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Review: 『生誕100年 ジャクソン・ポロック展』 Jackson Pollock: A Centennial Retrospective @ 東京国立近代美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2012/03/31
Jackson Pollock: A Centennial Retrospective
東京国立近代美術館 本館
2012/02/10-05/06 (月休; 3/19,3/26,4/2,4/30開), 10:00-17:00 (金10:00-20:00)

第二次世界大戦直後アメリカの抽象表現主義 (Abstract expressionism)の文脈に置かれることの多い美術作家 Jackson Pollock の生誕百周年を記念する回顧展。 確かに、イランのテヘラン現代美術館 (Tehran Museum of Contemporary Art) 収蔵の壁画 “Mural on Indian Red Ground” (1950) のようなレアな逸品もありましたが、 抽象表現主義のスタイルになる以前の最初期の具象の時代から次第に抽象的な表現に移行する間の 作品が半分以上を占めていました。 どうやってスタイルを獲得していったのかを伺う興味深さはありましたが、 全体としてはマニアックという印象も受けた展覧会でした。

Pollock の作品は今までもそれなりに観る機会がありましたが、 観ていて面白いのは、やはり、塗料を垂らしかけるようにして描いた1947-50年の作品。 カオス的というより、リズムを感じるものですし。 “Mural on Indian Red Ground” のような壁画のような大きさの作品となると、吸い込まれるような感も。 Mark Rothko と違い、壁画はあまり制作していないと知って、、少々意外にも感じました。 あと、印象に残ったのは、 展示解説のキーワードが「オールオーバー」と「ポード絵画」「ポーリング」であって、 「アクション・ペインティング」という言葉がほとんど全く出てこなかったこと。 これも Pollock を Clement Greenberg 流のフォルマリズム的な評価で位置づけているということでしょうか。

あと、抽象表現主義的ともいえる典型的な作品を制作していたのがほんの4年程度だったということに、 この展覧会で気付かされました。 44歳で交通事故死した短命な作家ということもあると思いますが、 クリエイティヴ・ピークが短かったのだなあ、と感慨深いものがありました。