2009年に亡くなった Pina Bausch が率いていたダンスカンパニー Tanztheater Wuppertal Pina Bausch のドキュメンタリー3D映画。 追悼という意味合いもあってかカンパニーの団員に Pina について語らせる場面もそれなりにあったが、 リハーサルシーンもほとんど使わず、創作のエピソードは控えめ。 上演中の舞台を捉えた映像や Wuppertal の街中でのダンスを中心に編集されており、 少々プロモーション・ビデオ風ではあるが、ダンス映画として充分に楽しめた。 Pina Bausch のロマンチックな神格化が鼻に付かなかったわけではないが、 映画制作中に急死したということを考えると、仕方無い面はあるかもしれない。
舞台の映像は2009/2010シーズンの上演から Café Müller (1978)、 Le Sacre du printemps (1975)、 Vollmond (2006)、 Kontakthof (1978)。 比較的初期の作品が採られている。 土まみれになりながら踊る Le Sacre du printemps など、かなりの迫力で、一度生で観てみたいと思わせる所があった。 また、Café Müller が Henry Purcell の歌曲で踊る作品だったことに気付かされたり、と、発見もあった。 ヴッパータールの街中や郊外の石灰採掘場を舞台にしてのダンスでは、 こういう街を背景に活動していたのか、と興味深くもあった。 説明的に街を撮るのでではなく、ダンスを通して街を見せるやりかたは良かったと思う。 現役で運行している中で世界最古のモノレールがよく映っているのも、個人的には見所だった。
一方、劇場で観ていたときも薄々気になってはいたが、映画で見たせいか、 Tanztheater Wuppertal Pina Bausch の近代産業社会中上流階級的な面が気になった —— コンテンポラリーダンスの全体的な傾向でもあるが。 例えば、男性はスーツ姿、女性はイブニングドレス姿が基本であり、そのジェンダーも比較的固定的。 一見ラディカルに見えるような所も含めて、実にロマンチックに感じられた。 そして、それがポピュラリティを得た一因かもしれない、とも思った。