第一次大戦後、Dada 〜 Surrealism の文脈で活動を始めた美術作家 Max Ernst の回顧展。 タイトルからして Loplop (Ernst の作品によく出てくる鳥のキャラクタ) に 焦点を当てたものになっているのかと少々期待したのだけれども、 Loplop が登場する作品はそれほど多くはなく少々肩透かしだった。
やはり、戦間期というかアメリカ移住 (1941) する前までの作品、 それも油彩の絵画よりも、本のためのコラージュやリトグラフなど作品の方が楽しめた。 コラージュノベル三部作 La femme 100 têtes (『百頭女』, 1929)、 Rêve d'une petite fille qui voulut entrer au carmel (『カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢』, 1930)、 Une Semaine de Bonté (『慈善週間または七大元素』, 1934) や フロッタージュ連作 Histoire Naturelle (1926) のような代表作的な作品はもちろん、 まだ、Dadaist 的な Fiat Modes Pereat Ars (『流行は栄えよ、芸術は滅びるとも』, 1919) が観られたのが嬉しかった。
戦間期に比べアメリカ移住後〜フランスに戻っての作品は、ピンとくるところは無かったのだが、 そんな中では、やはり、アーティスト・ブック Maximiliana ou L’exercice illégal de l’astronomie (『マクシミリアーナ、あるいは天文学の非合法的行使』, 1964) が印象に残った。 そこで用いられている秘密文字 (くしゃっと歪められた簡略化された人物の線描のよう) は、 Surrealism 的というより Informel 的に感じられるところもあった。