix-Brunell, Valeri Hristov, Laura Morera, Ryoichi Hirano, Emma Maguire, Helen Crawford, James Hay, and artists of the Royal Ballet.
Rubies
Music: Capriccio for Piano and Orchestra (1929) by Igor Stravinsky.
Dancners: Sarah Lamb, Steven McRae, Melissa Hamilton, and artists of the Royal Ballet.
Piano: Robert Clark
Diamonds
Music: Symphony No. 3 in D major, Op. 29 (1875) in D major by Peter Ilyitch Tschaikovsky.
Dancners: Marianela Nuñez, Thiago Soares, Claire Calvert, Tierney Heap, Yasmine Naghdi, Beatriz Stix-Brunell, Nicol Edmonds, James Hay, Fernando Montaño, Valentino Zucchetti, and artists of the Royal Ballet.

初演から50周年を記念して再演された George Balanchine の作品が Royal Opera House Cinema Season 2016/17 で上映されたので、観てきました。 振付の型こそ伝統的なものに基づいていますが、物語無く音楽そのものを表現するかのように踊る抽象バレエ (abstract ballet) の作品です。 第1部 Emeralds は19世紀前半フランスのロマンチック・バレエ (音楽は Fauré なので時代は違いますが)、 第2部 Ruby は戦間期アメリカ ジャズ・エイジを、 第3部 Diamonds は19世紀末帝政ロシアの古典バレエと、 3つの異なるスタイルを合わせた作品です。

やはり、最も楽しめたのは、第2部の Rubies。 パーカッシヴな piano をフィーチャーした複雑なリズムの Stravinsky の音楽も良いのですが、 そんな音楽に合わせてシャープに踊る Steven McRae と Sarah Lamb が、実にかっこいい。 この2人の高い身体能力が堪能できました。 それに比べて、EmeraldsDiamonds は少々退屈するときがありましたが、 こうして並べて観ることにより、コスチュームも含めて、ロマンチック・バレエと古典バレエの違いがが際立って見えたように思います。 特に目に付いたのは、ロマンチック・バレエではチュチュではなく膝下丈のシフォンのスカートで、 群舞もきっちりフォーメンションで見せる古典バレエより緩いということでした。 全3部を前菜、メイン、デザートという比喩は言い得て妙とも思いましたが、 Diamonds はデザートにはちょっとゴージャスで重過ぎとも思ってしまいました。

初演から50周年ということで意識したのですが、この作品の初演は1967年。 カウンターカルチャー最盛期で、ロックの名盤が多く生まれた年です。 初演されたニューヨークでは The Velvet Underground が 1stアルバム The Velvet Underground & Nico をリリースした年。 そんなことを思うと、当時のハイカルチャーとカウンターカルチャーのギャップにも感慨深いものがありました。

あまりバレエに詳しくないので、なんとなく Balanchine/Millepied [レビュー] の Balanchine の方と思っていましたが、似て非なる作品でした。 イベント・シネマの中では作品を着想したというニューヨーク五番街の宝石店を紹介していましたが、 Le Palais de Cristal (1947) でも同じような色使いをしていたので、そのエピソードはある種の「伝説」なのでしょう。

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6月は仕事の予定が被る可能性があったので、予定を入れていませんでした。 まあ、新居の整理にでも当てればいいかと思っていたのですが、家にいてもダラダラと過ごしてしまうばかり。 ということで、思い立って出かけることにしました。

この週末は、新国立劇場でカンパニー デラシネラ 『ふしぎの国のアリス』とか 彩の国さいたま芸術劇場で Noism1 ダブルビル公演 とか気になる公演も無いわけじゃなかったのですが、 当日券が厳しそうな人気の公演ということで、諦めてしまいました。 (まあ、チケット争奪戦の激しさは、上野の東京文化会館の Bolshoi Ballet [Балетная труппа Большого театра] と比べたら遥かに甘いですが。) イベント・シネマは、特に上映開始時刻が夕方だと、当日に思い立ってふらりと観に行かれます。 この気楽さ敷居の低さが良いなあ、と、つくづく実感したこの週末でした。

[3558] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jun 4 21:46:16 2017

土曜は特に予定を入れていなかったのですが、夕方にふと思い立って横浜みなとみらいへ。 この展覧会を観てきました。

The Elegant Other Cross-cultural Encounters in Fashion and Art
横浜美術館
2017/04/15-2017/06/25 (木休;5/4開), 10:00-18:00 (5/17 -20:30).

幕末期の開国をきっかけに活発化した日本と欧米の文化交流を、主にファッションやデザインの面から、 日本における洋装の受容と欧米におけるジャポニズムに焦点を当てて描いた展覧会です。 扱う時代は1950年代から1920s-30s戦間期の Art Deco まで。 『ファッション史の愉しみ−石山彰ブック・コレクションより』 (世田谷美術館, 2016) [レビュー] や 『こどもとファッション ––小さい人たちへの眼差し––』 (東京都庭園美術館, 2016) [レビュー] など、 ここ1年余り、似たようなテーマの展覧会が続いていて、東西交流という視点があるものの新鮮さには欠けましたが、 直前に観た『19世紀パリ時間旅行 -失われた街を求めて-』と被るところもあって、興味深く観ることができました。

展覧会の年表は1850年代から始まり、西洋の事項の最初は、 1857年に Charles Frederick Worth がパリを店を構えてオートクチュール (haute couture) の基礎を築く、というもの。 1853年にパリ改造が始まるので、その後のこととなります。 ちなみに、Worth が Chambre syndicale de la confection et de la couture pour dames et fillettes を設立するのが、 パリ改造が終わる、というか、普仏戦争直前の1868年。 というわけで、パリ改造とオートクチュールの制度の成立は同時代の出来事です。 都市が近代化され、ファッションのあり方が近代化されたのでしょう。 ちなみに、日本の事項の最初は1853年の黒船来航。 黒船来航から明治維新という幕末期は、パリ改造 (というか、フランス第二帝政) と同時代となることにも、気付かされました。

幕末期への目配りはありましたが、資料展示があったのは、実質的に明治維新というか文明開化期以降のもので、 欧米のジャポニズムのドレスも、クリノリンのドレスは1点のみで、バッスル以降のドレス。 装飾品等のデザインも Art Nouveau から Art Deco にかけて。 ジャポニズムが本格化したのも、パリ改造後の第三共和制下のフランス (もしくは南北戦争後のアメリカ) という時代の出来事だったのだなあ、と。

自分の興味関心という点では、やはり戦間期のものの方に惹かれると思いつつ、 『19世紀パリ時間旅行 -失われた街を求めて-』と『ファッションとアート 麗しき東西交流 展』を続けて観て、 19世紀の特に後半の欧米に関して、日本との関係を含めて、今までより具体的なイメージを持てるようになったことが収穫でした。

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[3557] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jun 4 21:42:18 2017

金曜は朝から人間ドツク。検査項目多めのメニューで臨んだのですが、夕方前には終わったので、 会期末が迫って諦めかけていたこの展覧会を観てきました。

Le Voyage dans le Temps du XIXe sièle - A la recherche des rues perdues
練馬区立美術館
2017/04/16-2017/06/04 (月休), 10:00-18:00.

鹿島 茂 『失われたパリの復元: バルザックの時代の街を歩く』 (新潮社) という大型本が出たことを、 ふとしたきっかけで知ったのですが、買っても持て余しそうと思っていたところ、 この展覧会が開催中と知って、足を運んでみました。 19世紀に発行された近世以前のパリの変遷を描いた2つの古地図の載った本 (『パリの物事的、生活的、精神的歴史』 (Jacques-Antoine Dulaure, Histoire physique, civile et morale de Paris depuis les premiers temps historiques jusqu'à nos jours, c.1830) と 『パリ、時代時代』 (Theodor Josef Hubert Hoffbauer (Illust.): Paris à travers les âges, c.1880)) と、 第二帝政 (1852-1870) 時代、Georges-Eugène Haussmann 知事によるパリ改造 (1953-1970) の最中に出版された それ以前のパリの様子をエッチングで描いた『いにしえのパリ』 (Adolphe Martial Potémont: Ancien Paris, 1962-67) という鹿島 茂 コレクションの3冊を軸に、 当時のタブロー、絵画、風刺画、ファッション、ポスターなど関連資料で、19世紀のパリの様子を浮かび上がらせる展覧会です。

Haussmann によるパリ改造は知っていたものの、19世紀にさほど詳しいわけでなく、 フランス革命以降、第一次世界大戦以前の近代として大雑把にしか理解していなかったので、 この展覧会でパリ改造のインパクトの大きさを実感できました。 フランスのロマンチック・バレエが踊られていた、バッスル以前のロマンチックなドレスが流行していたパリは改造前で、 Impressionism の画家が描いた、もしくは、Art Nouveau の華やかなポスターからイメージされる Belle Époque 期のパリとはかなり違う街だったんだなあ、 などと思いつつ、興味深く観ることができました。

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