TFJ's Sidewalk Cafe >

談話室 / Conversation Room

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[3800] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 15 19:21:07 2019

11月30日土曜の話の続き。 神奈川県民ホールギャラリーでの昼過ぎに展覧会を観た後、晩のパフォーマンスまでの時間、桜木町というか紅葉坂へ移動。 このコンサートというかパフォーマンスを観てきました。

Arditti Quartet × Kenta Kojiri
神奈川県立音楽堂
2019/11/30, 15:00-16:30.
Arditti Quartet: Irvine Arditti (1st violin), Ashot Sarkissjan (2nd violin), Ralf Ehlers (viola), Lucas Fels (violoncello).
小㞍 健太 [Kenta Kojiri] (choreography/dance).
1)西村 朗:弦楽四重奏曲 第6番〈朱雀〉 [Akira Nishimura: String Quartet No. 6 “Suzaku - The Vermilion Bird”] (2017)
2)細川 俊夫:パッサージュ(通り道)〜弦楽四重奏のための [Toshio Hosokawa: Passage for String Quartet] (2019)
3)Wolfgang Rihm: Geste zu Vedova [「Geste zu Vedova〜ヴェドヴァを讃えて」] (2015)
4)Wolfgang Rihm: String Quartet No. 3 “Im innersten” [弦楽四重奏曲 第3番〈胸裡〉]

特に欧州の前衛の現代音楽を得意とするイギリスの弦楽四重奏団 Arditti Quartet の来日公演を聴いてきました。 彼らの演奏を収録したCDは十数枚は持っていますが、 コンサートで聴くのは2000年 [鑑賞メモ] 以来なので約20年ぶり。 その時からは Arditti 以外はすっかり入れ替わってます。 今回は、演奏される曲への興味というより、 2003-2015にオランダの Nederlands Dans Theater [関連する鑑賞メモ] に在籍し、現在は Opto を主宰するなど、 コンテンポラリーダンスの文脈で活動する振付家ダンサー 小㞍 健太 との共演に興味を引かれて、足を運んでみました。

ホワイエで小㞍による「インスタレーション」があるという話だったので、早めに会場に行って暫くすると、黒いTシャツパンツ姿の 小㞍 が登場。 開演待ちをする観客たちの合間で踊り出しました。 客弄りするほどではありませんでしたが、強いオーラでステージ的な空間を作り出すことなく、 客の間を移動しつつ、その姿勢で空間を変えていきました。 時折、笑顔を見せる時もあり、観客を化かす道化のように感じられました。 ストールに座って貰ったフライヤの整理をしていたので、そのまま座って観ていたら、小㞍さんに隣に座られてしまいました。 変に逃げるわけにもいかないので、大人しく座っていたら、「素敵な服ですね」と声をかけられたり。

コンサートの前半は、ダンスとの共演なして、日本の作曲家の2曲を演奏しました。 最近、このタイプの音楽から遠ざかっていることもあり捉えどころ無かったのですが、 あからさまに日本的な音階というわけではないものの、ポルタメントも使った音階の移動などに、ふと日本的な雰囲気を感じたりしました。

後半はダンスとの共演で、ドイツの作曲家 Wolfgang Rihm の2曲を演奏しました。 クラシック音楽の専用のホールでダンス等の上演は想定されていない作りの舞台ですが、 上手半分で正方形のマットの上でダンス、下手半分で演奏、と、分かれて並置するよう。 共演ならではの演出の妙は無さそうなセッティングでしたが、実際に始まってみると、 ダンス側の後方に置いた4枚の鏡でそれぞれズレた角度からダンサーを映し出したり、 演奏してる側の背景にシルエットを映したり、と、干渉は避けつつも単なる並置とは違う仕掛けが感じられました。 開演前にホワイエで上映されていたスタディの際の映像に引きづられたかもしれませんが、 1曲目の Geste zu Vedova の時は、 音楽の構造を視覚化するというか、4つの弦楽器の音の緊張関係を体で示すかのよう。 しかし、2曲目の “Im innersten” になると、音楽もときおり旋律が浮かび上がるようになり、 ダンスも音楽の視覚化というより、マイム的な動きも交え表情もドラマチックに怒りや苦悩を描くよう。 そんな変化も印象に残ったパフォーマンスでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3799] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Dec 9 22:35:19 2019

11月30日土曜は昼過ぎに横浜山下町へ、この展覧会を観てきました。一旦会場を離れたのですが、晩に戻ってパフォーマンスも観ました。

Miwa Yanagi: Myth Machines
神奈川県民ホール ギャラリー
2019/10/20-12/01 (木休), 10:00-18:00 (11/30,12/01 -17:00).

最初期1990年代の《エレベーター・ガール》から、 2016年以降に取り組んでいる写真《女神と男神が桃の木の下で別れる》や、 2019年の「モバイル・シアター・プロジェクト」と呼んでいるマシンを使ったインスタレーション《神話機械》、 演劇プロジェクトの資料を含む、やなぎみわ の今までの活動を辿る回顧展的な個展です。 個展は10年はぶりということで、 最近は演劇プロジェクトを観ることはあれど [鑑賞メモ]、 美術展で作品を観るのは企画展の中で1作品を観る程度。 自分が個展で観るのはひょっとして1997年の水戸芸術館のクリテリオム [鑑賞メモ] 以来でしょうか。

物語的な時間を感じさせない《エレベーター・ガール》は好きだったのですが、 コンセプチャルながらナラティブな演出写真になった《マイ・グランドマザーズ》や《フェアリー・テール》は今から振り返ると過渡期だったのかも知れません。 もともと演劇的な資質を持っていたのか、演出写真よりも演劇プロジェクトでそそれが生きているように感じました。 「モバイル・シアター・プロジェクト」は新作の《神話機械》は高専や高校の生徒と制作した手作り感溢れるロボットを使ったインスタレーション作品。 常に動態で展示しておらず「無人上演」として、時々ロボットが録音されたセリフを流しながら動く様子を見せていましたが、 Heiner Müller の日本語訳テキストとの関係はさておき、 ユーモラスな一方不気味さもあって人が演じない分だけクールで突き放したようにも感じられた所が好みでした。 その一方で、人を写した演出写真ではなく、福島の桃を夜に撮影した《女神と男神が桃の木の下で別れる》については、 画面の中でのナラティブさが後退し過ぎて、意図を掴みかねました。

この展覧会は11月29, 30日にライブ・パフォーマンスがありました。 ということで、ライブ・パフォーマンスに日程を合わせ、その昼に展覧会を観たのでした。

神奈川県民ホール ギャラリー
2019/11/30, 19:30-20:30.
構成・演出: やなぎみわ.
原作: ウィリアム・シェイクスピア [William Shakespeare], ハイナー・ミューラー [Heiner Müller].
作品引用: ウィリアム・シェイスクピア 『ハムレット』 (Hamlet), ハイナー・ミューラー 『ハムレットマシーン』 (Hamletmaschine; 訳: 岩淵 達治, 谷川 道子; 未來社), ハイナー・ミューラー 『メディアマテリアル』 (Medeamaterial; 訳: 岩淵 達治, 越部 遥, 谷川 道子; 未來社).
メインマシン《タレイア》 実機制作: 政岡 恵太朗, 宅和 広樹.
振動マシン《テルプシコラー》 香川高等専門学校機械電子工学科逸見研究室.
のたうちマシン《メルポネメー》 群馬高等専門学校機械工学科ロボット工学研究室.
投擲マシン《ムネーメー》 福島県立福島工業高等学校.
髑髏制作: 京都造形芸術大学 ウルトラプロジェクト.

演劇プロジェクトではなく、展覧会中のライブパフォーマンスとしての上演ということで、 演劇色薄いパフォーマンスを予想していました。 しかし、小劇場や商業演劇を思わせる口調や演技を伴う熱演による一人芝居でした。 やなぎみわ演劇プロジェクトでも演劇の演出は結構ベタなものなので、後から思えば意外でもなかったのですが、 昼に先に無人公演を観ていて、その突き放したクールさを気に入っていたので、 演技に最後まで違和感を覚えて演じられた世界に入り込めないまま終わってしまいました。 こういう時もあるでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

展覧会を観た後、一旦移動して観たコンサートについては、また後ほど。

[3798] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 8 19:39:31 2019

冷たい雨降る11月23日土曜は午後に千葉へ。この展覧会を観てきました。

『非常にはっきりとわからない』
千葉市美術館
2019/11/02-12/28 (11/5,11,18,25,12/2,9,16,23休), 10:00-18:00 (金土10:00-20:00).
目: 南川 憲二 (ディレクター), 荒神 明香 (アーティスト), 増井 宏文 (インストーラー).

鑑賞者に幻惑させるような体験をさせる空間インスタレーションで知られる 2012年に活動を開始した3人組アートユニット 目 [め] の個展です。 『たよりない現実、この世界の在りか』 (資生堂ギャラリー, 2014) [鑑賞メモ] の印象も強いものでしたが、 その後、「ワームホールとしての東京」 (『“TOKYO”——見えない都市を見せる (Tokyo Art Meeting VI)』東京都現代美術館, 2015-2016) [鑑賞メモ] しか観る機会が無く、久しぶりに体験することができました。

作り込んだ空間と外部の間の移行的な導入部に養生などで作業中を思わせるような空間を置くというのは、 『たよりない現実、この世界の在りか』でもそうでしたが、 今回は一階の入口、通路やホールを養生し、美術品の梱包や廃棄品らしきものが並び、 まるで美術館の引越しか大規模な展示替えの最中のよう。 いつもとは異なり受付は一階にあり、 養生されたエレベータに乗って展示室の7,8階へ向かうのですが、 7階で降りると、展示室も養生が施された空間になっていました。 ショーケースや壁に作品が掛けられていたりするのですが、展示を片付け中という感じで、 脚立や台車、足場なもあちこち置かれ、美術品の梱包らしきものも並んでいます。 工具やゴミもあちこちに置かれ、まさに作業現場。

これを越えて行くと作り込まれた別世界に踏み込むことになるのだろう、と、8階へ上がると、何とここも養生が施された展示室。 踏み出して少し歩くと、まるで7階にいるよう。 間取りが同じな上に、同様に養生され、作品や梱包、脚立や台車、足場や各種部材が同じように置かれていたため、 間違えて同じ階で降りてしまったかと、思った程。 なるほど7階と8階の差異を楽しむ作品か、と、2つの階を行き来しながら差異探しを始めたのだけれども、これがなかなか難しい。 養生がなされた空間は非常にノイジーで情報量が多く状態が覚えきれません。 さらに、作業中ということで養生の変更、梱包や足場、荷台の移動も行われているため、 ゴミの形状や汚れの違い、部材への書き込みなどに細かい差異があることに気づくことはあったけれども、 大きな状況の違いについては、根本的な設定の違いなのか、作業中の異なる断面を見ているに過ぎないのかも、判断しかねます。 さらに、何回も2つの階を行き来しするうちに、今自分がいる階がどちらかだったすら混乱してくるという。

というわけで、美術館の引越もしくは展示替えの状況を体感する、もしくは、似たような2つの状況の差異を楽しむ、というより、 似たような2つのノイジーな状況を行き来するうちに自分の記憶や感覚が混乱していく様を体感するような展覧会でした。

観に行った11日23日の14時から約1時間、展示も行われた1階のホールで デンマークのミュージシャン Jens Paldam ライブパフォーマンスも行われtました。 音楽は、アナログモジュラーシンセを使っての、アンビエント気味のエレクトロニカ。 美術品の梱包が並ぶ空間に置かれたモジュラーシンセに静かに向かっているだけで、 動きも照明やプロジェクションなどの演出も無いので、 腰を据えて演奏を聴くというより、そういう演奏を聴きながらそんな様子も横目に展示を観る方がいいパフォーマンスでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3797] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Dec 2 23:29:58 2019

11月17日日曜は昼に京橋へ。この映画を観てきました。

国立映画アーカイブのサイレント映画特集上映 『サイレントシネマ・デイズ2019』のプログラムで音楽伴奏は録音ながらサイレント映画上映を観てきました。

Die Stadt ohne Juden
1924 / Walterskirchen und Bittner (Österreich) / 91 min. / restored DCP / B+W (coloured) / silent
Regie: Hans Karl Breslauer.
Drehbuch: Hans Karl Breslauer, Ida Jenbach nach dem Roman von Hugo Bettauer.
Anny Miletty (Tochter Lotte), Johannes Riemann (Leo Strakosch), Eugen Neufeld (Bundeskanzler Dr. Schwerdtfeger), etc

戦間期、ナチスが政権を以前の1924年に制作された反ユダヤ主義を風刺する内容の映画です。 原作は G. W. Pabst: Die freudlose Gasse (『喜びなき街』, 1925) [鑑賞メモ] と同じ Hugo Bettauer です。 映画の中では国名を「ユートピア」としていますが、ウィーンで撮影されており、当時のオーストリアを状況を風刺したもののようです。 ユダヤ人追放をしたものの、国内での消費の落ち込みや外国のボイコットを受けて経済が破綻し、再びユダヤ人を受け入れる、という大きな物語を、 資産家の娘 Lotte とユダヤ人の恋人・許嫁の Leo、そして、ユダヤ人追放法を撤回させるための Leo の策略をコミカルに交えて描いています。

と言っても、技法は素朴で、画面やモンタージュなどで登場人物の深く描写したり状況の緊迫感を感じさせるようなことはなく、 反ユダヤ主義の風刺という主題の割には物足りなく感じました。 翌年の映画となる Die freudlose Gasse を思い出しつつ、あの映画の表現の洗練を実感しました。 スタイルとしては、Expressionism (表現主義) から Neue Sachlichkeit (新即物主義) 映画への移行期にあたるようで、 ユダヤ人排斥法が撤回されて反ユダヤ主義の議員が錯乱してしまう場面で、多重露光の表現主義の技法が半ば取って付けたように使われていました。

その一方で、ユダヤ人追放の様子の描写は、 1933年以降のナチス政権下でのユダヤ人の追放や強制収容の様子を捉えたドキュメンタリー映画や それを題材としたドラマ映画での描写から大きく外れるものではなく、まるで予言したかのよう。 もちろん監督たちの想像力の賜物ということもあるかと思いますが、 第一次世界大戦中、戦後の難民、住民交換などの様子がイメージの源泉にあったのかしらん、と。

2014年の『シネマの冒険 闇と音楽 2014 from ウィーン フィルムアルヒーフ・無声映画コレクション』の企画に携わった Filmarchiv Austria の常石 史子 氏がこの映画の復元を担当しており、上映前に短い解説がありました。 この映画は1933年に上映された後に失われたと思われていたものの、 1991年に不完全ながらフィルムが Nederlands Filmmuseum で発見され、 2015年にパリの蚤の市で完全版に近いフィルムが発見され、それを元にデジタル復元されています。 内容もあって復元に国の予算が付かず、クラウドファウンドで資金調達したとのことでした。 原作者でもある Hugo Bettauer が1925年ナチスのシンパに暗殺されたということを、今更ながら知りました。 Die freudlose Gasse は Gerhard Gruber のピアノ生伴奏で観ることができたのですが、 今回は Gruber のトリオによる伴奏の録音だったのは残念でした。 (平日晩に 神﨑 えり による生伴奏での上映もあったのですが、都合が付きませんでした。)

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3796] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 1 20:50:59 2019

11月16日は箱根へ日帰り旅行。この展覧会を観てきました。

ポーラ美術館
2019/08/10-2019/12/1 (会期中無休), 9:00-17:00.
Oliver Beer, Abdelkader Benchammma, Céleste Boursier-Mougenot, Candida Höfer, 石塚 元太良 [Gentaro Ishizuka], 磯谷 博史 [Hirofumi Isoya], Alicja Kwade, Susan Philipsz, Prinz Gholam, Wolfgang Tillmans, 渡辺 豊 [Yutaka Watanabe], 横溝 静 [Shizuka Yokomizo]
From the Collection: Claude Monet, Paul Cézanne, Pablo Piccaso, 東洋磁器コレクション [Oriental Ceramics Collection], etc.

フランス印象派 (French impressionists) の作品を主なコレクションとする箱根仙石原のポーラ美術館で開催された、 コレクションを組み込むような形で制作された現代美術のインスタレーション作品の展覧会です。 組み合わせの妙が楽しめたという程ではありませんが、視覚だけでなく聴覚を使いその感覚を味わう作品が多く楽しめた展覧会でした。

最も気に入ったのは、Céleste Boursier-Mougenot。 小鳥 (zebra finch) に electric guitar を演奏させるインスタレーション From Here to Ear で知られるフランスの作家ですが、 この展覧会では、水色の円形のプールに白磁のボウルをたくさん浮かべた clinamen v. 7 を出展しました。 水流で穏やかな動きがあり、窓の外の林の緑もあって、視覚的にも美しく楽しい作品というだけでなく、 ボウル同士が触れ合う際に出す澄んだ響きがボウルの大きさなどでチューニングしているのか美しいハーモニーを作り出していて、聴覚的にも美しい作品でした。 ちなみに、対比するように展示されていたのは、Claude Monet の Les Nymphéas 『睡蓮』でした。

ポーラ美術館の東洋磁器コレクションの 響きをマイクで拾って聴かせる Oliver Beer のインスタレーション Devis も面白い作品でした。 普段の展示では無いようなオーケストラ様にずらりと並べらた陶器たちが、 耳障りなハウリング音にならないぎりぎりの不穏な不協和音を響かせていました。

もちろん、音響抜きに面白い作品も。透明なガラスと鏡が嵌められた衝立を使った Alicja Kwade の Between Glances は 一見してガラスなのか鏡なのか判らない視覚的なトリッキーさを楽しむことができました。 また、氷河で撮影された 石塚 元太良 の写真シリーズ Le Conte_Glacier#001 や ピアノ曲を弾く年老いた女性たちのビデオインスタレーション 横溝 静 《永遠に、そしてふたたび》に Chopin のピアノ曲を弾く様を淡々と端正な映像で捉えて差異を静かに浮かび上がらせる様は、 ビデオによるタイポロジーを観るようでした。

野外彫刻が散在する「森の散歩道」では、Susan Philipsz の11チャネルのサウンドインスタレーション Wind Wood。 James Joyce の娘で1920年代にダンサーとして活動した Lucia に捧げられた作品で、 Lucia が好んだという Maurice Ravel の歌曲集 Shéhérazade (1904) から “La Flûte enchantée” の旋律を音符毎に林のあちこちに置かれたスピーカーに割り当て鳴らします。 音符毎に鳴らされることで旋律も分解され、林の中に響く澄んだフルートの音もはっきりと旋律が感じられるものではなくなり、不思議な響きになっていました。 丁度、紅葉が美しい季節で、小春日和の日差しもあって、とても気持ちよく感じられました。 Susan Philipsz の作品は2012年の dOCUMENTA (13) を始め度々体験していますが [鑑賞メモ]、 やはり Philipsz の作品は良いです。 ちなみに、印象派の絵を多くコレクションするポーラ美術館に合わせて印象主義の Ravel の曲を選曲したということもあるようです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

10月の台風で箱根も甚大な被害。国道138号の一部通行止めも続いていますし、路盤流出した箱根登山鉄道も運行再開の目処が立っていません。 しかし、観光客が戻っていないかもしれないという予想は甘く、箱根湯本から先の道路渋滞、代行バスや路線バスの混雑は酷く、かなり混乱していました。 美術館にたどり着くまでは少々後悔しましたが、小春日和で紅葉も美しく、展覧会も良く、帰りは湯本で日帰り温泉も楽しめ、やっぱり箱根まで行った甲斐はあったでしょうか。

[3795] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Nov 25 21:53:51 2019

11月9日土曜の夕方は、日本橋から乃木坂へ。会期末が迫ったこの展覧会を観てきました。

国立新美術館 企画展示室1E
2019/08/28-2019/11/11 (火休;10/22開;10/23休). 10:00-18:00 (8,9月 金土10:00-21:00;10,11月 金土10:00-20:00).
北島 敬三, 小林 エリカ, ミヤギフトシ, 田村 友一郎, 豊嶋 康子, 山城 知佳子.

国立新美術館の企画による現代美術のグループ展です。 映像、写真やインスタレーションを通して物語をうっすら浮かび上がらせるようなナラティブな作風の作品を集めた展覧会です。 ナラティブな作風は少々苦手なのですが、観客も少なく落ち着いた雰囲気もあってか、意外とその雰囲気を楽しむことができました。

最も好みだったのは、田村 友一郎のインスタレーション《Sky Eye》。 ファストフードの店でコーヒー飲みつつぼんやり浮かんだ物語というほどはっきりしないイメージを、 イメージの連想で広げたかのよう。 社会的な背景というより、不条理とも感じられる意味の希薄さに、引っ掛かりを感じた作品でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

同じく国立新美術館で開催されていた 『カルティエ、時の結晶』 を観てきました。 フランスのジュエリー、時計などの高級宝飾品のラグジュアリー・ブランド Cartier のデザインを辿る展覧会です。 国立新美術館なので少しは接点を感じられる展覧会かと期待したのですが、デザインの歴史や体系が Cartier の中で閉じていて、興味の接点を持ちづらいものがありました。 杉本 博司 による骨董と組み合わせたインスタレーションも展示されていたのですが、趣味の良さよりもあざとさの方を感じてしまいました。うむ。

[3794] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Nov 24 21:46:01 2019

11月9日土曜は昼に日本橋へ。この舞台を映画館でのイベントシネマで観てきました。

『イヴの総て』
Noël Coward Theatre, 2019-04-11.
Sonia Friedman Productions and Fox Stage Productions present All About Eve by Joseph L. Mankiewic, Adapted & directed for the stage by Ivo van Hove.
Original screenplay by Joseph L. Mankiewicz. Original play The Wisdom of Eve by Mary Orr.
Director: Ivo van Hove; Set and Lighting Designer: Jan Versweyveld; Costume Designer: An D’Huys; Composer: PJ Harvey; Sound Designer: Tom Gibbons.
Cast: Gillian Anderson (Margo Channing), Lily James (Eve Harrington), Julian Ovenden (Bill Sampson), Monica Dolan (Karen Richards), Rhashan Stone (Lloyd Richards), Stanley Townsend (Addision Dewitt), etc.
First Performance: 12 February 2019, Noël Coward Theatre.
上映: TOHOシネマズ日本橋, 2017-11-09 13:00-15:35 JST.

2年前に National Theatre Live で観た Hedda Gabler が良かった [鑑賞メモ] 演出家 Ivo van Hove の新作が National Theatre Live でかかったので、その上映を観てきました。 1950年公開の Joseph L. Mankiewicz 監督による映画に基づく舞台です。 有名な映画でタイトルを目にしたことはありましたが、映画は観ていません。 50歳を迎え老いを恐れる大女優 Margo と、Margo の熱心なファンから付き人、そして女優となり、いつしか野心を露わに Margo の代役を手にする Eve の2人を巡るバックステージ物です。

ライブビデオを使って別部屋の様子や鏡に向かう時の顔を映しだしたり、 異化作用を狙ったか壁を取り払って舞台裏を見せたりと、工夫は感じましたが、 普通に家具を使ったセットなどもあり、説明的に感じる時もありました。 Hedda Gabler のでのような、抽象的な現代美術インスタレーションのような美しさを感じることがありませんでした。 前半は Margo を通した老いの受容についての物語、後半は Eve を通して野心ある女性が策に溺れて自滅する物語 (ちょっと Hedda ぽい) と、 主人公が入れ替わる感があるのですが、そういった話の変化がもっと視覚化されていたら、と。 といっても、Margo と Eve という主人公2人を演じた Gillian Anderson や Lily James を始め、俳優陣の演技はさすがで、 十分に引き込まれて観ることができました。 Eve をはじめ策をめぐらす登場人物の中では、むしろ Eve はワガママで天然なだけ。 そしてそんな Eve を受け止め最後には結婚する Bill はいい人過ぎると、思ったりしました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3793] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Nov 19 23:46:24 2019

11月7日は仕事は休み。ということで、昼に恵比寿で展覧会と映画を観てきました。

『イメージの洞窟 意識の源を探る』
from the cave
東京都写真美術館 2階展示室
2019/10/01-2018/11/24 (月休;10/14,11/4開,10/15,11/5休), 10:00-18:00 (木金 -20:00)
北野 謙 [Kitano Ken], 志賀 理江子 [Shiga Lieko], Fiona Tan, Osamu James Nakagawa, Gerhard Richter.

洞窟をモチーフもしくはメタファーとして使った作品による企画展です。 北野 謙 の幼児をフォトグラムや、 Gerhard Richter の街中の人を捉えた写真にエナメルで抽象的に着彩した “Overpainted Photograph” など、 テーマと作品の間にワンクッションあるようで腑に落ちたわけではありませんが、 落ち着いた雰囲気の展示は好みでした。 特に、Osamu James Nakagawa の沖縄のガマを撮った写真の、 墨や鉄錆でほとんどテクスチャのようになったイメージが気に入りました。

地階展示室では『写真新世紀 2019』。定点観測です。 去年までのここ数年、現代アート・プロジェクトのドキュメントのような作品が目に付きましたが [鑑賞メモ]、 今年はビジュアルな表現に回帰したように感じました。 最も気に入ったのは、去年のグランプリ受賞者の新作個展ですが、 アジア各地の苗木場を液晶絵画のように静的に捉えてクロスフェードで繋いだ映像を使った新作インスタレーション Song-Nian Ang: Artificial Conditions – Something To Grow Into でした。

この後、恵比寿ガーデンシネマに移動して、この映画を観ました。

L'Année dernière à Marienbad
『去年マリエンバードで』
1961/2018 (version restaurée) / France/Italie / B+W Scope / 1h29mn
Réalisation: Alain Resnais; Scénario: Alain Robbe-Grillet.
Avec: Delphine Seyrig (A, la femme brune), Giorgio Albertazzi (X, l'homme à l'accent italien), Sacha Pitoëff (M, le joueur invétéré, peut-être l'époux de A)
Producteur: Argos Films, Cineriz, Cinétel, Les Films Cormoran, Silver Films, Les Films Tamara; Distributeur: Astor Pictures; Producteur (version restaurée):

ヌーヴェルヴァーグ左岸派の中でも難解で知られたこの映画を初めて観たのは高校生の時 (1980年代中頃)。 その後、観直したこともありましたが、 2010年の Alain Resnais 全作上映の際 [鑑賞メモ] には観なかったので、観るのも二、三十年ぶりでしょうか。 女Aと再会した男X、Aの夫Mの3人の関係する1年前の出来事を錯綜した記憶で描いた映画で、 現在、Xの回想、Aの回想、過去の事実の4つのシナリオをはっきりわからない形で組み合わせて作り上げられた作品ということで、 4つのシナリオを見分ける意気込みで望んだのですが、結局、それはよくわからず。 かつては Resnais の映画を解読するかのように観るのを楽しんだものですが、最近はなかなか集中が続きません。 しかし、Schloss Nymphenburg などバイエルンのバロック様式の宮殿をロケ地に、修復された美しい画面の中、 Chanel のゴージャスな服をまとった Delphine Seyrig のミステリアスな美女っぷりを堪能できたので、よしということで。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3792] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Nov 17 20:28:09 2019

11月3日日曜は小雨ぱらつく肌寒い日。そんな中、昼前から電車とバスを乗り継いではるばる横須賀の観音崎まで。 さらに、折り返して、日比谷へ。20世紀初頭のフランスを舞台とした2つの展覧会をハシゴして観てきました。

Sarah Bernhardt: The World of Sarah Bernhardt, Luminary of the Belle Époch
横須賀美術館
2019/09/14-11/04 (10/4休), 10:00-18:00.

19世紀末から20世紀初頭にかけて、主に第一世界大戦前のベルエポック期に活動したフランスの女優の展覧会です。 Collection Daniel Ladeuille や Musée d'Etampes (エタンプ市) のコレクションを中心に構成されていました。 舞台衣装だけでなく街着姿のポートレート写真や私生活での資料も多め、 副題の「ミュシャ、ラリック、ロートレックとともに」とあるように、関連する同時代の Art Nouveau の美術、デザインも併置することで、 Sarah Bernhardt を入り口に Belle Époch の時代を感じるような展覧会でした。 彼女の出演した作品、率いた劇団や根拠地とした劇場に関する資料なども少しありましたが、 当時の演劇シーンを描き出すようなものではありませんでした。 文学・演劇の博物館ではなく美術館での企画ですし、これは仕方ないでしょうか。

千代田区立日比谷図書文化館
2019/10/24-12/23 (11/18,12/16休), 10:00-19:00 (金10:00-20:00;日・祝10:00-17:00).

20世紀初頭のフランスで主に資産家階級を対象に限定もしくは予約頒布で作られた高級挿絵本の展覧会です。 この時期に活動した4人の挿絵作家 (この展覧会では「アール・デコ四天王」と呼んでる George Barbier, André-Édouard Marty, Charles Martin, George Lepape に焦点を絞っていました。 その一方、タイトルで Art Deco と謳っていますが、第一次世界大戦前夜 Ballets Russes が登場してきた1910前後から、 post-Art Deco な1930年代、さらに、第二次世界大戦後のものも数点と、時代は広めに取られていました。

1910年代前半、Barbier が Ballets Russes のNijinsky や Karsavina を描いた作品など、 Art Deco というより、まだまだ世紀末ぽい Aubrey Beardsley などと地続きと感じつつも、 直前に観た Sarah Bernhardt の展覧会の出展品と比べるとやはり斬新に感じられました。 1920年代、Bauhaus や Russian Avant-Garde のグラフィックデザインの仮想敵の一つは、 こういう高級挿絵本だったのだろうな、と。 しかし、対照的というだけでなく、共有している時代の空気というのも感じられました。 キュビズムや構成主義の影響も感じる直線的な描線のモダンさといい、ユーモアのセンスといい、 4人の中では Charles Martin が最も好みでした。

Gasette du BonTon – Art, Modes et Frivolités (1912-1925) など服飾の流行を挿絵版画で紹介するファッション・プレートが展示の中心となっていましたが、 以前にも似たようなものを観る機会もあったので [鑑賞メモ]、 挿絵作家という視点が加わったものの、新鮮というほどでもさほどなく。 むしろ、Charles Martin の挿絵に Erik Satie に曲を添えたピアノ小曲集 Sparts et Divertissements の楽譜 (1914/1919) に惹かれました。 全21曲、挿絵と曲が組みになっているので、全ての曲を聴きながらそれぞれの絵を観てみたいものです。

今までも、鹿島 茂 コレクションに基づく展覧会は、 『19世紀パリ時間旅行 -失われた街を求めて-』 (練馬区立美術館, 2017) [鑑賞メモ]、 『フランス絵本の世界 — 鹿島茂コレクション』 (東京都庭園美術館, 2018) [鑑賞メモ] と観てきましたが、 今回のこの展覧会も含めハズレがありません。

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[3791] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Nov 12 0:29:56 2019

11月2日に日帰りで観てきた 大道芸ワールドカップ in 静岡 2019 の話の続き、後半です。

11/02 14:45〜 @ 市民文化会館4

Anonima Teatro は、イタリア・ミラノ出身の Jacopo Faravelli が主宰する、 フランス・オクシタニアの小邑 Tressan を拠点に活動する人形劇カンパニーです。 今回上演していた La Route は、 足踏みミシンの回転機構を使った「道路」で繰り広げられるカーチェースアクション人形劇。 Electroclash 風の女性DJによるライヴの音楽や大袈裟な身振りによる盛り上げと操られる子供向け玩具とのギャップが可笑しなパフォーマンスでした。

11/02 16:00〜 @ 駿府城公園 富士見芝生広場

東京出身ながらカナダの École Nationale de Cirque, Montréal に学び、 40e Festival Mondial du Cirque de Demain (2019) で日本人パフォーマー初となる Médaille de Bronze を受賞するなど、 海外のサーカスで活躍するエアリアル・パフォーマー 品川 瑞木 の、 日本国内の大道芸フェスに凱旋パフォーマンスです。

和太鼓によるパーカッシヴな音楽に合わせ、 ティッシュ捌きも力強くダイナミックなエアリアルをみせてくれました。

11/02 16:30〜 @ 駿府城公園 富士見芝生広場

フィンランドを拠点に活動する Maria Peltola、Ronja Vilponen、Valpuri Kaarninen の 女性エアリアル・パフォーマー3人組です。 横3連のトリプル・トラペーズ (triple trapeze) を売りとしているようです。

ストーリーを 3人とも異なる個性的な (それもクィアを思わせる) キャラクタをコミカルに演じてのパフォーマンスでした。

TEAMパフォーマンスラボ 『トワイライト ガーデン』
11/02 17:00〜 @ 駿府城公園 沈床園

大道芸人・パフォーマーのキャスティングをしているオフィスパフォーマンスラボの所属パフォーマーのチームによるショーです。 生演奏の音楽に合わせてスティルト、マイム、ティッシュのエアリアル、バトントワリングなどを交えたショーです。 衣装や照明も駆使して、ゲーム/マンガ的なジュブナイルSFファンタジー的な世界を作り出していました。

11/02 17:45〜 @ 市民文化会館4

フランスの有名サーカス一家出身の女性フラフープ (Hula Hoop) パフォーマーです。 オーソドックスに美しく技を見せるパフォーマンスでした。

Kate & Pasi: Suhde
11/02 18:30〜 @ 駿府城公園 トコチャン広場

フィンランドの Katerina Repponen と Pasi Nousiainen による ハンド・トゥ・ハンド・アクロバットとフット・ジャグリングを得意技とする男女デュオです。 夫婦ホームコメディ仕立てのショーとしてコミカルに技を見せました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

日帰りだったのでナイトパフォーマンスはパスして、帰途に着く前、夕食代わりに軽く呑むことにしました。 5月に ストレンジシード静岡 2019 を 観に行った時に入った 赤提灯がやって無かったので、駅の地酒の店にしてしまったのですが、 ラッキーなことに、志太泉のふねしぼりの秋限定酒を呑むことができました。

自分にとって静岡といえば、春の演劇祭、秋の大道芸なわけですが、地魚地酒も美味しいし、 もっとカジュアルに日帰りや一泊でSPACの公演を観に行くといいのかもしれない、と思ったりしました。

[3790] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Nov 10 20:36:15 2019

先週末11月2日の土曜は午前中に静岡へ。日帰りで大道芸フェスへ行ってきました。

静岡市内
2019/10/31-11/3.

1994年に始まった大規模な大道芸フェスティバル。 初めて行ったのは2年目の1995年で、毎年というわけにはいかないものの、それなりの頻度で行っているので、自分にとっては秋の恒例のイベントです。 今年は平日に休暇が取れず、夜の大規模ショーのようなプログラムも無かったことから、少々躊躇したのですが、 去年行かれなかったので、11月2日(土) に日帰りで観てきました。 ナイトパフォーマンスはパスしてしまいましたが、昼前11時から日暮れ後の19時の間に12組を観ることができました。 観た範囲ではもう一度観たいと思う程のパフォーマンスには出会えず小粒感も否定できませんが、 最近は春の高円寺も秋の三茶も観れていないですし、久しぶりに大道芸浸りの一日を楽しみました。

過去の大道芸ワールドカップ in 静岡の写真集: 1999年2000年2001年2002年2004年2005年2006年2007年2008年2012年2013年2015年2016年2017年

以下に観たカンパニー/パフォーマの中から主なものを個別にコメント付き写真で紹介。 ついに、今年は iPhone のカメラのみを頼りに臨みました。 パフォーマー名演目名については、自分で調べられる限り、 パフォーマーの公式サイトや、海外の大道芸関係のフェスティバルのプログラム などで一般的に用いられている表記に従っています。 調べがつけられなかったものについてのみ、 会場で配布されていたパンフレットに用いられていたものを用いています。

11/02 11:00〜 @ 駿府城公園 メイン広場1

ドイツ出身の女性ジャグラーです。 ミニマリスティックということで、派手な音楽や道具は使わず、 前半はちょっとしたワイヤー・トリックも使ったクラブのジャグリングを、 後半は手を縛ってのクラブのマニピュレーションを見せました。 こぢんまりと可愛らしいパフォーマンスで、野外ステージでよりも小劇場で観たいショーでした。

11/02 11:45〜 @ 駿府城公園 二の丸

Ana Clara Manera と Martín Umerez の manoAmano cirgo は、 アルゼンチンからのチャイニーズポールとアクロバットの男女デュオです。 気の強い女性とそれに動じない男性というキャラクタ設定で、最初はちょっとコミカルに、最後は少しロマンチックに演技しました。

11/02 12:30〜 @ 駿府城公園 二の丸

Ádám Fehér & Benjamin Kassai はハンガリーからのチャイニーズポールとアクロバットの男性デュオです。 性格付けられたキャラクターを演じたりすることなく、electronica 〜 post-classical な音楽に合わせ、ミニマリスティックに力強い技を繰り広げました。

11/02 13:00〜 @ 呉服町通り

イギリスの Nikki & Tim Kennett による The Show Globe は、 動く人間大のフラワードームやスノードームを使い、 人形のように装った女性がドームの中に入り、グリーティングをして歩く、ウォークアバウト・パフォーマンスです。 今回は、フラワードーム版の Enchanted Flower Globe で、 女の子たちを楽しませていました。

11/02 13:00〜 @ 青葉通りB4

パフォーマンスの後半だけになってしまいましたが、日本のパントマイム・パフォーマー 山本 光洋 を、久しぶりに観ることができました。 ちょうど、操り人形をコミカルに演じる「チャーリー山本」。 芸の合間のトークで、静岡に初めて出演した時まだ十歳だったお子さんが結婚されたとのこと。 自分も歳をとるわけです。

大道芸ワールドカップ in 静岡 2002 での写真みなとみらい21大道芸 2006 での写真大道芸ワールドカップ in 静岡 2006 での写真ヨコハマ大道芸 2007 での写真大道芸ワールドカップ in 静岡 2007 での写真 もあります。

11/02 14:00〜 @ 青葉通りB4

ドイツ出身の Lea Toran Jenner とカナダ出身の Francis Perreault によるアクロバットと Cyr wheel の男女デュオです。

デュオといっても 使う Cyr wheel は1つだけです。 それぞれソロで Cyr wheel を演じるだけでなく、2人一緒に1つの Cyr wheel に入って演じました。 ひたすらロマンチックなプログラムでした。

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続きは、また後ほど。

[3789] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sat Nov 9 23:04:31 2019

10月27日日曜は午後に渋谷へ。この公演を観てきました。

東急 Theatre Orb
Book by Roger O. Hirson. Music and Lyrics by Stephen Schwartz.
Director: Emmanuel Cuillaume; President and Artistic Director - Director of Creation: Jeannot Painchaud; Music Director, Composer and Arranger: Éloi Painchaud; Acrobatic Designer and Head Coach: Nicolas Boivin-Gravel; Choreographer: Annie St-Pierre; Set and Props Designer: Francis Farley; Costume Designer: Sarah Balleux; Make-up Designer: Virginie Bachand; Lighting Designer: Francis Hamel; Sound Designer and Sound Project Manager: Colin Gagné; Associate Producer: Pascal Auger.
Creation: 2016.

カナダ・ケベック州モントリオールを拠点として活動する現代サーカスのカンパニー Cirque Éloize の6年ぶりの来日です。 2013年の iD (2009) の際は観なかったのですが、 ネットで断片的に見る Cirkopolis (2012) の映像、写真や評判がかなり良さげなので、一度観ておこうかと足を運んで観ました。

西部劇の舞台としても知られるサルーン (19世紀アメリカ西部の酒場) をテーマとした “A Musical Acrobat Adventure” です。 キャラクター設定はありましたが、起承転結を感じるようなストーリーは無く、 サルーンに集う群像を技を繋ぐ世界観として使ったような演出でした。 サルーンを思わせるセットを使い、 いわゆる country & western の有名曲やそれ風のオリジナル曲の生演奏を交えながら、 acrobat な技、Chinese pole, Cyr wheel, aerial acrobat, juggling, teeter board などの技を見せていきます。 女性パフォーマーはカンカン嬢2名、カウガール1名の3名、男性パフォーマーの方が多い、西部らしい男臭くも力強い雰囲気が楽しめた舞台でした。 今年3月に、George Balanchine (choreo.): Western Symphony [鑑賞メモ] を観たこともあり、 舞台芸術の舞台としてのサルーン、枠組みとしての西部劇の使い勝手の良さに気付かされました。

といっても、最も印象に残ったのは Cyr wheel や aerial を演じたカウガール (キャスト表が配布・掲示されていなかったので出演者が不明なのですが、おそらく Shena Tschofen)。 最初のうちは violin を弾きつつ歌っていたので acrobat のような技をしないだろうと思っていたので、その意外さもあったように思います。 Cirque Éloize の共同創設者の一人に Cyr wheel を2003年に発明した Daniel Cyr がいただけあって、 やはり Cyr wheel は Cirque Éloize の看板芸です。

前の週に Cie l'Oublié(e) / Raphaëlle Boitel: La Chute des Anges [鑑賞メモ] を観たばかりだったので、 Cirque du Soleil [鑑賞メモ] ほどでは無いものの、 やはりエンターテインメント色が濃いショーだと実感することもできました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

Cirque Éloize は海外でも評判の高い Cirkopolis を観たいと常々思っているので、 それはやはり予算的に難しいのでしょうか。 Saloon が興行成績的に成功して、次は Cirkopolis となって欲しいものです。

[3788] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu Nov 7 21:03:26 2019

10月26日土曜は午後に横浜山下町へ。この公演を観てきました。

KAAT神奈川芸術劇場 ホール
2019/10/26, 15:00-16:30.
Choreographer: Tero Saarinen.
Music: Be-Being [비빙]; Music direction, composer: Young-gyu Jang [장 영규].
Lighting and set designer: Mikki Kunttu; Costume designer: Erika Turunen; Choreographer's Assistant: Satu Halttunen, Henrikki Heikkilä, Mi-ae Kim [김 미애].
Performers: National Dance Company of Korea [국립무용단].
Premiere: 16 April 2014, National Theater of Korea [국립극장], Seoul, South Korea.
Production: National Dance Company of Korea [국립무용단]; Co-production: Tero Saarinen Company.

韓国の伝統舞踊の国立舞踊団 국립무용단 [National Dance Company of Korea] が、 コンテンポラリー・ダンスの文脈で活動するフィンランドの振付家 Tero Saarinen [鑑賞メモ] の振付で制作した作品です。 伝統的な楽器や歌唱に electronics を交えた音楽や、重心低めの動きなど、予想以上に伝統舞踊を思わせる要素も多め。 しかし、衣装は装飾的な民族衣装ではなくモノトーンの衣装で、舞台装置は用いず照明を効果的に使う演出はコンテンポラリーダンス的にミニマリスティックでスタイリッシュな作品でした。

コンセプト的にストーリーがあるかもしれませんが、それにナラティヴに表現するというより、 動きやフォーメーションで見せる抽象ダンス作品でした。 スモークをライティングでドーム状に浮かび上がらせ、その中で力強い男性のソロをシルエットで浮かび上がらせるオープニングから掴まれました。 おそらく民族舞踊の動きを取り入れていると思われますが、 女性ダンサーたちの、腰の位置も低めにあまり上げない足捌きに、宙を掴むように手を開いて肘を少し曲げたような腕捌きも印象的でした。 ソロや男女デュオでのダンスもありましたが、やはり群舞が圧倒的に感じられました。 後半、ボレロのような上着を羽織り、背に付けた羽根状薄布を払い回しながら、女性ダンサーたちが輪になって踊る場面 (韓国伝統舞踊の太平舞に着想したのでしょうか) など特に印象に残りました。

このような作品の日本版を見てみたいようにも思いましたが、 舞台舞踊作品のベースとできるような近世まで残った伝統的な宮廷舞踊があるのか、 レパートリー化できそうな公的な舞踊団があるのとか、そういうことを考えると、かなりハードルが高いと感じてしまうのでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

この週末は東京芸術劇場で Schaubühne Berlin: Im Herzen der Gewalt があったわけですが、 既にチケットを押さえていた土日の公演とハシゴ不可能な時間だったので断念。 というか、金曜晩に行こうとチケットは押さえたのですが、結局出張が入ってしまい、チケットをふいにしてしまいました。 ネットで良い評判を目にしてしまうと、やはり、残念。

[3787] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Nov 5 22:55:51 2019

10月20日日曜は午後に三軒茶屋へ。この公演を観てきました。

カンパニー ルーブリエ/ラファエル・ボワテル 『When Angels Fall/地上の天使たち』
世田谷パブリックシアター
2019/10/20, 15:00-16:15.
Mise en scène et chorégraphie: Raphaëlle Boitel
Collaboration artistique, scénographie, lumière: Tristan Baudoin; Musique originale: Arthur Bison; Costumes: Lilou Hérin
Interprètes: Loïc Leviel, Emily Zuckerman, Nicolas Lourdelle, Clara Henry, Marie Tribouilloy, Alba Faivre, Tristan Baudoin, Lilou Hérin.
Production: Cie L’Oublié(e) – Raphaëlle Boitel. Création 2018.

秋の三茶de大道芸に合わせて 世田谷パブリックシアターで開催されるコンテンポラリー・サーカス公演。 今年は Raphaëlle Boitel 率いるフランスのカンパニー Cie l'Oublié(e) の初来日です。 度々来日している Camille Boitel [鑑賞メモ] の妹にあたる Raphaëlle Boitel は、 l’Ecole Nationale des Arts du Cirque Fratellini で学んだ後、 James Thierrée [関連する鑑賞メモ] や Cie 111 / Aurélien Bory でサーカス・アーティストとして活動し、 2012年に自身のカンパニー Cie L’Oublié(e) を設立しています。 そんなバックグラウンドはもちろん、近年はオペラの演出も手がけているとのことで、期待して足を運びました。

ディストピアに落ちた3人の天使 (女性パフォーマーの3人) が天に逃れようとする様を、 アクロバット的なダンスとエアリアルで描いたかのような1時間余の作品でした。 ハンガーに吊るされたコートを着たて操られているようなダンスに始まり、 淡々んと器械のように行き交う人々のダンス、 そして、男女の操られたロマンスと禁じられた自発的なロマンスを演じるかのようなマイムで、ディストピアを描いていきます。

そんなディストピアからの脱出の試みの表現はエアリアルで。 吊るしただけで固定されていないチャイニーズポールで失敗した脱出を演じたり。 特に象徴的な道具は吊るすためのトラスを付けた黒く塗られた梯子。 梯子が水平になるよう真ん中から吊るし、片側から押し上げて反対側に乗ったパフォーマーに動くスポットライトを追わ背たり。 水平な梯子を低い位置で回して、ふわりと浮くようなエアリアルを見せたり。 トラペーズやティッシュのようなわかりやすい技を使わなかったのが、良かった。 そして、ついに梯子から天への脱出で終わります。

そんな演技を、衣装も黒とモノトーンで、最低限の装置ただけの剥き出しの舞台の上で、暗い中、スポット的な照明とスモークを駆使した演出で見せていきます。 特に、脱出の場面ではスモークの中や上でのエアリアルとなり、スポット的な照明は希望の灯で、雲の上のような下の見えない高さで演じているかのよう。 そんなミニマリスティックな演出ながら幻想的なビジュアルが大変に楽しめた舞台でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

4月にSPACの『ふじのくに⇄せかい演劇祭 2019』で観た Yoann Bourgeois: Scala [鑑賞メモ]、 7月に座・高円寺の「世界を見よう!」で観た Jörg Müller / Noémi Boutin: Sarabande [鑑賞メモ]、 La Cie. Quotidienne: Vol d'usage [鑑賞メモ] など、今年観たサーカスはクオリティが高いもの続き。 流石にこれらを超えてくることはないだろうと思っていたのですが、 この Cie l'Oublié(e) / Raphaëlle Boitel: La Chute des Anges が、今年観た中では最も良かったような。

この週末の三軒茶屋では三茶de大道芸もやっていたのですが、前日土曜も2本観劇して疲れていたので、軽く流して観るに止めたのでした。

[3786] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Nov 4 19:14:14 2019

半月前の話になってしまいましたが、10月19日土曜は昼のプレイハウスに続いて 晩も池袋西口で。この舞台を観てきました。

東京芸術劇場 シアターイースト
2019/10/19, 19:30-20:45.
Concept: Duda Paiva en Nancy Black; Regie: Nancy Black
Performer: Duda Paiva
Compositie: Wilco Alkema; Licht: Mark Verhoef; Poppen: Evandro Serodio en Duda Paiva; Dramaturgisch advies: Nienke Rooijakkers; Kostuums in decor: Machtelt Halewijn; Kostuum performers: Atty Kingma; Decor realisatie: Daniel Patijn

ブラジル系のバックグラウンドの持つオランダのパペット・ダンサー Duda Paiva のカンパニーの公演。 予備知識はほとんど無かったものの、パペット・ダンスへの興味で足を運んでみました。 Paiva 自身の疾患で一時的に視覚を失った経験、というか、その原因となった免疫系疾患の体験に着想した、コンテンポラリーな演出のパペット・ダンスでした。 あらかじめ据え置かれた人形の下に入って操ることもありましたが、 その人形と組んで踊るだけでなく、 衣装の腹や背中に瘤のように仕込んでおいた小さく折り畳むことができるウレタンフォーム製の人間大の人形を取り出して、操りながら踊りました。

大道芸などでのパペットダンスは、 片腕で人形を演じてそれと組むかのようにしてボールルームダンスを踊ったりするわけですが [鑑賞メモ 1, 2]、 片腕でパペットを演じつつ踊るという形式という点では意外とオーソドックスな形式を維持しつつも、 暗黒舞踏からの影響も感じられるコンテンポラリー・ダンス的な動きで演じていきます。 疾患によって身体中にできた瘤に対する違和感、痒痛や自分の身体とは感じられない違和感や、 そんな疾患と向かい合うことを、 少々グロテスクなパペットとのダンスとして表現しているよう。 パペット・ダンスというフォーマットでここまで行けるのだな、と、感慨深く観ることができました。

周りに囲むように客席が作られ客弄りがあるという噂もあって、もう少しサーカス/大道芸的な要素もあるかと期待していたのですが、 客弄りは導入とちょっとした補助という程度で、照明演出などにしても正面性の強い演出でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3785] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Oct 27 23:41:35 2019

先週末10月19日土曜は昼に池袋西口へ。この舞台を観てきました。

東京芸術劇場 プレイハウス
2019/10/19, 13:00-17:15.
Автор: А. П. Чехов [Written by Anton Chekhov].
Режиссер [Director]: Тимофей Кулябин [Timofey Kulyabin].
Художник [Set Designer]: Олег Головко [Oleg Golovko]; Художник по свету [Lighting Designer]: Денис Солнцев [Denis Solntsev]; Помощник режиссера [Assistant Director]: Наталья Ярушкина [Natalya Yarushkina]; Преподаватель жестового языка [Sign Language Instructor]: Галина Нищук [Galina Nishchuk]; Консультанты по культуре глухих [Advisers on the Deaf Culture]: Вероника Копосова [Veronika Koposova], Тамара Шатула [Tamara Chatula].
Илья Музыко [Ilya Muzyko] (Прозоров Андрей Сергеевич [Andrey Prozorov]), Валерия Кручинина [Valeriya Kruchinina] (Наталья Ивановна [Natasha, his fiancée, then wife]), Ирина Кривонос [Irina Krivonos] (Ольга [Olga]), Дарья Емельянова [Darya Emelyanova] (Маша [Masha]), Линда Ахметзянова [Linda Akhmetzyanova] (Ирина [Irina]), Денис Франк [Denis Frank] (Кулыгин Федор Ильич [Fedor Kulygin, school teacher, Masha’s husband]), Павел Поляков [Pavel Polyakov] (Вершинин Александр Игнатьевич [Aleksandr Vershinin, lieutenant colonel, battery commander]), Антон Войналович [Anton Voynalovich] (Тузенбах Николай Львович [Nikolay Tuzenbakh, baron, lieutenant]), Константин Телегин [Konstantin Telegin] (Соленый Василий Васильевич [Vasiliy Soleniy, staff captain]), Андрей Черных [Andrey Chernykh] (Чебутыкин Иван Романович [Ivan Chebutykin, military doctor]), Алексей Межов [Aleksey Mezhov] (Федотик Алексей Петрович [Aleksey Fedotik, second lieutenant]), Сергей Богомолов [Sergey Bogomolov] (Родэ Владимир Карлович [Vladimir Rode, second lieutenant]), Сергей Новиков [Sergey Novikov] (Ферапонт [Ferapont, watchman at the local council]), Елена Дриневская [Elena Drinevskaya] (Анфиса [Anfisa, nanny]).
Премьера [Premier]: 11 сентября 2015 [11 September 2015].

ロシア第3にしてシベリア中心都市ノヴォシビルスク (Новосибирск [Novosibirsk], RU) の 州立アカデミードラマ劇場 Театр «Красный факел» [“Red Torch” Theatre] (「赤い松明」劇場) の来日公演です。 劇場や演出家 Тимофей Кулябин [Timofey Kulyabin] の作風に関する予備知識はほとんど無く、 Чехов [Chekhov] の4大戯曲の一つ Три сестры [The Three Sisters] (1901, 邦題『三人姉妹』) という演目への興味というより、 ロシア手話 (Русский жестовый язык) で上演するというスタイルに興味を持ち、観に行きました。 4幕物で3回の休憩があるものの4時間以上の上演時間は、 最後まで集中が維持できるか事前は不安に感じられましたが、最後まで飽きることなく、むしろ第3幕以降、ぐいぐいと引き込まれるように観ることができました。

出演している俳優は聴覚のあるロシア人で、この上演のためにロシア手話を学んだとのこと。 単にロシア手話で上演しているというより、 ロシア手話を使う聴覚障害者が Три сестры を上演する様を演じているかのような演出で、俳優は聴覚が無い人のように演じていました。 日本語以外の上演で日本語字幕付き演劇を観る機会はそれなりにありますが、 手話の場合は、セリフのように聞こえてこないので、勝手がかなり異なり、 第2幕くらいまでは視線を向ける方向に戸惑うことも少なからずありました。 しかし、慣れてくると、手話で演じられていることを忘れるほどでした。 サイレント映画を観ていても、その世界に没入できるとサイレントであることを忘れるということはよくあるのですが、 演劇でも似たような体験ができるとは、思いもしませんでした。

原作の19世紀末ではなく現代に舞台は置き換えられていましたが、翻案というほどの変更は無く、比較的原作に忠実な上演。 といっても、演出が巧みということもあってか置き換えが自然に感じられ、むしろ、Чехов の戯曲の現代性、普遍性に気付かされたよう。 仕事に結婚に悩む三姉妹といい、家族の期待に応えられない自分に鬱屈する兄といい、現在の日本の家族でもありそう、と。 幕間に「イリーナ (Ирина)、わがままな末っ娘と思ってたけど、よれよれにくたびれたOLじゃない。かわいそう。」という内容の他の観客の会話が耳に入って、もう、そうとしか見えなくなってしまいました。 カメラ好きの Федотик が、自撮り棒でスマホ写真撮るのが好きな青年となっていたのも、良かったです。

第1幕、第2幕では、壁やドアは無いものの、家具の配置で Прозоров 家の屋敷の間取りが舞台の上に作られ、比較的フラットな照明でした。 手話での上演ということで仕草がデフォルメされた感があるものの、比較的普通にリアリズム的な演劇に感じられ、少々退屈する時もありました。 しかし、第3幕に入ると、大火事による断続的な停電の中、度々、スマホや手持ちLEDライトの限られた照明の中での上演となり、 闇に浮かび上がる顔とほとんど見えない手話が、 ほとんど聞き取れないささやき声での上演が視覚化されているよいうで面白く感じました。 第3幕は災害の極限状況の中で、それまでの空虚な会話から、登場人物の「本音」が語られ始めるわけですが、 それが語られる雰囲気にも合っていました。

屋敷では無く軍隊が旅立つ駅へ舞台が変わる第4幕になると、家具類の舞台装置が取り払われて、抽象度が上あがり、 立ち位置などを使って、象徴的な表現の要素が強めになったのも良かったです。 現代への置き換えの妙もあってか、第4幕に至るまででそれぞれの登場人物の性格付けもすっかり入っていたせいか、それでも十分なほど感情移入してしまいました。 ラストの絶望と希望の三姉妹のやるせなさはもちろん、愛されていないと知りつ Ирина へ別れを告げて決闘に向かう Тузенбах の切なさにも心を動かされました。 ラスト、照明が落ち始めると、駅でも屋敷の中でもなく、屋外の夜空の下に出たよう。 三人姉妹が精神的にも屋敷から出たのだなあ、と、しみじみと心を打たれました。

東京芸術劇場 プレイハウスは、客席がフラット気味で舞台が高めのホールで、 奥行き方向も使うダンス公演を見ていてダンス向きではないと常々思っているのですが、 この公演も屋敷の間取りを再現した第1,2幕など、俯瞰的に観ることを前提とした演出だったので、 このホールでの上演には向いていないなと、つくづく。 新国立劇場の中ホールとか、KAAT神奈川芸術劇場 大ホールのような、 斜度がついた客席から舞台を見下ろすようなホールで観たかったものです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3784] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Oct 22 21:19:02 2019

10月13日日曜は台風19号一過の快晴。 被害も多く、鉄道の運行も復旧中という状態でしたが、 11時から開館している情報を目にして、午後に会期末が迫ったこの展覧会に行ってきました。

Now, it's time to play
東京都現代美術館 企画展示室 企画展示室 1F / 3F(B室)
2019/07/20-2019/10/20 (月休;8/12,9/16,9/23,10/14開;8/13,9/17,9/24,10/15休), 10:00-18:00 (8/2,9,19,23,30 10:00-21:00).
開発 好明, 野村 和弘, ハンバーグ隊, タノタイガ, TOLTA, うしお.

公共劇場では夏休みに子供向けの企画をすることが多いのですが、これは、その現代美術館版とでもいうもの。 この手の企画は得てして子供が楽しむにはコンセプチャルに過ぎたりして、企画倒れになりがちです。 しかし、この展覧会は、子連れ家族で混雑していて、びっくり。 コンセプト倒れでなく、ほんとに、子供の遊び場になっていました。 家具で作ったクライミングウォール 開発 好明 『受験の壁』や、 おはじきのようにボタンを台座に乗せるように投げる 野村 和弘 『笑う祭壇』など、 子供に混じって楽しみました。 しかし、この展覧会に期待するものでもないですが、味わい深さといった点では物足りなさもありました。

MOT Satellite 2019 - Wandering, Mapping
東京都現代美術館 企画展示室 地下2F, 東京都現代美術館周辺MOTスポット7箇所.
2019/08/03-2019/10/20 (月休;8/12,9/16,9/23,10/14開;8/13,9/17,9/24,10/15休), 10:00-18:00 (8/2,9,19,23,30 10:00-21:00).
今和泉 隆行 [地理人], Mary Corey March, 光島 貴之, サトウアヤコ, orangcosong + 進士 遙.

MOTサテライトは、美術館の活動を立地している地域に拡大しての、地域の魅力を再発見する企画です。 コレクション展にある 鈴木 昭男 『道草のすすめ-「点音(おとだて)」and “no zo mi”』 (2018-2019) [鑑賞メモ] も良いですし、美術館を超えて展示されたアート作品を観て回ることで周囲の環境を再発見するような企画自体は悪くないとは思うのですが、 テーマが「地図」ということで、全体的に物語的。 そのような街歩きの楽しさであればアート作品にきっかけをもらわなくても、と思ってしまうところもありました。 そんな中では、ピンや金属片などを打ち付た板を指先で触って鑑賞する 光島 貴之 (鍼灸師としても活動する、視覚障害者とのこと) の作品には、 感覚を研ぎ澄ますような面白さを感じました。

MOT Collection: Pleased to meet you. - New Aquisitions in recent years
東京都現代美術館 コレクション展示室
2019/07/20-2019/10/20 (月休;8/12,9/16,9/23,10/14開;8/13,9/17,9/24,10/15休), 10:00-18:00 (8/2,9,19,23,30 10:00-21:00).

リニューアル・オープン記念展コレクション展も第2期に入って、前回から展示にいくらか入れ替えがありました。 子供達の遊び場となった『あそびのじかん』の企画展示室から観客はほとんど流れてきておらず、 コレクション室は人も少なく落ち着いた雰囲気。 ビーズのような小さな陶土の粒を並べ積み上げて作った さかぎし よしおう の繊細な陶の作品や、 控えめな物音を立てながら静かに動く 毛利 悠子 のインスタレーション『I/O』 (2011-16) などを観つつ、 『あそびのじかん』の企画意図もわからないではないですが、 自分にとっては、こうして静かに作品を観ている方が良いなあ、と実感しました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

10月12日土曜は台風19号本番の嵐で自宅避難。 予報もあったので木曜晩に水、食料、バッテリーなどの買い物をしておいたのですが、 金曜晩には地元のスーパーマーケットは入場制限しているし、棚も品薄になっていてびっくり。 しかし、「警戒レベル5 河川氾濫発生」のETWSメッセージを受けることになるとは。 報道の通り、武蔵小杉駅の東側から多摩川にかけて広範囲に内水氾濫が発生しましたが、 わずかに高くなっている自宅周辺は冠水浸水の被害は免れました。 水害時は1mあるかないかの高低差が運命を分けるのだなあ、と。 しかし、地元のお気に入りの店の中には床上浸水の被害を受けたところもありますし、 近くの川崎市市民ミュージアムでは地下の収蔵庫が水没してしまうという大惨事。 自分は良かったと言える気分ではありません。

[3783] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Oct 20 23:38:32 2019

10月6日日曜は昼に横浜山下町へ。この公演を観てきました。

KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
2019/10/06, 12:00-12:45.
作・出演: 渡邉 尚 (頭と口) [Hisashi Watanabe (Atama to Kuchi)], Guillaume Martinet (Defracto).
音楽・演奏: 野村 誠; 音楽・装置: Sylvain Quement; ドラマトゥルク: Johan Swartvagher; 照明: Alrik Reynaud; 衣装: Eve Ragon; 編み手・ボール製作・通訳: 儀保 桜子.

2015年に活動を始め、2016年の渡仏後は 儀保 桜子 とのユニットになった 頭と口 の 渡邉 尚 [鑑賞メモ] と、 2016年に世田谷パブリックシアターに来日した Defracto [鑑賞メモ] の Guillaume Martinet による新作公演です。 メタな要素のあるコンセプチャルな作品だった Defracto: Flaque のようになるかと思いきや、 むしろ『逆さの樹』に近い、グニャっと動くジャグリングをする異形の動物、というか、ジャグリング妖怪たちの遊ぶ様を楽しむ1時間弱でした。

少し突起のビーンズバックでのジャグリングが多用されるわけですが、 技の高度さを見せるようなものでも、物語るようなものでもなく、 口で咥え投げるような動きでジャグリングしたり、二人仰向けになって足でバレーかテニスのようなゲームに興じたり、 軟体も駆使した奇妙な姿勢で戯れるよう。 野村 誠 も舞台脇で生演奏しますし、儀保 桜子 もアシスタント的にパフォーマンスに絡みましたが、 Flaque のような不条理な巻き込まれ方などはなく、 あくまで、そんな2人の「妖怪」的な姿勢と動きの面白さに焦点が当たったパフォーマンスでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3782] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu Oct 17 22:44:42 2019

10月5日土曜は、季節外れの真夏日。午後ゆっくりめに家を出て、世田谷 砧公園へ。 この展覧会を観てきました。

『チェコ・デザイン 100年の旅』
100 Years of Czech Design
世田谷美術館
2019/09/14-2019/11/10 (月休;9/16,9/23,10/14,11/4開;9/17,9/24,10/15,11/5休), 10:00-18:00.

Uměleckoprůmyslové museum v Praze (チェコ国立プラハ工芸美術館) のコレクションを中心に構成された、 19世紀末 Art Nouveau から東欧革命後の現在に至るチェコのデザインの変遷を辿る展覧会です。 Art Nouveau 期の Alphonse Mucha や、 戦間期 Avant-Garde の Josef & Karel Čapek [鑑賞メモ] や Karel Taige など それなりに観る機会がある有名なデザインもありますが、それらの展示はむしろ控えめにで、 共産政権時代や東欧革命後ものなど、今まであまり接する機会の無かったデザインが多く、とても興味深く観ることができました。

世紀末から戦間期にかけては、Art Deco や Art Nouveau はもちろん、 1910年代前半のチェコの前衛運動 Czech Cubism がフィーチャーされていました。 しかし最も目を引いたのは1927年に Ladislav Sutnar らによって設立された Krásná Jizba (The Beautiful Room の意) による、食器や家具、テキスタイルなどのデザインの 展示が充実していました。 装飾を配したシンプルなデザインの食器など戦後のモダンデザインのような洗練も感じますし、 赤と黒など少ない色で刷られた写真とタイポグラフィを駆使したカタログも Bauhaus か Russian Avant-Garde を思わせる格好良さで、こんなデザインが戦間期チェコにあったのか、と。

流石にナチス保護領からスターリン時代にかけてはデザインの冬の時代という感じでしたが、 1950年代後半の雪解け期から1968年のプラハの春の前後にかけて流行した Expo 1958, Brussels の Czechslovakia Pavilion から Bruselský styl (Brussels Style) と呼ばれるデザインにも焦点が当てられていました。 いかにも「ミッドセンチュリー・モダン」なシンプルながら有機的なフォルムと原色を多用したデザインで、共産圏といえども同時代性を強く感じるものでした。 その後の1970年代末から1980年代にかけて、チェコでもポストモダニズムがあったのですが、 機能主義的ながら画一的で粗悪な共産政権下での製品に対する批判という西側諸国とは違った文脈があったことにも気付かされるなど、 同時代性だけでなくその差異も興味深いものがありました。 東欧革命後は機能主義に回帰するようですが、デザインのトレンドとしてもヨーロッパとして一体化が進んだのかしらん、と。

子供向けの玩具やアニメーションについてもギャラリー1室を割いていたというのも、 人形劇やアニメーションの盛んなチェコらしいのかもしれませんが、 アニメーションなどそれだけで単独の展覧会が開けようなものですし、 むしろデザインにおけるスタイルの変遷との関係など、デザイン展らしい切り口も欲しく感じました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

展覧会を観た後は、若林時代の大家さん宅へ。 大家さん宅の屋上からたまがわ花火大会を観ました。 もちろん、メインはその後の宴会。隣に住んでいた頃のように、23時半頃まで呑んでしまいました。 (それでも、電車で帰れてしまうのが、恐ろしい。)

[3781] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Oct 16 23:18:38 2019

10月4日金曜の晩は、仕事帰りに渋谷へ。このライブを聴いてきました。

Gordon Grdina + 道場 [DōJō]
公園通りクラシックス
2019/06/05, 19:30-21:30.
Gordon Grdina (oud, guitar); 道場 [DōJō]: 八木 美知依 [Michiyo Yagi] (electric 21-string and 17-string kotos, electronics), 本田 珠也 [Tamaya Honda] (drums).

カナダの太平洋側、ブリティッシュコロンビア州ヴァンクーヴァーを拠点に活動する oud / guitar 奏者 Gordon Grdina の初来日です。 ヴァンクーヴァーの jazz/improv レーベル Songline からのリーダー作をリリースしてきており、 oud の音色を生かし、アラブ音楽的な旋法やリズムも感じる jazz/improv を楽しんでいたので、 10/3-5と共演相手を変えて続いたライブの2日目に行ってみました。

休憩挟んで前半、後半、アンコール無しの約2時間、 後半の冒頭で Grdina の oud のソロがありましたが、残りは3人での演奏でした。 共演相手からある程度予想されたことですが、 Gordon Grdina, François Houle, Kenton Loewen, Benoît Delbecq: Ghost Light (Songlines, SGL1621-2, 2017, CD) や Gordon Grdina's The Marrow: Ejdeha (Songlines, SGL2409-2, 2018, CD) などで聴かれるような音の間合いを生かした演奏では無く、 Grdina も guitar を弾くことが多く、ラウドでロック的なイデオム強めの音密度の濃い即興でした。 Grdina の guitar は低音に迫力があって、その上に 八木 の箏の高音が散りばめられていくような展開など、楽しめました。 が、疲れた金曜晩に聴くには少々重過ぎるようにも感じてしまいました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3780] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Oct 15 22:28:58 2019

9月28日日曜の昼に横浜へ行った後は、一旦、帰宅したものの、夕方には錦糸町へ。 このコンサートを聴いてきました。

すみだトリフォニーホール
2019/09/18, 17:30-20:00.
Български гласове – Ангелите [Bulgarian Voice Angelite], Катя Барулова [Katya Barulova] (conductor); guest: 笙アンサンブル《星筐 -Hoshigatami-》: 東野 珠実, 三浦 礼美, 中村 華子.

Хор БРТВ, София [The Bulgarian State Radio & Television Female Choir, Sofia] (ブルガリア国営ラジオ・テレビ局コーラス) を母体に1987年に結成されたブルガリア女性コーラスグループの日本公演です。 もともとソロで歌われていたブルガリアの民謡に1950年代 Филип Кутев [Philip Koutev] らによって女声ポリフォニーとして編曲されるようになり、 それが1980年代に欧米に Мистерията на българските гласове [Le Mystère des Voix Bulgares] として紹介され知られるようになった、 倍音成分多めの地声の女声ポリフォニーです。 欧米に広く知られた後、ドイツの音楽レーベル/エージェント JARO の下で別れて活動するようになったコーラスが The Bulgarian Voice – Angelite です。 (当初は JARO のコーラスも Le Mystère des Voix Bulgares と名乗っていましたが、名称の権利が Хор БРТВ 側にあることになって、The Bulgarian Voices – Angelite と名乗るようになったということのようです。) 現在の指揮者/音楽監督は2018年に就任した6代目の Катя Барулова [Katya Barulova]。 Le Mystère des Voix Bulgares や The Bulgarian Voices – Angelite は、 1986年の Le Mystère des Voix Bulgares (Disques Cellier, 1975; 4AD, CAD603, 1986, LP) のリリース以来、 レコード/CDでそれなりに聴いてきましたが、生で聴いたことがなかったので、これも良い機会かと足を運びました。

休憩を挟んで前半、後半、あと長めのアンコールで2時間半程度のコンサートでした。 ブルガリア各地の民族衣装を纏った18人の女性歌手が、ソロや少人数の掛け合いで前に出たり、ゆっくり歩きながらもありましたが、ほぼ横一列に並び、コーラスします。 ゲストの入った後半の頭とアンコールの一部を除き、ほぼコーラスのみで、 曲により percussion や тамбура [tambura] を軽く添えることもあった程度でした。 レコード/CDでそれなりに聴いてきたので、新鮮さ面白さはありませんでしたが、 倍音成分多めのコーラスはCDよりもライブの方がよく聞こえます。 ソロとか掛け合いとかが視覚化されますし、民族衣装もチャーミングで、レコード/CDで聴くよりわかりやすく、楽しめました。 (隣席が咳が多い人で、後ろの席が小声でうめくように独り言いい続ける人で、 ライブの良さ悪さ相殺という感もありましたが。まあ、ライブではこういう時もあります。)

The Bulgarian Voice – Angelite は他のミュージシャンとの共演も多く、 特にロシアの Moscow Art Trio や中央アジア・トゥバの Huun-Huur-Tu との共演はかなり良いものでした。 このコンサートでは、雅楽の笙アンサンブルと競演しましたが、音色が似過ぎて出会いの妙というものは感じられませんでした。 雅楽と共演ではブリガリアの民謡に基づく曲を2曲演奏する一方で、 日本の歌を取り上げたのですが、それらは雅楽と関係なく「ソーラン節」と「ふるさと」。 日本の伝統的な音楽を演奏するミュージシャンと共演したり、日本の歌を取り上げてたりするのであれば、 何か一つのコンセプトに基づくディレクションがされてる方が良いと思うのですが、 そういう脈略が全く感られなかったのは残念でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3779] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Oct 14 22:49:46 2019

9月28日日曜は昼に横浜みなとみらいへ。 ラクビーワールドカップ2019はほとんど観ていないのに、このパフォーマンスを観てきました。

ラグビーワールドカップ2019ファンゾーン, 臨港パーク, 横浜
2019/09/07, 12:30-13:00.
Choreographer: Fearghus Ó Conchúir; Composer: Tic Ashfield; Costume Designer: Carl Davies; Costume Supervisor: Angharad Griffin.

日本開催のラグビーワールドカップ2019へのウェールズ出場に合わせて、 National Dance Company Wales が来日し、ラクビーを題材とした作品を関連会場で上演していました。 ヨーロッパの公的なダンスカンパニーとはいえ有名とは言い難く、 こういう機会でもなければ観る機会のなさそうということもあり、 横浜のファンゾーンでの上演を観てきました。

ラグビーで見られる動きを再構成したコンテンポラリー・ダンス作品といったものでした。 プレイヤーだけでなく応援する観客のしぐさなども動きの要素もありましたが、 コスチュームもラクビージャージで、やはり試合中のプレイヤーの動きをメインに用いていました。 縦の動きもラインアウトのリフトに着想したものでした。

特にコミカルな演技を交えるようなことはなく、 試合中の動きをスローダウンして、ダイナミックさより姿勢の美しさ面白さを見せるもので下が、 間近で観たこともあり、迫力は十分でした。 音楽にラグビーと関係する歌などを使うことはなく、抽象的なエレクトロニカをあわせていました。 サッカーに着想した Ballet de Lorraine の Discofoot などもあり、ありがちな作品とは思いますが、 ジャージを着て芝の上で実際の試合中のように芝や土にまみれながら演じるという所に、 劇場上演される作品との違う面白さも感じました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

ついでにファンゾーンで昼食して帰っても良いかと思っていたのですが、 天気が良いわけでもなく、試合観戦で盛り上がっているわけでもなく、 屋台を前にしても気が乗らず、結局、パフォーマンスだけ観て帰ることになってしまいました。うむ。

[3778] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Oct 14 19:46:53 2019

9月28日土曜は昼前に池袋に西口へ。 藤倉 大 をアーティスティック・ディレクターとして 2017年に始まった現代音楽とその周辺の「新しい音」のフェスティバル 『ボンクリ・フェス』 (“Born Creative” Festival)。 子連れでも楽しめる企画が多いというのが特徴でしょうか。 3回目の今年は PUNKTや 八木 美知代 が参加するということで、初回に続いて足を運んでみました。

少し早め昼前に行って 本條 秀慈郎 (三味線) や 東野 珠実 (笙) のアトリウム・コンサートを聴いたあと、このコンサートを聴きました。

『ボンクリ・フェス2019スペシャル・コンサート』
“Born Creative” Festival 2019 Special Concert
東京芸術劇場 コンサートホール
2019/09/28, 14:00-16:00.
1)Morton Feldman: Something Wild in the City: Mary Ann's Theme, for horn celesta and string quartet. Ensemble Nomade.
2)挾間 美帆 『颯(はやて)』 [Miho Hazama: Hayate]. Ensemble Nomade.
3)八木 美知依 『通り過ぎた道』 [Michiyo Yagi: The Road Not Taken]. 八木 美知依 [Michiyo Yagi] (箏 [koto]).
4)PUNKT live remix of “The Road Not Taken” by Jan Bang (electronics), Erik Honoré (electronics), Eivind Aarset (guitar, electronics), Nils Petter Molvær (trumpet, electronics), 藤倉 大 [Dai Fujikura] (electronics).
5)Terry Riley: In C. Ensemble Nomade, Nomade Kids, 八木 美知依 [Michiyo Yagi] (箏 [koto]), 本條 秀慈郎 [Hidejiro Honjo] (三味線 [shamisen]).
6)坂本 龍一 [Ryuichi Sakamoto]: honj I - III. 本條 秀慈郎 [Hidejiro Honjo] (三味線 [shamisen]).
7)大友 良英 [Yoshihide Otomo] 『振動と回転』. 大友 良英, 川越 聡子(東京芸術劇場副オルガニスト) (pipe organ).
8)藤倉 大 『春と修羅』(映画『蜂蜜と遠雷』より) [Dai Fujikura: Spring and Asura]. 萩原 麻未 [Asami HHagiwara] (piano).
9)藤倉 大 『ホルン協奏曲第2番』 [Dai Fujikura: Horn Concerto No. 2]. 福川 伸陽 [Nobuaki Fukukawa] (horn), Ensemble Nomade.

現代音楽というかモダン・コンポジションを中心に選曲されていますが、 Nomade Ensemble に子供のアンサンブルを加えての In C など 微笑ましい演奏もある、緩めのコンサートでした。 特殊奏法を含む horn とアンサンプルがかけあう藤倉 大 『ホルン協奏曲第2番』など、 いかにも現代音楽らしい曲の方が楽しめたように思いますが。 一番の目当ては、八木 美知依 と PUNKT live remix でしたが、 Super Deluxe、公園通りクラシックス、新宿Pit Innなどなどて聴いてきた 八木 美知依 『通り過ぎた道』も、 こういうコンサートホールでソロで聴くとぐっと凛とした印象を受けます。 PUNKT live remix はアンビエントな音空間に『通り過ぎた道』の淡い断片が散りばめられたようでした。

事前申込が必要と気づいておらず「〇〇の部屋」と題したプログラムは観れなかったのですが、 PUNKTだけは立見で入ることができました。

『PUNKTの部屋』
PUNKT's Room
東京芸術劇場 ギャラリー1
2019/09/28, 17:40-18:25.
Jan Bang (electronics), Erik Honoré (electronics), Eivind Aarset (guitar, electronics), Nils Petter Molvær (trumpet, electronics).

PUNKTの2人 (Jan Bang, Erik Honoré) にゲスト相当の2人 (Eivind Aarset, Nils Petter Molvær) を加えての1時間弱ノンストップのライブでした。 Aarset や Molvær の出す楽器音だけでなく、お互いが電子的に加工した音に、次々と加工を重ねていくような即興演奏なのですが、 アンビエントな出だしから、重いビートが入る展開なると Norwegian National Ballet の Ibsen 原作のバレエ [鑑賞メモ] に付けた Molvær や Bang の音楽を思わせました。 そこから、八木 美知依 『通り過ぎた道』 の断片や男性ヴォーカル (おそらく David Sylvian のもの) の断片など、 他の音源も用いて微かに散りばめる展開へ。 後半、Molvær の緩くフラットなフレーズをベースに Brian Eno: Discrete Music を思わせる展開となって、 これは明らかに意識してのものだったのではないかと。

1時間弱の短いライブでしたが、良かっただけに、もっとちゃんとした会場でフェスティバルの一部ではなく PUNKT をメインとしたライブを観たいものです。 というか、やはり、Norwegian National Ballet の Ibsen 原作バレエを生伴奏でみたいものです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

19時からのコンサートホールを使っての“出演者なしの電子音楽コンサート”「大人ボンクリ」も 途中まで聴いたのですが、結局、脱落。 昼前からの疲れた晩にあの音楽で、睡魔との戦いになってしまいました(弱)。

[3777] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Oct 8 0:02:15 2019

9月22日日曜は午後に恵比寿へ。この展覧会を観てきました。

Her Own Way - Female Artists and the Moving Image in Art in Poland: From 1970s to the Present
東京都写真美術館 地下1階展示室
2019/08/14-2019/10/14 (月休;月祝開,翌火休) 10:00-18:00 (木金-20:00,8/15-8/30木金-21:00).

共産政権下の1970年代から現在に至るポーランドにおける美術の文脈における映像表現を、特に女性作家という観点から見た展覧会です。 形式的な面白さや美しさを狙った作品というより、フェミニズム的な視点の強いドキュメンタリ色濃い作品がメインの展覧会でした。 さすがに1970年代となると、共産圏においても西欧と同時代的なビデオアートが試みられていたのかという時代的な興味以上のものを見出すことは難しいものがありました。 しかし、21世紀のものとなると、興味深く感じる作品もありました。 Karol Radziszewski: America Is Not Ready For This (2012) は この展覧会でも取り上げられている1970sに活動を始めた Natalia LL が1977年の New York でどのように受容されたか当時の関係者の証言を集めたビデオ作品ですが、 1990年代のアイデンティティ・ポリティクスの主題とした注目される以前の現代美術がいかに西側欧米中心主義的だったか浮かび上がらせるよう。 「ミス・ポーランド」への挑戦を記録して作品化した Jana Shostak: Miss Polonii には、 アートと「ミスコン」の類似性に気付かされるというより、 ベラルーシからポーランドへの移民という彼女のバックグラウンドにEU圏であるかどうかの壁の高さを意識させられました。

TOP Collection — Reading Images: The Time of Photography
東京都写真美術館 3階展示室
2019/08/10-2019/``/04 (月休;月祝開,翌火休) 10:00-18:00 (木金-20:00,8/15-8/30木金-21:00).

東京都写真美術館の今年のコレクション展『イメージを読む』の第二期です。 畠山 直哉 の Slow Glass シリーズ [鑑賞メモ] や 佐藤 時啓 のライトペンのシリーズ [鑑賞メモ]、 杉本 博司 の「劇場」シリーズ [鑑賞メモ]、 田口 和奈 の ほとんど真黒の画面にうっすらと顔が浮かびあがるポートレイト 「あなたを待っている細長い私」[鑑賞メモ]、 Edward Ruscha: Every Building on the Sunset Strip など、好きな作品を久々に観て楽しんだのですが、 全体としてはテーマにピンとくるものが無く、ぼんやりとした印象となってしまいました。 といってもコレクション展ですし、個別に作品が楽しめるだけでも十分なのですが。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

2階の展覧会 『嶋田 忠 野生の瞬間 華麗なる鳥の世界』 ももちろん観ました。 野生の鳥類を捉えた動物写真を楽しんで観ましたが、 自分にとっては、きれい、かっこいい、かわいい、以外の語彙がほとんどないジャンルの写真なので、鑑賞メモは残しません。 しかし、動物写真は人気ありますね。写真家によるトークがあったこともあるのか、最も賑わっていました。

[3776] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Oct 7 0:48:45 2019

9月21日土曜は秋の彼岸の墓参だったのですが、終わった後に、初台へ。 会期末の迫ったこの展覧会に行ってきました。

東京オペラシティアートギャラリー
2019/07/10-2019/10/23 (月休;月祝開,翌火休;8/4休), 11:00-19:00 (金土11:00-20:00).

1980年代から活動を初め、1990年代に YBA (Young British Artists) に 近い文脈 (世代的には一回り上ですが) で注目されるようになった イギリスの現代美術作家 Julian Opie の個展です。 日本での美術館規模の個展は2008年の水戸芸術館以来でしょうか [鑑賞メモ]。 回顧展ではなく、2018-19制作の新作展です。

新作といっても、ピクトグラムのように簡略化された描線とフラットな色面で描く作風は相変わらず。 アクリル板や自動車塗装されたアルミによる看板のような素材のものから、 御影石の彫像やブロンズ像、液晶やLEDのディスプレイを使ったアニメーションまで、多彩なメディア展開をしていました。 街を行き交う人々やジョギングする人々を真横から捉えた作品が多く、 スチルのイメージはもちろん、小走りのピョコピョコした動きなど、可愛らしい印象です。 単純化された描線とはいえ、ヘッドホンなどのアイテム、Tシャツや刺青の柄など、人物を特徴付ける部分だけ解像度を上げている所も面白く感じられました。

アクリル板の厚みのような凹凸はあれどのっぺりとしたイラスト的な平面作品や 「液晶絵画」的なアニメーション [関連する鑑賞メモ] という印象が強い Opie けに、 平面作品での Opie らしさをそのままに、(黒塗りですが) ブロンズの女性の立像や動物 (ひつじ) の御影石像といったある意味オーソドックスなメディアで作品化しているところに、興味を引かれました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

なんとなく10月頃までやっていると勘違いしていたのですが、気付いたら会期末の週末でした。 会期末なので混雑しているかなと思っていたのですが、さほどでもなく。 会場で、10代後半くらいの女性2人組が「かわい〜。これ、絶対観たいと思っていたの〜」「かわい〜」と会話していて、微笑ましいというか、なんというか。

[3775] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Oct 2 23:56:59 2019

9月18日水曜の晩は仕事帰りに横浜関内へ。このライブを観てきました。

横濱エアジン
2019/08/18, 19:30-21:30.
The Second Approach Trio: Андрей Разин [Andrei Razin] (piano), Татьяна Комова [Tatiana Komova] (voice), Игорь Иванушкин [Igor Ivanushkin] (doublebass); guest: 北 陽一郎 [Yoichiro Kita] (trumpet, pocket trumpet).

ロシア・モスクワを拠点に活動する1999年結成の女性 voice / piano / bass のトリオ The Second Approach Trio の初来日です。 Boheme, Solyd, ArtBeat のようなロシアのレーベルはもちろんイギリスのレーベル Leo からのリリースもあり、 CDで聴く機会はありましたが、もちろんライブは初めてです。 14日土曜に Jazz Art Sengawa 2019 に出演していたのですがスケジュール合わず、 平日晩の18日に観てきました。 前半は3人で、休憩を挟んで後半は 渋さ知らず での活動でも知られる trumpet 奏者 北 陽一郎 をゲストに迎えてのセッションでした。

Татьяна Комова [Tatiana Komova] は ロシアらしく倍音成分多めの声を使うこともありましたが、それも控えめ。 北欧などに多いテクスチャ的なものでもなく、むしろリズミカルなスキャットが中心でした。 CDで聴いていた時はアブストラクトな即興の面を強く感じたのですが、 むしろノリ良く盛り上げてくるライブで、なかなか楽しめました。

前半の2曲目に Bartok を曲をモチーフに中東欧の曲も演奏しましたが、 続く3曲目、4曲目 (前半ラスト) は Commedia dell'arte のストックキャラクター Colombina をテーマにした曲に、 Tarantella に着想した曲と、むしろ、南欧を思わせる明るい曲想でした。 時に ragtime 風にすら聞こえる piano も強いリズミカルなタッチ。 まさか、Maria Pia De Vito / Rita Marcotulli などの南欧の jazz/improv. にすら近く感じることがあるとは、と、意外な面が楽しめたライブでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

せんがわ劇場の調布市直営から指定管理者制度への移行に伴い継続が危ぶまれていた Jazz Art Sengawa ですが、 結局、今年は9月12-15日に自主開催という形で開催されました。 Jazz Art Sengawa へは2008年の初回から2015,6年の2回を除き毎年行っており、今年も是非行きたかったのですが、出張と日程が被ってしまい断念。 その代わりに、平日晩は厳しいと思いつつ、このライブへ行くことにしたのでした。

公共劇場や公立美術館には、ショートレンジな地元密着だけでなく、商業ベースに乗り辛い実験的なアートの試みの場としての活動も期待しているのですが、 調布市せんがわ劇場の Jazz Art Sengawa 存続にしても、新潟市りゅーとぴあの Noism 契約延長の件にしてもそうですが、 とりあえずは乗り切ったものの厳しいものです。 事情に通じているわけではないのであまり多くは語りませんが、あいちトリエンナーレの件といい、日本の公立美術館、公共劇場、公的資金の入ったアート・イベントの類は、厳しい冬の時代に突入した感が……。

[3774] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Oct 1 23:23:02 2019

日曜9月15日の昼に銀座で映画を観たあとは、ランチや散策をしながら丸の内へ移動。この展覧会を観てきました。

All About Mariano Fortuny
三菱一号館美術館
2019/07/06-2019/10/06 (月休;祝・振替休月開;9/27,8/26,9/30開). 10:00-18:00 (金(除祝),第2水,8/12-15,最終週平日 10:00-21:00).

20世紀前半、スペイン出身でベネチアを拠点に活動した主に服飾デザイナーとして知られる Mariano Fortuny の展覧会です。 代表作と言える細かいプリーツのドレス “Delphos” はもちろん、 舞台美術・照明など幅広い活動を紹介していていました。 特に、Wagner に傾倒していて、間接照明を生かした繊細な照明演出を可能とするよう開発した球状の舞台背景 “Cupola Fortuny” に興味を引かれました。 ヴォルフガング・シヴェルブシュ 『光と影のドラマトゥルギー —— 20世紀における電気照明の登場』 (Wolfgang Schivelbusch. Licht Schein Und Wahn: Auftritte der elektrischen Beleuchtung im 20. Jahrhundert. 1992) では、 現代の照明を中心した舞台演出のルーツとして20世紀初頭の Edward Gordon Craig や Adolphe Appia の仕事が紹介されていますが [読書メモ]、 “Cupola Fortuny” もそれらと同時代の試みで、そんな時代を感じることができました。

もちろん Delphos も様々なヴァリエーションが展示されていましたが、 ワンピースだけでなくセパレートもあったり、襟ぐり袖ぐりの形や、サイドのガラス玉装飾など、 思っていたより多様なバリエーションが楽しめました。 Delphos ドレスの収納方法も展示されてましたが、プリーツの方向に丸めた上でゆるく捻るように丸めるというもので、 シルク素材でも変わらず、Issey Miyake の Pleats Please と同様の収納法になるのだな、と。

ランプシェードのプロダクト・デザインやテキスタイルのデザインを見ていると、 確かに戦間期のものともなるとスッキリしたシャープさを持つ Art Deco やモダニズムの影響も感じましたが、 曲線的な柔らかなデザイン、柄づかいもあり、やはり Belle epoch の時代の Art Nouveau 的なセンスの人だったのかな、とも感じました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

映画と展覧会のギャップが大き過ぎ、食い合わせが実に悪くなってしまいました。 しかし、このタイミングを逸するとどちらも見逃しになりそうということで。 ま、そういう時もあるでしょうか。

[3773] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Sep 30 22:26:11 2019

9月14,15日の週末も土曜は出張移動日で潰れてしまったのですが、 日曜は昼前に銀座に出て、この映画を観てきました。

Capharnaüm
『存在のない子供たち』
2018 / Lebanon/France/USA / colour - 2.35:1 / 125 min.
Réalisation: Nadine Labaki; Scénario: Nadine Labaki; Musique: Khaled Mouzanar; Production : Michel Merkt et Khaled Mouzanar.
Zain al-Rafeea (Zain, le garçon des rues), Yordanos Shifera (Rahil, la clandestine éthiopienne, mère de Yonas), etc.

レバノンのスラムを舞台とし、そこで生きる子供たちが直面する問題 (ドメスティックな暴力、人身売買など) を、主人公であるスラムの少年 Zain の視点から描いた映画です。 その背景にある、パレスチナ紛争、レバノン内戦、シリア内戦など長年の戦争による難民問題、 アフリカらの不法移民就労者の問題も、もちろんスコープに入っています。 原題は「混沌」という意味ですが、 『存在のない子供たち』という邦題は身分証を持たないため人道支援、社会保障の類からこぼれ落ちて不利な状況に追いやられている状況からして結構的を射た邦題とは思いますが、 存在がない (=身分証がない) というのはスラム住まいだったり不法移民就労者だったりする親もそうだったりします。

ドラマ映画ですが、出演している俳優はプロフェショナルではなく演じる役柄に近いバックグラウンドを持つ人をオーディションで選んでいて、 主人公を演じた Zain al-Rafeea はシリア難民の子、 幼子を抱えて不法就労するエチオピア人女性 Rahil を演じた女性 Yordanos Shifera は やはりエチオピア出身で映画撮影中に強制送還されそうになった、というエピソードもあります。 物語はフィクションですが、出演者が実際に体験してきたことに近いエピソードがベースとなってるため、 子供を含むアマチュアの俳優とはいえ演技は自然です。 スラムや拘置所などの中でロケを行い手持ちカメラを駆使して撮影されていて、現場に立ち会っているかのようなリアリズム的演出がされた、ドキュドラマ的な映画でした。 問題への理解が深まった、身近に感じられるようになったと言うのも憚れる作品でしたが、 手持ちの手ブレ激しい画面が多く半ばで手ブレ酔いしてしまったにもかかわらず引き込まれ、 希望が無いながらささやかな救いのあるエンディングに涙してしまいました。

この映画の監督はレバノンの Nadine Labaki。以前に観たことのある Et maintenant, on va où ? 『私たちはどこに行くの?』 (2011) [鑑賞メモ] では内戦の一因たる宗教対立を扱いながら、リアリズム的ではなくあくまで風刺の効いたコメディに仕立てていました。 少しはコメディリリーフがあるかと予想して望んだのだけど、かなり直球にシリアスに作られた映画でした。 もはやコメディにする余地が無いくらい状況が悪化しているということなのでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

Nadine Labaki の映画はそれなりにチェックしていた (Instagram もフォローしていた) ので、 この映画の存在自体は知っていたのですが、こんな邦題で公開されているとは全く気付いていませんでした。 気付いた時には公開から1ヶ月以上たっていて、上映終了してしまう前にと慌ててしまいました。

[3772] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Sep 29 22:58:13 2019

例年と異なり9月上旬が繁忙期になってしまい9月7,8日の週末は職場に出ていたりしたのですが、 そんな合間を縫って、7日土曜晩にこのフラメンコ・ショーを観てきました。

Tablao Flamenco Garlochí
2019/09/07, 17:30-20:00.
Israel Galván (baile), Niño de Elche (cante, toque).
Programa Entrantes: 1)Recitando de Eugenio Noel 2)Fantango Cubista 3)Bulerías de la máquina 4)Tango del Reloj 5)Alegrías del cuerno 6)Pasodoble del Gallina; Programa Postres: 1)Seguiriyas carbónicas 2)Martinetes de la verdad 3)Saeta de Marchena 4)Pregón del oro 5)Granainas del agua 6)Sevillanas sentadas

ジャンルを越えた共演も多い「異端児」とも言われる flamenco ダンサー Israel Galván [鑑賞メモ] の tablao (レストランや居酒屋にある flamenco の舞台) での公演です。 Galván は劇場を活動の場としており tablao で踊ることは滅多にない、ということもありますが、 tablao で flamenco が踊られる場の雰囲気を知る良い機会かと、足を運んでみました。

休憩を挟んで前半 (Programa Entrantes) 1時間、後半 (Programa Postres) 1時間の公演でした。 彩の国さいたま芸術劇場での公演同様、黒シャツ黒バンツに控えめな照明。 伴奏の Niño el Elche は guitarra はほとんど用いず cante のみ。 伝統的な歌い方というより、テキストの詠唱もあれば、倍音成分の多い overtone singing に近い歌い方を交えたり。 ヘッドセットマイクを用いてリヴァーブをかけるような時も。 Galván のダンスは足踏みで細かくビートを繰り出す抽象的な楽器演奏のよう。 後半の冒頭、粗い黒い砂 (おそらく石炭を砕いたもの) を約 1×0.5 m の長方形に敷き、その上で踊り出すと、 ザクザクジャリジャリジリジリと通常の flamenco にはないようなサワリのテクスチャが加わりました。 Niño の cante も合わさり、動きというよりも音響的にとても面白く感じられました。

店内の調度品や基本の照明は暖色系ですが、演出での舞台照明はむしろ青みががることが多く、対照的で、 Galván の動きが出すオーラ、響いてくる音もあって、舞台上に宇宙空間のような異空間が出現。 終演後に写真/動画を撮る時間を作ってくれるサービスこそタブラオらしいと思いましたが、 呑みながら jaleo (掛け声) をかけつつリラックスして楽しむつもりで臨んだのですが、 baile/cante が途絶えても jaleo する隙も無い緊張感溢れるパフォーマンスでした。 ステージ脇ですが近い席で、迫力はもちろん、息遣いや、砂を踏むジリッという細かな響きにも直に触れるよう。 むしろ彩の国さいたま芸術劇場で観たときより、その flamenco の「異端」さを実感できました。

このようなパフォーマンスを観ると、やはり他ジャンルとの共演が面白そうです。 キャンセルされた2016年来日公演の Akram Khan [関連する鑑賞メモ] とのコラボレーション Torobaka が観られなかったのは残念です。 しかし、今、一番観たい Israel Galván 関連プロジェクトといえば、なんといっても、Cast-a-Net [PDF] です。 Sylvie Courvoisier (piano), Israel Galván (danse), Evan Parker (saxophone ténor/soprano), Mark Feldman (violon), Ikue Mori (électronique) という顔触れで、ダンスの公演という free improv 色濃い音楽のライヴといった方が良い内容です [Sylvie Courvoisier, Ikue Mori の関連鑑賞メモ, Evan Parker の関連鑑賞メモ]。 去年8月の、おそらく Festival Les Jardins musicaux での約1時間のコンサートの様子が 約1時間の Couvoisier 公式の映像 [Vimeo] で観ることができます。これで来日してくれたら、と思わざるを得ません。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3771] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Sep 23 20:54:13 2019

第一週は8月25日[鑑賞メモ]、26日[鑑賞メモ]に観た利賀の 第9回シアター・オリンピックス。 第一週も8月31日に観てきました。

利賀芸術公園 利賀大山房
2019/08/31, 17:00-18:15.
Text by John Cage, Created, directed and performed by Robert Wilson.
Associate director and performer: Tilman Hecker; Associate director: Ann-Christin Rommen; Dramaturgy: Stephan Buchberger; Makeup: Manu Halligan; Music: Arno Kraehahn; Video: Tomek Jeziorski.
Premiered on August 22, 2012 at the Ruhrtriennale Festival, Jahrhunderthalle, Bochum, Germany.

2012年の Ruhrtriennale で初演された John Cage のテキストに基づく、Robert Wilson による (ほぼ) 一人芝居です。 Wilson の作品は動画やスチルで色々観てきていますが、生で観たのは Woyzeck だけ [鑑賞メモ]。 オペラなどの大規模なプロダクションが目立つ中、一人芝居とは珍しいと、観てみることにしました。 床一面に書類が丸めて捨てられたかのような状態で、 Cage のテキストがプラカード的な手書きで黒で書かれた白地の布が舞台狭しと下げられています。 舞台中央に机椅子が置かれ、顔を白塗りにして白い服を着た Robert Wilson が、 椅子にかけて「何についてでもないレクチャー」を繰り広げる、というものです。 冒頭の場面こそ、悪魔を思わせる人物が後方の上方にいるのですが、特に何をするでもなく去ってしまいます。 Mayakovsky のポートレートなどの映像が後方に投影された李もするのですが、レクチャーとの関係は判然とせず。 照明の明るさが変わったり、Wilson が舞台上手のベッドに横になったり、激昂した口調になったりと、それなりに変化はあるのですが、劇的に何か起きるとは言い難い作品です。

いかにも禅問答のような Cage のテキストも彼らしいし、舞台のビジュアルも Robert Wilson らしいと思いつつ、 このような作品はそもそも「レクチャーには何らかの伝える内容がある」という前提があってこそ成り立つものじゃないのではないかと。 John Cage のテキストが書かれた20世紀のこのような作品の受容層にはそういう前提が共有されていたのだろうとも思います。 しかし、現在、経営セミナーやITセミナーの類に行けば、それなりの確率でそれに近いレクチャー、トークの類を聴くことができます。 そんな中でのこの Lecture on Nothing は、「何についてでもない」ことの意味深長さを考えさせられるというより、 アートのコンテクストで John Cage や Robert Wilson をありがたがるようなものではないかと、感じてしまいました。 Lecture on Nothing を観た後にこの動画を知ったのですが、 TEDのトークのパロディにして、セミナー等でよく見られるTED流のプレゼンテーションへの風刺にもなっている Will Stephen: How to sound smart in your TEDx Talk [YouTube] の方が、アクチュアルに感じられてしまいました。

利賀芸術公園 野外劇場
2019/08/31, 20:00-21:00.
構成・演出: 鈴木 忠志.
舞台美術: 塩原 充知, 岩崎 健一郎; 照明: 丹羽 誠; 音響: 小林 淳哉; 衣裳: 満田 年水, 岡本 孝子; 道具: 市川 一弥.
出演: 竹森 陽一 (老人); 中村 早香 (娘・早香); 長田 大史, 竹内 大樹, 飯塚 佑樹, 江田 健太郎, 守屋 慶二 (僧侶); 변 유정 [Byeon Yu-Jeong] (花嫁); 齊藤 真紀, 佐藤 ジョンソン あき, 木山 はるか, 鬼頭 理沙, 刘 欣 [Liu Xin] (紅白幕の女); 이 성원 [Lee Sung-Won], 加藤 雅治, 藤本 康宏, 平垣 温人, 平野 雄一郎, 平山 貴盛, 李 俊 [Li Jun], 趙 佳 [Zhao Jia], 枭 陽 [Xiao Yang] (車椅子の男).
花火師: 前田 徹, 高橋 保男, 高橋 光久, 須藤 優, 村松 秀隆, 吉田 倫哉, 植木 陽祐, 榎木 昌弘, 村井 智紀, 根岸 佑佳, 塩川 和典.
初演: 1991年 利賀 野外劇場 (日本).

1991年に利賀フェスティバル10周年を記念して、それまでの 鈴木 忠志 の作品から抜粋された場面を再構成し、花火ショーとしたものです。 鈴木 忠志 の作品を観てきていれば引用されている場面の意味もよくわかるのでしょうが、 観たことがあるのが『リア王』だけなので [鑑賞メモ]、そういったとこは掴みかねました。 しかし、花火ショーとしては、とても近いところから打ち上げられる花火だけに迫力満点でした。 舞台の後方に広がる池の反対側の岸がら打ち上げられると、花火が真上に広がり自分へ降ってくるかのよう。 池の上で繰り広げられる仕掛け花火も多様。 確かにこれは、利賀芸術公園以外での上演がかなり難しい作品だと、納得。 フェスティバルを盛り上げる花火ショーとして十分に楽しむことができました。

第9回シアター・オリンピックスで観た作品はここに書いたものだけでなく、 第一週25日に 鈴木 忠志 (演出) 『リア王』、Θεόδωρος Τερζόπουλος (Σκην.): Τρωάδες [鑑賞メモ]、 翌26日に Алаш [Alash] のコンサート、中國國家話劇院 / 劉 立濱 (導演): 《人生天地間》、 Российский государственный академический театр драмы им. А.С.Пушкина (Александринский) / Валерий Фокин (постановка): Сегодня. 2016 - ... [鑑賞メモ] を観ています。 シアター・オリンピックスは9月23日の第五週まで続きましたが、それ以降は足を運べませんでした。 一概に比べられるものではありませんですが、観ることができた7つの舞台のうち もっとも良いと感じられたのは Θεόδωρος Τερζόπουλος (Σκην.): Τρωάδες でしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

31日の夜も富山駅前まで戻ってから一泊したのですが、流石に疲れていたので、 翌9月1日は富山で観光したり美術館に立ち寄ったりすることなく、直帰したのでした。