TFJ's Sidewalk Cafe >

談話室 / Conversation Room

TFJ's Sidewalk Cafe 内検索 (Google)
[4007] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jun 13 22:35:35 2022

先の週末土曜は、午後に清澄白河というか木場公園へ。この展覧会を観て来ました。

東京都現代美術館 企画展示室3階
2022/03/19-2022/06/19 (月休;3/21開;3/22休), 10:00-18:00.
藤井 光, 山城 知佳子.

東京都と Tokyo Arts and Space (TOKAS) が始めた現代美術の賞 Tokyo Contemporary Art Award (TCAA) の第2回受賞者の展覧会です。 去年の第1回はピンと来なかったのですが [鑑賞メモ]、 今回は歴史的な出来事や現在の社会の問題に対するリサーチに基づくインスタレーションという方向性も感じられるものになっていました。

藤井 光 の2作品は、 1946年に東京都美術館で占領軍関係者向けに開催された戦争画の展覧会に取材したインスタレーションで、 2作品合わせて1つのインスタレーションとも取れる展示でした。 《日本の戦争画》 (2022) はこの展覧会に出展された絵画の作家、タイトルとそのサイズのみを復元して、 ミニマリズムの絵画やサイズを示すだけの板や布などの掲げたミニマリズム以降のコンセプチャルな絵画の展覧会として再現したかのよう。 その一方で、《日本の戦争美術》 (2022) は展覧会当時の関係者のやりとりを読み上げた音声と、 作品が白黒で記録されたマイクロフィルムから作ったビデオからなるインスタレーション。 《日本の戦争美術》に、「美術的な価値があるのか、単なるプロパガンダなのか、見てみないとわからない」のようなやりとりが出てくるのですが、 《日本の戦争画》のサイズ感だけで具体的イメージがない展示や、 《日本の戦争美術》の顕微鏡で一部だけ覗き見ていくかのようでどんな絵画なのかなんとも掴み難いビデオを観ていると、 実際に観ることなしに判断することのむずかしさを実感させるよう。 そんな興味深さを感じた作品でした。

もう一人の 山城 知佳子 は、去年に東京都写真美術館で個展を観たばかり [鑑賞メモ]。 インスタレーションとしてではなく劇場版でですが、 《肉屋の女》 (2012), 《チンビン・ウェスタン 家族の肖像》 (2019) は観ていたので、 むしろ、インターリュード的に置かれた ナラティヴではなく抽象度が高い液晶絵画的な映像作品の新作《彼方》 (2022) に、 こういう作風もあったのかと、興味を引かれました。

企画展示室1Fでは 『吉阪隆正展ひげから地球へ、パノラみる』。 戦後から1980年代にかけて活動した建築家の回顧展です。 回顧展とはいえ、こんなに人物像に焦点を当てた建築展は、あまり観た覚えがありません。 Le Corbusier に師事しただけあるモダニズム的な作風と、 冒険家としての活動なども含めた全体としての緩さ –– 多分に戦後高度成長期だから成立したように思いますが –– を感じる展示に、分裂を感じました。

企画展示室地下2Fでは 『生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展』。 特撮監督 円谷 英二 を支えた特撮美術監督としてキャリアを始めた 井上 泰幸 の回顧展です。 去年、国立映画アーカイブ展示室で観た『生誕120年 円谷英二展』 [鑑賞メモ] くらいの規模であれば、 特撮映画に疎い自分でも鍵となる仕事など掴みやすかったのでしょうが、 その数倍はあろう大規模な展示は、逆に取り付く島もありませんでした。 しかし、そんな中では、円谷や井上の特撮の進め方の解説はとても興味深く、 絵コンテを元にその撮影に必要となる美術を作るのではなく、 台本から絵コンテと美術を並行して作っていたというエピソードに、 この製作陣の一体感というか、強みを見るようでした。

コレクション展示室では 『MOTコレクション 光みつる庭/途切れないささやき』。 3階の最初の展示室が「刻むことから」と題が付けられ、 駒井 哲郎、浜田 知明 等の戦後版画を集めた展示室になっていました。 それも、集められていたのが、エッチングやメゾチントで細かく描かれ白黒で剃られた銅版画が主。 こうして集められて観ると、見応えがありました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4006] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jun 12 18:19:04 2022

先週末土曜、初台で午後に美術展を観た後、早めに夕食して、隣の歌劇場に移動。このソワレを観てきました。

Alice's Adventures in Wonderland
新国立劇場 オペラパレス
2021/06/04, 18:30-21:30.
Choreograhy: Christopher Wheeldon.
Music: Joby Talbot; Set and Costume Designer: Bob Crowley; Senario: Nicholas Wright; Lighting Designer: Natasha Katz; Projection Designer: Jon Driscoll, Gemma Carrington; Puppetry Designer: Toby Olié.
Premier: 28 February 2011, Royal Opera House.
出演: 小野 絢子 (Alice), 福岡 雄大 (Jack / The Knave of Hearts), 中島 瑞生 (Lewis Carroll / The White Rabbit), 木村 優里 (Mother / The Queen of Hearts), 貝川 鐵夫 (Father / The King of Hearts), Jarryd Madden (Magician / The Mad Hatter), etc
指揮: Nathan Brock; 東京フィルハーモニー交響楽団.
制作: 新国立劇場; 共同制作: The Australian Ballet.

Royal Ballet が Christopher Wheeldon の振付で2011年に 『不思議の国のアリス』 (Lewis Carroll: Alice's Adventures in Wonderland, 1865) をバレエ化した作品です。 新国立劇場バレエ団がアジアで唯一の上演権を得て2018年11月に上演、 2020年にも予定されていたもののCOVID-19の影響で中止、やっと再上演が実現したというものです。 2014年に Royal Opera House cinema (ROH cinema) で観たことがありましたが [鑑賞メモ]、 生で観てみるのも良いかと、足を運んでみました。

ROH cinemaで観た時はプロジェクション・マッピングなど駆使したトリッキーな演出に目が行きがちだったのだと気付かされました。 客席から舞台を生で観ているとその印象が薄まって、むしろ、その動きや構成のオーソドックスなバレエらしさを実感しました。 ソロやパ・ド・ドゥ、ディヴェルティスマンにあたる場面はもちろん、 ROH cinema ではほとんど印象に残らなかった群舞、特に flower waltz の美しさや cards の面白さに気付くことができたのは、 舞台全体を把握しやすい劇場での鑑賞ならではでしょうか。

既に一度観ているせいか、生で観たからかは判断しかねますが、観ていて物語もスッと入ってきました。 冒頭の場面で、Alice と Jack の関係が、単なる恋仲というだけでなく、 お屋敷住まいのお嬢様 Alice と邸の雇いの庭師 Jack という身分違いの恋であり、 それゆえに母親は Jack を解雇して追い出す、という設定だったことに気づきました。 これは典型的なメロドラマ設定、それがどう生かされていたのか、改めて期待しながら観ていたのですが、 結局その設定は生かされることなく、結末は現代の女性が見た夢でしたという落ち。 現代にはそんな身分差は関係ないということの表現なのかもしれませんが、ちょっと肩透かし感もありました。

Royal Opera House cinema, National Theatre Live, Met Live in HD など、 それなりに観るようになってから8年ほど経ちますが、 上映で観た作品を、上演カンパニーは異なるものの同じ演出で、生で観たのは、これが初めてです。 上映からも伝わる事は多くあるということを実感する一方、 その違いというか、生で劇場で観てこそという事もある、ということを実感しました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

こういう公演は子連れファミリー客にこそ観ていただきたい、と、自分はマチネではなくソワレにしたのですが、 意外にもソワレにも子供の観客が結構いました。 そんなものなのかー。終演21:30頃なんですけどね。

[4005] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sat Jun 11 11:34:07 2022

先週末土曜は、午後遅めに初台へ。この展覧会を観てきました。

Toko Shinoda: a retrospective
東京オペラシティ アートギャラリー
2022/04/16-2022/06/22 (月休, 5/2開), 11:00-19:00.

第二次世界大戦後に前衛書 (前衛的な書) の文脈を活動を始め、 1950年代以降、同時代の抽象表現主義との類似性もあって国際的にも注目され、1956年から2年間、渡米。 2021年に107歳で亡くなった 篠田 桃紅 の回顧展です。 美術館のコレクション展かホール等の壁画・レリーフなど、どこかで観たことがあるはずですが、 これだけまとめて観たのは初めてでした。 伝統的な書に近い作品もありますが、筆跡の密度低く大胆に太い色面を多く描くあたりは、 Action painting というより Color field painting との共通点を感じました。 墨や銀泥でこれだけ微妙で多様な色を出せるのかと思う一方で、 同時代の欧米の絵画とは異なる彩度の低い落ち着いた雰囲気も良かったです。 また、そんな色調の中に加えられる朱に、生々しさ、色気を感じられる時もありました。

そんな作品の雰囲気を楽みましたが、興味深く見られたのは、 ビデオ上映されていた短編のドキュメンタリー映画 Pierre Alechinsky: Calligraphie japonaise (19657)。 1955年に東京、鎌倉、京都で撮影された書家のドキュメンタリーで、 最後に取り上げられる 篠田 桃紅 をはじめ、伝統から踏み出した前衛的な作風のものが中心。 穂首の長い筆を使い立って書く 篠田 桃紅 の様子など、 あの流れるような文字はこのように書かれていたのか、と。 しかし、看板の活字体ではなく、暖簾やのぼり、提灯などに書かれた書の文字が街中に溢れる様子を捉えた映像に、 伝統的な書が社会的に溢れていた当時の書が置かれた社会的文脈を気付かされました。

また、戦後のモダニズム建築を飾った壁画・レリーフのスライドショー『篠田桃紅と近代建築』を観ていて、 それまでの伝統的な日本建築に飾られた書画に代わって、そして、木造の町家の街並みに溢れた書に対するものとして、 篠田 桃紅 の前衛書は、コンクリート打ちっ放しのような戦後モダニズム絵画を飾るものとして時代に求められたのだろうとも気付かされました。 抽象表現主義の潮流に乗った表現というだけではなく、そんな、日本における受容の文脈について気付きの多い展覧会でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4004] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jun 6 22:44:56 2022

先々週末土曜、烏山で展覧会を観た後は、渋谷宮益坂へ移動。この映画を観てきました。

2018 / Ma.ja.de Fiction (DE), Arthouse Traffice (UA), JBA Production (FR), Graniet Film (NL), Wild at Art (NL), Digital Cube (RO) / colour / DCP / 121 min.
Режисер [Director / Режиссёр]: Сергій Лозниця [Sergei Loznitsa / Сергей Лозница]

2014年ウクライナのマイダン革命を扱った Майдан [Maidan] (2014) などのドキュメンタリー映画で知られる映画監督による、 2014年以降続き、2022年ロシアのウクライナ侵攻の先駆けとなったドンバス戦争を扱った劇映画です。 初めて観る監督で作風に関する予備知識はありませんでしたが、題材的に今観ておいた方が良いと思い、足を運びました。

親ロシア勢力によって実効支配されている地域で起きた、監督がSNS等で知った話に基づく13のエピソードからなります。 登場人物などに重なりを持たせて繋げているものの主人公のような登場人物はなく、 明確なストーリーで描くのではなく、ドキュメンタリー風のエピソードの積み重ねによって、 戦争下の実効支配地域の支配の (1エピソードはウクライナ側の腐敗に関するものでしたが) の不条理な状況を描くような映画でした。 Петровы в гриппе [Petrov's Flu] [鑑賞メモ] のようなマジックリアリズム的な演出はなく、 不条理な現実をグロテスクなまま描くよう。

ロシアによるウクライナ侵攻におけるロシア攻撃占領下での出来事を知ってこの映画を見ると、この現在の戦争を観ているような現実味があります。 ドンバス紛争も2014年の激しい戦闘の後は小競り合いは続くものの日常が戻っていたのだろうと漠然と思っていたのですが、 むしろ、ドンバス戦争から地続きでそれが拡大したようなものだったのだと気付かされました。 しかし、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、ニュースやSNSで観たような映像やシチュエーションが少なからずあり、 映画館のような逃げ場の無い場所で見続けるのはきついものがありました。

Лозниця [Loznitsa] はベラルーシ生まれのウクライナ育ち、ロシアで映画大学へ行き映画を作り始め、 2001年にドイツに移住したという経歴の持ち主です。 公式サイトは英語のみ。 監督の名前や映画タイトルの表記を何語にするのが良いのか悩みましたが、 ウクライナ語をメインにして、英語とロシア語を併記することにしました。 Майдан [Maidan] やこの Донбас [Donbass / Донбасс] で見られるように、 Лозниця [Loznitsa] の立場は明確にウクライナ側だと思うのですが、 この3月にウクライナ映画アカデミーから除名されるという出来事がありました。 ロシアによるウクライナ侵攻にロシア映画ボイコットを行き過ぎだと非難したことが直接的な原因のようですが、他にも複雑な要因があるようです。 (事情に通じているわけではないので、 「不興を買うセルゲイ・ロズニツァ新作『バビ・ヤール・コンテクスト』:自国を代表する映画監督に怒るウクライナの現在」 (Indie Tokyo, 2022/05/20) を紹介するに留めます。)

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4003] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jun 5 17:09:59 2022

先週の土曜は昼に烏山へ。この展覧会を観てきました。

世田谷文学館
2022/04/09-2022/07/03 (月休), 10:00-18:00.

絵本作家デビュー作『りんごかもしれない』 (2013) 以降、絵本作家として知られるようになった ヨシタケシンスケの展覧会です。 2000年代以降あまりチェックしていなかったのですが、 『りんごかもしれない』の人形劇を観て[鑑賞メモ]、 関心が少々高まっていたタイミングだったので足を運びました。 文学館での展覧会ということで、絵本の原画展のような絵本作家の面に焦点を当てた展覧会を予想していましたが、 オブジェの展示はもちろん、展示空間の作りに造形作家としてのセンスが感じられ、期待以上に楽しめた展覧会でした。

展示空間は、塗装などの仕上げをせずに木製ボードが組まれ、 隙間や裏のような空間もあえて作り、原画などもジップロックに入れて展示され、 小物ながら様々なオブジェも並べ、現場用の作業灯が照明に使われたり。 そんな展示空間は、絵本作家やイラストレーターのアトリエというより、造形作家の仮設の制作現場のよう。 1990年代末に展覧会を観た studio BIG ART [鑑賞メモ] の雰囲気とかも思い出されて、 その会場全体の雰囲気がとても楽しく感じられました。

造形作家の時から、ままならさや不条理さを決して攻撃的な形ではなく優しく受容するような造形に仕上げていた感があったわけですが、 イラストレーションや絵本というメディアにすることで、 造形作品では扱いづらいようなささやかな日常から人生まで、 そのままならなさや不条理さを表現できるようになったのかもしれない、と、 造形作品と絵本の原画を並べて見ていて気付かされました。

ままならなさや不条理の受容のあり方を反映した優しい絵は自分も好きではあるのですが、 こういう作品がここまで広く受容されるというのも、 人生のままならなさや不条理感を抱えざるを得なかった閉塞した平成デフレ以降ならではの 表現なのかもしれません。 そんなことを、人生の夢の成就に関する作品の原画を観ていて、考えさせられてしまいました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[4002] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue May 31 21:35:30 2022

先週の火曜は仕事帰りに初台へ。このコンサートを聴いてきました。

東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル, 初台
2022/05/24, 19:00-21:00
Carceri d'Invenzione I for ensemble (1982)
La Chute d'Icare for solo clarinet and chamber ensemble (1987-88)
Contraccolpi for chamber ensemble (2014-15)
Chronos-Aion for ensemble (2008)
Brad Lubman (conductor), Jaan Bossier (clarinet), Ensemble Modern.

2020年、2021年とCOVID-19の影響で中止となり、3年ぶりの開催となった 現代音楽 (contemporary classical) の作曲コンペに合わせて開催されるコンサート『コンポージアム』。 イギリス出身の作曲家 Ferneyhough は名を聞いたことがある程度でしたが、 フランクフルトの現代音楽専門のアンサンブル Ensemble Modern [鑑賞メモ] の来日ということもあって、足を運びました。 2019年は都合が合わず行かれなかったので、実に4年ぶりでした。

『コンポージアム』では曲目解説等のブックレットが毎回配られるのですが、 今回は珍しく曲目解説に楽譜の一部抜粋が掲載されていました。 Ferneyhough は「複雑性」をキーワードに語られる作曲家なのですが、 その、特に1980年代の譜面を見るとそれもなるほどと。 しかし、聴いてそれがわかるかというとまた別問題で、 複雑性を聴けるほど自分の耳の分解能は高くないかもしれない、とも思わされてしまいました。

Ferneyhough の作風なのか、オーケストラより小規模な室内アンサンブル向けの作品だからなのか、 もしくは Ensemble Modern の個性なのか判断しかねましたが、 クラリネットのソロと室内アンサンブルのための曲 La Chute d'Icare でも、 ソロとアンサンブル協奏曲的に掛け合うというより、アンサンブル側も個々の楽器が粒立って聴こえました。 しかし、とっつきやすさは音色の面白さもあった Contraccolpi でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

コンポージアムへ行くというのも2018年以来の4年ぶりでしたが、 平日仕事帰りにコンサート/ライブへ行くということ自体、2019年10月ぶり。 COVID-19だけでなく本業の仕事という面でも、頻繁に足を運べるような状況でもないのですが、 これからもたまには仕事を早めに上げてライブへ行くとかしたいものです。

[4001] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon May 30 23:34:30 2022

先々週末の話になりますが、21日の土曜は昼過ぎに八重洲へ。この展覧会を観てきました。

柴田 敏雄 と 鈴木 理策
Shibata Toshio & Suzuki Risaku: Photography and Painting––From Cézanne
アーティゾン美術館 6階展示室
2022/04/29-2022/07/10 (月休), 10:00-18:00 (金[除4/29] -20:00).

写真家の 柴田 敏雄 [鑑賞メモ, 鑑賞メモ] と 鈴木 理策 [鑑賞メモ, 鑑賞メモ] の2人展です。 今まで作品を観る機会はそれなりにあり、抽象的な画面作りが特徴的で、いずれも好みの写真家ということで足を運びました。

抽象的な画面作りとはいえ、並置されることにより、その差異が際立つのが面白く感じられました。 単純に言えば、柴田の写真が人工的な構造物などをパンフォーカスで撮ってフラットでシャープな画面なのに対し、 鈴木の写真は自然 (水面や雪景色, 花や果実の樹) を焦点深度浅く撮って柔らかく多層的な画面を作ります。 柴田の写真では、遠近短縮法的なアングルや、奥の構造物を手前の構造物が横切るような構図もあるのですが、 それでもパンフォーカスで撮っているこだわりが、鈴木の写真と並置されることで際立っていました。 鈴木の写真は、柴田に比べて作風が多様で、 カメラマンを意識させないようハーフミラー越しで撮ったポートレートのシリーズ “Mirror Portrait” (2016) は、こんなものも撮っていたのかと新鮮でした。 しかし、やはり、焦点深度浅く水面や花,果実をとらえたシリーズの画面の多層感の良さを実感しました。

この展覧会は、アーティゾン美術館のコレクションも交えて展示する「ジャムセッション」の企画でもあり、 印象派〜後期印象派の絵画を中心に選び印象派からモダニズムの抽象絵画へ向かう動きを、 2人の写真の抽象的な画面へのアプローチの手がかりとして示すようでした。 しかし、むしろ、柴田のシャープな白黒画面と、鈴木の焦点深度浅くあちこちボケた雪面を、 雪舟の水墨画という中間的な共通項で繋いだ4階展示室での展示の方が、そこから外れた面白さを感じました。

アーティゾン美術館5階展示室では収蔵作品に基づく展覧会 『Transformation 越境から生まれるアート』。 中でも印象に残ったのは、中国出身で第二次世界大戦後、フランスのアンフォルメル (L'Art Informel) [鑑賞メモ] や アメリカの抽象表現主義 [関連する鑑賞メモ] に近い文脈で活動した Zao Wou-Ki [赵无极/趙無極]。 以前に見た時も色使いの良さを感じたのですが、色使いに透明感があり風景を見ているような立体感があるのが良いと気付かされました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

この後は京橋へ移動、国立映画アーカイブで映画を観たのですが、近さを実感。 アーティゾン美術館へはたいてい東京駅八重洲口からアプローチするのですが、 京橋からのアプローチもありですね。 というか、国立映画アーカイブの後に夕食したい時は八重洲地下街へ行く手もあるな、と。

[4000] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun May 29 17:56:23 2022

5月は国立映画アーカイブで上映企画 『発掘された映画たち2022』が開催されていたので、 週末8日と21日を使って以下の2つの上映と、そして展示室の展示も見ました。

『発掘されたアニメーション映画』
92 min.
『海の宮殿』
1930 / 日本活動写真株式会社 / 監督: 政岡 憲三 / 9 min. / 35 mm / 16 fps / 無声 / 白黒 (着色)
『ちょん切れ蛇』[無声版]
1931 / スミカズ映画創作社 / 監督: 幸内 純一 / 原作: 前川 千帆 / 16 min. / 35 mm / 16 fps / 無声 / 白黒 (着色)
『雲雀の宿替』
1933 / 横浜シネマ商会 / 監督: 村田 安司 / 脚本: 青地 忠三 / 9 min. / 35 mm / 24 fps / 無声 / 白黒
『泳げや泳げ』
1934頃 / 監督・作画: 大石 郁 (aka 大石 郁雄) / 原作: 伴野 文三郎 / 10 min. / 35 mm / 24 fps / 無声 / 白黒
『特急艦隊』 (オモチャ箱シリーズ㐧1話)
1934 / J.O.トーキー漫画部 / 作画: 中野 孝夫, 田中 喜次, 舟木 俊一, 永久 博郎 / 6 min. / 35 mm / 18 fps / 無声 / 白黒
『オモチャ箱シリーズ㐧2話 黑猫万歳』[玩具映画版]
1934 / J.O.トーキー漫画部 / 作画: 中野 孝夫, 田中 喜次, 舟木 俊一, 永久 博郎 / 1 min. / 35 mm / 白黒 (着色)
『オモチャ箱シリーズ㐧3話 絵本1936黑猫万歳』
1934 / J.O.トーキー漫画部 / 作画: 中野 孝夫, 田中 喜次, 舟木 俊一, 永久 博郎 / 8 min. / 35 mm / 白黒
『かぐや姫』[短縮版]
1936 / J.O.スタヂオ / 33 min. / 35 mm / 白黒 / 日本語字幕付
監督: 田中 喜次; 脚本: J.O.企画部; 撮影: 円谷 英二; 美術: 松岡 映丘; 音楽: 宮城 道雄; ミニチュア制作・撮影: 政岡 憲三; アニメーション用人形制作: 浅野 孟府; 舞踊 按舞: 高田 せい子; 舞踊 総出演: 高田舞踊団
北澤 かず子 (かぐや姫), 藤山 一郎 (造麿), 徳山 璉 (太麿), 汐見 洋 (竹取翁), 東 日出子 (竹取嫗), 横尾 泥海男 (宰相阿部), 藤輪 欣司 (細身), 下田 猛 (陰陽師), 上田 吉二郎 (造麿の従者)

一番の目当ては、近年フィルム発見された 円谷 英二 の最初期の仕事として話題の『かぐや姫』。 日本の初期のアニメーション「オモチャ箱シリーズ」と制作スタッフが重なっており、 メインタイトルにアニメーションが使われているということで、ここでの上映になったようです。 確かに、後の特撮につながるのだろうと思われる、模型を使っての撮影や、スクリーンプロセスによる合成などが伺えました。 しかし、藤山 一郎 をフィーチャーしているように、トーキー最初期の音楽映画、というかミュージカル映画で、そこが面白く感じました。 といっても、オペレッタ風だったりモダンな西洋風の音楽ではなく、 宮城 道雄 の音楽は邦楽ベースながらパーカッシヴで、時に反復を強調したコーラスを使ったり。 伝承の物語ということもあり、 宮城 聰 / 静岡県舞台芸術センター (SPAC) の舞台 [鑑賞メモ] と共通するものを感じてしまいました。

去年の『生誕120年 円谷英二展』 [鑑賞メモ] に合わせての 『かぐや姫』上映会の チケットが瞬殺で観れなかったので、こうして観られてよかったです。

メインの日本の初期アニメーションも、素朴ながら興味深く観ましたが、 本来あったはずのトーキーの部分が残っていたら、もしくは、伴奏付きの上映だったら、と思ってしまいました。

1948 / えくらん社 / 配給: 東宝 / 64 min. / 35 mm / 白黒
監督: 清水 宏; 脚本: 関澤 新一
水島 道太郎 (運転手 木野 清次), 三谷 幸子 (柳田 サチ), 國友 和歌子 (ワカさん), 日守 新一 (按摩 福市), etc.

清水 宏 が『蜂の巣の子供たち』 (蜂の巣映画, 1948) に続いて撮った戦後2本目の映画です。 峠の行くバスの乗客たちを描いた『有がたうさん』 (松竹蒲田, 1936) [鑑賞メモ] はもちろん、 日守 新一 が『按摩と女』 (松竹大船, 1938) [鑑賞メモ] の時と同じ名前「福市」と服装の按摩役で出てきますし、 女性の車掌が主要な役で故障したバスを押す場面がある所などは 『暁の合唱』 (松竹大船, 1941) [鑑賞メモ] を思わせる、実に 清水 宏 らしい映画でした。

『有がたうさん』のバスは淡々と進みますが、『明日は日本晴れ』のバスは途中で故障して止まってしまいます。 そして、救援のバスを待つ間の客のやりとりを通して、 ––パニック映画のような極限状況を通してではなく、むしろ、少々長閑な雰囲気の中で象徴的な風景も巧みに使って–– 乗客のたちの抱えた戦中の傷を浮かび上がらせていきます。 両親を失い田舎に引き取られたものの都会が忘れられない戦災孤児、 従軍中の無理な命令で片足を失った傷痍軍人、戦死した部下の墓参りのために日本各地を巡っている元隊長、 按摩も満州事変で目を失った傷痍軍人だったことが明かされます。

主役のバス運転手と、彼に好意を寄せる女性車掌 (サチ)、謎の都会の女性 (ワカさん) の 三角関係もさりげなく、しかしメロドラマチックに描かれます。 運転手とワカさんはかつて恋仲だったものの、 戦中の貧しさのためワカさんは恋人を捨てて軍人の妾となって東京に出たということ、 戦後は水商売 (ダンサー) で生活しており死んだ子を墓に納骨するために帰っていたことが、明かされます。 ワカさんは、一旦は一緒に東京に行こうと運転手に言うものの、サチの気持ちを知って身を引きます (『有りがたうさん』の黒襟の酌婦のように)。

『有がたうさん』の否が応でも淡々と進むバスは山の向こうへ売られていく娘の運命を思わせるものがありましたが、 『明日は日本晴れ』の故障で立ち往生して進まないバスは戦争で「故障して立ち往生」してしまった乗客たちの人生のメタファーのよう。 救援のバスを待つ運転手の言う「もう戦争のことは忘れましょう」は、「故障して立ち往生」した状況から抜け出そうと自分に言い聞かせているようにも感じられました。 こんな形で『有りがたうさん』を様々な戦争の傷を抱えた人々の話としてアップデートした、しみじみ良い映画でした。

国立映画アーカイブ 展示室
2022/04/12-2022/07/17 (月休, 5/24-27休), 11:00-18:30.

震災前の常設館誕生から20世紀後半の名画座・アート劇場劇場までを辿る小展示です。 メジャーの映画館、伝説的なアート系ミニシアターだけでなく、その中間ともいえるチネチッタのような老舗の個性的な映画館なども取り上げていました。 中学生になって自分が映画をよく観るようになった頃、メジャーな映画は、 大抵、築地の東劇か日比谷の映画街で観ていたのですが、戦前には確立されていたことを改めて認識しました。 戦間期の日本映画をそれなりによく観ていますが、これらの映画がどういう場で観られていたのか、あまり意識してなかったな、と気付かされた展覧会でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3999] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun May 22 16:56:52 2022

先週末の話ですが、土曜は昼過ぎに白金台へ。この展覧会を観て来ました。

Looking at Architecture 2022: Encounters with Art Deco Books
東京都庭園美術館
2022/04/23-2022/06/12 (月休), 10:00-18:00.

例年開催されている、美術館をアール・デコ様式の旧朝香宮邸としての公開です。 単に建物を公開するだけでなく、関連する企画での展覧会も合わせて行われるのですが、 (例えば、2020年は『東京モダン生活 東京都コレクションにみる1930年代』、2021年は『艶めくアール・デコの色彩』) 今年は東京都の所蔵品を中心とした1920-30年代の書籍や資料の展覧会でした。 毎年、建物の戦間期モダンな雰囲気を楽しみに足を運んでいますが、今回は展覧会の方も見応えありました。

展示されていた書籍・雑誌・資料は、1925年パリ万国博覧会 (アール・デコ博覧会, Exposition internationale des arts décoratifs et industriels modernes) に関するものが中心。 1920s-30sのデザインの流行、時代の雰囲気だけでなく、 アール・デコ展に日本がどのように関わって、その影響をどのように受容したのか、 資料を通して、そして受容の典型的事例としての旧朝香宮邸を通して感じさせるような展示でした。 アール・デコ博覧会の絵葉書展示でソ連館と日本館が隣接するとように並べてあってその極端な対比が面白く感じられました。 また、当時のパリの街中のアール・デコ風店舗ファサードの写真か沢山並べて展示されていたのも、 作家性の低い大衆的な流行としてのアール・デコの受容をみるような興味深さがありました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

しかし、建物公開ということで基本的に館内撮影可ということもあって、企画の地味さからの予想以上に混雑していました。 やはり、映えスポットとして知られるようになってきているのでしょうか。

土曜の晩は赤坂見附の老舗 (1971開業) のスエーデン料理店 レストランストックホルムで スモーガスボード (Smörgåsbord)、いわゆるビュッフェ形式の料理を楽しんできました。 5月29日閉店ということで、その前に駆け込みで行きました。 それにしても、14日に閉店した ベラルーシ家庭料理 ミンスクの台所 といい、残念な事が続きます……。

[3998] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue May 17 22:16:55 2022

連休直後の週末土曜5月7日は、午後に横浜山下町へ。このパフォーマンスと展覧会を観て来ました。

KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ
2022/05/07, 14:00-15:00.
構成・演出・振付: 小㞍 健太; 構成・サウンドスケープ: 森永 泰弘; 出演: 佐藤 琢哉, 畠中 真濃 (DaBY), 青柳 潤 (DaBY), 小㞍 健太.

会場に入ると自然光が入る状態で、ウォーミングアップ中のような所かから、 日常の延長というか、ドラマチックな展開を避けるかのような1時間。 「風情」という感覚へアプローチする試み、ということでしたが、そういうものを感じるというより、 一週回って再び来たポストモダン・ダンスというか、 Jonathan Demme の撮った Trisha Brown、 Accumulation with Talking plus Watermotor (1979) [鑑賞メモ] を思い出したりしました。

KAAT神奈川芸術劇場 アトリウム
2022/05/01-2022/06/05, 10:00-18:00 (夜公演がある日は終演時刻まで).

アニュアルの展覧会『KAAT EXHIBITION』の2022年度の展覧会です。 例年 [鑑賞メモ] は中スタジオで開催ですが、オープンスペースでの開催になってどうなるかと期待もありましたが、 確かにスケール的なインパクトはありましたが、空間の意味合いを変容させるというより、吹き抜けの空間を使った装飾インスタレーションのよう。

この展覧会はパフォーマンスを絡めることが多く、7日もアトリアムで関連企画のパフォーマンスをしていましたが、 フロアにも敷物があるものの、メインが高い空間へのインスタレーションだけに、 エアリアルでもない限りパフォーマンスと絡めるのは厳しいな、と。 立ち見というのもかなり厳しかったので、通りがかりに少し観る程度に留めておきました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3997] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon May 16 22:18:25 2022

ゴールデンウィーク最終日5月5日は、昼に渋谷宮益坂上へ。この映画を観ました。

Петровы в гриппе [Petrov's Flu]
2021 / Hype Film (Russia), et al / colour / DCP / 146 min.
Режиссёр (Director): Кирилл Серебренников [Kirill Serebrennikov].
Семён Серзин [Semyon Serzin] (Сергей Петров [Sergei Petrov]), Чулпан Хаматова [Chulpan Khamatova] (Нурлыниса Петрова [Nurlynisa Petrova]), Владислав Семилетков [Vladislav Semiletkov] (Петров-младший [Petrov's son]), Юлия Пересильд [Yulia Peresild] (Марина [Marina], Снегурочка [Snow Maiden]), et al.

Алексей Сальников [Alexey Salnikov] の小説 «Петровы в гриппе и вокруг него» (2017) に基づく新作のロシア映画です。 舞台作品の演出で知られる Кирилл Серебренников [Kirill Serebrennikov] 監督作品で、 Лунный папа [Luna Papa] 『ルナ・パパ』 (1999) [鑑賞メモ] で主演していた Чулпан Хаматова [Chulpan Khamatova] が主要な役で出演しているということで、観に行きました。

舞台は2004年のロシア・ウラル地方のエカテリンブルグ、 インフルエンザにかかった主人公ペトロフの24時間を描いた映画です。 といっても、ポスト・ソヴィエトの不条理な現実やソヴィエトだった子供時代の回想、 主人公ペトロフだけでなく、その元妻ペトロワ、ペトロフが子供時代にあった「雪娘 (Снегурочка)」マリーナの、 主観的な視点からの現実の描写と暴力的・性的な妄想を行き来する、まるで高熱の中で見る悪夢を思わせる映画でした。 (悪)夢を見るようという意味ではシュールレアリスティックなのですが、 長回しのトリッキーな撮影が行われ、現実と妄想の間をシームレスに行き来する感があって、まさにマジックリアリズム的な映画でした。 霊柩車のエピソードなど、おそらくこの描写は妄想だろうと思っていたものが、実は現実側だったりする仕掛けもあり、虚実入り混じったよう。 ユーモアを感じさせる場面もありますが、そのセンスは暴力的・性的なイメージを伴うダークなもの。 ポスト・ソヴィエトの社会やCOVID-19パンデミックに対する寓意を読み取りたくなるところも無いわけではないですが、 むしろ、不条理感に浸るような作品でした。

最近、Чулпан Хаматова [Chulpan Khamatova] の写真・動画をニュース等で見る機会がそれなりにあって、 Luna Papa の時と比べると流石に歳をとったなと思っていたのですが、 映画の中ではさほどではありませんでした。 暴力的な妄想を内面に持った図書館員を演じていたのですが、 コミカルな役とは異なる、少々気の強そうなところもいい感じでした。

Kirill Serebrennikov の演出した舞台作品は、もしCOVID-19で中止にならなければ、 2020年のふじのくに⇄せかい演劇祭で観られたはずだったのでした。 残念な限りです。 オペラやバレエの演出もしているので、ストリーミングでもいいので観る機会があればと思っています。 Serebrennikov は、 2017年に不当だと言われる国家予算横領の罪で逮捕、自宅軟禁状態に置かれたものの、2022年1月にドイツに脱出、 その後の2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻を批判しています [AFPBBの記事]。 その一方で、ロシア国内では Большой театр [Bolshoi theatre] での作品上演が中止になっています [AFPBBの記事]。 また、主要な役を演じた Chulpan Khamatova も、 ウクライナ侵攻を受けてロシアから亡命しています [AFPBBの記事]。 こんな状況を見ても、ウクライナ侵攻で国内においても独裁的な強権姿勢を強めている中、 ロシア国内で自由な芸術活動をすることが難しくなっていることを実感します。

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[3996] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun May 15 16:41:00 2022

ゴールデンウィーク中の話ですが5月4日は、5月1日に続いて池袋西口へ。 東京芸術劇場のTACT FESTIVALでこの作品を観ました。

Jörg Müller & Tabaimo: Tangled drops
東京芸術劇場 シアターイースト
2022/05/04, 15:00-16:30
構成・演出: 束芋, Jörg Müller. ドラマトゥルグ: Sophie Borthwick.
出演: Jörg Müller, 間宮 千晴.
美術: 束芋; 音楽, 音響・映像技術: 田中 啓介; ヴォイス: 大隅 健司; 照明: 三浦 あさ子
日本初演: 2022年4月28日, オーバード・ホール (富山).
企画制作: Cie Wasistdas, 束芋, Hi Wood; 共同企画制作: オーバード・ホール, 東京芸術劇場, 山口情報芸術センター, 那覇文化芸術劇場なはーと.

コンテンポラリーサーカスの文脈で活動する Jörg Müller [鑑賞メモ] の3年ぶりの来日は、 現代アートの文脈で活動するアニメーション作家 束芋 とのコラボレーションによる日仏共同製作の新作舞台作品。 束芋 のコンテンポラリーダンスとのコラボレーション 『錆からでた実』も以前にも観たことがありますが [鑑賞メモ]、 むしろ、Jörg Müller が関係したマルチディシプリナリーなコラボレーションという興味で足を運びました。

明確な区切りはありませんが、おおよそ3部構成。 まずは、Jörg Müller による数m四方はある大きな白い布を使ったオブジェクトマニピュレーションから始まりました。 服下に布を畳み入れ首元から四隅を出した状態で現れ、天井から下げた4本の細いワイヤーに四角を固定し、ワイヤーを引き動かすことで、布を動かします。 天井の滑車の音も微かに聞こえる中、白い光で浮かび上がる布が舞い踊る様は、静謐で幻想的。 さすが Jörg Müller らしいパフォーマスでした。

続いて、束芋のグロテスクなアニメーションに、Müller の身体を絡める様なパフォーマンス。 舞台の前方と後方を区切る、何箇所か出入りできるスリットの入った半透明のスクリーンを下げ、 そこに束芋らしい室内に家具や肉塊が静かに蠢く様な不気味なアニメーションなどを投影しつつ、 シーツをかぶった Müller がそれに絡みます。 さらに、身体を解剖するアニメーションを Müller の身体に直接投影したり。 最後は、アニメーションはさらに抽象化して蠢く縦の効果線になり、 スクリーンも前後に揺らめき、映像とノイズの轟音の中に 浮かび上がる Müller と 間宮 の二人の静かなアクロバットのようなシルエットを観るようでした。

Müller のオブジェクトマニピュレーションの時は束芋の存在感がなく (もしかしたら細やかなアニメーションが使われていたのかもしれませんが)、 束芋のアニメーションの中では Müller の身体は映像の中に埋もれがちで、 相乗効果が楽しめたという感じではありませんでした。 COVID-19による移動の制限で日仏間を行き来しての制作もままならないことを考えると、 致し方ないところもあるでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

この日はこの後、もう1本、『Piece to Peace × 島地 保武 × 酒井 はな × 川瀬 浩介』を観ましたが、 その鑑賞メモは別に書いてあります

しかし、ふじのくに⇄せかい演劇祭TACT FESTIVALで 舞台三昧のゴールデンウィークを過ごすのも、COVID-19以前の2019年以来の3年ぶり。 さすがに疲れましたが、楽しかった。 単独の公演とは違ったフェスティバルの楽しさもあると、改めて実感しました。

[3995] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun May 8 15:24:32 2022

ゴールデンウィーク中の5月3日は、4月29日に続いて2回目の静岡日帰り。 ふじのくに⇄せかい演劇祭 2022 の後半プログラムで、これらの舞台を観ました。

静岡芸術劇場
2022/05/03, 14:00-15:30.
Mise en scène, interprétation, scénographie et costume: Omar Porras; Texte: Fabrice Melquiot.
Assistant à la mise en scène: Domenico Carli; Regard extérieur: Alexandre Ethève et Philippe Car; Création sonore: Emmanuel Nappey; Conseil musical et piano: Cédric Pescia; Collaboration chorégraphique: Kaori Ito [伊藤 郁女]; Fabrication d’accessoires: Léo Piccirelli; Lumière: Omar Porras et Marc-Etienne Despland; Photos: Ariane Catton Balabeau.
Production: TKM Théâtre Kléber-Méleau, Renens et Théâtre Am Stram Gram, Genève
Création: Spectacle créé le 18 janvier 2019 au Théâtre Am Stram Gram à Genève.

コロンビア出身で現在はスイス・ジュネーブを拠点に活動する演出家・俳優による自伝的な一人芝居です。 2020年の際にCOVID-19で中止になっていた演目です。 Porras は度々来日していて、SPAC共同制作で演出した作品もありますが、自分が Porras の作品を観るのは初めてでした。

舞台上は、上手寄りに石のようなものが置かれ、後方に高さ数十センチ程度の枯れ枝様なものが立てられている程度。 最初のコロンビアでの少年時代の話は、フラットな照明下でコミカルな仕草と語りで、少々退屈し増田。 しかし、コロンビアを出て、パリに着いた頃から次第に引き込まれました。 それも、失恋の遍歴から劇場の世界に引き込まれるあたりから、急に語りが現実のユーモラスな描写というより寓意的なものとなります。 演出も、照明が落とされ赤や青の不自然な色のスポットライトが使われ、 天井から砂が舞降る様子を浮かび上がらせたりと、舞台のビジュアルも幻想的に。 怪物に飲み込まれる話としての演劇の世界にのめり込むことの寓意的な語りへの相変化と、 そんな舞台上のビジュアルの変化が合っていて、とても面白く感じられました。

–––

静岡芸術劇場の後は、 『ストレンジシード静岡』 開催中の駿府城公園界隈へ移動。 開始時刻がちょうどよかった市役所脇の鏡池へ行ってみたら満席だったので、駿府城公園でのんびり過ごすことに。 モモンガ・コンプレックス 『穴あき谷の○○○。』。 地面に空いた大きな穴に興味を示す動物たちの様なパフォーマンスを緩く鑑賞。 その後、この野外公演を観ました。

駿府城公園 紅葉山庭園前広場 特設会場
2022/05/03, 18:30-20:30.
台本・演出: 宮城 聰; 訳: 月本 昭男 (『ラピス・ラズリ版 ギルガメシュ王の物語』ぷねうま舎).
音楽: 棚川 寛子; 人形デザイン: 沢 則行; 美術デザイン: 深沢 襟; 照明デザイン: 吉本 有輝子; 衣裳デザイン: 駒井 友美子; ヘアメイク: 梶田 キョウコ; 対位法プラン: 寺内 亜矢子
出演 (S: 語り手; M: 動き手; P: 人形操演): 阿部 一徳 (S), 大高 浩一 (M) (ギルガメシュ); 吉植 荘一 (S), 大道 無門優也 (M) (エンキドゥ); 片岡 佐知子 (S), 森山 冬子 (M) (シャムハト); 鈴木 陽代 (S), 沢 則行 (P), 桑原 博之 (P) (ウルシャナビ); 本多 麻紀 (S), 榊原 有美 (M) (ウトナピシュティム); 大内 米治 (P), 貴島 豪 (P), 佐藤 ゆず (P), 舘野 百代 (P), 吉見 亮 (P), 沢 則行 (P), 桑原 博之 (P) (フンババ); etc
委嘱: Musée du quai Branly
製作: 静岡県舞台芸術センター
初演: Jeudi 24 mars 2022, Musée du quai Branly.

古代オリエントの英雄物語『ギルガメシュ叙事詩』に基づく作品です。 古代に成立した口承の物語に基づく作品という点でも 『マハーバーラタ 〜ナラ王の冒険〜』 [鑑賞メモ] や 『イナバとナバホの白兎』 [鑑賞メモ] を連想させられる作品です。 既にお馴染みの手法と言えばそうですが、 語り手と動き手を分け、様式化された動きと、時に詠唱したりコーラスを掛け合うかのようなセリフの発声など、 神話的な世界の描写にハマっていました。 『イナバとナバホの白兎』では日本とナバホの神話をミックスしていましたし、 口承の物語に基づくものではないですが『マダム・ボルジア』 [鑑賞メモ] では ルネサンス期イタリアの話を戦国期の日本に翻案していたわけですが、 今回はそういった翻案の様なことはせずに、むしろオリジナルの石板を読み上げるかの様に話を進めていたのが良かった様に感じました。

空間使いという意味では、『マダム・ボルジア』でも使っていた衝立の移動を今回も使っていましたが、 奥行き方向の活用という点ではかなり改善されていました。 フンババの巨大な人形のために奥の空間を使わざるを得ないという縛りがよかったのかもしれません。 人形も、高さ2〜3メートルの3つの円錐からなる巨大なフンババだけでなく、 数十センチの人形のウルシャナビも使い、そのスケール感の振れ幅も面白く感じました。 COVID-19対策で語り手はマスクをしての公演で、声の通りが悪く、迫力に欠けたのが惜しかったでしょうか。 それでも、近年、駿府城公園 紅葉山庭園前広場 特設会場 で観た 宮城 聰 / 静岡県舞台芸術センター (SPAC) の公演の中では一番楽しめた作品でした。

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[3994] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sat May 7 11:40:49 2022

5月1日と4日は、午後に池袋西口の東京芸術劇場へ。 ゴールデンウィーク恒例の TACT FESTIVAL 2022 を観てきました。

東京芸術劇場 シアターウエスト
『UP AND DOWN × 大宮 大奨 × 川合 ロン × 高村 月 × 原 摩利彦』
2022/05/01, 14:00-15:00.
パフォーマー: 大宮 大奨, 川合 ロン, 高村 月; 音楽: 原 摩利彦; 衣装: ひびのこづえ.
『ROOT:根 × アオイヤマダ × 小野 龍一』
2022/05/01, 17:30-18:20.
パフォーマー: アオイヤマダ; 音楽: 小野 龍一; 衣装: ひびのこづえ.
『Piece to Peace × 島地 保武 × 酒井 はな × 川瀬 浩介』
2022/05/04, 17:00-18:00.
パフォーマー: 島地 保武, 酒井 はな; 音楽: 川瀬 浩介; 衣装: ひびのこづえ.

『DANCE 4』はTACT FESTIVAL 2022の中のダンスパフォーマンス企画で、 ひびのこづえ の衣装を用いたダンスを4作品を上演するものです。 去年、ひびのこづえの展覧会を観て [鑑賞メモ]、 着て踊られてこそ面白いと実感しこともあり、 シアターウエストで上演された3作品を観ました。 もう1作品、ロワー広場で上演された『WONDER WATER × ホワイトアスパラガス × 川瀬 浩介』は、 上演が午前中のみと時間が合わず観られませんでした。 (『WONDER WATER』は以前に観たことがあります。)

最初に観たのは3人の男性ダンサーによる『UP AND DOWN』。 大宮 大奨, 川合 ロン はコンテンポラリーダンスの舞台で観たことありましたが、高村 月 は初めてでしょうか。 「裸の王様」、「三匹の子豚」、「赤ずきん」といった童話に着想した衣装とダンスですが、 特にオリジナルの話を追うというより、そのキャラクターに着想したといったところでしょうか。 全体としてのテーマを掴み兼ねましたが、少々ドタバタ気味のユーモラスな衣装と動きを楽しみました。

『ROOT:根』はアオイヤマダのソロ。 バルーンでできた大きなカエルの造形物を背負って登場し、 踊りながら少しずつ衣装を脱ぎ捨てつつ、最後には血管のような模様のあるボディタイツ姿に。 ヴォーギングのようなポーズを使い、衣装を減らしていく展開もあって、ストリップティーズも少し連想させられました。 ひびのこづえの展覧会 [鑑賞メモ] での《AR forest》が印象に残っていたので、 いろいろ衣装を着替えキャラクターが七変化してくようなパフォーマンスも観てみたかったように思いました。

日を替えて最後に観たのはaltneuの2人によるもの。 前半は『UP AND DOWN』にも似て童話的なキャラクタに着想したものですが、 北風と太陽の対立関係から、ライオンと人魚姫で異種のファーストコンタクトのような関係へ。 後半はグッと抽象的になり、 繋がった衣装を絡めたコンタクトインプロビゼーションのような動きから、 うっすら模様のあるボディタイツ姿でのリフトも交えたパ・ド・ドゥ、と、 次第に親密になっていく男女のストーリーも感じさせる構成。 動きも美しく、観た3作の中では最も見応えを感じました。

TACT (Theater Arts for Children and Teens) の中の企画ということもあり、 全体として、抽象的に過ぎず衣装などにとっつきやすさもあり、 リラックスして楽しめた公演でした。

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[3993] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed May 4 22:00:11 2022

30日土曜の午後は、渋谷の後は神保町へ移動。 神保町シアターの特集企画 『子役の天才!』で、 この戦前の映画を観てきました。

『まごころ』
1939 / 東宝東京 / 白黒 / 67 min.
監督・脚本: 成瀬 巳喜男. 原作: 石坂 洋次郎.
入江 たか子 (長谷山 蔦子), 高田 稔 (浅田 敬吉), 悦ちゃん (啓吉の娘・信子), 加藤 照子 (蔦子の娘・富子), 村瀬 幸子 (浅田 夫人), etc.

裁縫で生計を立てる母、祖母との3人暮らしの富子 と、裕福な家の子 信子 の、親しい小学校の同級生の少女2人を主人公とした子供映画です。 信子の成績が下がったことによる両親の喧嘩の会話を通して、 信子の父・啓吉と富子の母・蔦子がかつて親しい仲で、結婚にあたって蔦子が身を引いたということを信子は覚ります。 それをきっかけに、2人の関係、そして親たちの揺らぎを描いた映画です。 さざなみのように揺らぐものの、人間関係が大きく組み変わることはなく、 むしろ、最後には啓吉が招集されて出征するという大状況でうやむやになる感があるのですが、 そんな揺らぎを淡々と丁寧に描いていました。 啓吉が招集されたり、その妻が「大日本愛国婦人会」で活動していたり、というのはありますが、 東宝に指定は戦時色はさほど濃く感じられませんでした。

信子を演じた 悦ちゃん (江島 瑠美) は、獅子 文六 の小説『悦ちゃん』の映画化 (日活多摩川, 1937) の際に公募で選ばれてデビューした人気子役。 その演技を見るのも楽しみでした。 しかし、おかっぱ頭の 富子 を演じた子役 (加藤 照子) の方が現代的な美少女で、 一人親の蔦子との難しい関係を繊細に演じていました。 親の三角関係については 浅田 夫人が分かりやすく悪役で少々図式的。 道徳的な教訓臭さを感じてしまいました。 しかし子供が主役の映画と思えば、そんなところも所詮背景でしょうか。 むしろ、娘に伏せていた過去を知られたことによる蔦子の心の揺らぎや、 蔦子と啓吉の再会の場面など、予想以上にメロドラマチックに感じられました。

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というわけで、戦間期の映画をハシゴ。 アメリカ、日本と制作国は違いますし、日本の方が女性像が遙に保守的、などの違いもありますが、 共通するこの時代の戦間期のモダンな雰囲気を楽しみました。 やっぱり、この時代の映画は良いなあ、と。

[3992] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed May 4 11:26:25 2022

ゴールデンウィーク二日日、30日土曜は昼に渋谷へ。 シネマヴェーラ渋谷では特集「アメリカ映画史における女性先駆者たち」を上映中。 20世紀前半 (10年代〜50年代) に活動した5人の女性映画監督 (Alice Guy, Lois Weber, Dorothy Davenport, Dorothy Arzner, Ida Lupino) による23本の映画を上映しています。 そんな中から、この映画を観てきました。

Christopher Strong
『人生の高度計』
1933 / RKO Radio Pictures (USA) / B+W / DCP / 78 min.
Directed by Dorothy Arzner; Screenplay by Zoë Akins
Katherine Hepburn (Lady Cynthia Darrington), Colin Clive (Sir Christopher Strong), Billie Burke (Lady Elaine Strong), Helen Chandler (Monica Strong), etc.

恋をしたことが無かったという女性冒険飛行家 Cynthia Darrington と 仕事熱心で堅物の妻子のある政治家 Christopher Strong の、悲劇的な結末に終わる恋愛を描いたメロドラマ映画です。 一旦はかなりロマンチックな所までいくも、 Cynthia は世界一周冒険旅行に発ち、Christophe も仕事に打ち込む、など、 戦間期の恋愛描写にしては、互いに自立した男女の恋を描いています。 この冒険旅行後、二人は親密な関係に落ち、Cynthia は妊娠し、 Christopher は結婚しようという話もするものの、結局、彼女は高高度飛行挑戦中の事故死を装って自殺します。 この Cynthia に対比されるのが、Christopher の娘 Monica。 Monica は妻子のある男と恋愛し、Cynthia の後押しもあって結婚を成し遂げます。 しかし、結婚し子供ができた後、Cynthia の父の親密な関係を知ると強く非難します。 そんな変化の描写も皮肉なのですが、Cynthia が Christopher に妊娠を知らせようとした夜を、 孫を妊娠した Monika のお祝いのために Christopher が突然キャンセルするという、 望ましい妊娠と意図しない妊娠の対比的な描写は、なかりエグく感じられました。 その一方で、娘の妻子ある男との関係を認めない保守的な女性だった Elaine が、 娘の結婚を受け入れ、Cynthia と夫の関係に気付きつつも、Cynthia に感謝すらするようになるよう変わっていきます。 Cynthia を巡っての Monika と Elaine の変化も対比的に描いていました。 タイトルは男性主人公の名ですが、むしろ、彼を取り巻く3人の女性、娘、妻、そして Cynthia の映画でした。 上流階級物のメロドラマで、繊細な演技や描写というよりゴージャスな美男美女を楽しむようなところもある映画ですし、 自主規制条項 Hays Code 導入 (1934) 直前のメロドラマということもあって濃厚なキスシーンもあり、 当時はかなりエロティックな映画でもあったのかもしれません。 そんな中では女性冒険飛行家役の Katherine Hepburn の個性が際立っていたでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3991] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun May 1 11:59:25 2022

ゴールデンウィーク初日、29日金曜は昼前には家を出て、新幹線で静岡へ。 ふじのくに⇄せかい演劇祭 2022 のプログラムで、この舞台を観ました。

静岡芸術劇場
2022/04/29, 14:00-15:50.
от Албер Камю, превод Александър Секулов, Диана Добрева. [by Albert Camus, translation by Alexander Sekulov, Diana Dobreva]
Сценична версия [Stage version]: Александър Секулов [Aleksander Sekulov]; Режисьор [Director]: Диана Добрева [Diana Dobreva]
Сценограф [Set Designer]: Нина Пашова [Nina Pashova]; Costume designer [Костюмограф]: Нина Пашова [Nina Pashova]; Хореограф [Choreographer]: Ангелина Гаврилова [Angelina Gavrilova]; Композитор [Composer]: Петя Диманова [Petya Dimanova].
С участието на [Featuring]: Деян Донков [Deyan Donkov], Владимир Пенев [Vladimir Penev], Жорета Николова [Joleta Nikolova], Александра Василева [Alexandra Vasileva], Константин Еленков [Константин Еленков], Биляна Петринска [Bilyana Petrinska], Вяра Табакова [Vyara Tabakova], et al.
Премиера [Premiere]: 27 октомври 2017 г. [October 27, 2017]

アルベール・カミュの「不条理三部作」の1つ『カリギュラ』 (1945初演) の ブルガリア語での上演です。 演出家の作風などの予備知識はありませんでしたが、 ヨーロッパの国立劇場のプロダクションとで、大外れは無いだろうと、観て観ました。

中央の急な階段と動く大机程度で暗色を基調としたシンプルな舞台に客を入れていない客席最前列までを使い、 形式的な動作やフォーメーションも多用して、象徴的な場面をビジュアル的に見せていく演出でした。 しかし、マイクで拾ったセリフが発声した俳優の方向ではなく、 どの俳優が喋っても同じ場所 (下手舞台袖あたりに置かれていると思われるスピーカー) から聞こえてくるため、 聞いていて誰が喋ったセリフなのかよくわからないことが少なからずありました。 セリフは半ば諦めて、予備知識として入れた粗筋を頼りに半ばダンス作品のように楽しみましたが、 微妙なところは掴みかねてちょっと厳しいなと感じたことも少なからずありました。

ふじのくに⇄せかい演劇祭は、 COVID-19の影響で、2020年は演劇祭中止、 2021年も「せかい」と言い難い規模縮小での開催。 海外招聘を含めて本格的な開催は、そして自分が演劇祭に足を運んだのも、3年ぶりです。 終演後のトークによると、 COVID-19禍に伴う国際的な海運の混乱のため衣装や舞台装置が届かず、 日本でたった3日で製作したとのこと。 また、COVID-19水際対策のため主役も公演前日まで隔離だったとも言っていました。 上演に至るまでいろいろ大変だったようで、良いコンディションでの上演では無かったのかとも思います。 まだCOVID-19は収束したとは言い難いですし、ロシアのウクライナ侵攻という新たな危機も発生しています。 こんな状況下で来日公演してくれてありがとうございました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

ゴールデンウィークだというのに、東北地方は雪になるほどの冷たい雨。それも土砂降り。 29日晩は 静岡県舞台芸術公園 野外劇場「有度」での野外公演も予定されていましたが、 観たことがある演目だったので今回は自分はパスしたのですが、パスにしてよかった、と。 演劇祭では3年ぶり、大道芸を含めても 2019年秋 [鑑賞メモ] 以来の 日帰りでしたが、2年半ぶりの静岡だったので、 晩は青葉通り界隈もしくは新静岡駅界隈の店を開拓してみるのも良いかなと思ってたのですが、 土砂降りで駅の外に出る気分になれず、 駅の高架下商業施設に入っていた静岡の料理と地酒が食べられる居酒屋で済ますことに。 しかし、久々に 志太泉 が飲めましたし、旅先での酒肴を久々に楽しみました。

[3990] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Apr 24 19:25:56 2022

先週末の土曜は昼に丸の内へ、この展覧会を観てきました。

Felice "Lizzi" Rix-Ueno: Design fantasy originating in Vienna
三菱一号館美術館
前期2022/02/18-2022/04/10, 後期2022/04/13-2022/05/15 (月休), 10:00-18:00

ウィーン出身で 1920年代までウィーン工房 (Wiener Werkstätte) [鑑賞メモ] で活動する一方、 ウィーン工房主宰の建築家 Josef Hoffmann の下で働いていた京都出身の建築家 上野 伊三郎 と結婚、 1926年には京都に拠点を移して活動したデザイナー 上野 リチ (Felice "Lizzi" Rix-Ueno) の、 戦間期ウィーン時代から戦後日本での活動までを辿る展覧会です。 彼女を取り上げた展覧会としては、2008年から2009年にかけて京都国立近代美術館と目黒区美術館を巡回した 『上野伊三郎+リチ コレクション展 ウィーンから京都へ、建築から工芸へ』展があったのですが、 当時ノーチェックで見逃しました。

テキスタイルデザインを得意とし、建築家 上野 との協働の中でインテリアデザインにも幅を広げていった感がありますが、 ウィーン工房で活動した時期も戦間期ということで、 Jugentstil / Art Nouveau のような有機的な曲線でもなく、 色合いは Art Deco から Mid-century Modern のようでありつつ、スッキリ幾何的なデザインでもなく、 手書きらしい線で図案化されたテザインが特徴でしょうか。 これは多分に自分の好みの問題のようにも思いますが、 こういったデザインよりも、彼女の辿った歩みに、日本におけるモダン・デザインの受容の一つの流れを垣間見るよう。 特に、ドイツのモダニズム建築家 Bruno Taut の1933-36年に日本招聘にも関わっていたことなど、とても興味深いエピソードでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

その後、ふと思い立って、久々に阪急メンズ東京へ。 以前は年数回はチェックに行っていたのですが、すっかり足が遠のいて、実は2019年3月のリニューアル後、初めてだったかも。 長年お世話になったブランドが無くなってしまい、今後どんな服を新調すべきか、まずは服を見て歩くところから要リハビリの感も。 なんて思いつつも、Borsalino の直営店があったので、今シーズンのパナマ帽を新調してしまいました。

今週末は、土曜に『METライブビューイング』 (The Met: Live in HD) で、 Elijah Moshinsky 演出の Richard Strauss: Ariadne auf Naxos 『ナクソス島のアリアドネ』 (1916) を観てきました。 パトロンの気紛れで直前になってオペラ・セリアとコメディア・デラルテを同時に上演することになる経緯のバックステージ物の序幕 (プロローグ) と、その上演を見せるオペラの2幕構成。 特に現代的な解釈を入れた演出とかではないものの、コミカルな展開を楽しみました。 が、Zerbinetta のツッコミが入るとはいえ Ariadne と Bacchus のフィナーレが妙にシリアスに感じられて少々腑に落ちないまま終わってしまいました。うむ。 これで、Richard Strauss のオペラは Salome 『サロメ』 (1905) [鑑賞メモ]、 Elektra 『エレクトラ』 (1909) [鑑賞メモ]、 Der Rosenkavalier 『ばらの騎士』 (1911) [鑑賞メモなし] と観ましたが、 結構、作風がバラバラだなあと。 Der RosenkavalierAriadne auf Naxos のコミカルてとっつきやすい作風も良いですが、 SalomeElektra の不協和音の多い前衛的な作風の方が好みでしょうか。

オープニングの解説の中で国家斉唱を含むウクライナ支持のメッセージがあって、この上映のために別途付け加えたのだろうかとも思ったのですが、 3月12日収録ということで既にロシアのウクライナ侵攻は始まっていたと気付きました。 もう2ヶ月経ってしまったのかと。

土曜の晩は神谷町の ベラルーシ家庭料理 ミンスクの台所 へ。 5月14日に閉店してしまうと噂を耳にして、駆け込みで行ってきました。 美味しかったのですが、また行きたい、というわけにいかないのは残念です。 お話をうかった閉店の理由も……。

[3989] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Apr 19 21:57:03 2022

金曜8日は休暇にして、午後に乃木坂へ。この展覧会を観てきました。

Cherry Blossoms
国立新美術館 企画展示室2E
2022/03/02-2022/05/23 (火休, 5/3開), 10:00-18:00 (金土 -20:00)

1990年代にイギリスの現代美術の文脈で活動した若手作家 YBAs (Young British Artists) の中でも 最も名が知られた作家の1人、Demian Hirst の個展です。 1990年代からの活動を辿るような回顧展的な要素は全く無く、 2018年以降に製作された約3m×2m大 (1点だけ約5m×7m大) のキャンバスに描かれた油彩のシリーズ Cherry Blossoms 『桜』のみの、 2021年に Foundation Cartier で開催された展覧会の世界巡回展です。

1990年代後半 (特に1998年の「日本における英国祭」の時) にYBAsがらみの展覧会を観たり、 美術雑誌や文化系雑誌などの特集記事を読む機会はそれなりにあり、 Damien Hirst の作品もそんな文脈でのコンセプチャルな作品 (薬品棚や動物のホルマリン漬けの作品など) の印象がとても強い作家です。 2000年代以降、あまりチェックしていなかったのですがはコンセプチャルながらも絵画作品に回帰し始めていたよう。 今回の作品は、空を背景に見上げた視線でみたような桜を、枝の太線と花や影、木漏れ日のドットのコンポジションとして半ば抽象的に描いたもの。

ドリップではなく立て掛けたキャンパスに投げつけるように描いているのですが、 油絵具が盛り上がったドットからなる絵は抽象表現主義のアクションペインティングを連想させますし、 実際には無い色のドットを交えて深みも表現したドットは遠目で見ると後期印象派をも参照しているよう。 ピンクと水色を基調とした色も明るくとても親しみやすく感じられました。 しかし、結局のところ、作品そのものよりも、 会場奥の休憩コーナーに隣接して流されていた、 このような作風に至る経緯を作家に語らせたインタビュー映像が最も興味深かったかもしれません。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

現代美術の文脈中では有名な作家だし、映えそうな作品な上撮影可なので混雑しそうと予想して、 平日に行ったのですが、思ったほどではなかったような。

国立新美術館で同時開催中の 『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』 はどうせ混んでるだろうと観る予定ではなかったのですが、 予約無しで並ばずに観られるということで観ることにしてしまいました。 こちらの会場の方が Damien Hirst 展の2〜3倍は混雑していて、 現代美術もかなりポピュラーになったとはいえ、客層の厚さの違いを実感しました。 平日は仕事から引退した老年層の客が多いということもあるかもしれませんが。 ルネサンス期から19世紀までがスコープなので、自分にとってはアウェー感のある展覧会でしたが、 ラスト近くで Paul Cézanne が観られてよかったでしょうか。

翌土曜は午後に池袋へ。 Steven Spielberg 監督の映画 『ウェスト・サイド・ストーリー』 West Side Story (2021) を観てきました。 元になったミュージカル (初演1957) は、1961年にミュージカル映画化されていますが、その再映画化です。 不勉強ながらミュージカルも1961年の映画も観たことありませんが。 3時間近い上映時間に腰が引けているうちに上映館がどんどん無くなってしまい、 やっぱり観ておこうかと思った時はほとんど選択肢がなくなってしまっていたという。 “Tonight" が歌われるバルコニーの場面とか、Shark girls の “America” とか、塩の倉庫 (オリジナルは高架下) での決闘とか、 断片的に知ってた歌や場面の物語の中でのコンテクストがやっとわかったのが、収穫。 ミュージカル映画といっても意外とセリフの場面が多いリアリズム寄りの演出でしたが、 しかし、ダンスの場面などカットを控えたカメラ長回しを駆使していてライブ感と迫力を感じました。 NTLive の Romeo and Juliet を観たばかり [鑑賞メモ] だったので、 ついつい比べつつ観てしまうわけですが、前半はまだしも後半はかなり違う話でした。

[3988] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Apr 17 18:18:18 2022

先々週末の話になってしまいましたが、日曜の晩は日比谷へ。この映画を観てきました。

『アンネ・フランクと旅する日記』
2021 / Purple Whale Films (BE), Walking The Dog (BE), Samsa Film (LU), Submarine Amsterdam (NL), Bridgit Folman Film Gang (IL), Le Pacte (FR), Doghouse Films (LU), Magellan Films (BE) / colour / 99 min.
A Film by Ari Folman.
Written and Directed by Ari Folman
Original Score by Karen O and Ben Goldwasser.
Starring: Ruby Stokes (Kitty), Emily Carey (Anne Frank), Sebastian Croft (Anne's Peter), Ralph Prosser (Kitty's Peter), etc

Waltz With Bashir 『バシールとワルツを』 (2008) [鑑賞メモ] で知られるイスラエルのアニメーション映画作家の新作です。 第二次世界大戦中、ユダヤ人の少女 Anne Frank がナチスによるホロコーストから逃れるためのアムステルダムでの隠れ家での生活を逮捕されるまで描いた 『アンネの日記』 (Het Achterhuis, 1947; The Diary of Anne Frank, 1952) に基いた作品です。 日記で描かれたエピソードを淡々とアニメーション化するのではなく、むしろそれは劇中劇的な位置付け。 日記には描かれない強制収容所でのエピソードもアニメーションらしい象徴性を持って描かれますし、 Anne Frank が日記を書くにあたって作り出した空想上の宛先の少女 Kitty を主人公として、 彼女が「現在から一年後」に博物館の本の中から現実の世界の世界に飛び出し、 Anne Frank を探す中で起きることを通して、現代の問題を浮かび上がらせます。 アニメーション手法としては比較的オーソドックスでシンプルな絵の2Dアニメーションですが、 題材が題材だけに実写で作ったら逆に嘘臭く感じそうで、アニメーションだからこそ描けた話でしょうか。

Kitty は抜け出したアムステルダムの路上やスクワットで暮らす難民の人たちと出会い、 その中の一人の少年 Peter と彼女の死地を訪れる旅をする一方、彼らと共闘し始めます。 日記のオリジナルを盗んだと警察に追われた Kitty は、難民たちがスクワットしているビルへ逃げ込みますが、 難民強制送還の事態に直面して、オリジナルの日記と交換に難民たちを人道的に扱うことを求めます。 その時にビルの屋上に “I am here” 「私はここにいる」というバルーンを掲げるのですが、 ある意味でこれがこの映画のタイトル “Where is Anne Frank” の答え –– 現代の Anne Frank はスクワットに隠れ住む難民たち –– になっています。 交渉があっさりと成功して難民たちが適切な施設に移送されることになるというのは、現実を考えると楽観的なご都合主義に感じてしまうようなところもありましたが、 ナチス・ドイツによるホロコーストを、いかにもありがちな他の紛争・内戦を含む戦争における戦争犯罪や大量虐殺とではなく、 欧州難民危機と人道問題として重ねて見せるアイデアには、感心されました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

3月11日封切でシネコンに配給されているくらいなので当分上映されているだろうと思っていたら、 2週間で上映終了が続出し、観に行った日比谷シャンテも上映する最後の週末だったので、慌てて観に行ったのでした。 そういえば、欧州難民危機が表面化した2015年というのは、プーチン・ロシアがアサド政権支援でシリア内戦に介入して非人道的な攻撃が激化した時だった、 などどいうことを思い出してしまいました。 レバノン戦争中の虐殺事件を題材にした Waltz With Bashir といい、 ホロコーストと難民問題を題材にした Where is Anne Clark といい、 現在進行中のプーチン・ロシアのウクライナ侵略と重なるところも多く、もっと多くの人に観られればよかったのに、と思わないではありません。 (既に首都圏での上映が終わってから鑑賞メモを書いても遅過ぎるのですが……。)

[3987] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Apr 10 22:22:55 2022

3月末と4月頭の週末は恵比寿へ通って、東京都写真美術館1Fホールの上映企画 『世界の秀作アニメーション2022春編』で、 この3本を観てきました。

Louise en Hiver
『浜辺のルイーズ』
2016 / JPL Films (France), Unité Centrale (Canada), Arte France Cinéma (France), Tchack (France) / colour / 75 min.
Un film de Jean-François Laguionie.
Réalisation, scénario et direction artistique: Jean-François Laguionie
Musique: Pascal Le Pennec et Pierre Kellner.
Avec: Dominique Frot (Louise), etc.

くすんだ色彩で色面にもムラが残るちょっとぼやけたパステル画のようなイラストレーションが動くかのようなアニメーション映画です。 舞台は英仏海峡に面した海水浴場リゾート、 そこに住む一人暮らしの老女 Louise が、一人取り残されて過ごしたオフシーズンを幻想的に描いた作品です。 夏の終わりの嵐に皆が避難してまい気付くのが遅れた Louise が一人残されたという設定ですが、 実際にそれが起きたというより、静かなオフシーズンの街で Louise が自省するように想像した話なのかもしれません。 海岸に面した砂丘の上に掘立小屋を作り、畑を作り魚を取って生活するのですが、 サバイバル生活というよりのんびりマイペースの生活かのように描かれます。 その間にカットバックでまだ年頃だった頃の若かった頃の思い出のエピソードが入ります。 封印されたトラウマが露わになるというより、歳をとって忘れかけていた話をぼんやりと思い出す中で、Louise の人物像の陰影が濃くなるように感じられました。 ちょっとぼやけたパステル画の画面のように、鮮烈な印象を与えるものではないけれども、淡々とした味わいを感じる作品でした。

『ブレッドウィナー』
2017 / Cartoon Saloon (Ireland), Aircraft Pictures (Canada), Melusine Productions (Luxembourg) / colour / 93 min.
A film by Nora Twomey.
Directed by Nora Twomey with screenplay by Anita Doron and Deborah Ellis, based on the novel by Deborah Ellis.
Music by Mychael Danna and Jeff Danna.
Starring: Saara Chaudry (Parvana / Aatish), etc.

Wolfwalker 『ウルフウォーカー』 (2020) [鑑賞メモ] などで知られる アイルランドのアニメーション・スタジオ Cartoon Saloon によるアニメーションです。 舞台は、2001年のタリバン政権下のアフガニスタン、 父親がタリバンに拘束されて女ばかりで市場へ買い物へもいけず窮地に陥った一家を救うため、少女 Parvana が髪を切り少年になりすますという話です。 特に女性に対して抑圧的なタリバンの描写は Les Hirondelles de Kaboul 『カブールのツバメ』 (2018) [鑑賞メモ] と共通しますが、 主人公が大人ではなく子供のせいか、ディストピア感は薄めでしょうか。 拘束された父親を救うという大きな物語があって、それは少女が暗唱している寓話的な少年冒険譚と重ねられられて描かれます。 しかし、冒険譚のようなハッピーエンドを Parvana の話には付けられないこともあり、大きな物語ばぼやけたような。 むしろ、Parvana と同じく少年のふりをして働く親友 Shauzia とのエピソードなど、 少年のふりをするようになってからのエピソードの積み重ねの方が印象に残りました。

Funan
『フナン』
2018 / Les Films d'ici (France), BAC Cinéma (Luxembourg), Lunanime (Belgium), ithinkasia (Cambodia), WebSpider Productions (France), Epiuar (France), Amopix (France), Cinefeel 4, Gaoshan Pictures (France (Réunion)), Special Touch Studios (France) / colour / 87 min.
Avec: Bérénice Bejo (Chou), Louis Garrel (Khuon), etc

カンボジア内戦下、1975年のクメール・ルージュによるプノンペン陥落の後に起きた大量殺戮を描いたアニメーション作品です。 監督はフランス人ですが、母がカンボジア人で、主人公の Chou のモデルにもなっているとのこと。 プノンペンに住む Chou の一家 (Chou の夫、夫の祖母、母やその息子、夫の弟妹からなる大家族) が、 プノンペン陥落後、農村に強制移住される中で見舞われる悲劇を描いています。 外からの情報が遮断され、監視下におかれ、強制労働と飢えで尊厳が奪われていく様が描かれていきます。 タリバン政権下のアフガニスタンにも近いようで、舞台が農村で強制労働という要素も大きいせいか、都会的なディストピア物とは違う不条理を感じました。 Chou の家族で生き残ったのは Chou と息子だけですが、死因・行方不明の理由は様々で、 大量処刑のような組織的な大量殺戮ではなく、でたらめな政策の抑圧的な実行で犠牲者が積み上がっていく様を描くようでした。 絵はくっきりとシンプルなもので、グロテスクな場面の直接描写はありませんでしたが、 クメール・ルージュの大量虐殺を題材にしていると覚悟して観たけれども、次々と不条理に死んでいく展開はキツいものです。 実写だったら、リアルすぎて耐えられなかったかもしれません。

東京都写真美術館1Fホールでは、シネコンなどではほとんど上映されない日本、アメリカ以外のアニメーション映画の上映は以前からありましたが、 『世界の秀作アニメーション』と銘打って多くの作品を集めての特集上映は2021年秋編に続いて2回目。 前回は行きそびれましたが、今回は15作品中3作品を観ることができました。 他にも、 Les Hirondelles de Kaboul 『カブールのツバメ』 (2018) [鑑賞メモ]、 Wolfwalker 『ウルフウォーカー』 (2020) [鑑賞メモ]、 Tout en haut du monde 『ロング・ウェイ・ノース』 (2015) [鑑賞メモ]、 L’extraordinaire voyage de Marona 『マロナの幻想的な物語り』 [鑑賞メモ]、 Calamity, une enfance de Martha Jane Cannery 『カラミティ』 [鑑賞メモ] など、観たことがあって好印象が残っている作品が多く取り上げられいて、とても魅力的な上映会でした。 今後も定期的に開催してくれることを期待しています。

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[3986] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Apr 3 16:06:24 2022

先週末の話ですが、土曜は午後に恵比寿へ。この展覧会を観てきました。

本城 直季 『(un)real utopia』
Honjo Naoki: (un)real utopia
東京都写真美術館 B1F
2022/03/19-2022/05/15 (月休; 3/21,5/2開; 3/22休). 10:00-18:00 (木金-20:00)

パンフォーカスの望遠写真ではなく、 大判写真機のアオリを利用してまるで焦点深度の浅いミニチュアのクロースアップ写真のような効果を出して撮られた空撮写真、風景写真で知られる 2000年代から活動する写真作家 本城 直季 の個展です。 作品はそれなりに観る機会はありましたが、美術館レベルの個展でまとめて観たのは初めてです。

ビルや家屋が立ち並ぶ都会を撮った写真という印象が強かったのだけど、被写体の多様さに気づくことができました。 リゾートや校庭で遊ぶ人々を撮ったものは、ミニチュア写真ぽさという点では共通しますが、人々の疎な感じは密集した都市建築物の写真とは対照的。 また、ぎっしり建物が並んだ状態だけでなく、京都で緑の中に浮かぶ寺社仏閣を撮ったり、工場の大規模設備を浮かび上がらせたり、ケニヤでサバンナの中で野生動物を撮った写真にも、 周囲がピンボケで対象だけに焦点が当たって浮かび上がるような効果に、ミニチュア写真のようという以上の、視点誘導効果の面白さを感じました。

宝塚歌劇の舞台写真を宝箱 “treasure box” として撮ったシリーズや、 COVID-19による緊急事態宣言下に撮ったのではないかと思われる照明が落ちた夜の繁華街など、 ミニニュア写真風空撮写真以外のアプローチにも将来の可能性を感じないわけではありませんでしたが、 手法へのこだわりと対象の多様さが面白い展覧会でした。

Light as Medium: The TOP Collection
東京都写真美術館 2F
2022/03/02-2022/05/22 (月休; 3/21,5/2開, 3/22休). 10:00-18:00 (木金-20:00)

雲を雲としてではなく抽象的な心象風景として撮った Alfred Stieglitz: Equivalent (1929) を起点に、 Stieglitz をメンター的な存在として Minor White らが1952年に創刊したアメリカの写真雑誌 Aperture に関係する写真作家や、それらと同じ系譜に乗るような作風の写真を集めたコレクション展です。 多重露光やフォトグラムなどの技法も使った作品も多く、 被写体そのもの記録としての写真というより、抽象的な心象を被写体からの光で描くような写真が集められていました。

初代編集者の Minor White 、創刊に関わった Barbara Morgan、Ansel Adams、 Aperture 誌に写真を発表した Edmund Teske や Walter Chappell など、 直接に関わった作家が展示の核になるのですが、その中で印象に残ったのは Barbara Morgan。 ポスターやフライヤにも使われた Pure Energy and Neurotic Man (1940) の光の軌跡と手のコンポジションや、 ダンサー Martha Graham を撮った Martha Graham - Letter to the World, Kick (1940) など、 タイトルの付け方も含めて気に入りました。

類似の傾向を持つ写真としては、Man Ray の写真のシュールなイメージや、László Moholy-Magy のフォトグラムや新即物主義な写真なども取り上げられていました。 日本の写真家では、瑛九 (Ei-Q) の1950年代の「フォト・デッサン」や杉浦 邦恵の最初期1960年代の特殊なエフェクトを使った写真 [鑑賞メモ]。 より最近では、佐藤 時啓 のライトペンと長時間露光による風景写真 (出展されていたのはポラロイド写真によるもの) [鑑賞メモ] や 田口 和奈 [関連する鑑賞メモ] による目の部分だけちぎり出した写真を写し込んだ写真作品など。 もちろん、典型的な写真だけではなく、関係付けられるギリギリの線を狙ったものもあって、 そんな中では報道写真作家と知られる W. Eugene Smith の写真なども取り上げられていました。

観たことのある写真も結構ありましたが、単にキュレータの指向/嗜好というだけでなく、 Aperture 誌に関係するという写真史的なしっかりした軸も感じられ、 こういう切り口があったかと新鮮に観ることができました。 素直に線形に並べられているというより直感的に順路が捉えづらい入り組んだ展示構成も、 年代順や関係を読み解くような面白さ。 コレクション展示ということによる油断もありましたが、見応えのある展覧会でした。

Geneses of Photography in Japan: Hakodate
東京都写真美術館 3F
2022/03/02-2022/05/08 (月休; 3/21,5/2開, 3/22休). 10:00-18:00 (木金-20:00)

2018年の第一弾、長崎編 [鑑賞メモ] から 少々間が開きましたが、『写真発祥地の原風景』は はこだて (箱館/函館) 編です。 黎明期写真だけでなく同時代の錦絵などの資料も使い、ロシア船来航やアイヌに関する資料を交えて、 幕末開国時の開港5港の一つという西洋へ早くに開かれた湊町という、 写真史的にも面白いポジションだったということを浮かび上がらせるよう。 函館へはこの10年くらいの間に2回ほど行っていることもあり土地勘もそれなりにあり、 当時のパノラマ写真などから現在の風景を思い浮かべることもそれなりにできたことも、楽しめた一因でしょうか。

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[3985] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sat Apr 2 23:36:53 2022

二週間前の話になってしまいましたが、春の彼岸の三連休中日の日曜は、午前中に墓参を済ませ、昼には京橋へ。 国立映画アーカイブの上映企画 『フランス映画を作った女性監督たち――放浪と抵抗の軌跡』で、 第二次世界大戦後にドキュメンタリーや La Cinematheque Française での映画保存で活躍することになる Marie Epstein が関わった戦間期のフランス映画を2本観てきました。

『二重の愛』
1925 / Films Arbatros (France) / silent / B+W (tinted) / DCP / 107 min.
Réalisation: Jean Epstein; Scénario: Jean Epstein, Marie Epstein; Photographie: Maurice Desfassiaux; Decors: Pierre Kéfer; Costumes: Charles Drecoll, Paul Poiret.
Nathalie Lissenko (Laure Maresco), Jean Angelo (Jacques Prémont-Solène), Camille Bardou (Baron de Curgis), Pierre Batcheff (Jacques Maresco), etc.

フランスの白系ロシア人の映画会社 Albatros [関係する鑑賞メモ] の制作による、上流階級物の映画です。 監督は Marie Epstein の兄 Jean ですが、脚本で Marie が参加しています。 メロドラマ映画といっても三角関係ではなく、ギャンブル中毒の恋人と息子に振り回される女優・歌手 Mme. Maresco の愛と受忍の物語です。 モナコで評判の Mme. Maresco は、富豪の放蕩息子の恋人 Jacques に慈善募金の金を使い込まれますが、彼の罪を被り、Jacques はアメリカに逃げます。 Mme. Maresco は Jacques との間の子 (やはり名は Jacques) もあってしばらく苦労するものの、パリに出て再び成功しますが、父親に似て子もギャンブル中毒で、それに悩まされます。 アメリカに渡った Jacques は改心して石油王として成功し、仕事でパリに立ち寄ります。 そこで、偶然 Mme. Maresco 母子と出会い、ギャンプルで破滅仕掛けた息子を救い、2人をアメリカに連れて帰る事にする、という物語です。 後半の社交クラブでの再会、カジノでの父子対決、不正がバレて警察に連行された息子を救う場面などなかなか緊張感のある展開が楽しめました。 しかし、前半の破滅から立ち直り成功するまでが一言で済まされてしまうようなご都合主義や、 そもそもギャンブル中毒の恋人や息子の罪を被るという愛のあり方に、感情移入し難いものがありました。 上流階級物という事で、当時の流行の豪華な屋内装飾やや衣装も見どころでしょうか。 Mme. Maresco の Paul Poiret らしいドレスなど服装こそ Art Déco 期らしかったですが、 室内装飾はさほどでもなかったでしょうか。

Hélène
『美しき青春』
1936 / Les Films Marquise (France) / 35mm / B+W / 109 min.
Réalisation, Scénario: Jean Benoît-Lévy, Marie Epstein; d'après le roman de Vicki Baum.
Madeleine Renaud (Hélène Wilfur), Jean-Louis Barrault (Pierre Régnier), Constant Rémy (Le professeur Amboise), Héléna Manson (Valérie), etc.

1930年代に Marie Epstein が Jean Benoît-Levy と共同監督した一連の映画の中の1本です。 舞台はアルプスの麓グルノーブル。 必ずしも裕福な家の出ではない苦学する女学生 Hélène が 大学卒業後も学問を究めるため進学し、博士の学位をとり、医化学の研究者になるまでの学生生活を描いた映画です。 助手として学費や生活費を稼ぎながら大学院へ通うなか、 家業の医者を継ぐと親の期待と音楽という自分の希望の板挟みになった恋人が自死したり、 自死の前に妊娠した恋人の子を一人で育てつつ研究を進めたりと、その波乱もあるのですが、 ドラマチックな起承転結のような流れがあるというより、エピソードの積み重ねのよう。 生活の苦労を生々しく描いたような描写はなく、ご都合主義な点も感じないわけではないですが、 リアリズム的に生活を描いていました。 師にあたる教授と結ばれるというエンディングは釈然としないものがありましたが、 当時のフランスの大学生の生活を垣間見るような興味深さはありました。 というか、同時代の松竹映画が翻案してもおかしくないような話だよなあ、と、思いつつ観ていました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3984] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 27 22:07:26 2022

先週末の話になりますが、三連休初日土曜は午後に初台へ。この舞台を観てきました。

新国立劇場 小劇場 – THE PIT
2022/03/19, 13:00-15:00.
構成・演出: 小野寺 修二;
音響効果: 池田 野歩; 音響: 黒野 尚; 照明: 吉本 有輝子; 美術: 石黒 猛; 衣裳: 今村 あずさ.
出演: カンパニーデラシネラ: 崎山 莉奈, 藤田 桃子, 大庭 裕介, 荒 悠平, 王下 貴司, 斉藤 悠, 仁科 幸, 小野寺修二.
初演: 2017/06/04 新国立劇場 小劇場.
主催・制作: 新国立劇場

新国立劇場2016/17シーズンの「大人も子供も一緒に楽しめるダンス作品」の公演で上演された 『ふしぎの国のアリス』の再演です。 2020年6〜7月に再演が予定されていたもののCOVID-19の影響で公演中止。それからさらに1年半経っての再演です。 カンパニーデラシネラ [鑑賞メモ] の公演はそれなりに足を運んでいますが、 この作品は初演時に見逃していたので、やっと再演で観ることができました。 出演は初演時と同じですが、初演時よりもセリフに依存しないように変更したとのこと。

ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』 (Lewis Carroll: Alice's Adventures in Wonderland, 1865) に基づく作品です。 といっても、カンパニーデラシネラですので、オリジナルの物語をそのまま辿るような作品ではありません。 Alice の役は主に 崎山 が演じていましたが、藤田が演じるときもありました。 小野寺がほぼ The White Rabbit を演じていましたが、 他のパフォーマーは特定の誰かを演じるというものではありませんでした。 Mad Tea Party に思われる場面にしても、登場人物は抽象化されて、 4人による不条理な椅子取りのようなパフォーマンスとなっていました。 このように、登場するキャラクターをパフォーマーに割り当てるというわけでなく、 その中のエピソードに着想した場面を8人のパフォーマーで演じるような作品でした。

原作がそもそもその色が強くありますが、マイム劇らしいシュールで不条理な異世界行の舞台でした。 単にマイムに着想したというだけでなく、 傾いた天板を持つ8ピースに分かれる台や、8枚の可動式の縦長の衝立など、 物をパズルのように動かしつつ、その動きに着想したパフォーマンスが楽しい作品でした。 天板の傾いた台は、その形状の不規則性も不条理さを出していましたし、 単に台として使うだけでなく、下側をライトアップして地下通路を表現したり、 天板を横にして立てて小部屋のようなものを表現したり、とその巧みな見立てを楽しむことができました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

プーチンのロシア軍がウクライナを侵略し始めて約一ヶ月。 ロシア軍の拙攻に頑強な抵抗もあってウクライナは主要都市を守り切りました。 何かと大日本帝国 (もちろんロシアが大日本帝国相当) の十五年戦争を連想させられる展開なのですが、 当初の目的を達成したのでドンバスの完全開放に注力というロシア軍の発表をみると、 ガダルカナルの戦いくらいの局面なのかしらん、と。 しかし、これからが長いというか、悲惨な戦闘はまだまだ続くのだろうなあと。

そんな戦争もあって、COVID-19のことなどすっかり忘れかけてしまっていますが、 流石に第6波も下降局面に入って22日に蔓延防止等重点措置も21日をもって解除。 街中も賑わいを取り戻しつつあるように感じます。 しかし、まだ第5波のピークよりも感染者数は多い状態。油断なりません。

戦争に疫病 (COVID-19)、17日には東北で大きな地震、そして、その影響で18日から22日にかけての東日本の電力不足、と、これでもかと暗い出来事が続くこの頃ですが、それでも季節は春。 この週末で近所のソメイヨシノも七部咲きくらいて見頃。カルガモのヒナもかえり始めています。 そういうのを無心で眺めつつ散歩することで、なんとか心のバランスをとっているような……。

[3983] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Mar 21 22:23:58 2022

先週末の話になりますが、土曜は午後に与野本町へ。この舞台作品を観てきました。

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール舞台上
2022/03/12, 15:00-16:10.
Concept & performance: Daniel Linehan
Dramaturgy: Vincent Rafis; Outside eye: Michael Helland; Scenographic advice: 88888; Costume design: Frédéric Denis; Lighting design: Elke Verachtert; Sound: Christophe Rault
Production: Hiatus (Brussels, BE)
World Premier: deSingel, 1 March 2019, Antwerp, Belguim.
主催・企画・制作: 彩の国さいたま芸術劇場 (公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団).

アメリカ・ワシントン州オリンピア出身で2008年までニューヨークで活動した後、 ベルギー・ブリュッセルに拠点を移して活動する振付家 / ダンサーのソロ公演です。 これまでの作風など全く予備知識がありませんでしたが、 久々の海外からのアーティストの公演ですし、観客を舞台上にあげての公演という興味もあって 足を運びました。

実際のところ、舞台上に観客を上げたのは、 観客とパフォーマーの位置関係がフラットなオルタナティブ・スペースのような空間での上演を前提とした作品だったからでしょうか。 折り畳みの椅子を四辺に二段に並べた10m×15m程の長方形のスペースを使ったパフォーマンスでした。 前半に観客の足に口づけするような場面があったものの、客とのインタラクションはほぼなく、イマーシヴといえるような演出はありませんでした。

主題は子供時代の父の死の記憶とその受容といったもの。 最初のうちは、そんな主題も感じさせず、パフォーマンスする場の寸法を身体を使って測るようなパフォーマンスや、 マイクを身体に擦り付ける音をループさせた音に合わせた動きなど、身体と世界の距離感を測るようなパフォーマンスでした。 やがて、父が死んだ際の様子の記憶、母親や親族の様子などを静かに語り、それもルーパーやエフェクタで処理しつつ、ダンスをしました。 ダンスは技巧を見せるものでもなく、ナラティブを使いながらも心情を発露するような演技ではなく。 私的というか内省的で繊細な静謐さを感じる作品でした。

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プーチンのロシア軍がウクライナに侵攻は、依然として激しい戦闘が続いていて、日々、その悲惨な状況が伝わってきます。 そんなこともあってか、静謐な作品を観つつも、どうにも心穏やかに向き合うことが難しいとも感じてしまいました。うむ。

[3982] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Mar 6 22:13:16 2022

今週末は、土曜の昼に白金台へ。この展覧会を観てきました。

Mode Surreal: A Crazy Love for Wearing
東京都庭園美術館
2022/01/15-2022/04/10 (月休;3/21開,3/22休), 10:00-18:00.

Surrealism がモード (高級服飾デザイン) に与えた影響をテーマにした展覧会です。 正直に言えば「シュール」な雰囲気のデザインを集めた展覧会かもしれないと危惧していたのですが、 期待以上にちゃんと Surrealism に取り組んだ展覧会となっていました。

核となるのは、戦間期の Surrealism 運動と実際に連動していた1930年代〜1940年代のモードで、 特に Salvador Dali や Jean Cocteau と交流のあった Elsa Schiaparelli が鍵となるデザイナとなっていました。 あと、1920年代 Art Deco のグラフィック・デザインで知られる A. M. Cassandre の 1930年代後半以降に Surrealism に作風を変えた仕事も多く取り上げらていました。 以前に観た Cassandre の展覧会では蛇足に感じられましたが [鑑賞メモ]、 こういう位置付けの展覧会で観るとその作風変化の意味が良く捉えられるように感じました。

もちろん、Surrealsim とファッションの直接的な関係だけではなく、 近代以前の過剰な髪飾り、帽子などの西洋のデザインや、中国の纏足のような習慣、 動物等をモチーフにした帯留めなどの装飾具や花魁に見られるような過剰に装飾的な服装など日本の歴史的なデザインを取り上げ、 まだ、舘鼻 則孝、永澤 陽一、串野 真也 といった現代の日本のデザイナーによる Surrealism の系譜に乗るようなデザインについても大きく取り上げていました。 Lady Gaga が着用したことで注目された 舘鼻 則孝 (Noritaka Tatehana) の靴などが取り上げられていましたが、 Lady Gaga だけでなく Björk や St. Vincent の衣装は Surrealism の系譜とも取れる事に気づかされました。 ファッションデザイナーの 串野 真也 とアーティストの スプツニ子!(尾崎 ヒロミ) の「光るシルク」のドレスの展示も美しかったのですが、 企画の流れからは少々外れているようにも感じました。

ファッション史は Modernism 的な系譜で描かれがちですが、Surrealism 的な系譜で見るのは、新鮮でした。 Elsa Schiaparelli がモードにおける Surrealist なら、Coco Chanel が Modernist でしょうか。 Surrealism とモードの直接的な関係など展示の核はしっかりしていましたが、 近代以前のものを取り上げたり、現代の日本のデザイナーを取り上げたりという点は、 流れを描くというより、あちこち摘み喰いに感じられたことは否めません。 しかし、COVID-19パンデミック下では展示に使えるものも限られているでしょうし、 モードにおける Surrealism の系譜の可能性を見せてくれただけでも、充分に刺激的な展覧会でした。

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2回目から6ヶ月経過し接種券が届いたので、早速、大規模接種会場を予約して 土曜の午前中にCOVID-19ワクチンモデルナ筋注の3回目を受けました。 2回目の副反応が鎮痛解熱剤 (カロナール) を服用して38℃超の発熱というキツさだったので、 覚悟して臨んだのですが、 鎮痛解熱剤 (イブプロフェン) で抑え込める程度の微熱とうっすらとした頭痛で済みました。 風邪の初期のような体調だったので、日曜は大人しく過ごしましたが。

ワクチン接種直後は副反応はまだないだろうと、展覧会を観に行ったわけですが、 土曜は春一番、展覧会を観ている間にみるみる花粉症の症状が酷くなってきてしまいました。 日曜も軽くおさんぽしたのですが、服薬、点鼻、点眼にマスク着用で臨んでも、1時間も歩くと花粉症の症状が出てしまいますね。 陽気は良いのにおさんぽしづらいシーズンになってしまいました。

プーチンのロシア軍がウクライナに侵攻を開始、戦争が始まって (2月24日)、約10日。 あっという間に、戦場となったウクライナの街並みがアポカリプティックに、チェチェンやシリアのよう。 プーチンのロシア国内でのディストピア的な独裁政権仕草もここまで一気に進むか、と。 こんなことがあまりに急速に進んでいることに、戦慄しています。 ロシアやウクライナからは直接CDを取り寄せていたこともありましたし、2011年にはロシア旅行も行きました。 こんなことが普通にできる日がまた戻ってくるのだろうか……。

[3981] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 27 22:59:21 2022

今週末は、土曜の昼前に府中へ。会期末週末となってしまったこの展覧会を観てきました。

Akiko Ikeuchi: Or Gathering the Energies of the Earth
府中市美術館
2021/12/18-2022/02/27 (月休;1/10開;12/29-1/3,1/11,2/24休), 10:00-17:00.

1990年代後半から現代アートの文脈で活動する 池内 晶子 の個展です。 といっても、自分が意識するようになったのは2010年代以降。 『MOTアニュアル2011—Nearest Faraway | 世界の深さのはかり方』 (東京都現代美術館, 2011) [鑑賞メモ] や 『19th DOMANI・明日展』 (国立新美術館, 2016-2017) [鑑賞メモ] で観て、 絹糸で作った構造の繊細なインスタレーションが印象に残っていました。

今回の個展は、 マケット、ドローイングなどの関連展示もありましたが、やはり、 絹糸を使ったインスタレーション《Knotted Thread》シリーズの サイトスペシフィックな新作6点 –– 展示室をフルに使っての3点、ガラスケース内のインスタレーション2点、あと、エントランスロビーの吹き抜けを使った作品1点 –– をメインに据えた展示でした。 素材の絹糸や結び目の数にも意味を持たせているようでしたが、実際に観ていると、 今まで行った時に全く意識しなかった美術館の建物の東西南北方向やその軸からのズレに気付かされるようなインスタレーションでした。

企画展示室1の作品《Knotted Thread-red-⌀1.4cm-⌀720cm》は、東西南北の軸で張られた糸から吊り下げられた錐体のような赤い絹糸の構造と床の円形 (実際は渦巻状とのこと) に這わされた赤絹糸を対比させた作品。 そのフラジャイルな構造は今まで観た作品に最も近いイメージのものもでした。 しかし、それ以外の作品は構造が疎となり、一見何も無いようにすら見えるというのも。 特に白の絹糸を南北に張ってそこに一筋の白 絹糸を垂らした 企画展示室2《Knotted Thread-h220cm(north-south)》は、 暗い展示室の中で一筋のささやかな煌めきを観るよう。 エントランスロビーの《Knotted Thread-white-22knots-north-south》は、 目を凝らして探して、やっと見つけられるほど。 そんなことろは、むしろ、内藤 礼 の作品 [鑑賞メモ] に近い物を感じました。 そのような、自身の感覚を研ぎ澄まされるような作品は、とても好みです。

14時から、インスタレーション作品の形状を変更するパフォーマンスというか公開制作があったのですが、 それほど広くもない展示室に長蛇の列という、新型コロナウイルス感染症が無くてもまともに鑑賞できる状況ではなかったので、 冒頭の10分ほど資料展示のプロジェクタ投影された映像で様子を確認する程度で、美術館を後にしました。

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府中市美術館へ行く時は、いつも府中駅からちゅうバス (コミュニティバス) でしたが、 南武線で分倍河原で乗り換えて府中駅に出るのも面倒、ということで、 府中本町駅からタクシーにしてしまいました。 1,000円余で行けると分かったのも収穫でしたが、 府中本町駅と府中駅の近さ (さすがに武蔵小杉駅の南武線と横須賀線との乗り換えよりはありそうでしたが、 新川崎駅と鹿島田駅くらいの距離感) に気付くことができたのも収穫でしたでしょうか。

昼は春のような陽気だったので、展示を観たりランチをしたりする合間に府中の森公園をお散歩。 府中駅から府中本町駅まで、途中、大国魂神社 (武蔵国総社にして武蔵国衙跡) に寄ってみたり。 いい気分でお散歩できましたが、後になって足腰にきてます。 コロナ禍による外出不足ですっかり足腰が萎えてしまっていると実感しました。

[3980] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 20 21:51:14 2022

今週末は、土曜の昼に川崎へ。この上映を観てきました。

from Metropolitan Opera House, 2021-12-04.
Music by Matthew Aucoin, libretto by Sarah Ruhr, based on her play Eurydice (2003).
Production: Mary Zimmerman.
Set Designer: Daniel Ostling; Costume Designer: Ana Kuzmanic; Lighting Designer: T.J. Gerckens; Projection Designer: S. Katy Tucker; Choreographer: Denis Jones; Dramaturg: Paul Cremo.
Cast: Erin Morley (Eurydice), Nathan Berg (Father), Joshua Hopkins (Orpheus), Jakub Józef Orliński (Orpheus's Double), et al.
Conductor: Yannick Nézet-Séguin.
World Premiere: LA Opera, February 1, 2020.
A co-production of the Metropolitan Opera and LA Opera.
Commissioned by the Metropolitan Opera and LA Opera.
上映: 109シネマズ川崎, 2022-02-19 11:30-14:45 JST.

有名なギリシャ神話の Orpheus and Eurydice の物語を妻 Eurydice の視点から描いた2003年の戯曲を翻案した新作オペラです。 作曲の Aucoin、演出の Zimmerman の作風に関する予備知識もなく、戯曲は未読でしたが、 Eurydice 視点でどんな話になっているのだろうという興味で、観ました。

舞台は現代、というか、19世紀末〜20世紀前半頃と思われる時期に置き換えられ、Orpheus は音楽家という設定です。 冥界で亡き父と再会した Eurydice が、父と夫の間で揺れ動き、結局全てを失ってしまうという悲劇として描かれていました。 また、Orpheus はその音楽的な内面の演じる1を加え2人1役でした。 この3役がシリアスに演じられる一方、悪役でもある冥王 Hades と冥界の3つ石が、むしろコミカルに演じられていました。 対比させるだけでなくコミックリリーフ的な意図もあるのだろうと、その意図はわからないではないのですが、 自分の好みもあるとは思いますが、その漫画的な造形も含めてキッチュに感じられてしまいました。 そんなこともあってか、いまいちハマれませんでした。

音楽は、Minimal Music 的な反復もちりばめつつも、全体としては歌でドラマチックな展開を聞かせました。 舞台装置はミニマリスティックというほどではないもの控えめに、照明や黙役のダンサーを多く使った演出でした。

LA Operaで世界初演された直後にCOVID-19禍で劇場が閉まり、再開してのMet初演という作品ということもあるのでしょうが、 幕間のインタビューで、この作品における死者との再会と喪失という題材をCOVID-19禍における喪失感が、度々重ねられていました。 確かに、パンデミック以降の累積死者数は、日本も2万人を超える深刻なものですが、アメリカは100万人近くに達しています。 インタビューを聴いていて、COVID-19による死亡がアメリカではそれほど身近なものだったのか、と感じさせられました。

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しかし、この時期は Metropolitan Opera Live in HD、Royal Opera House Cinema、National Theatre Live の上映が続きます。 今シーズンは久々に Opéra national de Paris の日本上映もあって、 コンテンポラリー物に絞っていても、毎週末のようになってしまっています。 年度末繁忙期なので、もう少しばらけてもらえると嬉しいのですが……。

[3979] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Feb 13 20:46:55 2022

三連休初日金曜の午後、思っていたより展覧会を観るのに時間が掛からなかったので、 東銀座というか築地へ移動。この上映を観てきました。

『プレイ』
Palais Garnier, L'Opéra national de Paris, 2017-12.
Chorégraphie, décors et costumes: Alexander Ekman
Musique: Mikael Karlsson
Costumes: Xavier Ronze; Lumières: Tom Visser; Vidéaste: T.M. Rives; Assistante du chorégraphe: Ana Maria Lucaciu; Conseillère stratégique et dramaturge: Carina Nildalen; Assistante aux décors: Claire Puyenchet.
avec: Stéphane Bullion (danseur étoile), Muriel Zusperreguy (première danseuse), Vincent Chaillet (premier danseur), et le Corps de Ballet de l’Opéra national de Paris.
Calesta «Callie» Day (chanteuse gospel), Frédéric Vaysse Knitter (piano), Amanda Favier (premier violon) Pauline Fritsch (second violon), Benoît Marin (alto), Eric Villeminey (violoncelle), François Gavelle (contrebasse), Christian Wirth (saxophone soprano), Géraud Etrillard (saxophone alto), Adrien Lajoumard (saxophone ténor), Pascal Bonnet (saxophone baryton), Adélaïde Ferrière (percussions).
Première : 6 décembre 2017, Palais Garnier, L'Opéra national de Paris.
Réalisation : Tommy Pascal.
上映: 東劇, 2022-02-11.

コンテンポラリーダンスの文脈でも活動するスウェーデンの振付家 Alexander Ekman が Ballet de l'Opéra national de Paris (パリ・オペラ座バレエ団) に振付た新作バレエです。 2018年に NHK BS プレミアムシアターでも放送されていて、 BelAir Classics の DVD/Blu-ray もリリースされていますが、 『パリ・オペラ座バレエ シネマ』の中の一作品として映画館上映されたので、大画面で観るのも良いだろうと観てきました。 コンテンポラリー演目の上映/上演を応援したい、というのもありますが。

音楽にはオーケストラは用いず、pop なものではないものの、 オープニングからして saxophone quartet だったり、gospel な歌だったりと、jazz のイデオムが強いもの。 オペラ座を遊び場にしたような作品とも言われますが、 前半は、白いスポーツウェアを思わせる衣装によるダンスに、 アポロ11号月面着陸時の宇宙飛行士のような宇宙服姿や、風船を被ったかのようなダンサー、 鹿のツノのように2対の枝をはやしたフェイスガード無しのアイスホッケー・ヘルメットを被った女性ダンサーたちの群舞。 宇宙服姿などその意図を掴み兼ねましたが、ナンセンスに近い不条理なのかもしれません。 前半ラスト、大量の緑のボールが降り注ぎ、舞台を埋め尽くし、ダンサーたちがそれに戯れます。

後半は、衣装は白のスポーツウェアからうって変わって暗いグレーのセミフォーマルに近いシンプルで落ち着いた服装になります。 オーケストラピットに落とした緑のボールの深みの中でザッザッと音を立てながら男性ダンサーたちが踊る場面、 ダンサーたちが灯ったキャンドルを持って静かな動き、 そして、前半までほとんど宙吊りだった一片1.5mはあろう30個近い白い箱を整然と並べてのその周りでのダンスなど。 後半の方が視覚的に美しくて、好みでした。 ラスト近く、主役級の男性ダンサーがグレーの服を脱ぐ場面で、再び前半の世界に戻るよう。 そして、一旦幕が降りた後のフィナーレは、客席にバルーンやボールを投げ入れてのサーカス風でした。

家でNHKオンデマンド (BS プレミアムシアター) で観た時は、前半のシュールな場面の意図を掴みかね、後半緊張が切れたか、ピンときませんでしが。 しかし、映画館で大画面で観ると、没入感もあってか、期待以上に楽しむことができました。 家で DVD/Blu-ray やストリーミングで観る手軽さや観られる作品の多さ (特に人気があまり無いコンテンポラリー作品) も良いのですが、 やはり、映画館での上映で観るのは良いものです。 もちろん、実際の上演で観られたら、それがベストなのですが……。

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年度末の繁忙期というとこで、土日は仕事。 トラブル対応で、本来やりたかった仕事はほとんど手につきませんでしたが。うーむ。

[3978] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sat Feb 12 20:44:55 2022

木曜晩から金曜未明にかけて関東南部も降雪の予報でしたが、結局、影響が出るほどでなく。 ということで、祝休日の金曜は昼に恵比寿へ。 欠かさずという程ではないものの、ずっと定点観測してきているこの展覧会を観てきました。

Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions 2022 – After The Spectacle
東京都写真美術館 ほか
2022/02/04-02/20 (月休), 10:00-20:00.

東京都写真美術館主催のアニュアルの映像芸術展です。 例年、東京日仏会館も展示会場となっていましたが、今年は、周辺の関連展示はあったものの、東京都写真美術館でほぼ完結。 国内作家中心というのはもちろん、昨年 [鑑賞メモ] にも増してコンパクトに感じられました。 COVID-19 下で企画準備段階から大きな制約があることは容易に想像できるので、こうして継続しているだけでも意義があるとは思いますが。

写真やビデオを使ったコンセプチャルな現代アート文脈の作品が中心で、 映像の妙、視覚トリック的な面白さを感じる作品があまり無かったのが物足りなく感じました。 といっても、この映像の妙、視覚トリック的な面白さの無さは、「スペクタクル後」という企画意図かもしれません。 しかし、そんな中では、ストロボライトやデジタルビデオカメラの走査を使って観る 立体ゾートロープ作品 パンタグラフ 《ストロボの雨を歩く》 (2015) が、恵比寿映像祭に出てくる作品らしくて、気に入りました。 ここ20年近く、あまりチェックできていなかったのですが、 studio BIG ART [鑑賞メモ] の人だと懐かしく、 こうして制作が続いていて嬉しく思ったりしました。

今回は3階の展示室の2/3ほどが、映像祭のメインテーマに合わせた「スペクタクルの展覧会:小原真史企画」と題された、 19世紀末から20世紀にかけての博覧会やそれに関連するスペクタクルの写真・映画からなる展示で、コレクション展示を観るよう。 映像祭内企画ではなく、テーマで通常のコレクション展示をして欲しかったです。

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