1990年前後に設立されたという Jean Michel Bruyère 率いる 主にフランスを拠点とするアーティスト集団 LFKs による作品。 演劇というよりパフォーマンスを伴うインスタレーションとでもいう作品で、 それも、にしすがも創造舎というか、 旧豊島区立朝日中学校の校舎の地階、三階そして体育館と校庭を使った大規模なものだ。
作家にアクティヴィストとしてのバックグラウンドもあると聞いていて、 ドキュメントを安っぽく積み上げたりワーク・イン・プログレスの様子を緩く見せるインスタレーションではないかと、 観る前はいやな予感もしていた。 確かに、三階の一部にそのような面があったが、 入ってすぐの地階や大空間を使った体育館といった要所では丁寧に空間を作り込んでおり、 見応えのあるインスタレーションだった。
ヨーロッパの移民キャンプ (不法移民が占拠して作ったキャンプ地ではなく、政府による不法移民の収容所) をテーマにしているが、 使われていたのがフランス語ということもあってか、直接的にそれを感じる所はあまり無かった。 雪男様の白い被り物を着た人々が踊る地階のダンスフロア、 その被り物を観客に試着させる三階の試着室、 不法移民を演じていると思われる人に服を着せ替えたりしている体育館内のキャンプテントなどから、 むしろより抽象的な身体管理の問題を扱っているよう。
地階の真っ白いダンスフロアと、 その隣の白い蒸気とスモークの立ちこめる中に声が響く「教唆する部屋」で、 ぐっと作品の世界に引き込まれた。 そして、体育館内のキャンプテント外の発泡スチロールが敷き詰められた空間に並ぶ 14台の電動ベッドが波打つように動く様と、揺れるブランコなど、 空間に不穏な雰囲気を作り出し、その感覚で観客に迫るよう。 確かに演じている人はいるが、演劇的には感じられない。 むしろ現代美術のインスタレーション (例えば Christian Boltanski) に近い体験が得られた作品だった。