TFJ's Sidewalk Cafe >

談話室 / Conversation Room

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[3517] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jan 22 21:56:34 2017

火曜は仕事帰りに新宿二丁目へ。このライブを観てきました。

Arild Andersen Anniversary Trio
新宿 Pit Inn
2017/01/17, 20:00-23:00
Arild Andersen Anniversary Trio: Arild Andersen (contrabass, electronics), Helge Lien (piano), Thomas Strønen (drums); guest: 巻上 公一 [Koichi Makigami] (theremin).

1960年代から jazz/improv の文脈で国際的に活動し ECM レーベルに多くの録音を残しているノルウェーのベテラン contrabass 奏者 Arild Andersen の、 70歳を記念して結成したピアノトリオ Anniversary Trio のライブを観てきました。 オープニングは 巻上 公一 - Thomas Strønen duo。休憩挟んで2セット。アンコールでは 巻上 公一 を加えて。23時近くまで演奏してくれました。

Food の Thomas Strønen [レビュー] が参加しているのでひょっとしてと期待しましたが、 比較的オーソドックスなピアノトリオによる演奏。 2010年にワンホーントリオで観た [レビュー] の時は ルーパーを駆使していましたが、前半では若干リバーブ深めな時がある程度。 アコースティックなメロディアスな前半の展開は若干退屈しました。 しかし、後半に入ると、アップテンポでパワフルな展開が増え、内部奏法やルーパーも使うようになり、ぐっと演奏が良くなりました。 巻上 公一 の絡みはオープニングの duo は相変わらずでしたが、 アンコールではトリオとの絡みを手探りするうちに終わってしまった感もありました。

平日の晩でしたが、ほぼ満席。ピアノトリオ人気もあるとは思いますが、さすがです。 しかし、去年11月の Bobo Stenson Trio を観た時にも思ったことですが、 このクラスのミュージシャンの来日であれば、ちゃんとプロモーションして集客して、数百人規模のコンサートホールでやっても良かったのではないかと思うことしきりです。

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[3516] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jan 22 21:53:22 2017

土曜は渋谷円山町で映画を観たあとは、乃木坂へ移動。この展覧会を観てきました。

国立新美術館 企画展示室2E
2016/12/10-2017/02/05 (火休; 12/20-1/10休). 10:00-18:00 (金土10:00-20:00).
秋吉 風人, 池内 晶子, 今井 智己, 岡田 葉, 折笠 良, 金子 富之, 曽谷 朝絵, 平川 祐樹, 保科 晶子, 松井 えり菜, 南 隆雄, 三原 聡一郎, 山内 光枝.

アニュアルで開催されている文化庁芸術家在外研修の成果報告展。 最近は地道な画廊めぐりをする気力、体力も時間も無いので、その代わりという気分で観てきた。 以下、気になった作家と作品についてコメント。

平川 祐樹 の Vanished Tree - Teifelberg (2010) は、 床に上向きに置かれたビデオを映し出す箱と天井に下向きに設置されたスクリーンの組みからなるビデオインスタレーション。 照明を落としたギャラリーの床には切り株を、天井には下から見上げたアングルでの林冠の切れ目から覗く空を、固定カメラによるモノクロの映像で投影している。 このビデオの光によるギャラリー空間の光の柱が、まるで木を切り倒しでできた空間に差し込む淡い日差しのよう。 色彩を抑えたモノクロでスタイリッシュなインタレーションで、ビデオではなくスチルのライトボックスでも十分に良いのではないかとも思った。 しかし、じっと観ている、風による樹冠の揺らぎや切り株を照らす光の揺らぎも感じられる。 一緒に展示されていた Fallen Candles (2014) も「液晶絵画」的な作品。 火がついたまま倒れたロウソクを真上から固定カメラで捉えた白黒ビデオを24枚の液晶パネルに映し出して並べた作品。 ほとんど動きの無い白黒でスタイリッシュなビデオが並ぶ様は、タイポロジカルな写真作品の「液晶絵画」版 [レビュー] のよう。それも良かった。

池内 晶子 は以前にも『MOTアニュアル2011 —— Nearest Faraway | 世界の深さのはかり方』 でも観たことがあるが [レビュー]、 今回の『Knotted Thread』 (2011-2013/2016) はそのバリエーション。 前とは色違いで、細い赤い絹糸を結びあわせて10m四方ほどの蜘蛛の巣様の繊細な構造を水平に空中に浮かび上がらせていた。 遠目に見ると空中に浮いているかのようで、近付いて観ると繊細な構造に目がいく、繊細な美しさを久々に楽しんだ。

他にも印象に残った作品としては、透明なアクリル板にシンプルな幾何模様を描きその油彩絵具のムラを浮かび上がらせた 秋吉 風人の Naked Relations 連作 (2016) や、 折笠 良 の『水準原点』 (2015) の白いクレイによる波打つようなアニメーション (石田 尚志 のドローイングアニメーション [レビュー] のクレイ版のよう) があった。

若い頃は、このようなほとんどキュレーションされていないグループ展は好きではなかった (むしろ反発すら感じていた) のですが、 こまめに画廊めぐりする時間も気力・体力が無くなってくると、その代わりとしてのこのようなグループ展のありがたみを実感します。 キュレーターによって変に方向付けられて展示されていない分、個々の作家の作品に素直に向き合える所も良いです。

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[3515] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Thu Jan 19 0:44:56 2017

土曜は昼に渋谷円山町へ。渋谷ユーロスペースイスラーム映画祭が始まったので、 さっそくこの映画を観てきました。

Et maintenant, on va où ? [Where Do We Go Now?]
『私たちはどこへ行くの?』
2011 / Les Films des Tournelles (France / Lebanon / Egypt / Italia) / 110min / blue-ray / color.
un film de Nadine Labaki.
Musique Originale de Khaled Mouzanar. Paroles des chansons par Tania Saleh.
Nadine Labaki (Amal, patronne du café), Claude Baz Moussawbaa (Takla, la mère de Nassim, épicière), Leyla Hakim (Afaf), etc.
予告編 [YouTube]

レバノンの女性監督・女優 Nadine Labaki は、 初の長編映画 Caramel (2007) が 日本公開 (邦題 『キャラメル』) されていますが、その時はノーチェック。 イスラーム映画祭2で上映された、この Et maintenant, on va où ? で初めて観ました。 クリスチャンとムスリムが同居するレバノンの村を舞台にしたコメディ映画で、 内戦は小康状態でそれなりに平和裡に暮らしているものの、 村の男たちはクリスチャンとムスリムの間で一触即発の状態。村の女たちは、男たちの衝突を避けるため、あれこれ策を弄します。 奇蹟の真似事をしたり、息子の死を伏せたり、セクシーなショーダンサーを村に呼んだり、大麻入りの料理を供するパーティを開いたり。 そんなドタバタをコミカルに描いた映画です。 弄する策も現実的とは言い難いものが多いわけですが、描写はリアリズムではなく、時に歌やダンスを交えてミュージカル的な演出も交えて、面白おかしく。 笑いはブラックではなく、むしろ微笑ましく感じるものでした。 確かに、多様な女性の描かれ方に比べて、男性の描写が単純に過ぎるようにも思いました。 しかし、それでも十分に楽しめましたし、テーマにも関わらずかわいらしいとすら感じた映画でした。

この映画のハイライトシーンの一つ、男たちを酔い潰すためのパーティの準備で大麻を仕込んだ料理を女たちが作る場面で、 “Hashishet Albi [The Hash Of My Heart]” という歌が使わていてます。 約2年前にレバノンの女性シンガーソングライター Tania Saleh のアルバム A Few Images (Kirkelig Kulturverksted, FXCD 404, 2014, CD) をレーベル/ジャケット買いしたことがあったのですが、その時に彼女の Soundcloud で この “Hashishet Albi” を聴いていました。 この映画を観ていてこの Tania Saleh の歌が使われていることに気付いて、 後で調べて、そもそもこの歌はこの映画のために作られた歌だった事に気付きました。 この映画で使われた曲の歌詞は全て Tania Saleh によるもののようです。 Tania Saleh は Crammed Discs からアルバムを出した Yasmin Hamadan とも親しいようなのですが、 Nadine Labaki とも一緒によく仕事しているようです。 この映画がきっかけで、レバノンの女性アーティスト達のちょっとしたサークルがあるらしいことに気付くことができたのでした。

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[3514] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jan 15 23:37:53 2017

金曜は午後に出張先から戻って、夕方は都心で打合せしていたのですが、無事に終えることができたので、 ふと思い立って日本橋へ。このバレエの event cinema を観てきました。

『アナスタシア』
Royal Opera House, 2 November 2016.
Choreography: Kenneth MacMillan; Music: Pyotr Il’yich Tchaikovsky and Bohuslav Martinů: Symphony No. 6 (Fantaisies symphoniques); Electronic music: Fritz Winckel and Rüdiger Rüfer; Designer: Bob Crowley.
First performance: Deutsche Oper, Berlin, 25 June 1967.
Natalia Osipova (Anastasia / Anna Anderson), Marianela Nuñez (Mathilde Kschessinska), Federico Bonelli (Kshchessinska’s Partner), Edward Watson (The Husband), etc
Simon Hewett (conductor), Orchestra of the Royal Opera House.
上映: TOHOシネマズ日本橋, 2017-01-13.

Royal Opera House Cinema Season 2016/17 のバレエ第一弾は、Anastasia。 1920年に記憶喪失の自殺未遂者として精神病院に収容された “Anna Anderson” が、 一部の強い支持者もあり、ロシア革命で行方不明となったロシアの皇族の1人 Anastasia を自称するようになった、という実話に基づく作品です。 (ちなみに、この作品が作られてから20年余り経ったソ連崩壊後、ロシア皇族は処刑されたことが明らかとなり、彼女の死後のDNA鑑定でも Anna が Anastasia では無かったことが確認されています。) 振付は Kenneth MacMillan。 1967年に Deutsche Oper, Berlin で Anna のいる精神病院を舞台とした第3幕のみの1幕物の作品として初演された後、 Royal Opera House の芸術監督となった Macmillan が1971年に第1、2幕を追加しています。 ベルリンで制作されたということもあり第三幕はトイツ表現主義的で、 追加された第1、2幕は Royal Opera House らしくクラシカルな作風となったことが知られています。 去年末に MacMillan 版の L'Histoire de Manon を観て [鑑賞メモ]、 クラシカルな物語バレエは自分の今の好みからは外れるだろうと思いつつも、 ドイツ表現主義と言われる第3幕への興味で、足を運んでみました。

スチールパイプの簡素なベッドのみの舞台で、Anna を演じるボサボサの短髪にグレーのワンピースパジャマ姿の Natalia Osipova が 革命の前の幻影と革命の亡霊に苛まされるように踊る様は、確かに内面を演じる表現主義的と感じるもの。 しかし、例えば Dore Hoyer: Afectos Humano [鑑賞メモ] のように文脈から切り離した抽象的な感情として表現するのではなく、 クラシカルに演じる幻影や亡霊を演じるダンサーと共に、そのリアクションとしてのように踊るという点でもかなり物語的。 トゥシューズを履いてバレエもイデオムを感じる踊りで、あくまで物語バレエがベースにあって、 内面描写に表現主義的な動きも取り入れたもののように感じられました。 しかし、やはり第三幕があっての Anasitasia。 不穏な電子音のみから始まって10分程経った頃からオーケストラが湧き上がってくるという音楽使いの緊張感もよく、見応えがあって、最も印象に残った幕でした。 第三幕の Anastasia / Anna Anderson の記憶/妄想の中の登場人物に深みや説得力を付けるという点で、第一、二幕が不要とまでは思いませんが、二幕もあるのは少々冗長に感じました。 L'Histoire de Manon でも最後の沼地の場面だけ現代的に感じられたのですが、 過去の幻影が現れる演出といい、Anastasia での演出手法を踏襲したもの。そういう点も興味深く観れました。

Björk にも少々似た顔立ちの Natalia Osipova は少女 (Anastasia) / 狂女 (Anna Anderson) 役にぴったりでしたし、 Mathilde Kschessinska を演じた Marianela Nuñez の華やかさも印象に残りましたが、 実は今回観に行った一番のお目当ては第一皇女 Olga 役の Olivia Cowley。 去年の秋頃に彼女の運営しているブログ Ballet Style や Instagram (@missolivia) を を知って、それ以来楽しんできていたので、ぜひ出演している作品を観たいと思っていたのでした。 はたして見分けが付くか少々自信が無かったのですが、すぐに判りました。 なかなか素敵ではなないですか。これからも応援したいものです。

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しかし、出張移動もあった仕事後の、バレエのイベント・シネマ3時間余りというのは体力的にきついなあ、と、つくづく……(弱)。

[3513] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jan 15 21:14:04 2017

先の日曜の午後、『恋の花咲く 伊豆の踊子』を観終えて神保町シアターを出たら本降りの雨。 ということで、ちょっとひるみましたが、やっぱり竹橋へ。この展覧会を観てきました。

endless: The Paintings of Yamada Masaaki
東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
2016/12/06-2017/02/12 (月休; 1/2,9開; 12/28-1/1休; 1/10休), 10:00-17:00 (金10:00-20:00).

戦後まもない1948年から1990年代まで活動した画家 山田 正亮 の展覧会。 コレクション展などで一度は観たことがあるとは思いますが、 1990年代以降インスタレーションなどを好んで観てきた自分にとっては、ほぼノーチェックの作家でした。 作品と合わせて制作意図が窺われるような制作ノートも展示されていましたが、 キュビスムの影響を感じる静物画から、Klee や Kandinski を思わせるような抽象画へ、 さらに、抽象表現主義的なストライプの絵画へ。さらに、ハメ毛が際立つほとんど単色のミニマリズムへ。 そこから、枠線のような構造やストロークが色鮮やかに回帰してくる晩年の作品へと、 まるで戦後の絵画におけるモダニズムを一人の作家でたどるような興味深さがありました。

特に印象に残ったのは、フライヤ等に用いられている代表作とされるストライプの絵画ではなく、 ミニマリズムから鮮やかな枠線のような構造やストロークが湧き上がってくる1970年代の展開。 色鉛筆やコンテのストロークで淡いテクスチャのある色面を作った作品や、 枠構造を色数は抑えつつ鮮やかな色で大きなストロークでムラを作りつつ塗り分けたような作品が気にいりました。

EI-Q 1935-1938: Seeking the “Real” in the Dark
東京国立近代美術館 ギャラリー4
2016/11/22-2017/02/12 (月休; 1/2,9開; 12/28-1/1休; 1/10休), 10:00-17:00 (金10:00-20:00).

戦前はフォトグラムやモンタージュ、コラージュの技法を駆使した前衛的な写真作品で、 戦後は絵画や版画で知られる 瑛九 のコレクションに基づく企画展。 瑛九の評伝を著した 山田 光春 の旧蔵していた作品・資料を近年コレクションに加えたとのこと。 その中からデビュー直後の1935-38年に焦点を当て、書簡などの資料も合わせて展示されていました。 展示されていた作品は、フォトグラム技法による『眠りの理由』 (1936)、『フォト・デッサン』 (1936) や写真のコラージュ『作品』 (1937) など。 瑛九の写真作品をまとめてみる良い機会でしたが、 少々期待しすぎていたせいが、作品より関連資料の多さに肩透かし感じもありました。

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[3512] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jan 15 19:05:45 2017

神保町シアター『没後40年特別企画 女優・田中絹代』が始まっています。 そんなわけで、先週末の日曜となりますが、昼に神保町に出て、 戦前のサイレント映画をピアノ生伴奏付きで観てきました。

『恋の花咲く 伊豆の踊子』
1933 / 松竹蒲田 / 白黒 / 95min.
監督: 五所 平之助.
田中 絹代 (踊子 薫), 大日方 傳 (学生 水原), 小林 十九二 (踊子の兄 栄吉), 若水 絹子 (妻 千代子), 高松 栄子 (母 おたつ) 兵藤 静江 (雇い女 百合子), 新井 淳 (湯川楼の主人 善兵衛), 竹内 良一 (息子 隆一), 河村 黎吉 (鉱山技師 久保田), etc

原作は 川端 康成 の短編小説『伊豆の踊子』 (1927)。 後に度々映画化されることになるこの小説の、最初の映画化です。 ご存知のとおり、伊豆下田街道の美しい風景を背景に、 一高の学生 水原 と道連れのとなった伊豆の一人旅で旅芸人の一座との交流、 団員の踊子 薫 との淡い恋を描いた作品です。

この映画にあたっては、湯川楼の主人、山師 久保田 などの登場人物を加え、大きく話を膨らましています。 湯川楼の主人、山師 久保田、栄吉の3人はかつて共に金鉱探しした仲間で、 久保田と栄吉が先に諦めたことで、湯川楼が金鉱の富を独り占めしたこと。 湯川楼の若旦那 龍一 は水原の顔なじみの先輩ということ。 そして、湯川楼の主人は 薫のために貯金するなど、栄吉 たち旅芸人一座をことを密かに考えててやっており、 道楽者の栄吉が改心したら 薫 を息子 龍一の嫁に迎えるつもりでいるという設定が加わっています。 その結果、原作では身分違いの恋ゆえに諦めた淡い恋心だったのに対し、 映画では、先輩と相手のために身を引いた恋になって、わかりやすくメロドラマ的になってしまっていました。

成就する可能性の低い淡い恋心をもっと淡々と感傷的に描いたほうが好みですし、 当時の他の松竹メロドラマ映画に比べると登場する女優陣に華美さが欠けて、 文芸映画としてもメロドラマ映画としても半端な印象を受けました。 しかし、まだ20代前半の若くて庶民的な可愛らしさのある 田中 絹代 と、 相手役の 大日方 傳 のかっこよさだけでも、十分に楽しめました。 というか、主演の2人を魅力的に描くこと、この映画のメインはそちらなんでしょう。

実は、この映画は3年前に家で観ていたのですが、鑑賞メモなどを残すこともなく済ましてしまっていました。 大きく話が変えられていたことをすっかり忘れていました。 やっぱり、映画館と比べ家で観た場合、よほど意識的に観ない限り、細部の見落としが多くなりますし、印象も薄くなるなあ、と、つくづく。

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[3511] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Jan 9 23:59:17 2017

この週末の土曜は日帰りで水戸へ。これらの展覧会を観てきました。

『筑波大学〈総合造形〉展』
茨城県立近代美術館
2016/11/03-2017/01/29 (月休; 1/2,1/9開; 12/29-1/1休; 1/3,10休), 9:30-17:00.
三田村 畯右, 山口 勝弘, 篠田 守男, 河口 龍夫, 河口 洋一郎, 國安 孝昌, 逢坂 卓郎, 村上 史明, 小野 養豚ん, 佐々木 秀明, 岩井 俊雄, 明和電機 (土佐 信道), クワクボリョウタ, 寺田 真由美, 林 剛人丸.

東京教育大学から筑波大学への改組移転に伴い1975年に創設された 筑波大学 芸術専門学群 総合造形領域 の展覧会。 領域を方向付けた創設初期の4教員、その後の現在に至る5教員の作品と講義に関する資料の展示、 そして、卒業生で作家として活動している6人の作品展示からなる展覧会でした。 美術館・ギャラリー巡りして現代美術をよく観るようになった1990年代、 写真、光、ビデオや音響を使ったインスタレーションやユーモラスで遊び心あるジェットのような立体作品を得意とする作家といえば筑波の総合造形出身という印象が強かったこともあり、 特に前半の展示を、そのような作家を多く排出した背景として興味深く観たのは確か。

しかし、最も楽しめたのは、やはり、卒業生の6人の作家による作品展示でした。 たとえば、佐々木 秀明 『雫を聴く』 (2016) は、水滴で透明なボウルに張った水を揺らがせ、それで光を揺らがせるインスタレーションですが、 雫の音、ゆらぐ光のインスタレーションというだけでなく、水滴を落とす装置、受けるボウル、光源、光を受けるスクリーンを一体とした装置の造形もスタイリッシュ。 寺田 真由美 は初めて意識して観たが、ゼラチンシルバープリントの大判の写真シリーズも構成的な画面作りも、 大辻 清司 [レビュー] に連なる筑波らしい写真で、気に入りました。 クワクボリョウタ 『10番目の感傷(点・線・面)』 (2010) [レビュー] は、度々観る機会がありましたが、この良さも再び体感することができました。

21世紀に入って現代美術は work in progress のプロジェクトやその記録をインスタレーションとするものが多くなっています。 卒業生の作品に観られたように、写真、光、ビデオや音響といったメディアをスマートに使った造形の面白さが、自分の好みなのだとつくづく実感した展覧会でした。 しかし、教員の展示を観ると、最近は総合造形の講義においてもそのようなものに取り組みつつあるようにも伺われ、 変わりつつあるのかもしれないなあ、と、感慨深いものがありました。

Naoki Ishikawa: Capturing the Map of Light on This Planet
水戸芸術館 現代美術ギャラリー
2016/12/17-2017/02/26 (月休; 12/26-1/3休; 1/9開; 1/10休), 9:30-18:00.

極地や高山などの極限的なフィールドに赴いての撮影で知られるようになった写真家 石川 直樹 の個展。 前半の、極地や高山で撮影された大判の風景写真は、かっちりした構図に抽象画のような落ち着きもあり、 単なる冒険写真にとどまらない、フォーマルでコンセプチャルな写真にも感じられました。 しかし、後半、日本周辺の島々や福島で撮影された写真となると、そういう形式性が薄れ、むしろ何を撮るかに関心が移ってしまったようでした。

水戸芸術館 広場
2016/10/29-, 17:00-22:00 (秋冬), 18:00-22:00 (春夏)
デザイン・監修: 逢坂 卓郎.

水戸芸術館のタワーのライトアップは昔から行われていたが、 去年の10/29から「水戸芸術館ライトアッププロジェクト」として 逢坂 卓郎 のデザイン & 監修によるライトアップとなっていました。 以前のライトアップが見慣れてしまっていたせいか、地味な記憶しかなかったので、時間変化するカラフルなライトアップに華やかさを感じました。 といっても、ショッピングモールの照明のような賑やかささとは違う落ち着きも感じられる色合いや変化のスピードでした。

ちなみに、デザイン & 監修の 逢坂 卓郎 は、 『筑波大学〈総合造形〉展』で取り上げられた教員の一人。 連動した企画ではありませんでしたが、関連展示を観るような絶妙さを感じました。

かつては年に1回は行っていた水戸芸術館ですが、最近はめっきり足が遠のいてしまい、 4年ぶりでしょうか。 1990年代は東京駅発の高速バスで行ってましたが、腰を悪くして以来、上野駅から常磐線の特急で。 今回は、常磐線が品川駅まで乗り入れるようになって初めて。 上野駅へのアクセスがイマイチなだけに、品川駅から一本で水戸駅まで行けるようになり、 実際の距離や所要時間、料金は別として、逗子駅からバスに乗らなくてはならない 神奈川県立近代美術館 葉山 よりも体感的に近く感じられました。 少しは水戸へも行くようにしようかしらん、と。

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[3510] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Wed Jan 4 20:55:22 2017

正月の実家・親戚付き合いから戻って、正月三日は例年どおり美術館へ初詣。 今年は、リニューアル中ということで数年初詣できなかった恵比寿へ行って、展覧会を観てきました。

Apichatpong Weerasethakul
Ghosts in the Darkness
アピチャッポン・ウィーラセタクン 『亡霊たち』
東京都写真美術館 地階展示室
2016/12/13-2017/01/29 (月休; 月祝開, 翌火休, 1/3開, 12/29-1/1休), 10:00-18:00 (木金-20:00, 1/2,3: 11:00-18:00).

タイ東北部イサーン地方に取材した映像を用いたナラティブなインスタレーションや長編映画で知られる Apichatpong Weerasethakul は1990年代末より主に映画と現代美術の文脈で活動する作家。 長編劇映画 Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives (2010, 『ブンミおじさんの森』) は、 2010年に Festival de Cannes (カンヌ映画祭) で Palme d'Or (映画祭の最高賞) を受賞している。 しかし、インスタレーション作品を国際美術展などで度々観る機会があったが、 [関連レビュー]、映画は未見。 最近はナラティヴな作品における映像の実験性も思わせぶりな虚仮威しに感じられがちで、 半透明スクリーンに花火やその明かりに照らされる石像などを投影した Fireworks (Archive) (2014) は、 本当に暗闇の中に浮かび上がるよう。そこがとても気に入った。

Tokyo Tokyo and TOKYO – Contemporary Japanese Photography vol. 13
東京都写真美術館 2階展示室
2016/11/22-2017/01/29 (月休; 月祝開, 翌火休, 1/3開, 12/29-1/1休), 10:00-18:00 (木金-20:00, 1/2,3: 11:00-18:00).
小島 康敬 [Kojima Yasutaka], 佐藤 慎太郎 [Sato Shintaro], 田代 一倫 [Tashiro Kazutomo], 中藤 毅彦 [Nakafuji Takehiko], 野村 恵子 [Nomura Keiko], 元田 敬三 [Motoda Keizo].

アニュアルで開催している (といっても去年はリニューアル中の閉館で開催されなかったが) 新進の写真作家を取り上げるグループ展。 今年取り上げられた6人の作家は意識して観るのは初めての作家ばかりだった。 今年のテーマは東京。ということで、大都市の「猥雑さ」に焦点を当てたナラティブ作品が多め。 そういう作品もありとは思うが、 むしろ形式的な写真、合成で東京スカイツリーか写り込んだパンフォーカスなパノラマ写真を撮る 佐藤 信太郎 の『東京|天空樹』シリーズ (2009-2013) が良かった。 作家自身は浮世絵を意識して作品を作っているようだが、やはり Andreas Gursky [レビュー] を連想したのは確かだし、 路地の家々を撮った作品は歪みが大きく感じられてしまったりもしたが、 もう少しいろいろな作品を観てみたいと思わせるだけの魅力を感じた。

20 Year Anniversary TOP Collection: Tokyo Tokyo and TOKYO
東京都写真美術館 3階展示室
2016/11/22-2017/01/29 (月休; 月祝開, 翌火休, 1/3開, 12/29-1/1休), 10:00-18:00 (木金-20:00, 1/2,3: 11:00-18:00).

アニュアルの新進作家展と合わせて、同じテーマでコレクション展も開催されている。 こちらも作風は多様ですが、特に後半、期待以上に形式的な作品が多くて楽しむことができた、 宮本 隆司 『建築の黙示録』 [レビュー]、 楢橋 朝子 『Half Awake And Half Asleep In The Water』 [レビュー]、 畠山 直哉 『Slow Glass』 [レビュー]、 佐藤 時啓 『光―記憶』 [レビュー]、 など、好きな作家の作品を多く観ることができたということもある。 しかし、奈良原 一高 [レビュー] が 『Vertical Horizon-Tokyo』 (1991-1995) という青空を背景とした高層建築のカラー写真を万華鏡のようにコラージュした作品を作っていたということに気づいたり、 皇居の内堀の緑を白黒写真で抽象画のように捉えた 山本 糾 『Jardin』 (2002) や、 人影も走る自動車も全くない首都高や都心の交差点をパンフォーカスのカラー写真で捉えた 中野 正貴 『TOKYO NOBODY』 (1990s) など、 今まで気付かなかった面白い作品との出会いもあった。

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[3509] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jan 1 0:45:38 2017

2016年に歴史の塵捨場 (Dustbin Of History)に 鑑賞メモを残した展覧会やダンス演劇等の公演の中から選んだ10選。 音楽関連 (レコード/ライブ) は別に選んでいます: Records Top Ten 2016

第一位
Ex Machina / Robert Lepage: 887 (演劇)
東京芸術劇場 プレイハウス, 2016/6/25.
[レビュー]
第二位
Oivier Py: La Jeune Fille, le Diable et le Moulin, d'après les frères Grimm (演劇)
静岡県舞台芸術公園 野外劇場「有度」, 2016/5/7.
[レビュー]
第三位
『ようこそ日本へ:1920‐30年代のツーリズムとデザイン』 (デザイン展)
東京国立近代美術館 企画展ギャラリー, 2016/01/09-2016/02/28.
[レビュー]
第四位
Compagnie DCA - Philippe Decouflé: Contact (ダンス)
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール, 2016/10/29.
[ レビュー]
第五位
『MIYAKE ISSEY 展 — 三宅一生の仕事』 (デザイン展)
新国立美術館, 2016/03/16-2016/06/13.
[レビュー]
第六位
Compagnie Defracto: Flaque (サーカス)
世田谷パブリックシアター, 2016/10/15.
[レビュー]
第七位
Sidi Larbi Cherkaoui / Antony Gormley / Szymon Brzóska with monks from the Shaolin Temple: Sutra (ダンス)
オーチャードホール, 2016/10/01.
[レビュー]
第八位
Thomas Ruff (美術展/写真展)
東京国立近代美術館 企画展ギャラリー, 2016/08/30-2016/11/13.
[レビュー]
第九位
Cie Non Nova: L'Apres-midi d'un Foehne - Version 1 (サーカス)
座・高円寺 阿波おどりホール, 2016/07/09.
[レビュー]
第十位
Cía. Kamchàtka: Habitaculum (体験型パフォーマンス)
三島市立中央幼稚園, 2016/07/16.
[レビュー]
次点
『木々との対話 再生をめぐる5つの風景』 (美術展)
東京都美術館, 2016/07/26-2016/10/02.
[レビュー]
番外特選
Maria Sotskova [Мария Сотскова]: Short program & free skating
Figure skating, Ledies, season 2016-2017.
[レビュー]

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[3508] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jan 1 0:43:37 2017

2016年に音盤雑記帖 (Cahiers des Disques) に聴取メモを残した最近数年の新録リリースの中から選んだ10枚+α。 展覧会・ダンス演劇等の公演の10選もあります: 2016年公演・展覧会等 Top 10

#1
Kayhan Kalhor, Aynur, Salman Gambarov, Cemîl Qoçgirî
Hawniyaz
(Harmonia Mundi / Latitudes, HMC905277, 2016, CD)
[レビュー]
#2
Basel Rajoub Soriana Project
The Queen of Turquoise
(Jazz Village, JV570123, 2016, CD)
[レビュー]
#3
Şirin Pancaroğlu / Meriç Donük
Elişi
(Kalan, no cat. no., CD, 2011)
[レビュー]
#4
Trygve Seim
Rumi Song
(ECM, ECM 2449, 2016, CD)
[レビュー]
#5
Cyro Baptista
BlueFly
(Tzadik, TZ4014 / Spectrum 14, 2016, CD)
[レビュー]
#6
Michel Benita Ethics
River Silver
(ECM, ECM2483, 2016, CD)
[レビュー]
#7
Kazalpin [Казальпін]
East Side Story
(Double Moon, DMCHR71509, 2011, CD)
[レビュー]
#8
Zuzana Homolová / Miloš Železňák
Medzi Dvomi Prázdnotami
(Slnko, SZ 0071 2 331, 2014, CD)
[レビュー]
#9
Anne Gravir Klykken & Frøydis Grorud
Blåsang
(Jazzland, 474 825 9, 2015, CD)
[レビュー]
#10
Farvel
RÖK
(Jazzland, No 1 / 472 128 3, 2015, CD)
[レビュー]
番外特選
Elina Duni Quartet
安養院 瑠璃光堂 (板橋区 小竹向原)
2016/09/04, 18:30-20:15
[レビュー]

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[3507] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jan 1 0:41:32 2017

あけましておめでとうございます。

近年は振り返るほどの趣味生活はしていないような気もしますが、20年以上続けていることですし、 備忘も兼ねて、この1年の趣味生活を反省しつつ、 2016年の レコード Top 10展覧会・公演等 Top 10 を選んでみました。 世間の動向・流行に疎く、近年のトレンドや将来の展望などあるわけでなし、 2016年も選んだものに対するコメントは省略します。

ちなみに、過去23年間のレビューというか鑑賞メモの本数の推移は下表のとおりです。

199419951996199719981999 2000200120022003200420052006200720082009 2010201120122013201420152016合計
音盤雑記帖 (Cahiers des Disques) 719310978807578636353404944523944473035312625241249
歴史の塵捨場 (Dustbin of History) --75666575725557472831424967575151747910474741293
合計 7193184144145150150118120100688086101106101988110911013099982542

音盤雑記帖 (音楽レコード/ライブのレビュー)歴史の塵捨場 (展覧会/公演等のレビュー) いずれも 去年とほぼ同数。 談話室のバックアップファイル・サイズで見ても2015年が 611884byte で2016年は 606454byte、 twitter で見ても2015年の2573ツイートに対して2016年は2617ツイート。 忙しいながらも、音楽を聴いたり、展覧会や公演を観る生活にも慣れて、 仕事と趣味生活のバランスが新たな定常状態に入ったように思います。

音楽趣味は、とくに上半期は、 まめにライブに行くこともなければ、家でも昔の音源ばかり聴くようになって、 もはや音楽趣味からは引退かと思っていました。 しかし、9月に Elina Duni Quartet や Paolo Fresu & Daniele di Bonaventura のライブを聴いて、 第四四半期になって少しは前向きな気分になれました。やはり、良いライブを観ることは重要だなあ、と。

音楽以外の趣味については、 今年は演劇/ダンス鑑賞が楽しめた一方で、いい展覧会に出会えなかったな、と。 というか、最近はすっかり現代美術が楽しめなってしまったようにも思います。 2014年以来の20世紀前半日本映画も相変わらず楽しんで観ていますが、 2016年は海外のオペラ/バレエや演劇の event cinema を観る楽しみを覚えた年でした。 そして、12月に入ってフィギュアスケート (特にロシアの) にハマってしまうという。 振り返って見ると、戦前松竹メロドラマ映画がオペラ/バレエ (event cinema) の19世紀メロドラマ的世界への地均しに、 そして、オペラ/バレエがフィギュアスケートへの地均しになった感もあって、 我ながら興味関心がどう繋がっていくのか読めません。 まあ、割けるリソースは限られていてこれから趣味として深掘りすることはできないと思いますが、 これは守備範囲などと壁を作らずに興味が赴くままに楽しんでいきたいと思います。

2017年は職場の引越しが計画されていて、転居を含めて生活が大きく変わることが予想されます。 ますます趣味生活を縮小することを余儀なくされそうです。 無理することなく、しかし、趣味生活から引退していまうようなことなく、ささやかながらでも趣味生活を楽しんでいければと思っています。 この談話室に美術展や公演の鑑賞メモなどを残すことも、未来の自分のためにも継続していきたいと思っています。

それでは、今年もよろしくお願いします。

[3506] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Wed Dec 28 23:56:41 2016

年末のCD/DLレビュー。スウェーデンの女性歌手率いるこのグループのアルバムを。

(Jazzland, No 1 / 472 128 3, 2015, CD)
1)Dämman 2)Elevate 3)Rök 4)Pingis 5)Mörka hav 6)Hitta 7)In i dimman 8)Svarta hål 9)Katharsis
Recorded 16-19 March 2014.
Isabel Sörling (voice), Otis Sandsjö (tenor saxophone, clarinet), Kim Aksnes (trumpet), Henrik Magnusson (piano), Alfred Lorinius (double bass), Carl-Johan Groth (drums).

Farvel はスウェーデンの女性歌手 Isabel Sörling 率いる Jazz/improv のグループ。 以前は Isabel Sörling Farvel の名義で活動し、 スイスのレーベル Unit からアルバム Isabel Sörling Farvel (Unit, UTR4357, 2013, CD) というリリースもある。 ノルウェーのレーベルからのこのアルバムは名義は変わったが、編成は同じ6tet。 といっても、前作は未入手未聴で、このアルバムで初めて聴いたグループだ。

編成だけ見れば、アコースティックな楽器からなるオーソドックスな2管5tetに女性歌手をフィーチャーしたものだが、 音はぐっとコンテンポラリーだ。 楽器音のテクスチャも使う静かな展開からオフビートなリズムの展開まで、 音の間合いや複雑な展開の作曲の部分が多そうな演奏だ。 しかし、electronica Jazzland のレーベルから予想されるほど北欧の nu jazz 風ではなく、 むしろ、1990年代に hatART 〜 hatLOGY あたりからリリースされていたような techno / electronica の影響が入ってくる前の jazz/improv だ。

このような演奏をバッキングに、ではなく、 このような演奏の中の一パートとして Isabel Sörling も抽象的なヴォイシングを使う。 しかし、free improv の女性歌手によくあるアクロバティックなスキャットを駆使するのではなく、 むしろ、pop / rock の文脈の女性歌手のような軽く漂うような歌声を多く使っている。 このような演奏と歌声の組み合わせは、ありそうでない。 そんなところが新鮮に楽しめたアルバムだ。

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明日の晩は呑み会、明後日は大家さんの餅つき、明々後日には帰省してしまうので、 年内のこのサイトの更新はこれまででしょうか。それでは、よいお年を。

[3505] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Wed Dec 28 20:02:54 2016

年末も押し迫っていますが、CD/DLレビュー。ノルウェーの folk/roots meets jazz な女性歌手と女性 sax 奏者のデュオを。

Anne Gravir Klykken & Frøydis Grorud
(Jazzland, 474 825 9, 2015, CD)
1)Sjung hjerte, sjung en aftensang 2)I mine kåte ungdomsdagar 3)Gamle Guro 4)Eg gjekk meg ut ein aftenstund 5)Hans Nybøes springdans 6)Solbønn 7)Svein Trondson 8)Dagsens auga sloknar ut 9)Strandpols 10)Op på di fjella 11)Troldkjærringas Bånsull
Innspilt i Nobember 2014 og February 2015.
Anne Gravir Klykken (sang, rytmer), Frøydis Grorud (fløyter, saksofoner, rytmer).

Anne Gravir Klykken はノルウェーの folk/roots の文脈で1990年代から活動する女性歌手。 ノルウェーではよくあることだが、jazz/improv のミュージシャンとの共演もあり、 Knut Buen, Bugge Wesseltoft, Michiyo Yagi, Anne Gravir Klykken: Tonebod ‎(Nyrenning, NYCD12, 2008, CD) のようなリリースもある (残念ながら未入手未聴だが)。 一方の Frøydis Grorud も2000年前後から活動するノルウェーの女性 saxophone 奏者で、 女性歌手 Torun Eriksen の録音に参加している他、自身のリーダー作を Jazzland からリリースしている。

Klykken と Grorud はキーボード奏者 Torjus Vierli を加えてのトリオ Vintermåne として活動していたが、 これはデュオでアコースティックな音作り。 folk の歌手らしい森奥から響くような Klykken の詠唱に、 Grorud が音数少な目にゆったりした伴奏を添える。 flute での伴奏など folk 的だが、Jan Garbarek を思わせるような soprano sax の時もある。 柔らかい tenor sax を吹くときは jazz 的なイデオムが滲み出すようで、それも良い。 ECM や Kirkelig Kulturverksted、NOR-CD からいかにもリリースされそうな音で、 個性的な音というほどではないが、ゆったり落ち着いた雰囲気が楽しめるアルバムだ。

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今までサボっていたCD/DLレビューを年末に辻褄合わせしている感もないわけではないですが、 公演ラッシュがひと段落して、やっと時間が取れるようになったというのが正直なところだったり……。

[3504] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Dec 26 22:29:37 2016

週末のCD/DLレビュー。もう一本。スロバキアの folk/roots の女性SSWのアルバムとその関連盤を。

(Slnko, SZ 0071 2 331, 2014, CD)
1)Turice S Divými Makmi 2)Nepýtaj Sa 3)Popevok (Na Starý Motív) 4)Omotaná Snom 5)Vlak 6)Priesvitnosť 7)Piesnička 8)Prosté A Ťažké Ako Príslovia 9)La Main (Ruka) 10)Vŕby
Recorded: July - August 2014.
Zuzana Homolová (spev), Michal Balla (tenorsaxofón, klarinet, basklarinet, flauta), Miloš Železňák (Ak., el. gitary, diagonálna citara, bendžo, mandolína, buzuki, rhuan, perkusie, bicle, basová gitara, keybordy, barytón ukilele, spev), Tobiáš Potočný a Miloš Železňák (loops).

共産政権時代から活動するスロヴァキアの folk/roots の歌手 Zuzana Homolová。 2012年にリリースした Ňet Vekšeho Rozkošu (Slnko, SZ 0048 2 331, 2012, CD) [レビュー] のトリオ Trojka Z.H. の1人、Miloš Železňák とのデュオ名義でのアルバムだ。 Ňet Vekšeho Rozkošu ほどフォーキーではないが、 Tvojej Duši Zahynúť Nedám (Slnko, SZ0017 2 332, 2005, CD) [レビュー] のようなビート感も抑えて、楽器音の響きと音の間合いを生かした、落ち着いたアルバムだ。

特にこのアルバムでは、ソフトな管楽器の響きが生きている。 吹きまくることなく、ソフトに歌に寄り添うように、鳴っている。 guitar も澄んだ響きのアルペジオだけでなく、緩くファズを効かせたり Bill Frisel のようにリバーブを効かせるときも。 また、guitar だけでなく bouzouki や banjo を使った曲でも、その音色でぐっと雰囲気が変わる。 jazz 的というほどではないのだが、シンプルな folk に収まら無いひっかかりが随所に仕込まれたアルバムだ。

合わせて、少し前のリリースになるけれども、最近入手できた関連盤を紹介。

(Hevhetia, HV 0029-2-331, 2008, CD)
1)Byla jedna hrlička 2)Oj Čorna, Že Ja Čorna 3)A na gori kukurička 4)Nerubaj liščinu 5)Holosočku moho 6)Tam za lisom 7)Že solnce Ňiženko 8)Mala baba kurku 10)Ty skazala 11)Oj pomerla bidna maty 12)Pečená oliva a 2 plenené pirohy
Miloš Železňák (akustické., elektrické gitary, mandolina, buzuki, banjo, Priečna flauta, perkusie, loop station), Kristián Bujak (gajdy), Michal Balla (soprán saxofón, klarinet).

Homolová と長年共演を続けている Miloš Železňák は jazz の文脈でも活動する guitar 奏者で、 やはりスロバキアのレーベルから Hevhetia から 4枚リーダー作をリリースしている。 Miloš Železňák Trio は特に folk 的要素を感じさせない power trio だが、 このソロ名義の Rusnácke [Ruthenian] は、 彼のルーツであるルテニア人 (Ruthenian; ハプスブルグ帝国領に住んでいたウクライナ人やベラルーシ人に近い民族) の民謡を演奏した作品。 歌詞カードは付いているが、多くは歌なしのインストゥルメンタルの演奏で、ほとんどが guitar ソロ。 曲に gajdy (いわゆる bagpipe) や soprano saxophone, clarinet も加わった曲もある。 民謡のメロディをモチーフに、Bill Frisell の影響も感じられるリバーブなどのエフェクトを控えめに効かせた guitar が楽しめるアルバムだ。

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舞台とか観に行かないと、CD/DLとかゆっくり聴く時間が作れるなあ、と、つくづく。

[3503] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Dec 25 22:14:24 2016

週末のCD/DLレビュー。ノルウェーの jazz/improv のミュージシャンによるこのアルバムを。

(ECM, ECM 2449, 2016, CD)
1)In Your Beauty 2)Seeing Double 3)Across The Doorsill 4)The Guest House 5)Leaving My Self 6)When I See Your Face 7)Like Every Other Day 8)The Drunk And The Madman 9)Whirling Rhythms 10)There Is Some Kiss We Want
Recorded February 2015.
Tora Augestad (vocal), Frode Haltli (accordion), Svante Henryson (violoncello), Trygve Seim (tenor and soprano saxophones).

Trygve Seim は1990年代から jazz/improv の文脈で活動するノルウェーの saxophone 奏者。 2000年代に入ってから Sinikka Langeland Ensemble のメンバーとして活動しており、 その演奏を聴いたことはあったが [レビュー]、リーダー作を聴くのは初めて。 このアルバムは女性歌手をフィーチャーしたプロジェクトで、 13世紀に活動したイスラーム神秘主義のペルシャ語詩人 Rumi の詩に曲を付けて歌うというもの。

Tora Augustad は初めて聴いたのだが、透明感あるハイトーンの中に少々可愛らしさも感じる歌声。 英訳された詩を歌っており、楽器演奏のところは別として、歌の旋律では中東のモードらしきものはほとんど使われていない。 音だけ聴いたら Rumi を歌っているとは気付き難いほど。 この意外な歌声だけで、ぐっと引き込まれてしまった。

アンサンブルも ECM らしい音の隙間を生かした演奏だ。 Trygve Seim の saxophone の音はソフトに時に中東の管楽器のように、 Svente Henryson の cello もアルコでゆったりと鳴らしている。 drums も bass も無い中で要となるのは Frode Haltli の accordion [関連レビュー]。 時に歌に寄り添うようにゆったりと、時にリズムを刻むように、落ち着いた多彩な演奏が楽しめた。

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10月頭から毎週末舞台かその event cinema を観るパターンが続いて、 さすがにちょっと一息つきたくなってしまいました。 というわけで、その手の予定はお休みして、金曜祝日は友人宅でのパーティ、 土曜晩はいきつけのジャズ喫茶でゆっくり一人呑みで過ごすことに。 ……にするつもりが (まあ、そうはしたのですが)、 11月末のNHK杯以来、 フィギュアスケート女子シングル、ロシアの Мария Сотскова [Maria Sotskova] にすっかりハマってしまい、 結局、ちょうど23-25日開催だった Челябинск 2017 - Чемпионат России по Фигурному Катанию (チェリャビンスク2017 フィギュアスケート・ロシア選手権) をライブストリーム映像やソーシャルメディアですっと追いかけて過ごしてしまいました。 いやー、面白かった。(これについては、余裕があれば、後日別途書くかもしれません。) しかし、音楽趣味と Russian Avant-Garde 趣味で得たささやかながらのロシア語スキルが、 フィギュアスケート情報を追っかけることに生かせるときがくるとは、思いもしませんでしたよ。

[3502] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Dec 19 23:44:11 2016

土曜は晩は、渋谷から三軒茶屋へ移動。この舞台を観てきました。

2016/12/17 18:00-19:30
演出・振付: 目黒 陽介; 音楽: 坂本 弘道; 美術: カミイケタクヤ
目黒 陽介 (juggling), 森田 智博 (juggling), 宮野 玲 (juggling), 長谷川 愛実 (aerial, dance), 谷口 界 (acrobat, dance), ハチロウ (juggling), 中村 愛由子 (aerial, dance), 安岡 あこ (dance), 鈴木 仁 (juggling), 坂本 弘道 (cello, musical saw, electronics), 南方 美智子 (piano effects), 一樂 誉志幸 (drums, junk).

ジャグリングの舞台作品を作るカンパニーとして活動を始めた ジャグラー 目黒 陽介 の主宰するながめくらしつ。 うつしおみ (目黒 陽介, 長谷川 愛実) を大道芸で観ることはあったが、舞台公演は2年ぶり。 観るのはこれで3作目だが、 『おいていったもの』 (2014) [鑑賞メモ] 『終わりをみながら』 (2014) [鑑賞メモ] に比べて アイデアに富んでいて、空間も広く使うようになっていた。 ナラティヴではないものの作品としてまとまりもあって、抒情的ですら感じられた作品だった。 ジャグリングだけでなく、ダンス、アクロバット的な動きやエアリアルの見所もあり、 コンテンポラリー・サーカスの作品として十分に楽しめた。

特に気に入ったのは、邪魔されながらのボールのジャグリング。 はいつくばっての口まで駆使してジャグリングなど Compagnie Defracto: Flaque [鑑賞メモ] の影響もあるかなと思いつつ、 身体が十分にコントロールできない状態でジャグリングなど真似しなくても簡単に真似できるものでもなく。 邪魔するの者と邪魔されつつジャグリングする者のデュオとしてでなく4組を舞台に配することで ミクロにコントロールされていないもののマクロではきっちり配置されているような見せ方になっているところも気に入った。

エアリアルは、最初にあったリングよりも、天井に半ば網のように張り巡らせたティシュ。 それだけでも造形的にも綺麗で良いアイデアだと思ったが、 階段状に並べたシガーボックスを使っての登っていき方や、 2人のエアリアル・パフォーマーがティッシュの網をひとしきり巡った後、 再び降りるのではなく、そのまま舞台後方の天井に消えていくエンディングも良かった。 エアリアルをジャグリングを同時に組み合わせるような構成が無かったのは残念だったし、 シガーボックスを使って将棋を打つのを真似たような動きをする場面で 動きのコントロールが甘く感じられたりしたのも確かだが、全体の雰囲気を損なうほどでは無かった。

音楽は piano / drums / cello の生演奏。 パフォーマンスの展開に合わせてきっちりメリハリは付けるものの、 フリーな展開にはさほどならずに、メロディも生かして抒情的な雰囲気を作りだしていた。 鍵となる形や物が明示的にあったわけでもかわらず、作品を通して統一感があったのは、 この生演奏の音楽があったからのようにも思われた。

今まで観た三作の中で最も良く、 11月頭に観た 頭と口 『WHITEST』 [レビュー] と合わせ、 日本のコンテンポラリーサーカスのカンパニーの成熟を実感することのできた舞台だった。

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[3501] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Dec 18 23:47:04 2016

土曜は昼に渋谷松濤へ。この映画というか event cinema を観てきました。

『マノン』
Palais Garnier, L'Opéra national de Paris, 2015-05-18
Compositeur: Jules Massenet; Chorégraphe / Metteur en scène: Kenneth MacMillan; Sets and Costumes: Nicholas Geargiadis.
First performance: Royal Opera House, Covent Garden, 7 March 1974.
Aurélie Dupont (Manon), Roberto Bolle (Des Grieux) Stéphane Bullion (Lescaut), Alice Renavand (La maîtresse de Lescaut), Benjamin Pech (Monsieur Guillot de Morfontaine) Karl Paquette (Le Geôlier), Viviane Descountures (Madame), Le corps de ballet de L'Opéra National de Paris.
Martin Yates (conductor), Orchestre de L'Opéra National de Paris
Réalisation: Cédric Klapisch.
上映: Bunkamura ル・シネマ, 2016-12-17.

今年観た event cinema (ライブビューイング) が演劇とオペラばかりでバレエを観ていなかったうえ、 最近 L'Opéra National de Paris の event cinema を観る機会が無いと思っていたところ、 去年のエトワール Aurélie Dupon の引退公演の上映に気付いたので、観てきました。 演目は L'Histoire du Manon。 原作は Abbé Prévost: L’Histoire du Chevalier des Grieux et de Manon Lescau (1731) で、 Jules Massenet 作曲でオペラ化 (Manon, 1884初演) されています。 その物語を、オペラの曲ではないけれども Massenet の曲を使って1974年に Kenneth MacMillan がバレエ化した作品です。 オペラも観ていませんし、バレエも観るのは初めて。

現代的な作品に挑戦し続けていた Sylvie Guillem [鑑賞メモ] ほどの思い入れが Aurélie Dupon にあるわけでなく、 20世紀の作品とはいえクラシカルな演出の物語バレエ (narrative ballet) で Christopher Wheeldon [鑑賞メモ] のような現代的な演出も楽しめるわけでもなく (第3幕は少々現代的でしょうか)、 やはり、現代的な非物語バレエ (non-narrative ballet) [鑑賞メモ] の方が好みと確認したような所も。 しかし、それでも予想以上にメロドラマ的な物語がツボにはまり、 メロドラマ映画を観るように楽しんで観ることができました。 これもオペラのメロドラマ性を継承しているのでしょうか。

Madame の衣装が Robe à la française [鑑賞メモ] に基づいているなど、 衣装や舞台美術は原作の18世紀に合わせた Rococo 調がベースにあるように見えました。 しかし、原作では騎士であった Des Grieux が若い学生という設定になって、 騎士対放蕩貴族の話が、貧乏学生対富豪という19世紀的な話に置き換えられているよう。 そこがメロドラマ的な面を強調しているように感じられました。 1週間前に Hedda Kabler を観たばかり [鑑賞メモ] だったので、 Manon と Hedda が、Des Grieux と Lövborg が被って見えました。

戦前松竹メロドラマ映画なら、Manon が桑野 通子、Des Grieux が佐分利 信、Lescaut が河村 黎吉 かなーと思っつつ、 それって『男の償ひ』 [鑑賞メモ] の冒頭部分じゃないかと思い至ったり。 佐分利 信 ら松竹三羽烏は看板女優の相手役とはよく言われたものだけれども、 なるほと、Aurélie Dupon のようなエトワールな女性ダンサーと Pas de deux で組む男性ダンサーのようなものかと、腑に落ちることしきりでした。 戦前松竹「メロドラマ」映画と言うものの、そう言われているから使っていた面が強く、 何が「メロドラマ」なのか、19世紀的なメロドラマとの連続性はあるのか、いまいちわかってなかったのですが、 event cinema でオペラやバレエを気楽に観るようになって、腑に落ちることしきり。 やはり、古典を知ると楽しみ方が深まります。 まあ、戦前松竹メロドラマ映画をある程度まとめて観たおかげで、19世紀オペラ・バレエに対する敷居が下がったというのもありますが。

しかし、現在、L'Opéra national de Paris で上演中なのは Jiří KyliánInstagram に流れてくる写真を見ながら、 こちらの方が観たいなあと思うことしきりです。 こういう作品も event cinema にして上映してくれたらなあ、と。

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今年はこれで event cinema は11本。 オペラが Metropolitan Opera Live in HD 6本、Royal Opera House 1本の7本、 演劇が National Theatre Live 3本で、バレエを観てなかったなあ、と。 観てるオペラはいわゆる前衛演出な作品ばかり。 しかし、今回 L'Histoire de Manon を観て、 そうではない演出のオペラでもそれなりに楽しめるかもしれない、という感触を得たような。 しかし、event cinema でとはいえ我ながらオペラやバレエをここまで観るようになるとは思いませんでしたよ。 今から振り返れば、2014年に戦前松竹映画にハマったことが、そこへの地均しになったような。 我ながらこんなふうに繋がっていくとは予想しませんでしたよ。

Bunkamura へ行ったので、ついでに地下へ。 ザ・ミュージアムで始まった 『マリメッコ展』 (marimekko - Design, Fabric, Lifestyle) を覗いてきました。北欧モダンというかミッドセンチュリー・モダンというか。こういうデザインは嫌いではありません。 しかし、単独で取り上げると、どうしても企業展のようになってしまうような。うむ。 1960年に登場した際のデザイン史的な文脈はもちろん、 1980年代後半から1990年代はほとんど忘れられた存在だったと思うのですが、 2000年代入ってリバイバルし経緯が marimekko の事業の内的な要因からしか説明されていなかったのが、少々、物足りなかったでしょうか。

[3500] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Dec 18 21:11:42 2016

水曜日、仕事をなんとか切り上げて20時前に渋谷へ。待望のライブを観てきました。

渋谷 WWW X
2016/12/14, 18:00-22:15
Chris Abrahams (piano), Tony Buck (drums), Lloyd Swanton (bass).

The Necks はオーストラリア・ニューサウスウェルズ州シドニーを拠点に 1987年以来 jazz/improv の文脈で活動するトリオ。 2011年に来日の予定があったが東日本大震災の影響でキャンセルとなり、トリオとしては今回が初来日だ。 (Tony Buck は日本で活動していた時もある。) 編成的にはいわゆる piano trio だが、いわゆる典型的なそれではなく、 ミニマルな反復によって音のテクスチャを作り出す、 1990年代半ばに登場した post-rock や、nu jazz 以降の electronica に影響を受けた jazz を先取りしていたかのようなトリオだ。 途中休憩を挟んで約1時間の演奏を2セット。アンコールはなかった。 このライブでも、looper はもちろん live electronics を一切使ってないとはにわかには思えないような音を堪能することができた。

CDで聴いていたときは、同郷シドニーの Triosk との共通点を多く感じていた [レビュー]。 しかし、生で観ると、electronics も使う Triosk とは違い、楽器の生の響きを生かした演奏。 そんな所に、Nik Bärtsch [レビュー] を連想したりもした。 しかし、Nik Bärtsch が音の隙間を生かした音作りをするのに対し、 The Necks は音を細かく刻んで音空間を埋め尽くすようなテクスチャを作るよう。 そのミニマルな反復から脈動するようなグルーヴが湧き上がってくる。 まるで Moritz von Oswald の minimal techno のようなミニマルな脈動がアコースティックな生演奏で生まれているのが、面白かった。

舞台上手から piano, bass, drums という並びで、piano は中央に向かって背を向ける形。 開演10分前頃に会場に着いたこともあり、中央の席が取れず、drums 側の後方の席となった。 そんなこともあり、drums の演奏が何かと気になったライブだった。 第1セットは drums がちゃんと刻む時があったたが、第2セットは金属製/木製のベルやでんでん太鼓を使ったチャカポカとした音を多用していた。 このチャカポコした音がまるで looper で回しているかのように持続していて、最初のうちはどうしているのかよくわからなかった。 しかし、舞台奥側の左手で紐で下げた鳴り物をクルクルと回し続けて鳴らしているのに気づいて、なるほどと。 音を electronics を使ってループさせるかのように、鳴り物を物理的に回しているところが、面白く感じられた。

1ヶ月前に買ったチケットは整理番号11番。 このままではガラガラになるのではと危惧していたのですが、 用意された丸椅子約100席が埋まって数十人の立見が出る程度に埋まって、なにより。 当初はオールスタンディングとのことで、それも危惧していたのですが、丸椅子が用意されて助かりました。 しかし、オールスタンディングを前提としたハコではなく、 椅子がちゃんとした小ホールか、もしくは SuperDeluxe のようなオルタナティヴスペースがよかったのではないかと思うようなライブでした。

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[3499] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Dec 18 20:21:06 2016

先週末の話ですが、日曜の午後、三軒茶屋に週末の家事買物に出たついでに、この舞台を観てきました。

クルージュ・ナポカ マジャール劇場 『ヘッダ・ガブラー』
2016/12/11 14:00-16:50
Ddirected by Andrei Şerban; Set and costume design: Carmencita Brojboiu.
Imola Kézdi (Hedda Gabler), Zsolt Bogdán (Jörgen Tesman), Anikó Pethő (Ms Elvsted), András Hatházi (Judge Brack), Ervin Szűcs (Ejlert Lövborg), Csilla Varga (Juliane Tesman), Réka Csutak (Berte).
Date of opening: 24th of January 2012

Kolozsvári Állami Magyar Színház [Hungarian Theatre of Cluj] はルーマニアのトランシルバニア地方 (ハンガリー系の住民が多い) の中心都市 Cluj-Napoka にある ハンガリー語による戯曲を主に上演する最も歴史のある劇団。 その劇団によるハンガリー語版 Hedda Gabler『第3回東京ミドルシアター・フェスティバル 国際演劇祭 イプセンの現在』 のプログラムの1つとして上演されたので、観てきました。 もちろん、この劇団も、この演出家が演出した作品を観るのも初めてです。 実は Hedda Gabler はあらすじ程度しか知らなかったのですが、 この舞台を観るまでこんなにメロドラマ的な要素があるとは思いませんでした。

1890年に出版された原作では舞台は19世紀後半のノルウェーですが、 衣装や音楽で作られるイメージはミッドセンチュリー (第二次大戦後、カウンターカルチャー前) のアメリカに置き換えられていました。 しかし、最初のうちはそんな置き換えの意味も感じられない脚本に沿ってセリフ主導で進む演出。 このような演劇は苦手なので、前半で帰ろうかと思うほどでした。 後から思えばこの段階は登場人物の設定紹介みたいなものなので、仕方ないでしょうか。 しかし、Lövborg が登場した所でぐっとメロドラマ的になって、これはソープオペラかと。 このあたりからユーモアも冴えてきて、特に陰気な女中 Berte が「家政婦は見た」的な役回りとなる所もツボにはまりました。 ということで、メロドラマ映画を観るかのように、最後までぐいぐい引き込まれて楽しんで観ることができました。

ソープオペラを意識した演出なんだろうとは思いつつ、ソープオペラには疎いので、むしろ、 戦前松竹メロドラマ映画 [関連する鑑賞メモ] に ありがちな登場人物設定や展開だなと思いつつ観ていました。 戦前松竹が映画化していたとしたら、 Gabler が桑野 通子、Elvsted が田中 絹代、Tesman が上原 謙、Lövborg が佐分利 信、Black は 河村 黎吉 か 奈良 真養、Berte は 飯田 蝶子 かな、とか。 しかし、ブルジョワの家庭を舞台として、スキャンダルを気にして、とかそういう展開は、 トーキーとなって小市民的な色が濃くなる1930年代後半ではなく、 1930年代前半サイレント期のメロドラマ [関連する鑑賞メモ] かな、とも。 なら、Hedda Gabler は八雲 美恵子、Elvsted は川崎 弘子、Tesman は鈴木 傳明、Lövborg は岡田 時彦でしょうか。 島津 保次郎や鈴木 傳明は小山内 薫 門下ですし、 Hedda Gabler などは当然踏まえたうえであのようなメロドラマ映画を作っていたのだろうなあ、と、今更ながら思ったりしました。

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実は、直前まで Royal Opera House CinemaCosì Fan Tutte と、どちらにするか迷っていました。 が、Royal Opera House Cinema の都内上映館はいずれも朝10時台の上映開始で、9時には出かけないと間に合いません。 土曜も朝から夜まで一日活動していて疲れていたので、さすがに起きれませんでした……。 けど、Hedda Kabler も楽しい舞台だったので、それもラッキーだったかな、と。

[3498] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Dec 12 22:13:21 2016

また2ヶ月ぶりになってしまったCD/DL聴取メモは、トルコの女性ハープ奏者のアルバムの紹介。

Eternal Love
(Kalan, 696, CD, 2015)
1)Şimdi 2)Bu aşk bir bahr-i ummandır 3)Bulan özünü gören yüzünü 4)Gel ey kardeş 5)Suzidil Mevlevi Ayini'nden bölüm 6)Arpistlere Suzidil 7)Acemaşiran Taksim 8)Acemaşiran Saz Semai 9)Aşkın ile aşıklar 10)Mini Mini Nihavend Peşrev 11)Hep ikilik birlik için 12)Ey aşık-ı dildade
Bora Uymaz (vokal), Şirin Pancaroğlu (Mandallı arp), Mehmet Yalgın (kemençe), Hasan Kiriş (tanbur), Orhun Yılmaz (ney), Volkan Ergen (perküsyon); Michel Godard (serpent, tuba, bas), Meriç Donük (Mandallı arp).

トルコの女性 harp 奏者 Şirin Pancaroğlu と男性歌手で作曲家でもある Bora Uyman による アナトリア (Anatolia) のスーフィー (Sufi) 音楽のプロジェクト Şimdi Ensemble。 といっても、bağlama 弾き語りのアシク (aşık) やハルク (halk) などよりも、 むしろ、ゆったりした節回しもクラシカルなサナート (sanat) に近く感じられる音楽だ。 Kalan らしい、おちついた演奏を聴かせるプロジェクトだ。 しかし、使っている楽器が少し変わっている。 kemençe, ney は馴染みがあるものだが、 Şirin Pancaroğlu の弾く harp は Mandallı arp とクレジットされている。 ブックレットの写真を見る限りでは concert harp ではなく、少々小ぶりな lever harp。 これが kanun の代わりのように使われている。 また、bağlama (saz) でも oud でもなく、丸い胴、細長いネックに5弦の tanbur が使われている。 さらに、jazz や classical の文脈で活動するフランスの tuba / serpent 奏者 Michel Godard が、ゲストで数曲参加している。 jazz 色はほんと無く、Godard がやっているヨーロッパの古楽プロジェクトのトルコ版のようにも感じられる時もあるアルバムだ。

(Kalan, no cat. no., CD, 2011)
1)Kırmızı Buğday 2)Bahçelerde Börülce 3)Başına Bağlamış Astar Doğaçlama 4)Başına Bağlamış Astar 5)Hicaz Mandira 6)Aşlamayı Aşladım 7)Şenlik Raksı 8)Gül Kuruttum 9)Kervan - Tini Mini Hanım 10)Al Fadimem Intro 11)Al Fadimem
Şirin Pancaroğlu (arp), Meriç Dönük (arp), Jarrod Cagwin (perküsyon); Arslan Hazreti (Azeri kemança) on 7; Erdem Helvacıoğlu (togaman gitarviol ve elektronikler) on 10; Dilek Türkan (vokal) on 10,11.

5年前になるが、Şimdi Ensemble の Şirin Pancaroğlu が、 やはり女性 harp 奏者の Meriç Dönük と制作したアルバム。 こちらはオリジナル曲で、写真で見る限り使っているのも concert harp のよう。 トルコの伝統的な旋法を使っていると思われる展開もあるが、harp の音色のせいかそんな節回しも軽く感じられる。 Rabih Abou-Khalil のアンサンブルで長年活動する打楽器奏者 Jarrod Cagwin による 軽快な響きの flame drum が刻むリズムが全面的に添えられている。 軽く明るい harp と flame drum の響きから、微かに東地中海の雰囲気が香るように感じられるアルバムだ。 ちなみに、収録曲 “Kervan - Tini Mini Hanım” のミュージックビデオも作られている [YouTube]。

10余年前に Doublemoon や Kalan といったレーベルをフォローしだした頃 [関連発言]、 Şirin Pancaroğlu & Ignace Jang: Kuyruklu Yıldız Altında (Doublemoon, dm0009, 2000, CD) を入手して聴いてみたのですが、これはかなりストレートに classical な作り。 その後、Şirin Pancaroğlu はフォローしていませんでした。 この2作は Michel Godard や Jarrod Cagwin の参加もあって聴いてみたのですが、 最初からこの路線の作品で出会いたかったものです。

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9月頃から音楽に対して前向きな気分になって、CD/DL聴取メモを少しずつでも書こうと思っていました。 しかし、10月11月は怒涛の舞台公演ラッシュ。 音楽のCD/DLもそれなりに新譜とか買っていたのですが、聴くのが精一杯。 このサイトに聴取メモを書く余裕など、なくなってしまったのでした。うーむ。

[3497] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Dec 11 23:56:16 2016

土曜の午後、上野で公演を観た後は、東池袋へ移動。晩にこの公演を観てきました。

Hommage à Dore Hoyer
スザンネ・リンケ 『ドーレ・ホイヤーに捧ぐ』
あうるすぽっと
2016/12/10, 19:00-20:50.
Afectos Humanos 『人間の激情』
Choreographed by Dore Hoyer (“Eitelkeit” 「虚栄心」, “Begierde” 「欲望」, “Angst” 「不安」, “Liebe” 「愛」), Susanne Linke (“Dolor” 「哀しみ」); Dore Hoyer premiere: 1962; Susanne Linke premiere: 1987.
Performer: Renate Graziadei.
Music: Dimitri Wiatowitsch; Video excerpts from “Dore Hoyer tanzt” (15 Feb 1967, Hessischer Rundfunk).
Affekte 『アフェクテ』
Choreographed by Susanne Linke, Urs Dietrich; Premiere: 1988.
Performers: Luiza Braz Batista, Paul Hess.
Music: Za Ondekoza [鬼太鼓座]: “Monochrome II”; J. S. Bach: “Gloria - Cum Sankt Spiritu, Mass in B Minor”.
Effekte 『エフェクテ』
Choreographed by Susanne Linke, Urs Dietrich; Premiere: 1991.
Performers: Lucyna Zwolinska, Sergey Zhukov.
Music: Wolfgang Bley-Borkowski; Pierre Henry: “Messe de Liverpool”, “Communion”; Giovanni Battista Pergolesi: “Stabat Mater Dolorosa”.

Mary Wigman に師事し、Pina Bausch 芸術監督時代の Folkwang Tanzstudio のダンサーだったこともあるという Susanne Linke による、 戦前の Neue Tanz の時代から戦後自死した1967年まで活動を続けた Dore Hoyer に捧げた作品。 Neue Tanz、表現主義のダンスは本だけでなく動画等で目にすることはありましたが [関連レビュー]、 それからコンテンポラリーダンスへの流れなどちゃんと追えているわけではないので、 再演とはいえ生の舞台を観られるということで、足を運んでみました。

休憩を挟んで前半は Afectos Humanos はソロ。 幾つかの「激情」をダンスで表現した小品を繋げたもので、 舞台上手脇に衣装をかけたハンガーラックを置き、 合間に舞台上でダンサーが着替えつつ、1967年当時の映像を上映していました。 生の演技は映像に比較的忠実に見え、「激情」というには淡々としたダンス。 表現されているはずの感情を受け取るというより、 あの 村山 知義 の写真となっているダンス [レビュー] も こんな感じだったのだろうか、などと思いつつ観ていました。

後半は男女デュオ2つで、前半とうって変わってコンテンポラリーダンスらしい作品。 Affekte は スーツ姿の男性にスリップドレス姿の女性の絡みにセクシーさもあって、最も楽しめました。 Pina Bausch にも似た印象も受ました。 また、舞台中央奥に衣装をかけたハンガーラックを置き、時々着替えつつ。 これも Linke が好んだ演出なのでしょうか。

Effekte は棒や畳大の半透明なプラスチック板、 大きいものでは一辺2m近くある様々なサイズのジュラルミンケース (一部はキャスター付き) を動かしながらのパフォーマンス。 ジュラルミンケースから取り出したリンゴでジャグリングする場面もまさにありましたが、 オブジェクトマニピュレーションで構成した作品。 こういうのは好きで、初演された1991年であれたとても楽しめたのではないかと思うのですが、 現在はコンテンポラリーサーカスの文脈でもっとアイデア富んだことやられてるので、逆に微妙に感じられてしまいました。

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F/T 2016 はこれでおしまい。 結局3公演を観たわけですが、とても良かったという程の作品には出会えず。 秋はシーズンで公演が目白押しで、むしろ、連携プログラムとなっていた公演の方の印象が強くて、 F/Tの印象が薄かったなあ、と。うーむ。

[3496] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Dec 11 21:23:13 2016

土曜は、午前中に所用を済ませて、午後には上野へ。この公演を観てきました。

東京文化会館 大ホール
2016/12/10, 15:00-16:50.
Music: Kris Defoort; Director: Guy Cassiers; Choreographer: Sidi Larbi Cherkaoui
Libretto: Guy Cassiers, Kris Defoort, Marianne Van Kerkhoven. Based on the book of the same name by Yasunari Kawabata (川端 康成 『眠れる美女』).
Actors: 長塚 京三 [Kyozo Nagatzuka], 原田 美枝子 [Mieko Harada]; Dancer: 伊藤 郁子 [Kaori Ito], Singers: Katrien Baerts (soprano), Omar Ebrahim (baritone); Chorus: 原 千裕, 林 よう子, 吉村 恵, 塩崎 めぐみ.
Musicians: 東京藝大シンフォニエッタ; Conductor: Patrick Davin.
World Premiere: May 8th 2009 at the Théatre Royal de la Monnaie / De Munt, Brussels.
Production: LOD muziektheater.

日本ベルギー友好150周年記念で上演されたオペラを観てきました。 といっても、2009年に作られた作品で、音楽は調性や一定のリズムなどほとんど感じられないもの。 歌唱のテクニックにオペラのものを使っているものの、19世紀的な意味でのオペラではなく、 歌ではなく台詞で進行する演劇の場面もあれば、オペラの場面ではダンスもあり、 オペラ、演劇、ダンスという要素を取り込んだ作品と言ってもいいかもしれません。

老人男性へ眠る裸の美女への添寝サービスを提供する館への主人公の男性の訪問を三夜で描いた作品です。 主人公と館の女主人のやりとりを演劇として俳優が演じ、主人公が眠れる美女と過ごす夜をオペラとダンスで演じました。 舞台美術は畳敷の方形のスペースと、後方に障子を巨大化したかのようなスクリーン。 スクリーン中段にダンス用の舞台が設けられていました。 ほとんど抽象化されたようなな映像の投影、暗い中に登場人物を浮かび上がらせるようなライティングなど、 現代的と感じさせるようなスタイリッシュな演出でしたが、引き込まれるような所が特に無いまま終わってしまいました。

この作品の一番の興味は、Sidi Larbi Cherkaoui [レビュー] の振付による 伊藤 郁女 [レビュー] のダンスでした。 といっても、俳優や歌手のいる所まで降りて踊ることなく、ほとんどエアリアルのパフォーマンス。 最初の2夜は大きな布をまとって宙釣りになってのもので、ティシューを使ったエアリアルのパフォーマンスのよう。 3夜目は半透明のスクリーンの後ろでシルエットとダンサーの身体が重なるようなパフォーマンス。 ここでも、後半、ロープを使ってのエアリアル的な動きを交えていました。 Philippe Decouflé [レビュー] が好みそうな エアリアルを交えたパフォーマンスは好きなのですが、 大掛かりなオペラの舞台の中に少々埋没してしまった感があったのは少々残念。

作曲・脚本を手がけた Kris Defoort は jazz/improv の文脈で知っていたミュージシャンで、 それも興味を引かれた理由でした。 そのイデオムを感じさせる展開もあるかと期待したのですが、そうでもありませんでした。 演劇で演じている場面で、微かに piano のソロが聞こえたような気がするのですが、 ひょっとしてこれは Defoort が弾いていたのでしょうか。

演目や出演者から客層が全く読めなかったのですが、招待客が多そうな感じで、 終演後ホワイエで立食パーティが開催されていたようですし、 実はメインは日本ベルギー友好150周年記念行事関係者向けのセレモーニーイベントだったのでしょうか。 にしても、今回、まさかの席ダブルブッキング。それも、自分だけでなく、周り数名いたようです。 ほぼ同等の代わりの席があったからよかったものの、こんなことは初めてでしょうか。 オンラインのチケットシステム使っていても、ある時はあるのでしょうか。

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先週土曜のミュージカルに続いて、また、びみょーな公演を観てしまいました。 まあ、ある程度覚悟して臨んでますが。 アタリの可能性が高いものばかり観ていると、どんどん好みが狭くなりますし、 たまにはいいかなと思いつつ、さすがに2週続けるものでもなかったかな、と……。ふむ。

[3495] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Dec 11 20:10:13 2016

火曜の晩、仕事のキリがいい所でついたので、仕事帰りに三軒茶屋へ。この舞台を観てきました。

ティージー スタン 『パブリック・エネミイ 人民の敵』
2016/12/06 19:00-20:50
text after Henrik Ibsen
by and with Jolente De Keersmaeker, Sara De Roo, Damiaan De Schrijver, Frank Vercruyssen, Robby Cleiren.
production and technique tg STAN
première of Dutch version 19 May 1993, Monty/Antwerpen 93, Antwerp.

2010年、2013年に続いて開催された 『第3回東京ミドルシアター・フェスティバル 国際演劇祭 イプセンの現在』。 そのプログラムの1つとして、ベルギーのカンパニー tg STAN による、 Henrik Ibsen: En Folkefiende (1882; 『人民の敵』) に基づく作品を観てきました。 カンパニーは初来日ではありませんが、自分が観るのはこれが初めて。

途中休憩挟んで前半と後半で机の配置を変えましたが、机を並べただけの舞台。 指示を出すようにト書を読む1人と、セリフを読む男女2人ずつの4人が、早口にオランダ語で戯曲を読み上げていきます。 主役の Dr. Thomas Stockmann のみ1人1役で、残りは1人数役。 早口というだけでなく、とちってやり直したし、自分の役を確認したり、早口で付いていけるかと観客に尋ねたり、日本語字幕を指差したり、と、 異化効果を狙った演出を入れ込んだドラマリーディングのような舞台でした。 かといって、物語に入れ込めなかったり、セリフが白々しく感じたりしたかというと、さほどでもなく、 むしろそうならないギリギリの線を狙ったかのようなパフォーマンスでした。

2010年にノルウェー Nationaltheatret (国立劇場) による Runar Hodne 演出の『人民の敵』を観ていますが [レビュー]、 そちらは、むしろダンスやフィジカルシアターを思わせる演出。 それを思い出しつつ、対極的な演出だなと思いつつ、興味深く観ることはできました。 そして、やはり自分の好みはフィジカルな表現なのだと再確認したようなところもありました。

東京ミドルシアター・フェスティバルというか国際イプセン演劇祭 (なぜか呼称が統一されていないのですが) は、 一応、2010年 [レビュー, レビュー]、 2013年 [レビュー] と観たので、 今回も1本くらいは観ておきたいと思っていました。 フェスティバルのようなきっかけでもないと演劇にはなかなか足を運ばないですし。 あと、tg STAN の Jolente De Keersmaeker は Rosas [レビュー] を主宰する Anne Teresa De Keersmaeker の妹。 どんな女優なのだろうという下世話な興味も少々あったりしました。 そんなことも、観に行くにはいいきっかけかな、と。

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[3494] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Dec 4 23:14:20 2016

土曜の午後、ミュージカルが夕方前には終わったので、横浜みなとみらいを展覧会巡りしてきました。

『ワンダリング・ポジション』
Yukinori Yanagi: Wandering Position
BankART Studio NYK 全館
2016/10/14-12/25, 11:00-19:00

1980年代から社会的なテーマのコンセプチャルな立体作品やインスタレーション、野外作品を制作してきた 柳 幸典 の30年の活動を回顧する展覧会。 今までも個展で観たことがあったが、個展でまとめて観るのは初めて。 薄いアクリルの箱に国旗や紙幣の模様になるよう詰めた色砂に蟻で巣穴を作らせた Ant Farm Project のシリーズなど、 このようなプロテストというか、社会的な問題へのアプローチの仕方も20世紀的と思うことしきり。 しかし、それでも、3階の新作「Icarus cell」や「Project God-zilla -Landscape with on Eye-」など良い作品もあった。

犬島アートプロジェクトのための作品という「Icarus cell」は何箇所も直角に折れ曲がった鋼鉄性の狭い通路で、その角に45度となるよう鏡が設置されている。 鏡の表面には 三島 由紀夫 の詩 「イカロス」 の一節が彫られていて、 鏡の反射で出口側の白い光を背景に詩の各節が並んで浮いているように見える。 その美しさも良いのですが、詩を読みながら歩を進めると、背景の白い光は天窓から取られたものだと、 つまり自分もイカロスのように太陽に向かって歩を進めていたことに気づかされるという。 ちなみに、帰りはフレアや黒点も見える望遠鏡で捉えた太陽の映像が背景となり、 よりはっきりコンセプトがわかるようになっていた。

「Project God-zilla -Landscape with on Eye-」は産業廃棄物というか廃材を積み上げたインスタレーション。 うす暗がりの中、大きく光る目玉を模った球が1つ埋め込まれることで、霊を吹き込まれるよう。 それが不気味でもあり、面白かった。

横浜美術館
2016/10/01-12/14 (水休; 11/4休), 10:00-18:00
Yinka Shiobare MBE, Yee I-Lann, Apichatpong Weerasethakul, UnDam Tran Nguyen, 石川 竜一 [Ishikawa Ryuichi], 田村 友一郎 [Tamura Yuichiro].

非欧米諸国出身のアーティストを取り上げ、 その出身国の社会的な問題をテーマにしたコンセプチャルな映像作品やインスタレーションを ギャラリーごとに並べていくような展示は、良くも悪くも現代美術の国際美術展という雰囲気。 少々空虚に感じられつつも、 暗闇の中に燃える扇風機の映像が浮かび上がる Apichatpong Weeraethakul の Fireworks (Fans) (2016) は美しかったし、 ホーチミンの街中でのパフォーマンスの様子を映像化した UnDam Tran Nguyen など、 ベトナムにもこういう作家がいたのかという発見はあった。

[このレビューのパーマリンク]

日曜は、家事などこなしつつも、休養にあてたのでした。

[3493] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Dec 4 19:42:21 2016

土曜は昼過ぎに横浜山下へ。この公演を観てきました。

KAAT神奈川芸術劇場 ホール
2016/12/03, 13:00-15:30.
原作: 楳図 かずお 『わたしは真悟』; 脚本: 谷 賢一; 脚本・演出: Philippe Decouflé; 音楽: トクマルシューゴ, 阿部 海太郎; 演出協力: 白井 晃.
Cast: 高畑 充希 (山本 真鈴), 門脇 麦 (近藤 悟), 小関 裕太 (ロビン), 大原 櫻子 (しずか), 成河 (真悟), etc
Musician: トオヤマタケオ, Open Reel Ensemble.
企画・制作: ホリプロ.

10月に素晴らしい公演 Contact で来日した Philippe Decouflé [レビュー] が演出を手がけたミュージシャルを観てきました。 芸能プロダクションの企画・制作によるミュージカルを観るのは初めてです。 Contact のようなめくるめくスペクタルを期待しましたが、それを期待した自分が間違い。 Cie DCA のようには身体能力の高いパフォーマーが揃わないということもあると思いますが、 予想以上に丁寧にストーリーや登場人物の内面を説明する演出で、 Decouflé の持ち味である幻惑的な演出があまり見られませんでした。 例えば、真悟の内面を「〜といいます」といちいちセリフで説明するという。 こういったものは象徴的なマイム、ダンスや照明などの演出を重ねて表現して欲しいところでしたが、 これもエンタテインメントの舞台としてわかりやすく作っていたということなのでしょうか。 最も Decouflé らしく感じたのは、最後のブランコの演出。 エアリアル・パフォーマーではないのでシンプルにブランコ揺らしているだけのものでしたが、 このような宙を舞う動きを象徴的に使いたかったのだろう、と。 また、そのネタをストレートに使ったりしてはいませんでしたが、 制作中に Decouflé がロボットレストランに行った理由が、わかったような気がしました。

コンテンポラリー・ダンスの振付・演出家を使った似たような企画のミュージナルとしては、 やはりホリプロの企画制作による Inbal Pinto & Avshalom Pollak [関連レビュー] 演出の『100万回生きたねこ』 (2013) があります。 こちらは気になっていたものの観ていないのですが。やはり、こんな感じなのでしょうか。

[このレビューのパーマリンク]

KAATはよく行く劇場ですが、いつも観ている公演とは客層が全く異なり、アウェー感。うむ。

And now for something completely different...

先週末、2016 NHK杯国際フィギュアスケート競技会 が開催されていました。 そのTV中継をNHKオンデマンドに載ったのがふと目に入ったので、夕食したりしながら観ていました。 さすがに全ては観ていませんが。 家にTVが無くなってからすっかり観なくなっていたので、久しぶりです。 選手が大きく入れ替わって、知らない選手がほとんど。逆に新鮮に観ることができました。

今年夏のリオ五輪の新体操団体では [関連発言]、 Le sacre du printemps などを使った Ballets Russes テーマの演技や、 Madonna: “Vogue” を音楽に使って Vogueing な動きを取り入れた演技がありました。 それに比べると、自分が観た範囲では、全体として選曲や演出が保守的に感じられました。

そんな中で目に止まったのが、女子シングル、ロシアの Мария Сотскова [Maria Sotskova]。 ショートプログラム (SP) [YouTube]、 フリースケーティング (FS) [YouTube] 共に 音楽に Альфред Шнитке [Alfred Schnittke] の曲を使ってました。 特に SP の中盤では Concerto Grosso No. 1 (1977) が使われ、 歪みながら切り裂くような Gidon Kremer の (ものと思われる) violin の音が飛び交うなかを滑るという。 背丈があり首手足の長い Сотскова はなめらかで優美な動きも映えて、 Шнитке の音楽を使ってることを忘れさせるほどエレガントな演技になっていました。 また、同じ作曲家を使っていることからもわかるようにSPとFSで2幕物で、 第1幕が蛹からの羽化、第2幕が蝶として舞うという構成になっています。 Шнитке の音楽を使いこなし2幕物として演じることができるだけの表現力のあるスケーターだと、とても気に入ってしまいました。

しかし、ソ連時代は反体制派として迫害されていた Шнитке の曲で、 ЦСКА Москва (モスクワ中央陸軍スポーツクラブ、ex-赤軍スポーツクラブ) 所属のスケーターが滑る、 というのは感慨深いものがあります。ソ連時代は遠くになりにけり、ということでしょうか。

彼女の以前はどんな演技をしていたのだろう、と過去の映像を見てみたのですが、 去年のFS [YouTube] は Sergei Prokofiev のバレエ音楽 Romeo and Juliet で滑ったんですね。 それも、コーチではなく本人のアイデアで、「ずっと Romeo and Juliet で滑るのが夢だった」と インタビューで言っていたという話しも目にします [関連ツイート]。 バレエの素養もかなりあるんでしょうか。 エレガントな彼女の動きであれば Romeo and Juliet ではなく 19世紀ロマンチックなバレエ音楽で演技しても様になりそうです。 ちなみに、SP [YouTube] の音楽は、 Santana の “Black Magic Woman” (オリジナルは Fleetwood Mac)。 フィギュアスケートではあまり使われてこなかったような曲で、 前半はまだしも後半は曲がスピードアップして、合わせづらそうな曲をよく選んだなあ、と。 さらにその前、2013-14年のFS [YouTube] では、 映画 Pina [レビュー] のサントラを使っていました。 といっても、Pina Bausch Tanztheater Wuppertal のダンスのようにスケーティングしたわけではないですが。 やっぱり、Pina Bausch のダンスも好きだったりするのかな、と。

女子シングルに Мария Сотскова というお気に入りとなるスケーターを見つけることができましたが、 種目としてはやはりアイスダンスが好きです。 ジャンプやスピンで派手な大技があるわけではないですが、 20〜30歳代のスケーターが中心で、他の種目より表現力が感じられ、大人の美しさやユーモアが楽しめるように思います。 ペアによって持ち味の方向性が違い比較し難く、 Gabriella Papadakis - Guillaume Cizeron の美しいダンスなども好きですが、 特に、マイムも駆使してストーリー性の高い演技をするイタリアの Anna Cappellini - Luca Lanotte 組は素晴らしいです。 ほぼ道化芝居なエキシビジョン (EX) の “Tango Lesson” [YouTube] も好きですが、 フリーダンス (FD) [YouTube] が素晴らしい。 “Charlie Chaplin Medley” ということで、 音楽は Limelight (1952) のものがメインでしたが、 キャラクターとストーリーはサウンド版として作られたサイレント期の名作 City Lights (1931) に基づくプログラム。 単にコミカルなだけでなく、元の Chaplin の映画にあったロマンチックな要素や切なさまで表現していました。 2人がキャラクタを演じきっていたというだけでなく、 いかにも目が見えないという演技でではなく、前半の要所での視線の合わなさで目が見えないということを演出していました。 このような演技をエキシビジョンではなく競技でできるというのも、素晴らしいです。

競争が激しく観戦チケットを取るのが難しいと言われるフィギュアスケートですが、 アイスダンスの時の観客席には空席が目立ちました。 TVでもあまり放送されませんし、人気が無いのでしょうが、もったいないものです。 そんな人気の無さはさておき、Anna Cappellini - Luca Lanotte 組とか観ていると、 昔の日本映画の映画音楽を使って映画をオマージュするようなプログラムを作るようなフィギュアスケート選手が日本から出て来てきたらなあ、と思ってしまいます。

[3492] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Nov 28 22:22:49 2016

再び一週間空きましたが、11月4, 5日に観てきた 大道芸ワールドカップ in 静岡 2016 の話の続き、2日目です。これで完結です。

11/05 11:30〜 @ どき!どき!ランドSBS

曲も自作している日本のパフォーマーによる、 robot dance というか robot mime を物語仕立てで。 単調な日常生活を生きることはロボットのようという素朴な日常の実感を、 Jポップ 風の自作歌に乗せていたせいか、キッチュな印象。

Emily & Menno van Dyke: Juggling Tango
11/05 12:00〜 @ どき!どき!ランドSBS

フランス出身の女性バレエダンサーとオランダ出身の男性ジャグラーのデュオ Emily & Menno van Dyke。 Astor Piazolla らしきシャーブな演奏の音楽に乗って、 流れるように華麗でキレのいい tango を踊りながらのジャグリング。 オーソドックスな演出ですが、動きが美しく、引き込まれました。

11/05 12:30〜 @ 沈床園

アメリカを拠点に活動するサーカス一家出身の Fabio と Giuliano の兄弟。 静岡には2010年に出場しているとのことですが、今回観るのが初めて。 壺とかではなく人を回す足芸です。 ハイテンションな音楽に乗って超絶技見せるだけでしたが、見ごたえはありました。

うつしおみ
11/05 13:30〜 @ 富士見芝生広場

日本のカンパニー ながめくらしつ を主宰するジャグラー 目黒 陽介 と エアリアリスト 長谷川 愛実 の男女デュオ。 今年も海外のパフォーマーと混じって、エアリアルを集めたステージに登場。

当日風が強かったせいかディアボロとリングの組み合わせなどを外してきましたが、 去年 [写真] から構成を大きく変えていませんでした。

Aerial Raja
11/05 13:30〜 @ 富士見芝生広場

タイ出身の男性エアリアル・パフォーマーによるティシューのソロ。 ティシューの男女ペアや女性のソロは観たことありましたが、男性のソロは初めて。 ストーリー性などの無いオーソドックスな演出で、 最初は女性ソロと変わらない繊細な演技に感じましたが、次第にダイナミックに。

Aurélie Dauphin
11/05 14:30〜 @ 富士見芝生広場

昨年 [写真] に引き続き、 フランスのエアリアル・パフォーマー Aurélie Dauphin も登場。

昨年と同じ演目で、 イルカもしくはクジラをイメージしたと思われる海の生き物と、 彼らが海洋汚染の犠牲となる (海の塵で身動き取れずに死ぬ) というストーリーを、 ティシューのエアリアルで表現。

Trinh Tra My
11/05 15:00〜 @ 富士見芝生広場

ベトナムのバランス芸とエアリアルの女性パフォーマー。 難易度の高い技をしっかり見せるだけのオーソドックスな演出でした。 まずは地上で、トゥシューズでつま先立ちで歩きながら、 concertina を弾きつつ、口に咥えたナイフの上にグラスの塔を乗せるというバランス芸。

続いて、短剣の咥えてその剣先に長剣をバランスする芸をしながらの、ティシューのエアリアル。 強風に煽られながらのパフォーマンスには、さすがにハラハラしました。

11/05 15:30〜 @ 沈床園

日本の大道芸フェスでもお馴染み、日本のマイム・パフォーマー 山本 光洋。 ちゃんと観たのは久しぶりでしょうか [写真]。 観客2人をステージに上げて拳銃決闘をコミカルに演じさせる芸に多めの時間を割いていたように感じました。 最後は、やはり、「チャーリー山本」。このネタは大好きです。今回は吹き矢に挑戦してました。

11/05 16:00〜 @ 沈床園

スペシャルプログラム「Clown on the street 路上の道化師たち」の枠で出場した ベルギーのクラウン4人組。 破局戦争後の世界で美しい物を探して回っている部隊の4人組という設定で、 客いじりはあまりせずに、コミカルな寸劇といったところ。 ピンとこなかったのですが、後ろにいたフランス語話者な方々に大ウケしてたので、言葉や文化的背景の違いで伝わらないものがあったのでしょうか。

El Gran Dimitri
11/05 16:30〜 @ 児童公園

続けてスペシャルプログラム「Clown on the street 路上の道化師たち」の枠で出場した スペインのクラウン El Gran Dimitri こと Antonio J. Gómez。 下手くそマジックショー仕立てのクラウンショーでした。

11/05 17:00〜 @ 児童公園

日本の女性手品師による、伝統芸としての江戸手妻ではなく、和風手品。 派手な音や光の演出はなく、和装でゆったり落ち着いた優雅な動きで手品を見せました。

このような落ち着いた演出は良いと思うのですが、 これで音楽が Kenny G 風の sax の入ったスムースジャズだったりJポップバラードだったりすると、 一気にキッチュになってしまいます (このパフォーマンスに限りませんが)。 このようなキッチュな日本趣味が、 めりこと同様、セルフオリエンタリズムのように感じられてしまう一因でしょうか。

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なんとか11月中に書き上げることができました。ふう。

[3491] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Nov 27 23:22:18 2016

土曜は昼前には家を出て日本橋へ。この舞台のライブビューイングを観てきました。

『ノルマ』
Live from the Royal Opera House, 2016-09-26, 19:15-22:35 BST.
Music: Vincenzo Bellini; Libretto: Felice Romani; Director: Àlex Ollé; Set designer: Alfons Flores.
Performers: Sonya Yoncheva (Norma), Joseph Calleja (Pollione), Sonia Ganassi (Adalgisa), Brindley Sherratt (Oroveso), David Junghoon Kim (Flavio), Vlada Borovko (Clotilde), Niamh Worrell and Matteo di Lorenzo (Norma's Children), etc
Antonio Pappano (conductor), Orchestra and Chorus of the Royal Opera House, Covent Garden.
上映: TOHOシネマズ日本橋, 2016-11-26 12:20-16:00 JST.

Royal Opera House Cinema Season 2016/17 が始まりましたが、 その第一弾、オペラ Norma を観てきました。 Norma は1831年にミラノ・スカラ座で初演された Vincenzo Bellini による2幕のベルカントオペラで、 その主役 Norma は Maria Callas が得意とした役として知られます。 しかし、そういった点よりも、大規模や野外パフォーマンスを得意とするカタルーニャのバルセロナを拠点に活動するカンパニー La Fura dels Baus の Àlex Ollé による新演出、 という点に惹かれて足を運んでみました。

作品の舞台は紀元前の古代ローマ占領下のガリア、 その地のケルト人の宗教 (ドルイド教) の巫女の長 Norma を主人公とする物語です。 歌詞などはそのままに、舞台を現代に移し、宗教をカトリック (それもラテンアメリカにありそうな反政府の準軍事セクト) として翻案しての演出がされていました。 大量の十字架で森を作るかのような舞台美術は神聖さというより禍々しさを感じるもの。 第1幕は現代的なイメージというよりも、カトリックの儀式のイメージを強く出した演出で、 そのバックグランドに疎いところもあって、さほどピンときませんでした。 第1場は三角関係ローマの総督 Pollione、ドルイド教の巫女の長 Norma、Norma の侍女の巫女 Adalgisa の関係を説明するような展開で、 第2場に入って3人鉢合わせての修羅場の場面になっても、苦笑いしながら観ていました。

第2幕になると、現代的な子供部屋が舞台にあり、そこに母の帰りを待ちくたびれてソファで寝てしまった2人の子。 そこに、仕事が遅くなって疲れて帰ったかのようなパンツスーツ姿の Norma が登場。 子供を殺そうとする場面も、歌詞はそうではないのに、まるで子育てに苦悩するシングルマザーのイメージのようで、ガツンとやられてしまいました。 再び十字架の森に戻っての、その後のケルト人のローマに対する蜂起も、現代における圧政を行う政府に対する反政府組織の武装蜂起のようなイメージで演出。 物語としての整合性は別として強烈なイメージに引き込まれました。 子供に対する葛藤、裏切られた女性同士の友情、最後の自己犠牲と、これでもかと泣かせる展開にやられました。

2年余り前から戦前松竹メロドラマ映画をよく観ているいるわけですが [関連する鑑賞メモ]、 そういった映画でありがちなパターンが次々と出てきました。 三角関係の修羅場の場面はもちろん、 互いにライバル関係にあることを知らずに一方が恋心をもう一方に打ち明けてしまう場面や、 ライバルの2人の女性の間の友情など。 オペラは20世紀娯楽映画のルーツとは言われますが [関連する鑑賞メモ]、 戦前松竹メロドラマ映画のお約束パターンのルーツを観るようでもありました。

演出は期待したほど凄いとは感じませんでしたが、 それもオペラ歌手のアップが多いカメラワークのせいかもしれません。 例えば、第1幕第2場の Norma が “Casta Diva” を歌う場面、舞台上、背丈大の巨大な香炉が吊るされ振られていたのですが、 ほとんど Norma がアップが移っていました。 薄明かりの中で香炉が煙をたなびかせつつ揺れる様を引いたカメラで見ながら “Casta Diva” が聴けたら、 もっと神聖な雰囲気が味わえたのではないか、と、思ったりしました。

この新演出 Norma は、元々 Anna Netrebko の Norma を想定して制作されていたものの、 Netrebko が降りて Sonya Yoncheva が Norma に配役されたという経緯があります [The Guardian の記事]。 オペラ俳優に詳しくないので他との優劣などは判断しかねますが、 Sonya Yoncheva は少し陰のある凛々しさを出していて、代役を感じさせない素晴らしさでした。 前半の宗教的な服装より、後半のパンススーツ姿が良かったなあ、と。

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ちなみに、Royal Opera House Cinema Season 2016/17、次は Così fan tutte。 演出の Jan Philipp Gloger ってどういう人だろうとチェックしたら、 学生時代に Rimini Protokoll [鑑賞メモ] のアシスタントしていた、なんてこと事が書かれていて、大変に気になります。 しかし、上映が予定されている週末 (12月10,11日) は 既に (コンテンポラリーな) オペラとコンテンポラリーダンスの2本観る予定が……。うーむ。

Sonya YonchevaMetropolitan Opera: La Traviata で Violetta をやるのか。 これも、4月にライブビューイングをやるので観に行ってしまいそうだ……。

Metropolitan Opera がライブビューイング (これは和製英語なのでカタカナで書きます。 Wikipedia のエントリでは Event cinema) を始めたのは2006年。 その後、Royal Opera House や Royal National Theatre なども追随して、現在に至るわけですが、 当初は自分の守備範囲外で、 初めて観たのは2014年の Royal Ballet: The Winter's Tale。 まさか、これほど度々、ライブビューイングを観に行くようになるとは、我ながら思いませんでした。 今年はこれで7本目。 それも、バレエではなく演劇やオペラをここまで観るようになるとは。自分の趣味も変わったものです。

日曜は小雨がちの天気。無理せずに休養に充てたのでした。

[3490] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Nov 27 21:24:07 2016

水曜祝日 (勤労感謝の日) は昼に一件用事を済ませ、夕方に小竹向原へ。このライブを観てきました。

Bobo Stenson Trio
安養院 瑠璃光堂 (板橋区 小竹向原)
2016/11/23, 17:30-19:30
Bobo Stenson (piano), Anders Jormin (bass), Jon Fält (drums).

Bobo Stenson は jazz の文脈で活動するスウェーデンの piano 奏者。 1970年代の Jan Garbarek との Quartet など、 その初期から ECM レーベルに録音を残してきています。 昔に Charles Lloyd のサイドメンとして来日したことがあるとのことですが、リーダーとしては初来日。 そんな Bobo Stenson の2000年代に入ってからのレギュラーの trio での来日ライブを聴いてきました。もちろん、ライブで聴くのは初めて。 3人ともスェーデンのミュージシャンで、 Anders Jormin は1980年代から Stenson と共演を重ねてきた bass 奏者、Jon Fält は1979年生の若手 drums 奏者です。 会場は9月に Elina Duni Quartet のライブをやった安養院 瑠璃光堂 [レビュー]。 途中休憩無しでアンコール1回の2時間弱の演奏でした。

最初の2曲は繊細な piano のフレーズにソフトにリズムを添えるような展開で、少々退屈しました。 3曲目に Jon Fält が thumb piano を弾ひきつつ drums を叩くような展開になってから、 綺麗な piano の音とチューンされてない thumb piano の音にコントラストもあって、ぐっと良くなりました。 以降、Fält は割り箸をバキバキと折ったり、紐の先に笛のようなものを付けたものを回したりと、少々アウトな演奏も。 Stenson や Jormin はそれに合わせせてドシャメシャな演奏となることはありませんでしたが、 流麗な演奏に留まらず、内部奏法、特殊奏法も含めてシャーブな音出しも聴かせました。 Stenson と Jormin の演奏はさすがにベテランならではの落ち着きも感じさせるものでしたが、 Fält がいることで大物の保守的な piano trio にならずに済んでいるのかもしれない、と思ったりもしました。

Elina Duni Quartet の時と同じように予約無しで行っても大丈夫かと思いつつ、 1週間前に予約したら、100席限定のかなり後ろの方になってしまいました。 当日は会場に観客がぎっしり。 料金も Elina Duni の倍以上取っていたにもかかわらず、 Elina Duni Quartet の時の4〜5倍は入っていたでしょうか。 Bobo Stenson のネームバリューもあるかと思いますが、piano trio 人気を見せつけられたようにも感じました。 これだけの集客力があるのであれば、ちゃんとプロモーションもして草月ホールくらいの規模のホールでコンサートしても良かったのではないか、と思ったりしました。

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[3489] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Nov 20 22:38:08 2016

一週間空きましたが、11月4, 5日に観てきた 大道芸ワールドカップ in 静岡 2016 の話の続き。1日目の後半です。

11/04 16:30〜 @ 富士見芝生広場

7本バトンを得意技とするフランスの女性ジャグラー。 去年も静岡に来ていましたが観られず、今回初めて観ました。 ここでは高度な技を見せるというより、女性的なキャラクタを押し出したパフォーマンス。 上品な淑女な設定はジャグラーにしては珍しいな、と思いつつ観ていたら、 最後に衣装変わりして、ハイテンションなジャグリングでフィニッシュ。

Cie L'Arbre à Vache: M et Mme Poiseau
11/04 17:00〜 @ 二の丸
Ecriture: Léa Blanche Bernard et Louis Grison.
Jeu: Louis Grison et Macha Léon.
Direction d'acteur: Antoine Boulin.
Création 2013.

フランスのジロンド地方で2007年に結成されたカンパニーによる2013年に制作された路上劇。 老カップルのぎこちなく冴えない誕生日を描いた小一時間ほどのコミカルなマイム劇でした。 最後には男性が斃れてしまうのですが、大きな袋に入って花火を使って葬送すると、二人とも若返ってハッピーエンド。

雰囲気は楽しめましたが、客弄りはさほど行わず、屋外ならではの演出はあまり感じられず。 小劇場で上演してもよさそうな作品でした。

2001,2002年の L'Éléphant Vert: Faunèmes [写真] や、 2005年の Avanti Display: Mr. Lucky's Party [写真] など、 10年前余り前はこのような路上劇が度々来ていたのですが、近年は来なくなっていました。復活は歓迎です。

ところで、男女カップルの冴えないパーティで始まって、最後にパッと若返ってハッピーエンドいうプロットは、 Avanti Display: Mr. Lucky's Party と同じ。 一つの類型というか、お約束のパターンのようにも思われるのですが、何か元となるものがあるのでしょうか。 同じようなパターンの話でも、フランスのカンパニーとイギリスのカンパニーでは雰囲気が違い、そこにお国柄を見るようでもありました。

11/04 18:00頃 @ 富士見芝生広場前

フランス・オクシタニアのモンペリエを拠点に活動するダンスカンパニー Cie Didier Théron。 あいちトリエンナーレ2016で Air上演したその足で、静岡にも登場。 Air の格好でのウォーキング・アクト。 空気で膨らんだピンクの衣装を着て、跳ねるように踊りながら、あっというまに通り過ぎて行ってしまいました。 移動中だったのでしょうか。

11/04 18:00〜 @ メイン広場1

大道芸を主な活動場所とする日本人ポールダンサー めりこ。 井原 西鶴 『好色五人女』で取り上げられて有名になった「八百屋お七」の物語を使って、 恋仲の寺小姓との逢いたさに放火する所をファイアダンスに、磔をポールダンスとして構成。

「八百屋お七」のような古典を参照するのは良いアイデアだとは思うものの、 音楽使いや和装テイストの衣装もあってか、逆にキッチュな日本趣味というか、セルフオリエンタリズムのように感じられてしまいました。

Isaac Aborah
11/04 18:30〜 @ どき!どき!ランドSBS

西アフリカ・ガーナ出身の Isaac Aborah による皿回しならぬ大盥回し。 Highlife でも Ghana funk でもなく、guitar のリフも軽快な Congolose rumba 風の音楽にのって、ノリノリのパフォーマンス。

2007年に Ndux Malax 名義で出場していた3人組 [写真] のうちの1人だと思うのですが、確認できませんでした。

11/04 19:30〜 @ メイン広場2

アルゼンチン出身で、スペイン・カタルーニャ州バルセロナを拠点に活動するアクロバッドの男女デュオ Duo Laos。 アクロバティックにタンゴを踊る所からはじまり、そのままタンゴ仕立てで行くかと思いきや、 後半はオーソドックスな演出のロマンチックなハンド・トゥ・ハンドのアクロバット。 特に女性の姿勢、手足の動きやポーズがとても綺麗で、雰囲気も良かったです。

11/04 19:30〜 @ キッズガーデン

帰り際に夜のテントにも立ち寄ってみました。 ティシューのエアリアルのデュオもあったりと、夜の方がちょっと演目多く時間は長め。 緩く和やかな雰囲気な雰囲気は相変わらずながら、ちょっと情感も加わったでしょうか。

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2日目の話は、また、来週末でしょうか……。

[3488] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Nov 20 19:28:56 2016

土曜朝から雨降る寒い一日。雨が少し残っていたものの、 午後は大家さん方面の友人と日本民芸館へ行き、駒場界隈を散策。 一旦帰って、晩に新宿へ行って、このライヴを観てきました。

Karl Seglem Acoustic Quartet
新宿 Pit Inn
2016/11/19, 20:00-22:15
Karl Seglem Acoustic Quartet: Karl Seglem (tenor saxophone, goat horn, voice), Andreas Ulvo (piano), Sigurd Hole (bass), Jonas Howden Sjøvaag (drums)
opening act: 鈴木 生子 (bass clarinet), 原 洋子 (voice).

Karl Seglem はノルウェーの saxophone / goat horn [山羊の角笛] 奏者。 1991年にレーベル NORCD を設立し、 Terje Isungset [レビュー] との Isglem や Utla など、 ノルウェーの folk と jazz/improv を抽象化したような音楽性で活動してきた。 そんな Seglem が、ノルウェーの piano trio Eple Trio を従えた形となる Acoustic Quartet で初来日した。 この晩は、約30分のオープニングアクトの後、 アンコール1回を含めて途中休憩なしの約1時間半、 3枚のアルバムからだけでなく新曲も含めて演奏をした。

ノルウェーの folk のメロディを使いつつ、 編成からもかわるとおり jazz のイデオムの強い演奏をする quartet で、 Seglem が saxophone で folk 的なメロディをはっきり吹くときなど保守的な印象。 しかし、角笛に持ち替えたときなど、雰囲気は一転。 角笛や saxophone のテクスチャ成分の多めの音に対して、 drums と内部奏法も駆使した piano とが細かく post-techno/electronica なリズムを繰り出してくる。 そんな、2面を行き来するようなライブだった。 やはり、角笛を吹いている抽象的な folk の展開のときの方が良かったので、Terje Isungset との Isglem や、 Håkon Høgemo の hardingfele が参加した Utla などの編成を是非観てみたいとも思った。

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それ以前からちょっと怪しかったのですが、木曜にはすっかり風邪で発熱はほとんど無いものの体調不良。 土曜が少し無理だったか、日曜は使い物になりませんでした。