野島 康三、木村 伊兵衛 と『光画』を創刊し、 「新興写真」の写真家として知られる 中山 岩太 の回顧展だ。 東京都写真美術館収蔵作品展でいくつか観たことがあるが、まとめて観たのは初めて。 やはり、1927年の日本帰国後から1930年代半ばの写真が、最も楽しめた。 フォトモンタージュやソラリゼーションを使った画面作りは、 modernism というより surrealism だ (Alfred H. Barr, Jr. が Cubism and Abstract Art 展 (MoMA, 1936) で描いたチャートが示した2つの流れ、という意味で)。 自分としては即物的な写真の方が好みなので、 「長い髮の女」 (1933) や「上海から来た女」 (1937) のような写真が良いように感じた。
しかし、最も興味深かったのは、展示の最後にあった ガラス乾板 や 様々な印画紙を使ってのプリントの展示だった。 普段は観る機会が無いものであるため、珍しさもあったと思うが。 特に、フォトモンタージュのために何枚も重ねられたガラス乾板は、 フォトレタッチソフトウェアにおけるレイヤー概念の原点を見るようだった。 昔はこうして物理的に操作していたのだなあ、と、感慨深いものがあった。