日本の新進の写真家を紹介するアニュアルの企画展の今年度のテーマは「スナップショット」。 それに合わせて「スナップショット」をコレクション展も開催されている。 正直に言えば、私的な日常を捉えたり都会のサブカルチャー的風俗を捉えるかのようなスナップショットより、 三脚でカメラを据えて画面を構成して描くように撮った風景や建築物の写真の方が好みなのだが、 期待せずに気楽に観たせいか、意外と楽しむことができた。
新進作家展の中で特に気に入ったのは 中村 ハルコ 『光の音』 シリーズ (1993-1998)。 イタリア・トスカーナの田舎の一家や周囲の風景を明るくカラフルな画面で捉えたもので、 優しい美しさのある作品はちょっと判り易過ぎる気もしたが、 可愛い少女の笑顔を捉えた明るい写真を和んで観ることができた。 たまにはこういう写真を観るのも悪くないかな、と。 また、この新進作家展に出ていた作品はほとんどがインクジェット・プリント。 このようなジャンルの写真ではデジタルカメラにほぼ移行しているんだなあ、と、感慨深かった。
収蔵展は、Martin Munkácsi の写真がまとめてみられたのが収穫だった。 Munkácsi は戦間期にベルリン、ニューヨークで活動したハンガリー出身の写真家。 瞬間を捉えた動きを感じるファッション写真だが、 戦間期モダニズムを感じさせる画面で、スナップショットっぽく感じられない所もあったり。
ところで、この2展覧会のフライヤは固めの紙で写真絵葉書の綴りのような縦長の特殊な形。 ミシン目で写真の所を切り離して絵葉書としても使えるようになっている。 こういう工夫もちょっと面白い。