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Review: 『パウル・クレー おわらないアトリエ』 Paul Klee: Art in the Making 1883-1940 @ 東京国立近代美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2011/06/26
Paul Klee: Art in the Making 1883-1940
東京国立近代美術館 本館
2011/05/31-07/31 (月休; 7/18開), 10:00-17:00.

1910年代にミュンヘンの Der Blaue Reiter (青騎士) 周辺での活動で頭角をあらわし、 以降 Bauhaus で、そしてナチス政権成立後は故郷ベルンで活動した、画家 Paul Klee の回顧展だ。 それも、Der Blaue Reiter や Bauhaus といった 20世紀初頭の Modernism 〜 Avant-Garde な芸術運動の文脈については当然の前提としてほとんど触れず、 技法的な制作プロセスに焦点を当てた展覧会だ。 正直、かなりマニアックな展覧会だと思ったけれども、 Klee の絵を見て今まであまり気にしてなかった所に気付かされ、興味深く見ることができた。

この展覧会で取り上げられていた技法的な制作ブロセスは4つ。 油彩転写 (Ölpause)、切断・再構成 (Zerschnitten / Neukombiniert)、切断・分離 (Teilstücke)、両面 (Recto / Verso)。 最も新鮮に興味を引かれたのは油彩転写。 Klee の作品に見られる少し汚れたような独特のテクスチャはこの技法のせいだったのか、と、 今回の展示を見て腑に落ちた。 元の素描と転写彩色した絵の組を10組以上揃えていたというのも圧巻だった。

切断して再構成したり別の作品にしたりしていたことについては予備知識もあった上、 同時代、コラージュの技法は一般的になっていたことも考えるとさほど驚きではなかったが、 分離して別々になった作品を数組集めていた (油彩転写ほどの数ではなかったが) のが面白かった。

感覚的に (感動するように) 観るというより、 線や色彩を構成するパズルを解く、というか、その解法も込みで観るような展覧会だった。 そして、そんな所が Avant-Garde らしいとも感じた展覧会だった。