20世紀初頭、大正から昭和初頭にかけての モダンなイラストレーションやグラフィックデザインを取り上げた展覧会。 地階の第一部ではこの時代を代表する13人の作家に焦点を当て、 二階の第二部では9つテーマ (エラン・ヴィダル等) に沿って有名無名匿名による 様々なデザインを集めて、この時代のデザインの特徴を示していました。 第一部は有名な作家も多いうえ少々乙女趣味に偏っているように感じました。 しかし、第二部はその多様性の中にも時代を感じさせるところもあってとても興味深く観られました。 Art Nouveau から Art Deco にかけての影響を強く受けたデザインが中心で、 基本的に好きなデザインということもあるとは思いますが。
第一部を観ながら、自分の好みは Art Deco の影響が強くなる時代が後の方、 古賀 春江、小林 かいち、蕗谷 虹児 といったあたりだと、再確認。 去年秋に 神奈川県立近代美術館葉山 でやっていた 『古賀春江の全貌 —— 新しい神話が始る』 展を、やっぱり観に行けば良かった、と、ちょっと後悔。
第二部の中で特に興味深く観たのは、「子ども・乙女のイマジュリィ」。 マヴォの 村山 知義 や 「童画」 の 武井 武雄 の絵本はもちろん、 恩知 孝四郎 の手掛けた 日響楽譜 の童謡楽譜の表紙も良かったです。 「大衆文化のイマジュリィ」にも楽譜が多くあって、 当時の楽譜表紙はレコードジャケット相当でもあったのだなあ、と。 モダンというかアヴァンギャルドの影響も感じられる 山田 伸吉 の手掛けた『松竹座ニュース』の表紙も目を引きました。 河合ダンス の葉書やパンフレットもあり、昭和大阪モダニズムの勢いを感じたり。 あと、「京都アールデコのイマジュアリィ」での 高橋 春佳 の絵葉書の乙女趣味も、 小林 かいち に負けていません。
しかし、20世紀初頭の日本のデザインをこうしてまとめて観ていて、 同時代のヨーロッパのデザインを観ていて感じる程、 Art Nouveau と Art Deco の間のギャップが感じられませんでした。 それも、第一次世界大戦という強烈な断絶が無いからかもしれません。