開館60周年事業の一環として 本館2〜4階の所蔵品ギャラリーのリニューアルが行われた。 『美術にぶるっ!』はリニューアル完了を承けて開催された、開館60周年記念展だ。
その所蔵品ギャラリーを使った第1部「MOMATコレクションスペシャル」は、 リニューアルお披露目の展覧会といったもの。 展示されていた作品よりも、印象に残ったのは、 日本画の展示スペースが広がり独立性められていたこと、 1960s以降の展示スペースの単位がより広くなったように感じたこと。
第2部「実験場1950s」は1階の企画展ギャラリーを使った1950年代に焦点を当てた展覧会。 こちらは東京国立近代美術館の所蔵作品だけではなく、 絵画や彫刻のような美術作品だけではなく、写真、雑誌等の印刷物、プロダクト・デザインや映像等も使い、 美術を主軸としつつも1950sの文化と社会の動きを描き出した見応えのある展覧会だった。
同じ時代の雰囲気の記録といっても、 写真が敗戦 (特に原爆の被害や占領軍) の記憶という過去への指向なのに対し、 記録映画やPR映画が戦後から復興していく雰囲気という未来への指向だったことが、印象に残った。 これもメディアの性格の違いだろうか。 『薔薇の葬列』 (1969) のような劇場向け映画しか知らなかっただけに、 1950s年代に 松本 俊夫 が撮っていたPR映画が印象深かった。
美術はまだコンセプチャルな作品が登場する以前。 中で印象に残ったのは、河原 温の初期の作品がなかりまとまって展示されていたこと。 初めて観た『印刷絵画』の No.1 と No.2 (1958) はもちろん、 断片的に観たことのあった『浴室』シリーズ (1953-54) 全28点を一度に観ることができた。 1960s以降のコンセプチャルな日付シリーズとは異なるグロテスクな具象性を持った作品だけれども、 シリーズ化されているところに共通点を感じた。
所蔵作品展ということでざっと流して観られるだろうと予想していたのだが、 「実験場1950s」は映像も多くとても見応えある内容だった。 後に予定を入れてしまっていたため、映像などは通して観ることができなかった。 もっと時間に余裕があるときにゆっくり観に行けばよかったと少々後悔。