TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: 『ラヴズ・ボディ —— 生と性を巡る表現』 @ 東京都写真美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2010/11/23
東京都写真美術館
2010/10/02-12/05 (月休;11/08開). 10:00-18:00 (木金10:00-20:00)

1998年の『ラヴズ・ボディ —— ヌード写真の近現代』展の12年越しの続編、とも言える展覧会です。 そういえば、当時はジェンダーをテーマとした展覧会が多かったなあ、と (遠い目)。 今回の展覧会は「エイズ」を巡る作品ということになっていました。 写真の被写体としてエイズに関わるものを撮っただけでなく、 直接的には写真に現れていないけれども作家自身がエイズであったものも取り上げられていました。 ある程度予想していましたが、ナラティヴな作風のものが中心で、ちょっと苦手感も。 Felix Gonzalez-Torres のような好きな作家の作品もありましたが。

また、12年前から時間が止まってしまっているという印象も受けました。 1990年前後のエイズ・パニックを受けての作品が中心ということもありますが、 そうではない最近の作品でも同性愛者に焦点が当てられているというのに違和感を覚えました。 1990年代のエイズ認識ならまだしも、2000年代に入ってからは、エイズといったら、 サブサハラ・アフリカ諸国に感染者が集中し 平均寿命を大幅に押し下げて (30〜40歳代にまでなっている) 経済成長の足枷となっている病気でしょう。 そして、そこでは、同性愛云は特に関係なく、 むしろ、夫婦間のセックスや出稼ぎ時の婚外セックスでの感染が主です。 「エイズ」をテーマとして掲げながら、このような病気としてのエイズという視点が全く無かったのが、不思議でした。 もちろん、現在のアフリカにおけるエイズ問題を扱った良い作品が無かっただけかもしれませんが。 いずれにせよ、現代美術業界ではアフリカにおけるエイズ問題など視野外、ということなのかもしれないなあ、 などと考えさせられてしまいました。