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Review: 椿 昇 『GOLD/WHITE/BLACK — Complex』 @ Think Spot KAWASAKI (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2010/03/14
Think Spot KAWASAKI
2010/3/6-3/14 (会期中無休), 15:00-20:00 (土日 13:00-21:00)

椿 昇 は1970年代末に関西を拠点に活動を始めた美術作家だ。 ヨコハマ・トリエンナーレ 2001 での ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル付けられた巨大なバッタのバルーン 「インセクト・ワールド、飛蝗」 (室井 尚 との共作) など、 色や形状もポップな巨大オブジェで知られる作家だ。 今回の展覧会の会場は、旧日本鋼管体育館 を改装して2008年にオープンしたスペース Think Spot KAWASAKI (主に撮影スタジオとして使われているようだ)。 2009年に京都国立近代美術館で開催された展覧会 『椿昇 2004-2009: GOLD/WHITE/BLACK』を承けての展覧会だ。

展示のメインは、京都での展覧会でも話題になった、 ロシアの大陸間弾道ミサイル (ICBM) を実寸大で再現した長さ30m、直径10のバルーン。 体育館のバレーコートだった広い空間ですら対角線に置かないと収まらない巨大さだ。 照明を落とした暗い空間の中、赤青白で波打つように照明されていた。 バルーンという素材のため細部の形状は丸みを帯び、全体としても重力に屈して歪んでいる。 その形状に脈動する光が加わり、ICBMを象ったものというより、 横たえられた巨大イカのよう、とも思ってしまった。

展示ルート最後に置かれたこの巨大バルーンの印象が強かったが、 そこに至る経路も宗教施設の拝観ルートかのように構成され、 全体として一つのインスタレーション作品のようでもあった。 中でも印象に残ったのは、坑道を思わせるランプで薄暗く照明された導入路での 十二使徒を擬した南アフリカの鉱山労働者の巨大なCGのポートレイト12枚。 さらに、アメリカの露天掘り銅山の写真を経て、 バルーンのスペースの直前での祭壇のような空間に置かれた 世界各地の露天掘りの鉱山の形状を刻した金のオブジェ10本。 その流れに世界に流通する鉱物資源の由来とその行先を思わせる所があった。