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Review: Anish Kapoor @ SCAI The Bathhouse (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2010/05/09
Anish Kapoor
SCAI The Bathhouse
2010/04/27-06/19 (日月祝休), 12:00-19:00.

ベルベットのような質感な顔料を使った奥行き感を失うような 凹面の作品で知られるイギリスの現代美術作家 Anish Kapoor の新作の展覧会。 新作5点には、漆で滑らかな表面を作った作品や、 アクリル樹脂に泡を閉じ込めたような作品もあったが、 最も印象に残ったのは、大きな凹面鏡の作品。 2005年に観た展覧会 [レビュー] にも似た 作品が出ていたが、さらに良くなっていた。

2005年の展覧会では微妙な歪みのある凹面だったが、 今回の新作では不規則な平面鏡の組み合わせで凹面を近似した形を作りだしていた。 離れて見ると、はっきりとした像は見えず、様々な色のモザイクのよう。 しかし、焦点を越えて鏡に近づくと、 拡大された自分の姿がぼんやりモザイクに浮かび上がる。 そして、そのモザイクの各ピースは、 やはり自分の姿 —こちらは拡大されていない— の断片なのだ。 例えば、拡大された自分の姿の目の周辺は、 自分の目の周辺を映し出したモザイクのピースが寄せ集められて出来ている。 それが、いささか不気味ながら面白い。

もちろん、歪んだ凹面鏡の作品と同様、 動きながら像を観ていると、バランスを崩されるような感になるところもある。 さらに、モザイクが煌めきながら色を変えていくようでもあり、それにも幻惑された。

ちなみに,今回展示されていた作品ではなく, 会場に置かれていた図録で知ったのだが, 不規則なモザイクではなく幾何学的なパターンでモザイクにした鏡を使った “Islamic Mirror” と呼ばれている作品シリーズもある。 幾何学的なモザイクの場合,受ける印象もかなり異なりそうだ。 こちらの作品も観てみたい。

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