ロボット演劇 『働く私』 (大阪大学21世紀懐徳堂多目的スタジオ, 2008) 以来、 コラボレーション作品を発表し続ける 平田 オリザ + 石黒 浩 研究室 のプロジェクトの最新作 『さようなら』は、ロボットから一歩進んでアンドロイドを使った作品。 あいちトリエンナーレ2010で初演されて以来、 何回か上演されてきているが、都合が合わず見逃していた。 今回、ちょうど空いた時間に家から近い劇場で上演されたので、観に行ってきた。
Long 演じる死期近い若い女性と彼女の話相手としてあてがわれた女性型アンドロイドの間の 淡々とした会話を舞台化した作品だ。 舞台上の照明は明るくなく、アンドロイドはもちろん女優の方も 途中で一度立ち上がってアンドロイドに近づく他は、ほとんど座ったままで舞台が進行する。 Long の日本語は抑揚や区切りに若干の不自然さが残るもので、アンドロイドのセリフの方が流暢。 また、観客へ半ば背を向けた状態でソファに深く座っているので、Long の表情はあまりよく見えない。 にもかかわらず、丸椅子に浅く腰掛けたような姿勢でこちらに向いた方が 女性型アンドロイドであるとすぐに判った。
アンドロイドが遠隔操作で動くのは首から上のみ、 顔の向きを少し変えたり、口元を動かしたり瞬きしたり、その動きは比較的滑らかだった。 最も違和感を覚えたのは視線。 おおよその視線の向きは合っていたし、漠然と詩を朗読しているような場面も多かったので、 それほど致命的とは思わなかったけれども、 視線とセリフの微妙なズレや視線の虚ろさがどうもひっかかってしまった。
そんなこともあってか、セリフの内容はほとんど印象に残っていない。 もちろん、セリフよりも身体的な表現をメインに据えたような舞台作品が自分の好み、ということも一因と思うが。 20分という長さで良かった、とも、思ってしまった。