2010年にYCAM 委嘱で 制作されたインスタレーション作品の 新ヴァージョンでの展覧会。 監視カメラを題材にしたインスタレーションだ。 小型カメラ付きの10cm余の可動デバイス90本が壁面を埋め尽くす一方、 天井から大型の監視カメラを付けた数メートルのアームが6本、 これらのカメラが観客を追尾し撮影している。 小型カメラ付きデバイスの壁と対する壁面に投影される映像は、 複眼のように複数の映像を組み合わせたもの。 個々の映像はインスタレーション中のカメラで撮影されたデータベースに蓄えられたものから、 一部はリアルタイムで、さらに一部は外部のカメラから集められたもの。 監視カメラのもたらす社会機構について考えさせられるというより、 結局のところ、複眼のような映像とアームの動きの節足動物的なイメージ —— 薄気味悪さを醸し出している —— を体感する インスタレーションかもしれない。
合わせて、個別体験型の作品 『Eye-Tracking Informatics —— 視線のモルフォロジー』 (2011) も展示されている。これは、視線追尾システムを使って線を描くインスタレーション。 といっても、視線の動線をそのまま描くのではなく。 視線は3次元空間中を動く点を方向転換させるのに用い、その点の軌跡を三次元空間に線描する。 背景が黒いこともあると思うが、宇宙空間を飛ぶ宇宙船を視線で操舵するよう。 その動きが楽しめた。