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談話室 / Conversation Room

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[3998] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue May 17 22:16:55 2022

連休直後の週末土曜5月7日は、午後に横浜山下町へ。このパフォーマンスと展覧会を観て来ました。

KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ
2022/05/07, 14:00-15:00.
構成・演出・振付: 小㞍 健太; 構成・サウンドスケープ: 森永 泰弘; 出演: 佐藤 琢哉, 畠中 真濃 (DaBY), 青柳 潤 (DaBY), 小㞍 健太.

会場に入ると自然光が入る状態で、ウォーミングアップ中のような所かから、 日常の延長というか、ドラマチックな展開を避けるかのような1時間。 「風情」という感覚へアプローチする試み、ということでしたが、そういうものを感じるというより、 一週回って再び来たポストモダン・ダンスというか、 Jonathan Demme の撮った Trisha Brown、 Accumulation with Talking plus Watermotor (1979) [鑑賞メモ] を思い出したりしました。

KAAT神奈川芸術劇場 アトリウム
2022/05/01-2022/06/05, 10:00-18:00 (夜公演がある日は終演時刻まで).

アニュアルの展覧会『KAAT EXHIBITION』の2022年度の展覧会です。 例年 [鑑賞メモ] は中スタジオで開催ですが、オープンスペースでの開催になってどうなるかと期待もありましたが、 確かにスケール的なインパクトはありましたが、空間の意味合いを変容させるというより、吹き抜けの空間を使った装飾インスタレーションのよう。

この展覧会はパフォーマンスを絡めることが多く、7日もアトリアムで関連企画のパフォーマンスをしていましたが、 フロアにも敷物があるものの、メインが高い空間へのインスタレーションだけに、 エアリアルでもない限りパフォーマンスと絡めるのは厳しいな、と。 立ち見というのもかなり厳しかったので、通りがかりに少し観る程度に留めておきました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3997] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon May 16 22:18:25 2022

ゴールデンウィーク最終日5月5日は、昼に渋谷宮益坂上へ。この映画を観ました。

Петровы в гриппе [Petrov's Flu]
2021 / Hype Film (Russia), et al / colour / DCP / 146 min.
Режиссёр (Director): Кирилл Серебренников [Kirill Serebrennikov].
Семён Серзин [Semyon Serzin] (Сергей Петров [Sergei Petrov]), Чулпан Хаматова [Chulpan Khamatova] (Нурлыниса Петрова [Nurlynisa Petrova]), Владислав Семилетков [Vladislav Semiletkov] (Петров-младший [Petrov's son]), Юлия Пересильд [Yulia Peresild] (Марина [Marina], Снегурочка [Snow Maiden]), et al.

Алексей Сальников [Alexey Salnikov] の小説 «Петровы в гриппе и вокруг него» (2017) に基づく新作のロシア映画です。 舞台作品の演出で知られる Кирилл Серебренников [Kirill Serebrennikov] 監督作品で、 Лунный папа [Luna Papa] 『ルナ・パパ』 (1999) [鑑賞メモ] で主演していた Чулпан Хаматова [Chulpan Khamatova] が主要な役で出演しているということで、観に行きました。

舞台は2004年のロシア・ウラル地方のエカテリンブルグ、 インフルエンザにかかった主人公ペトロフの24時間を描いた映画です。 といっても、ポスト・ソヴィエトの不条理な現実やソヴィエトだった子供時代の回想、 主人公ペトロフだけでなく、その元妻ペトロワ、ペトロフが子供時代にあった「雪娘 (Снегурочка)」マリーナの、 主観的な視点からの現実の描写と暴力的・性的な妄想を行き来する、まるで高熱の中で見る悪夢を思わせる映画でした。 (悪)夢を見るようという意味ではシュールレアリスティックなのですが、 長回しのトリッキーな撮影が行われ、現実と妄想の間をシームレスに行き来する感があって、まさにマジックリアリズム的な映画でした。 霊柩車のエピソードなど、おそらくこの描写は妄想だろうと思っていたものが、実は現実側だったりする仕掛けもあり、虚実入り混じったよう。 ユーモアを感じさせる場面もありますが、そのセンスは暴力的・性的なイメージを伴うダークなもの。 ポスト・ソヴィエトの社会やCOVID-19パンデミックに対する寓意を読み取りたくなるところも無いわけではないですが、 むしろ、不条理感に浸るような作品でした。

最近、Чулпан Хаматова [Chulpan Khamatova] の写真・動画をニュース等で見る機会がそれなりにあって、 Luna Papa の時と比べると流石に歳をとったなと思っていたのですが、 映画の中ではさほどではありませんでした。 暴力的な妄想を内面に持った図書館員を演じていたのですが、 コミカルな役とは異なる、少々気の強そうなところもいい感じでした。

Kirill Serebrennikov の演出した舞台作品は、もしCOVID-19で中止にならなければ、 2020年のふじのくに⇄せかい演劇祭で観られたはずだったのでした。 残念な限りです。 オペラやバレエの演出もしているので、ストリーミングでもいいので観る機会があればと思っています。 Serebrennikov は、 2017年に不当だと言われる国家予算横領の罪で逮捕、自宅軟禁状態に置かれたものの、2022年1月にドイツに脱出、 その後の2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻を批判しています [AFPBBの記事]。 その一方で、ロシア国内では Большой театр [Bolshoi theatre] での作品上演が中止になっています [AFPBBの記事]。 また、主要な役を演じた Chulpan Khamatova も、 ウクライナ侵攻を受けてロシアから亡命しています こんな状況を見ても、 [AFPBBの記事]。 ウクライナ侵攻で国内においても独裁的な強権姿勢を強めている中、 ロシア国内で自由な芸術活動をすることが難しくなっていることを実感します。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3996] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun May 15 16:41:00 2022

ゴールデンウィーク中の話ですが5月4日は、5月1日に続いて池袋西口へ。 東京芸術劇場のTACT FESTIVALでこの作品を観ました。

Jörg Müller & Tabaimo: Tangled drops
東京芸術劇場 シアターイースト
2022/05/04, 15:00-16:30
構成・演出: 束芋, Jörg Müller. ドラマトゥルグ: Sophie Borthwick.
出演: Jörg Müller, 間宮 千晴.
美術: 束芋; 音楽, 音響・映像技術: 田中 啓介; ヴォイス: 大隅 健司; 照明: 三浦 あさ子
日本初演: 2022年4月28日, オーバード・ホール (富山).
企画制作: Cie Wasistdas, 束芋, Hi Wood; 共同企画制作: オーバード・ホール, 東京芸術劇場, 山口情報芸術センター, 那覇文化芸術劇場なはーと.

コンテンポラリーサーカスの文脈で活動する Jörg Müller [鑑賞メモ] の3年ぶりの来日は、 現代アートの文脈で活動するアニメーション作家 束芋 とのコラボレーションによる日仏共同製作の新作舞台作品。 束芋 のコンテンポラリーダンスとのコラボレーション 『錆からでた実』も以前にも観たことがありますが [鑑賞メモ]、 むしろ、Jörg Müller が関係したマルチディシプリナリーなコラボレーションという興味で足を運びました。

明確な区切りはありませんが、おおよそ3部構成。 まずは、Jörg Müller による数m四方はある大きな白い布を使ったオブジェクトマニピュレーションから始まりました。 服下に布を畳み入れ首元から四隅を出した状態で現れ、天井から下げた4本の細いワイヤーに四角を固定し、ワイヤーを引き動かすことで、布を動かします。 天井の滑車の音も微かに聞こえる中、白い光で浮かび上がる布が舞い踊る様は、静謐で幻想的。 さすが Jörg Müller らしいパフォーマスでした。

続いて、束芋のグロテスクなアニメーションに、Müller の身体を絡める様なパフォーマンス。 舞台の前方と後方を区切る、何箇所か出入りできるスリットの入った半透明のスクリーンを下げ、 そこに束芋らしい室内に家具や肉塊が静かに蠢く様な不気味なアニメーションなどを投影しつつ、 シーツをかぶった Müller がそれに絡みます。 さらに、身体を解剖するアニメーションを Müller の身体に直接投影したり。 最後は、アニメーションはさらに抽象化して蠢く縦の効果線になり、 スクリーンも前後に揺らめき、映像とノイズの轟音の中に 浮かび上がる Müller と 間宮 の二人の静かなアクロバットのようなシルエットを観るようでした。

Müller のオブジェクトマニピュレーションの時は束芋の存在感がなく (もしかしたら細やかなアニメーションが使われていたのかもしれませんが)、 束芋のアニメーションの中では Müller の身体は映像の中に埋もれがちで、 相乗効果が楽しめたという感じではありませんでした。 COVID-19による移動の制限で日仏間を行き来しての制作もままならないことを考えると、 致し方ないところもあるでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

この日はこの後、もう1本、『Piece to Peace × 島地 保武 × 酒井 はな × 川瀬 浩介』を観ましたが、 その鑑賞メモは別に書いてあります

しかし、ふじのくに⇄せかい演劇祭TACT FESTIVALで 舞台三昧のゴールデンウィークを過ごすのも、COVID-19以前の2019年以来の3年ぶり。 さすがに疲れましたが、楽しかった。 単独の公演とは違ったフェスティバルの楽しさもあると、改めて実感しました。

[3995] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun May 8 15:24:32 2022

ゴールデンウィーク中の5月3日は、4月29日に続いて2回目の静岡日帰り。 ふじのくに⇄せかい演劇祭 2022 の後半プログラムで、これらの舞台を観ました。

静岡芸術劇場
2022/05/03, 14:00-15:30.
Mise en scène, interprétation, scénographie et costume: Omar Porras; Texte: Fabrice Melquiot.
Assistant à la mise en scène: Domenico Carli; Regard extérieur: Alexandre Ethève et Philippe Car; Création sonore: Emmanuel Nappey; Conseil musical et piano: Cédric Pescia; Collaboration chorégraphique: Kaori Ito [伊藤 郁女]; Fabrication d’accessoires: Léo Piccirelli; Lumière: Omar Porras et Marc-Etienne Despland; Photos: Ariane Catton Balabeau.
Production: TKM Théâtre Kléber-Méleau, Renens et Théâtre Am Stram Gram, Genève
Création: Spectacle créé le 18 janvier 2019 au Théâtre Am Stram Gram à Genève.

コロンビア出身で現在はスイス・ジュネーブを拠点に活動する演出家・俳優による自伝的な一人芝居です。 2020年の際にCOVID-19で中止になっていた演目です。 Porras は度々来日していて、SPAC共同制作で演出した作品もありますが、自分が Porras の作品を観るのは初めてでした。

舞台上は、上手寄りに石のようなものが置かれ、後方に高さ数十センチ程度の枯れ枝様なものが立てられている程度。 最初のコロンビアでの少年時代の話は、フラットな照明下でコミカルな仕草と語りで、少々退屈し増田。 しかし、コロンビアを出て、パリに着いた頃から次第に引き込まれました。 それも、失恋の遍歴から劇場の世界に引き込まれるあたりから、急に語りが現実のユーモラスな描写というより寓意的なものとなります。 演出も、照明が落とされ赤や青の不自然な色のスポットライトが使われ、 天井から砂が舞降る様子を浮かび上がらせたりと、舞台のビジュアルも幻想的に。 怪物に飲み込まれる話としての演劇の世界にのめり込むことの寓意的な語りへの相変化と、 そんな舞台上のビジュアルの変化が合っていて、とても面白く感じられました。

–––

静岡芸術劇場の後は、 『ストレンジシード静岡』 開催中の駿府城公園界隈へ移動。 開始時刻がちょうどよかった市役所脇の鏡池へ行ってみたら満席だったので、駿府城公園でのんびり過ごすことに。 モモンガ・コンプレックス 『穴あき谷の○○○。』。 地面に空いた大きな穴に興味を示す動物たちの様なパフォーマンスを緩く鑑賞。 その後、この野外公演を観ました。

駿府城公園 紅葉山庭園前広場 特設会場
2022/05/03, 18:30-20:30.
台本・演出: 宮城 聰; 訳: 月本 昭男 (『ラピス・ラズリ版 ギルガメシュ王の物語』ぷねうま舎).
音楽: 棚川 寛子; 人形デザイン: 沢 則行; 美術デザイン: 深沢 襟; 照明デザイン: 吉本 有輝子; 衣裳デザイン: 駒井 友美子; ヘアメイク: 梶田 キョウコ; 対位法プラン: 寺内 亜矢子
出演 (S: 語り手; M: 動き手; P: 人形操演): 阿部 一徳 (S), 大高 浩一 (M) (ギルガメシュ); 吉植 荘一 (S), 大道 無門優也 (M) (エンキドゥ); 片岡 佐知子 (S), 森山 冬子 (M) (シャムハト); 鈴木 陽代 (S), 沢 則行 (P), 桑原 博之 (P) (ウルシャナビ); 本多 麻紀 (S), 榊原 有美 (M) (ウトナピシュティム); 大内 米治 (P), 貴島 豪 (P), 佐藤 ゆず (P), 舘野 百代 (P), 吉見 亮 (P), 沢 則行 (P), 桑原 博之 (P) (フンババ); etc
委嘱: Musée du quai Branly
製作: 静岡県舞台芸術センター
初演: Jeudi 24 mars 2022, Musée du quai Branly.

古代オリエントの英雄物語『ギルガメシュ叙事詩』に基づく作品です。 古代に成立した口承の物語に基づく作品という点でも 『マハーバーラタ 〜ナラ王の冒険〜』 [鑑賞メモ] や 『イナバとナバホの白兎』 [鑑賞メモ] を連想させられる作品です。 既にお馴染みの手法と言えばそうですが、 語り手と動き手を分け、様式化された動きと、時に詠唱したりコーラスを掛け合うかのようなセリフの発声など、 神話的な世界の描写にハマっていました。 『イナバとナバホの白兎』では日本とナパホの神話をミックスしていましたし、 口承の物語に基づくものではないですが『マダム・ボルジア』 [鑑賞メモ] では ルネサンス期イタリアの話を戦国期の日本に翻案していたわけですが、 今回はそういった翻案の様なことはせずに、むしろオリジナルの石板を読み上げるかの様に話を進めていたのが良かった様に感じました。

空間使いという意味では、『マダム・ボルジア』でも使っていた衝立の移動を今回も使っていましたが、 奥行き方向の活用という点ではかなり改善されていました。 フンババの巨大な人形のために奥の空間を使わざるを得ないという縛りがよかったのかもしれません。 人形も、高さ2〜3メートルの3つの円錐からなる巨大なフンババだけでなく、 数十センチの人形のウルシャナビも使い、そのスケール感の振れ幅も面白く感じました。 COVID-19対策で語り手はマスクをしての公演で、声の通りが悪く、迫力に欠けたのが惜しかったでしょうか。 それでも、近年、駿府城公園 紅葉山庭園前広場 特設会場 で観た 宮城 聰 / 静岡県舞台芸術センター (SPAC) の公演の中では一番楽しめた作品でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3994] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sat May 7 11:40:49 2022

5月1日と4日は、午後に池袋西口の東京芸術劇場へ。 ゴールデンウィーク恒例の TACT FESTIVAL 2022 を観てきました。

東京芸術劇場 シアターウエスト
『UP AND DOWN × 大宮 大奨 × 川合 ロン × 高村 月 × 原 摩利彦』
2022/05/01, 14:00-15:00.
パフォーマー: 大宮 大奨, 川合 ロン, 高村 月; 音楽: 原 摩利彦; 衣装: ひびのこづえ.
『ROOT:根 × アオイヤマダ × 小野 龍一』
2022/05/01, 17:30-18:20.
パフォーマー: アオイヤマダ; 音楽: 小野 龍一; 衣装: ひびのこづえ.
『Piece to Peace × 島地 保武 × 酒井 はな × 川瀬 浩介』
2022/05/04, 17:00-18:00.
パフォーマー: 島地 保武, 酒井 はな; 音楽: 川瀬 浩介; 衣装: ひびのこづえ.

『DANCE 4』はTACT FESTIVAL 2022の中のダンスパフォーマンス企画で、 ひびのこづえ の衣装を用いたダンスを4作品を上演するものです。 去年、ひびのこづえの展覧会を観て [鑑賞メモ]、 着て踊られてこそ面白いと実感しこともあり、 シアターウエストで上演された3作品を観ました。 もう1作品、ロワー広場で上演された『WONDER WATER × ホワイトアスパラガス × 川瀬 浩介』は、 上演が午前中のみと時間が合わず観られませんでした。 (『WONDER WATER』は以前に観たことがあります。)

最初に観たのは3人の男性ダンサーによる『UP AND DOWN』。 大宮 大奨, 川合 ロン はコンテンポラリーダンスの舞台で観たことありましたが、高村 月 は初めてでしょうか。 「裸の王様」、「三匹の子豚」、「赤ずきん」といった童話に着想した衣装とダンスですが、 特にオリジナルの話を追うというより、そのキャラクターに着想したといったところでしょうか。 全体としてのテーマを掴み兼ねましたが、少々ドタバタ気味のユーモラスな衣装と動きを楽しみました。

『ROOT:根』はアオイヤマダのソロ。 バルーンでできた大きなカエルの造形物を背負って登場し、 踊りながら少しずつ衣装を脱ぎ捨てつつ、最後には血管のような模様のあるボディタイツ姿に。 ヴォーギングのようなポーズを使い、衣装を減らしていく展開もあって、ストリップティーズも少し連想させられました。 ひびのこづえの展覧会 [鑑賞メモ] での《AR forest》が印象に残っていたので、 いろいろ衣装を着替えキャラクターが七変化してくようなパフォーマンスも観てみたかったように思いました。

日を替えて最後に観たのはaltneuの2人によるもの。 前半は『UP AND DOWN』にも似て童話的なキャラクタに着想したものですが、 北風と太陽の対立関係から、ライオンと人魚姫で異種のファーストコンタクトのような関係へ。 後半はグッと抽象的になり、 繋がった衣装を絡めたコンタクトインプロビゼーションのような動きから、 うっすら模様のあるボディタイツ姿でのリフトも交えたパ・ド・ドゥ、と、 次第に親密になっていく男女のストーリーも感じさせる構成。 動きも美しく、観た3作の中では最も見応えを感じました。

TACT (Theater Arts for Children and Teens) の中の企画ということもあり、 全体として、抽象的に過ぎず衣装などにとっつきやすさもあり、 リラックスして楽しめた公演でした。

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[3993] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed May 4 22:00:11 2022

30日土曜の午後は、渋谷の後は神保町へ移動。 神保町シアターの特集企画 『子役の天才!』で、 この戦前の映画を観てきました。

『まごころ』
1939 / 東宝東京 / 白黒 / 67 min.
監督・脚本: 成瀬 巳喜男. 原作: 石坂 洋次郎.
入江 たか子 (長谷山 蔦子), 高田 稔 (浅田 敬吉), 悦ちゃん (啓吉の娘・信子), 加藤 照子 (蔦子の娘・富子), 村瀬 幸子 (浅田 夫人), etc.

裁縫で生計を立てる母、祖母との3人暮らしの富子 と、裕福な家の子 信子 の、親しい小学校の同級生の少女2人を主人公とした子供映画です。 信子の成績が下がったことによる両親の喧嘩の会話を通して、 信子の父・啓吉と富子の母・蔦子がかつて親しい仲で、結婚にあたって蔦子が身を引いたということをn信子は覚ります。 それをきっかけに、2人の関係、そして親たちの揺らぎを描いた映画です。 さざなみのように揺らぐものの、人間関係が大きく組み変わることはなく、 むしろ、最後には啓吉が招集されて出征するという大状況でうやむやになる感があるのですが、 そんな揺らぎを淡々と丁寧に描いていました。 啓吉が招集されたり、その妻が「大日本愛国婦人会」で活動していたり、というのはありますが、 東宝に指定は戦時色はさほど濃く感じられませんでした。

信子を演じた 悦ちゃん (江島 瑠美) は、獅子 文六 の小説『悦ちゃん』の映画化 (日活多摩川, 1937) の際に公募で選ばれてデビューした人気子役。 その演技を見るのも楽しみでした。 しかし、おかっぱ頭の 富子 を演じた子役 (加藤 照子) の方が現代的な美少女で、 一人親の蔦子との難しい関係を繊細に演じていました。 親の三角関係については 浅田 夫人が分かりやすく悪役で少々図式的。 道徳的な教訓臭さを感じてしまいました。 しかし子供が主役の映画と思えば、そんなところも所詮背景でしょうか。 むしろ、娘に伏せていた過去を知られたことによる蔦子の心の揺らぎや、 蔦子と啓吉の再会の場面など、予想以上にメロドラマチックに感じられました。

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というわけで、戦間期の映画をハシゴ。 アメリカ、日本と制作国は違いますし、日本の方が女性像が遙に保守的、などの違いもありますが、 共通するこの時代の戦間期のモダンな雰囲気を楽しみました。 やっぱり、この時代の映画は良いなあ、と。

[3992] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed May 4 11:26:25 2022

ゴールデンウィーク二日日、30日土曜は昼に渋谷へ。 シネマヴェーラ渋谷では特集「アメリカ映画史における女性先駆者たち」を上映中。 20世紀前半 (10年代〜50年代) に活動した5人の女性映画監督 (Alice Guy, Lois Weber, Dorothy Davenport, Dorothy Arzner, Ida Lupino) による23本の映画を上映しています。 そんな中から、この映画を観てきました。

Christopher Strong
『人生の高度計』
1933 / RKO Radio Pictures (USA) / B+W / DCP / 78 min.
Directed by Dorothy Arzner; Screenplay by Zoë Akins
Katherine Hepburn (Lady Cynthia Darrington), Colin Clive (Sir Christopher Strong), Billie Burke (Lady Elaine Strong), Helen Chandler (Monica Strong), etc.

恋をしたことが無かったという女性冒険飛行家 Cynthia Darrington と 仕事熱心で堅物の妻子のある政治家 Christopher Strong の、悲劇的な結末に終わる恋愛を描いたメロドラマ映画です。 一旦はかなりロマンチックな所までいくも、 Cynthia は世界一周冒険旅行に発ち、Christophe も仕事に打ち込む、など、 戦間期の恋愛描写にしては、互いに自立した男女の恋を描いています。 この冒険旅行後、二人は親密な関係に落ち、Cynthia は妊娠し、 Christopher は結婚しようという話もするものの、結局、彼女は高高度飛行挑戦中の事故死を装って自殺します。 この Cynthia に対比されるのが、Christopher の娘 Monica。 Monica は妻子のある男と恋愛し、Cynthia の後押しもあって結婚を成し遂げます。 しかし、結婚し子供ができた後、Cynthia の父の親密な関係を知ると強く非難します。 そんな変化の描写も皮肉なのですが、Cynthia が Christopher に妊娠を知らせようとした夜を、 孫を妊娠した Monika のお祝いのために Christopher が突然キャンセルするという、 望ましい妊娠と意図しない妊娠の対比的な描写は、なかりエグく感じられました。 その一方で、娘の妻子ある男との関係を認めない保守的な女性だった Elaine が、 娘の結婚を受け入れ、Cynthia と夫の関係に気付きつつも、Cynthia に感謝すらするようになるよう変わっていきます。 Cynthia を巡っての Monika と Elaine の変化も対比的に描いていました。 タイトルは男性主人公の名ですが、むしろ、彼を取り巻く3人の女性、娘、妻、そして Cynthia の映画でした。 上流階級物のメロドラマで、繊細な演技や描写というよりゴージャスな美男美女を楽しむようなところもある映画ですし、 自主規制条項 Hays Code 導入 (1934) 直前のメロドラマということもあって濃厚なキスシーンもあり、 当時はかなりエロティックな映画でもあったのかもしれません。 そんな中では女性冒険飛行家役の Katherine Hepburn の個性が際立っていたでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3991] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun May 1 11:59:25 2022

ゴールデンウィーク初日、29日金曜は昼前には家を出て、新幹線で静岡へ。 ふじのくに⇄せかい演劇祭 2022 のプログラムで、この舞台を観ました。

静岡芸術劇場
2022/04/29, 14:00-15:50.
от Албер Камю, превод Александър Секулов, Диана Добрева. [by Albert Camus, translation by Alexander Sekulov, Diana Dobreva]
Сценична версия [Stage version]: Александър Секулов [Aleksander Sekulov]; Режисьор [Director]: Диана Добрева [Diana Dobreva]
Сценограф [Set Designer]: Нина Пашова [Nina Pashova]; Costume designer [Костюмограф]: Нина Пашова [Nina Pashova]; Хореограф [Choreographer]: Ангелина Гаврилова [Angelina Gavrilova]; Композитор [Composer]: Петя Диманова [Petya Dimanova].
С участието на [Featuring]: Деян Донков [Deyan Donkov], Владимир Пенев [Vladimir Penev], Жорета Николова [Joleta Nikolova], Александра Василева [Alexandra Vasileva], Константин Еленков [Константин Еленков], Биляна Петринска [Bilyana Petrinska], Вяра Табакова [Vyara Tabakova], et al.
Премиера [Premiere]: 27 октомври 2017 г. [October 27, 2017]

アルベール・カミュの「不条理三部作」の1つ『カリギュラ』 (1945初演) の ブルガリア語での上演です。 演出家の作風などの予備知識はありませんでしたが、 ヨーロッパの国立劇場のプロダクションとで、大外れは無いだろうと、観て観ました。

中央の急な階段と動く大机程度で暗色を基調としたシンプルな舞台に客を入れていない客席最前列までを使い、 形式的な動作やフォーメーションも多用して、象徴的な場面をビジュアル的に見せていく演出でした。 しかし、マイクで拾ったセリフが発声した俳優の方向ではなく、 どの俳優が喋っても同じ場所 (下手舞台袖あたりに置かれていると思われるスピーカー) から聞こえてくるため、 聞いていて誰が喋ったセリフなのかよくわからないことが少なからずありました。 セリフは半ば諦めて、予備知識として入れた粗筋を頼りに半ばダンス作品のように楽しみましたが、 微妙なところは掴みかねてちょっと厳しいなと感じたことも少なからずありました。

ふじのくに⇄せかい演劇祭は、 COVID-19の影響で、2020年は演劇祭中止、 2021年も「せかい」と言い難い規模縮小での開催。 海外招聘を含めて本格的な開催は、そして自分が演劇祭に足を運んだのも、3年ぶりです。 終演後のトークによると、 COVID-19禍に伴う国際的な海運の混乱のため衣装や舞台装置が届かず、 日本でたった3日で製作したとのこと。 また、COVID-19水際対策のため主役も公演前日まで隔離だったとも言っていました。 上演に至るまでいろいろ大変だったようで、良いコンディションでの上演では無かったのかとも思います。 まだCOVID-19は収束したとは言い難いですし、ロシアのウクライナ侵攻という新たな危機も発生しています。 こんな状況下で来日公演してくれてありがとうございました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

ゴールデンウィークだというのに、東北地方は雪になるほどの冷たい雨。それも土砂降り。 29日晩は 静岡県舞台芸術公園 野外劇場「有度」での野外公演も予定されていましたが、 観たことがある演目だったので今回は自分はパスしたのですが、パスにしてよかった、と。 演劇祭では3年ぶり、大道芸を含めても 2019年秋 [鑑賞メモ] 以来の 日帰りでしたが、2年半ぶりの静岡だったので、 晩は青葉通り界隈もしくは新静岡駅界隈の店を開拓してみるのも良いかなと思ってたのですが、 土砂降りで駅の外に出る気分になれず、 駅の高架下商業施設に入っていた静岡の料理と地酒が食べられる居酒屋で済ますことに。 しかし、久々に 志太泉 が飲めましたし、旅先での酒肴を久々に楽しみました。

[3990] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Apr 24 19:25:56 2022

先週末の土曜は昼に丸の内へ、この展覧会を観てきました。

Felice "Lizzi" Rix-Ueno: Design fantasy originating in Vienna
三菱一号館美術館
前期2022/02/18-2022/04/10, 後期2022/04/13-2022/05/15 (月休), 10:00-18:00

ウィーン出身で 1920年代までウィーン工房 (Wiener Werkstätte) [鑑賞メモ] で活動する一方、 ウィーン工房主宰の建築家 Josef Hoffmann の下で働いていた京都出身の建築家 上野 伊三郎 と結婚、 1926年には京都に拠点を移して活動したデザイナー 上野 リチ (Felice "Lizzi" Rix-Ueno) の、 戦間期ウィーン時代から戦後日本での活動までを辿る展覧会です。 彼女を取り上げた展覧会としては、2008年から2009年にかけて京都国立近代美術館と目黒区美術館を巡回した 『上野伊三郎+リチ コレクション展 ウィーンから京都へ、建築から工芸へ』展があったのですが、 当時ノーチェックで見逃しました。

テキスタイルデザインを得意とし、建築家 上野 との協働の中でインテリアデザインにも幅を広げていった感がありますが、 ウィーン工房で活動した時期も戦間期ということで、 Jugentstil / Art Nouveau のような有機的な曲線でもなく、 色合いは Art Deco から Mid-century Modern のようでありつつ、スッキリ幾何的なデザインでもなく、 手書きらしい線で図案化されたテザインが特徴でしょうか。 これは多分に自分の好みの問題のようにも思いますが、 こういったデザインよりも、彼女の辿った歩みに、日本におけるモダン・デザインの受容の一つの流れを垣間見るよう。 特に、ドイツのモダニズム建築家 Bruno Taut の1933-36年に日本招聘にも関わっていたことなど、とても興味深いエピソードでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

その後、ふと思い立って、久々に阪急メンズ東京へ。 以前は年数回はチェックに行っていたのですが、すっかり足が遠のいて、実は2019年3月のリニューアル後、初めてだったかも。 長年お世話になったブランドが無くなってしまい、今後どんな服を新調すべきか、まずは服を見て歩くところから要リハビリの感も。 なんて思いつつも、Borsalino の直営店があったので、今シーズンのパナマ帽を新調してしまいました。

今週末は、土曜に『METライブビューイング』 (The Met: Live in HD) で、 Elijah Moshinsky 演出の Richard Strauss: Ariadne auf Naxos 『ナクソス島のアリアドネ』 (1916) を観てきました。 パトロンの気紛れで直前になってオペラ・セリアとコメディア・デラルテを同時に上演することになる経緯のバックステージ物の序幕 (プロローグ) と、その上演を見せるオペラの2幕構成。 特に現代的な解釈を入れた演出とかではないものの、コミカルな展開を楽しみました。 が、Zerbinetta のツッコミが入るとはいえ Ariadne と Bacchus のフィナーレが妙にシリアスに感じられて少々腑に落ちないまま終わってしまいました。うむ。 これで、Richard Strauss のオペラは Salome 『サロメ』 (1905) [鑑賞メモ]、 Elektra 『エレクトラ』 (1909) [鑑賞メモ]、 Der Rosenkavalier 『ばらの騎士』 (1911) [鑑賞メモなし] と観ましたが、 結構、作風がバラバラだなあと。 Der RosenkavalierAriadne auf Naxos のコミカルてとっつきやすい作風も良いですが、 SalomeElektra の不協和音の多い前衛的な作風の方が好みでしょうか。

オープニングの解説の中で国家斉唱を含むウクライナ支持のメッセージがあって、この上映のために別途付け加えたのだろうかとも思ったのですが、 3月12日収録ということで既にロシアのウクライナ侵攻は始まっていたと気付きました。 もう2ヶ月経ってしまったのかと。

土曜の晩は神谷町の ベラルーシ家庭料理 ミンスクの台所 へ。 5月14日に閉店してしまうと噂を耳にして、駆け込みで行ってきました。 美味しかったのですが、また行きたい、というわけにいかないのは残念です。 お話をうかった閉店の理由も……。

[3989] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Apr 19 21:57:03 2022

金曜8日は休暇にして、午後に乃木坂へ。この展覧会を観てきました。

Cherry Blossoms
国立新美術館 企画展示室2E
2022/03/02-2022/05/23 (火休, 5/3開), 10:00-18:00 (金土 -20:00)

1990年代にイギリスの現代美術の文脈で活動した若手作家 YBAs (Young British Artists) の中でも 最も名が知られた作家の1人、Demian Hirst の個展です。 1990年代からの活動を辿るような回顧展的な要素は全く無く、 2018年以降に製作された約3m×2m大 (1点だけ約5m×7m大) のキャンバスに描かれた油彩のシリーズ Cherry Blossoms 『桜』のみの、 2021年に Foundation Cartier で開催された展覧会の世界巡回展です。

1990年代後半 (特に1998年の「日本における英国祭」の時) にYBAsがらみの展覧会を観たり、 美術雑誌や文化系雑誌などの特集記事を読む機会はそれなりにあり、 Damien Hirst の作品もそんな文脈でのコンセプチャルな作品 (薬品棚や動物のホルマリン漬けの作品など) の印象がとても強い作家です。 2000年代以降、あまりチェックしていなかったのですがはコンセプチャルながらも絵画作品に回帰し始めていたよう。 今回の作品は、空を背景に見上げた視線でみたような桜を、枝の太線と花や影、木漏れ日のドットのコンポジションとして半ば抽象的に描いたもの。

ドリップではなく立て掛けたキャンパスに投げつけるように描いているのですが、 油絵具が盛り上がったドットからなる絵は抽象表現主義のアクションペインティングを連想させますし、 実際には無い色のドットを交えて深みも表現したドットは遠目で見ると後期印象派をも参照しているよう。 ピンクと水色を基調とした色も明るくとても親しみやすく感じられました。 しかし、結局のところ、作品そのものよりも、 会場奥の休憩コーナーに隣接して流されていた、 このような作風に至る経緯を作家に語らせたインタビュー映像が最も興味深かったかもしれません。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

現代美術の文脈中では有名な作家だし、映えそうな作品な上撮影可なので混雑しそうと予想して、 平日に行ったのですが、思ったほどではなかったような。

国立新美術館で同時開催中の 『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』 はどうせ混んでるだろうと観る予定ではなかったのですが、 予約無しで並ばずに観られるということで観ることにしてしまいました。 こちらの会場の方が Damien Hirst 展の2〜3倍は混雑していて、 現代美術もかなりポピュラーになったとはいえ、客層の厚さの違いを実感しました。 平日は仕事から引退した老年層の客が多いということもあるかもしれませんが。 ルネサンス期から19世紀までがスコープなので、自分にとってはアウェー感のある展覧会でしたが、 ラスト近くで Paul Cézanne が観られてよかったでしょうか。

翌土曜は午後に池袋へ。 Steven Spielberg 監督の映画 『ウェスト・サイド・ストーリー』 West Side Story (2021) を観てきました。 元になったミュージカル (初演1957) は、1961年にミュージカル映画化されていますが、その再映画化です。 不勉強ながらミュージカルも1961年の映画も観たことありませんが。 3時間近い上映時間に腰が引けているうちに上映館がどんどん無くなってしまい、 やっぱり観ておこうかと思った時はほとんど選択肢がなくなってしまっていたという。 “Tonight" が歌われるバルコニーの場面とか、Shark girls の “America” とか、塩の倉庫 (オリジナルは高架下) での決闘とか、 断片的に知ってた歌や場面の物語の中でのコンテクストがやっとわかったのが、収穫。 ミュージカル映画といっても意外とセリフの場面が多いリアリズム寄りの演出でしたが、 しかし、ダンスの場面などカットを控えたカメラ長回しを駆使していてライブ感と迫力を感じました。 NTLive の Romeo and Juliet を観たばかり [鑑賞メモ] だったので、 ついつい比べつつ観てしまうわけですが、前半はまだしも後半はかなり違う話でした。

[3988] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Apr 17 18:18:18 2022

先々週末の話になってしまいましたが、日曜の晩は日比谷へ。この映画を観てきました。

『アンネ・フランクと旅する日記』
2021 / Purple Whale Films (BE), Walking The Dog (BE), Samsa Film (LU), Submarine Amsterdam (NL), Bridgit Folman Film Gang (IL), Le Pacte (FR), Doghouse Films (LU), Magellan Films (BE) / colour / 99 min.
A Film by Ari Folman.
Written and Directed by Ari Folman
Original Score by Karen O and Ben Goldwasser.
Starring: Ruby Stokes (Kitty), Emily Carey (Anne Frank), Sebastian Croft (Anne's Peter), Ralph Prosser (Kitty's Peter), etc

Waltz With Bashir 『バシールとワルツを』 (2008) [鑑賞メモ] で知られるイスラエルのアニメーション映画作家の新作です。 第二次世界大戦中、ユダヤ人の少女 Anne Frank がナチスによるホロコーストから逃れるためのアムステルダムでの隠れ家での生活を逮捕されるまで描いた 『アンネの日記』 (Het Achterhuis, 1947; The Diary of Anne Frank, 1952) に基いた作品です。 日記で描かれたエピソードを淡々とアニメーション化するのではなく、むしろそれは劇中劇的な位置付け。 日記には描かれない強制収容所でのエピソードもアニメーションらしい象徴性を持って描かれますし、 Anne Frank が日記を書くにあたって作り出した空想上の宛先の少女 Kitty を主人公として、 彼女が「現在から一年後」に博物館の本の中から現実の世界の世界に飛び出し、 Anne Frank を探す中で起きることを通して、現代の問題を浮かび上がらせます。 アニメーション手法としては比較的オーソドックスでシンプルな絵の2Dアニメーションですが、 題材が題材だけに実写で作ったら逆に嘘臭く感じそうで、アニメーションだからこそ描けた話でしょうか。

Kitty は抜け出したアムステルダムの路上やスクワットで暮らす難民の人たちと出会い、 その中の一人の少年 Peter と彼女の死地を訪れる旅をする一方、彼らと共闘し始めます。 日記のオリジナルを盗んだと警察に追われた Kitty は、難民たちがスクワットしているビルへ逃げ込みますが、 難民強制送還の事態に直面して、オリジナルの日記と交換に難民たちを人道的に扱うことを求めます。 その時にビルの屋上に “I am here” 「私はここにいる」というバルーンを掲げるのですが、 ある意味でこれがこの映画のタイトル “Where is Anne Frank” の答え –– 現代の Anne Frank はスクワットに隠れ住む難民たち –– になっています。 交渉があっさりと成功して難民たちが適切な施設に移送されることになるというのは、現実を考えると楽観的なご都合主義に感じてしまうようなところもありましたが、 ナチス・ドイツによるホロコーストを、いかにもありがちな他の紛争・内戦を含む戦争における戦争犯罪や大量虐殺とではなく、 欧州難民危機と人道問題として重ねて見せるアイデアには、感心されました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

3月11日封切でシネコンに配給されているくらいなので当分上映されているだろうと思っていたら、 2週間で上映終了が続出し、観に行った日比谷シャンテも上映する最後の週末だったので、慌てて観に行ったのでした。 そういえば、欧州難民危機が表面化した2015年というのは、プーチン・ロシアがアサド政権支援でシリア内戦に介入して非人道的な攻撃が激化した時だった、 などどいうことを思い出してしまいました。 レバノン戦争中の虐殺事件を題材にした Waltz With Bashir といい、 ホロコーストと難民問題を題材にした Where is Anne Clark といい、 現在進行中のプーチン・ロシアのウクライナ侵略と重なるところも多く、もっと多くの人に観られればよかったのに、と思わないではありません。 (既に首都圏での上映が終わってから鑑賞メモを書いても遅過ぎるのですが……。)

[3987] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Apr 10 22:22:55 2022

3月末と4月頭の週末は恵比寿へ通って、東京都写真美術館1Fホールの上映企画 『世界の秀作アニメーション2022春編』で、 この3本を観てきました。

Louise en Hiver
『浜辺のルイーズ』
2016 / JPL Films (France), Unité Centrale (Canada), Arte France Cinéma (France), Tchack (France) / colour / 75 min.
Un film de Jean-François Laguionie.
Réalisation, scénario et direction artistique: Jean-François Laguionie
Musique: Pascal Le Pennec et Pierre Kellner.
Avec: Dominique Frot (Louise), etc.

くすんだ色彩で色面にもムラが残るちょっとぼやけたパステル画のようなイラストレーションが動くかのようなアニメーション映画です。 舞台は英仏海峡に面した海水浴場リゾート、 そこに住む一人暮らしの老女 Louise が、一人取り残されて過ごしたオフシーズンを幻想的に描いた作品です。 夏の終わりの嵐に皆が避難してまい気付くのが遅れた Louise が一人残されたという設定ですが、 実際にそれが起きたというより、静かなオフシーズンの街で Louise が自省するように想像した話なのかもしれません。 海岸に面した砂丘の上に掘立小屋を作り、畑を作り魚を取って生活するのですが、 サバイバル生活というよりのんびりマイペースの生活かのように描かれます。 その間にカットバックでまだ年頃だった頃の若かった頃の思い出のエピソードが入ります。 封印されたトラウマが露わになるというより、歳をとって忘れかけていた話をぼんやりと思い出す中で、Louise の人物像の陰影が濃くなるように感じられました。 ちょっとぼやけたパステル画の画面のように、鮮烈な印象を与えるものではないけれども、淡々とした味わいを感じる作品でした。

『ブレッドウィナー』
2017 / Cartoon Saloon (Ireland), Aircraft Pictures (Canada), Melusine Productions (Luxembourg) / colour / 93 min.
A film by Nora Twomey.
Directed by Nora Twomey with screenplay by Anita Doron and Deborah Ellis, based on the novel by Deborah Ellis.
Music by Mychael Danna and Jeff Danna.
Starring: Saara Chaudry (Parvana / Aatish), etc.

Wolfwalker 『ウルフウォーカー』 (2020) [鑑賞メモ] などで知られる アイルランドのアニメーション・スタジオ Cartoon Saloon によるアニメーションです。 舞台は、2001年のタリバン政権下のアフガニスタン、 父親がタリバンに拘束されて女ばかりで市場へ買い物へもいけず窮地に陥った一家を救うため、少女 Parvana が髪を切り少年になりすますという話です。 特に女性に対して抑圧的なタリバンの描写は Les Hirondelles de Kaboul 『カブールのツバメ』 (2018) [鑑賞メモ] と共通しますが、 主人公が大人ではなく子供のせいか、ディストピア感は薄めでしょうか。 拘束された父親を救うという大きな物語があって、それは少女が暗唱している寓話的な少年冒険譚と重ねられられて描かれます。 しかし、冒険譚のようなハッピーエンドを Parvana の話には付けられないこともあり、大きな物語ばぼやけたような。 むしろ、Parvana と同じく少年のふりをして働く親友 Shauzia とのエピソードなど、 少年のふりをするようになってからのエピソードの積み重ねの方が印象に残りました。

Funan
『フナン』
2018 / Les Films d'ici (France), BAC Cinéma (Luxembourg), Lunanime (Belgium), ithinkasia (Cambodia), WebSpider Productions (France), Epiuar (France), Amopix (France), Cinefeel 4, Gaoshan Pictures (France (Réunion)), Special Touch Studios (France) / colour / 87 min.
Avec: Bérénice Bejo (Chou), Louis Garrel (Khuon), etc

カンボジア内戦下、1975年のクメール・ルージュによるプノンペン陥落の後に起きた大量殺戮を描いたアニメーション作品です。 監督はフランス人ですが、母がカンボジア人で、主人公の Chou のモデルにもなっているとのこと。 プノンペンに住む Chou の一家 (Chou の夫、夫の祖母、母やその息子、夫の弟妹からなる大家族) が、 プノンペン陥落後、農村に強制移住される中で見舞われる悲劇を描いています。 外からの情報が遮断され、監視下におかれ、強制労働と飢えで尊厳が奪われていく様が描かれていきます。 タリバン政権下のアフガニスタンにも近いようで、舞台が農村で強制労働という要素も大きいせいか、都会的なディストピア物とは違う不条理を感じました。 Chou の家族で生き残ったのは Chou と息子だけですが、死因・行方不明の理由は様々で、 大量処刑のような組織的な大量殺戮ではなく、でたらめな政策の抑圧的な実行で犠牲者が積み上がっていく様を描くようでした。 絵はくっきりとシンプルなもので、グロテスクな場面の直接描写はありませんでしたが、 クメール・ルージュの大量虐殺を題材にしていると覚悟して観たけれども、次々と不条理に死んでいく展開はキツいものです。 実写だったら、リアルすぎて耐えられなかったかもしれません。

東京都写真美術館1Fホールでは、シネコンなどではほとんど上映されない日本、アメリカ以外のアニメーション映画の上映は以前からありましたが、 『世界の秀作アニメーション』と銘打って多くの作品を集めての特集上映は2021年秋編に続いて2回目。 前回は行きそびれましたが、今回は15作品中3作品を観ることができました。 他にも、 Les Hirondelles de Kaboul 『カブールのツバメ』 (2018) [鑑賞メモ]、 Wolfwalker 『ウルフウォーカー』 (2020) [鑑賞メモ]、 Tout en haut du monde 『ロング・ウェイ・ノース』 (2015) [鑑賞メモ]、 L’extraordinaire voyage de Marona 『マロナの幻想的な物語り』 [鑑賞メモ]、 Calamity, une enfance de Martha Jane Cannery 『カラミティ』 [鑑賞メモ] など、観たことがあって好印象が残っている作品が多く取り上げられいて、とても魅力的な上映会でした。 今後も定期的に開催してくれることを期待しています。

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[3986] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Apr 3 16:06:24 2022

先週末の話ですが、土曜は午後に恵比寿へ。この展覧会を観てきました。

本城 直季 『(un)real utopia』
Honjo Naoki: (un)real utopia
東京都写真美術館 B1F
2022/03/19-2022/05/15 (月休; 3/21,5/2開; 3/22休). 10:00-18:00 (木金-20:00)

パンフォーカスの望遠写真ではなく、 大判写真機のアオリを利用してまるで焦点深度の浅いミニチュアのクロースアップ写真のような効果を出して撮られた空撮写真、風景写真で知られる 2000年代から活動する写真作家 本城 直季 の個展です。 作品はそれなりに観る機会はありましたが、美術館レベルの個展でまとめて観たのは初めてです。

ビルや家屋が立ち並ぶ都会を撮った写真という印象が強かったのだけど、被写体の多様さに気づくことができました。 リゾートや校庭で遊ぶ人々を撮ったものは、ミニチュア写真ぽさという点では共通しますが、人々の疎な感じは密集した都市建築物の写真とは対照的。 また、ぎっしり建物が並んだ状態だけでなく、京都で緑の中に浮かぶ寺社仏閣を撮ったり、工場の大規模設備を浮かび上がらせたり、ケニヤでサバンナの中で野生動物を撮った写真にも、 周囲がピンボケで対象だけに焦点が当たって浮かび上がるような効果に、ミニチュア写真のようという以上の、視点誘導効果の面白さを感じました。

宝塚歌劇の舞台写真を宝箱 “treasure box” として撮ったシリーズや、 COVID-19による緊急事態宣言下に撮ったのではないかと思われる照明が落ちた夜の繁華街など、 ミニニュア写真風空撮写真以外のアプローチにも将来の可能性を感じないわけではありませんでしたが、 手法へのこだわりと対象の多様さが面白い展覧会でした。

Light as Medium: The TOP Collection
東京都写真美術館 2F
2022/03/02-2022/05/22 (月休; 3/21,5/2開, 3/22休). 10:00-18:00 (木金-20:00)

雲を雲としてではなく抽象的な心象風景として撮った Alfred Stieglitz: Equivalent (1929) を起点に、 Stieglitz をメンター的な存在として Minor White らが1952年に創刊したアメリカの写真雑誌 Aperture に関係する写真作家や、それらと同じ系譜に乗るような作風の写真を集めたコレクション展です。 多重露光やフォトグラムなどの技法も使った作品も多く、 被写体そのもの記録としての写真というより、抽象的な心象を被写体からの光で描くような写真が集められていました。

初代編集者の Minor White 、創刊に関わった Barbara Morgan、Ansel Adams、 Aperture 誌に写真を発表した Edmund Teske や Walter Chappell など、 直接に関わった作家が展示の核になるのですが、その中で印象に残ったのは Barbara Morgan。 ポスターやフライヤにも使われた Pure Energy and Neurotic Man (1940) の光の軌跡と手のコンポジションや、 ダンサー Martha Graham を撮った Martha Graham - Letter to the World, Kick (1940) など、 タイトルの付け方も含めて気に入りました。

類似の傾向を持つ写真としては、Man Ray の写真のシュールなイメージや、László Moholy-Magy のフォトグラムや新即物主義な写真なども取り上げられていました。 日本の写真家では、瑛九 (Ei-Q) の1950年代の「フォト・デッサン」や杉浦 邦恵の最初期1960年代の特殊なエフェクトを使った写真 [鑑賞メモ]。 より最近では、佐藤 時啓 のライトペンと長時間露光による風景写真 (出展されていたのはポラロイド写真によるもの) [鑑賞メモ] や 田口 和奈 [関連する鑑賞メモ] による目の部分だけちぎり出した写真を写し込んだ写真作品など。 もちろん、典型的な写真だけではなく、関係付けられるギリギリの線を狙ったものもあって、 そんな中では報道写真作家と知られる W. Eugene Smith の写真なども取り上げられていました。

観たことのある写真も結構ありましたが、単にキュレータの指向/嗜好というだけでなく、 Aperture 誌に関係するという写真史的なしっかりした軸も感じられ、 こういう切り口があったかと新鮮に観ることができました。 素直に線形に並べられているというより直感的に順路が捉えづらい入り組んだ展示構成も、 年代順や関係を読み解くような面白さ。 コレクション展示ということによる油断もありましたが、見応えのある展覧会でした。

Geneses of Photography in Japan: Hakodate
東京都写真美術館 3F
2022/03/02-2022/05/08 (月休; 3/21,5/2開, 3/22休). 10:00-18:00 (木金-20:00)

2018年の第一弾、長崎編 [鑑賞メモ] から 少々間が開きましたが、『写真発祥地の原風景』は はこだて (箱館/函館) 編です。 黎明期写真だけでなく同時代の錦絵などの資料も使い、ロシア船来航やアイヌに関する資料を交えて、 幕末開国時の開港5港の一つという西洋へ早くに開かれた湊町という、 写真史的にも面白いポジションだったということを浮かび上がらせるよう。 函館へはこの10年くらいの間に2回ほど行っていることもあり土地勘もそれなりにあり、 当時のパノラマ写真などから現在の風景を思い浮かべることもそれなりにできたことも、楽しめた一因でしょうか。

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[3985] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sat Apr 2 23:36:53 2022

二週間前の話になってしまいましたが、春の彼岸の三連休中日の日曜は、午前中に墓参を済ませ、昼には京橋へ。 国立映画アーカイブの上映企画 『フランス映画を作った女性監督たち――放浪と抵抗の軌跡』で、 第二次世界大戦後にドキュメンタリーや La Cinematheque Française での映画保存で活躍することになる Marie Epstein が関わった戦間期のフランス映画を2本観てきました。

『二重の愛』
1925 / Films Arbatros (France) / silent / B+W (tinted) / DCP / 107 min.
Réalisation: Jean Epstein; Scénario: Jean Epstein, Marie Epstein; Photographie: Maurice Desfassiaux; Decors: Pierre Kéfer; Costumes: Charles Drecoll, Paul Poiret.
Nathalie Lissenko (Laure Maresco), Jean Angelo (Jacques Prémont-Solène), Camille Bardou (Baron de Curgis), Pierre Batcheff (Jacques Maresco), etc.

フランスの白系ロシア人の映画会社 Albatros [関係する鑑賞メモ] の制作による、上流階級物の映画です。 監督は Marie Epstein の兄 Jean ですが、脚本で Marie が参加しています。 メロドラマ映画といっても三角関係ではなく、ギャンブル中毒の恋人と息子に振り回される女優・歌手 Mme. Maresco の愛と受忍の物語です。 モナコで評判の Mme. Maresco は、富豪の放蕩息子の恋人 Jacques に慈善募金の金を使い込まれますが、彼の罪を被り、Jacques はアメリカに逃げます。 Mme. Maresco は Jacques との間の子 (やはり名は Jacques) もあってしばらく苦労するものの、パリに出て再び成功しますが、父親に似て子もギャンブル中毒で、それに悩まされます。 アメリカに渡った Jacques は改心して石油王として成功し、仕事でパリに立ち寄ります。 そこで、偶然 Mme. Maresco 母子と出会い、ギャンプルで破滅仕掛けた息子を救い、2人をアメリカに連れて帰る事にする、という物語です。 後半の社交クラブでの再会、カジノでの父子対決、不正がバレて警察に連行された息子を救う場面などなかなか緊張感のある展開が楽しめました。 しかし、前半の破滅から立ち直り成功するまでが一言で済まされてしまうようなご都合主義や、 そもそもギャンブル中毒の恋人や息子の罪を被るという愛のあり方に、感情移入し難いものがありました。 上流階級物という事で、当時の流行の豪華な屋内装飾やや衣装も見どころでしょうか。 Mme. Maresco の Paul Poiret らしいドレスなど服装こそ Art Déco 期らしかったですが、 室内装飾はさほどでもなかったでしょうか。

Hélène
『美しき青春』
1936 / Les Films Marquise (France) / 35mm / B+W / 109 min.
Réalisation, Scénario: Jean Benoît-Lévy, Marie Epstein; d'après le roman de Vicki Baum.
Madeleine Renaud (Hélène Wilfur), Jean-Louis Barrault (Pierre Régnier), Constant Rémy (Le professeur Amboise), Héléna Manson (Valérie), etc.

1930年代に Marie Epstein が Jean Benoît-Levy と共同監督した一連の映画の中の1本です。 舞台はアルプスの麓グルノーブル。 必ずしも裕福な家の出ではない苦学する女学生 Hélène が 大学卒業後も学問を究めるため進学し、博士の学位をとり、医化学の研究者になるまでの学生生活を描いた映画です。 助手として学費や生活費を稼ぎながら大学院へ通うなか、 家業の医者を継ぐと親の期待と音楽という自分の希望の板挟みになった恋人が自死したり、 自死の前に妊娠した恋人の子を一人で育てつつ研究を進めたりと、その波乱もあるのですが、 ドラマチックな起承転結のような流れがあるというより、エピソードの積み重ねのよう。 生活の苦労を生々しく描いたような描写はなく、ご都合主義な点も感じないわけではないですが、 リアリズム的に生活を描いていました。 師にあたる教授と結ばれるというエンディングは釈然としないものがありましたが、 当時のフランスの大学生の生活を垣間見るような興味深さはありました。 というか、同時代の松竹映画が翻案してもおかしくないような話だよなあ、と、思いつつ観ていました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3984] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 27 22:07:26 2022

先週末の話になりますが、三連休初日土曜は午後に初台へ。この舞台を観てきました。

新国立劇場 小劇場 – THE PIT
2022/03/19, 13:00-15:00.
構成・演出: 小野寺 修二;
音響効果: 池田 野歩; 音響: 黒野 尚; 照明: 吉本 有輝子; 美術: 石黒 猛; 衣裳: 今村 あずさ.
出演: カンパニーデラシネラ: 崎山 莉奈, 藤田 桃子, 大庭 裕介, 荒 悠平, 王下 貴司, 斉藤 悠, 仁科 幸, 小野寺修二.
初演: 2017/06/04 新国立劇場 小劇場.
主催・制作: 新国立劇場

新国立劇場2016/17シーズンの「大人も子供も一緒に楽しめるダンス作品」の公演で上演された 『ふしぎの国のアリス』の再演です。 2020年6〜7月に再演が予定されていたもののCOVID-19の影響で公演中止。それからさらに1年半経っての再演です。 カンパニーデラシネラ [鑑賞メモ] の公演はそれなりに足を運んでいますが、 この作品は初演時に見逃していたので、やっと再演で観ることができました。 出演は初演時と同じですが、初演時よりもセリフに依存しないように変更したとのこと。

ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』 (Lewis Carroll: Alice's Adventures in Wonderland, 1865) に基づく作品です。 といっても、カンパニーデラシネラですので、オリジナルの物語をそのまま辿るような作品ではありません。 Alice の役は主に 崎山 が演じていましたが、藤田が演じるときもありました。 小野寺がほぼ The White Rabbit を演じていましたが、 他のパフォーマーは特定の誰かを演じるというものではありませんでした。 Mad Tea Party に思われる場面にしても、登場人物は抽象化されて、 4人による不条理な椅子取りのようなパフォーマンスとなっていました。 このように、登場するキャラクターをパフォーマーに割り当てるというわけでなく、 その中のエピソードに着想した場面を8人のパフォーマーで演じるような作品でした。

原作がそもそもその色が強くありますが、マイム劇らしいシュールで不条理な異世界行の舞台でした。 単にマイムに着想したというだけでなく、 傾いた天板を持つ8ピースに分かれる台や、8枚の可動式の縦長の衝立など、 物をパズルのように動かしつつ、その動きに着想したパフォーマンスが楽しい作品でした。 天板の傾いた台は、その形状の不規則性も不条理さを出していましたし、 単に台として使うだけでなく、下側をライトアップして地下通路を表現したり、 天板を横にして立てて小部屋のようなものを表現したり、とその巧みな見立てを楽しむことができました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

プーチンのロシア軍がウクライナを侵略し始めて約一ヶ月。 ロシア軍の拙攻に頑強な抵抗もあってウクライナは主要都市を守り切りました。 何かと大日本帝国 (もちろんロシアが大日本帝国相当) の十五年戦争を連想させられる展開なのですが、 当初の目的を達成したのでドンバスの完全開放に注力というロシア軍の発表をみると、 ガダルカナルの戦いくらいの局面なのかしらん、と。 しかし、これからが長いというか、悲惨な戦闘はまだまだ続くのだろうなあと。

そんな戦争もあって、COVID-19のことなどすっかり忘れかけてしまっていますが、 流石に第6波も下降局面に入って22日に蔓延防止等重点措置も21日をもって解除。 街中も賑わいを取り戻しつつあるように感じます。 しかし、まだ第5波のピークよりも感染者数は多い状態。油断なりません。

戦争に疫病 (COVID-19)、17日には東北で大きな地震、そして、その影響で18日から22日にかけての東日本の電力不足、と、これでもかと暗い出来事が続くこの頃ですが、それでも季節は春。 この週末で近所のソメイヨシノも七部咲きくらいて見頃。カルガモのヒナもかえり始めています。 そういうのを無心で眺めつつ散歩することで、なんとか心のバランスをとっているような……。

[3983] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Mar 21 22:23:58 2022

先週末の話になりますが、土曜は午後に与野本町へ。この舞台作品を観てきました。

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール舞台上
2022/03/12, 15:00-16:10.
Concept & performance: Daniel Linehan
Dramaturgy: Vincent Rafis; Outside eye: Michael Helland; Scenographic advice: 88888; Costume design: Frédéric Denis; Lighting design: Elke Verachtert; Sound: Christophe Rault
Production: Hiatus (Brussels, BE)
World Premier: deSingel, 1 March 2019, Antwerp, Belguim.
主催・企画・制作: 彩の国さいたま芸術劇場 (公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団).

アメリカ・ワシントン州オリンピア出身で2008年までニューヨークで活動した後、 ベルギー・ブリュッセルに拠点を移して活動する振付家 / ダンサーのソロ公演です。 これまでの作風など全く予備知識がありませんでしたが、 久々の海外からのアーティストの公演ですし、観客を舞台上にあげての公演という興味もあって 足を運びました。

実際のところ、舞台上に観客を上げたのは、 観客とパフォーマーの位置関係がフラットなオルタナティブ・スペースのような空間での上演を前提とした作品だったからでしょうか。 折り畳みの椅子を四辺に二段に並べた10m×15m程の長方形のスペースを使ったパフォーマンスでした。 前半に観客の足に口づけするような場面があったものの、客とのインタラクションはほぼなく、イマーシヴといえるような演出はありませんでした。

主題は子供時代の父の死の記憶とその受容といったもの。 最初のうちは、そんな主題も感じさせず、パフォーマンスする場の寸法を身体を使って測るようなパフォーマンスや、 マイクを身体に擦り付ける音をループさせた音に合わせた動きなど、身体と世界の距離感を測るようなパフォーマンスでした。 やがて、父が死んだ際の様子の記憶、母親や親族の様子などを静かに語り、それもルーパーやエフェクタで処理しつつ、ダンスをしました。 ダンスは技巧を見せるものでもなく、ナラティブを使いながらも心情を発露するような演技ではなく。 私的というか内省的で繊細な静謐さを感じる作品でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

プーチンのロシア軍がウクライナに侵攻は、依然として激しい戦闘が続いていて、日々、その悲惨な状況が伝わってきます。 そんなこともあってか、静謐な作品を観つつも、どうにも心穏やかに向き合うことが難しいとも感じてしまいました。うむ。

[3982] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 6 22:13:16 2022

今週末は、土曜の昼に白金台へ。この展覧会を観てきました。

Mode Surreal: A Crazy Love for Wearing
東京都庭園美術館
2022/01/15-2022/04/10 (月休;3/21開,3/22休), 10:00-18:00.

Surrealism がモード (高級服飾デザイン) に与えた影響をテーマにした展覧会です。 正直に言えば「シュール」な雰囲気のデザインを集めた展覧会かもしれないと危惧していたのですが、 期待以上にちゃんと Surrealism に取り組んだ展覧会となっていました。

核となるのは、戦間期の Surrealism 運動と実際に連動していた1930年代〜1940年代のモードで、 特に Salvador Dali や Jean Cocteau と交流のあった Elsa Schiaparelli が鍵となるデザイナとなっていました。 あと、1920年代 Art Deco のグラフィック・デザインで知られる A. M. Cassandre の 1930年代後半以降に Surrealism に作風を変えた仕事も多く取り上げらていました。 以前に観た Cassandre の展覧会では蛇足に感じられましたが [鑑賞メモ]、 こういう位置付けの展覧会で観るとその作風変化の意味が良く捉えられるように感じました。

もちろん、Surrealsim とファッションの直接的な関係だけではなく、 近代以前の過剰な髪飾り、帽子などの西洋のデザインや、中国の纏足のような習慣、 動物等をモチーフにした帯留めなどの装飾具や花魁に見られるような過剰に装飾的な服装など日本の歴史的なデザインを取り上げ、 まだ、舘鼻 則孝、永澤 陽一、串野 真也 といった現代の日本のデザイナーによる Surrealism の系譜に乗るようなデザインについても大きく取り上げていました。 Lady Gaga が着用したことで注目された 舘鼻 則孝 (Noritaka Tatehana) の靴などが取り上げられていましたが、 Lady Gaga だけでなく Björk や St. Vincent の衣装は Surrealism の系譜とも取れる事に気づかされました。 ファッションデザイナーの 串野 真也 とアーティストの スプツニ子!(尾崎 ヒロミ) の「光るシルク」のドレスの展示も美しかったのですが、 企画の流れからは少々外れているようにも感じました。

ファッション史は Modernism 的な系譜で描かれがちですが、Surrealism 的な系譜で見るのは、新鮮でした。 Elsa Schiaparelli がモードにおける Surrealist なら、Coco Chanel が Modernist でしょうか。 Surrealism とモードの直接的な関係など展示の核はしっかりしていましたが、 近代以前のものを取り上げたり、現代の日本のデザイナーを取り上げたりという点は、 流れを描くというより、あちこち摘み喰いに感じられたことは否めません。 しかし、COVID-19パンデミック下では展示に使えるものも限られているでしょうし、 モードにおける Surrealism の系譜の可能性を見せてくれただけでも、充分に刺激的な展覧会でした。

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2回目から6ヶ月経過し接種券が届いたので、早速、大規模接種会場を予約して 土曜の午前中にCOVID-19ワクチンモデルナ筋注の3回目を受けました。 2回目の副反応が鎮痛解熱剤 (カロナール) を服用して38℃超の発熱というキツさだったので、 覚悟して臨んだのですが、 鎮痛解熱剤 (イブプロフェン) で抑え込める程度の微熱とうっすらとした頭痛で済みました。 風邪の初期のような体調だったので、日曜は大人しく過ごしましたが。

ワクチン接種直後は副反応はまだないだろうと、展覧会を観に行ったわけですが、 土曜は春一番、展覧会を観ている間にみるみる花粉症の症状が酷くなってきてしまいました。 日曜も軽くおさんぽしたのですが、服薬、点鼻、点眼にマスク着用で臨んでも、1時間も歩くと花粉症の症状が出てしまいますね。 陽気は良いのにおさんぽしづらいシーズンになってしまいました。

プーチンのロシア軍がウクライナに侵攻を開始、戦争が始まって (2月24日)、約10日。 あっという間に、戦場となったウクライナの街並みがアポカリプティックに、チェチェンやシリアのよう。 プーチンのロシア国内でのディストピア的な独裁政権仕草もここまで一気に進むか、と。 こんなことがあまりに急速に進んでいることに、戦慄しています。 ロシアやウクライナからは直接CDを取り寄せていたこともありましたし、2011年にはロシア旅行も行きました。 こんなことが普通にできる日がまた戻ってくるのだろうか……。

[3981] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 27 22:59:21 2022

今週末は、土曜の昼前に府中へ。会期末週末となってしまったこの展覧会を観てきました。

Akiko Ikeuchi: Or Gathering the Energies of the Earth
府中市美術館
2021/12/18-2022/02/27 (月休;1/10開;12/29-1/3,1/11,2/24休), 10:00-17:00.

1990年代後半から現代アートの文脈で活動する 池内 晶子 の個展です。 といっても、自分が意識するようになったのは2010年代以降。 『MOTアニュアル2011—Nearest Faraway | 世界の深さのはかり方』 (東京都現代美術館, 2011) [鑑賞メモ] や 『19th DOMANI・明日展』 (国立新美術館, 2016-2017) [鑑賞メモ] で観て、 絹糸で作った構造の繊細なインスタレーションが印象に残っていました。

今回の個展は、 マケット、ドローイングなどの関連展示もありましたが、やはり、 絹糸を使ったインスタレーション《Knotted Thread》シリーズの サイトスペシフィックな新作6点 –– 展示室をフルに使っての3点、ガラスケース内のインスタレーション2点、あと、エントランスロビーの吹き抜けを使った作品1点 –– をメインに据えた展示でした。 素材の絹糸や結び目の数にも意味を持たせているようでしたが、実際に観ていると、 今まで行った時に全く意識しなかった美術館の建物の東西南北方向やその軸からのズレに気付かされるようなインスタレーションでした。

企画展示室1の作品《Knotted Thread-red-⌀1.4cm-⌀720cm》は、東西南北の軸で張られた糸から吊り下げられた錐体のような赤い絹糸の構造と床の円形 (実際は渦巻状とのこと) に這わされた赤絹糸を対比させた作品。 そのフラジャイルな構造は今まで観た作品に最も近いイメージのものもでした。 しかし、それ以外の作品は構造が疎となり、一見何も無いようにすら見えるというのも。 特に白の絹糸を南北に張ってそこに一筋の白 絹糸を垂らした 企画展示室2《Knotted Thread-h220cm(north-south)》は、 暗い展示室の中で一筋のささやかな煌めきを観るよう。 エントランスロビーの《Knotted Thread-white-22knots-north-south》は、 目を凝らして探して、やっと見つけられるほど。 そんなことろは、むしろ、内藤 礼 の作品 [鑑賞メモ] に近い物を感じました。 そのような、自身の感覚を研ぎ澄まされるような作品は、とても好みです。

14時から、インスタレーション作品の形状を変更するパフォーマンスというか公開制作があったのですが、 それほど広くもない展示室に長蛇の列という、新型コロナウイルス感染症が無くてもまともに鑑賞できる状況ではなかったので、 冒頭の10分ほど資料展示のプロジェクタ投影された映像で様子を確認する程度で、美術館を後にしました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

府中市美術館へ行く時は、いつも府中駅からちゅうバス (コミュニティバス) でしたが、 南武線で分倍河原で乗り換えて府中駅に出るのも面倒、ということで、 府中本町駅からタクシーにしてしまいました。 1,000円余で行けると分かったのも収穫でしたが、 府中本町駅と府中駅の近さ (さすがに武蔵小杉駅の南武線と横須賀線との乗り換えよりはありそうでしたが、 新川崎駅と鹿島田駅くらいの距離感) に気付くことができたのも収穫でしたでしょうか。

昼は春のような陽気だったので、展示を観たりランチをしたりする合間に府中の森公園をお散歩。 府中駅から府中本町駅まで、途中、大国魂神社 (武蔵国総社にして武蔵国衙跡) に寄ってみたり。 いい気分でお散歩できましたが、後になって足腰にきてます。 コロナ禍による外出不足ですっかり足腰が萎えてしまっていると実感しました。

[3980] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 20 21:51:14 2022

今週末は、土曜の昼に川崎へ。この上映を観てきました。

from Metropolitan Opera House, 2021-12-04.
Music by Matthew Aucoin, libretto by Sarah Ruhr, based on her play Eurydice (2003).
Production: Mary Zimmerman.
Set Designer: Daniel Ostling; Costume Designer: Ana Kuzmanic; Lighting Designer: T.J. Gerckens; Projection Designer: S. Katy Tucker; Choreographer: Denis Jones; Dramaturg: Paul Cremo.
Cast: Erin Morley (Eurydice), Nathan Berg (Father), Joshua Hopkins (Orpheus), Jakub Józef Orliński (Orpheus's Double), et al.
Conductor: Yannick Nézet-Séguin.
World Premiere: LA Opera, February 1, 2020.
A co-production of the Metropolitan Opera and LA Opera.
Commissioned by the Metropolitan Opera and LA Opera.
上映: 109シネマズ川崎, 2022-02-19 11:30-14:45 JST.

有名なギリシャ神話の Orpheus and Eurydice の物語を妻 Eurydice の視点から描いた2003年の戯曲を翻案した新作オペラです。 作曲の Aucoin、演出の Zimmerman の作風に関する予備知識もなく、戯曲は未読でしたが、 Eurydice 視点でどんな話になっているのだろうという興味で、観ました。

舞台は現代、というか、19世紀末〜20世紀前半頃と思われる時期に置き換えられ、Orpheus は音楽家という設定です。 冥界で亡き父と再会した Eurydice が、父と夫の間で揺れ動き、結局全てを失ってしまうという悲劇として描かれていました。 また、Orpheus はその音楽的な内面の演じる1を加え2人1役でした。 この3役がシリアスに演じられる一方、悪役でもある冥王 Hades と冥界の3つ石が、むしろコミカルに演じられていました。 対比させるだけでなくコミックリリーフ的な意図もあるのだろうと、その意図はわからないではないのですが、 自分の好みもあるとは思いますが、その漫画的な造形も含めてキッチュに感じられてしまいました。 そんなこともあってか、いまいちハマれませんでした。

音楽は、Minimal Music 的な反復もちりばめつつも、全体としては歌でドラマチックな展開を聞かせました。 舞台装置はミニマリスティックというほどではないもの控えめに、照明や黙役のダンサーを多く使った演出でした。

LA Operaで世界初演された直後にCOVID-19禍で劇場が閉まり、再開してのMet初演という作品ということもあるのでしょうが、 幕間のインタビューで、この作品における死者との再会と喪失という題材をCOVID-19禍における喪失感が、度々重ねられていました。 確かに、パンデミック以降の累積死者数は、日本も2万人を超える深刻なものですが、アメリカは100万人近くに達しています。 インタビューを聴いていて、COVID-19による死亡がアメリカではそれほど身近なものだったのか、と感じさせられました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

しかし、この時期は Metropolitan Opera Live in HD、Royal Opera House Cinema、National Theatre Live の上映が続きます。 今シーズンは久々に Opéra national de Paris の日本上映もあって、 コンテンポラリー物に絞っていても、毎週末のようになってしまっています。 年度末繁忙期なので、もう少しばらけてもらえると嬉しいのですが……。

[3979] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 13 20:46:55 2022

三連休初日金曜の午後、思っていたより展覧会を観るのに時間が掛からなかったので、 東銀座というか築地へ移動。この上映を観てきました。

『プレイ』
Palais Garnier, L'Opéra national de Paris, 2017-12.
Chorégraphie, décors et costumes: Alexander Ekman
Musique: Mikael Karlsson
Costumes: Xavier Ronze; Lumières: Tom Visser; Vidéaste: T.M. Rives; Assistante du chorégraphe: Ana Maria Lucaciu; Conseillère stratégique et dramaturge: Carina Nildalen; Assistante aux décors: Claire Puyenchet.
avec: Stéphane Bullion (danseur étoile), Muriel Zusperreguy (première danseuse), Vincent Chaillet (premier danseur), et le Corps de Ballet de l’Opéra national de Paris.
Calesta «Callie» Day (chanteuse gospel), Frédéric Vaysse Knitter (piano), Amanda Favier (premier violon) Pauline Fritsch (second violon), Benoît Marin (alto), Eric Villeminey (violoncelle), François Gavelle (contrebasse), Christian Wirth (saxophone soprano), Géraud Etrillard (saxophone alto), Adrien Lajoumard (saxophone ténor), Pascal Bonnet (saxophone baryton), Adélaïde Ferrière (percussions).
Première : 6 décembre 2017, Palais Garnier, L'Opéra national de Paris.
Réalisation : Tommy Pascal.
上映: 東劇, 2022-02-11.

コンテンポラリーダンスの文脈でも活動するスウェーデンの振付家 Alexander Ekman が Ballet de l'Opéra national de Paris (パリ・オペラ座バレエ団) に振付た新作バレエです。 2018年に NHK BS プレミアムシアターでも放送されていて、 BelAir Classics の DVD/Blu-ray もリリースされていますが、 『パリ・オペラ座バレエ シネマ』の中の一作品として映画館上映されたので、大画面で観るのも良いだろうと観てきました。 コンテンポラリー演目の上映/上演を応援したい、というのもありますが。

音楽にはオーケストラは用いず、pop なものではないものの、 オープニングからして saxophone quartet だったり、gospel な歌だったりと、jazz のイデオムが強いもの。 オペラ座を遊び場にしたような作品とも言われますが、 前半は、白いスポーツウェアを思わせる衣装によるダンスに、 アポロ11号月面着陸時の宇宙飛行士のような宇宙服姿や、風船を被ったかのようなダンサー、 鹿のツノのように2対の枝をはやしたフェイスガード無しのアイスホッケー・ヘルメットを被った女性ダンサーたちの群舞。 宇宙服姿などその意図を掴み兼ねましたが、ナンセンスに近い不条理なのかもしれません。 前半ラスト、大量の緑のボールが降り注ぎ、舞台を埋め尽くし、ダンサーたちがそれに戯れます。

後半は、衣装は白のスポーツウェアからうって変わって暗いグレーのセミフォーマルに近いシンプルで落ち着いた服装になります。 オーケストラピットに落とした緑のボールの深みの中でザッザッと音を立てながら男性ダンサーたちが踊る場面、 ダンサーたちが灯ったキャンドルを持って静かな動き、 そして、前半までほとんど宙吊りだった一片1.5mはあろう30個近い白い箱を整然と並べてのその周りでのダンスなど。 後半の方が視覚的に美しくて、好みでした。 ラスト近く、主役級の男性ダンサーがグレーの服を脱ぐ場面で、再び前半の世界に戻るよう。 そして、一旦幕が降りた後のフィナーレは、客席にバルーンやボールを投げ入れてのサーカス風でした。

家でNHKオンデマンド (BS プレミアムシアター) で観た時は、前半のシュールな場面の意図を掴みかね、後半緊張が切れたか、ピンときませんでしが。 しかし、映画館で大画面で観ると、没入感もあってか、期待以上に楽しむことができました。 家で DVD/Blu-ray やストリーミングで観る手軽さや観られる作品の多さ (特に人気があまり無いコンテンポラリー作品) も良いのですが、 やはり、映画館での上映で観るのは良いものです。 もちろん、実際の上演で観られたら、それがベストなのですが……。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

年度末の繁忙期というとこで、土日は仕事。 トラブル対応で、本来やりたかった仕事はほとんど手につきませんでしたが。うーむ。

[3978] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sat Feb 12 20:44:55 2022

木曜晩から金曜未明にかけて関東南部も降雪の予報でしたが、結局、影響が出るほどでなく。 ということで、祝休日の金曜は昼に恵比寿へ。 欠かさずという程ではないものの、ずっと定点観測してきているこの展覧会を観てきました。

Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions 2022 – After The Spectacle
東京都写真美術館 ほか
2021/02/04-02/20 (月休), 10:00-20:00.

東京都写真美術館主催のアニュアルの映像芸術展です。 例年、東京日仏会館も展示会場となっていましたが、今年は、周辺の関連展示はあったものの、東京都写真美術館でほぼ完結。 国内作家中心というのはもちろん、昨年 [鑑賞メモ] にも増してコンパクトに感じられました。 COVID-19 下で企画準備段階から大きな制約があることは容易に想像できるので、こうして継続しているだけでも意義があるとは思いますが。

写真やビデオを使ったコンセプチャルな現代アート文脈の作品が中心で、 映像の妙、視覚トリック的な面白さを感じる作品があまり無かったのが物足りなく感じました。 といっても、この映像の妙、視覚トリック的な面白さの無さは、「スペクタクル後」という企画意図かもしれません。 しかし、そんな中では、ストロボライトやデジタルビデオカメラの走査を使って観る 立体ゾートロープ作品 パンタグラフ 《ストロボの雨を歩く》 (2015) が、恵比寿映像祭に出てくる作品らしくて、気に入りました。 ここ20年近く、あまりチェックできていなかったのですが、 studio BIG ART [鑑賞メモ] の人だと懐かしく、 こうして制作が続いていて嬉しく思ったりしました。

今回は3階の展示室の2/3ほどが、映像祭のメインテーマに合わせた「スペクタクルの展覧会:小原真史企画」と題された、 19世紀末から20世紀にかけての博覧会やそれに関連するスペクタクルの写真・映画からなる展示で、コレクション展示を観るよう。 映像祭内企画ではなく、テーマで通常のコレクション展示をして欲しかったです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3977] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 6 22:32:10 2022

この週末は土曜に午後に与野本町へ。この上映会を観てきました。

Ziller Building - Main Stage [Κτήριο Τσίλλερ - Κεντρική Σκηνή], National Theatre of Greece [Εθνικό Θέατρο], 2009, 38 minutes.
Concept - Direction [Σύλληψη - Σκηνοθεσία]: Dimitris Papaioannou [Δημήτρης Παπαϊωάννου]
Music - Sound Design [Μουσική Σύνθεση - Ηχητικός σχεδιασμός]: Coti K.; Αssociate Visual Artist [Εικαστικός Συνεργάτης]: Zafos Xagoraris [Ζάφος Ξαγοράρης]; Lighting Design [Φωτισμοί]: Alekos Yiannaros [Αλέκος Γιάνναρος]; Costume Design [Κοστούμια]: Thanos Papastergiou [Θάνος Παπαστεργίου]; Assistant Director - Artistic Production Co-ordinator [Βοηθός Σκηνοθέτη - Διεύθυνση Καλλιτεχνικής Παραγωγής]: Tina Papanikolaou [Τίνα Παπανικολάου]
Première: 14 October 2009, Ziller Building - Main Stage [Κτήριο Τσίλλερ - Κεντρική Σκηνή], National Theatre of Greece [Εθνικό Θέατρο].
Commissioned + Produced by National Theatre of Greece [Εθνικό Θέατρο], 2009 (Artistic Director: Yannis Houvardas [Γιάννης Χουβαρδάς]).
Filmed + Edited by Dimitris Papaioannou; Additional Filming: Kyriacos Karseras, Stelios Kamitsis; Editing Advisor: Matt Johnson; Additional Sound Recording: Kostas Michopoulos International Relations + Communication Manager: Julian Mommett.
Produced by 2WORKS;
上映: 彩の国さいたま芸術劇場映像ホール, 2022/02/05 15:00-16:40.
ディミトリス・パパイオアヌー 『NOWHERE』ディレクターズ・カット版 上映会

2019年に The Great Tamer を彩の国さいたま芸術劇場映像ホールで上演した Dimitris Papaioannou [鑑賞メモ] に関する上映会です。 Nowhere (2009) の上演を Papaioannou 自身が映像化した Director's cut 映像約40分をメインに、 新作 Transverse Orientation (2021) の予告編 (trailer) 約7分をその前に、 後に彩の国さいたま芸術劇場オリジナルのインタビュー映像約20分が上映されました。

Nowhere は、 National Theatre of Greece の Main Stage 改修直後に 当時最新だった舞台機構を使い、まさにそれに対して振り付けしたようなサイトスペシフィックな作品です。 移動床がスライドし奈落が開閉し、迫が上下し、回り舞台が回転し、といった上でパフォーマンスが繰り広げられます。 天井からも、20本前後はあろうバトンをパフォーマーの高さで波打つように動かして、パフォーマーと絡ませます。 開演前、開演後の観客席を映す鏡貼りの舞台幕も劇場自体が主役であることを示しつつも 豪華なクラシカルな客席と剥き出しの現代的な舞台を対比するよう。 開いた奈落を大きな段ボール箱様もので塞いでおき、移動床をスライドしてその箱をせり上げ、最後には壊れた箱の山の様にする場面など、舞台装置の動きも際立ちます。 スクリーンで観ることで、巨大な舞台装置の動きの迫力を感じることができました。

メカニカルな舞台装置を駆使したコンテンポラリーサーカスにも近いものも感じましたが、 スリリングでコミカルな動きで装置の動きを際立たせるのではなく、 装置の動きの中でも淡々とゆっくりとした動きで連想を連ねるように情景を描くところは Papaioanou らしく感じました。 典型的なダンスやサーカスのような身体能力を見せるような動きはほとんどありませんが、 人の動きの面白さを見せる場面もありました。 特に、中盤、男女2人のパフォーマーが裸になる場面 (作品制作期間中に亡くなった Pina Bausch に捧げられ、For Pina と名付けられている)、 一列に並んだパフォーマーが手を並べて繋げ、2本の長い蛇のような腕が男女を脱がせているように見せる演出が印象に残りました。

特徴的な音楽、サウンドデザインという程ではありませんでしたが、 音楽、サウンドデザインは、Coti K. (Κωνσταντίνος Λουκάς Ρολάνδος Κυριάκος)。 2000年前後にギリシャを含む南東欧のアンダーグラウンドな音楽シーンを追いかけていた時に知って 何枚かCDも持っているミュージシャンだったので、こんな所にもつながりがあったのか、と。

インタビュー映像の中身は、Nowhere に関するものと、Papaioannou の経歴、特に影響を受けたものが窺えるような内容でした。 Nowhere 制作時、まだ舞台機構は試験を終えておらず、半ば試験を兼ねるような形になったとのこと。 その一方で、練習する時間を十分に取れ、見た目ほどは危険では無かったというのも、なるほど、と。 影響源としては、Pina Bausch、舞踏、Robert Wilson を挙げていました。 1980年代にニューヨークで 田中 泯 やその弟子に舞踏を教わったこと、 Robert Wilson の下で The Black Rider (1990) の制作に参加していたことなど、興味深かったです。 特に、Robert Wilson との関係は視覚的な舞台作りなど腑に落ちました。 また、影響を受けている映画として Jacques Tati と Buster Keaton というコメディを挙げたのは意外でした。 Keaton の動きはアクロバティックですが、Tati の動きは Papaioannou のゆっくりした動きとも親和性高そうなので、 そういうコミカルな面ももっと見せて欲しいものです。 イタリアの映画監督として確か Federico Fellini を挙げていたように思うのですが、 作風のシュールさはむしろ Pier Paolo Pasolini ぽいと思っていたので、少々意外でした。

予告編を上映した Transverse Orientation (2021) は、 2021年4月22日〜25日に彩の国さいたま芸術劇場大ホールで公演予定だったものの、 COVID-19の影響で延期となっていルもの。 今年2022年6月30日〜7月3日の予定になっていますが、今度は公演できればと願っています。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

上映時間1時間のために片道1時間半かと少々躊躇しましたが、収穫あったでしょうか。 映像は自宅で配信で観ても良いのかもしれないですが、スクリーン上映で観た方が集中できます。 COVID-19感染者数も病院の逼迫度もまだまだ悪化の一途で外出が躊躇われるのも確かですが、 混雑しかったり騒がしくなったりするイベントではありませんし、 グリーン車を使えば移動中の混雑も避けられますし、こうして出かけた方が気分転換になります。

[3976] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Feb 1 23:32:05 2022

先の週末は、日曜も昼前に日本橋室町へ。映画館で演劇の劇場中継とも劇映画ともつかないものを観てきました。

an originaal film from the National Theatre, 1 hour 40 minutes.
by William Shakespeare.
Director: Simon Godwin.
Designer: Soutra Gilmour; Adapter/Associate Director: Emily Burns; Music Composer: Michael Bruce; Movement Director: Shelley Maxwell, Jonathan Goddard; Fight Director: Kate Waters; Wigs, Hair & Make-up Designer: Giuseppe Cannas.
Director of Photography (DOP): Tim Sidell.
Cast: Jessie Buckley (Juliet), Josh O'Connor (Romeo), Fisayo Akinade (Mercutio), Ella Dacres (Peta), Deborah Findlay (the Nurse), Tamsin Greig (Lady Capulet), Ellis Howard (Sampson), Lloyd Hutchinson (Lord Capulet), David Judge (Tybalt), Adrian Lester (the Prince), Lucian Msamati (the Friar), Alex Mugnaioni (Paris), Shubham Saraf (Benvolio), Colin Tierney (Lord Montague).
Produced by the National Theatre, in association with Sabel Productions and Cuba Pictures.
上映: TOHOシネマズ日本橋, 2022-01-30 12:40-14:30.

2020年夏上演予定で準備していたもののCOVID-19パンデミックでキャンセルとなった Romeo and Juliet を、 休館中で無観客の Lyttelton Theatre の舞台などを使って17日以上かけて上演・撮影した、National Theatre 初制作の映画です。 このような作品はパンデミック中に観てこそだと思いますし、 観客を入れての上演をライブで収録する National Theatre Live と異なるパンデミックで休館中ならではの制作方法でどのような映画に仕上がったのかという興味で、観てきました。

ミクロでの演技こそリアリズムに寄ったものもありましたが、 セット、小道具や衣装の作り込みに劇映画的なリアリズムを志向せずに、 劇場空間や限られた道具で様々な場面を見立て、 時には象徴性の高いセットや演技で場面や登場人物の内面を描くなど、 舞台作品を観る時に面白さを感じる点を生かした映画になっていました。 特に、蝋燭を沢山並べた中での結婚式の場面など、映画ではなく演劇的な表現の良さが生きていました。 その一方で、俳優をクロースアップで捉えた映像や、近いマイクでテクスチャまで拾ったセリフや物音は、 観客を入れての舞台中継での遠い位置のカメラやマイクによる収録には無い生々しさで、 そんな映像や音響に引き込まれました。

ライブでの収録ではカメラ切替程度しかできないわけですが、 カットのつなぎで舞台ではできない場面転換をしたり、 過去や将来の場面の断片を挿入するといった劇映画的なフラッシュバック/フォワードでも使われていました。 しかし、それだけでなく、舞台装置を作り込み照明演出した中で衣装を着ての演技と、 フラットな照明に剥き出しの舞台での稽古の服装での演技を捉えた演技で、同一場面を撮ってカットバックで繋いだところなど、 リアリズム的な表現に対する異化作用も意識しつつ、それでも変わらない演技や演出の本質を際立ささせて見せるよう。 そこに劇映画にも演劇にも無い面白さを感じました。

Romeo and Juliet の解釈という意味では、 オリジナルの台本に忠実というわけではなく、舞台を現代に置き換え、100分という上映時間に収まるよう大幅に省略されたもの。 といっても、自分ですら知っているような有名な場面や台詞はきっちり押さえ、物語の展開に無理は感じられませんでした。 映画館での上映で観ましたが、HD TV放送 (イギリスでは Sky Arts、アメリカでは PBS) を家で観ることを想定したと思われる、テンポ良い作りでした。 オリジナルからの改変箇所で印象に残ったのは、Juliet の両親の男女の役割が入れ替えられていて、 Lady Capulet が家長的な役割を担っていたこと。 その結果、Juliet については、家父長制的な抑圧の話ではなく、結婚をめぐる母娘の対立の話になったようでした。 Romeo の側も親の存在が薄く、Montague 家と Capulet 家の対立の構図は残しつつも、家の縛りという面は薄められていたよう。 そんな点も現代的に感じられました。

今までに観たことの無いような表現方法を楽しみましたし、 最後は涙するくらい物語にも没入でき、とても良かったとは思います。 しかし、COVID-19パンデミック下での表現の実験の妙、という面もあり、 このスタイルの映像化で他の作品も観てみたいかというと、 たまにやるのは面白いかもしれませんが、定番のスタイルにして欲しいというほどではありません。 むしろ、この Romeo and Juliet の有観客での上演を、 通常の劇場中継的なスタイルの National Theatre Live で観てみたいものです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3975] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 30 19:57:59 2022

今週末の土曜は昼前に川崎へ。一年半ぶりに映画館で Met Live in HD を観てきました。

from Metropolitan Opera House, 2021-10-23.
An opera by TerLence Blanchard. based on the book by Charles M. Blow. Libretto by Kesi Lemmons.
Co-directors: James Robinson & Camille A. Brown.
Set Designer: Allen Moyer. Costume Designer: Paul Tazewell. Lighting Designer: Christopher Akerlind. Projection Designer: Greg Emetaz. Choreographer: Camille A. Brown.
Cast: Will Liverman (Charles), Walter Russell III (Char'es-Baby), Latonia Moore (Billie), Angel Blue (Destiny / Loneliness / Greta), et al.
Conductor: Yannick Nézet-Séguin.
World Premiere: Opera Theatre of Saint Louis, June 15, 2019.
A co-production of the Metropolitan Opera, LA Opera, and Lyric Opera of Chicago.
Commissioned by the Metropolitan Opera. Originally commissioned by Opera Theatre of Saint Louis, co-commissioned by Jazz St. Louis.
上映: 109シネマズ川崎, 2022-01-29 11:35-15:10 JST.

COVID-19により Season 2019-20 後半から約1年半休館していた Metropolian Opera ですが、 去年10月に Season 2021-22 が開幕して、Live in HD も再開したので、その今シーズン第2作を観てきました。 Metropolitan Opera 初の黒人作曲家による新作オペラの上演というのが話題のようですが、 ジャズや映画音楽の文脈でも活動するとは言え Terence Blanchard はほとんどノーチェックで、 むしろ、Season 2019-20 の George Gershwin: Porgy And Bess [鑑賞メモ] を手がてた James Robinson & Camille A. Brown の演出という興味で、観ました。

原作は1970年生、The New York Times にコラムを持つジャーナリスト/コラムニスト Charles M. Blow の自伝で、 ルイジアナ州北部のギブスランドでの貧しい生い立ちから、奨学生として Grambling State University に通うようになるまでを描いています。 少年期に受けた従兄弟から受けた性暴力のトラウマからの回復、 相手を許すというより捨て置くことによる癒やしの物語が大きなテーマになっていますが、 マチズム色濃い故郷の兄たちや大学のフラタニティ Kappa Alpha Psi への馴染めなさを抱えつつ馴染もうとする葛藤なども丁寧に描かれていました。

正直に言えば、少年期を描いた第1幕は少々説明的にストレートプレイ的な場面描写が続き退屈したのですが、 ダンスなども使い象徴的な描写のウェイトが増した大学進学以降の第2, 3幕は引き込まれました。 原作が自伝でこの作品に望むべくもないとは思うのですが、周囲の状況と主人公の間の葛藤が丁寧に描かれる (周囲の状況を Destiny / Loneliness / Greta として人格化すらしている) 一方、 主人公の Charles 以外の登場人物の描写が浅く感じられ、 性格や思惑の違う人々のすれ違いや衝突が生むドラマという点では物足りなく感じました。 Porgy And Bess が良かったので期待が大き過ぎたのかもしれません。

Blanchard のバックグラウンドからして、ジャズや教会音楽 (ゴスペル) の要素を随所に感じましたが、 ミュージカルのようなキャッチーなリズムやメロディは避けられていたでしょうか。 音楽的にはあまりツボにははまらなかったのですが、 同じような歌詞を様々な場面で変奏しているのが、効果的に感じられました。 特に、「愛していると言って」「当たり前だろう」と答えるようなやり取り (正確な歌詞を失念しましたが) をそれまでに何回も出てくるだけに、 ラストに「愛していると言って」に「愛している」と答えるのが生きていました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

COVID-19オミクロン株の感染爆発で、東京都、神奈川県などには まん延防止等重点措置が 1月21日から2月13日まで発令されている状態。 美術館の一部休館や、関係者の感染による公演中止もある中、こうして映画館で観られるだけでも幸いです。 自宅と映画館を往復するだけになってしまうというのは少々残念ですが、仕方ありません。 というか、ここまで感染者が増えると、帰りに一杯やってくような気分にもなれないのですが。

[3974] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sat Jan 29 19:24:56 2022

先週末の土曜は昼に竹橋へ。この展覧会を観てきました。

100 Years of Mingei: The Folk Crafts Movement
東京国立近代美術館 企画展ギャラリー, 2Fギャラリー4
2021/10/26-2021/02/13 (月休;1/10開;12/28-1/1,1/11休), 10:00-17:00 (金土 -20:00).

戦間期日本で興った民藝運動の、その戦後までの展開を辿る展覧会です。 民藝運動が取り上げた工芸品を展示するというよりも、その関連資料からその活動を浮かび上がらせる展覧会でした。 展示は、1Fの企画展ギャラリーだけではなく、 通常は企画展とは別のコレクションに基づく企画展示を行っている2Fギャラリー4も会場にした大規模なもの。 日本民藝館には何回か行ったことがあり、民藝運動についての予備知識はそれなりにあったつもりでしたが、 これだけの資料をまとめてとなるとかなり見応えありました。

民藝運動の先駆的な動きとして、柳 宗理も参画した同人『白樺』の創刊 (1910年) から展示が始まるのですが、 これを見て、偶然ながら読んだばかりだった 山室 信一 『モダン語の世界へ:流行語で探る近現代』 (岩波新書 新赤版1875, 2021) で 「モダン語の時代」の始まりを1910年に置いていた事を思い出しました。 この展覧会の展示も、ローカル色濃く匿名性の高い伝統的な工芸品を愛でる視線ではなく、 それをメタにみて民藝運動を近代化と表裏一体のものとして描くような展示で、 モダン語との同時代性を強く意識しながら興味深く観ることができました。

全体としては、運動を立ち上げる時期を扱う前半よりも、多様化し拡散していく様を描いた後半が興味深かったでしょうか。 第4章「民藝は「編集」する 1930年代〜1940年代」では、 雑誌記事などで使われた写真のトリミングから何を見せようとしていたのか浮かび上がらせていました。 民藝運動の人たちの服装にも着目していて、ツイードのスーツ姿での調査旅行と、 作業着としての作務衣が同居しているのも、彼らの志向をよく現ししているよう。 当時の満州事変〜日中戦争の状況を考えると意外ではないのですが、 第5章「ローカル/ナショナル/インターナショナル 1930年代〜1940年代」で沖縄、アイヌ、朝鮮だけでなく 台湾や満洲・中国北部までスコープに入れていたということに気付かされました。 また、戦後の展開を扱った第6章「戦後をデザインする–衣食住から景観保存まで 1950年代〜1970年代」では 外食産業との関わりにも焦点が当てられていたのですが、ビフテキやしゃぶしゃぶの普及にも関わりがあったというのは、意外でした。

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観るのに3時間かかるという事前の噂を耳にして、覚悟して臨んだのですが、 流石にそこまでの時間はかけませんでした。 が、やはり2時間はゆうにかかる規模だったでしょうか。ふう。 観終わった後は、カフェ・喫茶店の類の選択肢が多く、 レコード/CDショップや書店をひやかしたりもできる神保町まで軽く散策したのでした。

[3973] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Jan 18 22:08:53 2022

土曜の午後、新国立劇場でバレエを観た後は隣のオペラシティの美術館へ。この展覧会を観てきました。

Miquel Barceló
東京オペラシティアートギャラリー
2022/01/13-2022/03/25 (月休,2/13休), 11:00-19:00.

地中海西部に浮かぶスペイン・バレアレス諸島はマヨルカ島の出身で1980年代以降、現代美術の文脈で活動する作家 Miquel Barceló の展覧会です。 通常はコレクション展示室に使っているギャラリーまで使った大規模な個展でした。 グループ展などで観る機会はありましたし、 この展覧会で展示されていた Joseph Nadj とのパフォーマンスのビデオも観たことありましたが [鑑賞メモ]、これだけまとめて作品を観たのは初めて。

活動開始時期は Minimal 以降ですが、Post-Modernism というほど作風はコンセプチャルではなく、 伝統的な絵画や立体作品 (陶) の延長、むしろ、 1950年代の抽象表現主義 [関連する鑑賞メモ] や アンフォルメル [鑑賞メモ] へ回帰するような作風です。 そういう作家を取り上げるあたりも、東京オペラシティアートギャラリーらしいです。 特に、キャンバス自体や、絵具 (油だけでなく繊維質のつなぎが混ぜられていると思われる) が立体的に盛り上がったキャンパスの荒々しさは、見応えありました。

Random Walk on the Multi-layerd World
NTTインターコミュニケーション・センター
2022/01/15-2022/02/27 (月休,2/13休), 11:00-18:00.
相川 勝, 青柳 菜摘 + 佐藤 朋子, うしお 鶏, 臼井 達也, 海野 林太郎, 谷口 暁彦, Hosni Auji, Szeman Petra.

オンライン会議ツールやVRチャット、オンラインゲームのライブイベントなど オンラインでのコミュニケーション環境の浸透による多層的な情報環境をテーマにした展覧会です。 2019年の『イン・ア・ゲームスケープ』展 [鑑賞メモ] に近いスコープですが、よりFPS/TPS的な視点やVR的なものに寄っていました。 『イン・ア・ゲームスケープ』展ほど興味深く感じられなかったのは、 オンライン会議ツールは日常的に使っているとはいえ、 VRチャット、オンラインゲームなどとは縁の無い生活をしているからでしょうか。

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[3972] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 17 23:08:02 2022

先の週末土曜は、昼に初台へ。劇場初詣してきました。

The National Ballet of Japan: New Year Ballet (2019/2020 Season)
新国立劇場オペラパレス
2021/01/15, 14:00-16:00.
指揮: 冨田 実里; 管弦楽: 東京交響楽団.
[第1部]
Theme and Variations.
Choreography: George Balanchine.
Music: Pyotr Ilyich Tchaikovsky.
初演: 1947 (Ballet Theatre), 2000 (新国立劇場).
美術: 牧野 良三; 衣装: 大井 昌子; 照明: 磯野 睦.
出演: 柴山 紗帆, 渡邊 峻郁.
[第2部]
"Still Life" at the Penguin Café
『ペンギン・カフェ』
Choreography: David Bintley
Music: Simon Jeffes.
Set & Costume Designer: Hayden Griffin. Lighting Designer: John B. Read.
Premiere: 8 March 1988, The Royal Ballet, Royal Opera House, Covent Garden; 2010年10月27日, 新国立劇場.
出演: 広瀬 碧 (The Great Auk [ペンギン]), 米沢 唯, 井澤 駿 (Utah Longhorn Ram [ユタのオオツノヒツジ]), 福田 圭吾 (Texas Kangaroo Rat [テキサスのカンガルーネズミ]), 奥田 花純 (Humboldt's Hog-nosed Skunk Flea [豚鼻スカンクにつくノミ]), 奥村 康祐 (Southern Cape Zebra [ケープヤマシマウマ]), 本島 美和, 貝川 鐵夫, 坂本 藍菜 (Now Nothing [熱帯雨林の家族]), 福岡 雄大 (Brazilian Woolly Monkey [ブラジルのウーリーモンキー]), 他.

去年は新型コロナウイルス検査で関係者から陽性反応が出て直前に公演中止で 無観客配信となってしまった新国立劇場バレエ団の正月公演 [鑑賞メモ]。 今年も、演目の変更、指揮者の変更に続いて、年明け早々オミクロン株で感染者急増。 直前に関係者から感染者が出たもの、その他の公演関係者に対して検査で陰性を確認し、なんとか開催へ漕ぎ着けました [お知らせ]。 というわけで、15日のマチネで「劇場に初詣」を楽しんできました。

第1部は Balanchine の Theme and Variations。 古典バレエの身体語彙に疎いということもあって、 同年に初演された Le Palais de Cristal [鑑賞メモ] のコンパクト版の趣もあるシンフォニック・バレエです。 こういう、抽象的に集団での技術で見せるバレエも、このバレエ団らしいでしょうか。 正月気分に合ったゴージャスさを楽しみました。

第2部は、新制作で予定されていた Frederic Ashton: The Dream からの演目変更で上演されることになった、 David Bintley: "Still Life" at the Penguin Café。 去年の『ニューイヤー・コンサート』の上演配信で観たものとキャストもかなり被りますが [鑑賞メモ]、こうして生で観られて、感慨もひとしお。 おしゃれだったりユーモラスだったりする展開から、ラストの破局的な展開への転換が見事。 酸性雨の嵐の場面は、配信より生の方が、人々(というか、動物たち)を浮かび上がらせる照明も美しく、ダンサー達の動きもよりドラマチックに感じられました。 また、バレエ用にオーケストラ編曲された Penguin Cafe Orchestra の曲も、 チューバがベースラインを吹くような展開もあり、 弦中心のオリジナルと比べ、ブラスの音を効かせたアレンジだったことに気付かされました。 Humboldt's Hog-nosed Skunk Flea [豚鼻スカンクにつくノミ] の場面で舞台中央に落ちた帽子を、 次の Southern Cape Zebra [ケープヤマシマウマ] の場面で シマウマ 奥村 とゼブラガール 米沢 の見事な連携で回収するなど、 ハプニングに対する絶妙なフォローを見られたのも、生ならではでしょうか。

新国立劇場バレエ団はなんとか開催されましたが、 翌週の Batsheva Dance Company: Hora @ 菜の国さいたま芸術劇場 [公演情報] も、 2月頭の William Forsythe: Three Quiet Duets @ Bunkamura オーチャードホール [公演情報] も中止。 まだしばらくは、海外招聘公演は厳しそうです。

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[3971] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Jan 11 22:52:56 2022

先の三連休初日土曜に東京現代美術館に貼ってあったポスターで会期末だと気付いたので、 中日の日曜は、急遽予定を変更して、昼過ぎに佐倉へ、この展覧会を観てきました。

Minimal/Conceptual: Dorothee and Konrad Fischer and the Art Scenes in the 1960s and 1970s
『ミニマル/コンセプチュアル: ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960–70年代美術』
DIC川村記念美術館
2021/10/09-2022/01/10 (月休,12/25-1/1休,1/3開,1/10開), 10:30-16:00.
Carl Andre, Dan Flavin, Sol LeWitt, Bernd & Hilla Becher, Hanne Darboven, On Kawara [河原 温], Robert Ryman, Gerhard Richter, Blinky Palermo, Daniel Buren, Richard Artschwager, Marcel Broodthaers, Lothar Baumgarten, Richard Long, Stanley Brouwn, Jan Dibbets, Bruce Naumann, Gilbert & George.

1960年代末、Minimal Art から Conceptual Art への流れの拠点の一つに ドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州デュッセルドルフの Fischer Gallery がありました。 そのギャラリーの Dorothee & Konrad Fischer 夫妻が Kunstsammlung Nordrein-Westfalen (ノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館) へ 寄付したコレクションに基づく展覧会です。 1967年のオープンから約10年間 (一部例外はありますが) の作品やギャラリーと作家の間の手紙、葉書などの資料が展示されていました。 Minimal Art の後に Conceptual Art が来たということは知っていたつもりですし、 この展覧会の出展作家の中には、 美術館のコレクション展示の中でだけでなく、 美術館レベルの個展を観たこともある作家もそれなりにいました。 しかし、1967年からの10年に焦点を絞っていることもあり、 Minimal Art の中から Conceptual な作品が立ち上がって行く様を追体験するような興味深さのあった展覧会でした。

特に良かったのが、最初の方の Carl Andre や Sol LeWitt に関する展示。 Minimal Art の作品を観ているとその単純な形状から物そのものの質感などに惹かれがちなのですが、 作家がギャラリーに出した展示の指示などを通して、展示されている作品は実世界での仮の姿で、 その向こうにある物に依存しない純粋な幾何学的形状に作品の本質が見ていたことを浮かび上がらせていました。 そんな資料と合わせて改めて Sol LeWitt の Structure (1, 2, 3, 4, 5 as a square) (1978-90) や Carl Andre の Cloud & Crystal / Lead Boday Grief Song (1996) を観ると、なるほどそうだ、と。 特に、Sol LeWitt の作品は正方形は枠のみで示されており質感的なフェチシズムを避けようという意図すら感じられました。 そして、そこから Conceptual Art は直ぐだということにも気づかされました。 このように、資料と具体的な作品を併せ観ながら、 Minimal Art から Conceptual Art への理路の一つをそれなりの実感を持って追うことができたのが、 この展覧会の収穫でした。

以降の展示は、post-Minimal としての Conceptual Art の方向性の幅、多様性を観るようでもありました。 直前に観た 久保田 成子 展 [鑑賞メモ] の Fluxus や Sonic Arts Union の資料ほど 直接的にカウンターカルチャーの影響が見えるわけではなく、 Minimal Arts からの流れもあってビジュアル的にもシンプルが作品が中心でしたが、 時代は1967年以降ということで、Marcel Broodthaers をはじめ、やはりコンセプトの中にカウンターカルチャーの影響を少なからず感じもしました。

Gerhard Richter [鑑賞メモ]、 Daniel Buren [鑑賞メモ]、 Richard Long [鑑賞メモ] や Bernd & Hilla Becher など好きな作家の作品もありましたが、 今まで特に気に留めてなかった作家の中では Jan Dibbets の写真を使った作品の良さに気付かされました。 Perspective Corrections シリーズのような遠近法を逆手にとったトリッキーな写真や、 パノラマ的に写真をつなぎ合わせた写真など、構造へ意識を向けた写真作品は、 Bernd & Hilla Becher の写真よりも、 Sol LeWitt ような Conceptual Art の先駆体となった Minimal Art の作品と 畠山 直哉 [鑑賞メモ] や Andreas Gursky [鑑賞メモ] などの コンセプチャルな現代写真を繋ぐもののように感じられました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

日曜は昼前に家を出たのですが、往路は横須賀線車両点検による運行遅延に巻き込まれ片道3時間超。 まともな昼食もとれず、途中で心が折れかけました。 佐倉も、順調であれば、武蔵小杉から乗換無しでグリーン車で快適に行かれる所なのですが……。 そんなこともあって、三連休最終日はぐったり。休養に宛てたのでした。 というか、翌日は休みという精神的な余裕があったおかげで、美術館に着いてからは展示に集中できました。

[3970] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jan 10 21:15:34 2022

この週末三連休の土曜は、昼前に清澄白河というか木場公園へ。 元旦1, 2日は実家へ行っており、3日は月曜休館にぶつかってしまい、遅れ馳せながら美術館初詣してきました。

Christian Marclay: Translating
東京都現代美術館 企画展示室1階
2021/11/20-2022/02/23 (月休;1/10,2/21開;12/28-1/1,1/11休), 10:00-18:00.

本来の再生方法とは異なるレコードの演奏で1970年代末から知られる Christian Marclay の回顧展です。 自分が Christian Marclay を知ったのは1980年代にやはりそんな jazz/improv の音楽の文脈でしたが、 合わせてレコードやジャケットを物としてコラージュした美術作品も知る機会はありました。 そんな1980年代の音、ビデオ、美術作品をグループ展の中で観る機会は度々ありましたが、これだけまとまった形で観るのは初めて。 複数のレコードをはぎ合わせた Recycle Records (1979-1986) にしても、 写真や単品で観る機会はこれまでにもありましたが、 はぎ合わせのパターンの複雑さやそのバリエーション、複雑な曲線パターンを切り出してはぎ合わせる丁寧さに気づかされたりもしました。

今回の展覧会では、むしろ、2000年代に入ってからのビデオ作品の良さを実感しました。 Marclay のビデオ作品の良さに気付いたのは『ヨコハマトリエンナーレ2011 世界はどこまで知ることができるか?』で観た The Clock (2010) で [鑑賞メモ]。 この展覧会でも、映画中で登場人物が演奏する音楽や歌う歌、立てる物音にまつわる場面を4チャネルビデオ作品にした Vidoe Quartet (2002) が展示されていました。 映画中の場面の音を継ぎ合わせて Marclay 流の音楽を作っているような感もあり、 コンセプチャルな The Clock よりもとっつき易く、その原点を観るようでした。 その一方で、音楽に題を採っていたせいか、日本や中国の映画も含まれているものの、やはり欧米の映画が中心で、 東アジア以外のアジアや中東、アフリカと言ったエリアの外され具合にも気付かされてしまいました。

マンガで使われているオノマトペの文字をコラージュした作品も、オーソドックスなコラージュや巻物や掛軸にした作品にはあまりピンとこなかったのですが、 多くの文字を四方の壁に動かしつつ投影する Surround Sounds (2014-2015) では、 視覚的な強弱やうるささを実感することができました。 音楽レビュー文のコラージュを展示の都度に翻訳して展示する Mixed Reviews (2021) も、 会場の最後に展示されていた手話の動画のバージョンが、手話が理解できないだけに抽象的なダンスのように感じられました。

Viva Video! - The Art and Life of Shigeko Kubota
東京都現代美術館 企画展示室3階
2021/11/20-2022/02/23 (月休;1/10,2/21開;12/28-1/1,1/11休), 10:00-18:00.

1960年代からハイレッド・センター、そして渡米後に Fluxus などの芸術運動に参加し、 1970年代後半以降は立体作品中にビデオ作品を組み込む「ビデオ彫刻」の作品で知られる 久保田 成子 (1937-2015) の回顧展です。 Fluxus の展覧会 [鑑賞メモ] やコレクション展中での「ビデオ彫刻」など、観る機会はそれなりにありましたが、 回顧展という形でまとめて観たのは初めてです。 Fluxus 時代や、その後の David Behrman / Sonic Arts Union 界隈の資料も、 時代が感じられて感慨深いものがありました。

しかし、白 南準 [Nam June Paik] のパートナーとなって以降、 1970年代後半のビデオ彫刻以降が良かったでしょうか。 今でこそビデオインスタレーションとして一般的になっていますし、 小型カメラや液晶ディスプレイ、プロジェクタなどの扱いやすい装置が多くありますが、 ブラウン管の物としての大きさをどう扱うかの試行錯誤が面白く感じられました。 例えば、下向きに吊るしてその反射を観るような作品は、プロジェクタでは意味ないですし、 薄く軽い液晶ディスプレイを使って雰囲気が出ないと思われる、 体積と重量のあるブラウン管らしい展示方法に感じられました。

Eugene Studio: After the rainbow
東京都現代美術館 企画展示室地下2階
2021/11/20-2022/02/23 (月休;1/10,2/21開;12/28-1/1,1/11休), 10:00-18:00.

アメリカ生まれで日本を拠点に活動する 寒川 裕人 [Eugene Samukawa] によるアーティストスタジオ Eugene Studio の2010年代以降の作品からなる個展です。 グループ展などで観たことはありますが、最近の現代アートをほとんど追えていないので、まとめて観る良い機会だったでしょうか。 といっても、2000年代以降の現代アートらしく、コンセプト重視で絵画、立体、写真、ビデオ、大規模インスタレーション、写真、ビデオなど様々なスタイルの作品を作っています。 確かに、四方をガラス張りし底に白砂を敷いた広い空間に水を張った「海庭」など力技の美しさでした。 しかし、まるでグループ展を観ているような多様な作風で、こだわりのポイントの捉え所なさが、漠とした印象となってしまった一因かもしれません。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

COVID第5波が終束した10月から年末まで平穏な日々が続いていましたが、正月早々第6波が立ち上がり急速に感染拡大。 企画展は休館対象外ながら都立の美術館・博物館は1月11日より休館の対象、動物園、水族園、有料庭園、植物園も休園になります [『美術手帖』の記事]。 これから1ヶ月程度は状況は悪化する一方でしょうし、観られるうちに行っておこう、ということもありました。

[3969] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jan 2 23:41:42 2022

2021年に歴史の塵捨場 (Dustbin Of History)に 鑑賞メモを残した展覧会やダンス演劇等の公演の中から選んだ10選+α。 おおよそ印象に残った順ですが、順位には深い意味はありません。 2021年もCOVID-19パンデミックの影響で観ることが多かった 劇場での上演を収録したストリーミングや上映、DVDは番外特選として選んでいます。 音楽関連は別に選んでいます: Records Top Ten 2021

第一位
Spike Lee: David Byrne's American Utopia 『アメリカン・ユートピア』 (映画)
Participant, River Road Entertainment and Warner Music Entertainment present A 40 Acres And A Mule Filmworks, Todomundo Production and RadicalMedia Production, 2020 (日本公開, 2021)
[鑑賞メモ]
第二位
Noism0 + Noism1 + Noism2 『春の祭典』 (ダンス)
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール, 2021/07/23
[鑑賞メモ]
第三位
Zabou Breitman et Eléa Gobbé-Mévellec: Les Hirondelles de Kaboul 『カブールのツバメ』 (映画)
Les Armateurs (France), Mélusine Productions (Luxembourg), Close Up Films (Switzerland), 2018 (2021/10/10 特別上映 @ Bunkamura ル・シネマ)
[鑑賞メモ]
第四位
松江 泰治 『マキエタCC』 (写真展)
東京都写真美術館 2F, 2021/09/24-2022/01/23
[鑑賞メモ]
第五位
『ファッション イン ジャパン 1945-2020 ― 流行と社会』 (デザイン展)
国立新美術館 企画展示室1E, 2021/06/09-2021/09/06
[鑑賞メモ]
第六位
カンパニーデラシネラ 『はだかの王様』 (ダンス/マイムシアター)
滝野川会館 大ホール, 2021/03/28
[鑑賞メモ]
第七位
Mark Manders: The Absence of Mark Manders 『マーク・マンダース—マーク・マンダースの不在』 (美術展)
東京都現代美術館 企画展示室 3F, 2021/3/20-2021/06/22
[鑑賞メモ]
第八位
Pipilotti List Your Eye Is My Island 『あなたの眼はわたしの島』 (美術展)
水戸芸術館現代美術ギャラリー, 2021/09/18-2021/10/17
[鑑賞メモ]
第九位
Roni Horn: When You See Your Reflection in Water, Do You Recognize the Water in You? (美術展)
ポーラ美術館, 2021/09/18-2022/03/30
[鑑賞メモ]
第十位
Raphaëlle Boitel: Fierce 5 [5es Hurlants] 『フィアース5』 (サーカス)
世田谷パブリックシアター, 2021/10/09
[鑑賞メモ]
番外特選1
Jonathan Watkins (dir./choreo.), Northern Ballet: 1984 @ The Palace Theatre, Manchester (バレエ / DVD)
Opus Arte, 2018
[観賞メモ]
番外特選2
Claus Guth (dir.), The Royal Opera, Leoš Janáček (comp.): Jenůfa @ Royal Opera House (オペラ / streaming)
OperaVision, 2021/10/09-2021/11/09
[観賞メモ]
番外特選3
Sally Cookson (dir.), Jane Eyre 『ジェーン・エア』 @ Lyttelton Theatre (演劇 / event cinema)
National Theatre Live, 2015
[観賞メモ]
番外特選4
『NOBODY KNOWS チャーリー・バワーズ』 (映画特集上映)
NPO法人プラネット映画保存ネットワーク, 2021/11
[観賞メモ]

[この鑑賞メモのパーマリンク]