森美術館による若手アーティスト紹介する企画 MAM Project の5回目の展覧会は、 1993年に共同制作を始めたイギリス (UK) 出身の2人組、 John Wood & Paul Harrison の展覧会だ。 展示されていたのは全てビデオ作品だった。
1km (2004) では 他に何もない部屋の中で黒い服を着た一人の男が 台のの上に整然と積み上げられたA4判大と思われる白い紙を グラインダ様の機械を使って一定方向に一定の速度で床に一枚一枚バラまいていく様子を 固定カメラで捉えた作品だ。 タイトルの1kmは、おそらく、積み上げた紙のバラまく方向での総延長を意味していると思われる。 単純な動作 (とその反覆) とそれに対する物体の動きを固定カメラを使いミニマルに撮影することにより、 その物理的特徴 (例えば 1km という長さ) を表現してみせる。 それ以外にほとんど意味の無い動作と物の動きが生み出す ナンセンス・ユーモアに限りなく近い面白さが、彼らの作品の魅力だ。
1km ではカメラのアングルは少々部屋の奥行きを感じさせるものだが、 多くの作品では、むしろ部屋の奥行きや高さ (深さ) を感じさせないよう 壁や床の中央に正対するように置かれている。 その不自然なアングルが、逆に、画面の中で起きる出来事を少々意外に感じさせる。 ミニマルな演出はその意外さを際立たせていてもいる。 それも、彼らの作品の魅力になっている。
そういった彼らの面白さを堪能できる作品は、今回の展示の中では約30分の比較的長い作品 Hundredweight (2003) だろう。 床も壁も真っ白な長方形の部屋を天井の中央に床に正対して設置された固定カメラが捉えた映像が、 床に投影されている。それを観ると、まるで部屋を上からのぞきこんでいるように感じる。 映像はその中で行われる様々なパフォーマンスの短いセクションをループ状に繋いだものだ。 各セクションは1分足らずで、全部で36セクション。 部屋の広さ、高さ、その時々に置かれている物体の特徴等を 浮き上がらせるような、単純な動作からなるパフォーマンスが行われる。 36のアイデアも多様で、それぞれのセクションはミニマルながら30分見続けていても飽きなかった。 むしろ、次はどうするのだろう、と観ているものを引き込む強さすら感じた。 特に気に入ったセクションは、 床の一部に青く染めた水を撒きそこに部屋を照らす蛍光灯を浮かび上がらせたものと、 部屋の上部を覆う透明なビニールシートを部屋の一角に置かれた箱に引き摺り仕舞込むというものだ。