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Review: Teatrul Naţional Radu Stanca Sibiu: Lulu @ 東京芸術劇場 プレイハウス内特設ステージ (演劇)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2013/03/04
東京芸術劇場
2013/03/02. 14:00-17:00.
Lulu du Frank Wedekind. Regia, Adaptarea: Silviu Purcărete. Decor şi Light Design: Helmut Stürmer.
Distribuţia: Ofelia Popii (Lulu), Constantin Chiriac (Dr. Schön), Mariana Mihu, Diana Fufezan (Gräfin Geschwitz), Mihai Coman (Schwarz), Cristian Stanca (Dr. Goll, Rodrigo Quast), Adrian Matioc (Alwa Schön), Cristina Stoleriu (Henriette), Dan Glasu (Schigolch), Pali Vecsei (Ferdinand), Cătălin Pătru (Jack), Ema Veţean, Raluca Iani, Cristina Ragos, Gelu Potzolli, Eduard Pătraşcu.
Muzica originală: Vasile Şirli; Muzicienele: Laura Strainici, Laura Călina, Cora Miron.
Data premierei: 24 Mai 2008.

Teatrul Naţional Radu Stanca Sibiu は ルーマニア・トランシルバニア (Transylvania) 地方の主要都市シビウ (Sibiu) にある劇団付きの劇場。 1788年設立で2004年に国立になったという。 ルーマニアの演劇についてはほとんど知らなかったが、 上演作品が Alban Berg のオペラでも知られる Lulu で、 また、この劇場を中心に開催されている Festivalul Internaţional de Teatru de la Sibiu (シビウ国際演劇祭) の評判を耳にすることもあって、観てみることにした。 舞台上の特設ステージの作りから期待するほどでもなく普通の演出で、 第一部は少々長く感じられたが、第二部はあっという間に感じられた。

上演したのは劇場の舞台上に作られた解剖学大階段教室を模したもので、 その階段席に観客が座り、解剖がなされるはずの中央の空間とそこに連なる横の空間で上演が行われた。 それは、安全な高見から頽廃した Lulu らの生活を見世物のように観るよう。 そういう効果を狙ったもののなぜ解剖学階段教室なのだろうと思っていた。 しかし、最後の場面、 Jack the Ripper (切り裂きジャック) が Lulu を殺してその臓器を手にする様子を見て、 Jack が Lulu を「解剖」したと見立てていたのか、と気付かされた。

ルーマニア語での上演で、原作から変た所も目立ったけれども、翻案というほどではない。 第一部が Lulu が Dr. Schön を殺すと場面 (Erdgeist の結末) で終らず、 Lulu が逮捕されることなく、パリへ逃げようとする場面 (Die Büchse der Pandora の第一幕) で終った。 第一部で Dr. Schön 等 Lulu の周囲の人々の死が軽く描かれていたのだが、 この構成の変更もその反映だろう。 宿命の女の業を覗きみるような所がなく、緊張感は薄い。 最後まで観てからふりかえると、まるで、第二部の悲惨な生の原因の説明する前振りのようですらあった。

むしろ、第二部前半のパリの場面 (Die Büchse der Pandora の第二幕) を 破産で金策果て売春婦になることを迫られる場面とし、 後半の貧しい街娼として生きるロンドンの場面 (同第三幕) に繋げることで、 第二部では悲惨さを畳み掛けるような緊張感があった。 パリの場面での中央にバスタブを据えて水に浸かりながらの熱演、 ロンドンの場面での一面藁を引いてのボロ部屋の表現など、第二部の方が演出も面白かった。

音楽は piano / violin / cello の生演奏で、 前半が少々退屈で、途中休憩の時は長くて辛いなあなどと思っていたのだが、 後半ぐっと緊張が高まってたおかげであまり否定的な印象にならずに済んだような気がする。