コペンハーゲン出身でベルリンを拠点とする光や気象現象を扱うインスタレーションで知られる 現代美術作家 Olafur Eliasson の個展だ。 原美術館という私邸の洋館を改造した会場という制約もあってか、 2006年の個展は照明デザインの展覧会と感じる所も少々あった。 しかし、今回の個展は大きなホワイトキューブの展示空間を使った 光を体感するかのようなインスタレーションがメイン。 このような体感する作品は、判り易くエンターテインメントのように消費される危うさも感じるけれど、 非日常的な光と色彩の感覚を楽しむことができた。
スモークを使ったインスタレーションなどは、現代美術向けのこの美術館の展示空間ならではだろう。 スモークを部屋いっぱいに濃く焚きしめ光の三原色RGB (赤緑青) で三分して照明した “Your Atmospheric Colour Atlas” は、 空間で色が混じりあっていくような色のグラディーションも幻想的で 見通しの悪さもあってまるで色に包まれたかのよう。 しかし、薄くスモークし暗い部屋を貫く強く太い白色の光束を 霧箱を反転した無霧箱でぶった切った “Your Making Things Explicit” の ミニマルなインスタレーションが強く印象に残った。
動的な作品では、”Eye Activity Line”。 円形の展示空間の中央に光源を置き中央に置かれたプールを通して 筒状の壁を一周する虹を作り出しているのだが、 部屋に入る際に踏むステップに仕掛けをしてプールの水面を緩く波立たせ、 虹がゆらめく様子をを観ながらプールの回りを一周することになるのだ。 もちろん、等間隔の複数の白色光源を使い分裂したかのような観客の影を作り出す “Slow-motion Shadow” や その虹色版 “Slow-motion Shadow In Colour”、 さらに万華鏡化した三色版 “Colour Shadow Theatre” 等の判り易い作品で 子供の観客の反応を観るのも面白かったけれども。
今までほとんど観る機会が無かった光以外のインスタレーションとしては、 美術館の中庭中央を貫くガラス張りの通路の中央にいっぱいの大きさのファンを置いて 風の抜け道とした “Where Do You Come From? What Are You? Where Are You Going?”。 この作品には “Your Making Things Explicit” の風版のようなスマートさを感じた。 自転車のホイールを鏡張りにした “Kepler Was Right Bike” の ようなコンセプチャルなオブジェの作品は意外な面を観る興味深さはあったが、 この展覧会の中での位置が掴めなかった。
会場となった金沢21世紀美術館は、2004年に開館した現代美術の美術館だ。 気になる展覧会は今までもいくつかあったが、今回、初めて足を運んでみた。 円形で全方向ガラス張りで4方向に入口があり、開放的。 1階と地階というフラットな建物で周囲の庭と一体に繋がったよう。 常設で James Turrel の部屋がある。 自分が Turrel の部屋に入ったのは日没後。 ぼーっと天窓が切り取った闇夜の方形を眺めていたら、 時折白い小雪がちらちらと吹き込んでくるのが見えた。