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Review: 松江 泰治 『survey of time』 @ TARO NASU (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2010/11/16
松江 泰治
『survey of time』
TARO NASU
2010/10/23-11/20 (日月祝休), 11:00-19:00.

最も影が短くなる南中時を使ってパンフォーカスで 遠景をテクスチャとして写し取るように取ったモノクロ写真が印象深い 松江 泰治 の、新作ビデオ作品を中心とした展覧会だ。 高精細で動きの少ないそのビデオはそんな写真作品そのままカラービデオ化したかのようでもあり、 しかし、その微かな動きが面白い作品だった。

第一室には、まさにそんな遠景写真をビデオ化したかのような4点が展示されていたのだが、 露天掘り採掘場の中を巨大ダンプカーが走り回る様子を捉えた作品と、 荒野でラマが点々草を食みつつ動き回る様子を捉えた作品が気に入った。 いずれも遠景から捉えているため、ダンプカーは点のようだし、ラマも大きくはないのだが、 テクスチャーのような画面の中を、ちょこちょこ動き回る点、もしくは、 もぞもぞ動きまわる不定形の塊のように抽象化して捉えられている所が面白かった。

一方、隣室は1980年代から撮影されていた街中の幾何的な形状を切り出したようなモノクロ写真十数点に対比するかのように、 それをカラービデオ化したかのような2点が展示されていた。 路地裏の建物の裾のあたりとそこに香箱座りする猫、そして、ジグザクスロープとそれを行き交う人々。 こちらの作品で動きがあるものとして映されるものは、遠景の写真と違いかなり大きい。 抽象化されたものとして見えないせいか、むしろ、その動きのユーモラスな所が楽しめたように思う。 路地猫の作品の猫という被写体選びは、狙い過ぎな気がしないではなかったけれど。

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