ミニマルな水平線やジオラマ写真などコンセプチャルな白黒写真で知られる 杉本 博司 による衣服の写真の展覧会。 公益財団法人京都服飾文化研究財団のコレクションとなっている 衣服 (モード服) をマネキンに着せた状態で撮影した “Stylized Sculpture” シリーズ (なぜか邦題は「スタイアライズドスカラプチャー」) を中心に、 先史時代から近代に至る衣服の歴史をジオラマ写真にしたシリーズ、 『杉本文楽』の衣装、等からなる展示だった。
やはり、見所は “Stylized Sculpture” シリーズ。 杉本の建築写真シリーズのファッション写真版といったところ。 布の木目が際立つコントラスト強めの大判の白黒写真は見応えあった。 しかしこういう写真で映えるデザインとそうでないものがあると実感。 2階に展示されていた、日本のデザイナー、川久保 玲、山本 耀司、三宅 一生 は、 色使いはミニマルに素材や形状で見せるようなデザインなので、 杉本 のような写真の撮り方がうまくハマっていた。 一方、例えば、Yves Saint-Laurent の Mondrian look のような シンプルな形状でカラフルなミッドセンチュリーの服は、その魅力も半減。 杉本の写真で Elsa Schiaparelli のドレス (1938頃) を見た後に、 Raynaud の部屋へ上がる階段でその実物を見ると、 袖や背に使われたベルベットの深い紫もひときわ印象的だった。 そういう点で、写真と実物を比較するような展示をもっと観てみたかった。
他の展示は、“Stylized Sculpture” に比べるとイマイチ。 先史からの衣服の歴史をジオラマ写真にしたシリーズも、 説得力を感じず、とって付けたような印象を受けてしまった。
ちなみに、今年7/28から10/8まで、東京都現代美術館で 『Future Beauty 日本ファッションの未来性』 と題したファッション展が開催される。そのフライヤー等にも 杉本 の “Stylized Sculpture” シリーズの写真が用いられている。
原美術館といえば、Café d'Art のイメージケーキ。 今回は、女性の乳房を象ったムースに 透ける程薄くバリッと焼いたクレープ様の生地を被せたものでした。 展示されていた写真のどれを特に意識したものかわかりませんでしたが、 「ハダカから被服へ」というテーマには合っていたでしょうか。 しかし、ちょっとエロチックで可笑しいケーキでした。