東京都現代美術館で併せて観た3つの展覧会について、簡単にコメント。
オーストリアのリンツ (Linz, AT) で1979年から開催されている メディアアートのフェスティバル Art Electronica の 30年を記念する展覧会。 といっても、このフェスティバルの日本からの参加作品もしくその関連作品、 それも、7部門のうちインタラクティブアート部門のものが、ほとんど。 実際、展示を観ても Ars Electronica に参加した作品を通して メディアアートにおける技術進化や展開・変遷・流行が判るような内容ではなかった。 むしろ、国際フェスティバルに参加するような日本のメディアアート作家を、 Ars Electronica 繋がりで集めた展覧会といった方が適切だ。 出品作家を見ただけでそのようなことはおおよそ予想できることだが。 テーマや強いディレクションを感じさせない展示も、やや見本市という雰囲気。 全体の印象としては、少々キッチュな印象を受けるものが多かった。
といっても、あまり期待していなかったせいか、それなりに楽しんだように思う。 明和電機 の展示は1993年からの歩みをまとめたもので、プレゼンテーションの巧さが際立っていた。 クワクボリョウタ の「シリフリン」は体の動きに合わせて動く機械仕掛けのシッポ。 他人が付けているのを観ている分にはそれほどとは思わなかったのだが、 実際に付けてみたところ応答が良く (人にもよるようだが)、なかなか楽しめるものだった。 八谷 和彦 の 「Post Pet」の Twitter クライアント「Post Pet Now」のプレリリース版が比較的普通に見えたのは、 フォロー数が少なかったからだろうか。 例えば、千人単位でフォローした場合にどうなるのか、観てみたかった。 「「きぼう」日本実験棟における新たな文化・人文社会科学利用パイロットミッション(芸術利用)」 の一環として行われた「飛天プロジェクト」に関連して、 その準備として実施された航空機の無重力環境中での「飛天」ボーズのビデオが出ていた。 ポーズを取っていたのは宇宙飛行士ではなくダンサーであったけれども、 ダンス以前に無重力環境での姿勢の維持・制御の困難さを観たようにも思った。
若手作家を紹介するアニュアルの展覧会。 今年のテーマは「装飾」とのことで、細かい手仕事を感じさせる作品が集められていた。 その装飾のセンス (ゴシック的に感じられるものが多かった) というよりも、 幅3.5メートル長さ6.5メートルの白い紙に切り抜きで細かく模様を施した 塩保 朋子 「Cutting Insights」 (2008) や、 展示室一室の床いっぱいに塩の線で迷路を描いた 山本 基 「迷路」 (2010) など、 その規模と規模と細かさに圧倒されるようなものが、印象に残った。
岡崎 乾二郎 の特別展示を期待したのだが、 むしろ、クロニクルの1951年、山口 勝弘 や 大辻 清司 や実験工房の展示の方が 楽しめた (単に好みの問題だとは思うが)。 常設展示室吹き抜けに Ernesto Neto の作品が展示されており、 横になれるようなクッションが床に置かれており、 作品とその香りに半ば包まれながら休憩することができる。 『サイバーアーツジャパン』展や『MOTアニュアル2010』展に疲れたら、 ここで一休みするのもよいだろう。