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談話室 / Conversation Room

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[3618] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Feb 12 21:16:13 2018

年度末でも忙中感あり。この土曜は、美術館・ギャラリー巡り。まずは恵比寿のこの展覧会へ。

Yebisu International Festival Art & Alternative Visions 2018
東京都写真美術館, 日仏会館 ほか
2018/02/09-02/25 (2/13,2/19休), 10:00-20:00 (2/25 10:00-18:00)

東京都写真美術館とその界隈で開催されているアニュアルの映像を主な対象とした美術展。 改装休館を終えて東京都写真美術館がメイン会場として戻ってきた去年が結構良かったので [鑑賞メモ]、今年も期待していましたが。 しかし、テーマが「インヴィジブル Mapping the Invisible」ということで、 形式的な面白さというよりコンセプチャルな作品が多くあまり楽しめませんでした。

今回は周辺のギャラリーで開催されている地域連携プログラムも観て回ったのですが、 むしろそちらの方が楽しめました。(比較的暖かく散歩日和ということもありましたが。) そんな中では、レースのベールを人が被ったかのような形で下の人を消して白黒写真化した 小瀬村 真美 や、 ガラス容器に映像を封じ込めたかのような 松原 健 など、 MA2 Gallery の展示が印象に残りました。 小瀬村 真美 は今年6月に原美術館で個展が予定されているとのこと。これは楽しみです。

続いて、六本木へ移動。

国立新美術館 企画展示室2E
2018/01/13-2018/03/04 (火休). 10:00-18:00 (金土10:00-20:00).

アニュアルで開催されている文化庁芸術家在外研修の成果報告展。 こちらも、定点観測的に毎年のように観てますが、今年も画廊巡り代わりの気分で観てきました。 しかし、去年 [鑑賞メモ] ほど、良いなと思える作家に出会えませんでした。

そんな中で最も印象に残ったのは mamoru。 マルチプロジェクションのビデオインスタレーションですが、映像を丁寧に作っている所と、 展開はあるけど物語的に過ぎず音楽やダンスに共通するような抽象度な所が気に入りました。 『第10回 恵比寿映像祭』の方にも出展していたのですが、複数のディスプレイの組み方は面白いとは思ったもののこぢんまりしている上、映像がワーク・イン・プログレスなのが惜しいなと思っていたので、 『20th DOMANI・明日展』に展示されていた作品の方が良いな、と。

さらに表参道へ移動。

Yang Fudong [楊 福東]
The Coloured Sky: New Women II
Espace Louis Vuitton Tokyo (表参道)
2017/10/18-2018/03/11 (無休) 12:00-20:00 (臨時休業、開館時間変更はウェブサイトで告知)

現代美術の文脈で1990年後半以降注目されるようになった中国・北京出身の作家の展示です。 蔡 楚生 [Cai Chusheng] 監督によるサイレント映画 『新女性』 (aka New Women, 聯華影業公司, 1935) へのオマージュとなる作品 白黒の映像作品 New Woman (2013) の続編と言える作品とのこと。 マルチモニターのカラー映像作品となっています。 人口的というよりキッチュな色合いの水辺の風景を背景に、戦間期もモダンを思わせる装いの 水着姿の東洋系の若い女性がポーズを取ったり、動いたりしていました。 戦間期モダンな女性の姿に目が奪われつつ、キッチュな色のセンスは好みではなく、なんとも微妙な印象。

映像を丁寧に作っている所や、展開はあるけど物語的に過ぎず象徴的な表現に留まる抽象度など、 直前に観た mamoru の作品と共通点を感じました。 最近の流行に疎いのですが、最近はこのようなマルチスクリーンのビデオインスタレーションが一つの流行なのでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

表参道で、さらにもう一件、展覧会を観たのですが、それについてはまた後ほど。

と言っても、年度末の繁忙期はまだまだ続いています。日曜月祝は職場に出ていたのでした。しくしく。

[3617] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Feb 5 0:13:57 2018

先の週末は午前中には二子玉川へ。このイヴェントシネマを観てきました。

『皆殺しの天使』
from Metropolitan Opera House, 2017-11-18, 13:00–15:40.
Composer: Thomas Adès. Libretto: Tom Cairns.
Production: Tom Cairns.
Set and Costume Designer: Hildegard Bechtler. Lighting Designer: Jon Clark. Projection Designer: Tal Yarden. Choreographer: Amir Hosseinpour.
Cast: Joseph Kaiser (Edmundo de Nobile, the host), Amanda Echalaz (Lucía de Nobile, his wife), Audrey Luna (Leticia Maynar, an opera singer), Sally Matthews (Silvia de Ávila, a young widowed mother), Iestyn Davies (Francisco de Ávila, her brother), Christine Rice (Blanca Delgado, a pianist), Rod Gilfry (Alberto Roc, her husband, a conductor), Sophie Bevan (Beatriz), David Portillo (Eduardo, her fiancé), Frédéric Antoun (Raúl Yebenes, an explorer), David Adam Moore (Colonel Álvaro Gómez), Kevin Burdette (Señor Russell, an elderly man), Sir John Tomlinson (Doctor Carlos Conde), et al.
Conductor: Thomas Adés.
Cynthia Miller (ondes martenot), Dimitri Dover (piano), Michael Kudirka (guitar).
World Premiere: Salzburger Festspiele, 28 July 2016.
New Production: Oct. 26 - Nov 21, 2017. A co-commission and co-production of the Metropolitan Opera, Royal Opera House Covent Garden, Royal Danish Theatre, and Salzburg Festival.
上映: 109シネマズ二子玉川, 2018-01-27 10:00-12:50 JST.

メキシコ時代の Luis Buñuel 監督の映画 El ángel exterminador (1962) を翻案した新作オペラです。 不条理な映画をどのようにオペラ化したのかという興味で観てきましたが、まさに不条理オペラという感じで興味深く観ることができました。

Edmundo de Nobile の邸宅ではオペラ帰りの客人を迎えてのパーティの準備をしているが、 何故か使用人たちは逃げ出すように暇を取って帰ってしまう。 パーティは始まるが誰も帰ろうとせず、そのうち、扉が閉じて鍵がかかっているわけではないのに 客間から誰も出入りできなくなっていることに気づく。 水や食料も尽き、死者も出て、次第に極限状況の様相を示してくる。 緊張が頂点に達しようというとき、最初の晩の配置と同じになったことに気づき、それを繰り返すことで、 閉じ込められた状況から脱することができた。 しかし、それは新たな始まりに過ぎなかった、という物語です。 オペラでは登場人物やエピソードが若干整理されていましたが、ほぼ映画に忠実にオペラ化されていました。 登場人物が整理され演劇的にデフォルメされた表現のおかげで、映画よりオペラの方がわかりやすく感じました。 映画では見落としていた人間関係に気づかされたりもしました。

極限状況といっても極端な行動に走り出すというほどではなく、むしろ疲れ果てて雑魚寝している場面が多く、 部屋から出られない理由がわかない不条理さの方が際立地ます。 オペラ帰りのセレブ達が登場人物なのでさほど違和感はありませんでした。 現代オペラということでとっつきやすい旋律のアリアがあるわけで無く、 オペラというよりまるでストレートプレイの不条理演劇を観ているような気分でした。 主な登場人物は舞台上で出ずっぱりで、このような作品では、歌唱力だけでなく演技力も要求されるなと思いつつ観てしまいました。

Adès のオペラは初めて聴きましたが、変拍子や無調を基調とした現代オペラとはいえ、かなりとっつき易く感じられました。 Theremin にも似た音を出す1928年に発明された電子楽器 Ondes Martenot がフィーチャーされていましたが、 20世紀半ばに恐怖映画やSF映画の音楽として使われたような使い方。 メキシコの tamboril (snare drum に似た伝統的な打楽器) の連打も、息が詰まるような状況を盛り上げていました。 超絶高音の soprano も、極限状況下でのヒステリックな状態の表現にピッタリ。 このような映画音楽的とも感じられるイデオマティックな音使いも、とっつきやすさの理由かもしれません。

と言っても、今は年度末の繁忙期。 先の週末もこの週末も、趣味生活もそこそこに職場に出たりしていたのでした。しくしく。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

シアター・イメージフォーラムで Luis Buñuel の特集上映 をやっていて、 El Angel Exterminador も上映していたので、 4日の年始行事帰りに予習したのでした。 わかりやすい演出だったので予習をしなくても話に付いていかれたように思いますが、 話を追うのに精一杯にならずに、演出や音楽も楽しめ、理解は深まったかな、と。

この週末は、土曜の午後に、早稲田大学早稲田キャンパス16号館へ。 久しぶりに桑野塾に顔を出してきました。 前回に行ったのが2015年ですから[メモ]、2年弱ぶりでしょうか。 テーマは『桑野塾×サーカス学ゼミ』ということで、ちょうど3年弱前に聞いた話の続編とでも言える内容でした。というか、続きが聴きたくて行ったわけですが。 もちろん、この3月で桑野先生が早稲田大学を退官されるということで、その節目となる回の話を聴いておきたいということもありましたが。 桑野先生の報告で紹介された オリガ・プレニナ=ペトロヴァ『文化空間のなかのサーカス』 (Ольга Буренина-Петрова: Цирк в пространстве культуры, Новое литературное обозрение, 2014) の話の広げ方はなかなか凄いものがありました。 しかし、後半の特別上映、上島 敏昭 氏が Yahoo! オークションで発掘したという 1947年ソヴィエトのサーカスのコンサート映画が、その45分という長さと言い、映像の状態の良さといい、収録されている技と言い、思わず釘付けになってしまいました。これは凄い。 この週末は他にも気になる公演や上映があったのですが、桑野塾にした甲斐がありました。 最近は本業が多忙になってしまったこともあり、桑野塾から足が遠のいてしまっていたのですが、 話を聴きに行くだけでも好奇心を刺激されて、良いものだなあ、と。

[3616] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 28 20:06:40 2018

先の週末は、土曜午後に与野本町へ。この舞台を観てきました。

ジェローム・ベル 『Galaーガラ』
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
2018/01/20, 15:00-16:30.
Conception: Jérôme Bel Assisté de: Maxime Kurvers, Simone Truong. Costumes: les danseurs.
De et par: distribution en cours.
埼玉版キャスト: 相澤 陽太, 新井 悠汰, 入手 杏奈, 梅村 千春, Elhadji Ba, 大北 岬, オクダサトシ, 金子 紗采, 川口 隆夫, 木下 栞, 佐々木 あゆみ, 竹田 仁美, BIBIY GERODELLE, 百元 夏繪, 星 遙輝, 堀口 旬一朗, 矢崎 与志子, 吉田 駿太朗, 吉村 計、李 昊.
Création: 2015.

ダンスや舞台芸術の制度をズラすような作品のフランスの振付家 Jérôme Bel の2015年の作品は、 前回の日本公演 The Show Must Go On に続いて、 上演する現地でオーディションした特にダンサーに限らない人を使っての作品。 その前の 3Abschied [鑑賞メモ] を楽しんだものの、 The Show Must Go On [鑑賞メモ] はさほど楽しめませんでした。 そんなこともあってあまり期待していなかったのですが、今回は楽しんで観ることができました。

舞台前方下手にリング中とじのカレンダーの裏にフェルトペンで手書きした「めくり」が用意され、 前半はここに書かれた「バレエ」「おじぎ」「マイケルジャクソン」などのお題を、出演者が一人一人演じていくことからはじまります。 舞台に登場するのは、バレエや日本舞踊、コンテンポラリーダンス、バトントワリングなどの身体表現のトレーニングを受けている人から、車椅子に乗った人まで、老若男女問わず様々。 衣装は最も派手な私服ということだった。 全員が一度に舞台に出ての無音での即興の後、出演者間で衣装を交換し、後半は「カンパニー・カンパニー」ということで、一人の動きに皆が真似してのダンス。 そして、川口 隆夫 (ex-Dumb Type) が率いてのダンスから全員が集結して大きく盛り上げてエンディングを迎えました。

そんな舞台を観ていて連想したのが、大道芸での客弄りです。 まず、短い演目を複数連ねて演じるような大道芸では、手作り感ある「めくり」を使うことは多くあります。 そして、観客を引き出して、踊りなどのパフォーマンスをさせたり、お辞儀も定番です。 観客の不器用な動きで笑いを取るだけでなく、子供や老人、車椅子の人など引き出して観客から暖かい反応を引き出す事も、大道芸では少なからずあります。 また、引き出した観客の持ち物や帽子、上着などを交換させて奇妙さを演出するという演出も、 、芸人が引き出した観客に同じ動きをするように求めた上で、難しいジャグリングの技をして、真似るのも恥ずかしい変な踊りを踊って、笑いを取ったりすることも、大道芸では定番です。 後半の「カンパニー・カンパニー」で、バレエダンサーやバトントワラーの動きに振り回される他の人の動きなど、 固定の「芸人」はおらずお互いがやりあう形になりますが、共通点も多くありました。 そして、最後は引き出した人たちをコラボレーションさせての感動のフィナーレは、さながら 雪竹 太郎 の「ゲルニカ」。 そういう舞台上でのフォーマットだけでなく、不器用な動きや、バレエやトワリングの動きに付いていけないことに笑いが起きたり、 子供や車椅子の人の演技に暖かい拍手が起きたり、という、観客での反応も大道芸での反応にとても似ていました。

この作品のコンセプトはさておき (おそらく舞台上の人、動きのフラットな多様性というのはあったのだろうとは思いますが)、 大道芸の客弄りの場面を集めて大掛かりにして舞台を観てるよう。そんな一時間半を楽しみました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3615] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 22 23:12:24 2018

一週間以上経ってしまいましたが、1月13日の土曜は昼過ぎに飯田橋へ。この映画を観てきました。

広島国際映画祭 Cinémathèque française 共同企画 『世界のすべての記憶』 (Tout la mémoire de monde) 特集の、 アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュの特別アンコール上映で、 ピアノ生伴奏 (演奏: 柳下 美恵) 付きサイレント映画上映を観てきました。

『洪水』
1923 / France / 87 min. / B+W (coloured) / silent
Réalisateur, Scénariste: Louis Delluc
Interprètes: Ève Francis (Germaine Broc), Van Daële (Monsieur Broc), Ginette Maddie (Margot Doucet), Philippe Hériat (Alban Perrin), et al.
『エルノアへの道』
1920 / France / 50 min. / B+W / silent
Réalisateur, Scénariste: Louis Delluc
Interprètes: Ève Francis (Majesty), Princesse Doudjam (Santa), Gaston Jacquet (Parnell), Albert Durec (Etchegor), et al.

元ジャーナリストで、第一世界大戦末期の1917年以降、1924年に亡くなるまでの間、 映画批評の雑誌を編集する一方7本のサイレント映画を演出した Louis Delluc の2本です。 フランスのサイレント期の監督として名を知られますが、作品を観たのはこれが初めて。

フランスの前衛映画の先駆とは言われ、回想シーンの使い方などモダニズムも感じられるとはいえ、 カメラワークやモンタージュも、 例えば去年末に観た Gustav Machatý: Erotikon (1929) [鑑賞メモ] と比べるとまだまだ素朴。 しかし、1920年代前半はまだまだこんなレベルでしょうか。 脚本もいささか無理があり感情移入し難たく感じられてしまいました。 L'Inondation など、勝手に横恋慕して心を病んだ主人公 Germaine に対して、 恋敵 Margot が不当に悪者に描かれているようにも思えてしまいました。

双方とも成就しない恋心や嫉妬の織りなすメロドラマ映画ですが、 L'Inondation の舞台は南仏のローヌ川沿いの村。 Le Chemin d'Ernoa の舞台は フランス領バスク地方、スペイン国境近くのピレネー北麓の村。 Le Chemin d'Ernoa は、アメリカで一稼ぎして戻った裕福な男 Etchegor) が主人公で、 三角関係の相手も密かに犯罪で稼いでいるアメリカ人夫婦 (Majesty et Parnell) で、 自動車に乗るなど、それなりにモダンなライフスタイルを感じさせるものがありました。 L'Inondation でも、主人公 Germaine の恋敵となる Margot はフラッパーを思わせるキャラクター。 どちらもパリのような大都会を舞台とした映画では無いということもあって、 メロドラマらしい都会のモダンでお洒落な道具立でが少なめなのも、物足りなく感じた一因でしょうか。

と、否定的な書き方になってしまいましたが、期待が大き過ぎただけで、ピアノ生伴奏に導かれつつ、普通に楽しんで観ていました。 モダンなメロドラマというより、Le Chemin d'Ernoa でのピレネー北麓の見通しの良い風景やその中を疾走する自動車、 L'Inondation での静かに洪水に浸るローヌ川沿いの村など、 美しい野外ロケの画面が印象に残りました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

最近、ヨーロッパのサイレント映画からだいぶ遠ざかってしまってましたが、 去年末のチェコ映画特集を観て、少し興味が再燃気味だったりします。 やはり、ピアノ生伴奏付きでサイレント映画を観るのは楽しいものです。

[3614] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 21 19:49:23 2018

二週間前に行った金沢一泊旅行の帰り。 当初は予定に無かったのですが、金沢で富山に新オープンした美術館の情報を偶然目にしたので、 日曜の金沢は午前だけにして、昼には富山へ移動。この展覧会を観てきました。

富山県美術館
2017/11/16-2018/01/08 (水休;祝開,翌休;12/29-1/3休), 9:30-18:00,

1981年に富山駅の南側、城南公園の一角にオープンした富山県立近代美術館は、 耐震、空調、防火などの施設が現代の基準に満たなかったこともあり、移転新築することになり、 2016年12月末をもって閉館。 移転後は富山県美術館と名称が変わり、2017年3月25日からのプレオープンを経て、2017年8月26日に富山駅の北西側、富岩運河環水公園の一角にオープンしました。 良さげな作品が出展された展覧会をやっていることもあり、どんな美術館になったのかという興味もあって、 金沢へ展覧会 [鑑賞メモ] を観に行った帰りに足を運んでみました。

開館記念展 Part 2 『素材と対話するアートとデザイン』 は、 どちらかといえばデザイン寄りの展覧会。 やはり最も印象に残ったのは、会場入ってすぐの Emanuelle Moureaux: “Color of time” (2017)。 展覧会初日11/16の06:30から日没後色が見えなくなる19:49までの799分を色のグラデーションで表現したインスタレーションで、 1分毎の時刻を表した文字に色を付け、それを並べて吊るして、大きなトンネル状の空間を作り出していました。 物量的な存在感と色の美しさも良いのだが、緑色などの色も使われており、かなり恣意的に色は選ばれているよう。 その時々の空のある特定の領域の色からサンプリングしたりと条件を厳しくした方がコンセプチャルになると思うけれども、 そうしたらここまで鮮やかな色彩のインスタレーションにならなかっただろうな、とも。

デザインの展示は、素材に焦点を当てたもの。 いわゆる新素材というより、リサイクル素材が多くあったのは、時代でしょうか。 造形については素材を際立たせるミニマリズム的なデザインが目立ちました。

新開館といっても、富山県立近代美術館のコレクションを引き継いでいますので、コレクション展示も充実しています。 絵画や彫刻などの近代美術作品よりもデザインの展示の方が映える展示空間でしょうか。

富山県立近代美術館といえば1985年から開催している世界ポスタートリエンナーレで、 ポスターのコレクションが充実していることで有名。 戦後20世紀半ばのモダンなデザインなものを中心に、東欧のものも充実。そのポスターコレクションも楽しめました。

また、モダンデザインの椅子のコレクションの展示もありました。 椅子のコレクションといえば、武蔵野美術大学のコレクションが有名ですが [鑑賞メモ]、 富山にもこんなに充実したコレクションがあったのですね。座れる椅子も三脚あって、展示を堪能しました。

富山県といえば 瀧口 修造 の出身県で、その縁もあって、その遺品が富山県立近代美術館のコレクションとなっていたのですが、 この展示コーナーがオシャレになっていました。 まるでラグジュアリー・ブランドの商品ディスプレイのよう、と、思ってしまいました。 シュルレアリスムの紹介者としては、カオティックな展示にした方が、それらしい雰囲気が楽しめたんじゃないか、とも、思いましたが。

美術館の屋上は、佐藤 卓 のデザインの「グルグル」などのオノマトペに着想した遊具が並ぶ子供向けのプレイグラウンド『オノマトペの屋上』となっています。 年間スケジュールでは冬季は閉鎖でしたが、年末年始は特別開放していました。 子連れの家族でかなり賑わっていて、遊具もほとんど埋まっていました。コンセプト倒れになっておらず、何より。

北陸新幹線が出来て東京から近くなった上、富山駅からのアクセスも良いですし、 富山市内で古い街並みが残る岩瀬浜とも富岩運河で繋がってますし、金沢と合わせて行くのにうってつけ。 これからも時々足を運びたいものです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

日帰りではなく一泊の余裕のある旅程にしていたので、臨機応変に富山に寄れたわけで、 やはり、目的のものだけ見てトンボ帰りの強行軍の旅行はするもんではありません。

[3613] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 14 12:57:44 2018

先の週末三連休は一泊で金沢へ行ったわけですが、 土曜は遅くに呑んだので、日曜の朝は10時くらいまでゆっくり。 午前は、軽く観光散策しつつ、ちょっと気になったオルタナティヴ・スペースを覗いてみました。

『ゆらぎの所在』
金沢アートグミ
2017/12/16-2018/01/08 (水休;12/26-1/4休), 10:00-18:00,

Janet Cardiff and George Bures Miller 展 [観賞メモ] で立ち寄った 金沢21世紀美術館でフライヤを拾って気になった展覧会。 会場の金沢アートグミの場所は、 村野 藤吾 の作品として知られる [観賞メモ] 近江町市場に接した北國銀行武蔵ヶ辻支店の3F。 この建物は一度ちゃんと観に行きたいと思っていましたし、 金沢にも現代美術のオルタナティヴ・スペースがあったのか、と、足を運んでみました。 オフィスを改装したような天井の低い狭いスペースを予想していたのですが、元講堂らしきスペースを展示空間としていました。 NPO法人となって現在の場所にギャラリーを開設したのは2009年。 金沢へは金沢21世紀美術館に展覧会を観に数年に1回は来ていたので、今まで気付かな買ったのは痛恨。 これから、金沢21世紀美術館と併せてチェックしたいものです。

展覧会をしていた 坂本 のどか に関する予備知識は無かったが、2000年代以降に、主に東京周辺で活動している作家とのこと。 最近の現代美術作家に多い雑然としたプロジェクトの記録のような作品ではなく、スタイリッシュなビデオインスタレーションでした。 夜に街を歩くときに見かけるカーテン越しに人影を感じる住宅の窓を短時間のループのビデオを使ったインスタレーションが良かった。 奥の壁ほぼ一面を使ったものあったが、ギャラリーの上方の壁のあちこちに投影されると、集合住宅の窓を見ているよう。 使っているプロジェクタが1台のみで、ミラーを使って分割して複数の窓を投影するシステムも、低コストで維持も容易なように考慮されているようで良かった。 プロフィールを見ると、筑波大学総合造形 [鑑賞メモ] の出身とのこと。 それらしい作風だなと納得でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3612] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Jan 10 0:26:13 2018

先の週末土曜は昼頃に家を出て、北陸新幹線で金沢へ。 16時頃に金沢21世紀美術館へ着いたのですが、チケット売場から既に大行列。 このまま並んでもまともに作品は観られないので、遅めの時間に出直すか、明朝一番にすることに。 石川県立美術館に流れて1時間ほど過ごした後、 一旦チェックインしようとホテルへ向かう途中、金沢21世紀美術館を覗いたら、 行列の長さが1/3程度になっていたので、このまま観ていくことにしました。

Janet Cardiff and George Bures Miller
ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー
金沢21世紀美術館
2017/11/25-03/11 (月休;1/8,2/12開;12/29-1/1,1/9,2/13休), 10:00-18:00 (金土-20:00).

立体的なサラウンド・サウンドを使ったインスタレーションを得意とするカナダ出身の現代美術作家2人組の個展。 dOCUMENTA(13) での Alter Bahnhof Video Walk [鑑賞メモ] や for a thousand years [鑑賞メモ] が とても楽しめたので、彼らの作品をまとめて見ることができる絶好の機会と、金沢へ遠征してきた。 2014年にデンマークの美術館 ARoS で開催された個展 Something Strange This Way に基づく展覧会で、その際に展示された6作品に Playhouse (1999) と Imbalance. 6 (1998) を加えた8作品が展示されていた。 今まで見た作品の多くは造形的に作り込んだインスタレーションを伴わないサウンドよるAR (Augmented Reality) とでも言うものが多かったのだが、 今回の展覧会で展示されていた作品の多くはサウンドだけでなく造形的にも作り込まれたインスタレーション。 サウンドを使ったナラティヴなインスタレーションは音楽というよりラジオドラマに近いものを感じていたが、 これに造形が伴うことで、出演者のいないパフォーマンスというか舞台作品を観てるようになることもあった。

最も印象に残ったのは、やはり、ドラマ的な演出がされた作品。 椅子に座って劇場のミニチュアの舞台上のフォログラムの歌手を見つつ サラウンド・サウンドで謎の女性と歌手のリサイタルを観るような体験をするなど、 Alter Bahnhof Video Walk にも似たノスタルジックな感傷を感じた。 Opera for a Small Room (2015) は カナダのブリティッシュ・コロンビア州の田舎町のリサイクルショップで見つけたオペラのレコードのコレクションに基づき、 その持ち主の部屋とそこでかかっている音楽という形で作り上げたインスタレーション。 コレクター風の雑然とした無人の部屋でクラシカルなオペラのレコードの再生に始まり次第にノイジーなロック・オペラの様相を呈していく約20分だった。 これらの作品ほどドラマチックではないが、キャンピングカーに様々な人形が蠢く少々グロテスクさのある The Marionette Maker (2014) にも、 Playhouse にも似た舞台と歌手の人形があり、 彼らの好むモチーフとして、オペラ/声楽コンサートというとしてあるのかな、と。

以前に体験していたインスタレーションでは造形を作り込まないインスタレーションでモダンさも感じていたのだが、 この展覧会ではシュルレアリスティックな造形が多かったもは意外ですらあった。 拷問装置に着想したかのような The Killing Machine (2007) や、 回転木馬 The Carnie のような、 ドラマ的な演出が無い自動楽器のようなインスタレーションでは、そのグロテクスさが印象に残った。 しかし、ドラマ的では無い作品で最も気に入ったのは The Cabinet of Curiousness (2017)。 小さな引き出しが多く並んだ木製のキャビネットのそれぞれの引き出しにスピーカを仕込み、 引き出しを開くとそれぞれ異なる音楽や歌声が流れ出す作品で、 キャビネットのアンティークな雰囲気とノスタルジックなサウンドのシンプルな組み合わせが効果的だった。

15世紀ルネッサンス期のイタリアはメッシーナ (Messina) の画家 Antonello の絵画 San Girolamo nello studio (1475) に描かれた空間とそのサウンドスケープを再現した Conversation with Antonello (2015) は、 その音よりも、辻褄のあっていない復元された空間の方が印象に残った。 比較的初期の作品になる Imbalance. 6 (1998) は、 よろけるように飛び跳ねる素足の足元の映像を写したディスプレイを紐で吊るし、 その映像に合わせるかのようにディスプレイを揺らす作品。 全8作品の中では印象は薄かったが、サウンドをメインとしない面も観たようで、興味深かった。

体験するのに時間のかかる作品が多く、会場も混雑していたので、 通して観るのに3時間近くかかってしまったが、 短編ラジオドラマの様な作品だけでなく、造形の面白さも含め多様な8作品を堪能することができた展覧会だった。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

Playhouse で1時間弱の待ち時間がありましたが、 通して鑑賞すると30分近くかかる作品もあったので、結局、閉館の20時まで約3時間粘ってしまいました。 新幹線も出来、金沢は日帰りも余裕なわけですが、一泊にしておいたおかげで、余裕を持って鑑賞できました。 晩には香箱蟹を含む美味しい料理に地元の酒 (手取川や菊姫) も楽しめたし、一泊にした甲斐がありましたよ。

[3611] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 8 20:36:20 2018

実家・親戚付き合いから戻った正月3日は、美術館へ初詣。 今年も昼過ぎには東京都写真美術館へ行って、これらの展覧会を観てきました。

TOP Collection: Eugène Adget: The Eternal Inspiration
東京都写真美術館 3階展示室
2017/12/02-2018/01/28 (月休;月祝開,翌火休;12/29-1/1休) 10:00-18:00 (木金-20:00;1/2,3 11:00-18:00).

20世紀初頭にフランス・パリで活動した Eugène Atget の受容と影響に焦点を当てたコレクション展。 Adget を見出した Man Ray、 Man Ray の助手で Adget をアメリカへ紹介した Berenice Abbott、 MoMA写真部門ディレクターだった John Szarkowski を軸に、関係した作家の写真を展示していました。 20世紀半ばの海外での受容、影響、Walker Evans の展示までは良かったのですが、 20世紀後半の日本での受容、影響については判然としない展示でした。 Szarkowski の企画した展覧会 New Japanese Photography を取り上げているのですが、 そもそもこの展覧会がどのような内容だったのか分からなかったのが、物足りなかったです。 荒木 経惟 『写真論』 の中には Adget の影響を感じさせるような写真も少なからずあると気付くことができたなど、 得るところもあったのですが、その荒木の写真と New Japanese Photography の関係など、 もう少し繋ぎが欲しかったように思いました。

Contemporary Japanese Photography vol. 14: Photographs of Innocence and of Experience
東京都写真美術館 2階展示室
2017/12/02-2018/01/28 (月休;月祝開,翌火休;12/29-1/1休) 10:00-18:00 (木金-20:00;1/2,3 11:00-18:00).
片山 真理 [Katayama Mari], 金山 貴宏 [Kaneyama Takahiro], 鈴木 のぞみ [Suzuki Nozomi], 武田 慎平 [Takeda Shimpei], 吉野 英理香 [Yoshino Erika]

アニュアルで開催されている、新進若手の作家を紹介するグループ展示。 こういうグループ展は一人くらいは引っかかるものがあるのだけど、今回はあまりピンときませんでした。 そんな中では、古い木枠やアルミサッシのガラス窓や手鏡、鏡台などのガラス面に感光材を塗って、 かつて見えて/映っていた物の白黒写真をプリントしたものが、最も良かったでしょうか。 制作方法を知らずに観た時は微妙なボケ具合もピンホールを使って直接露光したのかもしれないと思いましたが、流石にそこまではせず、ネガからプリントしたよう。 それにしても巨大な暗室を要して、大変そうです。

W. Eugene Smith: A Life in Photography
東京都写真美術館 地階展示室
2017/11/25-2018/01/28 (月休;月祝開,翌火休;12/29-1/1休) 10:00-18:00 (木金-20:00;1/2,3 11:00-18:00).

主に1940s-70s、20世紀半ばに活動したアメリカのドキュメンタリー写真作家の回顧展です。 Life 誌フォトエッセーとして発表されたものが主ですが、 新興写真に連なるような白黒で端正な構図のものが中心で、散文的というより詩的に感じるところも。 Smith の意図通りにならなかった点も多かったですようですが、 最終的なフォトエッセーがどう仕上がったのかも、比較としてもっと見たかったです。

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[3610] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Jan 2 20:45:07 2018

2017年に歴史の塵捨場 (Dustbin Of History)に 鑑賞メモを残した展覧会やダンス演劇等の公演の中から選んだ10選。 音楽関連 (レコード/ライブ) は別に選んでいます: Records Top Ten 2017

第一位
Compagnie XY: Il n'est pas encore minuit... (サーカス)
世田谷パブリックシアター, 2017/10/21.
[レビュー]
第二位
Jörg Müller: Mobile
座・高円寺 1, 2017/07/22
[ レビュー]
第三位
KAAT × 小野寺 修二 『WITHOUT SIGNAL! 〔信号がない!〕』 (ダンス)
KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ, 2017/10/01
[レビュー]
第四位
Jim Jarmusch (dir.): Paterson 『パターソン』 (映画)
K5 International, Amazon Studio, Inkjet Production, in association with Le Pacte, Animal Kingdom (USA / France / Germany), 2017 (日本公開, 2017)
[レビュー]
第五位
山崎 博 『計画と偶然』 (写真展)
東京都写真美術館 2F展示室, 2017/03/07-2017/05/10.
[レビュー]
第六位
『単色のリズム 韓国の抽象』
東京オペラシティアートギャラリー, 2017/10/14-2017/12/24.
[レビュー]
第七位
いいむろなおきダンスカンパニー 『doubt』 (マイム)
こまばアゴラ劇場, 2017/11/04
[レビュー]
第八位
Малый драматический театр, Лев Додин (dir.), Friedrich von Schiller: Коварстово и Любовь [Kabale und Liebe] (演劇)
世田谷パブリックシアター, 2017/02/18
[レビュー]
第九位
遠藤 利克 『聖性の考古学』 (美術展)
埼玉県立近代美術館, 2017/07/15-2017/08/31
[レビュー]
第十位
Bayerische Staatsoper, Romeo Castellucci (prod.), Richard Wagner (comp.): Tannhäuser (オペラ)
NHKホール, 2017/09/21.
[レビュー]
次点
『カッサンドル・ポスター展 グラフィズムの革命』 (デザイン展)
埼玉県立近代美術館, 2017/02/11-2017/03/26.
[レビュー]
番外特選
Suomen Kansallisbaletti [Finnish National Ballet]: Finn Family Moomin: Moomin and the Magician's Hat / Special Ballet Galla (バレエ)
オーチャードホール
[レビュー]

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[3609] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Jan 2 20:36:30 2018

2017年に入手した最近数年の新録リリースの中から選んだ10枚+α。 展覧会・ダンス演劇等の公演の10選もあります: 2017年公演・展覧会等 Top 10

#1
Yacine Boularès, Vincent Segal, Nasheet Waits
Abu Sadiya
(Accords Croisés, AC167, 2017, CD)
[レビュー]
#2
Jean-Guihen Queyras, Sokratis Sinopoulos, Bijan Chemirani, Keyvan Chemirani
Thrace: Sunday Morning Sessions
(Harmonia Mundi / Latitudes, HMC902242, 2016, CD)
[レビュー]
#3
Nina Becker
Acrílico
(independente / Dist. Traore, no cat. no., 2017, CD)
#4
Sabîl
Zabad, l'écume des nuits
(Harmonia Mundi / Latitudes, HMM 905279, 2017, CD)
#5
David Virelles
Gnosis
(ECM, ECM 2526, 2017, CD)
#6
Lali Puna
Two Windows
(Morr Music, MM156, 2017, CD)
#7
Miklós Lukács, Larry Grenadier, Eric Harland
Cimbalom Unlimited
(Budapest Music Center, BMC CD 244, 2016, CD)
#8
Stein Urheim
Utopian Tales
(Hubro, HUBROCD2585, 2017, CD)
#9
César Lerner & Marcelo Moguilevsky
Sefarad
(self-published, no cat. no., 2017, CD)
#10
Les Amazones d'Afrique
République Amazone
(Real World, CDRW217, 2017, CD)
次点
Kusimanten
Bleib ein Mensch
(Leo, CD LR 778, 2017, CD)
番外特選
Building Instrument & Erlend Apneseth Trio
新宿 Pit Inn
2017/05/21, 20:00-22:00
[レビュー]

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[3608] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Jan 2 20:33:28 2018

あけましておめでとうございます。

去年を振り返って、 レコード Top 10展覧会・公演等 Top 10 を選びました。 世間の流行・動向にキャッチアップしているわけでなく、公開する意味はほどんどありませんが、 長年続けていることですし、この一年間の自分の趣味生活の備忘と反省ということで。

一昨年分までは、年間に書いたレビュー数など、このウェブサイトでの活動を定量的に見たりもできる程度に更新していました。 昨年はとうとう、音盤雑記帖 (音楽レコード/ライブのレビュー) の更新がライブのみになってしまい、実質的に途絶えてしまいました。 新譜のレコード/CDを買っていないわけではないのですが、週末に観たものについて書くことで精一杯です。 ウェブサイトについては、このような定性的な振り返りで十分でしょうか。

数年前から計画があったのですが、去年4月に、ついに職場が移転。 といっても、実験設備は残るし、それ以外の出張も多いので、 交通の便を重視して武蔵小杉へ転居しました。 通勤時間は倍増、生活パターンが激変して、体を馴らすのに精一杯です。 しかし、週末くらいはライブハウス、劇場や美術館に足を運んで趣味を楽しみ、 このサイトも無理の無い範囲で続けていきたいものです。

このサイトを読んでくださり、ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。

[3607] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Dec 20 23:32:45 2017

先週末の土曜は午後に横浜みなとみらいへ。この写真展を観てきました。

Ishiuchi Miyako: Grain and Image
横浜美術館
2017/12/9-2017/3/4 (木休;3/1開;12/28-1/4休), 10:00-18:00 (3/1 -16:00; 3/3 -20:30).

1970年代に活動を始めた写真家 石内 都 の回顧展。 ついこのあいだと思っていた『ひろしま/ヨコスカ』 (目黒区美術館, 2008) [鑑賞メモ] も約10年前で、久しぶり。 それ以降の展開も追えただけでなく、1980年代のモノクロ写真の良さにも気づかされた展覧会だった。

石内 都というと、母の遺物を即物的ながらまるで生前の肉体を想起させるかよう生々し色鮮やかかに撮影した「Mother's」 [鑑賞メモ] が一つのピークと思っていたが、 アレブレボケの1970年代から、1980年代後半に「yokohama 互楽荘」 (1986-1987) や 「Bayside Courts」 (1988-1989) という構図やフレーミングも端正な廃墟の白黒写真を撮っていたことを知った。 このような写真が好みということもあるが、 宮本 隆司 の「建築の黙示録」 (1983-) [鑑賞メモ] との同時代性も感じられ、 今回の展覧会で最も印象の残った作品だった。

「Mother's」以降、「ひろしま/hiroshima」 (2007-) や 「Frida by Ishiuchi」 (2012)、「Frida Love and Pain」 (2012) と 似たような遺品シリーズが続いていたが、 銘仙などアンティーク/ビンテージの絹織物製品を撮った「Silken Dreams」 (2011) となると、また新たな作風に踏み込んているよう。 「Frida by Ishiuchi」「Frida Love and Pain」までは、クローズアップもあるが、遺品の全体像がわかり、むしろ余白も感じられるフレーミングで撮ったものが中心だったが、 「Silken Dreams」では、全体の形状がわからないほどクローズアップすることで、 布のテクスチャ–この展覧会のタイトルでもある「肌理」–にぐっとフォーカスしたような写真が中心になっている。 高い天井のギャラリーに散りばめるような展示もあって、個々の「肌理」を堪能できたという程ではなかったが、 そんな変化も感じさせた展覧会だった。

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[3606] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 17 19:03:19 2017

前週に続いて9日土曜も昼には京橋へ。 東京国立近代美術館フィルムセンターの特集上映 『日本におけるチェコ文化2017 チェコ映画の全貌』 のプログラムで初期トーキー映画と第二次世界大戦直後に制作されたSF映画を観てきました。

Ze soboty na neděli
1931 / Czechoslovakia / 73 min. / DCP / B+W
Režie: Gustav Machatý.
Hrají: L. H. Struna (Karel), Magda Maděrová (Máňa), Jiřina Šejbalová (Nana), Karel Jičínský (Ervín), R. A. Dvorský (Pavel) a další.

あらすじ: タイピストの Máňa は遊び慣れた同僚でルームメイトの Nana に、土曜晩のブルジョワの Ervín, Pavel との食事に誘われる。 豪華なレストランで酔いが回ったところで Máňa は Ervín に一夜のための札を握らされそうになるが、彼女は拒絶してトイレに逃げ込む。 その間に Ervín は Máňa のハンドバックの中に札を忍ばせる。 Nana になだめられて Máňa は席に戻り、その後4人はレストランを出て車に乗るが、そのままホテルへ連れ込まれそうになる。 雨の中 Máňa は逃げ出し労働者の酒場へ逃げ込む。 Máňa は置いてあった帽子の上に座ってしまったことをきっかけに、偶然隣り合わせた植字工 Karel と話をする。 そのうち酒場で喧嘩が始まり、Karel と Máňa は酒場から逃げ出す。 土砂降りでスブ濡れの Máňa は、躊躇するが、結局、近くの Karel の家に行くことにする。 Ervín の誠実な態度に Máňa も次第に好意を持つようにななり、二人は結局一夜を共にする。 翌日曜、Máňa は Karel に Nana の所へ着替えを取りに行かせる。 戻った Karel は Nana からの手紙を託されていたが、その内容は「Ervín が Máňa へ金を返せと言っている」というものだった。 Karel に疑われた Máňa は Karel の部屋を飛び出し、自分の部屋に帰りガス自殺を図る。 思い直した Karel は置き忘れた Máňa のハンドバックを手に彼女の部屋へ向かうが、 スリと間違えられ警官に捕まってしまう。 潔白を証明すべく Karel は警官と Máňa の部屋へ行くが、様子がおかしく、警官がドアを破って部屋に飛び込み、窓を破って換気して、Máňa は一命を取り留める。 数日後、職場にかかってきた Karel からの電話を、親密に受ける Máňa がいた。

年頃の女性 Máňa に土曜から日曜にかけて起きた出来事を、その心理を丁寧に描いた映画でした。 それも、セリフに頼らず、丁寧に映像で描写しているのが、とても良かった。 もちろん、初期のトーキー映画ということもあって、高級レストランでのバンド演奏や場末の飲み屋の楽師の演奏、 Karel の部屋でのラジオの音など、トーキーならではの演出も。ちなみに、劇中歌2曲はヒットしたそう。

Erotikon 『エロティコン』 (1929) でのヒロイン Andrea 役の Ita Rina といい [鑑賞メモ]、 監督の Gustav Machatý は、女性を魅力的に撮るのが上手いと、つくづく。 それも即物的に美しく撮るというより–といっても、女優も美女なのも確かですが–、 映像による繊細な心理描写を通して引き込まれるよう。 Machatý の撮った最も有名な作品は Extase 『春の調べ』 (1933) のようですが、これも是非観てみたいものです。

Krakatit
1948 / Czechoslovakia / 102 min. / DCP / B+W
Režie: Otakar Vávra. Námět: Karel Čapek.
Hrají: Karel Höger, František Smolík, Florence Marlyová, Eduard Linkers, Jiří Plachý, Jiřina Petrovická a další.

Karel Čapek の1924年の同名小説に基づく、第二次世界大戦直後に制作された映画。 高性能爆薬 Krakatit (19世紀に大噴火したことで有名なインドネシアの火山 Krakatau から名が採られている) を発明した科学者 Prokop が、 発明したこをと後悔し、Krakatit を使った戦争を阻止すべく奔走するという話です。 Prokop が髄膜炎で倒れて意識をほとんど失った状態から話が始まるということもあり、 SFだけでなくミステリー的な要素もありました。 原子爆弾が発見される前に原作は書かれたものですが、映画では原子爆弾のことも意識した描写にも思われました。

時間展開が複雑に錯綜するような展開というだけでなく、Prokop の夢なのか熱による幻覚なのか判然としない描写もあって、話がかなり追いづらかったです (あらすじが書きづらいほど)。 化学反応と電磁的な現象、核反応などの違いもわかっていなさそうな Krakatit の描写だけでなく、 Machatý を観た直後だったせいか Prokop を巡るロマンスの描写も、 いまいち説得力に欠けて話に入り込めませんでした。 原作が先駆的だったということもあるとは思いますが、 最終兵器のもたらす終末 (アポカリプス) のイメージは、第二次世界対戦直後には出来上がってたんだな、と、 観ていて感慨深いものがありました。

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[3605] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Dec 11 23:31:08 2017

出張移動中、時間調整と昼食ついでに立ち寄った美術館で、この展覧会を観てきました。

Lose Your Mind
水戸芸術館現代美術ギャラリー
2017/10/14-2018/1/21 (月休;1/8開;12/27-1/3,1/9休), 9:30-18:00.

1990年代以降 – YBA (Young British Artists) 以降に活動を始めた [関連鑑賞メモ] イギリスの現代美術作家の個展。 緩いながら少々ブラックなユーモアを含んだドローイングや立体作品の写真は、Tシャツやポスターなどのマルチプルにもよく使われるので、けっこう馴染み深い作家です。 今まで平面作品くらいしか観る機会が無かったので、立体作品やアニメーションを含めてまとめて観ることができました。

最初のギャラリーに壁いっぱいのドローイングやTシャツが展示してありましたが、逆に個々の印象をぼやかしてしまったよう。 立体作品についても、プラカードを持つ犬の立体作品 “I'm Dead” にあったようなブラックなユーモアというより、 芸術に対するメタな視点をユーモラスに表現したような作品が中心で、そこが物足りなく感じました。 結局、最も楽しんだのは、短編アニメーション作品。 “The Artist” (2012) [YouTube] の口元を微笑ませて描く最後の細やかなオチや、 “Laundry” [YouTube] の不条理な笑いなど。 YouTubeでも観られるものですが、 ギャラリーで観ているとドローイングが生き生きと動き出しているようにも見えました。

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[3604] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Dec 10 20:27:28 2017

先週末の土曜は、昼前には京橋へ。 東京国立近代美術館フィルムセンターの特集上映 『日本におけるチェコ文化2017 チェコ映画の全貌』 のプログラムでピアノ生伴奏 (演奏: 柳下 美恵) 付きサイレント映画上映を観てきました。

Milenky starého kriminálníka
1927 / Czechoslovakia / 113 min. / DCP / B+W (coloured) / silent
Režie: Svatopluk Innemann.
Hrají: Jan W. Speerger (továrník Pardon), Anny Ondráková (Fifi Hrazánková), Vlasta Burian (Cyril Pondélíček / Alois Kanibal), Betty Kysilková (Stefanie Lesczynská), Vera Hlavatá (Olga Lesczynská), etc

あらすじ: 工場主の Pardon 氏は仮装パーティで偶然会った Stefanie と恋に落ち、 親が決めた会ったことの無い婚約者 Fifi から逃れるため、叔父の Cyril を身代わりに立てる。 Cyril は Fifi のアプローチから逃れるために、実は悪党 Kanibal だと嘘をつくが、 スリルに憧れる Fifi はますます言い寄られてしまう。 Stefanie とその母 Olga と鉄道旅行中、車窓から Pardon 氏を見かけて、 車酔いのふりをして列車を降りて、偶然を装って Pardon 氏と再会を果たす。 Pardon 氏は Olga と Stephanie を連れて館に戻るが、 Cyril は Olga が昔に逃げ出した妻だと気付いて、悪党と偽ったまま Fifi と逃避行する。 犯罪者としては間抜けな Cyril と Olga はあっという間に追われる身になってしまい、 Cyril は Kanibal の身代わりの形になって警察に捕まってしまう。 Pardon 氏は 無実を証明して Cyril を救い出す。 Fifi の不品行を理由に Pardon 氏との婚約は解消となり、Pardon 氏は無事 Stefanie と結ばれた。

物語はたわいないものですが、戦間期の上流階級の Art Deco な意匠もふんだんに、モダンで楽しいドタバタ喜劇が堪能できました。 特にフラッパーというかぶっ飛んだモガお嬢様を演じた Anny Ondráková (Anny Ondra) の体張った演技が素晴らしい。 女優がここまで体張ってるサイレント期のコメディ映画というのは、他に思い当たりません。 相手役の Cyril を演じた Vlasta Burian も、 Vlasta Burian はロシア・アヴァンギャルド映画でお馴染み Владимир Фогель [Vladimir Fogel] を少し老けさせたような風貌で、いい感じ。 Vlasta のボケに Anny がつっこむ夫婦漫才のように見えるときもありました。

Cyril がたわいない嘘に始まり嘘を重ねるうちにどハマりしていくという展開は、コメディの定番ですが、 正直に言えば自分の苦手なパターンなので、見てられない場面もあったりしました。 しかし、モダンな雰囲気だけでなく、 Fifi の運転する暴走自動車のアクションや、最後に街中で繰り広げられる Cyril / Kanibal の大捕物など、迫力のあるアクションを伴う笑いなど、 見所の多いコメディ映画でした。

Erotikon
1929 / Czechoslovakia / 89 min. / DCP / B+W / silent
Režie: Gustav Machatý.
Hrají: Ita Rina (hlídačova dcera Andrea), Olaf Fjord (svůdce Georg Sydney), Luigi Serventi (Jean, Andrein manže), Theodor Pištěk (Hilbert), Charlotte Susa (Hilbertova žena Gilda).

あらすじ: 鉄道員の娘 Andrea は、父が泊めた旅行客 Georg に誘惑されて、一夜を共にしてしまう。 Andrea は Georg を忘れられず、一人都会に出て Georg の子を産もうとするが、死産してしまう。 Geoeg はアニストで、ブルジョワ Hilbert の夫人 Gilda の愛人でもあり、Andrea の父に手切れ金を送りつける。 Andrea 産院を追い出されて彷徨い、乗せてもらった荷馬車の御者に襲われそうになったところを、自動車で通りがかったブルジョワ階級の男 Jean に救われる。 救った Jean も刺されてしまったが、Andrea の輸血により一命を取り留め、これが縁で二人は夫婦となる。 Jean が Andrea のためにピアノを買おうとして、店で Andrea と Georg は偶然再会する。 ピアノを譲ってもらったことで Georg と Jean は友人となり、Georg は Jean の家に頻繁に訪れるようになる。 かつての一夜が忘れられない Andrea は再び Georg に惹かれはじめるが、 それに気付いた Jean は Andrea と2人で旅に出て2人に距離を置かせようとする。 Andrea は置き手紙して Georg のもとに走るが、Gilda との別れ話の直後の Georg の部屋で他の女の痕跡に気づく。 さらに、妻の浮気の証拠を掴んだ Hilbert が Georg の部屋に乗り込んで来て、Andrea は一人で部屋を逃げ出す。 Georg は Hilbert に撃たれる。 Andrea は置き手紙が読まれる前に家に戻り、Jean と旅に出ることにしたのであった。

主役 Andrea を演じた Ita Rina をはじめ美男美女の織りなすメロドラマを堪能することができました。 svůdce (seducer, 女たらし) の Georg や浮気妻 Gilda のような登場人物もいますが、 Andrea のような登場人物は、あっけらかんと非道徳的な Ernst Lubitsch の映画とは違う、道徳的な教訓も感じさせるようなところも。 といっても、説教臭さをほとんど感じさせなかったのは、Ita Rina の強い視線の美しさと、 男女の機微を丁寧に描写するスタイリッシュな映像のおかげでしょうか。 今の視点からするとたいしたことはないのですが、当時はかなりエロティックな描写と取られていたのかもしれません。

ほとんど予備知識無しに、たまにはピアノ伴奏付きでサイレント映画を観るのも良いかと足を運んだのですが、期待以上のレベル。 ドタバタ喜劇にどメロドラマと対照的な映画と登場人物像でしたが、 Anny Ondra と Ita Rina というモダンで美しい女優が堪能できましたし。 観て良かったな、と。 最近は北欧のサイレント映画を観る機会はそれなりに増えたように思いますが、 中欧にも今回観たような映画がまだまだあるんだろうなあ、と。

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日曜の午後は、友人宅で忘年会。 10年程前にワイン会とかやっていた友人たちだったので、 おそらくワイン会だろうと予想して手土産を選んだのですが、たこ焼きパーティでした。をを。 といっても、ワインやチーズも揃って、半ばワイン会でもありましたが。 久しぶりに顔を合わせましたが、昔と変わらないノリで結局6時間余り、一人一本くらい呑んでしまいました。 こういうのも楽しいものです。

[3603] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Dec 5 0:43:26 2017

先日金曜の晩は、仕事かえりに日本橋へ。このイベントシネマを観てきました。

『ヘッダ・ガーブレル』
National's Lyttelton Theatre, 2017-03-09.
by Henrik Ibsen, in a new version by Patrick Marber.
Director: Ivo van Hove; Set and Lighting Designer: Jan Versweyveld; Costume Designer: An D’Huys; Sound Designer: Tom Gibbons.
Cast: Ruth Wilson (Hedda Gabler), Kyle Soller (Tesman), Chukwudi Iwuji (Lovborg), Rafe Spall (Judge Brack), Sinead Matthews (Mrs. Elvsted), Kate Duchêne (Juliana), Éva Magyar (Berte).
First Performance: 9 December 2016, National's Lyttelton Theatre.
上映: TOHOシネマズ日本橋, 2017-12-01 18:20-21:05 JST.

National Theatre による新演出の『ヘッダ・ガーブレル』 (aka 『ヘッダ・ガブラー』)。 去年末の Kolozsvári Állami Magyar Színház [Hungarian Theatre of Cluj] によるプロダクションが楽しめたし [鑑賞メモ]、 先日の Othello での Ivo van Hove 演出も比較的好みだったので [鑑賞メモ]、 National Theatre Live での上映を観てきた。

Kolozsvári Állami Magyar Színház [Hungarian Theatre of Cluj] によるプロダクションは 登場人物をバランス良く描いていたように感じたのですが、 National Theatre / Ivo van Hove のプロダクションでは Hedda の存在感が圧倒的。 Othello 同様に現代に時代設定を移していましたが、 時代はほとんど感じさせずに、まるで、Hedda の心象風景を描いているような舞台でした。 特に Kolozsvári Állami Magyar Színház 版の Lövborg は、 その不遇な過去/身分差を背負った重さもぐっとメロドラマ感を盛り立てていたのですが、 National Theatre / Ivo van Hove は単なるライバルで重さをあまり感じさせないため、 Hedda - Tesman - Lövborg の三角関係もさらっと流すよう。 むしろ、弱みを握ってからの Hedda を支配する Brown との関係の描写が強烈で、その二人の関係を軸とした心理劇のよう。

舞台美術は、Othello でのガラス張りの小部屋のような面白さはなかったのですが、 ソファやアップライトピアノがある程度で家具はもちろん装飾もほとんど無いモダンなリビングルームのようなガランとした舞台は、虚ろな Hedda の内面を映すよう。 下手の窓から時にブラインド越しに差し込む光と作り出す影や、Hedda によって花束がバラバラに床にばらまかれ壁に打ちつけられた様など、 アイデンティティやジェンダーの問題を仄めかす現代美術のインスタレーション作品 [関連鑑賞メモ] を観るようでもありました。

と、演出のほとんどの点はとても好みなのだが、場面転換時に前の場面の余韻に浸りつつも次の場面に向けて心を静かに切り替えたい場面で、歌が入ってしまうのは、 それ以外の場面でBGMの類を使わ無いだけに、効果的よいうより、興醒めするような俗っぽさ。 Joni Mitchell の “Blue” や Leonard Cohen の “Hallelujah” など、 選ばれた曲だけ見ればセンス悪いわけではないのですが。 Othello のエンディングでも歌を流していたりしたので、 これも Ivo van Hoen の好む演出なのでしょうか。

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この週末は、観たい上映会やら忘年会やらイベントが入り過ぎで、体が足り無い状態。 その前の週末は、むしろ観たいものがあまり無くて……、だったのに。重なるときは、重なります。 Hedda Gabler の National Theatre Live も アンコール上映待ちにしてもよかったのですが、 これから年度末に向けてますます忙しくなるので、勢いがあるうちに観ておかないと、と。 頑張って観に行った甲斐はあったでしょうか。

[3602] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Nov 26 21:54:19 2017

11月2, 3日に観てきた 大道芸ワールドカップ in 静岡 2017 の話の完結編、2日目の後半です。

11/03 16:30〜 @ トコチャン広場

ロシア出身の “swinging aerial rope” パフォーマー Анна Володько [Anna Volodko]。 ロマンチックな演出のようなものは感じさせず、シンプルに技を見せるような演出でしたが、 時にはロープを大きく揺らし、回転しながら、ダイナミックに。

神戸を拠点に活動しているサーカス・カンパニーのテントが 去年 [鑑賞メモ] に続いて今年も沈床園のキッズガーデン隣に登場。 相変わらずの緩い雰囲気のサーカスです。 去年は空いている程ではないもののふらりと入れるくらいの人の入り。 今晩はテントから人が溢れて頭越しになんとか観れるほどの大人気でした。

11/03 17:00〜 @ メイン広場3

関西を拠点に活動する大道芸人 KANA∞ によるショー。 観るのは10年前ぶり [鑑賞メモ]。 10年前は「ギャルの大道芸人」という評判を耳にしたりしていましたが、 さすがに大人びた雰囲気になって、感慨深いものがありました。 ジャグリングのような大道芸らしい技は封じて、得意技のフープとダンスによるショーでした。

11/03 17:30〜 @ メイン広場2

沢入国際サーカス学校 出身のクラウン サクノキ。 観るのは2014年の高円寺ぶりでしょうか [鑑賞メモ]。 前半ジャグリングを交えつつのウラウン芸、後半、立方体フレームのトワリング。 初めて観たときはギャップも面白く感じたのですが、 二度目となると、繋ぎがもう少し連続的だったらと感じました。

『ANGELS』
11/03 18:00〜 @ メイン広場2

静岡県の中高生による舞台作品を作る Merlin Nyakam静岡県舞台芸術センター SPACによる 国際共同製作プロジェクト SPAC-ENFANTS が今年も登場。 前回観たときは [鑑賞メモ]、 メインのカンパニーと1ステージを分け合っていましたが、今回は単独で。 演目は同じ『ANGELS』でしたが、踊りのヴァリエーションが増えて、動きも良くなったよう。 女性のみで溌剌と華やかに踊りましたが、男性ダンサーがいなかったのは少々寂しいな、と。

この公演はワーク・イン・ブログレス作品の中間発表の場というだけではなく、 オーディション募集のPRも兼ていたのでしょうか。 出演している中高生のお友達らしき客が少なからずいたというのも、微笑ましいものです。

11/03 18:00〜 @ どき!どき!ランドSBS

日本を拠点に活動する中国雑技芸人 張 海輪。 もともと徐領民雑技団にいましたが [鑑賞メモ]、 独立して自信の雑技団を率いているよう。静岡ではソロで出演していました。 徐領民雑技団時代からの得意技 椅子倒立の安定感はさすがです。

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なんとか11月中に完結することができてよかった……。

[3601] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Nov 26 18:18:04 2017

土曜午前は、インフルエンザ予防接種をしに病院へ。 半日潰れるほど待たされるかと予想していたのだけど、あっさり終わってしまったので、 昼前には初台へ。この展覧会を観てきました。

Rhythm in Monochrome - Korean Abstruct Painting
東京オペラシティアートギャラリー
2017/10/14-2017/12/24 (月休), 11:00-19:00 (金土11:00-20:00).
金 煥基 [KIM Whanki], 郭 仁植 [QUAC In-Sik], 李 世得 [LEE Se-Duk], 権 寧禹 [KWON Young-Woo], 丁 昌燮 [CHUNG Chang-Sup], 尹 亨根 [YUN Hyong-Keun], 徐 世鈺 [SUH Se-Ok], 朴 栖甫 [PARK Seo-Bo], 鄭 相和 [CHUNG Sang-Hwa], 河 鍾賢 [HA Chong-Hyun], 李 禹煥 [LEE U-Fan], 崔 明永 [CHOI Myoung-Young], 徐 承元 [SUH Seung-Won], 李 正枝 [LEE Chung-Ji], 李 康昭 [LEE Kang-So], 金 泰浩 [KIM Tae-Ho], 崔 恩景 [CHOI Eun-Kyoung], 李 仁鉉 [LEE In-Hyeon], 尹 熙倉 [YOON Hee-Chang], etc

20世紀後半に興隆した韓国の抽象絵画のグループ展。 郭 仁植 や 李 禹煥 などはコレクション展で観る機会も多く、実際、収蔵作品も多く展示されていた。 平面の抽象画の展覧会というのは、この美術館らしい展覧会かもしれない。 といっても、これだけ多くの作家の作品を一度にまとめて観るのは初めて。 一つの流派があるように感じていたのだが、 世代からして1910年代に生まれて戦前から活動する世代から1960年代生まれの世代まで幅広く、 スタイルやバックグラウンドに多様性があることに気づかされた展覧会だった。

一番馴染みがある作家は日本を拠点に活動する 李 禹煥 [鑑賞メモ 1, 2] だが、 こうして見ると、かなり異色。 色使いを押さえる代わりにマチエールを強調した凸凹した画面の作品が多い中、ストロークはあってものっぺりとした画面。 岩絵具、膠という素材もあってか日本画にも通じるものを感じた。 やはり、印象に残ったのは、韓紙などの素材に向かって特殊なマチエールの作品。 水につけて溶かした韓紙で描いたかのような 丁 昌燮、 色を使わずに韓紙に穴を開けたり切り貼りして画面を構成した 権 寧禹 や 単色で韓紙で幾何的な凹凸で描いたかのような 朴 栖甫 など。 韓紙以外でも、アクリル絵具を乾かした後でキャンバスを折曲げ生じた不規則な格子状のひびで描いたかのような 鄭 相和、 粗い麻布のキャンバスに油絵具のマチエールだけででなく強く描いて布の裏に抜けた絵具も作品にした 河 鍾賢 が面白かった。

この手の作風は、書のような東洋からの影響はもちろん、 欧米からとしては米国の抽象表現主義やカラーフィールドの絵画の影響だろうと漠然と思っていたし、 尹 亨根 などぼんやり色面で描くようなスタイルだけでなく三幅対 (triptych) を思わせる展示の仕方も含めて Mark Rothko [鑑賞メモ] を思わせるものがあった。 しかし、作家解説を読んでいると、むしろフランスのアンフォルメル [鑑賞メモ] の影響が大きかったのかな、と。 実際、徐 世鈺 や初期の 朴 栖甫 など Henri Michaux を連想させられもした。

マルチメディアを駆使したり社会的なプロジェクトを作品化するような最近の現代美術の潮流から外れるせいか、観客は疎らで、 単色の抽象絵画という作風もあって、適度な緊張感を保ちつつも落ち着いた雰囲気で展覧会を楽しむことができた。 国際現代美術展 [鑑賞メモ 1, 2] のどぎつさも悪くはないけど、 静かに抑えた雰囲気の展覧会の良さを実感した。

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オペラシティに着いて、新国立劇場で山海塾をやっていることに気づいたのですが、 当日券というかZ券は売切。 ちなみに、オペラ La Traviata もやっていたのですが、そっちのZ券も売切。 やはり、ふらりと行って観れるもんではないんだなあ、と。

2014年11月以来 iPhone 6 のバッテリーが3年を前にして完全にへたってしまいました。 数ヶ月前からバッテリーが半日持たないほどだったのですが、 10月に入って外部バッテリー無しでは使い物にならない状態。 約1週間前にはついに起動もしなくなってしまいました。 こんな状態だったので10月末には iPhone X を予約していたのですが、 23日にやっと入荷して機種変更ができたのでした。 iPad mini も持っていたし、プライベートでは通話で使うことは稀なので、 iPhone 無しでもなんとかなっていましたが、待望の入荷であったことよ。

[3600] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu Nov 23 22:29:16 2017

11月2, 3日に観てきた 大道芸ワールドカップ in 静岡 2017 の話の続き、2日目の前半です。

11/03 11:15〜 @ 市民文化会館2

カナダ École nationale de cirque, Montréal 出身の Morgane Tisserand & Pierre Antoine Chastang の男女ペアによる acrobat & trapeze dance。 路上ですれ違う男女の淡い恋—気になる女性とそっけない男性—をテーマに、 難しい技も交えつつ、動きも流麗にロマンチックに躍るような演技でした。

Антон Мелешин и Вадим Мелешин [Anton Meleshin & Vadim Meleshin] (aka Meleshin Brothers)
11/03 11:45〜 @ 市民文化会館1

ロシア出身の Антон Мелешин и Вадим Мелешин [Anton Meleshin & Vadim Meleshin] の2人組 (aka Meleshin Brothers) による rola-bola balance。 1人で rola-bola しながら juggling とかはよるありますが、 2人で一度に板の上に乗ってのバランスは見事。 演出はオーソドックスでしたが、ビートに乗って高度な技を次々と繰り出していきます。 特に板を3〜4段重ねてのバランスは1人でも難しいだろうに2人で登って、片方だけ逆立ちしたり。 果ては、一方の頭に rola-bola を乗せて、その上で balance するなんてことも。 それだけでも見応えありました。

11/03 12:15〜 @ 静岡市役所

スイス出身の Anita Bertolami による一人 puppetry (人形劇)。 といっても、伝統的な意味で人形は使わず、 体の一部を顔に見立てての mime、そして magic 的なトリックを少し交えてのパフォーマンス。 録音伴奏に使っていた baroque cello もしくviola da gamba の少しユーモラスな solo の雰囲気も良く、 可愛らしいくも微笑ましいパフォーマンスでした。

11/03 13:45〜 @ 札の辻

ベルギー出身のマジシャン Laurent Piron。 Magie Nouvelle [関連鑑賞メモ] を謳っているので、 もっと演劇的に演出された演技を期待したのですが、 オーソドックスに技を披露するマジックショーでした。残念。

11/03 14:30〜 @ 呉服町通り

イタリア・トレント自治県の劇団 Teatre per Caso による白鳥に乗った人という姿の stilt パフォーマンス。 特に stilt に特化した劇団というわけではなく、この作品も本来は accordion 伴奏が付いたりもするようですが、 自分が観たときは伴奏もなくグリーティングして歩くだけでした。

11/03 14:30〜 @ 呉服町通り

ウルグアイ出身でフランスを拠点に活動する Esteban Adrian Giovinatti の主宰する人形劇団 La Malette。 Blues harmonica 奏者 Sonny Boy Williamson II に着想したという Little Boy, The King Of Harmonica は、 どう着想するとそうなるのかと思うような、カエルや魚が出てくる一人大道人形劇。 水を使って近づいて見ている子供を水鉄砲で驚かしたりもします。 人垣に隠れてしまうくらいのこぢんまりしたパフォーマンスなので、人手が多い大道芸フェスでは厳しいでしょうか。

11/03 15:15〜 @ 静岡市役所

真面目なリーダー格の Георгий Кириченко [Georgy Kirichenko]、 少しボケ役の Юрий Павличко [Yury Pavlichko]、 お調子者の Дмитрий Николенко [Dmitry Nikolenko] の ウクライナ出身のクラウン3人組 Экивоки [Equivokee]。 メイクや衣装もオーソドックスに、juggling や acrobat を交えつつ、客弄りしつつ、 きっちり客の盛り上げと笑いのツボを押さえた演技。 変に奇を衒わず、こういうのも楽しいものです。

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2日目後半の話は、また、来週末でしょうか……。

[3599] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Nov 20 0:33:39 2017

半月余前の話で、一週間ぶりとなりましたが、11月2, 3日に観てきた 大道芸ワールドカップ in 静岡 2017 の話の続き、1日目の後半です。

11/02 15:45〜 @ 旧クリエーター支援センター

フランス出身の Odile Gheysens が2004年に設立したダンス・カンパニー in-SENSO の vertical dance 作品 Volibri。 今回来日していた女性ダンサーは Odile 自身、男性ダンサーは Éric Lecomte でしょうか。 Rami Khalifé, Francesco Tristano など InFiné Music の 少々アブストラクトなピアノソロにのってロマンチックなダンス。 本来は live painting の video projection などの演出を伴う作品のようですが、 それが無かったためか、少々単調に感じました。 元学校校舎の美しいと言い難い壁面が舞台でしたが、もっと良い場所を使っていたら、印象も違ったかもしれません。

11/02 16:30〜 @ トコチャン広場

ウクライナ出身の strap を使った aerial を得意とするサーカスアーティス ト Dmitriy Grygorov。Cirque du Soleil の Quidam、そして Corteo での “Duo Straps” から独立して、 2007年にカンパニー Flight Of Passion を設立したとのこと。当初は妻の姉 妹にあたる Olesya Shulga (ウクライナ出身で元体操選手) との2人組だった が、現在のパートナーはロシア出身の Anastasia Vashchenko。短かめの strap 2本で、時に口に加えた strap を使って、アクロバティックで力強く。 しかし、ロマンチックな演出でした。

うつしおみ
11/02 17:30〜 @ トコチャン広場

日本のカンパニー ながめくらしつ を主宰する juggling の 目黒 陽介 と aerial の 長谷川 愛実 の男女デュオ。

今回が初上演とのことで、新作。 近年毎年観てますが [鑑賞メモ]、 aerial や juggling の道具立ては大きく変わらないものの、 二人の動きの組み合わせが洗練されています。 去年までよりぐっと良くなりました。

Karen Goudreault & Dominic Lacasse
The Human Flags
11/02 17:30〜 @ トコチャン広場

カナダはケベック州出身の acrobat の男女ペア Karen Goudreault & Dominic Lacasse。 フロアではなく ring や Chinese pole を使った演技を見せます。 特に、男性が Chinese pole で横向きになった状態で脇腹に女性を乗せるという大技は凄い (写真に撮りそこねましたが)。 しかし、The Human Flags とタイトルを付けていたので、 もっとダンス作品的な演出かと期待したものの、 冒頭こそ、ウェディングから痴話喧嘩というコミカルな演技もあったものの、技を見せることがメイン。 特に後半は、凄いことを演じますというMCも入った録音を流しながらの演技で、そこはちょっと残念。

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2日目の話は、また、来週末でしょうか……。

[3598] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Nov 19 22:04:48 2017

土曜の晩は横浜関内は馬車道へ。このライヴを観てきました。

横濱エアジン
2017/11/18, 19:00-21:00.
Gjertrud Lunde (voice, electronics), Florian Zenker (guitar, baritone guitar, electronics), Wolfert Brederode (piano), Jarle Vespestad (drums).

ノルウェー出身で現在はドイツを拠点に early music/world/jazz の文脈で活動する女性歌手 Gjertrud Lunde のコンサート。 彼女自身はまだアルバム Hjemklang (Ozella, OZ054CD, 2014, CD) の1タイトルをリリースしているだけだが、 参加ミュージシャンの豪華さもあって、聴きに行った。 1stのタイトルから名を取った Hjemklang というグループで、 ドイツ出身の guitar 奏者 Florian Zenker は Christof May のグループなどで知られ、 オランダ出身の piano 奏者 Wolfert Brederode はECMからのリーダー作のほか Susanne Abbeuhl のグループ [関連鑑賞メモ] でも活動している。 ノルウェー出身の drums 奏者 Jarle Vespestad は ex-Supersilent [関連鑑賞メモ] にして Farmers Market [関連鑑賞メモ] や Tord Gustavsen のグループでの活動でも知られる。

Hjemklang はもちろん、 録音を終えまもなくリリースされる予定という新作 Lux からの 曲を多く取り上げ、途中休憩あり、アンコール1回の約2時間のステージだった。 Lunde はエフェクトの異なる2本のマイク – 一方は深いリバーブ、もう一方は時々ディレイかける程度 – を使い分け、 ときに小型電気メガホン越しにオフな歌声で、また、1曲、親指ピアノを手に、歌った Hjemklang の印象から 北欧 folk 色濃いエフェクト深めのアトモスフェリックな演奏を予想していたし、 bariton guitar と drums のリズム隊もしっかりと jazz / rock 色濃い演奏も聴かせた — 後半、Psychederic な rock を思わせる展開もあった。 しかし、voice や guitar のリバーブ深めに、piano も内部奏法も駆使して、 snare drum を frame drum のように指先で細かく刻むような展開の時が、やはり、良く感じた。 好みのスタイルなので楽しんで聴いたけれども、ECMやノルウェーのjazz/folk界隈には似たようなスタイルの女性歌手が多いので、 何かもう一癖あると良いのだが、とも思ってしまった。

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エアジンでライヴを観たのって、横浜ジャズプロムナードへ行っていた1990年代ぶりではないかというくらい久しぶり。 武蔵小杉へ引っ越して、自宅からは新宿 Pit Inn と同程度のアクセスになったので、これからはこちらにも通いたいものです。

[3597] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Nov 19 20:15:37 2017

土曜の昼はランチがてら恵比寿へ。この展覧会を観てきました。

TOP Collection: Scrolling Through Heisei | Part 3. Synchronicity
東京都写真美術館 3階展示室
2017/09/23-2017/11/26 (月休;10/9開;10/10休) 10:00-18:00 (木金-20:00).

春季 [鑑賞メモ]、 夏季 [鑑賞メモ]、 に続いて、平成年代の作品からなるコレクション展も最終回。 時代の流行もあってか私的なものやSEA寄りの写真もありましたが、 マラブ (アフリカハゲコウ) をピンホールカメラで撮った不思議な質感の 野口 里佳 や、 抽象画のようになるまでピンボケさせた 浜田 涼 のような写真が気にいりました。 浜田 涼 は滲んだ色のようになるまでピンボケさせた写真は、 Gerhard Richter の写真絵画でピンボケ的な処理をしているものを [関連する鑑賞メモ]、 油彩ではなく写真としてやっているよう。 形態が抽象化されているだけでなく、滲んで混色して彩度の落ちたグレー気味の色味も好みでした。

Nagashima Yurie: And a Pinch of Irony, with a Hint of Love
東京都写真美術館 2階展示室
2017/09/30-2017/11/26 (月休;10/9開;10/10休) 10:00-18:00 (木金-20:00).

学生時代の1993年の「アーバナート」でパルコ賞を受賞したデビュー作から現在に至る30余り年の作品を辿る回顧展。 家族でのヌード写真や配偶者を取り続けた写真など、従来、荒木 経惟などにより 女性を対象に撮られていた写真をズラすような興味深さはあるけれども、 そもそもの私的なものに対する距離感が苦手だな、と。 前に2階展示室でやっていたのも 荒木 経惟 だったな [鑑賞メモ]、と思い出したり。

New Cosmos Of Photography 2017
東京都写真美術館 地階展示室
2017/10/21-2017/11/19 (月休) 10:00-18:00 (木金-20:00)

キヤノンの主催する新人写真家発掘・育成・支援を目的とするアニュアルの公募コンテストの受賞作品展。 休館中は別として、長年、東京都写真美術館で開催されていたので、毎年のように観ているが、今年は以前と雰囲気が変わった。 以前は、ドメスティックで、私的でサブカルっぽい雰囲気の作品が多かったという印象を持っている。 しかし、今年はナラティヴとはいてコンセプチャルに作り込まれた作品が目に付いた。 受賞作家の顔ぶれも国際的で、写真というより映像作品も多く含まれ、国際現代美術展の雰囲気に近く、 これも時代の流れかと感慨深いものがあった。

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1階ホールで何を上映しているのかチェックせずに行ったのですが、 『リュミエール!』 だったのか! と。 知っていたら時間を合わせて行ったのですが、気付いたときには丁度上映開始直後。 1時間半余りも待っていられない、ということで、諦めました……。 ライヴ情報にしてもそうですが、最近、情報のチェックが甘くていけません。

[3596] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Nov 12 23:11:44 2017

1994年に始まった秋の恒例の大規模な大道芸フェスティバルも26回目。今年も11月2日(木)、3日(金) に観てきました。 二日とも天気にも恵まれ、昼は日差しもきつく暑いほど。日が暮れるとかなり冷えました。 もう少し曇った方が、昼もきつい日差しもなく過ごしやすく、日が暮れてからもさほど冷えずに、良いのですが。 日帰りでは狙いを絞ってひたすら観るだけになってしまいますが、平日入れて1泊2日にすると余裕持って見て回れます。 夜に志太泉 (静岡の地酒) で一杯やれるし、屋台以外でも昼食もとることができますし。 去年も今年に続いて夜の大規模ショーの類はなし。 特に突出して目に止まったものがあったり、今年ならでの傾向・特徴を感じたということもありませんでしたが、 今年は春の高円寺も秋の三茶も観れていなかったので、時に軽く流しつつも大道芸浸りの二日間を堪能することができました。

過去の大道芸ワールドカップ in 静岡の写真集: 1999年2000年2001年2002年2004年2005年2006年2007年2008年2012年2013年2015年2016年

以下に観たカンパニー/パフォーマの中から主なものを個別にコメント付き写真で紹介。 パフォーマー名演目名については、自分で調べられる限り、 パフォーマーの公式サイトや、海外の大道芸関係のフェスティバルのプログラム などで一般的に用いられている表記に従っています。 調べがつけられなかったものについてのみ、 会場で配布されていたパンフレットに用いられていたものを用いています。

去年、光学望遠付きのコンパクトデジタルカメラを使わなかったのですが、今年も念のために持っていくも使わす。 パフォーマーの身体表現の面白さや息遣いを捕らえるような作品的な写真を撮りたいわけではなく、 少し引いて上演の様子がわかるような説明的な写真を撮るのであれば iPhone のカメラでも十分。 撮影だけでなく、撮影後の扱いも含め、スマートフォンの手軽さにはかないません。

11/02 11:30〜 @ 駿府城公園 メイン広場1

沢入国際サーカス学校出身で、 最近はながめくらしつの公演にも参加している [鑑賞メモ]、 谷口 界 & ハチロウ の juggling 2人組 ホワイトアスパラガス。 大技見せるのでなく、キャラクター演じるのでなく、動きの面白さで見せるのは好み。 ですが、ふとした立ち姿や踊りの動きの際に隙が多く、全体としてだらっと緩い雰囲気になってしまうのが、惜しいところか。

Mr. Dyvinetz
11/02 12:00〜 @ 駿府城公園 メイン広場1

チリ出身で Cyr wheel を得意技とするアクロバットパフォーマー Mr. Dyvinetz。 ダンス的に演出されたパフォーマンスを期待したのですが、そうではなく、軽う技を見せたり、観客に体験させたり。

11/02 13:00〜 @ 駿府城公園 富士見芝生広場

スウェーデンの teeterboard & acrobat duo Sons Company (Anton Graaf & Elnar Kling Odencrants)。 2015年 [鑑賞メモ] に続いての登場なので 今度はひと工夫あるかと期待したのですが、さにあらず。 客弄りとして客の使ってその上を飛び越えるようなこともありましたが、 基本的に技を見せるだけで、ショーらしい演出は無しでした。

Josefina Castro & Daniel Ortiz
11/02 13:00〜 @ 駿府城公園 富士見芝生広場

アルゼンチン出身の aerial cradle の男女 duo Josefina Castro & Daniel Ortiz。 開演の10分近く前からウォーミングアップで cradle に登り、客を煽って盛り上げつつの、ウォーミングアップがてら技見せ。 しかし、本番が始まってからは、すこしアブストラクトな弦楽四重奏に乗って、 ダイナミックながらロマンチックに躍るような演技を見せてくれました。

Incredible Mallakhamb
11/02 14:00〜 @ 駿府城公園 メイン広場3

インドの伝統的なパフォーマンス Mallakhamb の演技を3人組で。 短い Chinese pole の上で行う yoga という感じでしょうか。 伝統的な音楽やフォーマットを使うという程ではなく、 サービスで観客の体験させたりもしつつ、 テンポ良い音楽に乗りながら、次々と技を見せるという演技でした。

11/02 15:00〜 @ 駿府城公園 メイン広場3

アルゼンチン出身の Mariano Guz とイタリア出身の Egle Sciarappa の男女2人組 Bubble On Circus による soap bubble & magic のショー。 magic はさりげなく、巨大な soap bubble が見どころでしょうか。 比較的オーソドックスな演出でしたが、こういう微笑ましく可愛らしい雰囲気は好みです。

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まずは、1日目の前半まで。続きはまた後ほど。来週末以降でしょうか……。

Now for something completely different...

先週末というか連休が大道芸での静岡遠征もあって少々ハードだったので、今週末は少々休養モード。 土曜は秋冬物の買物に出かけた程度。 日曜は午後に大倉山へ。大倉山記念館で 黒沢美香追悼企画の『一人に一曲』を観てきました。 熱心な観客では決してなかったですが、風間るり子、ミカズキ会議、黒沢美香 & ダンサーズ、いずれも1度は観たことがあるという程度には自分の趣味生活と接点はありましたし、 知人が出演するということもあって、足を運びました。 久しぶりの知人と会場で遭遇したり。 最近の自分の趣味興味からだいぶ外れてきてしまったかもしれないなあと思いつつも、 こういう雰囲気が少し懐かしく思ったりもしたりと、回顧するには丁度良かったかもしれません。

[3595] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Nov 7 23:43:36 2017

連休最終日の日曜も午後に池袋西口へ。この舞台を観てきました。

東京芸術劇場 プレイハウス
2017/11/05, 13:00-15:45.
Director: Ivo van Hove; Author: William Shakespeare; Translation: Hafid Bouazza.
Cast: Anne-Chris Schulting (Bianca), Aus Greidanus jr. (Brabantio, Lodovico), Hans Kesting (Othello), Harm Duco Schut (Roderigo), Hélène Devos (Desdemona), Halina Reijn (Emilia), Robert de Hoog (Cassio), Roeland Fernhout (Iago).
Dramaturge: Bram De Sutter; Scenographer, light design: Jan Versweyveld; Sound design: Marc Meulemans; Costumes: An D'Huys.
Premiere 01 Feb 2003

オランダ出身の Ivo van Hove は1981年から演出家として活動を始め、 2001年にオランダ・アムステルダムの劇団 Toneelgroep Amsterdam の芸術監督を勤めているという。 といっても、この劇団についてはほとんど予備知識は無く、 むしろ、National Theatre Live で上映される舞台のいくつかを von Hove が手がけているので、 そのような演出家の舞台を生で観る良い機会かと、足を運んでみました。 ちなみに、パリ Théâtre de l'Odéon で2014年に初演され、 Young Vig での上演が National Theatre Live で上映もされた A View From The Bridge 『橋からの眺め』で 2015年の Laurence Olivier Award の Best Director を受賞してもいます。

舞台を現代に移し替えての演出で、Othello はマグレブ・アラブ系の移民で、現代ヨーロッパの軍隊の将軍とでもいう設定で、 アラブ系移民に対する差別や、軍隊内でのホモソーシャルな人間関係、不安定な中東に対する警戒感などの現代ヨーロッパの問題、 そして、昇進や異性関係における嫉妬という当時も今も変わらない問題の絡めたドラマとしていました。 そんな解釈はむしろオーソドックスと感じられるものでしたが、ミニマリスティックの演出が好みで、かっこよく感じられました。

冒頭のベネチアの場面はドレープがかった薄青緑色のカーテンを舞台三方にかけた状態で、 キブロスの場面への転換では、大きな送風機でカーテンを煽りつつ落とし、 バックヤードなどがむき出しになった舞台の中央に、少し斜めになった状態でガラス張りのモダンな部屋がせり出してきます。 この部屋は Othello と Desdemona の私邸 (というか寝室) がメインの使われ方ですが、 小部屋前の空間が客をもてなす応接間のような空間として使われている時は その奥のプライベートな部屋のようになったり。 照明を落として向こう側が透けて見やすくした部屋の裏側で Cassio に Desdemona ハンカチを持って Iago と談笑させ、 表側から2枚のガラス越しで Othello に「覗き見」させる、そんな使い方が印象に残った。 もちろん、寝室で Othello が Desdemona を殺す最後の場面、 部屋の周囲の照明を落として部屋を明るく照明することで、暗闇に浮かぶ寝室内で事件が起こっているかのような演出も良かった。

この部屋の使い方が良かったので、 ベネチアとキプロスの場所の違いを表現してたとはわかるのですが、 ベネチアの場面から小部屋だけでできなかたのかしらん、と思ってしまいました。 Desdemona を殺す寝室で Othello がブリーフを履いているのは不自然 (元の上演では全裸だったらしい)、 エンディングに歌入りの曲流すのは余韻に浸る邪魔、とか、 ミニマリスティックでかっこいい舞台だっただけに、逆に気になってしまったところもありました。

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しかし、最近 National Theatre Live とかのイベントシネマで甘やかされてるので、 2幕で3時間近い長さなら、シネコン並みのシートで観たいなあ、と。 東京芸術劇場のシートの座り心地が悪いという程ではないのですが、背が肩下までしかないので首が疲れます。 ヘッドレスト相当の高さのあるシネコンのシートは楽だと、つくづく。

ちなみに、Ivo van Hove 演出の Hedda Gabler 『ヘッダ・ガーブレル』 の National Theatre Live が、12月頭に日本上映される予定になっています。 Hedda Gabler のメロドラマチックさには 去年末にハマったばかりですが、これも観にいこうかしらん、と。

しかし、連休を休養日を入れずにフルに使ってしまうと、さすがに体に堪えます。 秋のシーズンでイベントが多く、これでも観るのを諦めたものがたくさんあるのですが、それでも詰め込みすぎたかな、と。 無理の無い趣味生活にしたいものです(弱)。

[3594] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Nov 6 0:43:30 2017

土曜の夕方は、駒場から二子玉川へ急いで移動。続いてこのパフォーマンスを観てきました。

二子玉川ライズ ガレリア
2017/11/04, 17:00-17:30.
構成・演出: タグチヒトシ; 振付: 伊豆 牧子.
出演: 小野 知春, KAi MiWA, カケフダタクロー, 加部 壮平, くろけん, KC, SHIMBA, Hachi, 幸.

GRINDER-MAN [グラインダーマン] は 筑波大学総合造形 [鑑賞メモ] 出身のタグチヒトシの1997年に立ち上げたパフォーマンスグループ。 大学の先輩にあたる 明和電機 [鑑賞メモ] の下で工員だった人たちの作ったグループで、 1990年代末当時、耐熱防護服に身を包んだ男達が体に付けた鉄板にグラインダーを当てて火花を飛ばすパフォーマンス (このパフォーマンスの名の由来だ) が話題となり、 明和電機 に続く存在として看做されていた時期もあった。 その後、マルチメディアのパフォーマンスグループとして活動の幅を広げ、 現在は2005年に参加した振付家・ダンサーの 伊豆 牧子 と、2人を核として活動している。

GRINDER-MAN は2014年より、二子玉川のショッピングモール 二子玉川ライズ の主催、 世田谷パブリックシアター の制作協力で、 ショッピングモールの屋根付き広場「ガレリア」を舞台にした 野外パフォーマンス・シリーズ『rise Performance GO GO』を展開している。 この『Roulette』は、 『ZETTAI RED』 (2014)、 『MORE MORE』 (2015)、 『Forever Dancing』 (2016)、 『Marble』 (2016) に続く5作目。 以前から気にはなっていたのだが、なかなかタイミングが合わず、今回初めて観ることができた。

『Roulette』は『桃太郎』『太陽と北風』『白雪姫』『眠れる森の美女』『おおきなかぶ』『マッチ売りの少女』という民話・童話を題材に撮った、ライヴビデオプロジェクションとダンスのパフォーマンス。 といっても、物語るというより断片的な引用のコラージュで、 物語を朗読しつつポージングやダンスで構成したイメージビデオを撮影していく様子をパフォーマンスかしてライブで見せるよう。 キャッチーではないが、ビデオ撮影をパフォーマンスとして見せるようなメタなフレームワークはアート的。 しかし、過去のパフォーマンスの記録を見ると、観客とのインタラクションや借景のような空間使いをしていたようで、それを期待していたのだが、 この『Roulette』は野外パフォーマンスとしてやる必然性が感じられなかったのは残念。

連休中のショッピングモールでのイベントといえば大道芸も一般的になってきているが、 こういうパフォーマンスを持ってくるというのは、それらとの差別化という意味合いもあるのだろう。 しかし、世田谷パブリックシアターの協力も得て、それも継続して続けているというのは、頑張っていると思う。 このまま GRINDER-MAN で続けるのかどうかは別として、このような試みがうまく定着することを期待したい。

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[3593] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Nov 5 21:14:04 2017

文化の日を含む連休は、休暇を取って1日前倒し。 ほぼ毎年恒例となっていますが、2日から1泊2日で 大道芸ワールドカップ in 静岡 を観てきました。 狙いを絞って効率良く観て回れば日帰りできないこともないのですが、 休日は混雑もひどいですし、 平日入れて1泊2日にして余裕持って見て回った方が楽しめます。 屋台以外でゆっくり昼食もとれますし、夜に志太泉で一杯やれますし。 例年どうり今年も写真集を作りたいと思いますが、しばらく時間がかかるかと。 観たものについては備忘録を兼ねて twitter にツイートしていたので、 速報代わりに twilog の 11月2日11月3日 をご覧ください。

静岡から戻った翌4日は、疲れもあって昼頃まげぐったりしていたのですが、午後には駒場へ。 この舞台を観てきました。

こまばアゴラ劇場
2017/11/04, 15:00-16:30.
振付・演出: いいむろなおき
出演: いいむろなおき, 青木 はなえ, 田中 啓介, 三浦 求, 岡村 渉, 黒木 夏海, 谷 啓吾.

フランス École Internationale de Mimodrame de Paris Marcel Marceau (パリ市マルセル・マルソー国際マイム演劇学校) に学び、 1998年から関西を拠点に活動する いいむろなおき のマイムカンパニー。 東京でカンパニー公演を観る機会は少なく今まで見逃してきたが、今回やっと観ることができた。

いいむろなおきの演じる旅の男の、鉄道旅行中の居眠りの際に見た不条理な夢、というか、不条理なふれあい街歩き。 黒い剥き出しの舞台に暗色の匿名的な服装。白い箱、枠、カバンなど小道具も最低限で、そんな不条理な話を紡いでいく。 無地の黒いマスク使いも効果的。特に、主人公は夢の中ではマスクをし続けることで、個性的な誰かではない、むしろ観客自身を象徴させるよう。 ブラックライトで白手袋で手を浮かび上がらせ文字や形を形作ったりしたが、ストロボライトなどの照明技やビデオプロジェクションなどは使わず。 オーソドックスに緻密に組み上げられた身体表現で見せるような演出だった。 最初の方の居眠り前の鉄道旅の客車内の場面の ピクシレーション (コマ撮りを動画化した映像) をストロボライトも使わずにマイムで表現したところや、 主人公が登場しない中盤の夢中の場面で待ち合わせ中の男性が妄想する場面で 妄想している人物を舞台後方に、妄想の内容を舞台上手前方で描いて時にこの二つを相互作用させて表現したところが、 特に印象に残った。 ユーモアのセンスもよく良く、面白かった。

カンパニーデラシネラ 『ロミオとジュリエット』 [鑑賞メモ] のように セリフも排さずに物語ることにがっつり取り組んでいる良い作品もあるけれども、 KAAT × 小野寺 修二 『WITHOUT SIGNAL! 〔信号がない!〕』 [鑑賞メモ] に続いてこの舞台を観て、 動きの連想で自在につなぐスケッチ集のような作品がマイム演劇のオーソドックスな面白さだと、再確認。 水と油 〜 小野寺 修二 との作風の違いとして、空間の操作よりも時間の操作に焦点を当てているように感じたが、 いいむろなおきの観た作品はこの作品だけなので、作品のコンセプトや会場のせいかもしれない、とも。 シアタートラムくらいの広さのステージで観たら空間的な操作の面白さも楽しめたかもしれない、と思いつつ、 こまばアゴラ劇場の狭い舞台で7人でやるからパズルのような動きや位置どりの妙が強調される面白さもあったかな、と。

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[3592] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Oct 30 23:25:12 2017

日曜も、台風接近による本降りの雨の中、午後に東池袋へ。この公演を観てきました。

Einat Weizman
Palestine, Year Zero
あうるすぽっと
2017/10/28, 14:00-15:00.
Written and Directed by Einat Weizman
Cast: George Ibrahim, Gassan Ashkar, Amjad Badr, Rebecca Telhami.
Music: Suleiman Faraj; Stage & Costume Design: Salim Shehade.

イスラエルの劇作家・演出家 Einat Weizman による、イスラエルのパレスチナ占領政策に関するドキュメンタリー演劇 (ドキュコメディ [Docu-Comedy])。 イスラエルのパレスチナ占領政策に批判的な内容であるということで、本国では検閲と戦うこととなり、 上映禁止となった作品もあるという。 しかし、そういうバックグラウンドよりも、むしろ、 東京国際芸術祭 (現在の FESTIVAL/TOKYO ) 以来、その中東のカンパニーの公演をそれなりにしてきていることもあり、 パレスチナの Al-Kasaba Theatre [関連レビュー] の George Ibrahim が主演していること、 例えば、レバノンの Rabih Mroué のドキュメンタリー演劇作品 [関連レビュー] との共通点/相違点、 などの興味もあって、この Palestine, Year Zero へ運んでみた。

George Ibrahim 演じるパレスチナ人建築被害鑑定士が、 イスラエルのパレスチナ占領政策下でのパレスチナ人家屋の破壊を紹介していく形で、構成された作品。 戦争や軍事的な作戦だけでなく、報復、遺跡発掘、居住地制限のためなど、家屋が破壊される理由は様々。 男性2名、女性1名が、破壊された家屋に住んでいた住人を演じつつ (ほとんど朗読劇だが)、 舞台の上に「鑑定」の「証拠」の瓦礫を積み上げていく。 「ドキュコメディ」と題すほどのユーモアは感じられず、題材をかなりストレートに扱っていた。 これなら演劇ではなく素直にドキュメンタリ映画かノンフィクション本にした方が良いのではと思いつつ、 本国ではそのような形で表現することが抑圧されている題材だからこその表現文脈なのだろう。 並んだ鑑定の「証拠」の箱が瓦礫がぶちまけられていくビジュアルと、 ぶちまけられるたびに立ち上る土埃のかすかな臭いが最も印象的。 こういう生な感触は、メディアの扱いに長けた Rabih Mroué にはあまり無かったかもしれない。

現実の出来事を演劇化するドキュメンタリ演劇は、「虚実ないまぜの語り」という面がある。 この秋に観た大規模な国際現代美術展、『サンシャワー 東南アジアの現代美術展』 [レビュー] や 『ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス』 [レビュー] でも、 実際の社会問題に取材した作品などの解説で、この「虚実ないまぜの語り」のような言い回しをざんざん目にした。 しかし、今年に入って大きな注目を浴びるようになったポスト・トゥルースのフェイクニュース、オルト=ファクトトゥルースにしても、「 自分なりの答えを持っているわけではないが、「虚実ないまぜの語り」が許させる条件のというのはあるのだろうか (芸術なら許されるとか、少数派、反体制なら許されnfo.html">案内所 | アーカイヴ // フォトログ | 音盤雑記帖 | 歴史の塵捨場 || Twitter