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談話室 / Conversation Room

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[3551] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed May 17 23:50:56 2017

土曜の晩は、丸の内から六本木へ移動。このイベントシリーズのライヴを観てきました。

デンマークとの外交関係樹立150周年を記念して、実験的な音楽をメインに、 アート、デザイン、食などを含めた文化交流イベント Opposite 2017 が、 SuperDeluxe で10日間にわたり開催されています。その3日目のライヴを観てきました。

Simon Toldam Trio
SuperDeluxe (六本木)
2017/05/13, 19:40-20:40.
Simon Toldam (piano), Knut Finsrud (drums), Nils Davidsen (doublebass).

ILK Music からリリースのある デンマーク=ノルウェー混成のピアノトリオ (Finsrud がノルウェー出身)。 リーダーの Simon Toldam は Han Bennink のベースレストリオでも活動している。 Bennink のトリオはCDで聴いたことがあったが、このトリオを聴くのは始めて。 北欧ということで繊細な音使いを予想していたが、意外とオーソドックスな free jazz のトリオだった。 悪くないのだが、Soldam があまり強い音を使わずに他の音に埋もれてしまい、少々物足りなく感じてしまった。

Illdjinn
SuperDeluxe (六本木)
2017/05/13, 20:50-21:30.
Mads Pind Forsby aka Illdjinn (drums, electronics).

Mats Gustafsson / Johan Berthling / Andreas Werlin のトリオ Fire! の拡大編成 Fire! Orchestra へも参加している drums 奏者 Mads Pind Forsby の Illdjinn 名義での drums ソロ。 electronics も使うということだったが、electronica 的なテクスチャを作り出すような使い方はせず。 時間進行が伸縮するような free なソロではなく、techno / electronica 以降の細かく多層的に進行するようなリズムでもなく、 金属音やリムショットの硬い音を多めに交えつつもしっかり刻むようなソロだった。

YARAYAWA
SuperDeluxe (六本木)
2017/05/13, 21:50-22:30.
Anders Lauge Meldgaard (syntheziser, EWI (electric wind instrument)), Mads Pind Forsby (drums), Martin Hoshi Vognsen (guitar, pedals), Iku Sakan (electronics, omnichord), 安藤 暁彦 [Akihiko Ando] (saxophone, electronics).

YARAYAWA は日本=デンマーク混成の4tet。 Meldgaard, Vofnsen, Sakan に drums の Muneomi Senju [千住 宗臣] が通常の編成だが、 今回は、Senju の代わりに Illdjin こと Mads Pind Forsby が入り、 安藤 暁彦 をゲストを迎えての5tetの編成で。 electronics を使うミュージシャンが多いけれども、techno / electronics 以降ならではの (nu jazz 的な) 音使いではなかった。 特に後半になるにつれて、音量の大きさと手数の多さで戦うかのようなフリーな即興になっていった。 最近は electronica 的なセクスチャを意識した繊細な音使いが好みということもあり、すっかり遠ざかっていたが、 1990年代はまだこういうフリーな即興をよく聴く機会があったことを思い出すような演奏だった。

3セットとも electronica 色薄くて意外とオーソドックスな即興のライヴに聴こえた。 1セットが短いショーケース的なライヴということで、さほど期待せずに臨んだせいか、 意外と気楽に楽しめたように思う。

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日曜は朝からキッチンのラックの配送を受け取って組み立て。 これで、キッチン、バス・トイレ周りはほぼ片付いたのですが、本・レコード・CDの整理が遅々として進みません。 量が多すぎてどう手をつけたものかと途方に暮れてしまいます。うーむ。

[3550] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue May 16 0:06:31 2017

土曜は未明から本降りの雨。ということで、ゆっくり過ごして、夕方に丸の内へ。このライヴの観てきました。

Scott Amendola Group
Cotton Club (丸の内)
2017/05/13, 17:00-18:00.
Scott Amendola (drums), Nels Cline (electric guitar, effects), Jeff Parker (electric guitar, effects), Jenny Scheinman (violin), Chris Lightcap (doublebass).

自身のグループはもちろん Nels Cline Singers などのグループに参加し、 Cryptogramophone や Nine Winds など 米国西海岸の独立系レーベルに録音を残してきている サンフランシスコを拠点に活動する drums 奏者 Scott Andromeda が自身のグループで来日。 alt rock/country のグループ Wilco のメンバーとしても活動する Nels Cline と post-rock のグループ Tortoise のメンバーとしても活動する Jeff Parker という jazz/improv 以外での活動も目立つ2人の guitar 奏者に、 Bill Frisell の録音にばしば参加してきている violin 奏者 Jenny Scheinman、 Clean Feed レーベルからリーダー作をリリースしている doublebass 奏者 Chris Lightcap とメンバーも豪華だ。

cymbal などの金属音を使った細かいリズムの上に浮遊するような guitar や violin のフレーズが流れるような techno / electronica 以降ならではの展開になる時もあったが、普通に jazz rock 風のリズムになる時の方がむしろ多かっただろうか。 はっとするような音を繰り出してくるというほどではなかったが、 巧みにリードとリズムを交代するかのよう、時にユニゾンする、Nels Cline と Jeff Parker の guitar、 Nels Cline と Jenny Scheinman の対話するようなやり取り、など、フロントの演奏も良かった。 reggae のリズムの曲や、アンコールで演奏した violin のフレーズも気持ち良い alt country の曲も、リラックスして楽しむことができた。

今回の会場の Collon Club で観たライヴというと、 去年8月の Wolfgang Muthspiel Trio with Brian Blade, Larry Grenadier、 今年3月の Jakob Bro Trio with Thomas Morgan, Joey Baron と 出演ミュージシャンの割にいまいち楽しめなかったものが続いていたので、 イヤな予感がしてたのですが、今回は普通に楽しめて良かった……。

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[3549] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun May 14 23:00:39 2017

6日の午後、恵比寿で写真展を観た後は神保町へ。 神保町シアターのゴールデンウィーク特別興行 『映画監督・成瀬巳喜男 初期傑作選』から、 この映画を観てきました。

『サーカス五人組』
1935 / PCL / 白黒 / 65min.
監督: 成瀬 巳喜男. 原作: 古川 緑波 『悲しきジンタ』
大川 平八郎 (ジンタ五人組 幸吉), 宇留木 浩 (ジンタ五人組 虎吉), 藤原 釜足 (ジンタ五人組 甚吉), リキー 宮川 (ジンタ五人組 六太), 御橋 公 (ジンタ五人組 清六), 堤 眞佐子 (サーカス娘 千代子), 梅園 龍子 (サーカス娘 澄子), etc

旅回りのジンタ五人組がある町にやってくるが、 その町ではサーカスの一座も公演を打っていた。 サーカスには団長の娘2人が花形として出演していたが、 妹の澄子は団員の一人と密かに思いを寄せあっていた。 そんな中、団長と男性の団員達が仲違いし、団員がボイコットを始めてしまった。 サーカス団は、ちょうど町にいたジンタ五人組に目を付け、代理に出演させることにする。 サーカスの花型の姉の千代子は、ジンタ五人組の一人 幸吉に好意を寄せるようになる。 五人組が出演するサーカスが始まるが、ボイコット中の団員が乱入してくる。 空中ブランコ中の澄子は、その争いを嫌って、ブランコから身投げしてしまう。 澄子は大怪我でなく済み、澄子の思いを知って、団長と団員は和解する。 そしてサーカスを役御免となったジンタ五人組は再び旅回りに出た。

エノケン (榎本 健一) と並ぶ戦間期日本のコメディアン ロッパ (古川 緑波) の原作による、旅回り芸人たちを主人公に据えた映画。 ロッパ原作ということでもっとドタバタの喜劇かと思いきや、 サーカス娘2人をめぐるちょっとウェットな恋話や旅回りの悲哀を、ユーモアを交えつつ描いた、センチメンタルな人情物と言った方が良い内容でした。 といっても、ジンタ五人組のキャラも皆立っていましたし、 戦間期日本のサーカス、ジンタの様子を垣間見るようで、そこは興味深く観れました。

『女人哀愁』 [レビュー] で貧しいながら一途に洋子を愛する益田役を演じていた 大川 平八郎 が、 この映画でもサーカス娘に好意を寄せられるミュージシャン志望のジンタ 幸吉を演じていました。 これが、アメリカで俳優として活動した後、日本にもどってきた、PCL〜東宝のスター男優か、と思いつつ見ていましたが、 いい役なのに映画の中で今ひとつ目立たなく感じられてしまいました。 『女人哀愁』と共通して出演していた俳優というと、堤 真佐子。 いずれも主役に近い役ですが、松竹大船が揃えていた華のある美人とは違い、 ふっくら愛嬌を感じるタイプで、これもプロダクションの色の違いかなあと思いつつ観ていました。

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最近は、松竹大船だけでなくPCL〜東宝の戦前日本映画も何本か観ていますが、 やはり松竹大船の作風の方が好みだなあ、と。 ま、数を観てそれなりに俳優の個性が把握できるようになれば、もっと楽しめるようになるかしらん、と。

ゴールデンウィーク最終日の日曜はのんびり過ごそうかと思っていたのですが、 ゴールデンウィーク中にやっている特別夜間開館が空いているという噂を目にして、 新国立美術館の 『ミュシャ展』 Alfons Mucha を観てきました。 超大作でチェコ国外に初めて出たという『スラヴ叙事詩』 (Slovanská epopej, 1910-1928) 全20作品を生で観る絶好の機会かと。 確かに『スラブ叙事詩』は見応えありましたが、チェコへ戻って画風が重厚になる前の華やかで明るい画風で民族モチーフ描いた 1900年パリ万博ボスニア=ヘルツェゴビナ館の壁画の下絵が、最強じゃないか、と思ってしまいました。

同じく新国立美術館で開催中の展覧会 草間 彌生 『わが永遠の魂』 はパスしてしまいました。 続けて観るには食い合わせが悪いですし。 しかし、こちらも Mucha 展と同じくらい混雑しているようで、すっかり腰が引けてます。 そこまでして観たいものか、と自問。

[3548] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun May 14 21:47:01 2017

ゴールデンウィーク終盤の土曜は昼に恵比寿へ。会期末が迫ってしまったこの展覧会を観てきました。

Yamazaki Hiroshi: Concepts and Incidents: A retrospective from the late sixties onwards
東京都写真美術館 2階展示室
2017/03/07-2017/05/10 (月休;3/20開,3/21休,5/1開) 10:00-18:00 (木金-20:00)

山崎 博は1960年代末から活動する写真作家。 その時代ということもあるだろうが、初期の作品は舞踏やアングラ演劇 (天井桟敷、黒テントなど) の写真もあり、その作風もアレブレボケに近かった。 しかし、1970年代半ばには、定点観測写真のような『Observation 観測概念』シリーズや、 そこからの展開で長時間露光で太陽の軌跡を捉えた『Heliography』シリーズなど、コンセプチャルで即物的な作風となっている。 『Heliography』シリーズなど今までもコレクション展などで観ていたけれども、自分にとってはほぼノーチェックの写真作家だった。 しかし、即物的で抽象画のような作風の写真は大変に好みで、こんなに面白い写真作家だったのかと気付かされた展覧会だった。

『Heliography』もかなり好みだが、 画面二等分で水平線を捉える『水平線採取』シリーズを1970年代末から撮っていたとは。 杉本 博 『海景』シリーズの一つと言われても区別できないような白黒の作品もあるが、 カラーだったり、島や波打ち際を写し込んだり、太陽の軌跡や波のきらめきを明るく写し込んだり。 むしろ、水平線を画面二等分で捉えるという制約の中で、ミニマルな中にも多様性を作りだそうとする試みが 『海景』シリーズとは異なる面白さにも感じられた。 逆光を使ったりピントを大きくズラしして抽象画のように桜を捉える『櫻』シリーズや、 印画紙に直接露光するフォトグラムによる写真も良かったが、 やはり『水平線採取』シリーズの方がコンセプトと画面の抽象度のバランスが良くて面白いように感じられた。

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3階展示室の方では 『夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史 総合開館20周年記念〈総集編〉』。 リニューアル前、2006年から地域別に4回に分けて開催された展覧会の総集編です。 一通り観ているのでざっと観て済ませてしまいましたが、こういう調査結果の報告の展示は興味深いものです。 美術館にはこういう地道な調査も継続して欲しいものです。

[3547] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed May 10 23:45:02 2017

5日の午後、TACT/FEST の The Pianist は終演まで見届けずにシアターウエストを出て、 急いでプレイハウスへ移動。続けてこの舞台を観てきました。

東京芸術劇場 プレイハウス
2017/05/05, 17:00-18:00.
Choreography: Anne Teresa De Keersmaeker
Created with and danced by Boštjan Antončič, Carlos Garbin, Marie Goudot, Cynthia Loemij, Julien Monty, Michael Pomero, Igor Shyshko Danced by: Anne Teresa De Keersmaeker, Tale Dolven
Music: Vortex Temporum, Gérard Grisey (1996).
Musicians: Ictus: Jean-Luc Plouvier (piano), Chryssi Dimitriou (flute), Dirk Descheemaeker (clarinet), Igor Semenoff (violin), Jeroen Robbrecht (viola), Geert De Bièvre (cello).
Production: Rosas.
World Premiere: 03/10/2013, Ruhrtriennale.

ベルギーのダンスカンパニー Rosas のこの春の日本公演では、 最初期の作品 Fase [レビュー] だけでなく、 比較的最近のこの作品の公演も行われた。 フランスの現代の作曲家 Gérard Grisey の曲 Vortex Temporum (1996) をダンス作品化したもので、 演奏するアンサンブル Ictus が生演奏というだけでなく、ダンサーと共に移動しながら演奏するという作品だ。 Ictus 絡みの作品 3Abschied [レビュー] や A. Schönberg や A. Webern の曲を使った Zeitung [レビュー] をそれなりに楽しんだので、 この作品にも期待していたのだが、期待が大き過ぎたか、少々退屈してしまった舞台だった。

まずは、ダンサー抜きで Ictus のミュージシャンニよる曲の演奏のみで始まる。 この時はみな座って移動せずに演奏する。 続いて Ictus のミュージシャンが退き、Rosas のダンサーが無音の中で踊る。 さらに、Ictus のミュージシャンが加わり、piano すら動かしつつミュージシャンも移動しながら演奏し、Rosas のダンサーも踊る。 最後には Ictus のミュージシャンは照明が薄暗くなった舞台後方へ退き、その前でダンサーが踊るという展開になった。 ダンス抜きでの音楽、音楽抜きでのダンス、までは、音楽とダンスの関係を直接的に示さないところに、興味を引かれた。 しかし、ダンスに混じってミュージシャンも動きながら演奏する段となると、動きのパターンも読めるような感もあって、逆に退屈になりはじめた。 ダンスは曲のタイトルにあるように渦を思わせる動きなのだが、 身体能力を駆使したダンスというよりも位置取りや手先で渦を描くよう。 ミュージシャンを交えて分だけ動きに制約があるのだとも思うが、 訓練された人ならではの真似ができないような動きの面白さがあまり感じられず、物足りなく感じた。

Gérard Grisey は École spectrale (スペクトル楽派) で知られる作曲家。 無調で明確なリズムもないいわゆる現代音楽だが、 隙間の多い音空間ではなく、むしろ、音のテクスチャを作るかのようなトレモロやトーンクラスターが耳に残る演奏。 舞台には床に様々な半径の円を組み合わせた図形が白線で描かれているのみ。 照明による演出も高い天井の蛍光灯のみ。その点滅で舞台の一部を明るくしたり暗くすることはしていたが、 基本的にのっぺり明るい照明で、スポットライトのように強いコントラスによる照明演出もなかった。 ダンサーの衣装も黒に近い色の普段着を思わせる地味なもの。 地味な動きもあって、習作的なワークショップを見ているようでもあった。 おそらくそういう所も狙っているのだろうとは思うが、現在の自分の興味からは外れてしまった。

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引越直後のゴールデンウィークということで、 今年は『ふじのくに⇄せかい演劇祭』を観に静岡遠征するのは自粛して、 新居の整理に充てるつもりだったのですが。 結局、2日、4日、5日と東京芸術劇場へ通ってしまいました。 ま、午前中を家事に充てるくらいのことはできましたが、 結局、静岡遠征を自粛した意味が無くなってしまったなあ、と、反省……。

[3546] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun May 7 21:44:12 2017

5日は昼から池袋西口へ。東京芸術劇場で毎年GW恒例となっている子供連れ家族向けのフェスティバル TACT/FEST を観てきました。

I Kadek Budi Setiawan (aka Kadek Capung)
Eclipse
東京芸術劇場シアターウェスト
2017/5/5, 13:00-14:00.
Created by I Kadek Budi Setiawan (aka Kadek Capung). Performed by I Kadek Budi Setiawan et al.
Created in 2017.

インドネシア・バリの伝統芸能の影絵芝居 Wayang Kulit と仮面舞踊 Topeng による舞台。 どちらも宗教儀礼に結び付いていて伝統的には一緒に上演されるものではないとのことですが、 ヒンドゥー教の天地創造神話の中の月食・日食の起源にまつわる物語を使い、一つの作品としてまとめあげたとのこと。 ちなみに、作・出演の I Kadek Budi Stiawan は 『三代目りちゃあど』 (Ong Keng Sen (dir.): Sandaime Richard) [レビュー] に出演していました。 Wayang Kulit にも Topeng にもさほど馴染みが無いので、その動きの面白さ美しさをまとめて観ることができましたが、 現代的な演出の妙が楽しめるというほどではありませんでした。 音楽は Gamelan の生演奏でしたが、こちらも、Wayang 伴奏に用いられる slendro 音階の gender wayang と 20世紀に入って普及して現在最も一般的な pelog 音階の gong kebyar が使われていたとのこと。 金属音多めの打楽器アンサブルは生演奏ならでのライブ感もあって良かったのですが、 音階の違い、使い分けまではわかりませんでした。

Transhumance
劇団コープス 『ひつじ増量計画』
東京芸術劇場ロワー広場
2017/5/5, 14:45-15:15.
Origilan concept et Chorégraphie: David Danzon & Sylvie Bouchard
Performed by Jolyane Langlois, Takako Segawa [瀬川 貴子], David Danzon, etc.

次の公演までの時間はロワー広場で毎年恒例の『ひつじ』 [2010年のレビュー]、 ではなく、今年は劇団創設20周年ということで、ひつじを増やした20名バージョン『ひつじ増量計画』。 核となる Corpus のメンバーに加え、オーディション選抜もしくはワークショップ参加によるパフォーマーで増員していました。 といっても、舞台となる人口芝のスペースや、羊飼いに連れられてやってきて、 餌を食べたり排尿したり交尾したりした後、狼がやってきて混乱した後、帰っていく展開は一緒。 人間的な表情や仕草を排した感情的心理的な脈略が感じらない不条理さが魅力のパフォーマンスですが、 増員分のパフォーマーがそこまで徹し切れておらず、不条理さが薄まっていました。

東京芸術劇場シアターウエスト
2017/5/5, 16:00-17:00.
Production: Circo Aereo; Direction, creation: Sanna Silvennoinen, Thomas Monckton.
Performer: Courtenay Stevens.
Premier: 2013-09-04, Hämeenlinnan Teatterissa.

舞台登場から演奏開始までのドタバタを、時に異世界へスリップしつつ観客を巻き込みつの道化芝居で、 現代サーカスというほど演出構成が独特というほどではなく、演技も笑いの取り方もむしろオーソドックス。 大人から子供までしっかり笑いを取っていて、今まで観た FACT/FESTIVAL のサーカス演目の中で最もウケていました。 一時間は引っ張り過ぎで30分くらいでまとめた方が楽しめたのではないかという気もしましたが、 フェスティバルとしては、スタイリッシュだけどとっつきやすいとは言い難い現代サーカスだけでなく、こういう演目も交えた方が、 観る方も楽しめるように思いました。

去年はシアターイースト/シアターウエストの会場で3演目でしたが、今年は2演目。 どんどん規模が縮小していて、寂しい限りです。 Rosas 公演やボンクリ・フェスタ2017もあって、会場の制約もあったのかもしれませんが。 しかし、せっかく同じ東京芸術劇場で開催されている公演なので、Rosas 公演と FACT/FEST のハシゴを余裕を持ってできるよう、 開演時間や終演時間を設定して欲しかったものです。

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[3545] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Fri May 5 23:55:17 2017

2日に続いて、4日も神保町へ。 神保町シアターのゴールデンウィーク特別興行 『映画監督・成瀬巳喜男 初期傑作選』から、 1930s前半松竹蒲田時代のサイレント映画2本を 天池 穂高 のピアノ生伴奏で観てきました。

1本目は『限りなき舗道』 (松竹蒲田, 1934)。 以前に観たときは、戦間期モダンな銀座の街並みを目当てに観たせいか、テーマは少々保守的に感じられました [レビュー]。 しかし、今回は『女人哀愁』 (PCL=入江ぷろだくしょん, 1937) を観たばかりということもあってか [レビュー]、 不幸な格差婚からの自立というテーマがすっと入ってきました。 杉子の芯の強さ、というか、演じる 忍 節子 の 入江 たか子 にも劣らない秘めるような強さ美しさに気付かされました。

忍 節子 って、坪内 美子 と同系の、洋装美女に見劣りしないモダンなセンスを感じる和装美女だななあ、と。 個人的な好みをいえば、忍 節子 よりも 香取 千代子 ですが。

2本目は、初めて観たこの作品。

『生さぬ仲』
1932 / 松竹蒲田 / 白黒 / 74min.
監督: 成瀬 巳喜男.
奈良 真養 (渥美 俊策), 筑波 雪子 (妻 真砂子), 小島 壽子 (娘 滋子), 葛城 文子 (母 岸代), 岡 譲二 (日下部 正也), 岡田 嘉子 (清岡 球江), 結城 一朗 (弟 巻野 慶次), etc

夫と娘を捨ててアメリカで女優として成功した 珠江 は、娘 滋子と再会するため日本へ戻ってきた。 事業に失敗して追い詰められていたかつての夫、渥美に珠江は融資を申し出るが、拒絶される。 渥美は破産し屋敷は他に渡りさらに不正により投獄されてしまい、後妻 真砂子 はデパートの売り子をしながら継子 滋子、義母 岸代 と細やかな一軒家暮らしを始める。 貧乏暮しを嫌う義母は、珠江の誘いに乗って、滋子を連れて珠江の屋敷へ行ってしまう。 真砂子は滋子を取り戻そうと、渥美の旧友 日下部を頼り、珠江の家へ行くが追い返されてしまう。 滋子は珠江に懐かず、屋敷を逃げ出そうとして、自転車に轢かれてしまう。 滋子が臥せていると日下部から知らされ、真砂子は珠江の屋敷へ忍んで行き再会するが、見つかって、引き離されそうになる。 しかし、真砂子と滋子の仲を見て、珠江は滋子を真砂子に任せることにし、アメリカで築いた財産を滋子に残して、アメリカへ帰って行った。

いわゆる母子ものというか、産みの親より育ての親という内容なメロドラマチックな物語ですが、 見所はやはり、サイレント時代のスター女優、筑波 雪子 と 岡田 嘉子 の対決。期待以上に見応えがありました。 和装の似合う 筑波 と洋装もキマった 岡田 のコントラストも良し。 岡田 嘉子 の出演した戦前日本映画といえば、 小津 安二郎 『東京の女』 (松竹蒲田, 1933)、島津 保次郎 『隣の八重ちゃん』 (松竹蒲田, 1934)、小津 安二郎 『東京の宿』 (松竹蒲田, 1934) など 数は多くないものの何本か観てますが、 今まで観た中で 岡田 嘉子 を最も堪能できた映画でした。

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しかし、前に『限りなき舗道』を観たのはもう5年も前のことだったか。ついこのあいだという気でいました。 時の経つのがどんどん速くなっているような……。

4日も神保町の後は、池袋へ。晩に東京芸術劇場コンサートホールで 『ボンクリ・フェス2017スペシャルコンサート』。 子供向け企画の現代音楽フェスティバルといったところでしょうか。 その企画というより、Jan Bang と Nils Petter Molvær が出演するという興味で足を運んでみました。 しかし、出番はさほど無く。 コンサート全体としてもとっつきやすい曲もあってバラエティに富んでいましたが、全体としてのコンセプトが掴めず、ぼんやりとした印象になってしまいました。うーむ。

[3544] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu May 4 1:13:23 2017

2日に神保町で映画を観た後は池袋西口へ移動。晩にこの舞台を観てきました。

東京芸術劇場 プレイハウス
2017/05/02, 19:30-20:40.
Choreography: Anne Teresa De Keersmaeker; Created with Jennifer Everhard (Come Out), Michèle Anne De Mey (Piano Phase, Clapping Music)
Danced by: Anne Teresa De Keersmaeker, Tale Dolven
Music: Steve Reich Piano Phase (1967), Come Out (1966), Violin Phase (1967), Clapping Music (1972).
Production: 1982 - Schaamte (Brussels), Avila (Brussels), 1993 - Rosas & De Munt / La Monnaie (Brussels)
Premiere: 18/03/1982, Beursschouwburg (Brussels)

ベルギーのダンスカンパニー Rosas を主宰する Anne Teresa De Keersmaeker が Tisch School of the Arts, New York Univ. への留学から帰国した直後、 Rosas を旗揚げする直前に制作した、彼女の原点とも言える作品 Fase。 15年前に彩の国さいたま芸術劇場で Anne Teresa De Keersmaeker と Michele-Anne De Mey が踊ったのを観ているが [レビュー]、 その時の印象も薄れていたので、再見する良い機会かと、足を運んだ。

周期の異なる反復音からなる Reich の音楽を最低限の振付と演出でダンス化したかのようか作品の 面白さと美しさを再確認。 しかし、Piano Phoase の印象が強すぎたか、 Come Out などほとんど忘れていたということにも気づかされた。 また、再見ということもあるのか、観ていて、コンセプトの面白さよりもディテールに目がとまった。 Piano PhaseViolin Phase のシンプルなワンピースドレスは、 スピンのくるくる回る動きにスカートのラインが綺麗になびくように作られている。 また、ほとんど白というかモノトーンに見える2人の衣装が、わずかに色違いであったことにも気付かされた。 そんな、衣装の面白さに気付くことが出来た公演だった。

今回も Keersmaeker が4幕全て踊り通した。 前に観たときも40余歳でよく踊れるなと思いながら観ていたが、それから15年、 1960年生で60歳近い御歳であれだけ動けることに賞賛。 しかし、特に Clapping Music のような動きでは、 一緒に踊ったダンサーと並ぶと、動きの切れの無さ、精度の甘さがどうしても目についてしまう。 自分が観た公演では、Keersmaeker 髪をまとめていたピンが外れてしまい、踊りながら髪を直すというハプニングもあったりした。 いっそ Opéra national de Paris あたりの超絶身体能力のバレエ・ダンサーに技巧的にきっちり踊らせた方がコンセプトがはっきりして良いのではと思いつつ、 本人が踊っていることに対する贔屓目もあるかもしれないが、乱れも含めて作品の味わいかもしれないと思ったりもした。

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[3543] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed May 3 22:33:51 2017

2日は新居に新調した書架の受け取りのために休みにしていたのですが、配送時間の都合が悪く翌日へ延期。 というわけで、午後に神保町に出て、 神保町シアターのゴールデンウィーク特別興行 『映画監督・成瀬巳喜男 初期傑作選』から、 この映画を観てきました。

『女人哀愁』
1937 / PCL=入江ぷろだくしょん / 白黒 / 74min.
監督: 成瀬 巳喜男.
入江 たか子 (河野 広子), 堤 真佐子 (妹 よし子), 北沢 彪 (堀江 新一), 沢 蘭子 (妹 洋子), 大川 平八郎 (益田 敏雄), 佐伯 秀男 (北村 良介), etc

父を早くに亡くしデパートのレコード売り場で働く河野 広子は、裕福な堀江家の 新一 と見合い結婚する。 家の体面を重視する堀江家は、嫁の広子を女中もしくは飾りの人形のように扱う。 義妹 洋子はサラリーマンの益田と駆け落ちするが、愛はあれど金の無い生活に嫌気がさし、家に戻ってくる。 愛する彼女を取り戻そうとする益田に対して冷淡な堀江家を見るうちに、広子は堀江家での生活に不満を覚えるようになる。 洋子との生活のために会社の金を持ち逃げしていたことがばれた益田は、最後に洋子に会いたいと、広子に連絡を取る。 洋子は反省して益田に会いに行こうとするが、新一はそれを止めさせる一方、益田の居場所を広子から聞き出そうとする。 広子は新一に逆らい、新一に益田の居場所を伏せ、洋子を益田のもとへ行かせて、堀江家を出る。

松竹からPCL (後の東宝) へ移籍した後、当時のスター女優 入江 たか子 を主演にして撮ったトーキー映画。 いわゆるメロドラマチックな三角関係などはなく、身分違いの不幸な結婚の話で、 サイレント時代に成瀬が撮った『限りなき舗道』 (松竹蒲田, 1934) [レビュー] を思わせる所も。 もしくは、山本 薩夫 (dir.) 『母の曲』 (東宝, 1937) [レビュー] から母ものの部分を取り去ったよう。 しかし、『限りなき舗道』や『母の曲』が女性の我慢や諦めによって話を締めくくるのに対し、 『女人哀愁』は不幸な結婚生活からの女性の自立として描いています。 中盤くらいまでの優柔普段で自分の意思を出さ無いヒロインは感情移入し難いものがありましたが、 それだけに終盤のヒロインが美しく凛々しく見えたでしょうか。

ところで、映画の中で2回、鍵となる場面でスタンダードナンバーとして有名な Rogers & Hart の “Blue Moon” が使われていました。 最初はお嫁に行く直前、広子が「私だってダンスできる」と、妹よし子と踊る場面。 そして、二度目は堀江家での生活がうまくいかなくなってから、母を見舞いに実家に行った場面で、結婚前の思いを回想しつつ。 “Blue Moon” というと、自分にとってはジャズのスタンダード曲としての、もしくは、Elvis Presley などの1950s-60sのカバーでの印象が強く、 オリジナルは戦間期と頭では判っていても、少々違和感を覚えました。 ちなみに、オリジナルは映画 Manhattan Melodorama (MGM, 1934) の劇中歌 [YouTube]。 オリジナルから3年後に使っているということは、当時としてはアメリカの新しいヒット曲を取り上げたに近かったのでしょうか。

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映画が始まる時間まで余裕があったので、その前に東京国立近代美術館へ。 企画展ギャラリーでは、 『茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術』。 茶道の茶器で知られる楽焼の樂家の歴代当主の作品を並べた展覧会でした。 さすがに宇宙というほどではありませんでしたが、日本近世史を見るかのような展覧会ではありました。 ちょうど、笹本 正治 『中世の音・近世の音 鐘の音の結ぶ世界』 (1990; 講談社現代新書, 2008) を読了した直後だったので、 これが近世の音が聞こえていた時代の美かと興味深く観ました。

ギャラリー4では企画展 『マルセル・ブロイヤーの家具: Improvement for good』。 スチールパイプを使ったアームチェア Wassily で有名な Bauhaus のデザイナー Marcel Breuer の展覧会です。こういうデザインは大変に好みです。 というわけで、目当てはこちらの展覧会だったのですが、期待が大き過ぎたか、小ぢんまりとした展示に逆に不完全燃焼。うーむ。

[3542] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Apr 23 22:01:05 2017

転居後で部屋の中はまだまだダンボール箱の山だらけですが、 土曜は夕方に渋谷へ出て、この舞台を観てきました。

Finn Family Moomin: Moomin and the Magician's Hat / Special Ballet Galla
オーチャードホール, 文化村 (渋谷)
2017/04/22 16:30-19:00
Special Ballet Gala
『北欧バレエ・ガラ』
From Swan Lake Act III: “Spanish Dance”, “Hungarian Dance”, “Russian Dance”, “The Black Swan Pas de Deux”
『白鳥の湖』 第3幕より: 「スペインの踊り」「ハンガリーの踊り」「ロシアの踊り」「オディールと王子のグラン・パ・ド・ドゥ」
Choreography: Kenneth Grave(based on the Lev Ivanov / Marius Petipa; Music: Pyotr Ilyich Tchaikovsky.
The Swan of Tuonela 『トゥオネラの白鳥』
Choreography: Imre Eck; Music: Jean Sibelius.
Grand Pas de Deux from Scheherazade 『シェヘラザード』よりグラン・パ・ド・ドゥ
Choreography: Kenneth Grave; Music: Nikolai Andreyevich Rimsky-Korsakov.
From Ballet Pathetique バレエ『悲愴』より
Choreography: Jorma Uotinen; Music: Pyotr Ilyich Tchaikovsky.
From Don Quixote Act III: “Fandango”, “Grand Pas de Deux”
『ドン・キホーテ』第3幕より: 「ファンタンゴ」「グラン・パ・ド・ドゥ」
Choreography: Patrice Bart, José de Udaeta (Fandango); Music: Léon Minkus.
Finn Family Moomin: Moomin and the Magician's Hat
Choreography: Kenneth Grave; Music: Tuomas Kantelinen.

フィンランド国立バレエ団の初来日公演。 フィンランドの有名なキャラクター Moomin をフィーチャーした2015年制作のバレエ作品 Moomin and the Comet が海外メディアでも話題になっていて気になっていたところ、 初来日で世界初演となる Moomin ballet 新作第2作を持ってきました。 バレエ公演にしては手頃なチケット価格だったうえチケット争奪戦もさほどでなく、 イベントシネマでバレエづいているので、生でバレエを観る絶好の機会と足を運んでみました。

休憩を挟んで前半約1時間は『北欧バレエ・ガラ』。 特に北欧と謳うほどではないと思いましたが、有名な古典作品だけでなく現代作品を含む作品からの抜粋からなるステージ。 背景に映像を投影する程度で美術も無く、抜粋によって物語性が解体されるので、古典作品と現代作品の差異が小さくなり、 演出を楽しむというより、ダンサーの身体性、技が全面に出てくるように感じられました。 現代作品は、The Swan of TuonelaPathetique。 特に Pathetique は、道化のような化粧にスキンヘッド、上半身裸に白いチュチュという姿で踊る男性のソロで、古典作品と並ぶとなかなかのインパクト。 古典作品の中では、フラメンコ色濃く女性も艶やかな Don Quixote を楽しみました。 現代に舞台を移した Théâtre National de Chaillot の Don Quichotte du Trocadéro を以前に観てますが [レビュー]、 イベントシネマも活用して、古典的な演出のものもちゃんと観ておきたいものです。

後半約1時間はムーミン・バレエこと『たのしいムーミン一家 ~ムーミンと魔法使いの帽子~』。 Moomin たちメインのキャラクターの着ぐるみがかなりアニメーションでの造形に忠実なので、着ぐるみショー色濃いものを予想していました。 しかし、前半こそ着ぐるみでないのが Little My (ミィ) と Snafkin (スナフキン) だけでバレエ色が薄めでしたが、 特に後半、Magican (飛行オニ)、Black Panther (黒豹)、Ruby (ルビー) などが登場すると、ぐっとバレエらしく。 というか、メインのキャラクターの造形を生かすと踊らせづらいので、バレエを踊らせる役として脇役を活用したといったところでしょうか。 期待以上に動きにキレがあり、しかし Moomin ならではのほんわかした雰囲気も上手く表現していて、 「Moominmamma (ムーミンママ) がいいなあー」とか 「The Groke (モラン) が不気味可愛い」とか 「Little My と Snafkin が美男美女カップルでいいのか!?」などと突っ込みを入れつつ楽しんで観ることができました。

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先週末、15、16日の週末を使って転居しました。世田谷の若林を離れ、川崎市の小杉町へと。 大家さんとも仲良くなり居心地良かったこともあり、若林には14年も住んでいました。 今までの人生で最も長い間住んだ場所だったんだなあ、と。 若林にも思い入れがありますが、心機一転する良い機会かと前向きに考えてます。

CDやレコードを大量に持っているという自覚はありましたが、 箱詰してわかったのは、体積で見て一番多かったのは本だったということ。 あと、自分はさほど衣装持ちのつもりではなかったのですが、荷造り荷開きしてみると多いなあ、と。 14年使い続けたものばかりと、家具家電は転居に合わせて新調したため引越荷物に含まれなかったにもかかわらず、2tロングという単身者とは思えない荷物量に我ながら呆れました。 転居前に整理する余裕もなくとりあえず新居に持って来てしまいましたが、少しずつ減らしていかねば、と。

転居の理由は、職場の引越。 旧居から新しい職場へは2時間半かかり、とうてい通勤できないため、転居することにしたのでした。 といっても、新居からでも1時間半余りかかりそうなのですが。 明日から新しい職場へ通勤です。 職場が変わるだけでなく、この4月から役職も変わって、ますます忙しくなりそうです。 今までのようには、このサイトは運営できなくなるかなあ、と。

[3541] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- tfj@kt.rim.or.jp, Sun Apr 2 23:53:42 2017

土曜も昼過ぎには日本橋へ。水曜晩、金曜晩に続いてイベントシネマでバレエを観てきました。

Royal Opera House, 8 February 2017.
Direction and choreography: Wayne McGregor; Music: Max Richter; Dramaturg: Uzma Hameed.
Designers: Ciguë, We Not I and Wayne McGregor, Costume designer: Moritz Junge; Lighting designer: Lucy Carter; Film designer: Ravi Deepres.
Koen Kessels (conductor), Orchestra of the Royal Opera House.
Premier: 11 May 2015, The Royal Opera House, London
上映: TOHOシネマズ日本橋, 2017-04-01.
I now, I then
from Mrs Dalloway
Dancners: Alessandra Ferri, Federico Bonelli, Gary Avis, Francesca Hayward, Beatriz Stix-Burnell, Edward Watson, Akane Takada, Calvin Richardson.
Becomings
from Orlando
Dancners: Gary Avis, Matthew Ball, Calvin Richardson, Francesca Hayward, Paul Kay, Sarah Lamb, Steven McRae, Natalia Osipova, Beatriz Stiv-Brunell, Akane Takada, Eric Underwood, Edward Watson.
Tuesday
from The Waves
Dancners: Alessandra Ferri, Federico Bonelli, Sarah Lamb, et al.
Anush Hovhannisyan (soprano).

Royal Opera House Cinema Season 2016/17 のラインナップ中、唯一のコンテンポラリー・バレエ作品。 ヨーロッパの国立バレエ団のコンテンポラリー作品はほとんど来日せず、Wayne McGregor の作品を観る機会が無かったので、これも良い機会と足を運んでみた。 2015年に初演されたこの作品は、戦間期にロンドンで活動したモダニズムの小説家 Virginia Woolf の3作品と Woolf の生涯に着想した、 3幕物というか3部作 (triptych) 構成の作品。

第1幕というか第1作は小説 Mrs Dalloway (1925) に着想した I now, I then。 主に回想で直線的に話が進行するわけではなく叙情的ですらあったけれども、予想よりもナラティヴな印象。 身体能力を見せるというよりアクロパティックながらマイムで心情を表現するようなダンスで、 ミニマルな演出のフィジカルな現代演劇を観てるよう。 夫 Richard Dalloway と若い頃に求婚された旧友 Peter Walsh の間で揺れる Clarissa Dalloway をロマンチックに。 しかし、一番印象に残ったのは、第一次世界大戦のPTSDで苦しむ Septimus Warren Smith。 ほとんど唯一の舞台美術である大きな枠にヘルメットが置かれたり、それが静かに回収されたりする所など、象徴的にすら感じた。 我ながら意外だが、3部作中、最もナラティヴな I now, I then が楽しめた。

第2作は小説 Orlando (1928) に着想した Becomings。 一転して、いかにもコンテンポラリーなノンナラティヴな演出。 うねうねした、しかしキレのいい動きを堪能することができた。 原作は16世紀エリザベス1世の時代から現在 (20世紀の戦間期) までの時間を旅する話だが、 金色の衣装や、スモークにレーザを使った演出は、SF的な未来の旅を思わせるものだった。

第3作は小説 The Waves (1931) に着想した Tuesday。 エンディングなどパ・ド・ドゥもあるが、大きく映されたモノクロの波の映像の前で群舞が印象的。 I now, I then が演技、 Becomings が身体能力で見せる演出としたら、 Tuesday は落ち着いたアンサンブルで見せる演出。 しかし、群舞といってもフィナーレに向けて派手に盛り上げるものではなく、時間が短めということもあってか、少々蛇足にも感じられた。

それにしても、第1作と第3作で主役を踊ったのは御年50歳という Alessandr Ferri。 さすがの演技力ということもあるが、 身体能力を見せつけるような踊りではないものの、あれだけよく身体が動くものだと感心しながら観ていた。

水曜に Большой балет: Светлый ручей [レビュー]、 金曜に Ballet de l'Opéra national de Paris: Ballets Russes [レビュー] そして土曜に Royal Ballet: Woolf Works と。 週後半にバレエのイベントシネマ上映3本を立て続けに観たわけですが、 やっぱり Woolf Works が最も楽しめたなあ、と。 コンテンポラリー作品の上映の機会も、そして来日公演の機会も、もっと増えて欲しいものです。

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1日の晩は大家さん宅の花見宴という話があったのですが、3月末の季節外れの寒さで桜の開花が進まず延期に。 結局、花見は無いものの、有志で母屋の中で宴会してましたが。 そんな宴会に顔を出しつつも、この週末も引越の準備をしていたのでした。 いいかげ、断捨離も飽きてきた……。

[3540] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Apr 2 22:18:53 2017

金曜の晩は日本橋へ。水曜に続いてイベントシネマでバレエを観てきました。

Palais Garnier, L'Opéra national de Paris, 2009-12-22.
Les Étoiles, les Premiers Danseurs et le Corps de Ballet de l’Opéra national de Paris.
Direction musicale: Vello Pähn; Orchestre de l’Opéra national de Paris.
Réalisation: François Roussillon
上映: TOHOシネマズ日本橋, 2017-03-31.
Le spectre de la rose
『薔薇の精』
Argument: Jean-Louis Vaudoyer, d’après le poème de Théophile Gauthier; Musique: L’Invitation à la Valse de Carl Maria von Weber
Chorégraphie: Mikhaïl Fokine, réglée par Pierre Lacotte; Décors et costumes: d’après Léon Bakst.
Danseurs étoiles: Mathias Heymann et Isabelle Ciaravola.
Création: 19 avril 1911, Opéra de Monte-Carlo.
Après-midi d’un faune
『牧神の午後』
Musique: Prélude à l’Après-midi d’un faune de Claude Debussy
Chorégraphie: Vaslav Nijinski, réglée par Ghislaine Thesmar. Décors et costumes: Léon Bakst.
Danseurs étoiles: Nicolas Le Riche, Emilie Cozette.
Création: 29 mai 1912, Théâtre du Châtelet.
Le Tricorne
『三角帽子』
Musique: Manuel de Falla; Livret: Gregorio Martinez, d’après la nouvelle « El sombrero de tres picos » de Pedro Antonio Alarçon.
Chorégraphie: Léonide Massine; Décors et costumes: Pablo Picasso.
Danseurs étoiles: José Martinez, Marie-Agnès Gillot, Fabrice Bourgeois.
Création: 22 juillet 1919, Alhambra Theatre, Londre.
Petrouchka
『ペトルーシュカ』
Musique: Igor Stravinsky; Livret: Igor Stravinsky et Alexandre Benois.
Chorégraphie: Mikhaïl Fokine; Décors et costumes: d’après Alexandre Benois.
Danseurs: Claire-Marie Osta (la poupée aux joues rouges), Yann Bridard (le maure), Benjamin Pech (Petrouchka), et al.
Création: 13 juin 1911, Théâtre du Châtelet.

Diaghilev の Ballets Russes 設立から100年を記念して2009年に行われた Opéra national de Paris による Ballets Russes の復元上演の録画が、 Diaghilev 生誕145年を記念してその誕生日にイベントシネマ上映されました。 当時 NHK で放送されたようですが、それはノーチェックだったので、これを機会に観てきました。 Ballets Russes は、書籍や展覧会で写真や関連資料を見る機会はそれなりにありましたが [レビュー]、 復元上演ということでダンスとしてどのような動きで舞台としてどう演出されていたのか、という点で興味深く見ることができました。

しかし、Après-midi d’un faune など、写真などで散々観ているし、 オマージュ的な作品 [レビュー] も観ているので、 やはりそうかと確認しているよう。 Stravinsky の Petrouchka を最も楽しみにしていたのですが、 謝肉祭の見世物を題材とした劇中サーカス/大道芸っぽいところは好きですが、 衣装も演出もモダニズムを強く感じさせるものでは無かったのだなあ、と。 Le spectre de la rose も、 当時薔薇の精を演じた Nijinsky の特異さを思わせるところはありましたが、かなりクラシック。 展覧会で1913年頃まで衣装が古典主義だということに気付いていましたが、 これら1911年の作品の復元上演を観て、なるほどそういうことかと。

そんなわけで、結局、観ていて最も楽しめたのは、Picasso が美術と衣装を手がけた Le Tricorne。 シャープな立体主義的な抽象的なデザインという程では無かったものの、 むしろシュルレアリズムを思わせる背景の風景の絵や衣装の色使いのセンスがモダン。 舞台がアンダルシアでフラメンコの踊りをベースとした振付で、 好色な代官を懲らしめる粉屋とその女房の話もコメディタッチ。 あまり Ballets Russes らしくはないようにも思いましたが、楽んで見ることができました。

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[3539] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Fri Mar 31 0:22:46 2017

水曜の晩は仕事が終わった後、新宿へ急行。イベントシネマでバレエを観てきました。

Bolshoi Ballet: The Bright Stream
『明るい小川』
Большой театр, 29 апреля 2012 г.
Музыка Дмитрий Шостакович [Music by Dmitri Shostakovich]
Либретто Адриана Пиотровского и Федора Лопухова [Libretto by Adrian Piotrovsky and Fyodor Lopukhov]
Хореограф-постановщик: Алексей Ратманский [Choreographer: Alexei Ratmansky], Художник-постановщик: Борис Мессерер [Designer: Boris Messerer]
Премьера состоялась 18 апреля 2003 г. [Premier: 18 April 2003]
Действующие лица и исполнители (Cast): Светлана Лунькина (Зина), Михаил Лобухин (Петр), Мария Александрова (Классическая танцовщица), Руслан Скворцов (Классический танцовщик), Денис Савин (Аккордеонист), Алексей Лопаревич (Пожилой Дачник), и другие
Дирижер: Павел Сорокин [Conductor: Pavel Sorokin].
上映: TOHOシネマズ新宿, 2017-03-29.

Большой балет в кино [Bolshoi Ballet in cinema] Season 2016/17 で Шостакович 作曲のソヴィエト・バレエ3作の最後の作品を観てきました。 1935年にサンクトペテルブルグの Малый оперный театр (現 Михайловский театр) で初演されるも、 1936年に Правда 紙にて批判され上演中止となり、その翌年、脚本の Адриан Пиотровский は НКВД (内務人民委員部) に逮捕、処刑されます。 そんな大粛清の時代に制作され長らくお蔵入りしていた作品を、2003年にモスクワの Большой театр が復元上演したものです。 しかし、そんな曰くよりも、コルホーズを舞台としたバレエという取り合わせに興味を引かれました。 こんな作品、来日公演のレパートリーに選ばれることは無いでしょうし、こういう機会でもないと観れないだろうと。

ロシア南部のクバーニ (Кубань) 地方のコルホーズ「明るい小川」が舞台。 そこにモスクワからバレエ団が訪れることで生じたドタバタをコミカルに描いた作品です。 コルホーズで暮らす Зина [Zina] とバレエ団のバレリーナが、偶然ながら、バレエ学校時代の旧友。 Зина の夫 Петр [Petr] がそんなバレリーナと浮気しようとして、Зина とバレリーナに懲らしめられるというのが、メインの物語です。

舞台が1930s前半のコルホーズということで、衣装や美術が少々 Russian Avant-Garde 風な所も残した戦間期モダンぽさがあるだけで、 演出やダンス技法はクラシカルな物語バレエでした。音楽も不協和音使いなど前衛色は抑えたもの。 風刺というより皮肉の効いたコメディで、特に、Петр を懲らしめる第2幕はかなりのドタバタ。 Петр や引っ掛けるために、バレリーナとバレエダンサーが衣装や役割を入れ替えて踊ったり。 そんなところは、クラシカルな物語バレエのパロティといえるかもしれません。 そして、そんな所を楽しみました。

主役の Зина と Петр より、バレリーナとバレリーナの方が面白くて魅力的。特に、後半の男装で踊るバレリーナ。 あと、群舞ででてくる、コルホーズの女性たちの、細かい花柄ワンピースとヘッドスカーフというモダンな姿が、とても気に入りました。

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18時過ぎに仕事がひと段落したので、帰り支度しながらスマートフォンでチケットを取っていたら、一仕事舞い込んできたという。 やはりダメか……、と諦めかけましたが、なんとかギリギリ間に合わせることができたのでした。 近い新宿で、開演も19時半と遅めで、助かった……。 年度末の山を越えて比較的余裕はあるのですが、それでも平日晩は厳しいなあ、と。

[3538] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Wed Mar 29 0:56:06 2017

木曜の晩は仕事が終わった後、九段へ急行。開演時間には全く間に合いませんでしたが、このコンサートを聴いてきました。

Enzo Favata
イタリア文化会館 東京 [Istituto Italiano di Cultura, Tokyo]
2017/03/23, 18:30-20:00.
Enzo Favata (duduk, concertina, benas, bass clarinet, soprano saxophone, electronics).

テノーレ節 (Cantu a tenore) との共演など folk 寄りの jazz/improv の文脈で活動するサルディーニャ出身の multi reeds 奏者 Enzo Favata のソロでの来日コンサート。 ほとんど効果音のような電子音を伴奏に、リバーブ深めの音でルーパーで音を重ねつつ、様々な楽器を持ち替えて演奏。 開演には間に合わず、会場に着いたのは19時過ぎだったが、 concertina から、benas (launeddas に似た音色の2管の管楽器)、、bass clarinet、soprano saxophoneと演奏し、 アンコールでは Sun Ra の曲を bass clarinet で取り上げた。

サルディーニャの伝統的な楽器である benas を演奏に間に合って、聴くことができて良かった。 倍音成分の多いつん裂くような響きで、それもサーキュラー・ブリージングも使って吹き続けていたのは聴き応えあった。 bass clarinet や saxophone を使った曲でも、jazz のイディオムは強くなく、folk 的というほど泥臭くもなく、 空間に音を配置するようにパーカッシブに鳴る電子音や深いリバーブもあって、明るい地中海の風景を想起させるというより、幻想的にすら感じられる演奏が楽しめた。

知名度からしてソロでも来日ライブが観れただけでもありがたいと思う。 Riccardo Tesi が参加した Islà (Robi Droli / New Tonw, 1nt 6737 2, 1995, CD)、 Tesi に代わり Dino Saluzzi が参加した Ajò (Felmay, fy 7001 2, 1997, CD) や、 accordion が Daniele di Bonaventura [レビュー] となり launeddas 奏者の Luigi Lai やテノーレ節も参加したサルディーニャ色濃い Voyage En Sardaigne (Felmay, fy 7013, 1997, CD) など、1990年代の Jana Project での一連の作品が Favata を知ったきっかけだっただけに、 electronics を使ってのソロではなく、 accordion を含むバンド編成や、テノーレ節との共演でのライブを聴きたかった。 ソロでも良かっただけに、その点が物足りなく感じたライブだった。

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年度末の繁忙期の山も越えて (この時点でじたばたしても年度末に間に合わないので)、 慌ただしいもののひょっとして18時半開演に間に合うように職場を出れるかも、なんて淡い期待を抱いてました。 実際は、会議が終わったのが18時過ぎ。 しかし、この機会を逃したら Favata のライブなど二度と観られないだろう、と、駆け付けたのでした。 駆け付けた甲斐はありました。 しかし、平日晩の予定は読めないなあ、と、つくづく。

数年前から話はあったのですが、この4月に職場が移転することとなりました。 今住んでいる所は大変気に入っているのですが、通勤が大変なので、自分も転居することにしました。 先日、転居先が決まり、先週末はひたすら引越の準備をしていました。 今度は職場と自宅のダブル引越でまだまだ多忙な日々が続きそうです。

[3537] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Mar 26 22:46:33 2017

先週末の話ですが、土曜に続いて日曜も埼玉へ。北浦和でこの展覧会を観てきました。

Posters of A. M. Cassandre: A Graphic Revolution
埼玉県立近代美術館
2017/02/11-2017/03/26 (月休;3/20開), 10:00-17:30.

戦間期 Art Deco のグラフィックデザインで知られる ロシア・ハリコフ (現ウクライナ・ハルキウ) 出身のフランス人デザイナー A. M. Cassandre のポスター展。 展示の元となったのは、やはり戦間期 Russian Avant-Garde のポスターコレクション [レビュー] でも有名な故・松本 瑠樹 氏のコレクション。 1920年代から1930年代前半までの典型的な Art Deco のデザインだけでなく、戦後の仕事までカバーした回顧展だ。 1991年に東京都庭園美術館で松本 瑠樹 コレクションの Cassandre 展が開催されているが、当時はノーチェック。 戦間期のモダンデザインの展覧会で Cassandre のポスターを度々目にする機会があったが、これだけまとめて観たのは初めて。

いわゆる Art Deco の典型的作風のデザイナーで、それも長距離鉄道や豪華客船など近代的な交通機関のポスターが特に有名。 今回、まとめて見て、遠近短縮法と似た消失点を設定した構図や、客船や機関車の一部をクローズアップで捉えて強さを強調する画面作りなど、 新即物主義 (Neue Sachlichkeit) の写真との共通点に気付かされた。 Grand-Sport のポスターは Weimar 時代の Bauhaus のロゴの顔にスポーツキャップを被せたようだし、 Casino のサインボード (1931) の形も色使いも Alexandre Rodchenko のおしゃぶりの広告 (1923) と似ている。 エピゴーネンともいえるかもしれないが、当時の Avant-Garde を消化して同時代的な広告デザインを展開しているとも言える。 そういう点でも戦間期モダンの雰囲気を満喫できた。

Le Corbier は Cassandre の Au Bucheron のポスター (1923) を「まやかしのキュビズム」と批判したとのこと。 その批判ももっともで、Cassandre のような Art Deco のデザインは、戦間期 Avant-Garde の仮想敵のブルジョワの趣味とも言える。 自分も1990年代頃までは、戦間期の Art Deco と Avant-Garde を正反対なものとして見ていた。 21世紀に入り Art Deco 展 [レビュー] を観た頃には、 戦間期の文化として、むしろ共通点を見るようになった。 そんなことを思い出した展覧会でもあった。

1930年代後半以降の仕事の展示もあったが、Art Deco 期と比べると蛇足の感は否めなかった。 Art Deco の流行も終わった1930年代後半以降、Cassandre の作風も Surrealism 的なものに変化していた。 同時代のロシアでは Avant-Garde から Socialist realism へと移った時代。 Cassandre が Art Deco から Surrealism へ移ったというのもフランスらしく感じられた。

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展覧会を観た後は、武蔵野線経由で柏へ移動。 Nardis で Sinikka Langeland の solo ライブを観てきました。 新作 The Magical Forest からの曲を中心に。 small kanele ではなく concert kantele でしたが、バンド [レビュー] と比べてフォーキーに感じられました。 しかし、柏は (心理的にも) 遠かった……。無理してハシゴするもんではなかったかな、と (多くは語らない)。

[3536] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Tue Mar 21 22:24:55 2017

土曜は午後に与野本町へ。この舞台を観てきました。

ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団 『カーネーション』
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
2017/03/18, 15:00-16:50.
Ein Stück von Pina Bausch
Inszenierung und Choreographie: Pina Bausch; Bühne: Peter Pabst.
Musik: Franz Schubert, George Gershwin, Franz Lehár, Louis Armstrong, Sophie Tucker, Quincy Jones, Richard Tauber and others.
Probenleitung: Dominique Mercy, Julie Shanahan.
Regina Advento, Pablo Aran Gimeno, Emma Barrowman, Andrey Berezin, Michael Carter, Çağdaş Ermis, Jonathan Fredrickson, Scott Jennings, Blanca Noguerol Ramírez, Breanna O´Mara, Franko Schmidt, Julie Shanahan, Julie Anne Stanzak, Julian Stierle, Michael Strecker, Fernando Suels Mendoza, Tsai-Wei Tien, Aida Vainieri, Paul White, Ophelia Young, Tsai-Chin Yu
Uraufführung: 1. Fassung am 30. Dezember 1982, Opernhaus Wuppertal; 2. Fassung am 16. Mai 1983, Zelt im Englischen Garten, München.

Pina Bausch 没後、Pina Bausch の作品を動態保存するカンパニーとして活動を続ける Tanztheater Wuppertal。 前回2014年の Kontakthof [レビュー] に続いて、 今回も1989年の来日公演で上演した Nelken の再演。 もちろん1989年の来日公演は観ておらず、今回、初めて観た。 スーツ姿とイブニングドレスの男女が、ダンサーの私的な語りを交えつつ、時に遊び (1, 2, 3, Soleil とか) を舞台の上で繰り広げ、時に一列に並んで歩み進めるように踊る、 というスタイルは、 KontakthofNelken の作られた1980年前後には既に完成していたのだなあ、と。 当時は斬新だったのだろうけれど、今から観ると Pina Bausch 定番の演出も目に付く。

それでも、Kontakthof よりも遥かに楽しめたのは、愛に関するテーマというより、舞台美術の良かったから。 カーネーション (生花ではなくプラスチックの造花ですが) を整然とずらと植えた花畑のような舞台は、それだけで見応えあった。 単に見た目だけでなく、花が植わっていることで、ダンサーの動きが変わってくる。 最初のうちはできるだけ倒さないようにと、抜足差足でゆっくり動くのだ。 Jacques Tati の映画 Trafic の冒頭の場面で ワイヤを避けるために所々で抜足差足する動きを面白く観せていたのを連想させられた。 同様なもので、カンパニー名や作品名は失念したが舞台上膝下くらいの高さに格子を組んで抜足差足の動きをさせる作品というのを動画だかで観た記憶がある。 しかし、ダンサーにユーモラスな動きを強いる仕掛けとして、抽象的ものではなく、花畑を使うというのは洒落ていると、つくづく感心。 さらに、どんどん花は倒れていき、ダンサーも次第に花を倒さないような動きはしなくなっていく、そんな変化も面白かった。 そして、開演前の整然とした花畑と、終演後のぐちゃぐちゃに踏み荒らされた花畑の、強烈な対比。

海外のダンスカンパニーは音楽に生演奏を使うことが多いが、 Pina Bausch はむしろ録音で様々なミュージシャンの音源を使うという印象が強い。 今回、トレースノイズの入った Gershwin の “The Man I Love” のSP音源をテーマ的に多用しているのを聴いていて、 むしろ、レコードをかけながら踊るという感覚を意識しているようにも感じられた。

[このレビューのパーマリンク]

[3535] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sat Mar 18 21:58:42 2017

水曜は仕事帰りに渋谷へ。このライブを観てきました。

Selen Gülün & Marcello Allulli - KAPI feat. 中山 晃子
サラヴァ東京 (渋谷)
2017/03/15, 20:00-21:30.
Selen Gülün (piano, electric piano, synthesizer, voice), Marcello Allulli (tenor saxophone), 中山 晃子 [Akiko Nakayama] (alive painting).

KAPI (トルコ語で Kapi は「扉」の意) は、イタリアの electronica のミュージシャン Emanuele de Raymondi、 イタリアの jazz/improv の文脈で活動する saxophone 奏者 Allulli、 そして、トルコの piano 奏者 Gülün によって2013年に始まったプロジェクト。 Gülün は2000年代後半トルコ・イスタンブールの jazz/improv の文脈 [レビュー] で度々耳にしていたので、 ライブに足を運んでみた。

Gülün は piano だけでなく synthesizer や sampler も操り、electronica 色濃い jazz/improv. のライブだった。 ライブでの音弄りがメインという程ではなく、むしろ録音のサンプリングがメインのようにも聴こえた。 ノルウェーの多くのミュージシャンのように、音のテクスチャにとことんこだわった演奏をするわけではない。 Allulli の吹く弱い音の saxophone も、あくまで弱音であって、音響のテクスチャという扱いにはほとんど至っていなかった。 piano と saxophone という楽器の組み合わせもあると思うが、強い音での演奏となると、electronica 以前に戻るよう。

少々素朴と感じつつも楽しめた理由には、こういうタイプの音楽が好みということもあるが、 ゲストの 中山 晃子 “alive painting” もあった。 マーブリングの技法をベースに、神に定着させるのではなく、ビデオカメラで撮影してライブで投影するというもの。 カラフルで抽象な形態がどんどん変化してくところが、音楽に合っていたせいか、飽きなかった。 saxophone のブロウに合わせて水 (もしくは溶剤) をどっと流し込んで色を流したりするような所は、わかりやすぎる気もするが、 生演奏的ならではの展開として楽しんだ。

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沖縄での仕事の後始末も終え、年度末仕事は峠を越えて、少しは余裕が出てきたかな、と……。

[3534] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Wed Mar 15 0:32:43 2017

1週間以上前の話になりますが、5日の日曜の午後は初台へ。この展覧会を観てきました。

Poetics / Structures of Light and Motion
NTTインターコミュニケーションセンター
2017/01/14-2017/3/20 (月休;月祝開,翌火休;2/12休), 11:00-18:00 (金土11:00-20:00).

真鍋 大度 と 石橋 索 の主宰する株式会社 Rhizomatiks といえば、 Perfume のライブなどでのテクノロジーを駆使した映像演出を手がける会社。 メディア・アートというよりイベント類でのクライアント・ワークとしての映像演出などのプロジェクトが多いが、 Rhizomatiks Research はメディア・アート的なプロジェクトを扱う研究開発部門として2016年に設立。 もう一方の ART+COM も、この展覧会で知ったのだけれども、Rhizomatiks とも類似して、 テクノロジーやメディアを駆使したインスタレーションや空間演出を手がけている会社だ。

2社を紹介する資料映像コーナもあったけれども、この展覧会はそんな2社の仕事の記録を展示したものではなく、 メディア・アート的なインスタレーション作品を1作品ずつ展示していた。 どちらの作品も、RGBと白色という単純な色と、単純な形状を使い、 動きと反射によって複雑さと広がりを作り出すような作品だった。

Rhizomatiks Research: distortion (2017) は、照明を落としたギャラリー空間で、 数10cm角で高さ1mほどの鏡面の正四角柱が回転しつつ前後するよう動かし、 そこに強コントラストのRGB光と白色光のパターンを投射するというもの。 投影している光の形状動きは単純な図形なのだが、四角柱がその動きを複雑にして、3D CG の万華鏡を見ているよう。 3D VRでもないのにVR酔いしそうになるほどだった。

もう一方の ART+COM: RGB|CMYK Kinetic (2015) は、 Sónar と Sorigué Foundation からの委嘱による作品。 2本の紐で吊るしたハーフミラーの円盤が5枚、紐を操作することで円盤を上下左右に動かしつつ、 RGB光と白色光を投影するインスタレーション。 面で光を当てると反射したRGB光と透過したCMYがパターンを作り出す。 ゆっくりした円盤の動きが、色のパターンのゆっくりした動きを作り出す。 そのゆっくりとした動きと色彩、そして、Ólafur Arnalds による post-classical な音楽も詩的にすら感じるインスタレーションだった。

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最近は、Socially Engaged Art の work in progress 的なインスタレーション・資料展示より、 実験的でもテクノロジーを駆使してきっちり仕上げてきたデザインや空間演出のようなクライアントワークの方が 自分には楽しめるような気がします。ふうむ。

もちろん、東京オペラシティ アートギャラリー で開催中だった展覧会 山本 耀司・朝倉 優佳 『画と機』 も観てきました。 Y's 〜 Yohji Yamamoto の服をよく着ていた頃もあり (今でもよく着ているものもある)、それなりに期待していたのですが。 そもそも今までの仕事の集大成という展示でもなく。期待したものとは異なる展覧会でした。ふむ。 もともと、初台へは翌週12日にでも行こうかと考えていたのですが、 12日も野暮用で潰れることになったので、『画と機』に間に合うよう、急遽5日に行くことにしたのでしたが。

先週は、後半は仕事で沖縄にいたのですが、コートが着たくなるような寒さ。 沖縄でこんなに寒かったのは初めてです。金曜土曜と冷たい雨……。 で、土曜に東京に戻って、日曜は野暮用で潰れたのでした。 というわけで、先週末の談話室向けのネタはありません。

[3533] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Mar 12 23:03:31 2017

先週末の話となりますが、4日土曜は夕方に外神田へ。この展覧会を観てきました。

『バンバンバンバンバンバンバンバンバンバン』
Satoru Tamura: Bang Bang Bang Bang Bang Bang Bang Bang Bang Bang
nap gallery (アーツ千代田3331 2F)
2017/02/10-03/11 (月火祝休), 12:00-18:30 (木12:00-21:00, 日予約のみ).

タムラサトルは1990年代半ばから活動する現代美術作家。 社会的な意味が取り去られた、機械的な動きの持つ迫力・面白さそのものに焦点を当てた立体作品が作風だ。 好きな作風ということもあり2000年代まではよく観ていたが、 最近はギャラリー巡りの頻度が落ちてしまい、個展を観るのは2011年 [レビュー] 以来久しぶり。

今回出展されていた新作『10回たたく#1』は、 案内状に「木の角棒で鉄板を10回たたくだけの装置」とあったので、 数センチ程度の「角棒」がくるっと回ってて「鉄板」をカンカンと叩くような装置を予想していた。 しかし、実際は、鋼材で作られた高さ1.5mくらいのの台の上に並んだ10cm角で長さ180cmはあろう「角材」が10本と、 壁に掛けられたおよそ1m×3m大の数ミリ厚の「鋼板」。 鋼板は壁にべったりではなく、鋼材で作られた枠で壁から浮かしてある。 電源が入ると、10本の角材がアクチュエータで順に水平に動ごき、鋼板を突いていく。 突く度に鳴る音は、タイトルの Bang「バン」では生易しく、「ガーン」と鳴り響く音だ。 角材と鋼板、アクチュエーターなどの組み合わせも素材むき出しの無骨さで、 その角材で鋼板を叩くというその迫力が、ミニマルに提示されている。 そんな無骨さと迫力が堪能できる作品だ。 角材10連装の作品は見た目も迫力あるが、そのコンパクトなバリエーションとして 1本の角材で10回続けて鋼板を叩く装置も2台展示されていた。

タムラサトルの作品は、迫力を追求するあまり、危険で迷惑になりがちだ。 この『10回叩く』も、角材と鋼板の間に指なぞ挟んだら大怪我だし、 動作さればギャラリーだけでなくギャラリーの入った建物全体に響き渡らんほどの大音響。 装置を動作させ続けるわけにいかず、来廊する人のリクエストで動作させていた。 この作品の美術館での動態展示も、 『小山マシーン』 (小山市立車屋美術館, 2010) [レビュー] のような個展であればなんとかできそうだが、 グループ展の場合は難しそうだ。

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Arts Chiyoda 3331 のメインギャラリーでは 『ソーシャリー・エンゲイジド・アート展 — 社会を動かすアートの新潮流』 (Socially Engaged Art: A New Wave of Art for Social Change, 3/5まで)。 Art Activism などとも言われますが、展示されていた年表を見ると、もう少し緩めの括り。 1990年代後半からはリアルタイムでそれなりに観ていますが、 2000年代以降の地域アートというか、「地域おこし」的なアートプロジェクトも多く混じっているように見えました。 しかし、こういう動きからすっかり自分の興味は外れてきてしまったなあと (多くは語らない)。

この前日、3日金曜は仕事で丸の内へ。仕事を終えた後、 Cotton Club の前を通りがかったので、出演者をチェックしたら、 Jakob Bro Trio with Thomas Morgan & Joey Baron。 これはかなり良さげだ、と、観ることにしました。 が、残念ながら、楽しめませんでした。頭に残った仕事のモヤモヤも吹き飛ぶような演奏を期待したのですが、……。 去年8月も、丸一日会議でカンヅメの後にこのハコで Wolfgang Muthspiel Trio with Brian Blade & Larry Grenadier 観て楽しめなかったしなー。 同じようなパターンになってしまいました。このハコはちょっと相性悪いのかなあ。 ま、仕事の後、頭の切り替えができないうちにライブを観るのは良くないなと、反省。

年度末で仕事もまだまだ忙しく、仕事絡みでもあるのですがプライベートの方でも少々バタバタでしていて、 談話室の更新の時間がなかなか取れません。うーむ。

[3532] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Tue Mar 7 0:56:49 2017

年度末といはいえ、忙中閑有り。というわけで、先週火曜、仕事帰りになんとか三軒茶屋へ。この舞台を観てきました。

『ファーザー』
世田谷パブリックシアター
2017/02/28. 19:30-20:50.
Direction: Franck Chartier; Directorial assistance and dramaturgy: Gabriela Carrizo.
Creation and performance: Leo De Beul, Tamara Gvozdenovic, Hun-Mok Jung, Maria Carolina Vieira, Simon Versnel, Brandon Lagaert & Yi-Chun Liu.
Sound composition and arrangements: Raphaëlle Latini, Ismaël Colombani, Eurudike De Beul, Renaud Crols.
Vader is the first part of the trilogy Father-Mother-Children.
Premier: 10 May 2014, Theater im Pfalzbau.

ベルギーのカンパニー Peeping Tom の4年ぶりの来日公演。 前回2013年の For Rent を見逃しているので、 2010年の 32 rue Vandenbranden [レビュー] 以来、観るのは久しぶり。 ノンナラティヴで抽象的なダンスではなく、明確な物語は無いもののナラティヴ。 歌やセリフ (ダンサーが喋っているとは限らないが) もあるため演劇的ですらあるフィジカル・シアター作品だ。 前回観たときに David Lynch の映画を連想させられたのだが、ますます Lynch 色濃い作品だった。

『父–母–子』三部作の第1作目で、老いて高齢者養護施設にいる父親のイメージを作品としていた。 パンフレットによると老後の「後悔」をテーマとしていたようだが、それはさほど感じられず。 前に観た 32 rue Vandenbranden と同様、 日常にある不安や情緒不安定が臨界を越えて、日常が壊れていく様を描くよう。 そんな壊れゆく日常の描きかたが Lynch 的に感じられるだけでなく、 特にこの作品では、赤いカーペット、奥に背景がカーテンの舞台、 そして、そこで演奏さえるノスタルジックでちょっと退廃的なバンド、 そして日常を揺さぶるポルターガイスト、といった道具立てもまさに Lynch の世界だった。

単に舞台装置をガタガタさせたり、地響きのような音を使うだけでなく、 ダンサーが激しく身を震わせたり、長髪を振り回し続けるような動きも使っていた。 Maria Carolina Vieira などは、コントーションをしながら床をのたうち転げ回るよう。 バレエの超絶技法とは違い、グロテスクに歪んでいるが、身体能力の高さを感じさせる動きだ。 だた、そのような激しい動きはコントロール外でデタラメに動いているのではなく、 ちゃんと動きをコントロールしている。

ポストパフォーマンス・トークでも、Maria Carolina Vieira は食事の時にナイフで怪我するときもあるのに、ダンスでは怪我することは無いという話が出た。 Tamara Gvozdenovic も正確でクリアな演技を心がけてると言っており、 Brandon Lagaert も身体の極限に挑戦するということについて、体操選手と似ている、というようなことを言っていた。 まるで体操選手が新たな技を覚えるように身体のコントロールによっって限界を超えてるようで、 そんなストパフォーマンス・トークでのダンサーの話も興味深かった。

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金曜3月3日の晩も仕事を終えて20時半頃に丸の内の Cotton Club を通りかがって、ふと出演者を見たら Jakob Bro / Thomas Morgan / Joey Baron。 そんなわけで、ふらっとライブを観てきました。 が、さすがに頭が切り変わらず、仕事のモヤモヤが頭に残ったままで、楽しめませんでした。うーむ。 というか、もやもやを吹き飛ばしてくれるような演奏を期待してたんだけどなあ。Joey Baron とか、もっとできるだおるに。 このハコはイマイチなライブに当たった記憶が多く、どうも相性が悪いかもしれません。うーむ。

[3531] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Mar 5 23:16:05 2017

先週末の話の続き。日曜は午後に永福町へ。このコンサートを聴いてきました。

向井 知子 / 伊藤 弘之
『音楽の展覧会 — 森をめぐって』
Exhibiting Music: The Resonance of Forests
sonorium (永福町)
2017/02/26, 15:00-16:30.
1)迷宮の森 2)In the Dim Light 3)揺らぐ風を織る 4)響きの森へ
向井 知子 [Tomoko Mukai] (映像空間演出), 伊藤 弘之 [Hiroyuki Itoh] (作曲);
上野 耕平 (soprano saxophone) on 1 [recorded]; 西川 竜太 (conductior), 多久 潤一朗 (flute), 鈴木 生子 (clarinet), 佐藤 まどか (violin), 多井 智紀 (cello), 及川 夕美 (piano) on 2; 西川 竜太 (conductior), ヴォクスマーナ (合唱) on 3 [recorded]; 及川 夕美 (piano) on 4.

『映像と音楽』というシリーズの中の現代音楽のコンサート。 といっても、単純にBGVをバックにミュージシャンが演奏するようなものではない。 映像空間演出と謳っているように、スタンダートサイズやHDのビデオをフラットな壁に投影するのではなく、 上部だけとはいえキューブではなく一面が斜めになった壁三面に映像を投影していた。 また、音楽との組み合わせも、映像と生演奏の組み合わせだけでなく、 1、3曲目は録音源を用い、3曲目も映像無しだった。

「揺れるイメージ」と「フラジリティ」をテーマとしている作曲家ということで、 不安定にも感じる音程、テンポの曲だったが、ソロよりも小編成のアンサンブルや合唱の方が良かった。 特に『In the Dim Light』は、複数の楽器の織りなす音が協和していないけれども、 映像空間演出の助けもあってか自然な響き合いのように感じられたのが面白かった。 また、録音源を使った2回があったことで、演奏者の存在の大きさを実感。 演奏者の息遣い指使いを間近で感じられるような席では無かったが、 録音源では注意の向け先を失ってしまった感があった一方、 それでも生演奏の方が音への集中力がぐっと上がるように感じられた。

投影された映像は、具象的な森のイメージをテクスチャのように織り重ねて半ば抽象化したもの。 INAXギャラリー Gallery 2 でよく展示されていた具象のノイズ成分を使って抽象化したかのような絵画 [関連レビュー 1, 2] の映像インスタレーション版のよう。 音楽と付かず離れず邪魔しない映像だったが、色のアンビエンスのよう。 もう少し映像が主張する時があっても良かったかな、とも思った。

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[3530] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Mar 5 21:50:25 2017

先週末の話になりますが、昼に恵比寿で展覧会を観た後は、渋谷へ。このコンサートを聴いてきました。

Jeff Mills / 東京フィルハーモニー交響楽団 / Andrea Battistoni
オーチャードホール
2017/02/25, 18:00-20:30.
1)John Adams: Short Ride in a Fast Machine 2)Claude Debussy: Clair de lune (orchestra version) 3)György Ligeti: Poème Symphonique for 100 metronomes 4)黛 敏郎 [Toshiro Mayuzumi]: BUGAKU - II. moderato 5)Jeff Mills: The Bells 6)Jeff Mills: Planets
Jeff Mills (electronics) on The Bells, The Planets; 東京フィルハーモニー交響楽団 [Tokyo Philharmonic Orchestra], Andrea Battistoni (conductor); guest: U-zhaah (tabla) on The Bells

1980年代にデトロイトの techno シーンで活動を始めたDJ/producer の Jeff Mills は 2000年代半ばから主にヨーロッパでオーケストラとの共演、作曲を始めています。 そんな Jeff Mills がオーケストラと共演したコンサートを観てきました。 日本では去年に続いて2度目ですが、去年は見逃しています。

Jeff Mills の曲以外の演奏した曲も20世紀の曲のみでしたが、 現代音楽のコンサート (例えば『コンポージアム』[レビュー]) とはかなり異なるもの。 Jeff Mills の曲にしても、minimal music などの影響も受けた映画音楽のコンサートのよう。 そんな中では、100台のメトロノームを使う Poème Symphonique for 100 metronomes にしても、 曲の並びから必然を感じるというより、奇を衒った一発芸のように聞こえてしまったのは残念。 このコンサートのメインともいえる太陽系をモチーフにした約1時間の Planets は、 太陽側から順に惑星をモチーフとしたフレーズが浮かび上がるような展開でしたが、 妥協して最後にクライマックス様の展開を持ってこず、アンチクライマックスで終えていました。

classical music に馴染みのない観客向けのコンサートという位置付けだったのか、1曲ごとにMCが入りました。 しかし、解説というほどの内容はなく、ほとんど「凄いですよ」「感動しましたね」のような内容に終始するもの。 かなり興醒めしてしまいました。 2000年代に入ると techno や post-rock の文脈のミュージシャンと classic の文脈とクロスオーバーが進み、 “post-classical”と呼ばれるジャンルを形成しつつあります。 Jeff Mills とオーケストラの共演もその文脈の上にあるもので、それを生で聴くいい機会と思って、 足を運んだということもあります。 しかし、この企画は、post-classical の一つの形を紹介するようなものではなく、 classical への客寄せとして Jeff Mills を使ってるよう。 そういう客層、ニーズもあるのかもしれないですが、自分の興味とはすれ違ってしまいました。

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[3529] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Feb 26 21:57:22 2017

土曜は午後に恵比寿へ。このアニュアルの展覧会を観てきました。

Yebisu International Festival Art & Alternative Visions 2017
東京都写真美術館, 恵比寿ガーデンプレイス センター広場, 日仏会館 ほか
2017/02/10-02/26, 10:00-20:00 (2/26 10:00-18:00)

東京都写真美術館改装休館中はガーデンプレイス界隈で開催していたアニュアルの展覧会が、 久しぶりに東京都写真美術館へ帰ってきた。 ザ・ガーデンホールなどで展示していた時は [関連レビュー]、 雑然とした仮設の展示スペースということもあり、 進行中のプロジェクトの記録の展示のようなものも多く、映像作品意外の印象が強かった。 しかし、整った美術館が展示の中心に戻り、映像作品がメインのアニュアルの大規模企画展に戻った。 特に、今回は、コンテンポラリーダンス等のパフォーミングアーツを題材に採った、 単にダンスのドキュメンタリーに止まらない作品が多く、それが印象に残った。 以下では、印象に残った作家、作品について。

最も印象に残ったのは、オーストラリアを拠点に活動する Gabriella Mangano & Silvana Mangano。 コンセプチャルなコンテンポラリーダンス的な動きを黒い衣装、白い背景、固定カメラのモノクロ動画でミニマルかつスタイリッシュに動画化していた。 2Fに展示されていた If...so...then (2007) は、 向かいの壁に手が届くほどの狭いスペースに2人の女性が入り、 向かいの壁にリズミカルに線を描いていく様子を捉えたもの。 淡々とした表情で手や顔がパズルの様にトリッキーに組み合わされて動く様は、ずっと観ていても飽きないものがあった。 2Fから3Fへの吹き抜けに大きく投影されていた There is no there (2015) は ロシア革命直後1920sのアジプロ劇団 Синяя блуза [Blue blouse] に着想したもので、 当時の Blue blouse スチル写真を思わせるボースを淡々と演じるというもの。 Blue blouse 的な服装をしておらず、そうと言われないとほとんど気付かないものになっている所が、興味深かった。 2月10〜12日にはライブ・パフォーマンスもあったようで、見逃し痛恨。

やはり2Fに展示されていた After Ghostcatching (2010) は、 振付家/ダンサーの Bill T. Jones を振付た動きをモーションキャプチャした上で OpenEndedGroup 3D動画化した Ghostcatching (1999) を、 ソフトウェアのアップデートも含めて再3D動画化したもの。 映像としても肉体を失いスケルトン化した様はまさに Ghost だけれども、 カメラワークでは実現しがたい視点の動きも面白かった。

B1階に展示されていた Goldsmiths, University of London を拠点に活動するグループ Forensic Architecture の展示は美術作品の展示ではなく、彼らの建築的、メディア的な調査手法のデモンストレーション。 2014年のガザ侵攻や現在進行するシリア内戦を対象に、 インターネットのソーシャルメディアに上がってくる写真や動画に加えて衛星写真から 時間経過や空間配置を計算して、どのような戦闘が行われたのかを詳細に分析していくというもの。 手法としてはさほど奇抜ではなく、おそらく軍や情報機関も同程度の分析をしているとは思うが、 多くの情報を丁寧に分析して混乱して実態が掴みづらい戦場の状況を浮かび上がらせていく様は興味深かった。 ソーシャルメディアの動画や写真は偽造等が無いことを前提としていたが、 今後は alt fact / fake news の判別も課題となるのだろうな、と。

このように印象に残った展示は映像作品やその扱いに関するもので、久々に映像祭らしさを感じた展覧会だった。

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[3528] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Tue Feb 21 22:47:20 2017

2週続けて週末 (って、火曜にズレ込んでしまいましたが) のCD/DLレビュー。

Yacine Boularès, Vincent Segal, Nasheet Waits
Abu Sadiya
(Accords Croisés, AC167, 2017, CD)
1)Dar Shems 2)Disappearance 3)Bahriyya 4)Interlude I 5)Takhmira 6)Mirage 7)Demian 8)Qmar 9)Nuba 10)Resillience 11)Interlude II 12)Sadiya
Enregistré en Juin 2016. Composition: Yacine Boularès & Vincent Segal.
Yacine Boularès (saxophone soprano, clarinette basse), Vincent Segal (violoncelle, percussions), Nasheet Waits (batterie).

パリ育ちのチュニジア人で、現在はニューヨークを拠点に Afrobeat のグループ Ajoyo (Ropeadope レーベルからリリースがある) を率いて活動する saxophone 奏者 Yacine Boularès。 Bumcello [レビュー] や Ballaké Sissoko とのデュオ [レビュー] など jazz だけでなく world music の文脈での活動も目立つフランスの cello 奏者 Vincent Segal。 そして、Ralph Alessi, Avishai Cohen や Tony Malaby などのグループで活動する New York の jazz/improv の drums 奏者 Nasheet Waits。 この3人によるトリオが、フランスの world music のレーベル Accords Croisés よりアルバムをリリースしている。

アルバムのタイトルは boussadia として知られる子供を怖がらせるチュニジアの民話上のキャラクターから採られている。 そして、黒い顔をしたその griot 的なキャラクター Abu Sadiya を11世紀のチュニジアにいたサブサハラ西アフリカからの奴隷と関係付け、 Abu Sadiya はサブサハラ的な音楽や舞踊からなる儀式 stambali (モロッコの gnawa に似ている) をチュニジアへもたらし、西に jazz をもたらした、と。 このプロジェクトの音楽は、そんな物語に着想したものだという。

といっても、面子とレーベルから音が想像し難く、どちらかといえばアフリカ的な色のある world music のプロダクションだろうと予想していた。 しかし、むしろ jazz/improv の色の濃いアルバムだ。 Boularès は clarinet かのような柔らかく高い音色の sopraneo saxophone で、 時に落ち着いた音色 bass clarinet で飄々としたフレーズを吹く。 対する、Segal はベースラインというには軽いピチカートのフレーズや弓引きで、 Waits の控えめな手数の drums もリズムを刻むようなフレーズはほとんどない。 間合いの多い音空間の中で3者が淡々と落ち着いた調子で対話するかのよう。 楽器の組み合わせも同じ Michael Moore / Ernst Reijseger / Han Bennink の Clusone 3 [レビュー] を連想させるような演奏だ。 Clusone 3 ほどフリーキーになることは無いし、 Boularès のモーダルなフレーズがアラブ的というより John Coltrane 風に聴こえる時もあり、 Clusone 3 とは違った色も感じられる。そんな演奏が楽しめるアルバムだ。

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[3527] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Feb 20 22:33:48 2017

土曜の晩は、池袋から三軒茶屋へ移動。この舞台を観てきました。

ロシア国立サンクトペテルブルグ マールイ・ドラマ劇場 『たくらみと恋』
2017/02/18 18:00-20:15
Friedrich von Schiller: Kabale und Liebe (1784). перевод Н. Любимова
Сценическая композиция и постановка: Лев Додин; Художник: Александр Боровский.
Игорь Иванов (Леди Мильфорд, фаворитка герцога [Präsident von Walter, am Hof eines deutschen Fürsten]), Данила Козловский (Фердинанд, его сын, майор [Ferdinand von Walter, sein Sohn, Major]), Ксения Раппопорт (Леди Мильфорд, фаворитка герцога [Lady Milford, Mätresse des Fürsten], Игорь Черневич (Вурм, личный секретарь Президента [Wurm, Haussekretär des Präsidenten]), Сергей Курышев (Миллер, учитель музыки [Miller, Stadtmusikant]), Татьяна Шестакова (его жена [dessen Frau]), Елизавета Боярская (Луиза, его дочь [Luise, dessen Tochter]).
Премьера состоялась 28 сентября 2012 года.

Малый драматический театр (МДТ) は1944年にロシア・レニングラード (現サンクトペテルブルグ) に設立された劇場。 Лев Додин [Lev Dodin] はソ連時代の1960年代から演出家として活動し、1983年に МДТ の芸術監督に就任しています。 この劇団もこの演出家が演出した作品を観るのも初めてですが、ロシアのトップクラスと言われる激短を観る良い機会かと、足を運んでみました。 2011年の旅行でサンクトペテルブルグへ行っていて、この劇場の前も通りがかっている (夏だったのでオフでしたが) というのも、観ようという気になった理由の一つです。 上演作品は、ドイツ古典主義の (Beethoven: Sinfonie Nr. 9 の元となった詩の作者として知られる) Schiller の Kabale und Liebe ですが、 あらすじも知らないまま、予習もせずに臨みました。

音楽師の Miller 夫妻がロシア風で、現代的な恋愛を感じさせるように変えていたのではないかと思いますが、 舞台を現代に翻案するようなことはせず、マルチメディアを駆使するわけでもない、セリフで展開するストレートな演劇でした。 それでもスタイリッシュでオシャレに感じたのは、 シンブルな舞台美術に、時にリアルな俳優の演技だけでなく、 俳優の立ち位置や第三の登場人物の視線も使ってシンボリックに物語るような演出だからでしょうか。 しかし、主役 (Ferdinand と Luise) を演じた2人 (Данила Козловский と Елизавета Боярская) がモデルのような美男美女で、 ポースだけでも絵になったということもあったかもしれません。 といっても、一番気に入ったのは、2つの三角関係の一つをなす Lady Milford 役の女優 Ксения Раппопорт。 セリフだけでなく踊るような動きも使ったコメディリリーフを楽しみました。

18世紀の戯曲ですが、身分違いの恋に2つの三角関係の駆け引きが絡み、悲劇的な結末とストーリーは予想以上にメロドラチック。 ロシア語のセリフはほとんど理解できませんでしたが、演技演出が良かったのか、ほとんど気になりませんでした。 自分の好みとは若干方向性が違い、斬新な演出を楽しんだというほどではありませんでしたが、 比較的ストレートに古典を上演してもこれだけ楽しめる舞台になることもあるのかと気付かされた舞台でした。

三軒茶屋に着くと、街にロシア人らしき人がたくさんいてびっくり。 実際、劇場の客席のかなりの割合がロシア人らしき人たちで、東京にいるロシア人が皆集まってしていたのではないかと思うほど。 終演後の拍手の際には舞台前で俳優たちに花束を渡す姿も多く観られ、ロシアの劇場ではこうなんだろうなあ、と。 外国の劇団の東京での公演をそれなりに観ていますが、東京にいるその国の人が来ているのを見たのは初めてです。

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数年前は演劇といってもポストドラマ演劇とかフィジカルシアターとかそんなのばかり観てたわけですが、 去年末に観た Kolozsvári Állami Magyar Színház [Hungarian Theatre of Cluj] といい、 今回の Малый драматический театр [The Maly Drama Theater] といい、 ストレートなドラマ演劇もいいものだなあ、と。そんな気分の昨今だったりるのでした。

しかし、2時間超の舞台を2本ハシゴは、さすがに疲れます。 日曜は家事 & 休養してたので、この週末のネタはこれまで。

[3526] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Feb 19 23:50:40 2017

土曜は昼過ぎには池袋へ。まずは、この舞台を観てきました。

Madama Butterfly
東京芸術劇場 コンサートホール
2017/02/18, 14:00-16:40.
Director: 笈田 ヨシ [Yoshi Oida].
Music: Giacomo Puccini; Libretto: Luigi Illica & Giuseppe Giacosa; Based on the story Madame Butterfly (1898) by John Luther Long.
小川 里美 (soprano; Madama Butterfly), Lorenzo Decaro (tenor; Pinkerton), Peter Savidge (baritone; Sharpless), 鳥木 弥生 (mezzosoprano; Suzuki), Sarah Macdonald (Kate Pinkerton), etc
Conductor: Michael Balke; Orchestra: 読売日本交響楽団; Chorus: 東京音楽大学.
Production: 平成28年度全国共同制作プロジェクト.

1960年代末からヨーロッパを拠点に活動する俳優/演出家 笈田 ヨシ の日本での初オペラ演出作品。 日本制作とはいえ、ヨーロッパでオペラ演出も手がける演出家によるオペラという興味で足を運んでみました。 演目は1904年 Teatro alla Scala で初演された『蝶々夫人』 (Madama Butterfly)。

第2幕以降の蝶々夫人にモンペを着せるなど19世紀末から20世紀半ばに時代を移しているものの、 大胆に現代に置き換えたりすることなく、解釈や演出に意外さは感じられませんでした。 大掛かりな舞台装置や映像を駆使したり、象徴的なイメージだけのミニマルな表現にすることなく、物語が素直に伝わってくるように感じた演出でした。 Royal Opera House や Metropolitan Opera の event cinema で、 Robert Lepage とかの金のかかった奇抜な演出のばかり見過ぎだと、少々反省。 後方に半透明の幕を下げて舞台の奥行き感を殺してしまった上、その幕の後ろでの演技の存在感が薄かったのは惜しかったものの、 第1幕の Madama Butterfly と Pinkerton の初夜の場面は、薄暗い中の行灯の光の並びも美しく、赤と白を基調とした床もエロティックで、印象的。 第2幕末から第3幕頭の Pinkerton を待つ夜の場面も、明度の変化だけでなく、衝立から漏れる光も使った美しい演出でした。

『蝶々夫人』は、ジャポジズムやオリエンタリズムの文脈で言及されることの多い作品 [読書メモ] というだけでなく、 他の作品でネタとして使われることも多いので、今回の公演で、一度ちゃんと観ておこうというのもありました。 第2幕の始めの方で歌われる有名なアリア Un bel dì vedremo 『ある晴れた日に』 はなるほどこういう場面の歌なのか、と。 当時最新の照明技術 (電気照明) を使って夕暮れから曉までの光の変化を14分間全く歌、セリフ無しで見せたという 第2幕末から第3幕頭の場面も実感することができましたし、 観ていていろいろ勉強になりました。

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東京芸術劇場へはよく行っていますが、コンサートホールの方へ行くのは初めて。 客層もあってか、アウェー感が……。

[3525] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Feb 19 20:23:25 2017

金曜は仕事帰りに新宿へ。このライブを観てきました。

新宿 Pit Inn
2017/02/17, 20:00-21:30.
Terje Isungset (percussion, jew's harp, goat horn, whirly tube, voice, electronics).

氷を使った楽器による音楽 Ice Music で知られる Terje Isungset。。 彼のライブは、今まで2回観ているけれども [レビュー]、完全ソロで観るのは初めて。 最近では、氷の楽器だけでなはくガラスの楽器によるプロジェクトも初めており [レビュー]、 ガラスの楽器も演奏するかと期待したけれども、それはなし。 bass drum, floor tom, cymbal など通常の drumset の中央から右に加え、 石や木で自作した percussion を左に配したようなセットで、jew's harp や goat horn, whirly tube も使用。 アンコール1回を含めて約1時間半のライブだった。

左側の木や石の percussion の音はリバーブを深くかけたうえで大きく響かせ、 jew's harp、goat horn、whirl tube の音も手持ちの小型マイクで拾った上でリバーブをかけ エフェクト無しの細やかな音とは異なるテクスチャのような音響に。 この音が鳴っただけで、まるで北国の森林の奥から響いてくるかのよう。 それは相変わらずではあるのだけど、ソロだったこともあり、そんな響きの中に時折かすかにメロディやリズムが浮き上がってくるような音楽を楽しむことができた。

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[3524] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Thu Feb 16 0:16:23 2017

先週末の日曜は昼前には渋谷へ。 ユーロスベースで開催中の トーキョーノーザンライツフェスティバル 2017 で、 映画を2本観てきました。

Jag är nyfiken - en film i gult
『私は好奇心の強い女』 [I Am Curious (Yellow)]
1967 / Sandrews (Sverige) / B+W / 132min.
Regissör: Vilgot Sjöman.
Lena Nyman (Lena, teaterelev), Börje Ahlstedt (Börje, hennes pojkvän / kronprins Carl Gustaf), Vilgot Sjöman (Vilgot Sjöman, regissör), et al.

演劇学校の女学生 Lena の当時のフリーセックスの風潮を反映した奔放な性関係や左翼的だが素朴な政治活動を、 映画監督、そして、その相手役の男性 Börje との関係を通して描いた作品でした。 1967年の映画ということで、いかにも当時のカウンターカルチャーの時代を感じる主題と手法で、 映画を撮ること映画にしたメタムービーながら、映画内映画を撮影シーンで異化させつつも、 映画内映画の話なのか映画の話なのかそれともドキュメンタリーなのか混乱させるような作りといい、 字幕を使った異化といい、Jean-Luc Godard の映画との共通点を強く感じました。 フォロワーというほど時代が離れていないので、これも時代の雰囲気だったのでしょうか。

Hamlet
『女ハムレット』
1921 / Asta Films (Germany) / Colour (tinted) / silent / 121min.
Regie: Svend Gade & Heinz Schall.
Asta Nielsen (Prinz Hamlet), et al.

サイレント時代に活躍したデンマーク出身の女優 Asta Nielsen が、 ドイツへ拠点を移した後、自身の映画プロダクション Asta Films を設立して制作した映画です。 William Shakespeare の戯曲 Hamlet が原作ですが、 Edward P. Vining による Hamlet は男性のふりをした女性だという説に基づいて、 Asta Nielsen が Hamlet を演じています。

この頃の映画は、時代考証もいいかげんで、原作を大胆に改変することも少なくなかったので、 Hamlet を女性にするなどさぞぶっ飛んだ話になっているだろうと期待して観に行きました。 しかし、さほどでもなく、Hamlet が女性であること以外は原作に比較的忠実でした。 編集で物語る技法もまだまだ素朴とは思いますが、 先に観た Den sorte drøm (1911) [レビュー] に比べ洗練された作り。 修復が良いということもあるのか、Asta Nielsen の麗しい男装も楽しめました。

柳下 恵美 による伴奏で観たのは久しぶりでしょうか。 伴奏のこともサイレントであることも忘れさせてくれるような伴奏は相変わらず、さすがの安定感で良かったです。 やはり、サイレント映画はちゃんとした伴奏付きで観たいものです。

上映には Edition Filmmuseum 版の DVD が使われていたのですが、 エンドロール見ていてDVDの音楽が Michael Riessler によるものであることに気付きました。 これはこれで聴いてみたいものです。 ちなみに、サウンドトラックのCD/DLはイタリアのレーベル Cinik からリリースされています。

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この週末は少し余裕ができたので、 TPAM 2017 観に行ってもいいかなと思ったのっですが、 直前に思い立っても Apichatpong Weerasethakul は既に売切。 ということで、トーキョーノーザンライツフェスティバルへ切り替えたのでした。

[3523] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Wed Feb 15 1:16:22 2017

去年、ロシアのフィギュアスケート女子シングルの Мария Сотскова [Maria Sotskova] のプログラムにはまって以来 [関連発言]、 フィギュアスケートの競技会だけでなく、アイスショーの情報もチェックするようになっています。 そんな中で気付いたのは、ロシアで本格的な演出がされたアイスショーが上演されるようになってるということでした。 中でも目立つのはオリンピック銀メダリストの元アイスダンス選手 Илья Авербух [Ilya Averbukh] が設立したアイスショー制作カンパニー Продюсерская компания «Илья Авербух»。 有名スケーターをフィーチャーした競技会エキシビションの豪華版のようなショーから、 オペラやバレエの作品をアイスショー化したものまで、手がけています [カンパニー公式 YouTube チャンネル]。 このようなショーを制作する一方、振付家として Евгения Медведева [Evgenia Medvedeva] などのフィギュアスケート選手の競技会用プログラムも振付ています。

2016-17年末年始にはモスクワで、3つの『くるみ割り人形』のアイスショーが上演されていました。 1つは前述の Илья Авербух のカンパニーによる Щелкунчик и мышиный король で、 Аделина Сотникова [Adelina Sotnikova]、Алексей Ягудин [Alexei Yagudin] といったオリンピック金メダリストが出演していました。 2つ目はやはりオリンピック金メダリスト Евгений Плющенко [Evgeni Plushenko] のプロデュースによる Щелкунчик で、 オリンピック銀メダリスト Ирина Слуцкая [Irina Slutskaya] が出演し、年明けには サンクトペテルブルグでも上演していました。 3つ目は、モスクワ市がクリスマスシーズンのイベントとして企画した Большой театр [Bolshoi theater] 前の Площадь Революции [Revolution square] の特設会場 «Волшебный ледовый театр» [Magical Ice Theater] での アイスショー。 このモスクワ市のアイスショー劇場では Щелкунчик だけでなく、 Лебединое озеро 『白鳥の湖』や Белоснежка 『白雪姫』といった演目も上演されていました。

『くるみ割り人形』といえばクリスマスシーズンに上演されるお約束のバレエ作品ですが、 アイスショーの題材としてもこれだけ使われるほど人気が根付いているのかと、感慨深いものがありました。 『くるみ割り人形』といえば、5年前にこのパロディ作品 The Love Show: Nutcracker: Rated R を観ています [レビュー]。 大人になってから観た記憶はなかったのですが、子供の頃に何らか接する機会があったのか、そのあらすじや音楽の有名所はなぜか一通り知っています。 しかし、この手の古典を大人の目でちゃんと観ておいた方が、後々いろいろ楽しめそうと思っていました。 そんなところで、Royal Opera House Cinema Season 2016/17 のバレエ第2弾として The Nutcracker がかかったので、これもちょうど良い機会と、観てきました。

『くるみ割り人形』
Royal Opera House, 8 December 2016.
Choreography: Peter Wright after Lev Ivanov; Music: Pyotr Il'yich Tchaikovsky; Original scenario: Marius Petipa after E.T.A. Hoffmann's Nussknacker und Mausekönig
First performance of Peter Wright's production: 20 December 1984, Royal Opera House.
Gary Avis (Herr Drosselmeyer), Francesca Heyward (Clara) Alexander Campbell (Hans-Peter/The Nutcracker), etc
Boris Gruzin (conductor), Orchestra of the Royal Opera House.
上映: TOHOシネマズ日本橋, 2017-02-10.

Tchaikovsky の3大バレエの一つとして有名な2幕物のクラシック・バレエ (classic ballet) の作品。 今回上映されたのは、1984年に初演された Peter Wright 振付のプロダクションですが、 やはりクラシックな物語バレエの演出のもの。 現代的な解釈や抽象化がされていないので、古典を知るために観るという点では良かったでしょうか。 第1幕終わりの雪片 (Snowflakes) のワルツの冒頭にコーラス使ってることに気付かされたりもしました。 登場人物で最も印象に残ったのはマントを美しくたな引かせてソロを踊る姿がかっこいい Herr Drosselmeyer。 比べて Clara & Hans-Peter はアクが弱く存在感が薄かった。 踊りの場面は、ソロやパ・ド・ドゥよりも、 雪片のワルツでの群舞や、第1幕での贈り物の人形 (アルレッキーノとコロンビーナ、兵士と酒保女)の踊り、第2幕での歓迎の宴での踊りの方を楽しんでしまいました。 構えずに気楽な気分で観たこともあるのか期待以上に楽しめてしまい、 古典を観たつもりなままで済ましていたのは、もったいないことしていたなあ、と反省。

Евгений Плющенко [Evgeni Plushenko]
Щелкунчик [The Nutcracker]
Спортивный комплекс «Олимпийский»
Генеральные продюсеры шоу: Яна Рудковская, Евгений Финкельштейн; Режиссер - постановщик: Филипп Григорьян; Хореограф-постановщик: Евгений Плющенко, Emanuel Sandhu, Никита Михайлов.
Артисты: Евгений Плющенко (Дроссельмейер), Ирина Слуцкая (Рождественская звезда), Emanuel Sandhu (Мышиный король), Никита Михайлов (Щелкунчик / Ганс), Анастасия Мартюшева (Мари), Константин Гаврин (Принц);
Акробаты: Сергей Азарян, Михаил Мельник, Анна Свирина, Ирина Усенко, Сlement Pinel; В роли Дракона: Александр Плющенко; и другие.
First performance: 2016-12-23.
Streaming: Матч ТВ, 2017-01-01 [YouTube].

ロシアの3つの『くるみ割り人形』アイスショーのうち、最も評判が良かったのが Евгений Плющенко によるもの。 ロシア版 Vogue が美しい写真入りの記事 Премьера ледового шоу «Щелкунчик» в «Олимпийском»: фото Яны Рудковской и других を掲載するなど、 ファッショナブルなショーという扱いも見られました。 これは観てみたいと思っていたところ、ロシアのインターネットテレビ局 Матч ТВ が元旦にストリーミングしてくれました。 その映像が YouTube に投稿されていたので、Peter Wright 版バレエの印象が薄れないうちに観てみました。

サーカス的な要素や映像や照明による演出などフィギュアスケート以外の要素も取り入れた 金と技術をかけた演出ですが、その一方で物語バレエのオーソドックスな演出を踏襲しており、 Royal Ballet の Christopher Wheeldon が演出したハイテクでアップデートした物語バレエ [レビュー] のアイスショー版のよう。 物語の設定やあらずじもバレエ版の『くるみ割り人形』にかなり忠実なもので、 Nutcracker: Rated R [レビュー] のように舞台を現代に置き換えたりすることはしていませんでした。 「アーティスト」としてフィーチャーされたスケーターによるシングル (ソロ) やペア (パ・ド・ドゥ) の演技、 そしてその合間の贈り物の人形や歓迎の宴での色物的な演技、と、 演技の見せ場を繋げつつ無理なく物語が進んで行く『くるみ割り人形』の構成は、 バレエに限らずショーの枠組みとしてよく出来ていたのだなあ、と感心することしきりでした。 Peter Wright 版でも Herr Drosselmeyer が目立っていたわけですが、 ここでも Плющенко が Дроссельмейер [Drosselmeyer] を演じていて、 The Nutcracker [Плющенко] の主役は Drosselmeyer だったのだなあ、と気付かされました。

もちろん、変えられているところもあり、 特に、第1幕最後の雪片のワルツの群舞と第2幕の金平糖の精と王子のパ・ド・ドゥという、 バレエ版ではハイライトとも言えるシーンが無くなっていたのは、意外でした。 雪片のワルツの群舞の場面をシンクロナイズドスケーティングのチームの演技にしたら面白かっただろうと思いましたが、 さすがにそこまでの人・費用をかけられなかったのでしょうか。 Ирина Слуцкая が出演するという話を目にして第2幕の華ともいえる金平糖の精をやるのだろうかと予想していたのですが、 金平糖の精の役すら無くなっており、このアイスショーのオリジナルの役 Рождественская звезда [Chrismas star] という Мари (Clara 相当の役) の guiding star のような役を演じていました。 それらほど大きな変更ではありませんが、人形とネズミの戦いがネズミに囚われた Рождественская звезда の救出という形を取っていたこと、 ネズミの王様が退治されるのが Мари / Clara のスリッパでではなく Щелкунчик / The Nutcracker から戻った王子の剣でだという点にも、少々違和感を覚えました。

サーカス的な要素が使われていたのは、もちろん色物的な演技の場面。 Drosselmeyer の贈り物の場面では、Soldier (兵士) & Vivandière (酒保女) は 手持ちのトラペーズを使って少々アクロバティックなペアケーティングという程度でしたが、 Harlequin (アルレッキーノ) & Columbine (コロンビーナ) の方は Columbine のソロに置き換えられていて、 スケートエッジを付けた棒の上に持ち手を付けて、その上で氷上アクロバットをしてから、さらにリングのエアリアルを演技しました。 後半の歓迎の宴では、アラビアの踊りは氷上にステージを置いてのボールをマニピュレーションしながらのコントーション、中国人の踊りはトランポリンのデュオとスケートすら履かない演技でした。 こういう演目も交えるあたり、バレエだけでなく、 Cirque du Soleil [レビュー] のような現代サーカスの影響も感じられます。 ところで、前半の贈り物の人形の方はよく分からなかったのですが、 クレジットを見る限り、コントーションは新体操の元選手 Анна Свирина、 トランポリンはトランポリンの元選手 Сергей Азарян と Михаил Мельник が出演していたよう。 元スポーツ選手を使うところは、スケートと共通しているでしょうか。 そして、Peter Wright 版バレエでも Плющенко 版アイスショーでも、これらの色物的な演目が一番楽しめていまいました。

このようなハイテクでアップデートした物語バレエのようなアイスショーも十分に楽しめましたが、 やはり、Philippe Decouflé [レビュー] や Sidi Larbi Cherkaoui [レビュー] のような演出家が non-narrative なコンテンポラリーダンス作品のようにアイスショーを演出したらどうなるのか、 観てみたいものです。

Плющенко 版以外の『くるみ割り人形』の映像は無いようなのですが、 モスクワ市のアイスショーのうち Белоснежка 『白雪姫』は、 客席から観客が撮ったと思われる映像が YouTube に投稿されています [YouTube]。 これを観る限り、Плющенко 版 Щелкунчик と比べると素朴な演出で、子供向けバレエのアイスショー版のよう。 これはこれで楽しいですし、Плющенко のアイスショーより低予算でツアーできそうですので、 まずはこのあたりから来日して欲しいものです。

ところで、 モスクワ市のサイトでは 作曲家として Иоганн Штраус とクレジットされていますが、 Johann Strauss II は『白雪姫』のバレエなど書いていませんし、そもそも、主に使われているとはいえ、 オープニングは Waldteufel の “The Skater’s Waltz” で、フィナーレは Oppenbach の “Orpheé aux Enfers” です。 しかし、これについて調べていたところ、新国立劇場バレエ団の『しらゆき姫』が、 Johann Strauss II の音楽を使い、姫の衣装も水色で似ていることに気付きました。 双方の作品の元となるプロダクションの『白雪姫』が何かあるのでしょうか。

ロシアだけでなく、近年、このようなアイスショーが盛んになってきているようなのですが、 特にその分水嶺となったのは、2015年にロンドンの Royal Albert Hall で上演された The Nutcracker on Ice [YouTube] のようです。 英 The Guardian 紙のレビュー記事 “It's great when you skate: how ice dance became cool ” でも、 スパンコール衣装やキャラクター着ぐるみのアイスショーだけでなく、 その形式に芸術的な要素を取り入れる動きが出てきているとして取り上げています。 さらに、この記事ではコンテンポラリーダンス的なアイスショーのカンパニーとして、 2005年にカナダのモントリオールで設立された Le Patin Libre [カンパニー公式 YouTube チャンネル] を紹介しています。動画を観る限り、このカンパニーもとても面白そうです。 こういうアイスショーの動きが日本にも来てくれたら、と思うことしきりです。

もちろん、それまで作品的な演出がされたアイスショーが無かったわけではないと思います。 最近 The Planets - A Figure Skating and Modern Dance Fantasia (EuroArts, 2017) というDVDがリリースされたので知ったのですが、 1994年にカナダで The Planets というフィギュアスケートとモダンダンスによるショーが上演されたようです。 DVDは未見ですが、トレイラー [YouTube] を見る限り、 演出というか使われている技術に時代を感じ、それはそれで興味深いものがあります。 それが今のアイスショーにどのように繋がっているのか、それとも単発的で終わってしまったのか。 アイスショーの歴史を知ることができる何か良い文献はないでしょうか。

[このレビューのパーマリンク]

去年末から時々 twitter で書き散らかしていた内容が多く含まれますが。 ツイートのままにしておくと散逸してしまうので、まとめておきました。 それにしても、書き出したら収拾がなかなか付けられなくなってしまい長くなってしまいました。ふう。

[3522] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Feb 12 23:30:56 2017

約1ヶ月半ぶりというか今年初のCD/DLレビュー。

Jean-Guihen Queyras, Sokratis Sinopoulos, Bijan Chemirani, Keyvan Chemirani
Thrace: Sunday Morning Sessions
(Harmonia Mundi / Latitudes, HMC 902242, 2016, CD)
1)Khamse 2)Nihavent Semai 3)Sacher Variation 4)Zarbi é Shustari 5)Visite nocturne 6)I would I were a bird 7)Sunday morning 8)Dast é Kyan 9)Étude Digitale 10)Hasapiko 11)Karsilama 12)Dance in 7/8
Enregistrement septembre - octobre 2015.
Jean-Guihen Queyras (cello), Sokratis Sinopoulos (lyra), Bijan Chemirani (zarb, daf), Keyvan Chemirani (zarb, daf).

イラン出身のペルシャ古典音楽の打楽器奏者 Djamchid Chemirani を父とし、 フランスで生まれ育った兄弟 Keyvan & Bijan。 父との Chemirani Trio としてペルシャ古典の打楽器アンサンブルの活動をするだけでなく、 jazz や world music の文脈で様々な共演をしてきている [関連レビュー]。 このCDに収められたセッションは、classical の cello 奏者 Jean-Guihen Queyras と、 ギリシャの民族楽器 lyra の奏者 Sokratis Sinopoulos の4人によるセッション。 Queyras は、ケベック出身ながら Pierre Bourez によって設立されたフランスの現代音楽のアンサンブル Ensemble InterContemporain での活動で知られ、 Harmonia Mundi から現代音楽だけでなく幅広く classical のCDをリリースしている。 Sinopoulos は、Ross Daly のグループ Labyrinth のメンバーとして folk の文脈で活動を始め、 最近は Eight Winds (ECM, ECM 2407, 2015, CD) をリリースするなど、jazz 寄りの活動も多い。

演奏しているのは、東地中海の伝統的な音楽、即興から、現代の作曲家の音楽まで。 アルバムのテーマは「トラキア」ということで、バルカン半島南部のトラキアの伝統的な音楽を多く取り上げている。 Keyvan & Bijan Chemirani の一連の東地中海音楽プロジェクト [関連レビュー] に近い雰囲気を持つアルバムだが、 歌がフィーチャーされておらず、lyra のような伝統的な楽器に比べ澄んだ音色の cello が入ったこと、 そして、現代音楽も交えて、音数を絞って楽器の音の響きを生かしたプロダクションもあって、 明るいながらも落ち着きの増した音世界になっている。 特に、アラブの伝統的な曲を cello と zarb のデュオで演奏した “Visite nocturne”、 伝統的な曲を cello と lyra のデュオで演奏した “I would I were a bird” など、 今までの Chemirani のプロジェクトには無かった美しさ。 バルカンならではの複合拍子ダンス曲を演奏した “Hasapiko”、“Karşılama” そして “Dance in 7/8” にしても、優雅さが増している。 Chemirani の一連の東地中海音楽プロジェクトのパレットに classical という色が新たに加わった、そんなアルバムだ。

ちなみに、Chemirani 兄弟と Queyras という異なるジャンルのミュージシャンのどこに接点があったのかと思いきや、 ライナーノーツにある Queyras の言葉によると、子供時代の遊び友達で、一緒にサッカーをして遊んだりした仲とのこと。 そんな経緯も、コンセプト先行のプロジェクトとは違ったリラックスしたセッションと感じる一因かもしれない。

このアルバムをリリースした Harmonia Mundi の Latitudes シリーズは、まだ4タイトルのリリースしかないが、 去年リリースした Kayhan Kalhor, Aynur, Salman Gambarov, Cemîl Qoçgirî Hawniyaz (Harmonia Mundi / Lattitudes, HMC905277, 2016, CD) も素晴らしかった [レビュー]。 ECM の音作りに近い classsical 寄りの world music のシリーズとして今後のリリースを期待したい。

[このレビューのパーマリンク]

まだまだ年度末繁忙期ですか、仕事する週末が続いて疲れが溜まってきてましたし、山を一つ越えたので、今週末は休養してリフレッシュ。 今週末に観たものについても書いているのですが、収拾つかなくなって、仕上がってません……。