以前にグループ展で観て個展でちゃんと観てみたいと思っていた、 2000年代に関西で活動を始めた作家だ。 主に齧歯類様の小動物を主題とした平面と立体からなる展覧会だった。 とても良かったという程ではないが、 可愛らしさと不気味さ、フォーマルな感じとキッチュな感じが隣り合うような、 その分裂具合が面白かった。
平面は、抽象に近い太く粗い油彩で、 ハツカネズミ、トビネズミ、リス、コウモリとおぼしき小動物を大きく描いたもの。 描かれているものと描き方が互いを裏切っているような所が面白い。 色合いも暗めで、可愛らしさよりも、突き放すような不穏さがあって、かっこいい。
一方、立体の方は、やはり齧歯類様の小動物をモチーフにしているものの、 平面と違って作りが細かく、むしろ可愛さの方が先に立つ。 特に、小さく小動物を作り込んだものの方が面白い。 巨大な睾丸をコンパスで挟んでいたり、全身針刺し状態だったりと、 単に可愛いで済まないシュールさがある。 セクシャリティの問題を暗示しているようにも思われるのだが、 具体的に指し示したり比喩としての討議に載せようというのではなく、 とても私的なイメージを示されている感じだ。そこが少々物足りない。
鼠に扮したかのようなパフォーマンスの写真をウェブサイトで見ることができるが、 展示されていた鼠様の上半身に女性風のほっそりとした足の彫刻は、 そのパフォーマンスのイメージなのだろうか。 そういう関連で見ると、平面作品も実は自画像という面もあるのかもしれない。