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Review: 西野 荘平 『Wandering the Diorama Map』 @ Emon Photo Gallery (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2011/03/05
『Wandering the Diorama Map』
Emon Photo Gallery
2011/02/15-04/02 (日祝休), 11:00-19:00 (土11:00-18:00).

今までノーチェックの作家だが、The Guardian 紙に載った ロンドン Michael Hoppen Gallery での個展の レビューで興味を引かれたところ、 東京でも個展開催中と気付いたので、足を運んでみた。

都市を対象に取り溜めた白黒写真を用いた 写真コラージュ作品『Diorama Map』シリーズを観て最初に連想したのは David Hockney の photographic collage 作品、 同じサイズの写真を何十枚も並べて歪んだ風景を構成している作品だ。 しかし、その対象は都市のレベルになり、枚数も数千枚の規模。 その結果として、Hockney の作品以上に視点に動きが出て歪みが大きくなる。 航空写真とまでいかないとしても比較的俯瞰的な視点からの写真が多く使われており、 ランドマーク的な建築物の回りだけをクロースアップで観れば、なかり Hockney 風だ。 しかし、それが全都市規模で繋ぎ合わされていくと、 全体としては都市を俯瞰する航空写真の上に歪みの流れが生じているよう。 その画面に生じた歪みの流れに、撮影者の視点の動きを感じた。 さらに、その流れの中に様々な街の建築物が浮かび上がって見えてくるにつれ、 街歩きの記憶も浮かび上がってくるよう。そこが、面白かった。

一方、『i-Land』『Night』は、街の写真に基づく大規模なコラージュという意味では 『Diorama Map』と同じながら、 カラー写真を使い、ある街を歪ませつつも再生するのではなく、架空の街を作り出している。 実際の街を思い起こさせる所もある『Diorama Map』に比べインパクトに欠けるようには感じたし、 『i-Land』はいまいちピンと来るものが無かったのだが、 『Night』の方は都市の夜景のステレオタイプが浮かび上がってくるようで興味深かった。

ちなみに、 この何千枚もの写真を使ったコラージュの作成は、デジタルカメラ & 画像編集ではなく、 フィルム写真のコンタクトプリントを手作業で切り出してはり合わせているという。 それをさらに写真に撮ってプリントしたものを作品として展示していたが、 コンタクトプリントの張り合わせの状態のものも観てみたかったように思う。