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Review: 大岩 オスカール 『夢見る世界』 (Oscar Oiwa, The Dreams Of A Sleeping World) @ 東京都現代美術館 企画展示室1F (美術展); 『屋上庭園』 @ 東京都現代美術館 企画展示室3F (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2008/05/25
東京都現代美術館 企画展示室1F
2008/4/29-7/6 (月休;5/5開) 10:00-18:00.

ブラジル (Brasil) 出身で、1990年代に東京を拠点で活動した後、 2002年以降ニューヨーク (New York, NY, USA) を拠点に活動する作家の個展だ。 東京にいた頃にそれなりに観る機会はあったが、これだけまとめて観たのは初めて。 まとめて観て、作品の面白さがやっと判ったように感じた。 それは、だまし絵的な作品に顕著だが、 大きく全体を観たときと小さく細部を観たときに違うものを観るような、 もしくは複数の絵を同時に観るような、多層性だ。 例えば、細部ではアジア的な町の風景、全体としては龍を描いている この手の作品としては最初期の「エイジアン・ドラゴン」 ("Asian Dragon", 1995) など、 それが判り易く出ている作品だろう。 それに隣接して展示された「カメレオン」 ("Chamaleon", 2004) では、 細部はむしろ抽象画的なストロークとなり、 その中から全体としてカメレオンが沸き上がってくるようになる。 この間の作品が最も面白く感じられた。 以降の作品については、表現手法より主題への指向を強く感じられた。 ちなみに、作品の基になった写真やスケッチも展示されており、 表現手法に関する理解という点では、助けになったように思う。

東京都現代美術館 企画展示室3F
2008/4/29-7/6 (月休;5/5開) 10:00-18:00.
Nicolas Buffe, 河野 通勢, 牧野 虎雄, 寺田 政明, Henri Matisse, 中林 忠良, Benoit Broisat, 内海 聖史, 須田 悦弘, etc.

余った展示空間を使った埋草的な企画ではあったが、その割には楽しめた。 特に、中林 忠良 による アクアチントやエッチングを駆使した腐蝕銅版画が良かった。 植物をゼロックスでコピーしてそれを銅版に転写して、 ほぼ黒のみの単色で刷っている。 その強いコントラストは粗めの白黒写真のよう。 1970s-1980sの作品の腐蝕銅版画のミニマルな実験作という感も悪くないのだが、 1990年以降、枯れ草を使ってテクスチャを作り、 その濃さで矩形等を画面上に作り出したり、 リトグラフ2色刷りで淡い影のようなものを加え立体感を出したり、 白く抜いて刷る紙の肌理を生かしたり、 と、その渋い画面作りを深化させているかのような所が良かった。 ちなみに、この作家は、以前にグループ展で観たことがあったかもしれないが、 この展覧会で初めて意識して観た。

ちなみに、常設展示室では、 『新収蔵作品展 —— 「賛美小舎」上田コレクションより』 (10/5まで) をやっていた。 マコト・フジムラ などの 抽象的な画面の現代日本画が多く、こちらも意外と楽しめた。

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