TFJ's Sidewalk Cafe >

談話室 / Conversation Room

TFJ's Sidewalk Cafe 内検索 (Google)
[4330] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Feb 16 22:32:42 2026

この週末日曜晩は、配信でこのダンス映画を観ました。

2024 / ARTE France, Le Grizzly, Martha Productions, Heliox Films, RTBF / 44 min.
Directed by Tommy Pascal
Music: Max Richter The New Four Seasons - Vivaldi Recomposed
Spring
Choreography and Artistic Director: Franck Chartier; Creation in collaboration with and performed by Sarah Abicht and Alejandro Moya; Costumes: Yi-Chun Liu; A co-production: Peeping Tom.
Summer
Choreography, artistic direction and performed by Bobbi Jane Smith and Or Schraiber.
Autumn
Choreography and artistic direction: Imre & Mame van Opstal; Dancers Hessisches Staatsballett: Ramon John and Peng Chen; A co-production: Hessisches Staatsballett.
Winter
Choreography and artistic direction: Emilie Leriche; Performed by Emilie Leriche and Arika Yamada.
ARTE Concert URL: https://www.arte.tv/en/videos/121415-000-A/dance-of-the-seasons/ (- 2027/04/08)
NHKオンデマンド URL: https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2026154774SA000/ (- 2026/03/11)

2025年に ARTE Concert で配信されたダンス映画作品です。 公開当時、YouTube 公式チャネルで観ていましたが、NHKプレミアムシアターで放送されたので、その配信で再見しました。

テーマは Quatre saisons, quatre chorégraphies, quatre paysages, quatre duos de danseurs, quatre états du couple amoureux (四つの季節、四つの振付、四つの風景、四つのダンスデュオ、四つの恋愛カップルの状態)。 Max Richter が編曲 (再作曲) した Vivaldi: Le quattro stagioni [The Four Seasons] の季節の曲ごとに、 振付家を割り当て、その季節に合った雄大な自然が広がるロケーションで踊る様子を、ドローンを使った空撮も駆使したカメラワークで捉えた作品です。 基本的にカップルのロマンチックな関係をダンス化している所はありがちだなと思いつつも、 ARTE concert で放送・配信されるだけの洗練、完成度で、見応えありました。

春の振付は Peeping Tom の Frank Chartier [鑑賞メモ]。 清流とそれを取り巻く緑の茶畑、ラストはマングローブや浅瀬の海で、下着のような薄着の男女のカップルが踊ります。 Lynchesque ではなく、脱力した女性を男性が振り回し無造作に運ぶようなリフトに Peeping Tom らしさを感じました。

夏の振付は Bobbi Jene Smith & Or Schraiber。 振付家自身が演じる黒いドレスの女とワイシャツ黒パンツの男が、広い砂丘の中で踊ります。 冒頭に結婚指輪を砂に埋める場面があり、前半はクロースアップと遠景を使った演出も効果的に、 距離を置いて片方が苦悩するように踊るソロをもう一方静かに見つめたり。 既婚者同志の禁じられた愛と苦悩のダンスという感じで、中で最もロマンチックに感じられました。

秋の振付は Imre and Marne Van Opstal。 春夏と男女ペアでしたが秋は男2人のカップルで、ボロボロのスーツにスキンヘッド姿で、 針葉樹と葉がほとんど落ちた広葉樹から日の差す明るい林の中の敷き詰められた落ち葉や苔むした岩の合間や上で、また中盤で霧がかった荒野を挟んで、踊ります。 ブラザーフッドな感じかと予想しましたが、かなりロマンチックでした。

冬の振付は Emilie Leriche。女性2人のカップルで、山頂近い針葉樹林の間の雪原の中でスノーウェア姿で踊ります。 前半は喧嘩の取っ組み合いをダンス化したよう。ラストは一方がスノーウェアを脱いでもう一方の腕の中に残し、ほぼ全裸に近い姿で雪中を立ち去るという、別れを感じさせる終わり方でした。

この映像作品の監督 Tommy Pascal は、Béjart Ballet Lausanne と Ballet Preljocaj でダンサーとして活動し、 2007年にダンサーを引退した後、ダンスや音楽の映画/映像作品の監督となったとのこと。 今まで自分が観たものの中では、 Marit Moum Aune 振付・演出、Nasjonalballetten [The Norwegian National Ballet] の Ghosts — Ibsens Gengangere (2017) と Hedda Gabler (2018) [鑑賞メモ]、 Alexander Ekman 振付、Ballet de l'Opéra national de Paris の Play [鑑賞メモ] が Tommy Pascal 監督のものでした。 この Seasons of Dance [Les Saisons de la danse] は、 2025年第63回の Golden Prague International Television Festival で Grand Prix を 受賞したのをはじめとして、 様々な映像作品関係の賞を受賞をしています。

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[4329] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 15 22:10:41 2026

この週末土曜は昼過ぎまでゆっくりした後、夕方に池袋西口へ。この公演を観てきました。

東京芸術劇場 シアターイースト
2026/02/14, 18:00-19:20.
構成・演出・振付: 橋本ロマンス; 構成・演出・美術: サエボーグ.
出演: 岩田 柚葉, 松倉 祐希, UNA (パワーチキン), 河又 仁美 (サエシープ), 油井 文寧 (サエシープ), 今野 ゆうひ (サエポーク type 1), 大貫 友瑞, カミーユ, 髙橋 瑞季, 波多野 比奈, 廣瀬 一穂, マサムネ葵(鮭スペアレ), 川合 悦史 (サエポーク type 2), 原 知里 (サエチキン), 佐藤 靖子 (プーリンセス), 浅沼 圭 (ハエ/黒子).
舞台監督: 川上 大二郎(スケラボ), 守山 真利恵; 照明: 鳥海 咲 (Lighting Lab Ltd.); 音響: 遠藤 遥子; 楽曲制作: DJ TKD; 宣伝美術: 原田 晋; 制作進行: 清水 翼 (bench), 芝田 遥.

『Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展』 (東京都現代美術館, 2024) でサエボーグ を観た際に、 公演の方が面白そうと思っていたのですが [鑑賞メモ]、 それから約2年、やっと公演を観ることができました。 上演されたのは演出家・振付家・キュレーターとして活動する 橋本 ロマンス とのコラボレーションです。

東京都現代美術館での展示同様、空気で膨らませるラテックス製の舞台美術やボディスーツを使ったもので、その色彩造形もキッチュなもの。 登場するのは、家畜として改造された動物とその排泄物で生きる生物をカリカルチャライズしたキャラクターで織りなすパフォーマンスでした。 物語的な展開はほぼ無く、かといって音楽的に時間空間を抽象的に表現するものでもなく、儀式的とも感じられるパフォーマンスでした。

美術館でインスタレーションとして観るよりもその不気味可愛さが出て良かったと思う一方で、期待したほどには面白くはならなかったな、とも感じてしまいました。 エアーで膨らませたボディスーツは中の人の動きを制約する上に細かい動きを隠してしまうため、被り物を使ったキャラクターショーに近いものになってしまいます。 中の人が外のキャラクターとは前後逆向きに入っていると思われるサエチキンなど造形と動きの妙を感じるものもありましたが、 結局、新体操的な動きも駆使して飛び回った 浅沼 圭 のハエ/黒子が最も面白かったかもしれません。

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[4328] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu Feb 12 22:54:15 2026

祝日の昨日は、午後に渋谷へ。この映画を観てきました。

a film by Tarsem.
2006 / Googly Films (US) / 2024 (4K restoration) / 117 min. / DCP.
Lee Pace (Roy Walker / Black Bandit), Catinca Untaru (Alexandria / Bandit's daughter), Justine Waddell (Nurse Evelyn / Sister Evelyn), a.o.

1990年代にミュージックビデオの文脈で活動を始めたインド出身のアメリカの映像作家 Tarsem Singh の2006年の映画です。 当時は自分の興味のスコープ外という感もありましたが、4K版による再上映がロングランしていることもあり、観てみました。

20世紀初頭、サイレント映画時代のハリウッドで働いていたものの大怪我で下半身付随となり、恋人を主演俳優に奪われ、自棄的になったスタントマンと、同じ病院に入院していたオレンジの農場で働くインド移民の労働者の娘の交流と心情の変化を、 彼が彼女に話して聞かせる劇中劇の山賊を主人公としたおとぎ話と重ねて描いた映画です。 石岡瑛子が衣裳デザインを手がけ、世界遺産をロケ地に撮られた、劇中劇の場面でのスタイリッシュでファンタジー的な映像美は、さすがミュージックビデオ出身と思ったリオしました。 やはりミュージックビデオの文脈でも知られる Spike Jonze や David Fincher が presenting としてクレジットされているというのもあるでしょうか。 また、ナラティブの面でも病床のスタントマンや少女の心理描写も期待以上に丁寧。 サイレント映画時代の冒険活劇やスラップスティック・コメディにおけるスタントへのオマージュも感じられました。 しかし、おとぎ話などそんなものかとも思いますが、そこでの男女関係や主従関係の描写はステロタイプで内面描写に欠け、社会的背景の描写も薄く、少々空虚で引っ掛かりに欠けたでしょうか。

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[4327] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Feb 11 20:46:21 2026

先の週末土曜晩は、午後に引き続き初台で隣の建物へ移動して、今年の舞台鑑賞始めをしてきました。

The National Ballet of Japan: Ballet Coffret 2026
新国立劇場オペラパレス
2026/02/07, 18:00-20:10.
指揮: 冨田実里; 管弦楽: 東京交響楽団.
Choreography: David Dawson.
Music: Johan Sebastian Bach.
Set Designer: David Dawson; Costume Design: Yumiko Takeshima; Lighting Designer: Bert Dalhuysen.
出演: 直塚 美穂, 渡邊 峻郁, 花形 悠月, 山田 悠貴, 飯野 萌子, 中島 瑞生, 五月女 遥, 木村 優里, 根岸 祐衣.
World première: World Premiere: 15 June 2000, Het Nationale Ballet [Dutch National Ballet]; 新国立劇場初演: 2023.
上演時間: 18:00-18:30
Choreography: Hans van Manen.
Music: Astor Piazzolla (Todo Buenos Aires, Mort, Vayamos al diablo, Resurrección del angel, Buenos Áires hora cero).
Set and Lighting Design: Hans van Manen; Costume Designer: Jean-Paul Vroom.
出演: 小野 絢子, 福岡 雄大, 奥田 花純, 原田 舞子, 木下 嘉人, 原 健太, a.o.
World première: 3 November 1977, Het Nationale Ballet [Dutch National Ballet]; 新国立劇場初演: 2026.
上演時間: 18:55-19:20
Choreography: George Balanchine.
Music: Pyotr Ilyich Tchaikovsky.
美術: 牧野 良三; 衣裳: 大井 昌子; 照明: 磯野 睦.
出演: 柴山 紗帆, 李 明賢, 金城 帆香, 榎本 志結, 川本 果侑, 木村 優子, 仲村 啓, 渡邊 拓朗, 太田 寛仁, 小川 尚宏, a.o.
World première: 1947; 新国立劇場初演: 2000.
上演時間: 19:45-20:10

去年始まった20世紀以降の演目からなる新国立劇場バレエ団のトリプルビル公演、 去年が楽しめたので [鑑賞メモ]、今年も足を運んでみました。 今年は作品ごとに休憩を挟む形での上演でした。

最初は2023年の『ニューイヤー・バレエ』 [鑑賞メモ] で上演した David Dawson: A Million Kisses to my Skin。 その時と同様、ミニマリスティックでシャープな演出を楽しみましたが、今回は、男女の動きの差異に目が止まりました。 男女のダンサーが並んでユニゾンするように踊る箇所がかなりあるのですが、どちらも衣裳もシンプルなレオタードで、かつ Pas de deux のように明確に男女の役割で振り付けられていだけに、 腕や脚を上げた際などの形などの男女での差異が逆に浮かび上がって見えたように思います。 もちろん、こういう見方も、去年観た NDT2 [鑑賞メモ] の影響もあるかなとは思いますが。

続く Hans van Manen: 5 Tango's は、 Astor Piazzolla のタンゴ5曲を使った作品で、オーケストラ生伴奏ではなく、Piazzolla の演奏の録音 (おそらく Concerto de Tango en el Philpharmonic Hall de New York (Polydor, 1965) など) を使用していました。 動きや衣裳に男女の別はありますが、やはりミニマリスティックな演出で5曲それぞれに場面を作って音楽を表現する抽象バレエです。 男女が組むような所などにタンゴ的なものを感じますが、予想よりタンゴのイデオムは使わず、むしろ、極力バレエ・テクニックでタンゴを構築していくよう。 そこに面白さを感じましたが、赤黒の衣裳のイメージほど踊りにはシャープさを感じられませんでした。

ラストは Balanchine の抽象バレエ Themes and VariationsLe Palais de Cristal (1948) [鑑賞メモ] や Jewels [鑑賞メモ] なども思い出しますが、 使われるテクニックとクラシック・バレエ的な衣裳、というのはもちろん、宮廷のホールを思わせる美術に Tchaikovsky の音楽ということもあって、 クラシック・バレエの世界はそのままに、ナラティヴ成分だけ除去したものを観るよう。 抽象バレエ縛りのトリプルビルでしたが、コンテンポラリーな前2作と良いコントラストを興味深く観ました。

年明けから1ヶ月余り経ってしまいましたが、これが今年2026年の舞台鑑賞初め。 最近は新国立劇場バレエ団の年末年始は『くるみ割り人形』公演になり、『ニューイヤー・バレエ』はなくなってしまいました。 しかし、以前に『ニューイヤー・バレエ』で観た A Million Kisses to my Skin、 そして、クラシック・バレエ的なものを蒸留したかのような華やかな Themes and Variations で締めくくられるのを観て、 『ニューイヤー・バレエ』の代わりとなる今年の舞台鑑賞初めには丁度良かったでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4326] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 8 22:05:44 2026

この週末土曜は雪がぱらつく寒い天気。そんな中、午後遅めに家を出て初台へ。この展覧会を観てきました。

南米チリ出身で、クーデターと Pinochet 独裁を経験後、1982年に渡米、ニューヨークを拠点に現代美術の文脈で活動する作家の個展です。 最初期1970年代チリ時代の作品から、この展覧会のための新作までを辿る、回顧展的な内容でもあります。 受賞した 『プリピクテ Storm/嵐』 Prix Pictet: Storm [鑑賞メモ] の印象も新たですが、 このようにまとまった形で観るのは初めてです。

初期の作品を中心とした小規模な作品を集めた最初のギャラリーの展示は観念的に過ぎるかなと思いましたが、 1985年にブラジル東北部の露天掘り金鉱山 Serra Pelada の劣悪環境下で働く零細鉱夫 (Garimpeiro) を撮った写真に基づく «Gold in the morning» (1985/2002) や、 1994年にボスニア紛争に取材した «Europa» (1994) など典型的ですが、 報道写真としても成立するような写真を撮りつつ、それに、このような写真を撮る/観ること意味などを自省するメタな視線も加え、 ライトボックスや鏡も使った視覚的にもスタイリッシュなインスタレーションに落とし込みます。

もしくは、南アフリカ出身の報道写真家 Kevin Carter の1994年の Pulitzer Prize 受賞とその2ヶ月後の自殺を取り上げた «Sound Of Silence» (2006) では、 Carter のバイオグラフィ的な歩みを淡々とした語りと字幕のみで抑制的に示す展開から、 一転 Pulitzer Prize 受賞作で «The Vulture and the Little Girl» 『ハゲワシと少女』を示してフラッシュすることで、 報道か人命かとという議論を強く印象付けます。

『プリピクテ Storm/嵐』のようなグループ展の中で1作品だけ観ただけではわかりづらいメタな視点も腑に落ちるところがあり、 インスタレーションとしての仕上がりも上手いなと感心する展覧会でした。 しかし、主題的にもそういう所は狙っていないのかもしれませんが、観ていて「良かった!」という感じにならなかった展覧会でもありました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

Alfredo Jaar を観た後は、コレクション展示室でゆっくり。 相変わらずではあるのですが、いつものように 李 禹煥 などの抽象が静かに並んでいて、心が落ち着きます。

[4325] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Feb 2 22:34:31 2026

先の週末土曜の晩は家に帰って、毎年楽しみにしているサーカスのコンクールの配信を観ました。

Cirque Phénix, Paris
2026/01/24, 150 min.
Direction Artistique: Pascal Jacob.
École Nationale de Cirque de Montréal (Canada), Matìas Muñiz Del Rio (jonglerie, Argentien), Thomas Rochelet (sangles aériennes, France), Bert & Fred (Belgique), Lucas & Natalia (main à main, Finlande / Espagne), Colin André-Heriaud (equilibres sur chaises, France / Canada), Trio Rig'Humaine (cerceaux aériens, Canada / France (Guyane) / USA), Poésie Tribale (trapèze volant, France), Vladyslav Holda (jonglerie, Ukraine), Eline Guélat (mât chinois, Suisse), Gildo Gomes (sangles aériennes et contorsion, Angola), Machine de Cirque (planche coréenne rotative, Canada)
Une coproduction Telemondis et ARTE France; Réalisation: Guillaume Klein.
ARTE Concert URL: https://www.arte.tv/fr/videos/129956-000-A/45e-festival-mondial-du-cirque-de-demain/ (- 2027/01/24)

フランス・パリで毎年1月下旬頃に開催されているサーカス・アーティストの競技会 (コンクール) です。 レベルの高いサーカスのパフォーマンスが観られるので、例年 ARTE Concert で配信されるのを楽しみにしています [2017年の鑑賞メモ]。 年によってはジオブロックされることもあるのですが、今年 (2026年の第25回) はされず、観ることができました。

高度な身体能力という点では、 hair hang なども交え2つの hoop を介して人をぶら下げるなど複雑な構成で見せた aerial hoops [cerceaux aériens] の女性2男性1のTrio Rig'Humaine (Médaille d'Argent 受賞)、 大人数のチームでダイナミックな flying trapeze [trapèze volant] (空中ブランコ) をみせた Poésie Tribale が、特に見応えありました。

コミカルな演技では、女性 harp 生伴奏でクラウン的な危うげな演技を交えつつの balance on chairs [equilibres sur chaises] (椅子を積み上げてのバランス芸) の Colin André-Heriaud (Médaille de Bronze 受賞)、 Buster Keaton のようなデッドパンの演技で contortion (軟体芸) を交えつつの Chinese pole [mât chinois] を演技した Eline Guélat (Prix spéciau 受賞) を楽しみました。 これらは、日本の大道芸フェスや公共劇場の親子向け公演 (座・高円寺の『世界をみよう!』とか) にも合いそうです。

ラストは度々来日している Machine de Cirque (Grand Prix 受賞) [2024年の来日公演の鑑賞メモ]。 来日公演でも使っていた rotating teeterboard [planche coréenne rotative] (回転するシーソー) を女性1名を含む7名で演技するのですが、 普段着のような衣装で淡々と演じることで、大技を見るというより、自然なパフォーマー間の交流を見るよう。そんな演出が気に入りました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4324] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 1 21:39:15 2026

今週末土曜は昼過ぎに木場公園へ。これらの展覧会を観てきました。

Sol LeWitt: Open Structure
東京都現代美術館 企画展示室1F
2025/12/25-2026/04/02 (月休;1/12,2/23開;12/28-1/1,1/13,2/24休), 10:00-18:00.

20世紀後半 Minimal Art と Conceptual Art を橋渡しする文脈で知られたアメリカの現代美術作家 Sol LeWitt の個展です。 最近では『ミニマル/コンセプチュアル』展 (川村記念美術館, 2022) での立体作品が印象深いですが [鑑賞メモ]、 この展覧会は Wall Drawing の作品を8点展示していました。 東京国立近代美術館の常設に1点ありますが、これだけまとめて観る機会は無く、見応えありました。

Wall Drawing におけるSol LeWittの指示と実際に壁に描かれたドローイングの関係は、 その簡潔で抽象的な形態もあって、脚本とその上演というより、楽譜とその演奏 (インタープリテーション) の関係を見るよう。 解釈の裕度がある、もしくは、場所の条件が入り得る指示もあり、偶然性や即興を取り入れた作曲に近いものを感じました。 眼前の物質化された作品の向こうに理念的で抽象的な構造を想像しつつ楽しむという面もありますが、 立体作品と比べ Wall Drawings では、簡潔な形態だけに、形にした際の物の実感、テクスチャが逆に浮かび上がってくるようにも感じられました。

また1990年代の作品、小ぶりの版画作品 «Complex Forms» (1990) では手書きの非直線が使われてる一方で、 色面の塗り分けをという共通点のある «Wall Drewing #770» ではマスキングテープを使ったと思われる手書きを感じさせない直線が使われているなど、 その差異とコントラストも印象に残りました。

Tokyo Contemporary Art Award 2024-2026 Exhibition: Wetland
東京都現代美術館 企画展示室3F
2025/12/25-2026/03/29 (月休;1/12,2/23開;12/28-1/1,1/13,2/24休), 10:00-18:00.
梅田 哲也 [UMEDA Tetsuya], 呉 夏枝 [OH Haji].

東京都と TOKAS (Tokyo Arts and Space) によるアニュアルの現代美術の賞の第5回の受賞者展です [前回の鑑賞メモ]。 受賞者2名のうち 呉 夏枝 は『遠い窓へ 日本の新進作家 vol. 22』 (東京都写真美術館, 2025) [鑑賞メモ] に続いてですが、 梅田 哲也 は昔に 大友 良英 関連で観たことがあった程度で [鑑賞メモ]、最近の活動はほぼノーチェックでした。 これまでの受賞者展では選ばれた2名がそれぞれに展示を構成してきましたが、 今回は2人の作品が密に組み合わされ、2人が協働してインスタレーションを作り込んだような展覧会でした。

視線を誘導するようなオブジェや耳を引くような音響装置を配した足場を組んだ空中回廊等の大掛かりな 梅田 のインスタレーションの中に、 呉 の布や糸を使ったインスタレーションも配され、音響装置からは 呉 の作品に関連する語りが聞こえてきます。

様々な視線や音への注意が誘導される空間構成の中を歩いていくうちに、 呉 のルーツでもある済州島出身の祖母にはじまるナラティヴも辿ることになります。 足場の間を歩きながら誘導された視線の先の視野の面白さを堪能しつつ、 最後の《海人の道》と《椿の咲くところ》で呉のナラティブにじっくり向かい合う、という展開も良かったです。

mission∞infinity | space + quantum + art
東京都現代美術館 企画展示室B2F, ホワイエ他
2026/01/31-2026/05/06 (月休;2/23,5/4開;2/24休), 10:00-18:00.

『ミッション[宇宙×芸術]』 [鑑賞メモ] から10年、 国際量子科学技術年 (2025年) に合わせて開催された、宇宙や量子などのサイエンス領域とアートのコラボレーションの展覧会です。 10年前の展覧会もすっかり忘れていましたし、本を読んだりオーソドックスな作りの科学ドキュメンタリーを観た方が良いのではとは思ってしまいました。 しかし、そんな中では少々浮いてた気もしましたが、片岡 純也+岩竹 理恵 [鑑賞メモ] による《KEK曲解模型群》のユーモアを楽しみました。

MOT Collection: Multiple Self-portraits / NAKANISHI Natsuyuki, IKEUCHI Akiko: Arc and Catenary
東京都現代美術館 コレクション展示室
2025/12/25-2026/04/02 (月休;1/12,2/23開;12/28-1/1,1/13,2/24休), 10:00-18:00.

コレクション展示室の中では、3階の展示室を使った 中西 夏之 と 池内 晶子 の展示『弓形とカテナリー』。 『あるいは、地のちからをあつめて』 (府中市美術館, 2021-22) [鑑賞メモ] ぶりに、池内 の絹糸を使った繊細なインスタレーションの繊細な空間構成を楽しみました。 また、中西の絵画を壁掛けではなくレイヤーのように見えるよう宙に下げて展示しており、 泡や液体を思わせる抽象的な画面とその空間構成が合っていました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4323] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Jan 28 0:04:20 2026

先の週末土曜は昼に京橋へ。ランチの後、京橋を歩いていたら、 個性的な服装をした (おそらく外国の) 女性に National Film Archive へ行くか? と声をかけられたので、一緒にNFAJへ。 しかし、自分はそういう類の人に見えるのでしょうか。

国立映画アーカイブでアメリカ Anthology Film Archives 所蔵の映画を上映する企画 『アンソロジー・フィルムアーカイブス――アメリカ実験映画の地平へ』が開催されています。 アメリカの実験映画、個人映画、インデペンデント映画115本を23プログラムで上映するという大規模な企画ですが、その中から2つのプログラムを観てきました。

『抽象アニメーション作品集』
approx. 59 min.
Film Exercises 1 『フィルム・エクササイズ1』
1943 / John Whitney, James Whitney / 3 min. / 16 mm / color
影響下の Psychedelic な Allures 『誘惑』
1961 / Jordan Belson / 8 min. / 16 mm / color
Lapis 『ラピス』
1966 / James Whitney / 10 min. / 16 mm / color
God Is Dog Spelled Backwards 『神を逆さに綴ると犬』
1967 / Dan McLaughlin / 3 min. / 16 mm / color
An Optical Poem 『オプチカル・ポエム』
1938 / Oskar Fischinger / 7 min. / DCP / color
Polka Graph 『ポルカ・グラフ』
1947 / Mary Ellen Bute / 5 min. / DCP / color
Breathing 『呼吸』
1963 / Robert Breer / 5 min. / DCP / color
Duo Concertantes 『デュオ・コンチェルタンテ』
1962-64 / Larry Jordan / 9 min. / DCP / color
Frank Film 『フランク・フィルム』
1973 / Frank Mouris / 9 min. / DCP / color

アニメーション作家 山村 浩二 [鑑賞メモ] のキュレーションによる20世紀半ばのアメリカでの実験アニメーションの歴史を辿るプログラムで、上映後の本人による講演付きで観ることができ、大変に勉強になりました。 作品の上映はありませんでしたが、Dada のアーティストが関わったフランスの Cinéma Pur (純粋映画) やドイツ Absolute Film (絶対映画) 欧州戦間期 Avant-Garde の映画を起点に、 ナチス台頭後の移住でアメリカ・ハリウッドへにそれをもたらした Oskar Fischinger (Polka Graph, 1938)、 その直系的表現の Film Exercises 1 (1943) や An Optical Poem (1967)。 Henri Michaux の疎なドローイングをアニメーションにしたかのような Breathing (1963)。 Beatnik とそれに続く Hippie といった Counter Culture の下での Psychedelic な Allures (1961) や Lapis (1961)。 Max Ernst の銅版画コラージュをアニメーション化したような Duo Concertantes (1962-64) や名画を早めくりで時間軸コラージュしたような God Is Dog Spelled Backwards (1968) などの抽象というよりコラージュ的な映画。 そして最後は Jonas Mekas [関連する鑑賞メモ] の日記映画、私映画のアニメーション版のような Frank Film (1973)。 と、抽象というよりノンナラティヴな (Frank Film は私的な語りがありましたが) 実験的なアニメーションの系譜を辿ることができました。

『ハリー・スミス作品集』
approx. 54 min.
Film No. 11 (Mirror Animation) 『ナンバー11:ミラー・アニメーション』
1957 / Harry Smith / 4 min. / 16 mm / color
Film No. 15 『ナンバー15』
1965-66 / Harry Smith / 10 min. / 16 mm / silent / color
Film No. 14 『ナンバー14:レイト・スーパーインポジション』
1964 / Harry Smith / 28 min. / 35 mm / color
Film No. 19 『ナンバー19』
1978 / Harry Smith / 12 min. / DCP / color

Anthology of American Folk Music (Folkways, 1952) の編纂で知られ、 Beatnik や Hippie といった Counter Culture に影響を与えた芸術家・評論家 Harry Smiths の映画作品の特集上映です。 山村 浩二 の講演でも言及があり、『抽象アニメーション作品集』の Harry Smiths にフォーカスした続編とも言えるかと思います。 画面の抽象度はあまり高くなく、Counter Culture 的な、もしくは、私映画的な素材のコラージュのようなノンナラティヴな映画でした。

しかし、実験映画を観続けるのはさすがに厳しく、特に『抽象アニメーション作品集』の前半は少々記憶が飛んだ時もありました。 というか、2023年の恵比寿映像祭では [鑑賞メモ] どうして約7時間も見続けられたのだろう、と。気力体力の衰えを感じました。 また、昔 (2000年前後) であれば、こういうプログラムは東京国立近代美術館フィルムセンターというよりむしろイメージフォーラム・フェスティバルのような場で観るものだったな、と、時代の変化も感じました。

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上映の合間の時間に国立映画アーカイブ (NFAJ) 展示室で 『写真展 ハリウッドの名監督たち 映画芸術科学アカデミーのコレクションより』。 写真だけでなく、関連するNFAJ所蔵のポスターも多く展示されていました。 Alice Guy, Lois Weber, Dorothy Arzner や Ida Lupino などの女性の映画人 [関係する鑑賞メモ] も取り上げられていた所に、現代的な企画を感じました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

上映後、Ginza Maison Hermès Le Forum で 榎 忠, 遠藤 麻衣子, Élodie Lesourd 『メタル』 を観ました。 いかにも現代アートな展覧会でしたが、映画で気力体力を使い果たしてしまったか、観ていても上滑りしてしまいピンときませんでした。こういう時もあるでしょうか。

[4322] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 25 22:36:52 2026

この週末金曜は夜に、このコンテンポラリーサーカス作品をストリーミングで観ました。

Circa / Yaron Lifschitz
Philharmonie de Paris
2025/06/14,15, 84 min.
Created by Yaron Lifschitz and the Circa ensemble; Direction & Stage Designer: Yaron Lifschitz
with Jon Bonaventura, Laya Manuelshagen, Holly-Rose Boyer, Oscar Morris, Helga Ehrenbusch, Luke Pearce, Chelsea Hall, Joshua Strachan, Samuel Letch Christina Zauner.
Hans Jörg Mammel (tenor), Tanguy de Williencourt (piano), Thomas Enhco (piano).
Music: Franz Schubert (excerpt from Winterreise & Schwanengesang), Klara Lewis & Igor Stravinsky (Le Sacre du printemps)
Costume Designer: Libby McDonnell; Lighting Designer: Yaron Lifschitz and Richard Clarke; Assistant Costume Designer: Anna Handford
World premiere 19 September, 2018 – Brisbane, Australia
ARTE France, Oléo Films & La Cité de la Musique - Philharmonie de Paris présentent; Réalisation: Louise Narboni.
ARTE Concert URL: https://www.arte.tv/fr/videos/127025-000-A/en-masse-by-circa/ (- 2026-01-25)
YouTube ARTE Concert Channel URL: https://www.youtube.com/watch?v=88qx_SJ0xiU (- 2027-12-19)

オーストラリア・クイーンズランド州ブリスベンのコンテンポラリーサーサスのカンパニー Circa のパリ公演の配信です。 二幕構成で、第一幕はピアノ伴奏で歌われる Franz Schubert の歌曲 SchwanengesangWinterreise からの歌、そして時々挟まれる Klara Lewis の電子音響が、 第二幕は2台のピアノで Igor Stravinsky: Le Sacre du Printemps が使われていました。 そんな音楽に合わせて10人のパフォーマーがタワーはもちろんコントーションや床体操的な動きを含むアクロバットを演技するのですが、 派手な技をみせるというより、不穏なイメージをスケッチ的に描いていきます。 エアリアルのようないかにもサーカスらしい技が無かったこともありますが、音楽生伴奏によるアクロバットの身体語彙を使ったコンテンポラリーダンスと言ってもいいような作品でした。

冒頭の場面でこそ空気で膨らませた透明な方形の透明なビニールの小部屋を使いましたが、 舞台装置はほとんど使わず照明のみのブラックボックスの舞台で、 アクロバットパフォーマーはストレッチデニムのパンツに白Tシャツ姿という簡素なもの。 第一幕の歌手はボロボロのコートにニット帽という冬の浮浪者のような服装で、 傷心で死を求めて彷徨う Winterreise の主人公を思わせます。 第二幕も前半までは第一幕同様の暗めの青みがかった照明で陰鬱さを感じさせますが、 終わり近くになると赤い照明も入って動きも激しくなりむしろ不吉で不穏な展開になります。 やはり、オリジナルの Le Sacre du Printemps のような最後に生贄が選ばれるようなエンディングかと思いきや、むしろ皆が倒れてしまうようなエンディングでした。

電子音響の Klara Lewis は主に Edition Mego レーベルからリリースしているミュージシャンです。 (あまり強調することでもないとは思いますが、自分にとっては Wire / Dome の Graham Lewis の娘という印象が強いのですが。) こんな舞台の随伴音楽の仕事もしているのか、と。 上演中に舞台上にはいませんでしたが、カーテンコールで出てきたので、電子音響も生演奏だったのかもしれません。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

年末年始の休暇中に約1ヶ月の期限で配信中と気付いていたのですが、油断したらあと2日になってしまった、と、金曜夜に慌てて ARTE.tv で観たのですが、 観終わった後に YouTube の ARTE Concert 公式チャンネルでも配信されていることに気付きました。 こちらは、1年間、2027-12-19までと余裕がありました。 といっても、こういうきっかけで先延ばしせずに観てしまってよかったでしょうか。

[4321] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Jan 20 22:29:01 2026

先の週末土曜の晩は、このダンス作品をストリーミングで観ました。

Un espectáculo inspirado a partir del imaginario de Ruvén Afanador
Teatro Real
2024/02/9,10, 104 min.
Idea y dirección artística: Marcos Morau
Coreografía: Marcos Morau & La Veronal, Lorena Nogal, Shay Partush, Jon López, Miguel Ángel Corbacho; Dramaturgia: Roberto Fratini; Diseño de escenografía: Max Glaenzel; Diseño de vestuario: Silvia Delagneau Composición musical: Juan Cristóbal Saavedra Colaboración especial: Maria Arnal; Diseño de iluminación: Bernat Jansà; Diseño de audiovisual: Marc Salicrú.
Ballet Nacional de España, Director: Rubén Olmo.
Estreno absoluto en el Teatro de la Maestranza de Sevilla, el 1 de diciembre de 2023, por el Ballet Nacional de España.
ARTE France, Ballet Nacional de España, Elzévir Films présentent; Produit par Xavier Dubois; Réalisation: Isabelle Julien.
ARTE Concert URL: https://www.arte.tv/en/videos/118635-000-A/afanador-spanish-national-ballet/
NHKオンデマンド URL: https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2025153958SA000/ (-2026/02/04)

2024年に収録された Ballet Nacional de España (スペイン国立バレエ団) の作品で、 以前に ARTE Concert やNHKプレミアムシアターで放送/配信されたのですが、当時はアンテナにかからず。 去年のNDT2日本公演 [鑑賞メモ] で上演された Folkå の Marcos Morau の振付ということで、再放送/配信で観てみました。

コロンビア出身でニューヨーク拠点で活動する写真家 Ruvén Afanador が フラメンコに関わるダンサー、ミュージシャン等の女性を撮った Mil Besos: 1000 Kisses (Rizzoli, 2009) と、 同じく男性を撮った Ángel Gitano: the Men of Flamenco (Rizzoli, 2014) という2つの写真集に着想した作品です。 それらはその生活をドキュメンタリー的に捉えた写真ではなく、 極端な構図や不自然なポーズや衣装を使い造形的な面白さを強調したコントラストの強い白黒の演出写真なのですが、 そのヴィジュアルイメージからダンスを展開します。 その音楽や動きはフラメンコをベースにしたもので、全体として大きな物語は感じさせず、写真集のようにスケッチを連ねていきます。 その一方で、密集での動きや引き攣り振動するような動きに Folkå で観たような Morau らしさも感じました。 写真作品に出てくるバルコニーなどの大道具もありましたが、フォトセッションで使うスタジオの照明等に着想した舞台美術を使い、 写真のイメージ通り衣装は黒、照明は白色光のみの色彩感を抑えて、そんな写真の世界をスタイリッシュにダンス作品化していました。

ちなみに、Ángel Gitano: the Men of Flamenco (Rizzoli, 2014) では Ballet Nacional de España の2019年に就任した現在の芸術監督でフラメンコ・ダンサー (Bailarín) でもある Rubén Olmo もモデルをしています。 これもこの作品が作られた縁でしょうか。 この Afanador では Rubén Olmo は終盤にソロを踊っています (5台のティンパニの前で踊る男性ダンサーです)。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4320] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 19 22:28:32 2026

先の週末土曜の午後に横浜みなとみらいへ。この展覧会を観てきました。

Art between Japan and Korea since 1945
横浜美術館
2025/12/06-2026/03/22 (木休;12/29-1/3休), 10:00-18:00.

韓国の국립현대미술관 [国立現代美術館] との共同で企画された、第二次世界大戦後の日本と韓国の美術分野での交流に焦点を当てた展覧会です。 終戦後 (1946) から国交正常化 (1965) の間は当時の在日コリアンの作家もしくはこの時代をテーマとした作品を、 国交正常化前後から韓国の民主化 (1987) にかけては、 Nam June Paik [白 南準] の活動を日本との関わりの観点からと、 李 禹煥 [Lee Ufan] [感想メモ] が架け橋となった日本のもの派と韓国の作家の交流を取り上げていました。 民主化後の交流としては日韓で開催した 中村 政人 と 村上 隆 による『中村と村上展』 (1992) に焦点を当てていました。 最後は主に21世紀に入ってからの作家、作品を紹介していました。

ある程度予想していましたが、国交正常化前後から韓国の民主化にかけての展示が充実していました。 特に、李 禹煥 を通した交流した韓国のアートについては 『単色のリズム 韓国の抽象』 (東京オペラシティアートギャラリー, 2017) [鑑賞メモ] で観たものよりも、多様性に富んでいました (撮影可の作品が『単色のリズム 韓国の抽象』的な作品だったのが残念)。

その一方で、民主化直後の1990年代の交流が『中村と村上展』に絞られていたのは意外でした。 自分の記憶にあるものだけでも、 『亜細亜散歩』 (資生堂ギャラリー, 1994/1997/2001) [鑑賞メモ]、 『幸福幻想 ─ アジアの現代美術作家たち』 (国際交流フォーラム, 1995)、 そして、『火の起源と神話 - 日中韓のニューアート』 (埼玉県立近代美術館, 1996) や『90年代の韓国美術から-等身大の物語』 (東京国立近代美術館, 1996) [鑑賞メモ]など、 当時は、日韓というより日中韓(台)/アジアという枠組みが多かったように思いますが、その現代美術を紹介する展覧会が度々開催されていたので、他にもあったのではないかと。 日韓の2国間関係ではなかったから、韓国で並行する動きが無かったから、作家レベルでの交流に基づくものではなかったから、等を推測したのですが、その理由が気になりました。

この展覧会は2025年2月の全館オープン以来 約1年間開催されている一連のリニューアル記念展の最後の展覧会です。 リニューアル後、『第8回 横浜トリエンナーレ』 (2024) [鑑賞メモ] で一度足を運んでいますが、全館オープン後初めて足を運びました。 ミュージアムカフェがどうなったのか気になっていたので、偵察がてら入ってみました。 以前の三本珈琲によるCafe小倉山に代わって、馬車道十番館が入っていました。 アルコール類がなくなりメニューが縮小されましたが、個々のフードやスイーツのレベルはほぼ維持。 カウンター・下膳口、厨房も変更されましたが場所や雰囲気もほぼ維持されていたでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4319] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 18 21:30:10 2026

先週末の土曜は午後に竹橋へ。この展覧会を観てきました。

Anti-Action: Artist Woman's Challenges and Responses in Postwar Japan
東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
2025/12/16-2026/02/08 (月休;1/12開;12/28-1/1,1/13休), 10:00-17:00 (金土 -20:00).

戦後間もない1950s-1960sの日本の女性の美術作家による抽象的な絵画表現を、当時の欧米での潮流の日本での受容の観点から振り返る展覧会です。 1957,8年のフランスの美術評論家 Michel Tapié 来日による欧州の潮流であるアンフォルメル (Art informel) [関連する鑑賞メモ] の「旋風」の中で Tapié の評価もあって女性作家も評価されるようになったが、 次第に Tapié やアンフォルメルが批判されるようになり、1960年前後からは米国の潮流であるアクション・ペインティング (Action Painting) [関連する鑑賞メモ] が受容される中で、女性作家が批評対象から外れるようになったと言います。 アンフォルメルとアクション・ペインティング (もしくは抽象表現主義 (Abstract Expressionism)) は同時代の熱い抽象表現の欧州と米国での潮流という認識でしたが、 日本での受容には前後があり、後者の立場から前者が批判的に見られ、また、女性作家の評価が異なっていたということを知りました。 戦後美術を観る解像度が少し上がったでしょうか。

取り上げられてい作家は、この時期に抽象的な絵画表現に取り組んでいた女性作家で、具体美術協会(田中 敦子, 白髪 富士子) [関連する鑑賞メモ] や 実験工房 (福島 秀子) [関連する鑑賞メモ] などの活動に関わった作家や、 当時の抽象表現を推進した作家・批評家からの「後押し」を受けた作家が中心でした。 最近の活動もあり少し降った世代の作家という印象を持っていましたが、草間 彌生 もこの世代と認識しました。 2023年のコレクションによる小企画『女性と抽象』 [鑑賞メモ] とも被るところがありましたが、 『女性と抽象』で1/3を占めていた女性画家協会は『アンチ・アクション』のスコープでは前駆的な位置付けだったので、相補的にも感じられました。 昨年の東京都現代美術館コレクション展示室の企画「竹林之七妍」 [鑑賞メモ] に取り上げられた作家も含まれ、この界隈の最近の再評価の動きを感じます。 しかし、それらの展示と比べても、コレクション展中の小企画ではなく企画展ということもありますが、質量共にそして企画の切り口という点でも見応えがありました。

このような企画意図はありますが、1950s-1960s日本におけるアンフォルメルやアクション・ペインティングの受容や批評等の中での女性作家の扱いを、関連資料の展示で浮かび上がらせるような展覧会ではありません。 むしろ、それは展示前半にある年表や、会場14箇所で配布されるそれぞれ異なるテーマのテキストが書かれたA6判4ページの「別冊」で示される程度。 展示としては、関連する14名の作家の作品としっかり見せるものでした。 アンフォルメルや抽象表現主義と同時代を感じさせる抽象的な絵画が主ですが、 立体派などの戦間期アバンギャルドに近いデフォルメされた抽象度高めの具象や、60年代のポップアートに近い色彩感覚の作品まで、多様性も感じる展示でした。 多くはなかったですが立体作品も展示されていて、むしろそちらに目が止まってしまいました。 特に、今までほとんど意識することの無かった 多田 美波 の良さに気付かされました。 宮脇 愛子 や (立体はありませんでしたが) 福島 秀子 の抽象度の高さも良かったでしょうか。

会場で配布されてた別冊の「7 女性の美術家とファッション」で言及あるものの、福島 秀子 の舞台衣装デザインは出ていませんでした。 絵画中心の展示構成ですし、会場規模的な制約などもあるので、そうだろうとは思います。 しかし、以前にMOTコレクションの特別展示 [鑑賞メモ] で観てから10年以上経つので、また見直したいものです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4318] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 12 22:37:44 2026

かれこれ20年来の習慣のようになってますが、30日の若林時代の大家さん宅での餅つき宴の後は、実家での年末年始。 2日晩に自宅に戻って、3日は美術館初詣に写美。ということで、この展覧会を観てきました。

Prix Pictet: Storm
東京都写真美術館 B1F展示室
2025/12/12-2026/01/25 (月休; 月祝開,翌火休; 12/29-1/1休). 10:00-18:00 (木金-20:00)

サスティナビリティをテーマとした国際写真賞プリピクテ Prix Pictet の第11回の最終選考者 (ショートリスト) の展覧会です [前回の鑑賞メモ]。 今回のテーマは「Storm/嵐」ということでしたが、嵐のような短時間で発生する自然災害だけではなく長期的な環境破壊 (今回の受賞者 Alfredo Jaar のグレートソルトレイク)、 さらに、人間社会における「嵐」ということでしょうか、戦争や騒乱のような出来事を題材とした作品 (新井 卓 の広島原爆投下, Balazs Gardi のホワイトハウス襲撃, Belal Khaled のガザ、Laetitia Vançon のウクライナ) も半分近く占めていました。 そんな題材への興味もありましたが、いわゆる報道写真とは異なり、作家性の高いフォーマルでコンセプチャルな作風の写真が楽しめました。

特に良いと思ったのは、コンゴ共和国の Boudouin Mouanda。 2020年に首都ブラザビルを襲ったコンゴ川洪水に取材したものですが、洪水が治った後に、住民自身が直面した状況を象徴的な形で演じた演出写真としています。 一見では災害を題材としているとは思えないような、そして、サブサハラ・アフリカの現代美術 [鑑賞メモ] との共通点も感じる鮮やかの色彩を使った絵画的な画面作りです。 また、私物を持ち寄って撮影したことのことですが、被災する前の仕事、学校、家事や家族団欒など日常生活の様子を伺わせます。 さらに、被写体を、可哀想な被害者としてではなく、むしろ、普通の生活をしている人々として見ているようにも感じられました。

State of the Artist: So Far and From Now On
東京都写真美術館 2階展示室
2025/10/15-2026/01/25 (月休; 月祝開,翌火休; 12/29-1/1休). 10:00-18:00 (木金-20:00)
石内 都 [Ishiuchi Miyako], 志賀 理江子 [Shiga Lieko], 金村 修 [Kanemura Osamu], 藤岡 亜弥 [Fujioka Aya], 川田 喜久治 [Kawada Kikuji].

総合開館30周年記念で企画されたグループ展です。 美術館レベルでの個展でもおかしくないような作家5名で、個展を観たことがある作家もいて、既視感を強く感じる展覧会でした。 しかし、どうしてこの5人なのか、展覧会を通してのテーマはあるのか、どうも判然としないものがありました。 5人中2人が広島原爆投下に関わるテーマの写真が展示され、1人もそれに関する写真が含まれていたので、 展覧会を通底するテーマの1つのようにも感じられました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4317] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 11 22:58:44 2026

年末年始は26日、28日、4日と渋谷円山町へ。渋谷ユーロスペースで開催されていた 『中央アジア今昔映画祭 vol. 3 ウズベキスタン特集』で、これらの映画を観てきました。 (順番は観た順ではなく、公開年順です。)

Нежность
『やさしさ』
1967 / Узбекфильм (СССР) / 74 min. / B+W
Режиссёр [Director]: Эльёр Ишмухамедов.
Мария Стерникова (Лена), Ровшан Агзамов (Санжар), Родион Нахапетов (Тимур), Майя Махмудова (Мамура) и др.

Никита Хрущёв (フルシチョフ) 失脚 (1964) 間もない、まだ «Оттепель»「雪解け」の時代の雰囲気を残す1967年に公開された映画です。 1960年代のウズベキスタンの首都タシュケントを舞台に、少女時代に戦火のレニングラードから疎開してきた Лена、川辺で Лена を見かけて一目惚れする工場労働者 Санжар、 Лена と親しいながらプロポースは受け入れられない工場技術者 Тимур、 Тимур に片思いする Мамура というすれ違う男女を、余暇を過ごす時間の中で、明るく淡い陰影の画面で描きます。 そんな画面も、雪解けの社会の明るさの中にうっすら差す Лена の戦争のトラウマなどの影の、隠喩のようでした。

Горькая ягода
『苦い果実』
1975 / Узбекфильм (СССР) / 61 min. / colour
Режиссёр [Director]: Камара Камалова.
Ш. Гафурова (Наргиз), Шахноза Бурханова (Лали), Бехзод Хамраев (Эркин) и др.

バレエ中のお姫様に憧れるような無邪気な少女 Наргиз は少年グループのリーダー格の Эркин に憧れますが、 Эркин と一緒に出かけるために女性の親友 Лали との約束を破り仲違いしてしまいます。 さらに、Эркин は自身も Наргиз へ好意を持ちながら少年ならではの粗暴さと女心の読めなさで Наргиз を傷付ます。 小綺麗な別荘地のようなウズベキスタンの田舎を舞台にした、そんな Наргиз のひと夏のほろ苦い経験と、その心情の揺れ動きを、自然の中の明るい画面と、繊細な演技で描いていて、 女性映画というより少女映画といいたくなるような映画でした。

Абдулладжан, или Посвящается Стивену Спилбергу
『UFO少年アブドラジャン』
1991 / Узбекфильм (СССР) / 89 min. / colour
Режиссёр [Director]: Зульфикар Мусаков.
Раджаб Адашев (Базарбай), Шухрат Каюмов (Абдулладжан), Тути Юсупова (Холида, жена Базарбая) и др.

ウズベキスタンの集団農場 (コルホーズ) 近くに不時着したUFOに乗った高度な能力を隠し持つ宇宙人の少年 (Абдулладжан と名付けられる) と、 宇宙人とは気づかずに彼を助けた Базарбай と Холида の夫婦を核とするコルホーズ農家一家を巡るドタバタを描いたコメディです。 UFOでやってきた宇宙人という設定や、彼を捉えようとする大掛かりな軍の動きなど、SF的な設定もありますが、 むしろ、俗っぽく不器用だけれども悪気はなく人情味溢れる人々が繰り広げるホームドラマ的な人情コメディを楽しみました。 SF的な設定は、むしろ人情コメディとのギャップからの笑いのネタでしょうか。

Issiq Non [Hot Bread]
『熱いノン』
2018 / O'zbek film (UZ) / 87 min. / colour
Rejissyor [Director]: Umid Hamdamov [Umid Khamdamov].
Zarina Ergasheva (Zulfiya), Feruza Saidova (Zulfiya's uncle's wife), Munavvara Abdullayeva (Zulfiya's grandmother), etc

現代的な都会 (おそらくタシュケント) の寄宿学校から田舎の祖母の家に引き取られた少女 Zulfiya と、彼女を引き取った祖母、同居する叔母 (母の弟の妻) の、それぞれのうまくいかない人生を、 空撮も多用したダイナミックに撮られた美しいウズベキスタンの田舎を舞台に描きます。 両親は都会で豊かに暮らしていて迎えにきてくれると信じる Zulfiya ですが、 映画が進むにつれて、Zulfiya の母は再婚のため娘を祖母に預けることにしたこと、 母の弟は賭けトランプで村じゅうから大きな借金を負ったために湖での事故死を偽装してロシアに逃げたことなどが、明らかになって行きます。 父がいなくなった原因は読み取れなかったのですが、弟の問題が原因かもしれません。 Zulfiya は都会へ母に会いに行くものの、会いに来たことを半ば困惑気味に接せられるのですが、 そんな母も豊かな生活をしているのではなく、縫製工場で働いています。 行動的な主人公 Zulfiya やダイナミックに撮られた自然の風景に救われた感じはありましたが、 Zulfiya や彼女を取り巻く女性たちが現代のウズベキスタンで生きる困難をメロドラマチックに捉えた女性映画でした。

Faridaning ikki ming qo'shig'i [2000 Songs of Farida]
『ファリダの二千の歌』
2020 / Fox Music Cinema (UZ) / 110 min. / colour
Rejissyor [Director]: Yolqin To'ychiyev [Yalkin Tuychiev]
Bahrom Matjanov [Bahrom Matchanov] (Kamil), Elmira Rahimjonova [Ilmira Rahimjanova] (Husniya, Kamil's 1st wife), Yulduz Rajabova (Robiya, Kamil's 2nd wife), Sanobar Haqnazarova (Mahfirat, Kamil's 3rd wife), Marjona O'ljayeva [Marjona Uljayeva] (Farida, Kamil's 4th wife), etc

1920年頃の、ロシア革命後の内戦の中央アジアを舞台とした、(おそらくウズベキスタンのブハラ近くの) 山中に隠れるように住む老いた一人の男 Kamil とその4人 (実際は5人) の妻 (イスラームの一夫多妻に従っている) の物語です。 タイトルロールの若い女性 Farida が嫁いでくる場面から始まり、伝統的な、しかし女性を家事もできる子作りのための道具としか考えていないような抑圧的な生活を、 威圧的な男を囲んで沈黙が支配する食事の場面、ほとんど Farida が Kamil がほどんどレイプのようにセックスすることを強いられていることをほのめかす場面など、 説明的な台詞や直接的な暴力描写は控えめながら、明るいというより陰影の深いスタイリッシュな映像を通して描きます。 最も寵愛を受ける気の強い二番目の妻 Robiya と新しい妻 Farida の確執を感じさせる描写もありますが、 子が産めなかったばかりに山の洞窟に鎖に繋がれて捨てられた最初の妻 (彼女が歌う歌声が「2000の歌」) に食事を運んだり、 その仕事を三番目の Mahfirat に任せることで彼女の浮気 (これが発覚することで指詰めの体罰を受ける) を助けたり、など、密かで細やかな共闘も描かれます。

特に前半は、山中の家でも家族に閉じた生活描写が中心ですが、次第に、訪れた知り合いの白軍のロシア人軍人に妻も権利があると諭されたり、 バスマチ蜂起 (восстание басмачей) (革命直後のムスリム住民を中心とした反ソビエト武力運動)の反乱軍に協力を求められて家畜を皆持っていかれたりと、外からの変化が迫ってきます。 (その中で Kamil はブハラのアミールに仕えた有力者だが、故あって山中に潜んでいることが仄めかされます。) また、Farida の妊娠を期に Kamil の寵愛を失ったことを悟った Robiya は家から逃げ出します。 そして、Farida の恋人が Farida を救いにやって来て、Kamil に組み伏せられ殺されかけるものの、Farida が身を挺して彼を庇ったことで、 Kalim は状況を悟り、Farida だけでなく3人の妻を Farida の恋人と共に家から送り出します。 Kalim は洞窟に捨てた最初の妻を解放し、共にブハラへ戻ろうとしますが、そこに逃げた妻が Robiya が赤軍と共に戻り、 家は焼かれ、Kamil も Robiya 自らの手で銃殺される所で、この映画は終わります。 そんな、白軍、バスマチ、赤軍が入り乱れるロシア革命直後の状況を感じさせる描写も興味深い映画した。

観終わった後、検索していて「『ファリダの二千の歌』、要約が難しいが、『マッドマックス怒りのデス・ロード』のイモータンジョーと妻たちの暮らしみたいな話といえば良いのか。」というツイートを見つけたのですが、 なるほど、夫から逃げ出し赤軍に入って、赤軍と共に戻って Kamil を殺す二番目の妻 Robiya は、Furiosa のようなものと言えるかもしれません。 といっても、Mad Max Fury Road では話のメインとなる逃げ出してから戻ってくるまでは描かれませんが。 タイトルロールでもある Farida が主役かと思いきや、最後は Robiya ですし、ポスターと見ると Robiya が使われているので、むしろ主役は Robiya と言ってもいいかもしれません。

結局、今回の上映6本中5本を観ることができました。観る前はソ連時代の映画の方に期待していましたが、 むしろ、ソ連崩壊後というか、ここ最近十年の間に作られた2本、 Issiq Non [Hot Bread] 『熱いノン』 (2018) と Faridaning ikki ming qo'shig'i [2000 Songs of Farida] 『ファリダの二千の歌』 (2020) に感銘を受けました。

今回の上映のうち見逃した1本は、Батыр Закиров [Batir Zakirov] 監督の Очарован тобой 『きみに夢中』 (Узбекфильм (СССР), 1961)。 2024年の筑波大学第6回 オンラインによるロシア・中央アジア映画上映会で観たことがあるものでした。 ソ連時代雪解け直前に制作されたミュージカル映画を撮影する様子を劇映画化したもので、それ自体もミュージカル映画となっています。 映画のスタイルにしても、中で使われている伝統的な音楽・舞踏をオペラ・バレエ的な制度で舞台芸術化するかのようなスタイルにしても、 その時代を感じ、興味深いところはあったでしょうか。(2026/02/11追記)

[この鑑賞メモのパーマリンク]

この週末3連休土曜は午後遅めに早稲田大学 戸山キャンパスへ。 約1年ぶりに桑野塾へ。 その年に読んだ本、観劇した芝居など、印象に残っているものやお勧めしたいものを持ち合い、それぞれに話をする会が毎年年末に開催されるのですが、今回はそれが年明けになりました。 もはや、桑野塾で報告するようなネタが仕込める程の趣味生活はしていませんが、 このような場で人の紹介を聞くと、映画を観たり本を読んだりするキッカケが得られます。 で、自分のネタですが、 当初は2025展覧会・公演等 Top 10 1位を紹介するつもりでいたのですが、 急遽、この『中央アジア今昔映画祭 vol. 3 ウズベキスタン特集』と、 関連書籍として 梶山 祐治 『中央アジア映画完全ガイド』 (パブリブ, 2026) (発売日前にユーロスペースで入手) を紹介したのでした。 ちなみに、渋谷ユーロスペースでの上映は終わってしまいましたが、2月7〜20日に横浜シネマリンで上映予定となっています。

[4316] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 4 22:42:07 2026

12月最終土曜は2025年の展覧会観納めで、午後に2つのファッション展をハシゴしてきました。

Art Deco and Fashion: Centering on The Kyoto Costume Institute Collection
三菱一号館美術館
2025/10/11-2026/01/25 (月休(月祝を除く); 12/31,1/1休), 10:00-18:00 (1/2を除く金曜と会期最終平日、第2水曜日は-20:00)

京都服飾文化研究財団の服飾作品や資料のコレクションに基づく1920年代のデザインの流行 Art Deco をテーマとした展覧会です。 Paul Poiret, Jean Patou などの1920年代パリのモード、女性向けファッションを中心に据えた構成ですが、 Gabrielle “Coco” Chanel, Madeleine Vionnet, Jeanne Lanvin ら女性のクチュリエを特集したコーナーや、下着やスポーツウェアのコーナーも設けられているところが、この展覧会の特色でしょうか。 しかし、華美なハイファッションのドレスや装飾小物が多く展示される中、Art Deco 本流というよりむしろ同時代の Avant-Garde とも言える Sonia Delaunay のコートに惹かれてしまいました。

Timeless Art Deco with Van Cleef & Arpels High Jewelry
東京都庭園美術館
2025/09/27-2026/01/18 (月休;12/28-1/4休;10/13,11/3,11/24,1/12開,10/14,11/4,11/25,1/13休), 10:00-18:00 (11/21,22,28,29,12/5,6 -20:00)

19世紀末の1895年に設立されたフランスのハイジュエリー (高級宝飾品) メゾン Van Cleef & Arpels の展覧会です。 タイトルでアール・デコを謳い、特に本館では、 1925年パリ Art Deco 博 (Exposition Internationale des Arts Décoratifs et Industriels Modernes) でグランプリを受賞した Entwined Flowers, Red and White Roses bracelet をはじめ戦間期1920年代から30年代にかけての作品を中心に展示していました。 しかし、“Minaudière” (Van Cleef & Arpel が1933年に特許取得した小物入れ) のような装飾小物はまだしも、宝飾品は Art Deco に限らずモダン・デザインと相性の悪いことを実感してしまいました。 Bvlgari 展 [鑑賞メモ] では楽しめるポイントがあったのでそこを期待したのですが、やはり“not for me”と感じた展覧会でした。

しかし、三菱一号館美術館よりも東京都庭園美術館の方が混雑していたのは意外でした。 三菱一号館美術館の展覧会が、2022年の『ガブリエル・シャネル展』 [鑑賞メモ] のように有名なブランドもしくはその創設者をフィーチャーしてなかったということもあると思います。 また、同じ日に続けて観たこともあり、客層の違いに興味を引かれました。 ファッションやデザインに興味があるわけでなくそれらに関する展覧会には来ないような観客も宝飾品の展覧会は集客するのか、と。

2025年は Art Deco 博から100年ということで、Art Deco を謳った展覧会を2025年のうちに観ておこうと、年末に2つの展覧会をハシゴしたのでした。 しかし、2025年に Art Deco をジャンル横断的に回顧するような展覧会が無かったのは残念。 東京都庭園美術館の場合、毎年の建物公開と合わせて日本における Art Deco 受容などの展示をしていますし、 2022年には『交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー』 [鑑賞メモ] という展覧会もありましたし、 改めて企画する程ではなかったのかもしれません。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4315] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sat Jan 3 20:50:27 2026

12月第三週末土曜は午後に与野本町へ。コンテンポラリーダンスの公演を観てきました。

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
2025/12/20, 15:00-16:10.
演出振付: 金森 穣.
音楽:Arvo Pärt; 衣裳: 堂本教子、山田志麻
Noism0: 金森 穣, 井関 佐和子; Noism1: 中尾 洸太, 庄島 さくら, 庄島 すみれ, 坪田 光, 樋浦 瞳, 糸川 祐希, 太田 菜月, 兼述 育見, 松永 樹志, 春木 有紗.
初演: 2025年8月29日, 富山県利賀芸術公園 新利賀山房.

りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 の劇場付きダンスカンパニー Noism Company Niigata [鑑賞メモ] の2025年夏の公演は、 2023年に黒部市の前沢ガーデン野外ステージで上演した『セレネ、あるいはマレビトの歌』を改訂した劇場版で、 スロヴェニア公演を経ての帰国公演です。

Arvo Pärt の音楽を使い『Fratres I』 [鑑賞メモ] を含むということで予想していましたが、全体として祈りの色合いを強く感じる作品でした。 といっても、『春の祭典』 [鑑賞メモ] などを思い出すような集団と個、2集団間の対立などを描く場面や、 井関と金森のデュエットのような見せ場もあり、そんなところもNoismらしいと。 しかし、そんな場面を使ってナラティヴに物語を描くというより、全体として祈りの儀式を観るような作品でした。

この公演が終わって1週間後、「【独自】「Noism」金森穣芸術総監督が退任の意向「ほかの自治体での活動含め考えたい」」 (新潟日報, 2025/12/28 22:00; 最終更新: 2025/12/28 23:42) という報道がありました。 2日後、自身のブログに「芸術監督の上限付き任期を否定する理由」 (2025-12-30) を投稿しています。 公共性という観点でオープンかつ公平であることを考慮すると、また、新陳代謝を促す観点からも、公共劇場の芸術監督 (Artistic Director) の任期に上限を設けることは基本的に良いことと考えています。 しかし、それは、欧州のような公共劇場付き劇団/舞踊団の制度とそれをとりまくエコシステムの存在が前提で、 日本で唯一の劇場付き舞踊団といわれるNoismですら劇場に運営体制が整っておらず芸術監督の金森の尽力と幾分かのカリスマ性でなんとか維持できているという状況では、 芸術監督の交替は無謀だというのも、よくわかります。 日本にも劇場付き劇団/舞踊団が増えて欲しいと思っていますが、現在の日本では状況は厳しいと突きつけられるようなニュースでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

このままでは鑑賞メモのバックログが解消されないですし、そもそも時間が経つと印象や記憶も不確かになってしまうので、今年から、鑑賞メモは拙速でも早く書き上げることを重視しようと思います。

[4314] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Fri Jan 2 22:19:50 2026

2025年に入手した最近数年の新録リリースの中から選んだ10枚+α。 展覧会・ダンス演劇等の公演の10選もあります: 2025年公演・展覧会等 Top 10

#1
Clou
À l'évidence
(tôt Ou tard, BLV8603, 2024, CD)
[tôt Ou tard]
#2
Patricia Brennan
Of The Near And Far
(Pyroclastic, PR43, 2025, CD)
[Pyroclastic, Bandcamp]
#3
Pierre Favre, Sergio Armaroli, Andrea Centazzo, Francesca Gemmo
The Art Of Sound(s)
(Hat Hut / First Visit series by ezz-thetics 118, 2025, CD)
[Hat Hut, Bandcamp]
#4
Jo David Meyer Lysne
For renstemt klaver
(Hubro, HUBROCD2665, 2025, CD)
[Bandcamp]
#5
Maria Somerville
Luster
(4AD, 4AD0755CD, 2025, CD)
[4AD, Bandcamp]
#6
Mary Halvorson
About Ghosts
(Nonesuch, 075597896565, 2025, CD)
[Nonesuch, Bandcamp]
#7
Tarta Relena
És pregunta
(Latency, 028, 2024, CD)
[Latency, Bandcamp]
#8
Civilistjävel! x Mayssa Jallad
Marjaa: The Battle of the Hotels (Versions)
(Ruptured, RPTD064 / Six of Swords, SWORD03, 2025, DL)
[Bandcamp]
#9
Henry Threadgill
Listen Ship
(Pi Recordings, PI110, 2025, CD)
[Pi Recordings, Bandcamp]
#10
gamut inc
Aggregate - New Works for Automated Pipe Organs
(Wergo, WER7412 2, 2025, CD)
[Schott Music Group, Bandcamp]
次点
Beirut
A Study of Losses
(Pompeii Recording Co., POMP012, 2025, CD)
[Beirut]
番外特選
The Music Of Georg Friedrich Haas
東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル, 初台
2025/05/22, 19:00-21:00.
[鑑賞メモ]

[Records Top Ten 2025 のパーマリンク]

[4313] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Fri Jan 2 22:17:56 2026

2025年に歴史の塵捨場 (Dustbin of History)に 鑑賞メモを残した展覧会やダンス演劇等の公演の中から選んだ10選+α。 おおよそ印象に残った順ですが、順位には深い意味はありません。 旧作映画特集上映や劇場での上演を収録しての上映などは番外特選として選んでいます。 音楽関連は別に選んでいます: Records Top Ten 2025

第一位
Comédie de Genève, Tiago Rodrigues: Dans la mesure de l'impossible 『〈不可能〉の限りで』 (演劇)
静岡芸術劇場, 2025/04/25.
[鑑賞メモ]
第二位
Robert Wilson, Isabelle Huppert, Darryl Pinckney, Ludovico Einaudi: Mary Said What She Said (演劇)
東京芸術劇場 プレイハウス, 2025/10/11.
[鑑賞メモ]
第三位
Peeping Tom: Triptych: The Missing Door, The Lost Room and The Hidden Floor (ダンス)
世田谷パブリックシアター, 2025/09/27.
[鑑賞メモ]
第四位
Faye Driscoll: Weathering (ダンス)
東京芸術劇場 シアターイースト, 2025/10/11.
[鑑賞メモ]
第五位
Ballet de l'Opéra national de Paris, Alexander Ekman: Play (バレエ)
新国立劇場オペラパレス, 2025/07/26.
[鑑賞メモ]
第六位
すずえり 『Any girl can be glamorous』 (美術展)
資生堂ギャラリー, 2025/04/16-2025/05/18.
[鑑賞メモ]
第七位
『国際芸術祭「あいち2025」―灰と薔薇のあいまに』 Aichi Triennale 2025: A Time Between Ashes and Roses (美術展)
愛知芸術文化センター, 愛知県陶磁美術館, 瀬戸市のまちなか, 2025/09/13-2025/11/30.
[鑑賞メモ]
第八位
Théâtre national de Strasbourg, Caroline Guiela Nguyen: Lacrima 『ラクリマ、涙 〜オートクチュールの燦めき〜』 (演劇)
静岡芸術劇場, 2025/05/04.
[鑑賞メモ]
第九位
Nederlands Dans Theater 2 (NDT 2) (ダンス)
KAAT神奈川芸術劇場 ホール, 2025-11-21.
[鑑賞メモ]
第十位
岩竹 理恵 + 片岡 純也 × コレクション 『重力と素材のための図鑑』 (美術展)
神奈川県立近代美術館 鎌倉別館, 2025/02/01-2025/04/13.
[鑑賞メモ]
次点
Janet Cardiff and George Bures Miller: Small Works (美術展)
ギャラリー小柳, 2025/03/22-2025/06/14.
[鑑賞メモ]
番外特選1
『返還映画コレクション (3) ――第二次・劇映画篇』 (映画上映企画)
国立映画アーカイブ, 2025/07/15-08/24.
[観賞メモ 1,2]
番外特選2
Alain Resnais (dir.): Je t'aime, je t'aime 『ジュ・テーム、ジュ・テーム』 (映画)
Parc Film (Fr), Les Productions Fox-Europa (Fr), 1968.
[観賞メモ]

[2025年公演・展覧会等 Top 10 のパーマリンク]

[4312] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Fri Jan 2 22:15:40 2026

あけましておめでとうございます。

去年2025年の一年間を振り返って、展覧会・公演等Top TenレコードTop Tenを選びました。

2025年は1月の手術入院から始まるという幸先悪さだったわけですが、2月には自宅のPC/HDD故障、4月から数ヶ月は中耳炎、とトラブル続き。 そして、6月下旬には独居の母が倒れて入院。以降は、入院中は病院へ、退院後は実家へ週1, 2回通う日々です。 そんな、展覧会・公演等へ足を運んだり、音楽を聴いたりする時間の捻出に苦慮した2025年でしたが、 こうして振り返ってみると、Top 10 を選ぶのに困らない程度には良い展覧会・公演やレコード/CDに出会えていたのでしょうか。

そんなプライベート上での問題もありますが、 それに加えてBBC世界情勢編集長が言うように 第三次世界大戦へのプロセスが始まっているのではないかとという世界情勢もあります。 そろそろ趣味生活などど言っていられない状況なのかもしれません。 この談話室への鑑賞メモを書く時間がなかなか取れず、更新も滞りがちで、 サイトの存続も危機的状況ですが、細々とでも続けて行ければと思いますので、今年もよろしくお願いします。

[4311] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Dec 31 11:22:45 2025

12月第二週末土曜は二週続けて横浜山下町へ。コンテンポラリーダンスの公演を観てきました。

雲門舞集 [Cloud Gate Dance Theatre of Taiwan] / 鄭 宗龍 × 真鍋 大度
《波》 WAVES
クラウド・ゲイト・ダンスシアター(雲門舞集)『WAVES』
KAAT神奈川芸術劇場 ホール
2025/12/13, 15:00-16:15.
編舞/構思 [Choreography / Concept]: 鄭 宗龍 [CHENG Tsung-lung]; 共同構思/影像/音樂/程式 [Concept/Visual/Music/Program]: 真鍋大度 [Daito MANABE]
燈光 [Lighting Design]: 沈 柏宏 [SHEN Po-hung]; 服裝 [Costume Design]: 范 懷之 [FAN Huai-chih]; 影像與剪輯導演 [Film and Editing Director]: 清水 憲一郎 [Kenichiro SHIMIZU]; 視覺效果工程師 [VFX Programmer]: 永松 步 [Ayumu NAGAMATSU]; 機器學習工程師 [Machine Learning Engineer]: 2bit; 操作暨專案經理 [Manipulator / Production Manager]: 菊池 圭介 [Keisuke KIKUCHI]
共同製作: 國家表演藝術中心國家兩廳院, 國家表演藝術中心臺中國家歌劇院, 國家表演藝術中心衛武營國家藝術文化中心.
初演: 2023-10-12, 國家表演藝術中心國家兩廳院, 臺北.

1973年設立の台湾のコンテンポラリーダンス・カンパニー雲門舞集 [Cloud Gate Dance Theatre of Taiwan] ですが、 海外公演も多く、欧州での公演のレビューやトレイラーなどを目にする機会も多かったのですが、今まで生で観る機会がありませでした。 今回、横浜国際舞台芸術ミーティング2025 (YPAM2025) のYPAMショーケース かつ ヨコハマダンスコレクション 2025の公演で初めて生で観ました。 観たのは、2020年就任の二代目芸術監督、鄭 宗龍 と、Rhizomatiks での活動で知られる 真鍋 大度 [関連する鑑賞メモ] のコラボレーションによる、2023年作です。

後方の数枚に別れたパネルを使う程度でほぼブラックボックスで、映像を駆使した演出です。 リアルタイムでの撮影、処理と投影による映像とのインタラクティヴなダンスで、 Adrien M & Claire B [鑑賞メモ] や 梅田 宏明 [鑑賞メモ] などの、 粒子状というかテクスチャのような映像使いが多く観られましたが、抽象的なものだけでなく、むしろ人物像などの実写映像の加工と組み合わせが特徴的で、飛び散る光の粒は波飛沫のよう。 ダンサーは13名で、長袖のレオタードというかコンプレッションウェアのようなトップスに袴のようなワイドなボトムという、テクスチャはあるもののほぼ黒の衣裳。 一列に並んで波のような動きを作ることもありましたが、むしろ、広めに開いた脚を踏ん張った状態で腰や肩を回すような動きの多用に、波を感じました。 そんな、多くのダンサーとインタラクティヴな映像によるスタイリッシュな舞台を楽しみましたが、Rhizomatiks だけでなくテクノロジーを駆使した展覧会でもあることなのですが、それ以上のものがあまり感じられないという空虚さもありました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4310] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Dec 29 11:38:29 2025

12月最初の週末土曜は晩に出直しで初台へ。コンテンポラリーダンスの公演を観てきました。

新国立劇場 小劇場
2025/12/06, 18:00-19:00.
Texte, mise en scène et chorégraphie: Kaori Ito [演出・振付・テキスト: 伊藤郁女]
Avec: Kaori Ito
Collaboration à la chorégraphie [演出協力]: Gabriel Wong; Collaboration univers plastique [造形美術協力]: Erhard Stiefel et Aurore Thibout; Composition [音楽]: Joan Cambon; Direction technique et création lumière [照明]: Arno Veyrat; Manipulation et régie plateau [舞台]: Yann Ledebt; Regards extérieurs: Julien Mages, Zaven Paré (roboticien), Jean-Yves Ruf; Assistante à la chorégraphie: Chiharu Mamiya; Régie générale et design sonore [音響]: Adrien Maury; Régie lumière: François Dareys; Décor: Pierre Dequivre, Delphine Houdas et Cyril Trupin.
Production: Compagnie Himé
Création janvier 2018
協力: TJP, Centre dramatique national de Strasbourg - Grand Est; 主催: 新国立劇場.

2000年代以来フランスを拠点とし、2023年にフランスの TJP, Centre dramatique national de Strasbourg - Grand Est (ストラスブール・グランデスト国立演劇センターTJP) のディレクターに就任した、ダンサー・振付家 伊藤 郁女 [Kaori Ito] のソロでの公演です。 2020年代に入って度々日本で公演するようになっていますが、観るのは2021年の 笈田 ヨシ [Yoshi Oïda] とのコラボレーション [鑑賞メモ] ぶりです。 作品は2018年に自身のカンパニー Compagnie Himé で制作したものです。

自身の多忙なダンサー時代の体験に基づく作品です。 スケジュールに追われて自分を見失っている様を、 奈落に抜ける方形の穴が2箇所に空いた斜めに置かれた白い方形の舞台と、 その上に敷かれた薄布や、腕や膝を固定するような型なども使って、 奈落に落ちたり這い出たりする様な動きや、型にハマってままならない身の動きで、読み上げられる自身のスケジュールに合わせて、自身が疎外されている様を描くようでした。

自身の体験に基いた自伝的な作品で、時折、観客へ問いかけ応答を求める所など、 少し前に観た Aya Ogawa: The Nosebleed [鑑賞メモ] も思い出しましたが、同じようにはいかず、 ソロで自身を演じているという距離感の無さなのか、もしくは、ダンサーの生活の多忙さが自分の生活とはかなり縁遠く感じたせいか、作品の世界に入り難いものを感じてしまいました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4309] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 28 11:45:04 2025

12月最初の週末土曜は昼に横浜山下町へ。コンテンポラリーサーカスの公演を観てきました。

瀬戸内サーカスファクトリー
KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
2025/12/06, 13:00-14:00.
演出: 田中 未知子; 演出アドバイザー: 桐山 知也; サーカス技術: Jan Naets, Gaël Honegger (Cie Basinga); 音楽: 住吉 祐太 (鼓童)
出演/共同創作サーカスアーティスト: 吉田 亜希, 山本 栞, 長 すみ絵, サゴー; サーカスリガー: 辻林 薫, 吉川 健斗.
舞台監督: 河内 崇; 照明: 上田 剛; 音響: 星野 大輔 (KAAT神奈川芸術劇場); 演出助手: 本田 雅治; 衣装: 浜井 弘治; 美術コラボレーター: Jean Lemonnier
主催: 一般社団法人瀬戸内サーカスファクトリー; 共催: KAAT神奈川芸術劇場

2012年に香川県を拠点に活動するコンテンポラリーサーカスの拠点、瀬戸内サーカスファクトリーが、 フランスのサーカスアーティストと共同創作した作品です。 首都圏での公演がほとんど無く観る機会が無かった瀬戸内サーカスファクトリーですが、 この横浜国際舞台芸術ミーティング2025 (YPAM2025) のYPAMフリンジでの公演で、やっと観ることができました。

芥川 龍之介 の短編小説『蜘蛛の糸』に着想した約一時間の作品です。 香川県産の石材や木材を使った装置を使いつつ、抽象度の高いミニマリスティックな演習で、 その物語を演じるというより、着想した場面をサーカススキルを交えつつ描いたものを連ねていく様な作品でした。 中盤のエアリアルアーティスト2名によるロープ2本回転させながらのエアリアルから後方の壁前を方形に巡るワイヤーワークの場面や、 ラストの円錐状の光の中、釣りされた石を揺らしながらその上でのソロのアクロバットなど、 エアリアルスキルを活かした浮遊感ある場面が、美しく印象に残りました。

その一方で、前半の長さ 50 cm 程度の角材を積み上げたりする場面は、テキパキした動きなどは、演技というより逆に作業を見ているようで趣に欠けるように感じる時もありました。 自分が『蜘蛛の糸』のハイライト的な場面と期待していたということもあるかもしれませんが、 ラスト直前の犍陀多が地獄から逃れようと蜘蛛と糸を登る場面が、 リガーも含めた6名のパフォーマーが吊り下げたロープの周りで小さな動きでわちゃわちゃ動いていて、総体として動きがごちゃごちゃとして映えない印象を受けたのも惜しく感じました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4308] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sat Dec 27 10:22:35 2025

11月最後の土曜は午後に与野本町へ。コンテンポラリーダンスの公演を観てきました。

Tanztheater Wuppertal Pina Bausch
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
2025/11/29, 15:00-17:30.
Choreography, Direction: Pina Bausch.
Set Design: Peter Pabst; Costumes: Marion Cito; Collaboration: Marion Cito, Thusnelda Mercy, Robert Sturm; Musical Collaboration: Matthias Burkert, Andreas Eisenschneider.
Music: Barry Adamson, Trygve Seim, Gustavo Santaolalla, Hope Sandoval, Portishead, Lucky Pierre, Hazmat Modine, Jun Miyake, Mecca Bodega, Cluster & Eno, Lisa Ekdahl, Mari Boine, René Aubry, Mina Agossi, Ian Simmonds.
Revival 2025/2026: Artistic Direction as guest: Alan Lucien Øyen; Rehearsal director: Azusa Seyama-Prioville, Robert Sturm.
Dancers: Andrey Berezin, Naomi Brito, Nayoung Kim, Daphnis Kokkinos, Reginald Lefebvre, Alexander López Guerra, Julie Shanahan, Julie Anne Stanzak, Aida Vainieri; Guests: Nazareth Panadero, Héléna Pikon.
World Premiere: 30 May 2008, Schauspielhaus Wuppertal.

ドイツのコンテンポラリーダンスの文脈で活動した振付家 Pina Bausch (2009年没) の最晩年作の、 彼女が率いたカンパニー Tanztheater Wuppertal によるリバイバル上演です。 かつては数年おきに来日していましたが、2017年の Neklen [鑑賞メモ] 以来8年ぶりの来日です。

象徴的ながら大掛かりな舞台装置が印象に残ることが多い Pina Bausch ですが [2004年の Ten Chi鑑賞メモ]、 この作品はドレープのある薄手の白布がいく筋か下げられたシンプルなもので、 ライティングとナチス期ドイツのモノクロ映画 Viktor Tourjnsky: Der Blaufuchs (UFA, 1938) での演出でした。 しかし、スリムな黒の上下と男とロングのキャミソールドレスという姿の女が、私的な語りを交えつつ、時に遊びを感じる仕草を交えた踊りを繰り広げる、という定番の展開で、 Nazareth Panadero や Julie Shanahan など昔ながらのダンサーも出演しており、 (Kontakthof 以降のスタイルが定まった) Pina Bausch を観た、という感慨がありました。

しかし、衣裳も振付も性差を感じさせない Nederlands Dans Theater 2 の公演を観たばかりだったせいか、 今となってはその衣裳や振付が保守的に感じられてしまうことは否めず。 多様なミュージシャンの既存の音源を使った音楽も、選曲のセンスの良さは感じられるものの、なまじ知っているミュージシャンや曲が少なからずあるだけに、 DJ的とすら感じる元の音楽の文脈を外すような使い方が、気になってしまいました。 Cluster & Eno や Hope Sandoval の様なポピュラー音楽、特にロック的な文脈のもの場合、時代的な文脈が少し気になった程度ですが、 ノルウェーの少数民族サーミ (Saami) の歌手 Mari Boine の曲など、その文脈を外してオシャレなダンスのBGMとして消費しているかのよう (ワールドミュージック的な音楽消費の一面とは思いますが)、とも感じてしまうという。 そんな限界も感じてしまった公演でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4307] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Dec 23 22:51:50 2025

11月第4週末三連休中日土曜は午後に初台へ。この演劇の公演を観てきました。

アヤ・オガワ (作・演出) 『鼻血』
新国立劇場 小劇場
2025/11/23, 13:00-15:00.
Written & Directed by Aya Ogawa.
Cast: Drae Campbell, Ashil Lee, Chris Manley, Aya Ogawa, Saori Tsukada, Kaili Y. Turner.
Set & Costume Designer: Jian Jung; Lighting Designer: Jeanette Oi-Suk Yew; Sound Designer: Megumi Katayama; Stage Designer & Production Manager: Huai Huang; Creative Director: John Del Guadio.
日本語字幕翻訳: 広田 敦郎; 舞台監督: 川添 学; 技術監督: 友光 一夫.
Production: HANAJI LLC.
世界初演: October 2021, Japan Society / Chocolate Factory Theater.

東京とアメリカを行き来きしながら育ち、ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動する劇作家・演出家・パフォーマーの Aya Ogawa の日本初公演です。 作風やバックグラウンドはほとんど知りませんでしたが、新国立劇場・演劇部門の海外招聘公演ということで観てみました。

失敗をテーマとしたワークショップを通して作り始めた作品で、作家自身の失敗である父と疎遠になり亡くなった際も葬式をあげなかったことを題材するという自伝的な作品でもあります。 元々、オルタナティブスペースのような会場を使い客席を取り囲むような形で上演を始めたとのことで、 舞台と客席の関係を取り払うというほどではないものの、客席の照明に明るさを残した上、観客も時々参加させる形での上演でした。 オーソドックスな会話劇のような演出ではなく、Aya Ogawa が自身を演じることが避けられ、一人複数役で舞台上での役の切り替えもあり、 俳優のリアリズム的な役の作り込みを通してではなく、俳優が舞台上に作り出す状況を通して、 親子のディスコミュニケーションやアメリカ社会での日系人の置かれた状況 (白人) を描いていくよう。

入場時にメモ紙が渡され、後半近くに観客に自分の失敗について書かせて集めました。 読み上げたりするのだろうかと思ったところ、内容に触れずに手回しのシュレッダーにかけてしまい、 観客に書かせたものをそうしてしまうのかと、驚きました。 しかし、ラスト、観客8名も参加させて父の葬式をする場面で、そのシュレッダーが棺桶に入れる花の様に添えられるのを観て、 なるほど、Aya Owaga の父の葬式をやり直すことを通して、Aya Ogawa だけではなく観客の失敗と悔恨も「葬送」する作品だったのだな、と。

Aya Owaga の個人的な体験に基づくものの、肉親との不仲という多くの人が何かしらの抱えているという点で普遍的なテーマが、絶妙な距離感で作品化されていましたし、 晒すように弄るのではなくそっと寄り添うような観客参加のあり方も興味深いものがありました。 自伝的、観客参加型と事前に知って苦手なタイプの作品かもしれない思ってましたが、杞憂でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4306] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Dec 15 22:04:44 2025

11月第4週末三連休初日土曜は午後に横浜山下町へ。コンテンポラリーダンスの公演を観てきました。

KAAT神奈川芸術劇場 ホール, 2025-11-21, 14:00-16:15.
Folkå by Marcos Morau; Watch Ur Mouth by Botis Seva; FIT by Alexander Ekman

オランダのコンテンポラリー・ダンス・カンパニー Nederlands Dans Theater (NDT) の去年 [鑑賞メモ] に続いての来日は、 去年の NDT 1 (23歳以上のダンサーからなるメインのカンパニー) と代わって NDT 2 での来日でした。 NDT 2 は Jiří Kylián 芸術監督時代の1978年に若手育成目的のセカンド・カンパニーとして設立されましたが、 独自の演目を持つ NDT 1 とは独立したカンパニーという形で活動しています。 新進の振付家と新作を制作することが多いようで、今回のトリプルビルも Alexander Ekman 以外はこの公演で知りました。

Folkå
by Marcos Morau
Music: Composition / sound design by Juan Cristobal Saavedra, contains compositions: Condividiamo La Luna & Whisper: Kim Sutherland. The London Bulgarian Choir led by Dessislava Stefanova: Mor’f Elenku, trad.; Izgreyala Yasna Zvezda, trad. arrangement by Dessislava Stefanova; Razbolyal Se E Mlad Stoyan by Kiril Todorov.
Staged by Shay Partush; Light Design: Tom Visser; Decor: Marcos Morau; Costumes: Silvia Delagneau; NDT rehearsal director: Ander Zabala
World premiere: November 4, 2021, Amare, The Hague
Duration: 26 min.

スペイン・バレンシア出身で、現在はカタルーニャのバルセロナを拠点に自身のカンパニー La Veronal を率いる Marcos Morau の作品です。 12名のダンサーを使い、Sharon Eyal [鑑賞メモ] なども思い出されるダンサーの密集や線状の連なりを作りますが、Eyal の脈動とは違い全体として有機的な動きを見せます。 人の塊から一人がこぼれ落ちたり、取り込まれたりという形で、要所要所で、集団と個を対比する場面を作ります。 ブルガリアのポリフォニーに太鼓様の打楽器の強い響きによるビートを重ねた音楽を使い、動きもキレ良くメリハリがあるものでした。 男女共に、袖と首周りに細かい抽象的なプリントのある半袖白Tシャツに、黒のスカートにサスペンダー、という衣裳も、音楽同様架空の民族衣装の様に感じられました。

Watch Ur Mouth
by Botis Seva
Music: New composition by Torben Sylvest with use of Bunny Sigler: Shake your booty; Sony music, Warner-Tamerlane Publishing Corp (BMI), Warner Chappell Music Holland B.V. Vocal performances by Magero, The Seva Family
Assistants to the choreographer: Jordan Douglas, Victoria Shulungu; Light Design: Tom Visser; Decor & Costumes: Botis Seva; NDT rehearsal director: Lydia Bustinduy
World premiere: March 27, 2025, Amare, The Hague
Duration: 25 min.

ロンドンの Hip Hop Dance Theatre のカンパニー Far From The Norm を主宰する Botis Seva の作品です。 ヒップホップというよりダブステップ的なビートに乗って、ヒップホップ/ブレイクダンスのイデオムを強く感じる動きを使います。 ラップではなくナレーション的に創作についての考えなどの語りが使われますが、その語りの内容をダンスで表現しているようには感じられませんでした。 むしろ、暗めの照明下で、カーキ色のTシャツやカットソーにルースなパンツという上下に黒のキャップを目深に被った男女8人のダンサーが、 組んだりするような動きをほとんど使わずに踊る様、そして、集団的な動きに1〜2人の動きが並置される様に、都会の中での孤独、分断された社会の中で孤立する人々を連想させられました。

FIT
by Alexander Ekman
Music: No, Nicolas Jaar, Beggars Music Group; Take Five, The Dave Brubeck quartet, © Valentine Music Ltd; Serious drug (instrumental), Wildcookie, written and produced by Freddie Cruger, 2011 Tru Thoughts Ltd, Full Thought Publishing
Staged by Ève-Marie Dalcourt; Light Design: Alexander Ekman, Lisette van der Linden; Set Design: Alexander Ekman; Costumes: Alexander Ekman, Yolanda Klompstra; Text: Alexander Ekman; Collaborating Artist: Julia Eichten; Collaborating Artist / Dramaturgy: Carina Nildalen; NDT rehearsal directors: Lydia Bustinduy & Ander Zabala
World premiere: November 15, 2018, Zuiderstrandtheater The Hague
Durarion: 30 min.

Ballet de l'Opéra national de Paris に振り付けた Play (2017) の日本公演の記憶も新しい [鑑賞メモ] スウェーデンの振付家 Alexander Ekman の作品です。 ちなみに、Ekman は2002年から2005年の間 NDT 2 にダンサーとして在籍していました。 13名のダンサーを使い、集団へ新しい一人が加わる時の互いの違和感、戸惑いなどの微妙な感情や状況のスケッチ的な情景描写を繋いでいきます。 男女共に上半身裸 (女性はベージュのスポーツブラ) にロマンチックチュチュという衣裳をベースに、 時に黒のジャケットを羽織り、最後はチュチュを取ってベージュのアンダーウェアのみの姿で、 Dave Brubeck Quartet の “Take Fave” をメインテーマの様に使った音楽に、 エレガントな動きにユーモアも交えて軽妙洒脱なダンス作品に仕上げていました。 ほぼブラックボックスの舞台に置かれた丸い岩のようなオブジェの醸し出すシュールな不条理さも良いアクセント。 トリプルビルの中で最も楽しめた作品でした。

三作とも衣裳はもちろんダンサーに振り付けられた動きも性差がほとんど無い作品だった、というのも、今の時代のダンス作品ならではでしょうか。 それだけでなく、三作の間でベースにある動きのイデオムや作風は異なるものの、集団と個の関係という通底するテーマが感じられるなど、 共通点というか方向性も意識させられたプログラムでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

公演後は鎌倉へ移動。6月以来休業していたカフェ・アユーが10月から不定期ながら営業再会したので、遅ればせながら顔を出したのでした。よかった。

[4305] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu Dec 11 21:54:57 2025

11月第三週末土曜は午後に初台へ。このオペラを観てきました。

新国立劇場オペラ / Richard Jones
Wozzeck
アルバン・ベルク作曲『ヴォツェック』
新国立劇場オペラパレス
2025/11/15, 14:00-15:40.
Original by Karl Georg Büchner “Woyzeck”; Music by Alban Berg.
指揮: 大野 和士 [Conductor: Kazushi Ono]; Production: Richard Jones.
Set and Costume Design: Antony McDonald; Lighting Design: Lucy Carter; Video Design: Clemens Walter; Movement Director: Lucy Burge.
Thomas Johannes Mayer (Wozzeck), John Maszak (Tambourmajor), 伊藤 達人 (Andres), Arnold Bezuyen (Hauptmann), 妻屋 秀和 (Doktor), 大塚 博章 (1. Handwerksbursch), 荻原 潤 (2. Handwerksbursch), 青地 英幸 (Der Narr), Jennifer Davis (Marie), 郷家 暁子 (Margret).
合唱指揮: 冨平 恭平; 合唱: 新国立劇場合唱団; 児童合唱: TOKYO FM 少年合唱団; 管弦楽: 東京都交響楽団.
制作: 新国立劇場 (オペラ); 芸術監督: 大野 和士.
2025年11月15日新国立劇場プレミエ

Georg Büchner の戯曲 Woyzeck [関連発言] を原作とする Alban Berg のオペラ Wozzeck [2014年の鑑賞メモ] の新国立劇場2025/26シーズン新制作です。 イギリスの Richard Jones よる演出ですが、この演出家の舞台作品を観るのは初めて。

Wozzeck ら兵士の服装もイエローの作業服、上官の服も階級章風の飾りこそ軍服風にも感じますが原色の赤という作業着を思わせる服装です。 べニア板風の壁の質感のプレハブ小屋の内部のようなセットを幾つか用意し、それを移動させて場面を切り替えていきます。蛍光灯のフラットで青白い照明が多用されます。 20世紀半ばの大規模な工場か工事現場とその現場事務所、近所の接客ありの酒場 (いわゆるキャバクラのような店) を舞台にした現場作業員と現場監督の話に置き換えたかのような演出でした。 あえてゴージャスさや美しさを避けるようなビジュアルの舞台もオペラらしからぬと思いつつ、 話の内容からするとむしろこの安っぽさこそ Wozzeck らしい、とも。 そんな場面が続くだけに、Marie を殺す場面や Wozzeck が沼に嵌って死ぬ場面こそ照明を使った抽象的で象徴的な演出も生きます。

今まで観た演出は Wozzeck に比べて Marie の描写は薄く印象に残っていないのですが、 Marie の部屋のミッドセンチュリーな感じや少しくすんだパステル入った色合いのカーディガンとスカートという服装という (Aki Kaurismäki の映画 Kuolleet lehdet [Fallen Leaves] を思い出しました) 質素な生活感や、 鼓手長との浮気での服装の変化のような形で可視化されたせいか、 この物語の中での彼女側の視点というか内面が見えたようにも感じられました。 また、出番があるときはTVばかり観ているネグレクト気味のとも言える Wozzeck と Marie の息子が、 ラストの場面ではまるで Wozzeck のようになることで、貧困の世代的再生産を暗示します。 Wozzeck を通して貧困を生きる男性の困難を描くだけでなく、貧困を生きる女性やその子供にも目配せが効いた演出でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

オペラを観た後は隣の東京 オペラシティ アートギャラリーへ。 『柚木紗弥郎 永遠のいま』を観ました。 民藝がルーツにある作家ですが、パターンの抽象度の高さがミッドセンチュリーモダンぽくもある型染で、そこに時代を感じました。

[4304] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 7 21:54:08 2025

11月第二週末土曜は午後に恵比寿へ。この展覧会を観てきました。

Pedro Costa
Innervisions
東京都写真美術館 B1F 展示室
2025/08/28-2025/12/07 (月休; 月祝開, 翌火休). 10:00-18:00 (木金-20:00).

1989年に長編デビューしたポルトガルの映画監督 Pedro Costa の、21世紀に入って制作するようになったビデオ作品をメインに構成した (スライドショーとプリントの作品、他作家のドキュメンタリー映像上映を含む) 展覧会です。 Costa の映画は観たことが無く作風の予備知識はほぼありませんでしたが、この美術館での展覧会ということで観てみました。

ビデオ作品はマルチチャンネルのプロジェクションで投影されていましたが、 人物を捉えた映像ながら何かを演じている様を捉えているというより、動きの少ない顔のアップやバストアップを多用し、それを短時間のループで反復しいます。 まずは全体把握とざっと展示を一周した後に見直しても投影された映像に何か物語るような展開が感じられず、「液晶絵画」の肖像を観るようでした (プロジェクタでの投影ではありますが)。 暗い背景に人物を浮かび上がらせるようなライティング、テクスチャ感を増すようなオーバーレイの光や火の映像など、さすが映画監督でもあるだけあってスタイリッシュな映像の仕上がりでしたが、 一カ所以外全て立ち見でむしろ観客を回遊させるかのような構成なので、じっくり映像を観る展示ではないようにも感じられました。

Thoughts of a Disctant Window - Contemporary Japanese Photography vol. 22
東京都写真美術館 3階展示室
2025/09/30-2026/01/07 (月休; 月祝開, 翌火休; 12/29-1/1休). 10:00-18:00 (木金-20:00)
寺田 健人 [Terada Kento], スクリプカリウ落合 安奈 [Scripcariu-Ochiai Ana], 甫木 元空 [Hokimoto Sora], 岡 ともみ [Oka Tomomi], 呉 夏枝 [Oh Haji].

アニュアルで開催されている写真を主なメディアに使う新進作家展です [去年の鑑賞メモ]。 展示前半、プライベートな題材の作品が続いて、苦手感は否めませんでした。 後半は対照的で、ラストは、Banaba (キリバスのバナバ)、Nauru (ナウル)、Viti Levu (フィジーのビティ・レブ) といった太平洋の島嶼の近現代史に取材し、 アーカイブ写真や古地図を使ったインスタレーションに仕上げた 呉 夏枝 [Oh Haji] の«Seabird Habitatscape #2 - Banaba, Nauru, Viti Levu» (2024)、 いかにも現代アート主流のリサーチベースのインスタレーションでした。

呉の作品も興味深く観ましたが、最も印象に残ったのは、日本の葬送儀礼をモチーフにして、逆さの文字盤の振子時計に小さく映像を組み込んだ 岡 ともみ のミクストメディア作品 «さかさごと» シリーズ (2023)。 骨董的な質感とささやかな寓話的なナラティブが好みでした。少々ノスタルジックな所など Janet Cardiff & George Bures Miller の小品 [鑑賞メモ] にも近く感じましたが、 ユーモラスで演劇的というより、日本の葬送の風習を題材とすることでまた違った幻想的で感傷的な雰囲気となっていました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

10月後半から11月にかけて出張ラッシュでした。 そんな中、11月上旬福岡出張の際にランチついでに福岡アジア美術館で『ベトナム、記憶の風景』。 戦前のフランス絵画の影響下から、戦後のプロパガンダ、ドイモイ移行の現代美術まで、 1930年代から現在に至る約100年のベトナム近現代美術史を辿りました。 所蔵作品中心で構成して一連の流れを辿ることができるのはさすがです。

中旬の広島出張では、帰途の新幹線までの時間調整で平和記念公園へ。 広島へは年1, 2回の頻度で出張していますが、ここは10年ぶりくらいでしょうか。 原爆投下80年だし久しぶりに行くかと軽い気持ちで行ったら、 広島平和記念資料館が修学旅行団体とインバウンドでまさかのぎうぎうの大混雑でした。 展示をまともに観られる状況でなく、東京都写真美術館で『被曝80年企画展 ヒロシマ1945』を観ておいてよかった、と。

[4303] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Dec 2 23:14:20 2025

11月頭の三連休中日日曜は、昼に湘南新宿ラインで小田原を越えて根府川まで。この野外即興パフォーマンスを体験してきました。

『MUSICS あるいは複数の音楽たち その3』
Otomo Yoshihide: MUSICS or Multiple Musics Part 3
小田原文化財団 江之浦測候所 [Enoura Observatory, Odawara Art Foundation]
2025/11/02, 13:30-16:30.
大友 良英 [Otomo Yoshihide] (percussion, objects), 류한길 [Ryu Hankil] (electronics), 颜峻 [Yan Jun] (objects, voice), Yuen Chee Wai (electronics), Kok Siew Wai (voice), Cheryl Ong (percussion), 細井 美裕 [Miyu Hosoi] + 岩田 拓朗 [Takuro Iwata] (sound installation), 石原 雄治 [Yuji Ishihara] (percussion), 高岡 大祐 [Daisuke Takaoka] (tuba), Sachiko M (objects), 巻上 公一 [Koichi Makigami] (voice), 松本 一哉 [Kazuya Matsumoto] (percussion, objects), 吉増 剛造 [Gozo Yoshimasu] (poetry reading), 山崎 阿弥 [Ami Yamasaki] (voice).

神奈川県小田原市にある 江之浦測候所 を会場にミュージシャンの 大友 良英 が開催している野外即興パフォーマンス『MUSICS あるいは複数の音楽たち』の2022年、2024年に続く第三回です。 今回は「アジアン・ミーティング20周年記念スペシャル」と題し、韓国、中国、シンガポール、マレーシアからのミュージシャン5名が参加してのパフォーマンスでした。 今まで観に行ったことがありませんでしたが、今回、開催前の告知に、それもチケット完売前に気付くことが出来たので、足を伸ばしてきました。

会場の江之浦測候所は小田原市の南端、真鶴町との境近くの海に臨む崖の上にある、 現代美術作家 杉本 博司 が2009年に設立した財団が2017年にオープンさせた芸術文化施設です。 妙月門エリアと呼ばれる入口「妙月門」や野外の舞台やギャラリー棟などのある崖上の展望の良いエリアと、 そこからしばらく下った崖の中腹にある竹林エリアという、2つのエリアに分かれた広大な敷地を持っています。

敷地内に展示されている「杉本コレクション」は、杉本の展覧会に使われるような小物の骨董ではなく [鑑賞メモ]、 室町期禅宗様式の鎌倉明月院正門が幾つかの変遷を経て移築された明月門に始まり、 飛鳥時代の法隆寺若草伽藍礎石から明治期に敷設され昭和末まで使われていた京都市電軌道敷石まで。 古代から近代まで様々な時代の建築 (もしくは遺跡) の類を、博物館のように体系的にというよりも 杉本の美意識に沿って骨董趣味的に、現代的な建築 (夏至光遥拝100mギャラリー、光学硝子舞台) やオブジェ (数理模型) などと並置するように野外に展示しています。 杉本の骨董を使った展覧会の延長の、巨大な野外インスタレーションのようです。

そんな場所を会場に、屋内外の様々な場所を回遊しながら13時45分頃から16時半にかけての約3時間にわたり即興演奏を繰り広げました。 正確な観客数は把握しかねましたが数百人はいたでしょうか。 スタートは妙月門エリアの石舞台。特に始めますというアナウンスも無く、ミュージシャン達も半ば観客に混じる形てばらけた状態で、静かに音を出し始めます。 ミュージシャンは固まっても3、4名程度、移動しながら居場所を定めてしばらく音出ししたかと思えばまた移動。 演奏は分かりやすい旋律やリズムはほとんど用いず、派手に音を出して存在をアピールするものでもなく、観客の中に混じるかのように、そしてサウンドスケープに寄り添うように、電子音や打楽器やオブジェを鳴らします。

自分も会場を移動しながら、時にミュージシャンの後を追いつつ、時に止まって音出しするミュージシャンの傍で、もしくは一人で時に遠くの会場のあちこちに控えめに鳴る物音に耳をすましながら、その風景と音景を楽しみました。 その場所が遥かに洗練されて広大な自然の多い場所となり、音の機微も楽しめるようになったという違いはあるものの、 『休符だらけの音楽装置』 (旧千代田区立練成中学校屋上, 2009) のオープニング・ライブ [鑑賞メモ] のことを思い出しもしました。

しばらく妙月門エリアの光学硝子舞台や夏至光遥拝100mギャラリーや冬至光遥拝隧道、茶室のある小道などを散策した後、 下の方で鳴る音に導かれながら、榊の森を抜ける葛折の小道を下って竹林エリアへ。 このエリアでは生えている竹などもパーカッションに。 そして、今度は蜜柑畑を抜ける道を登りつつ、ミュージシャン達が遠くに声を掛け合うような音のやりとりを楽しみつつ、再び妙月門エリアへ。 薄曇りで陽射しは暑くなく、風もほとんど無く寒くもなく、雨も降らず、野外の3時間もあっという間でした。

そして、日が傾いた中、ミュージシャンが次第に光学硝子舞台やその周辺に集まり、観客も舞台を観るかのように古代ローマ円形劇場を再現した客席に座り、 吉増 剛造 が舞台に上がりパフォーマンスし、それを客席最前列で座った 杉本 博司 を始め満場のオベーションという、 いみじくも 大友 良英 がMCで「吉増剛造オンステージのよう」と言っていましたが、まさにそんな終わり方でした。

普通のクラシック・コンサートやロック・コンサートであれば違和感無かったとは思いますが、 演奏者の特権性を排してサウンドスケープに溶け込むような演奏をひとしきり楽しんだ直後だっただけに、そのコントラストも強烈。 なんだかんだ言いつつも特権的な芸術家をオベーションしたいという観客の欲望を観せつけられるようでした。 そして、まさかそんな終わり方をするとはと半ば苦笑しつつ、やはり『休符だらけの音楽装置』から遠くに来たものだと感慨に浸りました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4302] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Nov 26 21:07:26 2025

11月頭の三連休初日土曜の晩は、池袋から乃木坂へ。この展覧会を観てきました。

Prism of the Real: Making Art in Japan 1989–2010
国立新美術館 企画展示室1E
2025/09/03-2025/12/08 (火休;9/23開;9/24休), 10:00-18:00 (金土 -20:00)

国立新美術館と、2021年に香港西九龍文化地区にオープンした美術館 M+ との協働キュレーションによる、 昭和が終わった1989年以降、2000年代にかけての日本の現代アートが作り出した表現に焦点を当てた展覧会です。 スコープは 『日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション』 (東京都現代美術館, 2024) [鑑賞メモ] と大きく被っており、 やはり1990年代半ばに興隆した街中アートイベントやそれを支えたオルタナティヴ・スペースが日本の現代アートの起点だったのだなと。 『日本現代美術私観』 よりイベントやパフォーマンスのドキュメンテーションの展示が豊富で、 現在の自分の興味からは少し外れてはいるものの、『日本現代美術私観』と比べて自分が観てきた日本の現代アートに近く感じられました。

『日本現代美術私観』では抜け落ちていましたが、ジェンダーやセクシャリティをテーマにしたフェミニズム的な展覧会が1990年代半ばに多く開催されたことに言及があり、 中でも好きだった 笠原 恵美子 [関連する鑑賞メモ] の作品が展示されていました。 街中アートイベントというと東京のものが選ばれがちですが、 『ミュージアム・シティ・福岡 1998』で制作された Navin Rawanchaikul 「博多ドライヴ・イン」 [写真, 鑑賞メモ] が展示されていて、福岡の街中を歩きまわった時のことを思い出されました。

また、今まで自分が観た国内の街中アートイベントの中でもベストと言える『水の波紋 '95』 [言及のある鑑賞メモ] の展示もありました。 そういう展示を観ながら、作品云々というより、懐かしいというか、そういう事もありましたね、という詠嘆が先立つ展覧会でした。

Bvlgari Kaleidos: Colors, Cultures and Crafts
国立新美術館 企画展示室2E
2025/09/17-2025/12/15 (火休;9/23開;9/24休), 10:00-18:00 (金土 -20:00)

イタリアの高級宝飾品ブランド Bvlgari の展覧会です。 正直に言えば、展示されていた宝飾品は“not for me”で、近代的な色彩論に紐付けようとはしていましたが近代デザインの観点でも興味を引かれるものはありませんでしたが、 日本の建築ユニット SANAA (妹島 和世 + 西沢 立衛) とイタリアのデザインスタジオ FormaFantasma によるという会場デザインが面白いものでした。 上から見ると魚の鱗を連ねたような区画で、時に透明なパーティションも使い、基本構造に並進対称性がありながら単調さを排除していました。 しかし、展示されているのがせいぜい数十センチの小さなオブジェだから生きる空間構成かもしれません。

宝飾品に関する展示の他に、現代アート作品が3点展示されていました。 中山 晃子 “Echo” は、本人がライブて操作する alive painting [鑑賞メモ] ではなくインスタレーションですが、 雲母の煌めき混じりのカラフルが色面を低音で間欠的に水面を湧き立たせ、変化させた色と光を投影するという alive painting の変奏とも言える作品でした。 洗車機に使われるような巨大な回転ブラシが何本も回転する Lara Favaretto “Level Five” は、回転による風に煽られるような迫力がありました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4301] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Nov 24 21:05:09 2025

11月頭の三連休初日土曜は、午後に池袋西口へ。このコンテンポラリーダンス公演を観てきました。

東京芸術劇場 プレイハウス
2025/11/01, 15:00-16:10.
Choreography: Damien Jalet; Scenography: Kohei Nawa [名和 晃平].
Music: Tim Hecker; Lights: Yukiko Yoshimoto [吉本 有輝子]; Sound Creation Collaborator: Xavier Jacquot; Choreography Assistant: Alexandra Hoàng Gilbert; Outside Eye: Catalina Navarrete Hernández.
With: Shawn Ahern, Aimilios Arapoglou, Karima El Amrani, Francesco Ferrari, Vinson Fraley, Christina Guieb, Astrid Sweeney, Ema Yuasa [湯浅 永麻].
Production revival 2023: Théâtre National de Bretagne, Centre Dramatique National.
Production creation 2021: Chaillot – Théâtre national de la Danse.

2016年の Vessel 以来継続している ベルギーのダンサー/振付家 Damien Jalet [鑑賞メモ 1, 2] と 日本の現代アート作家 名和 晃平 のコラボレーションによるコンテンポラリーダンス作品です。 元々2020年に日本で世界初演されるはずもコロナ禍で公演中止になり、これが日本初演。 2人のコラボレーションを観るのは初めてです。

黒光する砂で敷き詰められたほぼブラックボックスの舞台で、暗めの照明の中、 その上で物語らしきものはないものの、抽象度の高いイメージがシュールレアリスティックに連鎖するかのような作品でした。 ダンサーたちも砂まみれになり、膝まで埋まった状態で上半身をうねらせるような動き、 フォーメーションでの動きの中で動画の時間進行が前後するかのように振動する動き、 敷き詰められた砂を掻き回しつつのたうつ動き、 糊のような白い高粘度の液体が滴る中での蠢きなど、 黒光り砂や粘度の高い液体に覆われた有機的な物体というか正体不明の生命体が蠢く様を観るようでした。 名和 晃平 の作品というとガラス玉で覆われた動物の剥製のイメージが強いのですが、 生命体を粉粒等で覆ったイメージという点は共通するかもしれません。

パンフレットでは古事記の葦原中国、雅楽や枯山水などに言及されていましたし、Tim Hecker による音楽も電子音の中に雅楽の楽器の音が鳴っていたようにも思いますが、 日本的と言ってもその歴史的文脈はバラバラですし、むしろそんな歴史的文脈は捨象、抽象化されていて、 どちらかというと、ホラー的、SF的な生命体 (エイリアン) の棲まう異星を連想させられました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]