2000年に関西で結成され2005年に東京に拠点を写した Dance Company BABY-Q を主宰する 東野 祥子 (Yoko Higashino) のソロ、 2007年に大阪で初演され2008年にシアタートラムで東京公演された『VACUUM ZONE』の 再演を観て来た。パフォーマンスを観たのは初めて。 そのバックグラウンドからしてサブカル・テイストが強そうという予想が、 良い意味で裏切られた舞台だった。
といっても、舞台のゴミの山の回りをニワトリを象ったかのようなフード付きジャケットを着て、 ニワトリを2羽放ったり、ポップがけして回ったりしているうちは、 やはりそんなものなのだろうか、と思ったのも確かだ。 しかし、フード付きジャケットを脱いだ後、 舞台上手に置かれたポータブルのレコードプレーヤで音楽をかけつつ、 ゴミの山の中で着替え、舞台下手に置かれたブラウン管TVの光りを浴びつつ踊る、という場面で、 ぐっと舞台上の世界にひきこまれた。 ゴミの山のジャンクな質感や、衣装を替えてそのキャラクタを演じるようでもありながら そのステロタイプから逸脱する引き攣ったような動きに、 シュールというかアブジェクトなものを感じた。 似ているというわけではないのだが、ふと、1990年前後の Cindy Sharman の作品を連想させられた。
その後、舞台上のゴミの山や天井から下げられたゴミ状のオブジェが 大音響のノイズと共に舞台後方の奈落に吸い込まれる。 そして、ほとんど何も無い舞台の上、 ダウンライトのように投影されるモノクロームのライトパターンの中でのダンスとなる。 その光は、スポットライトとしてダンサーを浮かび上がらせるというより、 時に水底に差し込む光のようにゆらめきながらダンサーに覆いかぶさり、 時にダンスによって移動させられ歪められていくよう。
この前半とのコントラストが良く、ミニマルな照明演出の後半が美しく感じられただけでなく、 ゴミの山の中で着替えながら踊る前半も強く印象付けられた。 そして、このような構成に単なる雰囲気だけではない強さを感じた舞台だった。