TEAM (Tokyo Wonder Site Emerging Artists on Mezzanine) という 若手アーティストを取り上げるシリーズの第13回目 (TEAM 13) の作家は、雨宮 庸介。 とろけた林檎オブジェの作家という程度の予備知識しか無かったので、 ギャラリー空間全体を使ったインスタレーション2点という展示は意外だった。 それも、パフォーマンスもあり少々演劇的にも感じる所が面白かった。
狭い入口から入ると、壁や床が黒く塗られた10m四方程度の空間が広がっている。 壁際にはロッカーや椅子いくつか置かれ、 自分も壁際のロッカーの一つの中からこの部屋に入ってきたことに気付かされる。 入口から入って右手の壁には楕円のスクリーンがかけられている。 一見すると入って左手の壁側をライブでビデオ投影しているかのようであるが、 写っている人の違いであらかじめ撮影されたものであることが判る。 不自然な動きのものも含まれていたので、時間差で投影されたものではないだろう。 スクリーン中と自分で異る時間が流れていながら、 それが展示空間を通して融合したかのような感覚が面白かった。
そんな空間の中で、 黒いパンツに白いシャツ、黒い競泳用ゴーグルといういでたちの男 (作家本人か不明) が パフォーマンスを繰り広げていた。 1mほどある花の茎の先に水を付けて 床のあちこちに置かれたリンゴやギャラリー内の観客の足元を 囲んだり繋いだりするように線を引いたり、 寝そべってリンゴを背中に載せたり落したり。 その無言の振舞いも、シュールでユーモラスだった (銀色塗りにして回遊タイプの大道芸をする unpa を連想させられた)。
時折部屋の照明が落ちるのだが、それには暗転に近い効果があった。 それが場面を切り替えるわけではないが、時間を進行させたように感じられた。 そして、その時間の進行が、アートの文脈でのパフォーマンスにしては演劇的に感じられた。 そして、時間の進行はもちろん、空間作りも含めて、 シュールな寸劇のような所が楽しめたインスタレーションだった。
ところで、フライヤやウェブサイトにはパフォーマンスに関する告知が全く無い。 たいていいつでも観られるものなのか、幸運なことに偶然観られたのかは判らない。
隣のギャラリーでは、『Translator's High』 (2006-2008) という別の インスタレーションが作られていた。 落し気味の照明の5m四方程度の狭めの空間に、 巨大なカエルのオブジェ等が置かれたシュールな空間だ。 鏡のようで異る時間が流れる映像が流れるスクリーンなど、 『ムチウチニューロン』とも共通性を感じる所もあったが、 こちらは演劇的とは感じられなかった。 やはり、パフォーマの存在は大きいかもしれない。