TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: Ahuri Theatre, Yabu No Naka: Distruthted (『藪の中 〜Distruthed (ゆがみ)〜』) @ 世田谷パブリックシアター シアタートラム (演劇)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2008/04/06
Ahuri Theatre
Yabu No Naka: Distruthted
『藪の中 〜Distruthed (ゆがみ)〜』
世田谷パブリックシアター シアタートラム
2008/04/06, 14:00-15:10
Inspired by Ryunosuke Akutagawa (芥川 龍之助). Adaptation by the company. Directed by Mathieu Chouinard.
Performed by Edwige Bage [Québec, Canada], Mathieu Chouinard {New-Brunswick, Canada], Haruna Kondo (近藤 春菜) [Japan], Dan Watson [Ontario, Canada], Johan Westergren {Sweden].

Ahuri Theatre は、パリ (Paris, FR) の演劇学校 Ecole Internationale de Théâtre Jacques Lecoq 出身者によって2005年に設立されたフィジカル・シアター (身体表現中心の演劇) のカンパニーだ。 メンバーの出身国はカナダ、日本、スウェーデン、フランスと多国籍だ。 (だだし、フランス出身の Anne Barbot はこの作品には出演していない。)

パフォーマーの母語にほぼ合わせて セリフには日本語、英語、フランス語、スウェーデン語の4言語が使われていた。 しかし、言葉の意味というよりも、その声色で表現するような作品だった。 複数のパフォーマーが同時に発声されることも多いのだが、 それはそれぞれの役の発話が重なるというのではなく、 合唱や効果音に似た効果を狙ったようなもの。 舌打音や微かな息音が多用されていたのだが、 言葉のセリフがそれと同じ水準で使われていた。 劇中音楽を使用していないのだが、本来それが担っている演出効果を、 舌打音や微かな息音、セリフの声色が担っているような感だったのが、 とても興味深かった。

舞台上の小道具は、 一辺50cm程の立方体状の茶色の箱に竹棒を何本か立てただけのような抽象的ものを 5つ置いただけ。 その配置や移動、比較的シンプルなライティング、 そしてそれに絡むパフォーマーの動きをだけを使って、様々な世界を描いていた。

効果音も録音のものはほとんど用いず、 パフォーマーが鐘を鳴らしたり竹棒を叩きつけたりして作りだしていた。 特に、パンという竹棒を鳴らすのはスラップスティックのよう。 殺陣的な動きに合わせる所などは、コメディア・デラルテをを思わせた。 舞台正面だけでなく舞台を囲むよう左右にも客席を設けていたのも、 それを思わせた。 ただ、抽象的な舞台作りといい、特にダンス・シアター的な コンテンポラリー・ダンスの表現と共通するところも多かっただけに、 特に殺陣的な動きの動きがダンスと比較して緩慢で、 その結果、緊張感に欠けるように感じてしまった。

とても良かったという程ではなかったけれども、 シアタートラムくらいの小劇場で気楽に観るには充分。 特に、舌打音や息音と同じ水準でセリフを使った舞台という点は興味深かった。 作品の主題が声色としてのセリフという点に密接な関係があるものだったら、 そういう演出にもっと説得力を感じたかもしれない、とは思ったが。 設立まもない若いカンパニーということで、今後の展開に期待したい。 ちなみに、Chouinard と Watson は Houppz! Theatre というクラウン的なフィジカル・コメディのカンパニーもやっている。 Yabu No Naka: Distruthted はほとんどユーモアの要素の無い作品だったが、 ユーモアを感じさせる作品を見てみたいようにも思った。

sources: