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Review: 『ル・コルビュジエ —— 建築とアート、その創造の軌跡』 (Le Corbusier: Art and Architecture &mdash A Life of Creativity) @ 森美術館
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2007/09/01
『ル・コルビュジエ —— 建築とアート、その創造の軌跡』
Le Corbusier: Art and Architecture &mdash A Life of Creativity
森美術館
2007/5/26-9/24 (会期中無休), 10:00-22:00 (火10:00-17:00)

スイス (Switzerland) 生まれでフランスを拠点に活動した建築家 Charles-Edouard Jeanneret (aka Le Corbusier) の回顧展は、 代表作とも言える1920〜30年代のモダニズム建築よりも、 むしろ第二次世界大戦後の建築や都市計画、 それから生涯描き続けた絵画に光を当てた展覧会だった。 それは、実寸再現空間が、絵を描くのに使っていた Le Corbusier のアトリエ、 1952年竣工の集合住宅 Unité d'habitation de Rezé の一戸分の居住空間、 そして、終の家となったコートダジュール (Côte d'Azur) の こぢんまりした別荘 Cabanon Le Corbusier (1951) だということにも象徴的だ。

Unité d'habitation de Rezé の実寸再現は ついここで生活することを考えてしまう面白さがあったが、 まるでマンションのショールームみたいとも思ってしまった。 一方、Cabanon の方は、部屋の良し悪しを観るというより、 Le Corbusier ほど成功した建築家であればゆったり大きな別荘を作ることも可能だったろうに、 機能的だけれどこぢんまりとしたアパートの一室のような所で過ごしていたのか、 あまり派手な生活をする人ではなかったのかな、とか考えてしまった。

そんなわけで、こうして通して観ても、やっぱり、1920年代の建築が最も良いように感じた。 特に、Dom-ino システムや Modulor システム、 建築の5つのポイント (ピロティ、水平に連続する窓、自由なファサード、オープンなフロアプラン、屋上庭園) などが実作に反映された、 Villas La Roche-Jeanneret (1923)、Villa Stein de Monzie (1926)、そして、 Villa Savoye à Poissy (1929-1932) などだ。 あと、今回の展示では、 その外観から白や灰色 (コンクリートの) という印象の強かった彼の建築も、 特に建築の内部は色彩に満ちていたということに気付かされた。 建築内部が気になっただけに、この時代の建築の実寸再現が一つも無かったのは、 少々残念だった。

実寸再現を除くと、図面と模型からなる普通の建築展の展示だったが、 そんな中では、会場のあちこちで投影されていた、 Le Corbusier DVD box からの抜粋映像がとても判り易く感じられた。 図面や模型よりCGアニメーションの方が判り易いとは必ずしも限らないのだが、 Dom-ino システムや Modulor システムようなシステムは、 CGアニメーションによるプレゼンテーションに合っているのかもしれない。

[sources]