アルジェリア出身フランス在住のダンサー/振付家 Nacera Belaza とその妹 Dalila の2人によるカンパニー。 ほとんど予備知識無しに観に行ったのですが、マグレブ的な要素もそこそもに、 ミニマルながら、トランスと共通する点も感じる舞台だった。 使う音楽や動きが反復的な要素が強いという意味だけでなく、 二作ともとても光量を非常に抑えた舞台で凝った美術も用いず微かなシルエットで動きをみせるという点でも、 ミニマルなものを感じた。
先に上演した Le Trait - Solos 『一筋の描線』 (2012) は、 それぞれのソロを組み合わせたもの。 前半 “Le Cœur et l'Oubli” 「心と忘却」では マラケシュの B'net Houariyat を思わせる女性コーラスのトランス音楽を使い、 照明から外れた闇の中を蠢くよう。 後半 “La Nuit” 「夜」では、微かなラジオの断片のような音の反復だったが、 後ろからの強い光を背景に、手を広げて単調にくるくると旋回する様子に、 裾が丸く広がる衣装を着ていたわけではないけど、スーフィーの旋回舞踊 sema を連想させられた。 孤独の中での反復による陶酔を思わせる作品だった。
後に上演した Le Temps Scellé 『刻印された時間』 (2010) はそれぞれのソロのあとのデュオが良かった。 音楽は、アメリカの Gospel かそれに影響受けた jazz vocal、R & B の歌を切り刻んで反復させたもの。 黒人音楽的でもあり、いくつかの反復とその周期のズレは Steve Reich のミニマル・ミュージックのようでもある。 それに合わせる2人のダンスは、例えば Rosas が Reich に合わせたような幾何的なものではなく、 抽象的ながら手足身体をうねらせてぐねぐねと踊るというもの。 二人の動きは、同期するでもなく絡むわけでもなく、絶妙な距離を保っていた。 そのうねるようなダイナミックな動きもかっこよく、 ミニマルとそれから外れるような要素のバランスが面白く感じられた。
ちなみに、この公演は、 ダンストリエンナーレトーキョー2012の プログラムの1つとして上演された。