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Review: Adrien M / Claire B: Coïncidence @ Super-Deluxe (ダンス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2011/03/07
『コインシデンス‐偶然の一致‐』
Super-Deluxe
2012/03/07. 19:50-20:15.
Conception: Adrien Mondot, Claire Bardainne.
Adrien Mondot (jonglage et danse), Claire Bardainne (interprétation numérique), Rien (musique), Loïs Drouglazet (adaptation sonore).
2011.

Adrien M / Claire B は 情報処理技術者にしてジャグラーの Adrien Mondot と グラフィック/舞台美術デザイナーの Claire Bardainne の2人が主宰する リヨン (Lyon, FR) のカンパニー。 Mondot は、実世界とのインタラクティヴを可能とする 物理エンジンに基づくアニメーションのソフトウェア eMotion を2006年以来開発しており、 eMotion を使い Bardainne がデザインしたモーション・グラフィックスの投影と Mondot によるジャグリングを組み合わせたパフォーマンス作品を制作している。

今回観た Coïncidence は30分弱の作品で、 Mondot による白のボール3つのトス・ジャグリング、 続いて、舞台袖の Bardainne の操作するモーション・グラフィックスの中でのパフォーマンス、 最後に、透明な球1つを使ったコンタクト・ジャグリングという構成だった。 投影したスクリーンはほとんど透明で、プロジェクタの光が当たると鮮やかに白く光るもの。 ジャグリングはスクリーンの前で行ったが、 モーション・グラフィックスとのインタラクションの際は、 客席に背を向けないよう、スクリーンの後ろに回ってパフォーマンスした。

モーション・グラフィックス中でのパフォーマンスの際には、 投影されたグラフィックスをマニピュレーションするような動きをしたり、 吹寄せてくるかのようなグラフィックスを腕で避けるような動きをするだけで、 実際のジャグリングは行わなかった。 球数を増やして難度を高くしたりはしなかったものの、 ほぼノンミスで滑らかな動きのジャグリングを見せたので、 この程度できるならグラフィックスとのインタラクションもある程度可能だったのではないか、とも感じた。 そして、そういうパフォーマンスを観たかった。

しかし、Mondot の動きと投影されたモーション・グラフィックスがそれなりにインタラクションしているように見えたのは、 物理エンジンをベースにしたグラフィックスの動きもあるかとは思うが、 Mondot のジャグラーらしい身のこなし —— 特に手や腕の動かし方がリアルだったからというのもあったと思う。 そういう意味では、Mondot のジャグリングのスキルはパフォーマンスの中に活かされているのかもしれない。

ちなみに、このパフォーマンスは 東京日仏学院のメディアアート月間「デジタル・ショック」のクロージング・イベント の中で行われた。 このパフォーマンスの後、Jim O'Rourke のソロ・ライヴがあった。 electric guitar を弾くというより、 弦に振動子を押し付けたり、ヘッドを壁にこすりつけたり床にぶつけたりして、 ノイズ発生・増幅器として使うような演奏をした。 そんな音そのものよりも、Adrien M / Claire B が使った舞台は使わず、 上手側の客席横通路を演奏場所に選び、時折、客席へ入り込みつつも、 淡々とそんな演奏をしている様子が面白かった。