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Review: 『彫刻家 エル・アナツイ のアフリカ』 A Fateful Journey: Africa in the Work of El Anatsui @ 埼玉県立近代美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2011/08/21
『彫刻家 エル・アナツイ のアフリカ』
A Fateful Journey: Africa in the Work of El Anatsui
埼玉県立近代美術館
2011/07/2-8/28 (月休; 7/18開), 10:00-17:30.

西アフリカの英領ゴールドコースト (Gold Coast; 現ガーナ (Ghana)) 出身で 現在はナイジェリア (Nigeria) で活動する美術作家 El Anatsui の回顧展だ。 1970年代から活動し、1990年には La Biennale di Venezia に参加しているベテラン作家で、 今までも日本でもアフリカ現代美術展のような中で観る機会のあった作家だ。 立体作品を制作するアーティストということもあると思うが、 ポップカルチャーの影響はあまり観られず、特に1990年代末から制作している金属廃材を利用した作品など、 出身や制作の背景を知らずに見ればアフリカ的とは感じないかもしれないモダンさを感じる程だった。

1990年代まで制作していた素朴な木像や装飾レリーフを思わせるような彫刻作品も展示されていたが、 やはり目を引いたのは、1990年代末から制作している金属片を編み上げたような作品だ。 アルコール飲料の瓶の金属 (アルミニウム) 製の使用済みキャップを使って、 巨大なタペストリーを作り上げている。 ブランドによって異なる色を使いわけるだけでなく、 キャップの上面の円形の部分、側面の帯状の部分、開封する際に切り離される細い帯状の部分などを使い分けて、 編上げ方の違いを使って様々なテクスチャを作り出している。 金属片を銅線を使って繋ぎ合わせており、ガチガチに硬質なメタリックな感じではないものの、 間近でると手を切りそうな金属的な質感を残している。 触って動かそうとすれば、おそらく、ギシギシガリガリと金属的な軋む音がするだろう。 にもかかわらず、遠目でみると、その皺の加減といい、まるで柔らかい布生地のよう。 そのギャップが、とても面白く感じられた。 特に、壁掛けのタペストリーのような作品も良かったけれども、 細い帯を丸くしたものを繋ぎ合わせて巨大な網かレースのようなものを編み上げ 空間を区切ったインスタレーション作品 Gli (Wall) (2009) が圧巻だった。 使用済みキャップを使った作品が多かったが、 缶詰缶の円形に切り離した部分や、新聞もしくはパフレットの印刷使われた アルミニウム製原版を使った作品もあった。

Anatsui は織物職人の家系出身ということで、 展示にもあったようにガーナのアシャンティ (Ashanti) 族の ケンテクロス (Kente cloths) の影響もあるのかもしれない。 そういわれてみれば、確かに、色彩感など、 西アフリカの民族衣装 (アフリカン・フェスティバルなどでたまに見ることがある) を 思わせること所もあった。 しかし、細かい素材を大量に組み合わせてマッシヴなインスタレーションを仕上げる所など、 むしろ、Post-minimalism に近しいものを感じたのも確か (最初に自分が連想したのは Mona Hatoum だった)。 あえて、ガーナからナイジェリアへ移住して制作をしている所といい、 自分のルーツに根ざした制作としているというより、 ルーツに対してワンクッション距離を置いているよう。 そんな所も興味深く感じられた展覧会だった。