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Review: 『CREAM ヨコハマ国際映像祭 2009』 @ 新港ピア, BankART Studio NYK, 他 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2009/11/02
新港ピア, BankART Studio NYK, 他
2009/10/31-11/29 (会期期中無休), 11:00-19:00 (土日祝:10:00-19:00)

去年開催された ヨコハマトリエンナーレ 2009 とほぼ同じ 新港ピア と BankART Studio NYK で開催された、 現代美術の文脈でのビデオを使った映像作品を扱った展覧会だ。 ビデオを使っているという程度の共通点しか無い、全体としてかなり緩い展覧会だったが、 BankART Studio NYK で展示された作品の中には、それなりに興味を惹かれた作品もあった。 特に印象に残った作品について軽くコメント。

Duane Hopkins の作品は、イギリスの郊外的な風景を捉えた、『液晶絵画』的な作品。 左右対称になるよう中央で鏡像で張り合わせた風景の中央で、回転する動きをする人物が、 郊外の微妙な閉塞感のようなものを映し出しているようで興味深かった。 古い映画の中での楽器演奏シーンや音が鳴るシーンを4画面でコラージュした Christian Marclay は、 映画の断片自体を音楽のパーツとして使うあたりが彼らしい。 4面が四重奏の4つのパートになっている、とか、そこまでの仕掛けは無かったようだが。 他にも、1994年に Pulitzer Prize を取った写真家 Kevin Carter の写真を フラッシュアップさせる Alfredo Jaar の作品が印象に残った。

新港ピア 会場には日本の作家が中心に集められていた。 可動式の3段の階段状の台の上に5〜6台の ヘッドホン付きブラウン管モニタが並べられたものが14台並べられた 「映像が生まれるところ (Primal Image)」など、 個別にちゃんと作品を観ようという気が削がれるもので、まるで、試聴コーナーだ。 全体として一つのインスタレーション作品でもなければ、 皆でコンセプトを合わせて作品を作っているわけでもないのだ。 こういう展示作りでも、BankART Studio NYK でのメインに対するオルタナティブとして、 作家たちが自主企画で近所の倉庫を安く借りて勝手に盛り上がっているなら、 それはそれで面白いかもしれない。 しかし、新港ピアでは、オルタナティブな自主イベントのような勢いも感じられなかった。 work in progress と言えば聞こえがいいかもしれないが、 むしろ、奥のラボスペースや11月1日の晩に観た イベント「停電EXPO」 を含め、 雰囲気作りで終わってしまっているような空虚さを感じてしまった。

また、サテライト会場のうち野毛山動物園を観たが、 美術作品の展示によって普段は見逃されがちな物事に視線を向けさせるような所を 作品に感じることはなかった。 むしろ、動物や動物園の面白さによって作品へ視線を向けさせるようであった。

この展覧会を観に行った理由の一つに、 実行委員会の副委員長にして出展作家でもある 藤幡 正樹 が、 会期冒頭に出品を辞退したということがあったから。 実際の所どうなのか、という好奇心もあった。 辞退理由の2点目で挙げている音が遮断されず他の作品に迷惑をかけるという点については、 藤幡 正樹 の作品が特に音が大きく迷惑をかけているわけではなかった。 新港ピア会場は酷いと思うが、BankART Studio NYK 会場に限れば、 他のビデオアートの展覧会と比べて音の遮蔽が特に悪いという程では無かった。 辞退を受けての 「ディレクター緊急コメント」 を聞いていると、 予算規模と準備期間に見合あわない規模でやった無理が出てしまった、という所なのだろうか。

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