TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: 『知られざる鬼才 マリオ・ジャコメッリ展』 (Mario Giacomelli) @ 東京都写真美術館 (写真展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2008/04/19
東京都写真美術館
2008/03/15-2008/05/06 (月休;05/01開), 10:00-18:00 (木金10:00-20:00).

戦後イタリアの写真家の展覧会だ。 白黒で粒子が粗くコントラスト強い画面が印象的だった。 展示の冒頭に置かれた遺作 Quest Ricordo Lo Vorrei Raccontare (1998-2000; 『この憶い出をきみに伝えん』) の 遺作の仮面等を使った演出写真ぽさに引き摺られたか、 多重露光のような手法を使っているせいか、 surrealism の流れを組む表現という印象を受けた。 (同館で同時開催していた展覧会 『シュルレアリスムと写真 — 痙攣する美』 (Surrealism and Photography: Beauty Convulsed) の印象に引き摺られたかもしれない。)

人物を捉えた写真は少々感傷的に過ぎると感じたが、 Presa Di Coscienza Sulla Natura (1954-2000; 『自然について知っていること』) や Motivo Suggerito Dal Taglio Dell'Albero (1967-1968; 『樹木の断面』) のような 風景や物のクロースアップを撮った写真は面白いと思った。 粗くてコントラストの強い画面が、 即物的なリアルさというよりフロッタージュのような幻想を生んでいた。 風景すらフロッタージュで擦り出したような。 ちなみに、Presa Di Coscienza Sulla Natura で撮られた丘陵に刻まれた模様ののような畝は、 休耕地に Giacomelli 自身が刻んだものということだ。 連作とはいえ構図やサイズの統一感は無く、 そういう所もコンセプチャルな風景写真のように 一連の流れの中で幾何的に構成された画面というより、 それぞれの画面を幻想と観るようになったようにも思う。

sources: